JP2005050556A - リチウム二次電池用正極材料、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池 - Google Patents

リチウム二次電池用正極材料、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】初期容量が大きく、かつ大電流での放電時にも高放電容量の二次電池を与えるリチウム二次電池用正極材料であるリチウムリン酸鉄化合物を提供する。
【解決手段】リチウムを吸蔵・放出可能なオリビン構造を有するリチウムリン酸系化合物であり、かつこの化合物中のリン及び/又は酸素原子の一部が硫黄原子によって置換されたものであることを特徴とするリチウム二次電池用正極材料。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オリビン構造を有するリチウムリン酸系化合物、特にリチウムリン酸鉄系化合物からなるリチウム二次電池用正極材料、それを用いたリチウム二次電池用正極、及びリチウム二次電池に関するものである。本発明に係る正極材料は、初期放電容量が大きく、かつ、大電流での放電時にも高放電容量が得られる二次電池用正極を与える。
【0002】
【従来の技術】
近年、ビデオカメラや携帯用電話機等のコードレス電子機器の発達はめざましい。これら民生用途の電源として電池電圧が高く、高エネルギーを有する非水電解質二次電池、その中でも特にリチウム二次電池が注目されて実用化されている。更に、現在環境問題等への対応から電気自動車やハイブリッド自動車の開発が盛んであり、この様な車載用の電源としてもリチウム二次電池が注目されている。
【0003】
上記リチウム二次電池の正極活物質としては、4V程度の電池電圧を示すLiCoO、LiNiO、LiMnなどのリチウム−遷移金属複合酸化物が使用又は検討されている。
しかし、車載用の電源として非水電解質二次電池を用いる場合には、通常のコードレス電子機器等の民生用途と比較して使用条件が厳しく、かつ大型の電池となることから、高エネルギー密度、大電流での充放電特性等の特性向上に加えて、更なる低コスト化が必要となる。
【0004】
このような低コスト化を達成するため、高価なコバルト等の代わりに鉄を含有するオリビン構造のリチウムリン酸鉄化合物を正極活物質として用いることが提案されている(特開平9−134725号公報、特開平11−25983号公報参照)。
しかしながら、これらのオリビン構造をもつ正極活物質を用いて作製した二次電池は、大電流での充放電特性が十分ではないため、車載用途等の大電流での充放電特性を必要とする機器には適さないものである。この問題を解決するため、リチウム、鉄、リン及び酸素の一部を他元素に置換することにより、大電流での充放電特性を改善することが検討されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、リチウムリン酸鉄化合物の、リチウムの一部をNa又はKで置換すること、鉄の一部を、鉄以外の金属元素で置換し、リンの一部を、Si、N、As、及びSよりなる群から選ばれた元素で置換し、酸素の一部を、F、Cl、Br、I、S及びNよりなる群から選ばれた元素で微量置換したリチウム二次電池用正極材料が記載されている。そして、この正極材料は,リチウム原料、鉄原料、リン原料、その他添加する各元素からなる原材料を混合し、大気中、酸素中又は窒素及び酸素の混合雰囲気中で焼成することにより製造される旨の記載がある。具体例としては、各構成元素を含む原材料(具体的な原料化合物は明記されていない)を固相で混合後、空気中で焼成してLiCo0.2Fe0.8P(O3.90.1)及びLiCo0.2Fe0.8(P0.90.1)Oを製造したことが示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−198050号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者の検討によって、原材料を混合した後、空気中で焼成する方法では、鉄の酸化状態が2価のオリビン構造のリチウム鉄リン酸系化合物を製造すること、及びリチウム鉄リン酸系化合物のリンや鉄の一部を硫黄で置換することは、いずれも技術的に不可能なことであることが判明した。
すなわち、リチウムリン酸鉄系化合物は、酸化条件の下で焼成すると鉄が3価に酸化されてしまうので、鉄が2価であるオリビン構造の化合物とはならない。また、酸化条件の下では硫黄化合物が酸化分解されて硫黄含有ガスとなり揮散してしまうので、リチウムリン酸鉄系化合物のリンや酸素の一部を硫黄原子に置換することはできない。
【0008】
したがって、本発明は、初期容量が大きく、かつ大電流での放電時にも高放電容量の二次電池を与えるリチウム二次電池用正極材料であるオリビン構造のリチウムリン酸鉄系化合物、特にリチウムリン酸鉄硫黄系化合物を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討したところ、原材料を非酸化条件の下で焼成することにより、リチウムリン酸鉄系化合物のリンや酸素の一部を硫黄に置換することができ、これによって、初期放電容量が大きく、かつ大電流での放電時にも高放電容量が得られるリチウム二次電池用正極を与えるリチウムリン酸鉄硫黄系化合物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、リチウムを吸蔵・放出可能なオリビン構造を有するリチウムリン酸系化合物であり、かつこの化合物中のリン及び/又は酸素原子の一部が硫黄原子によって置換されたものであることを特徴とするリチウム二次電池用正極材料、それを用いたリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池に存する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。
リチウムを吸蔵・放出可能なオリビン構造を有するリチウムリン酸化合物とは、一般式LiMePO(式中、Meは金属元素を表す。)で表され、六方最密充填(hcp)構造を基本骨格とし、その四面体サイトにはLiイオンよりもイオン半径の小さなP5+イオンが優先的に占有してPOポリアニオンを形成し、八面体サイト4a,4cにはLi,Meがそれぞれオーダーして占有した構造を有するものである。例えば、LiFePOで示されるリチウムリン酸鉄化合物、LiMnPOで示されるリチウムリン酸マンガン化合物、LiCoPOで示されるリチウムリン酸コバルト化合物、LiNiPOで示されるリチウムリン酸ニッケル化合物等が挙げられる。
【0012】
本発明で用いるリチウムリン酸系化合物は、分子内のリン及び/又は酸素原子の一部が硫黄原子によって置換されたものである。
本発明でリチウム二次電池用正極材料として用いるのに好ましいリチウムリン酸系化合物としては、例えば、下記一般式(I)で表されるリチウム鉄リン酸硫黄系化合物が挙げられる。
Li1+xFe1−m4−nm+n …… (I)
(式中、MはFe以外の金属元素のうちの少なくとも1種の金属元素を表し、x、y、z、m及びnは、それぞれ0<x<0.2、y+z=1、y≧z、0≦m≦0.1、0≦n≦0.1、0<m+n≦0.1の数を表す。)
MはFeの一部を置換する他の金属であり、Mとしては、Co、Ni、Cu、Cr、Mn、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B及びNbよりなる群から選ばれた金属を用いることができる。これらのうち、Co、Ni又はMn、特にMnが好ましい。Mは1種類でも2種類以上でもよく、2種類以上を併用する場合には、Mn及びNiを併用するのが好ましい。
【0013】
xが小さいと未反応物が残ったり、結晶構造が不安定化しやすくなる。したがって、xは0.02以上、特に0.05以上が好ましい。逆に、xが大きすぎると異相が生成しやすくなり、作製したリチウム二次電池の性能が低下することがある。したがって、xとしては0.2未満、更には0.15以下、特に0.10以下が好ましい。
【0014】
yが小さいと原料が安価であり、かつ正極材料としての性能がよいというリチウムリン酸鉄をベースとする利点が失われる。したがって、yは通常0.5以上であり、0.7以上、特に0.8以上が好ましい。逆に、yが大きすぎると異相が生成しやすくなり、作製したリチウム二次電池の性能が低下することがある。したがって、yは通常、1以下であり、0.95以下、特に0.9以下が好ましい。
【0015】
なお、MによるFeの置換率は、コストや低毒性等の利点が失われないように、50%以下である。33%以下、特に25%以下が好ましい。
Fe及びMの平均原子価は、通常2.000以上2.1以下である。オリビン構造が生成するためにはFe及びMの平均原子価がほぼ2であることが必要である。また、平均原子価が大きくなると異相が生成しやすくなり、これを使用したリチウム二次電池の性能が低下することがある。したがって、Fe及びMの平均原子価の下限としては2.005以上が好ましく、上限としては2.08以下が好ましい。
【0016】
mが小さいと電池性能の改善効果が発現しにくくなり、逆に大きすぎると電池性能が低下することがある。したがって、mは0.002以上、特に0.005以上であるのが好ましく、0.075以下、特に0.05以下であるのが好ましい。
nが小さいと電池性能の改善効果が発現しにくくなり、逆に大きすぎると電池性能が低下することがある。したがって、nは0.002以上、特に0.005以上であるのが好ましく、0.075以下、特に0.05以下であるのが好ましい。
【0017】
硫黄は、酸素及びリンのいずれを置換していてもよい。m+n、すなわち硫黄原子の置換率が小さいと電池性能の改善効果が発現しにくくなり、逆に大きすぎると電池性能が低下することがある。したがって、m+nは0.005以上、特に0.01以上であるのが好ましく、0.075以下、特に0.05以下であるのが好ましい。
【0018】
本発明に係るリチウム二次電池用正極材料は、例えば、リチウム鉄リン酸硫黄系化合物の場合、所定量のリチウム原料、鉄原料、M原料、リン酸塩原料及び硫黄原料を、常法に従い混合し、次いで焼成することにより製造することができる。
リチウム原料としては、無機化合物及び有機リチウム化合物、例えば、LiCO、LiNO、LiPO、LiOH、LiOH・HO、酢酸リチウム等が挙げられる。これらの化合物は、低融点で鉄原料との反応性が高く、しかも焼成の際、有害物質を発生させないので好ましい。
【0019】
鉄原料としては、2価の鉄化合物、例えば、FeC・2HO、Fe(PO・8HO、Fe(CHCOO)等が挙げられる。これらのうち、FeC・2HOが、反応性が高く、しかも反応時に周囲に悪影響を与えるガスが発生しないので好ましい。
Mで表される金属の原料としては、金属Mのオキシ水酸化物;酸化物;水酸化物;炭酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、蓚酸塩等の有機酸塩などが挙げられる。これらのうち、オキシ水酸化物、水酸化物、蓚酸塩が、比較的反応性が高く、しかも反応時において周囲に悪影響を与えるガスが発生しないので好ましい。リン酸塩原料としては、例えば、NHPO、(NHHPO、P等が挙げられる。これらのうち、NHPO、(NHHPOが比較的吸湿性が低く、取り扱いが容易なので好ましい。
【0020】
硫黄原料としては、例えば、LiS、FeS、Fe及びMの硫化物が挙げられる。これらのうち、FeSが比較的取り扱いが容易で、鉄の原子価が2であり、しかも安価なので好ましい。
上述したリチウム原料、鉄原料、M原料、リン酸塩原料及び硫黄原料を、好ましくは一般式(I)の組成となるように湿式又は乾式で混合した後、焼成することによりリチウム二次電池用正極材料を調製する。
【0021】
原料の混合は、湿式混合で行うのが好ましく、その例としては、各原料の混合溶液から混合物を沈殿させる共沈法、均一沈殿法、アルコキシド法、電解法、ゾル−ゲル法、噴霧乾燥法、熱ケロセン法、凍結乾燥法及びエマルジョン法等が挙げられ、これらのうちでは共沈法が好ましい。
共沈法としては、例えばリチウム原料、鉄原料、M原料、リン酸塩原料及び硫黄原料の混合水溶液と、NaOH水溶液及びNH水溶液とを混合し、得られた水酸化物又は酸化物をLiOH又はLiCOと混合する方法が挙げられる。
【0022】
また、湿式混合法の他の例としては、リチウム原料、鉄原料、M原料、リン酸塩原料及び硫黄原料を分散媒に分散又は溶解させて得られるスラリーを乾燥させる方法が挙げられる。
湿式法で用いる分散媒としては、有機溶媒、水のいずれも用いることができるが、水を用いるのが好ましい。
スラリー中のリチウム原料、鉄原料、M原料、リン酸塩原料及び硫黄原料の平均粒径が、1μm以下、特に0.5μm以下となるように粉砕するのが好ましい。平均粒径の下限は任意だが、通常は平均粒径が0.01μm未満となるように微粒子化することは費用がかかるだけで無意味である。したがって、粉砕は平均粒径が0.02μm以上、好ましくは0.1μm以上となるように行うのが好ましい。各原料は、予め粉砕してから分散媒に分散してもよく、また分散媒中で粉砕してもよい。粉砕装置としては、ボールミル、ビーズミル、振動ミル等を用いればよい。ボールミルでは1時間〜2日間程度、ビーズミルでは滞留時間0.1時間〜6時間程度で粉砕・混合するのが好ましい。
【0023】
次いで、得られた混合物を、乾燥して焼成前駆体混合物とする。乾燥は、噴霧乾燥方式により行うのが好ましく、これにより均一な球状粉体を得ることができる。噴霧乾燥に際しては、噴霧装置、スラリー濃度、乾燥温度を適宜選択することにより、中実で平均粒子径が50μm以下、特に40μm以下の粒子が生成するように行うのが好ましい。平均粒径の下限は任意だが、通常3μm以上、好ましくは4μm以上となるように条件を設定する。
【0024】
得られた焼成前駆体混合物を、箱形炉、管状炉、トンネル炉、ロータリーキルン等の装置を用いて焼成することにより、本発明に係るリチウム二次電池用正極材料を製造することができる。
本発明に係るリチウムリン酸系化合物は、オリビン構造を有するものであり、このものは焼成条件を調節することにより製造することができる。本発明では、鉄の酸化反応を抑え、かつP及びOの双方がSで置換されたものを得るため、適度な酸素分圧の下で焼成を行う。好ましい酸素分圧の下限値は、通常10−3atm以下であり、10−4atm以下、特に10−5atm以下が好ましい。また、酸素分圧の上限値は通常10−30atm以上であり、10−25atm以上、特に10−20atm以上が好ましい。本発明では、上記範囲の酸素分圧とするために、非酸化性ガスとしてアルゴン若しくは窒素等の不活性ガス、又は水素若しくは一酸化炭素等の還元性ガスなどを用いて焼成を行う。なお、これらの混合ガスを用いてもよい。なお、焼成して得られたリチウムリン酸硫黄系化合物において、硫黄とリン及び/又は酸素との置換様式を確認する方法としては、例えばXAFS(x−ray absorption fine structure)、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)、イオン分析等の方法が挙げられる。
【0025】
焼成温度は、通常400℃以上で行う。焼成温度が低いと反応が完全に進行せず、また結晶性に劣るものが得られることがある。したがって、焼成は500℃以上で行うのが好ましい。逆に、焼成温度が高すぎると、結晶粒子が粗大化して比表面積が低くなり、電池性能が低下することがある。したがって、焼成は800℃以下、特に700℃以下で行うのが好ましい。
【0026】
焼成時間は、通常1時間以上である。焼成時間が短いと反応が完全に進行しないことがある。したがって、5時間以上、特に10時間以上が好ましい。更に長時間焼成しても、特に支障はないが、不経済である。通常は100時間以下の焼成時間で十分であり、75時間以下、特に50時間以下が好ましい。
なお、反応を効率よく均一に行わせるため、熱分解工程、仮焼工程、粉砕・解砕工程等を設けてもよく、またこれらの工程を挟んで昇温・最高温度保持・降温の工程を繰り返してもよい。
【0027】
本発明に係るリチウム二次電池用正極材料の平均一次粒径は、通常0.01μm以上5μm以下である。平均一次粒径が小さすぎると表面での副反応等が起こりやすくなるためにサイクル特性等が低下する傾向にある。したがって、平均一次粒径の下限としては0.02μm以上、特に0.05μm以上が好ましい。逆に、平均一次粒径が大きすぎるとリチウム拡散の阻害や導電パス不足等によりレート特性や容量が低下する傾向にある。したがって、平均一次粒径の上限としては1μm以下が好ましい。なお、平均一次粒径は、原料の粒径、焼成温度、焼成時間等の製造条件等により制御することができ、SEM観察によって測定することができる。
【0028】
また、リチウム二次電池用正極材料の平均二次粒径は、通常1μm以上50μm以下である。平均二次粒径が小さすぎるとサイクル特性や安全性が低下する傾向にある。したがって、平均二次粒径の下限としては4μm以上が好ましい。逆に、平均二次粒径が大きすぎると内部抵抗が大きくなって十分な出力が出にくくなる傾向がある。したがって平均二次粒径の上限としては40μm以下が好ましい。なお、平均二次粒径は、原料の粒径、焼成温度、焼成時間等の製造条件等により制御することができ、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定することができる。この測定の際に用いる分散媒としては、例えば、0.1重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液が挙げられる。
【0029】
リチウム二次電池用正極材料のBET比表面積は、通常0.1m/g以上10m/g以下である。BET比表面積が小さいとレート特性や容量が低下する傾向にある。したがって、BET比表面積としては0.2m/g以上、特に0.5m/g以上が好ましい。逆に、BET比表面積が大きいとサイクル特性等の低下や塗布面の強度が低下することがある。したがって、BET比表面積は3m/g以下、特に2m/g以下が好ましい。
【0030】
本発明に係るリチウム二次電池用正極材料及び結着剤、並びに必要に応じて導電材や増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を分散媒に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成させることができる。
【0031】
リチウム二次電池用正極材料は、正極活物質層中に、通常10重量%以上99.9重量%以下となるように用いる。この割合が小さいと電池容量が不十分となることがある。したがって、30重量%以上、特に50重量%以上が好ましい。逆に、割合が大きすぎると正極の強度が不足することがある。したがって、99重量%以下が好ましい。
【0032】
結着剤は、分散媒に対して安定であれば任意のものを用いることができる。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物;EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレンスチレンブロック共重合体及びその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物などが挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0033】
結着剤は、正極活物質層中に、通常0.1重量%以上80重量%以下となるように用いる。この割合が低いと正極活物質を十分保持することができないため正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう。したがって、1重量%以上、特に5重量%以上となるように用いるのが好ましい。逆に、この割合が高すぎると電池容量や導電性が低下することがある。したがって、60重量%以下、更に40重量%以下、特に10重量%以下となるように用いるのが好ましい。
【0034】
導電剤としては、例えば、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料などが挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0035】
導電剤は、正極活物質中に、通常0.01重量%以上50重量%以下となるように用いる。この割合が低いと導電性が不十分になる。したがって、0.1重量%以上、特に1重量%以上となるように用いるのが好ましい。逆に、高すぎると電池容量が低下することがある。したがって、30重量%以下、特に15重量%以下となるように用いるのが好ましい。
【0036】
正極集電体の材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料などが挙げられる。これらのうち、金属材料、特にアルミニウムが好ましい。また、その形状としては、金属材料では、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が、炭素材料では、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、現在工業化製品に使用されている金属薄膜が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
【0037】
金属薄膜の厚さは任意であるが、通常1μm以上100mm以下である。薄膜が薄いと集電体として必要な強度が不足する。したがって、3μm以上、特に5μm以上が好ましい。逆に、厚すぎると取り扱い性が悪くなる。したがって、は1mm以下、特に50μm以下が好ましい。
スラリーを形成するための分散媒としては、上述した正極材料、結着剤、並びに必要に応じて使用される導電剤及び増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば任意であり、水系溶媒又は有機系溶媒のいずれを用いてもよい。水系溶媒としては、例えば、水、アルコール等が挙げられる。また、有機系溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジメチルエーテル、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。特に水系媒体を用いる場合、増粘剤に併せて分散媒を加え、SBR等のラテックスを用いてスラリー化するのが好ましい。なお、これらの分散媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい
正極活物質層の厚さは、通常10〜200μm程度である。
【0038】
なお、塗布・乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を高めるため、ローラープレス等により圧密するのが好ましい。
次に、本発明のリチウム二次電池について説明する。
本発明に係るリチウム二次電池は、リチウムを吸蔵・放出可能な上記のリチウム二次電池用正極と、リチウムを吸蔵・放出可能な負極と、リチウム塩を電解塩とする非水電解質とを備えている。更に、正極と負極の間に、非水電解質を保持するセパレータを備えていてもよい。正極と負極との接触による短絡を効果的に防止するには、このようにセパレータを介在させるのが望ましい。
【0039】
負極は通常、正極の場合と同様に、負極集電体上に負極活物質層を設けて構成される。
負極集電体の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が用いられる。金属材料としては、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜等が挙げられる。また、炭素材料としては、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が、現在工業化製品に使用されていることが好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。負極集電体として金属薄膜を使用する場合、その好適な厚さの範囲は、正極集電体について上述した範囲と同様である。
【0040】
負極活物質層は、負極活物質を含んで構成される。負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、任意のものを用いることができるが、安全性の高さの面から、リチウムを吸蔵、放出できる炭素材料が好ましい。
炭素材料としては、その種類に特に制限はないが、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛(グラファイト)や、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物が挙げられる。有機物の熱分解物としては、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチの炭化物、石油系ピッチの炭化物、或いはこれらピッチを酸化処理したものの炭化物、ニードルコークス、ピッチコークス、フェノール樹脂、結晶セルロース等の炭化物等及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。これらのうち、黒鉛、特に種々の原料から得た易黒鉛性ピッチに高温熱処理を施すことによって製造された人造黒鉛、精製天然黒鉛、又はこれらの黒鉛にピッチを含む黒鉛材料等であって、種々の表面処理を施したものが好ましい。これらの炭素材料は、それぞれ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
負極活物質として黒鉛材料を用いる場合、学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、通常0.335nm以上であり、通常0.34nm以下、好ましくは0.337nm以下であるものが好ましい。
また、黒鉛材料の灰分が、黒鉛材料の重量に対して通常1重量%以下、中でも0.5重量%以下、特に0.1重量%以下であるのが好ましい。更に、学振法によるX線回折で求めた黒鉛材料の結晶子サイズ(Lc)が、通常30nm以上、中でも50nm以上、特に100nm以上であるのが好ましい。
【0042】
また、レーザー回折・散乱法により求めた黒鉛材料のメジアン径が、通常1μm以上、中でも3μm以上、更には5μm以上、特に7μm以上、また、通常100μm以下、中でも50μm以下、更には40μm以下、特に30μm以下であるのが好ましい。
また、黒鉛材料のBET法比表面積は、通常0.5m/g以上、好ましくは0.7m/g以上、より好ましくは1.0m/g以上、更に好ましくは1.5m/g以上、また、通常25.0m/g以下、好ましくは20.0m/g以
下、より好ましくは15.0m/g以下、更に好ましくは10.0m/g以下である。
【0043】
更に、黒鉛材料についてアルゴンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析を行った場合に、1580〜1620cm−1の範囲で検出されるピークPの強度Iと、1350〜1370cm−1の範囲で検出されるピークPの強度Iとの強度比I/Iが、0以上0.5以下であるものが好ましい。また、ピークPの半価幅は26cm−1以下が好ましく、25cm−1以下がより好ましい。なお、上述の各種の炭素材料の他に、リチウムの吸蔵及び放出が可能なその他の材料の負極活物質として用いることもできる。炭素材料以外の負極活物質の具体例としては、酸化錫や酸化ケイ素などの金属酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金などが挙げられる。これらの炭素材料以外の材料は、それぞれ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上述の炭素材料と組み合わせて用いてもよい。
【0044】
負極活物質層は、通常は正極活物質層の場合と同様に、上述の負極活物質と、バインダーと、必要に応じて増粘剤及び導電材とを溶媒でスラリー化したものを負極集電体に塗布し、乾燥することにより製造することができる。スラリーを形成する溶媒やバインダー、増粘剤、導電材等としては、正極活物質について上述したものと同様のものを使用することができる。
【0045】
電解質としては、例えば公知の有機電解液、高分子固体電解質、ゲル状電解質、無機固体電解質等を用いることができるが、中でも有機電解液が好ましい。
有機電解液は、有機溶媒に溶質を溶解させて構成される。
有機溶媒の種類は特に限定されないが、例えばカーボネート類、エーテル類、ケトン類、スルホラン系化合物、ラクトン類、ニトリル類、塩素化炭化水素類、エーテル類、アミン類、エステル類、アミド類、リン酸エステル化合物等を使用することができる。代表的なものを列挙すると、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、4−メチル−2−ペンタノン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、1,2−ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等の単独若しくは二種類以上の混合溶媒が使用できる。
【0046】
上述の有機溶媒には、電解質を解離させるために、高誘電率溶媒を含めることが好ましい。ここで、高誘電率溶媒とは、25℃における比誘電率が20以上の化合物を意味する。高誘電率溶媒の中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及び、それらの水素原子をハロゲン等の他の元素又はアルキル基等で置換した化合物が、電解液中に含まれることが好ましい。高誘電率溶媒の電解液に占める割合は、好ましくは20重量%以上、更に好ましくは30重量%以上、最も好ましくは40重量%以上である。高誘電率溶媒の含有量が上記範囲よりも少ないと、所望の電池特性が得られない場合がある。
【0047】
溶質の種類も特に限定されず、従来公知の任意の溶質を使用することができる。具体例としては、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiB(C、LiCl、LiBr、CHSOLi、CFSOLi、LiN(SOCF、LiN(SO、LiC(SOCF、LiN(SOCF等が挙げられる。これらの溶質は任意の1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、CO、NO、CO、SO等のガスやポリサルファイドS 2−など負極表面にリチウムイオンの効率よい充放電を可能にする良好な被膜を形成する添加剤を、任意の割合で上記単独又は混合溶媒に添加してもよい。
【0048】
リチウム塩は電解液中に通常0.5mol/L以上1.5mol/L以下となるように含有させる。0.5mol/L未満でも1.5mol/Lを超えても伝導度が低下し、電池特性に悪影響を与えることがある。下限としては0.75mol/L以上、上限として1.25mol/L以下が好ましい。
高分子固体電解質を使用する場合にも、その種類は特に限定されず、固体電解質として公知の任意の結晶質・非晶質の無機物を用いることができる。結晶質の無機固体電解質としては、例えば、LiI、LiN、Li1+xTi2−x(PO(M=Al、Sc、Y、La)、Li0.5―3xRE0.5+xTiO(RE=La、Pr、Nd、Sm)等が挙げられる。非晶質の無機固体電解質としては、例えば、4.9LiI−34.1LiO−61B、33.3LiO−66.7SiO等の酸化物ガラス等が挙げられる。これらは任意の1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
【0049】
電解質として有機電解液を用いる場合には、電極同士の短絡を防止するために、正極と負極との間にセパレータが介装される。セパレータの材質や形状は特に制限されないが、使用する有機電解液に対して安定で、保液性に優れ、かつ、電極同士の短絡を確実に防止できるものが好ましい。好ましい例としては、各種の高分子材料からなる微多孔性のフィルム、シート、不織布等が挙げられる。高分子材料の具体例としては、ナイロン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等のポリオレフィン高分子が用いられる。特に、セパレータの重要な因子である化学的及び電気化学的な安定性の観点からは、ポリオレフィン系高分子が好ましく、電池におけるセパレータの使用目的の一つである自己閉塞温度の点からは、ポリエチレンが特に望ましい。
【0050】
ポリエチレンからなるセパレータを用いる場合、高温形状維持性の点から、超高分子ポリエチレンを用いることが好ましく、その分子量の下限は好ましくは50万、更に好ましくは100万、最も好ましくは150万である。他方、分子量の上限は、好ましくは500万、更に好ましくは400万、最も好ましくは300万である。分子量が大きすぎると流動性が低くなりすぎてしまい、加熱された時にセパレータの孔が閉塞しない場合があるからである。
【0051】
本発明のリチウム二次電池は、上述した本発明の正極と、負極と、電解質と、必要に応じて用いられるセパレータとを、適切な形状に組み立てることにより製造される。更に、必要に応じて外装ケース等の他の構成要素を用いることも可能である。
本発明のリチウム二次電池の形状は特に制限されず、一般的に採用されている各種形状の中から、その用途に応じて適宜選択することができる。一般的に採用されている形状の例としては、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプなどが挙げられる。また、電池を組み立てる方法も特に制限されず、目的とする電池の形状に合わせて、通常用いられている各種方法の中から適宜選択することができる。
【0052】
以上、本発明のリチウム二次電池の一般的な実施形態について説明したが、本発明のリチウム二次電池は上記実施形態に制限されるものではなく、その要旨を超えない限りにおいて、各種の変形を加えて実施することが可能である。
本発明のリチウム二次電池の用途は特に限定されず、公知の各種の用途に用いることが可能である。具体例としては、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ電力のロードレベリング等の電源、電気自転車、電気スクーター、電気自動車等が挙げられる。
【0053】
本発明に係るリチウム二次電池用正極材料は、硫黄原子が置換することによってオリビン結晶の剛直なアニオン骨格を緩め、リチウムイオン移動のために比較的大きな自由体積が与えられること、及び結晶成長が抑制されて比表面積の比較的大きなものが得られることから、初期放電容量が大きく、かつ、大電流での放電時にも高放電容量が得られる。
【0054】
【実施例】
<リチウム二次電池用正極材料の製造>
(実施例1)
LiOH・HO、FeC・2HO、(NHHPO、FeSを、Li/Fe/PO/S=1.05/1/0.99/0.01(モル比)の割合となるように秤量し、乳鉢で混合した後、この混合物をAr/H=96/4の混合ガス中で350℃、3時間熱分解した。次にこれを解砕・混合し、前記混合ガス中で675℃、24時間の焼成を2回繰り返すことにより、組成式がLi1.05FeP1−m4−n0.01(式中、m+n=0.01である。)で表されるオリビン構造を有するリチウム鉄リン酸化合物を得た。このものの鉄の平均原子価は2.01、BET比表面積は1.65m/gであった。
【0055】
(実施例2)
実施例1において、LiOH・HO、FeC・2HO、(NHHPO、FeSを、Li/Fe/PO/S=1.05/1/0.98/0.02(モル比)の割合となるように秤量した以外は、実施例1と同様にして組成式がLi1.05FeP1−m4−n0.02(式中、m+n=0.02である。)で表されるオリビン構造を有するリチウム鉄リン酸化合物を得た。このものの鉄の平均原子価は2.00、BET比表面積は1.89m/gであった。また、X線回折の結果、痕跡程度のLiPOとFe、Feが検出された。
【0056】
(実施例3)
実施例1において、LiOH・HO、FeC・2HO、(NHHPO、FeSを、Li/Fe/PO/S=1.05/1/0.95/0.05(モル比)の割合となるように秤量した以外は、実施例1と同様にしてで組成式がLi1.05FeP1−m4−n0.05(式中、m+n=0.05である。)で表されるオリビン構造を有するリチウム鉄リン酸化合物を得た。このものの鉄の平均原子価は2.01、BET比表面積は2.35m/gであった。また、X線回折の結果、痕跡程度のLiPOとFe、Feが検出された。
Li1+xFe1−m4−nm+n
【0057】
(比較例1)
実施例1において、LiOH・HO、FeC・2HO、(NHHPOを、Li/Fe/PO=1.05/1/1(モル比)の割合となるように秤量した以外は、実施例1と同様にしてオリビン構造を有するリチウム鉄リン酸化合物を得た。このものはP及び/又はOの一部がSで置換されていないものであり、鉄の平均原子価は2.02、BET比表面積は1.58m/gであった。
【0058】
(比較例2)
実施例1において、LiOH・HO、FeC・2HO、(NHHPOを、Li/Fe/PO=1.05/1/1(モル比)の割合となるように秤量した以外は、実施例1と同様にしてオリビン構造を有するリチウム鉄リン酸化合物を得た。このものはP及び/又はOの一部がSで置換されていないものであり、鉄の平均原子価は2.00、BET比表面積は2.67m/gであった。
【0059】
(比較例3)
実施例1において、LiOH・HO、FeC・2HO、(NHHPO、FeSを、Li/Fe/PO/S=1.05/1/0.95/0.05(モル比)の割合となるように秤量し、Ar/H=96/4の混合ガスに代えて空気を用い、熱分解、2回の焼成を行った以外は、実施例1と同様にして組成式がLi1.05FeP1−m4−n0.05で表される(式中、m+n=0.05である。)リチウム鉄リン酸化合物を得た。このものはLiFe(POとFeとをベースとする相の混合物であり、オリビン構造を有するものではなかった。また、鉄の平均原子価は3.00、BET比表面積は2.35m/gであった。
【0060】
<電池の作製及び評価>
実施例1〜3及び比較例1、2のリチウム鉄リン酸化合物75重量部、アセチレンブラック20重量部、ポリテトラフルオロエチレンパウダー5重量部を乳鉢で十分混合し、薄くシート状にし、これを9mmφのポンチを用いて全体重量が約8mgになるように打ち抜いた。これをアルミニウムエキスパンドメタルに圧着して、9mmφの正極とした。
【0061】
9mmφの正極を試験極とし、リチウム金属を対極としてコインセルを組んだ。得られたコイン型セルについて、充電上限電圧を4.35V、放電下限電圧を2.0Vとして、0.2mA/cmの定電流定電圧充電・定電流放電を行って、初期充放電容量(mA/cm)、及び、初期充放電効率(%)を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
Figure 2005050556
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、初期放電容量が大きく、かつ、大電流での放電時にも高放電容量が得られるリチウムリン酸鉄系リチウム二次電池用正極材料、それを用いたリチウム二次電池用正極、及びリチウム二次電池を得ることができる。

Claims (6)

  1. リチウムを吸蔵・放出可能なオリビン構造を有するリチウムリン酸系化合物であり、かつこの化合物中のリン及び/又は酸素原子の一部が硫黄原子によって置換されたものであることを特徴とするリチウム二次電池用正極材料。
  2. リチウムリン酸系化合物が、下記一般式(I)で表されるものであることを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池用正極材料。
    Li1+xFe1−m4−nm+n …… (I)
    (式中、MはFe以外の金属元素のうちの少なくとも1種の金属元素を表し、x、y、z、m及びnは、それぞれ0<x<0.2、y+z=1、y≧z、0≦m≦0.1、0≦n≦0.1、0<m+n≦0.1の数を表す。)
  3. Mが、Co、Ni、Cu、Cr、Mn、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B及びNbよりなる群から選ばれたものであることを特徴とする請求項2記載のリチウム二次電池用正極材料。
  4. BET比表面積が、0.2〜3m/gであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極材料。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極材料と結着剤とを含有する正極活物質層を集電体上に有することを特徴とするリチウム二次電池用正極。
  6. リチウムを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びにリチウム塩を電解質として含有する非水電解液を備えたリチウム二次電池であって、リチウムを吸蔵・放出可能な正極が請求項5記載のリチウム二次電池用正極であることを特徴とするリチウム二次電池。
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