JP2005049297A - 光検出用バイオ素子とバイオ検出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】機能性分子の単分子膜がパターン形成された基板からなり、前記機能性分子に対してナノ微粒子表面の、機能性官能基を有する基を分子認識反応によって結合させて検出するバイオ素子であって、基板に結合したときの前記ナノ微粒子相互の間隔が100〜1000nmになるように調節したバイオ素子。
【選択図】なし
Description
PCR法は、試料を増幅するのに時間がかかり、また多段階の複雑なプロセスを経るため判定誤差が生じやすく、さらに塩基配列の分析に蛍光ラベルが必要であり、多種多様なDNAプローブのすべてに蛍光処理を施さなければならないため時間及びコストがかかっていた。これに対し固体基板型バイオチップ(DNAマイクロアレイ)は、ゲノムDNAを基板表面にアレイ状に配置・固定したものであり、その情報は基板表面について高感度分析を行うことにより処理される(例えば、特許文献1参照)。これによればPCRによる増幅を経ずに直接DNA鎖の分析・同定を行うことができる。したがって、固体基板型バイオチップは、上記(1)〜(4)の項目について、PCR法よりも潜在的に優れているといわれている。
分子認識能を向上させるための表面作製法については様々な研究開発が進められており、例えば、特許文献1には表面被覆率及び活性度を高めた基板表面が記載されている。
しかし、この方法では検出のために蛍光プローブ等でターゲット核酸を修飾する必要があり操作が煩雑で、しかも検出精度が低い(再現性が悪い)。
本発明者らはこの知見に基づき鋭意検討を重ねた結果、ナノ微細加工技術とナノ微粒子を組み合せることにより、高密度集積型バイオチップを提供することが可能となることを見出した。この高密度集積型バイオチップでは、例えば、光検出を用いることで、測定点が極めて多量であっても全ての測定点のそれぞれを短時間で検出することができ、またフーリエ変換等の技術により単純なパターン信号として照合・記録・保存が可能である。これにより、従来は○×でしか判定されなかったバイオセンシングの結果を、たとえば100ドット中95ドット反応といったディジタル表示で提示することが可能となる。本発明はこのような知見に基づきなされるに至ったものである。
すなわち本発明は、
(1)機能性分子の単分子膜がパターン形成された基板からなり、前記機能性分子に対してナノ微粒子表面の、機能性官能基を有する基を分子認識反応によって結合させて検出するバイオ素子であって、基板に結合したときの前記ナノ微粒子相互の間隔が100〜1000nmになるように調節したことを特徴とするバイオ素子、
(2)前記ナノ微粒子の粒径が5〜50nmであることを特徴とする(1)項に記載のバイオ素子、
(3)前記の機能性分子及びナノ微粒子が、DNA分子間又はDNA−RNA分子間のハイブリダイゼーションにより結合することを特徴とする(1)又は(2)項に記載のバイオ素子、
(4)前記の機能性分子及びナノ微粒子が、抗原抗体反応により結合することを特徴とする(1)又は(2)項に記載のバイオ素子、
(5)基板に結合した前記ナノ微粒子相互の間隔が前記の間隔となるように、分子の自己組織化性を利用して機能性分子を基板上に配列することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のバイオ素子の製造方法、
(6)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のバイオ素子上に前記ナノ微粒子を結合させた後、該バイオ素子上に光を照射して、微粒子における光吸収又は光発光により該バイオ素子上のナノ微粒子1粒子単位で高感度に検出することを特徴とするバイオ検出方法、
(7)前記ナノ微粒子が1粒子単位で表面プラズモン現象により検出されることを特徴とする(6)項に記載のバイオ検出方法、および
(8)前記ナノ微粒子が1粒子単位で量子発光により検出されることを特徴とする(6)項に記載のバイオ検出方法
を提供するものである。
また、本発明のバイオ検出方法は、大量の情報を並列的に短時間で処理することができるという優れた効果を奏する。すなわち、測定点が極めて多量であっても、光検出を用いることにより短時間で検出することができ、またフーリエ変換等の技術により単純なパターン信号として照合・記録・保存が可能である。これにより、従来は○×でしか判定されなかったバイオセンシングの結果を、たとえば100ドット中95ドット反応といったディジタル表示で提示することが可能となる。
以下、本発明のバイオ素子の好ましい実施態様について、添付の図面に基づいて詳細に説明をする。なお、各図の説明において同一の要素には同一の符号を付す。
本発明のバイオ素子1は、ナノサイズの金属又は半導体微粒子(ナノ微粒子6)が所定の間隔で基板上に1個づつ固定されるように、ナノ微粒子6が結合しうる機能性分子4を基板2上に配列して作製される。
なお、本発明における分子認識反応による機能性分子とナノ微粒子との結合反応としては、機能性分子4とナノ微粒子6とが直接結合する反応のほかに、第三物質10を介して間接的に結合する反応(すなわち、機能性分子4−第三物質10間における反応と第三物質10−ナノ微粒子6間における反応)であってもよい。
また、本発明に用いられる機能性分子は、後述する自己組織化性を有するのが好ましく、含硫黄有機分子であることが好ましい。
機能性分子を、金属薄膜を片面に有する基板表面に配列する方法としては、アレイ法における一般的な手法を用いることができるが、例えば含硫黄有機分子の共吸着、ブロック共重合体の相分離、蛋白質またはポリマー/シリカ粒子からなる2次元結晶を鋳型にした金属蒸着も使用可能である。
ブロック共重合体の相分離によれば、基板に対するアフィニティーの異なるユニットからなるブロック共重合体を基板上に単分子膜吸着させ、相分離ナノ構造の表面パターンを形成することができる(例えば、Spatz, J. P. et al., "Macromolocules", 1997, 30, 3874)。
蛋白質またはポリマー/シリカ粒子からなる2次元結晶又はポーラス材料を鋳型にした金属蒸着によれば、様々な表面パターンを形成することができる。
なお、ビオチン−アビジンあるいはDNA鎖のハイブリダイゼーション等で知られているように、分子認識反応の効率は機能性分子の基板表面における分散状態に大きく依存する。したがって、機能性分子の基板表面における空間的配置については、表面プラズモン分光法、赤外分光法、X線光電子分光法等により評価し、最も反応効率のよい分散状態となるように配置する。例えば、K. Tamada et. al., "Langmuir", 2001, 17 (6), p.1913-1921等に記載の方法を用いることができる。
ナノ微粒子は基板上の機能性分子のナノドットに結合しうる。このとき本発明において微粒子を上記のように所定の間隔に位置させるようにすることにより、高集積化による、高感度検出が可能となる。すなわち、試料分子(例えばDNA等)そのものを検出する場合や色素ラベル分子を検出する場合、1分子あたりの信号強度が微弱かつ不安定であるために、1検出点をさほど小さくできない。たとえば0.1〜1mm四方といったエリアで染色するのが通常であるが、その場合その面積中に存在する分子数はすでに天文学的数字(1分子サイズを1nmとしても0.1mm四方に存在する分子数は1012)になるにもかかわらず、従来はその評価基準が単に○×のいずれかで、1点のデータとしてしか利用されていない。
つまり微粒子化することで、(1)機能性基間の分子認識反応の選択性が確実になり高まる(2)光信号として安定で強力な信号の発生が実現され、高感度の検出ができる、の両方の機能が奏され、そして(3)空間的集積度を最大にしたときの、合成可能な金属微粒子の1粒子がサイズ的にちょうど粒子単位で全粒子を信号化するのに適合する(数百nm間隔のパターン上に約10倍小さい数十nmの微粒子がおかれる形になる)。
具体的には、仮に500nm間隔で吸着点を分散させた場合、1mm四方の基板でのデータ数は4×106個となり、従来のマイクロアレイ法(1枚のスライドグラスで数百〜数千データ)に比べて格段の集積率下で格段の分解能を持つこととなる。
ナノ微粒子に用いられる金属粒子としては、前記基板に挙げたものと同様であり、半導体粒子の例としてはGaAs、InPなどが挙げられる。本発明においては金微粒子を用いるのが好ましい。
金微粒子は、金イオンを溶液中で界面活性剤存在下で還元し、金ナノ微粒子を作製する。その際、チオール分子を混在あるいは後に表面置換反応により導入することにより、金微粒子表面をチオール分子で均一に覆うことができる。例えば、分子認識反応に寄与できる官能基を分子末端に持つ機能性チオール(X-(CH2)n-SH, ここでXは機能性官能基)を用いれば機能性基で覆われた金属微粒子を作製することができる(A. Manna.; P.L. Chen: H. Akiyama; T.X. Wei,; K. Tamada; W. Knoll. Chem. Mater. 2003, 15, 20-28等参照)。
機能性チオールを微粒子合成に用いる場合、機能性官能基が還元剤との接触により破壊されてしまう心配があるため、合成の際には、Brust, M. et al., J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1994, 801、Brust, M. et al., J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1995, 1655等に記載の手法を改良したものを用いる。これは還元による微粒子コアの作製過程はチオール抜きの界面活性剤でのみ行い(1st step)、その後還元剤を除去した後に、表面での置換反応により機能性チオールを微粒子表面に導入する(2nd step)ものである。この場合、微粒子のサイズは1st stepの際に用いる界面活性剤の種類によって決まり、たとえばバイオ関連材料(親水性微粒子)においては、シトラス酸やタンニン酸等が用いられている。
本発明では1粒子それぞれを光(可視光)検出の検出点として用いるため、検出点の表面集積密度(表面パターニングのサイズ)としては、光検出の場合、空間分解能で対応できるサイズにまで微細化する。つまり微粒子相互の間隔が、波長サイズから波長以下程度(100nm以上、好ましくは100〜1000nm、より好ましくは300〜500nm)となるように導入する。ナノ微粒子は基板上の機能性分子のナノドットに結合するので、ナノドット間隔を上記の距離とする。
なお、ナノ微粒子は、基板表面に存在する機能性官能基と直接反応させてもよく、この例のように第三物質を介して間接的に反応させてもよい。
図3に示すように、バイオ素子1の基板2上にはユニット23が複数配列され、上述の反応が各ユニットにおいて行われる(なお、図3は、プラズモン現象を利用した光によるバイオ検出方法の説明図である)。
まず、従来のバイオ素子の検出について図7を参照しながら説明する。従来のバイオ素子の検出は、バイオ素子41上におけるユニット42について分子認識反応が行われたか否かを検出し、分子認識反応が行われたユニットの位置確認が行われていた。しかし、従来のバイオ素子は集積度が低いものしかできないため、このようなユニット単位(例えば42)ごとの検出で十分であったが、本発明のバイオ素子は1粒子単位で(すなわち1分子単位で)検出することができ、高集積化した大量点のデータを解析処理して、高感度検出を行う。
検出方法としては、走査型近接場顕微鏡により1次元デジタル情報としてバーコード的に読み取ることや、表面プラズモン顕微鏡、2次元内部反射型イメージングエリプソメトリ等により2次元アナログ情報として取り出し、例えば指紋や網膜照合と同様のフーリエ変換を使ったパターン認識処理により並列的に大量の情報処理を行うことが好ましい。プラズモン吸収を利用した表面プラズモン顕微鏡は、一度に多点のデータを画像情報(吸着による光反射率の局所的な変化)として取り込むことができるので特に好ましく用いられる。
図3は、プラズモン現象を利用した光によるバイオ検出方法の説明図である。レンズ31を適して、紫外光、可視光又は近赤外光をバイオ素子1に入射し、基板2上の金属薄膜あるいは機能性分子4が結合したナノ微粒子6に表面プラズモンを発生させ、出射光の光エネルギーを測定して局所的表面プラズモン共鳴分光測定を行い、フーリエ変換画像32として処理する。分子認識反応による微粒子吸着の有無により反射率が異なることを利用して、反応の有無を可視化することができる。プラズモン現象を利用した情報処理方法自体は、例えば、特開2002−22653号公報等に記載の方法を利用することができる。
縦1cm×横2cm×厚さ50μmのマイカ基板の片面に、厚さ1000Åで前記段落番号[0011]に記載の方法で、金単結晶膜を蒸着し、チオール化ビオチン(LCC Engineering & Trading GmbH製、商品名:41151-0895)の1mmolエタノール溶液に1時間浸漬して、バイオ素子基板を作製した。作製したバイオ素子の表面を原子間力顕微鏡(10μmスキャナー)を用いて観察した。図4に、バイオ素子表面の顕微鏡写真を示す。この写真の立体図では、分子の高さに相当する凹凸を観察することができる(1〜2nm)。
ストレプトアビジン(ファルマシア社製)5μモルのpH7.4緩衝溶液を、ビオチンが結合した基板(バイオ素子)に塗布し、反応させた。
あらかじめHAuCl4(H2O)4 100mg(2.5×10-4モル)をクエン酸三ナトリウム200mg(6.8×10-4モル)の存在下で10分間還流して作製してあった、表面にクエン酸を有する金微粒子(平均粒子径20nm)を、チオール化ビオチンの1mmolエタノール溶液と混合し、室温で1〜2時間撹拌して、ビオチンを固定した金微粒子を調製した。
室温、大気下で前記金微粒子分散液を前記バイオ素子に滴下し、分子識別反応を行った。金微粒子結合後のバイオ素子表面の顕微鏡写真を図5に示す(原子間力顕微鏡(10μmスキャナー)を使用)。金微粒子相互の間隔はバイオ素子表面のパターン間距離に一致し、50〜100nmであった。この写真から、微粒子吸着により局所的にドットの高さ(厚み)が増大したことがわかる(10〜20nm)。分子識別反応が起きてナノ微粒子が結合した部分のみが高いコントラストで1粒1粒明るく光っているのを観察することができる。ナノ微粒子が結合した部分は、図4における反応前のナノドットと比べて著しく膜厚が増大しているのがわかる。図5によれば、本発明のバイオ素子によれば高密度集積した金微粒子を1粒子単位で信号として高感度に検出できることがわかる。
表面プラズモン共鳴分光法により図5に示したバイオ素子表面をさらに感度を増強して測定する方法を説明する。測定波長は632nmとした。レーザ入射角度を連続的に変化させて反射率を測定する。結果を図6にグラフとして示す。図6中、縦軸は表面プラズモン分光による基板の反射率(%)を、横軸はレーザの入射角度(度)を示し、(A)は金基板上にチオール化ビオチンが吸着した状態を、(B)はビオチンにストレプトアビジンが吸着した状態を、(C)はストレプトアビジン上にナノ微粒子が吸着した状態をそれぞれ示す。
図6から反射角55°のときに3つの状態の差異が最も明確となった。入射角を55°で固定すると、反射率の違いで各領域を区別して可視化できることがわかった。
また、図6から明らかなように、分子識別反応により吸収ピークのシフトが起きるが、従来の単分子膜吸着によるプラズモン吸収シフトに比べて、約100倍大きなシフトが見られた。このことは、吸着の有無を反射率変化で計測する場合、検出感度が従来の約100倍に増強されることを示し、本発明のバイオ素子は1粒子単位で高感度に検出することができることがわかる。
この結果は、表面プラズモン顕微鏡による場合、本発明例では非常に狭い領域について一度に極めて多点のデータを画像情報(吸着による光反射率の局所的な変化)として取り込むことができることを意味する。すなわち、従来法ではデータの集積度が低いものしかできず、信号としてユニット単位で○×の基準で判定するに留まっていたが、本発明は例えば100ドット中95ドット反応といったディジタル段階表示で高精度提示が可能となる。
2 基板
3 金属薄膜
4 機能性分子(チオール化ビオチン)
5 機能性分子における機能性官能基(分子認識部位)
6 ナノ微粒子
7 金属又は半導体の粒子
8 ターゲット分子(チオール化ビオチン)
9 ターゲット分子における機能性官能基(分子認識部位)
10 第三物質(ストレプトアビジン分子)
11 第三物質における分子認識部位
12 分子認識反応によりバイオ素子に結合したナノ微粒子
21 分子認識反応により適合すると識別された微粒子(1検出点)
22 分子認識反応により適合しないと識別された微粒子(欠損部)
23 ユニット(1測定領域)
31 レンズ
32 フーリエ処理画像
41 バイオ素子
42 ユニット(1測定領域、1検出地点)
Claims (8)
- 機能性分子の単分子膜がパターン形成された基板からなり、前記機能性分子に対してナノ微粒子表面の、機能性官能基を有する基を分子認識反応によって結合させて検出するバイオ素子であって、基板に結合したときの前記ナノ微粒子相互の間隔が100〜1000nmになるように調節したことを特徴とするバイオ素子。
- 前記ナノ微粒子の粒径が5〜50nmであることを特徴とする請求項1記載のバイオ素子。
- 前記の機能性分子及びナノ微粒子が、DNA分子間又はDNA−RNA分子間のハイブリダイゼーションにより結合することを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオ素子。
- 前記の機能性分子及びナノ微粒子が、抗原抗体反応により結合することを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオ素子。
- 基板に結合した前記ナノ微粒子相互の間隔が前記の間隔となるように、分子の自己組織化性を利用して機能性分子を基板上に配列することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のバイオ素子の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のバイオ素子上に前記ナノ微粒子を結合させた後、該バイオ素子上に光を照射して、微粒子における光吸収又は光発光により該バイオ素子上のナノ微粒子1粒子単位で高感度に検出することを特徴とするバイオ検出方法。
- 前記ナノ微粒子が1粒子単位で表面プラズモン現象により検出されることを特徴とする請求項6記載のバイオ検出方法。
- 前記ナノ微粒子が1粒子単位で量子発光により検出されることを特徴とする請求項6記載のバイオ検出方法。
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