JP2005041887A - 苦味等を隠蔽した経口薬剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】薬物の不快な味を隠蔽した経口剤を提供する。
【解決手段】不快な味を有する塩基性薬物およびアニオン性高分子物質を含有する不快な味を隠蔽した経口薬剤組成物。アニオン性高分子物質としては、カラギーナン、コンドロイチン硫酸等、デキストラン硫酸、アルギン酸、ジェランガム、キサンタンガム等が挙げられる。不快な味を有する薬物としては、例えば抗痴呆薬、抗血小板薬、抗うつ薬、脳循環代謝改善薬、抗アレルギー薬等が挙げられる。
【選択図】なし

Description

本発明は、不快な味を隠蔽した経口薬剤組成物に関する。
不快な味を有する薬物のマスキングには、多くの技術が開発されている。例えば、顆粒剤を水溶性の皮膜によりコーティングする方法(特許文献1)、融点40〜100℃のワックス類を溶融し、その中に不快な風味を呈する薬物を分散後、固化させて散剤等を得る方法(特許文献2)等が知られている。一方、液剤の場合は、服用感を高めるためにシロップ等の経口液剤とすることが知られており、小児、老人等に適した剤形として広く使用されている。シロップ剤は、甘味を有する剤形であるが、溶解する薬物が不快な味を有していると、単に甘味だけでは隠蔽できず服用し難く、コンプライアンスも低下する。さらに、特許文献3には、苦味低減の方法として、苦味のある物質に寒天、ゼラチンまたはκ−カラギーナンから選ばれるゲル化剤と味付け剤を添加し、味付けゼリー状にすることを特徴とする苦味低減方法が開示されている。この方法は、ゼリー状にすることにより舌への苦味物質の接触を減じるものであり、一部溶解する苦味物質は味付け剤により苦味をマスキングするものである。
特開平4−282312号公報 特開平7−267850号公報 特開平4−346937号公報
不快な味を有する薬物のマスキングを目的として前述のような多くの技術が検討されているが、製造工程が複雑であったり、効果が不十分であったり、品質上の問題があったりして、いまだ満足できるものはなく、更なる技術が求められている。
本発明は不快な味を有する塩基性薬物およびアニオン性高分子物質を含有する経口用液剤、シロップ剤またはゼリー剤である。また、本発明はアニオン性高分子物質が酸性多糖類である上記の経口用液剤、シロップ剤またはゼリー剤である。
さらに本発明は、酸性多糖類がカラギーナン、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、アルギン酸、ジェランガムおよびキサンタンガム並びにこれらの塩からなるアニオン性高分子から選ばれる上記の経口用液剤、シロップ剤またはゼリー剤である。
上記において、不快な味を有する薬剤は抗生物質、抗痴呆薬、抗血小板薬、抗うつ薬、脳循環代謝改善薬または抗アレルギー薬から選ばれる。さらに具体的には、不快な味を有する薬剤は塩酸ドネペジル、塩酸チクロピジン、塩酸マプロチリン、酒石酸イフェンプロジルまたは塩酸セフカペンピボキシルから選ばれる。
また、本発明は、薬物1重量部に対して、アニオン性高分子物質は0.1〜20重量部を含む上記の経口用液剤、シロップ剤またはゼリー剤である。
本発明に係る経口薬剤組成物は、薬剤特有の苦味、しびれ、収斂性等の不快な味が隠蔽されているため、非常に服用しやすく患者のコンプライアンスが向上する。特に、幼児、老齢者に対しては有用である。本発明に係る経口剤が、不快な味を隠蔽するメカニズムは次のように考えられる。すなわち、不快な味を有する塩基性薬物が、酸性多糖類と相互作用を起こし、唾液中に溶解した場合または溶液中の遊離体が減少することにより、舌の苦味レセプターへの結合率を減少させるとともに、しびれの発現も低減させるものと考えられる。
本発明において塩基性薬物とは、遊離体が塩基性を示すという意味であり、塩を形成した場合には必ずしも塩基性ではない。本発明における不快な味を有する塩基性薬物は特に限定されず、抗生物質、抗痴呆薬、抗血小板薬、抗うつ薬、脳循環代謝改善薬または抗アレルギー薬等の経口的に服用される薬物のうち、苦味、刺激等の不快な味を有する塩基性薬物であれば使用でき、具体的には例えば、塩酸チクロピジン、塩酸マプロチリン、酒石酸イフェンプロジル、塩化ベルベリン、ジギトキシン、スルピリン、塩酸アゼラスチン、塩酸エチレフリン、塩酸ジルチアゼム、塩酸プロプラノロール、クロラムフェニコール、アミノフィリン、エリスロマイシン、フェノバルビタール、パントテン酸カルシウム、塩酸インデロキサジン、塩酸アミノグアニジン、塩酸ドネペジル、塩酸セフカペンなどを挙げることができる。中でも塩酸ドネペジルの場合に特に優れた効果を奏する。塩酸ドネペジルは化学名(1-ベンジル-4-(5,6-ジメトキシインダノン-2-イル)メチルピペリジン塩酸塩であり、軽度から中等度のアルツハイマー治療剤であるが、その水溶液は激しい苦味、口腔内のしびれを有している。
本発明における、アニオン性高分子物質とは特に限定されないが、酸性多糖類が好ましく、具体的には、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、ジェランガム及びキサンタンガム並びにその塩を挙げることができる。カラギーナンには、ι、κ、λ等の種類が知られておりいずれも使用できるが、特に、液剤又はゼリー剤の場合はκ−カラギーナン、ι−カラギーナンが好ましく、また、デキストラン硫酸も好ましい。カラギーナン等は市販のものを使用することができ、FMCコーポレーション(FMC Corporation:USA)、システムズ バイオインダストリー社(Systems Bio Industries Co., Ltd)等から入手できる。
本発明における経口薬剤組成物の剤形は、シロップ剤またはゼリー剤として経口的に服用される剤形を意味しする。
本発明に係る経口薬剤組成物の投与方法は特に限定されず、薬物の性質により、食前、食後または食間に1日1回から数回経口的に投与することができる。
不快な味を隠蔽した経口液剤中の薬物の濃度は、一般に0.1〜500mg/mlであり、好ましくは0.5〜100mg/mlである。薬物が塩酸ドネペジルである場合は、その濃度は0.5〜5mg/mlが好ましい。本発明における、塩基性薬物とアニオン性高分子物質の割合は、一般に、塩基性薬物1重量部に対し、アニオン性高分子物質0.1〜20重量部であり、好ましくは、0.5〜10重量部である。いずれにしても、本発明においてアニオン性高分子物質は塩基性薬物の苦味等の不快な味を隠蔽する物質として働いている。
本発明に係る不快な味を隠蔽した経口薬剤組成物の製造方法は、特に限定されず一般に用いられる方法によることができる。また、シロップ剤またはゼリー剤の製造方法は、特に限定されず、例えば塩基性薬物およびアニオン性高分子物質を水に溶解して製造することができる。さらに、ショ糖、キシリトール、マンニトール、グルコース、アスパルテーム、サッカリン等の甘味剤、バニラエッセンス、アップルフレーバー等の矯味剤を加えることもできる。
試験例1
2mg/mlの塩酸ドネペジル水溶液を調製し、その5mlにκ−カラギーナン、コンドロイチン硫酸またはデキストラン硫酸を50mg溶解後、2名の被験者(表中A、Bで示す)が全量を口に含み、苦味としびれの程度を5段階で評価した。結果を表1に示した。表1から明らかなように、κ−カラギーナン等の添加によって塩酸ドネペジルの苦味は顕著に抑制された。
表1 評価基準
────────────────────────────────────
苦味 何も感じない 何か感じる 少し苦い 苦い とても苦い
────────────────────────────────────
痺れ 何も感じない 何か感じる 少し痺れる 痺れる とても痺れる
────────────────────────────────────
− ± + ++ +++
────────────────────────────────────
結果
────────────────────────────────────
試料/被験者 A B
苦味 痺れ 苦味 痺れ
────────────────────────────────────
塩酸ドネペジル(D) +++ +++ +++ +++
────────────────────────────────────
D+κカラギーナン + ± + +
────────────────────────────────────
D+コンドロイチン硫酸 ++ ++ +++ ++
────────────────────────────────────
D+デキストラン硫酸 + ± + +
────────────────────────────────────
試験例2
塩酸チクロピジン(20mg/ml)、塩酸マプロチリン(5mg/ml)および酒石酸イフェンプロジル(4mg/ml)を用い、カラギーナンの苦味としびれの隠蔽効果を調べた。試験方法、評価基準は試験例1に準じた。結果を表2に示した。
────────────────────────────────────
試料/被験者 A B
苦味 痺れ 苦味 痺れ
────────────────────────────────────
塩酸チクロピジン +++ +++ +++ +++
────────────────────────────────────
塩酸チクロピジン
+κカラギーナン(1mg/ml) ± ++ ± ++
+λカラギーナン(1mg/ml)
────────────────────────────────────
塩酸チクロピジン
+κカラギーナン(2mg/ml) − + − ±
────────────────────────────────────
塩酸マプロチリン ++ + + +
────────────────────────────────────
塩酸マプロチリン
+κカラギーナン(2mg/ml) − − − −
────────────────────────────────────
酒石酸イフェンプロジル + − ++ −
────────────────────────────────────
酒石酸イフェンプロジル
+κカラギーナン(2mg/ml) ± − − −
────────────────────────────────────
表2より明らかなように、カラギーナンの添加により各薬物の苦味、しびれが顕著に抑制された。特に、塩酸チクロピジンの味は極めて苦くかつ刺激性であるが、カラギーナンの添加により顕著に抑制されたことは本発明の効果が極めて優れていることを示すものである。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明がこれらに限例されるわけではない。
塩酸ドネペジル100mg、サッカリンナトリウム300mgおよびポビドン14gを精製水50gに溶解し、別にκ−カラギーナン700mgを精製水50gに加え、80℃に加温して溶解した。冷却後、両者を混合し、さらにメチルパラベン300mgおよびプロピルパラベン20mgを少量のプロピレングリコールに溶解したものに加えてシロップ剤を製造した。
キシリトール40gを精製水50gに加え、80℃に加温して溶解した。別に塩酸ドネペジル200mgを精製水50mlに溶解したものに、κ−カラギーナン0.56g、λ−カラギーナン1.0g、ローカストビーンガム0.15g、ジェランガム0.22g、キサンタンガム0.15g、クエン酸三ナトリウム0.19g、乳酸カルシウム0.19g、乳糖0.94gおよび粉末還元麦芽糖水飴40gを加え、さらに先に調製したキシリトール含有精製水を加えて、90℃で攪拌した。約80℃に放冷後、クエン酸0.6gを混合し、全量が200gになるように精製水を添加し、10gずつ容器に分注し、冷却してゼリー剤を製造した。

Claims (6)

  1. 不快な味を有する塩基性薬物およびアニオン性高分子物質を含有する経口用液剤、シロップ剤またはゼリー剤。
  2. アニオン性高分子物質が酸性多糖類である請求項1記載の経口用液剤、シロップ剤またはゼリー剤。
  3. 酸性多糖類がカラギーナン、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、アルギン酸、ジェランガムおよびキサンタンガム並びにこれらの塩からなるアニオン性高分子から選ばれる1種以上である請求項2記載の経口用液剤、シロップ剤またはゼリー剤。
  4. 不快な味を有する薬剤が抗生物質、抗痴呆薬、抗血小板薬、抗うつ薬、脳循環代謝改善薬または抗アレルギー薬から選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の経口用液剤、シロップ剤またはゼリー剤。
  5. 不快な味を有する薬剤が塩酸ドネペジル、塩酸チクロピジン、塩酸マプロチリン、酒石酸イフェンプロジルまたは塩酸セフカペンピボキシルから選ばれる1種以上である請求項1〜4のいずれかに記載の経口用液剤、シロップ剤またはゼリー剤。
  6. 薬物1重量部に対して、アニオン性高分子物質0.1〜20重量部を含む請求項1〜5のいずれかに記載の経口薬剤。
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