JP2005032330A - 磁気記録再生方法、磁気記録再生装置、磁気ヘッド - Google Patents

磁気記録再生方法、磁気記録再生装置、磁気ヘッド Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、補助磁性層を持つ垂直磁気記録媒体を用いた従来の磁気記録再生装置がもつ、該補助磁性層が発生原因となる記録再生信号の雑音を低減し、高い信号品質で記録再生が可能な磁気記録再生方法、磁気記録再生装置、磁気ヘッドを提供する。
【解決手段】補助磁性層を持つ垂直磁気記録媒体に対する記録再生方法で、垂直磁気記録媒体に対して少なくとも記録または/および再生を行なう前に、該補助磁性層の磁化方向を所定の方向に磁化するプロセスを経て該記録ないし該再生を行なう磁気記録再生方法を提供する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録再生方法に関し、更に詳細には、情報を正確に記録し、記録した情報を低ノイズで再生するための磁気記録再生方法、磁気記録再生装置、磁気ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録装置の大容量化に伴って、磁気記録媒体の記録密度の向上が進んでおり、より微細な記録磁区を安定に記録できる方式として垂直磁気記録が研究されている。垂直磁気記録では媒体の記録層の材料としてCo−Cr系の多結晶膜や、CoとPdやPtなどの交互積層多層膜による垂直磁化膜などが用いられる。(後者は白金族元素とCoとを数原子程度または、単原子程度の厚みで交互に積層した多層膜である。)これら垂直磁化膜を記録層として記録を行なう際には、単磁極ヘッドを用いるために記録層の下に軟磁性材料を用いた下地層(軟磁性下地層)を積層する構造が従来から用いられている。この軟磁性下地層はその面内磁化により記録用磁気ヘッドからの印加磁界を記録部分に集中させるとともに、記録部分から十分遠方に磁束を拡散させて磁気ヘッドに返す働きをする。すなわち磁気ヘッドからの記録磁界を記録層に効率的に印加するなどの目的のもので、大きな飽和磁束密度を有する軟磁性の薄膜が用いられる。しかしこの軟磁性下地層の磁区が単一磁区になりにくいため、複数の磁区を構成するとその境界部に磁壁が発生する。この磁壁から不要な浮遊磁界が発生して再生時の雑音の原因となる問題があった。
【0003】
従来にもこの雑音に対して対策が研究されている。解決法のひとつとして、軟磁性層の下に同じく面内磁化層であるが硬質磁性層を設けた構造、「垂直磁化層/軟質磁性層/面内硬質磁性層」の3層媒体などが提案されている。また、軟磁性層の材料や磁気的な性質で対応する方法も研究されている。いずれも軟磁性層の磁壁の生成を抑制することにより雑音の低減を図っている。
【0004】
上述の垂直磁気記録媒体の軟磁性下地層に代表されるように、記録情報を担地するためのいわゆる記録層と呼ばれる磁性層のほかに、さまざまな目的により他の磁性層が補助的に積層される場合がある。これらの補助磁性層はディスク全体で単一の磁区を形成しない限り、複数の磁区で構成されることになる。すなわちそれらの磁区の間には図10に示すような磁壁が形成され、そこからは必ず不要な磁束が浮遊するため、これが記録再生時に図11に示すようなノイズなどの影響を及ぼす結果となる。よって、記録層のほかに補助磁性層を積層する限り、その目的によらず該補助磁性層は単一磁区にする必要がある。特に補助磁性層として軟磁性材料を用いる場合、その磁気的な性質として磁化方向がわずかな外部磁界によりその印加方向に向きやすいため、ディスク全面にわたり単一磁区を形成することは非常に困難である。
【0005】
このような媒体の問題点を解決する方法として、例えば特許文献1などに、再生時に再生部分にバイアス磁界を印加してクロストークを低減する方法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−101611号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は垂直磁気記録媒体の軟磁性下地層に代表されるような補助磁性層を持つ磁気記録媒体を用いた従来の磁気記録再生装置がもつ、該補助磁性層が発生原因となる記録再生信号の雑音を低減し、高い信号品質で記録再生が可能な磁気記録再生方法、磁気記録再生装置、磁気ヘッドを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明における上述の問題を解決するための手段は、磁気記録媒体に対する記録再生方法であって、該磁気記録媒体は、少なくとも記録情報を担持するための磁気記録層と、補助磁性層とを保持する磁気記録媒体であって、該磁気記録媒体に対して少なくとも記録または/および再生を行なう前に、該記録または/および該再生を行なう位置の該補助磁性層の磁化方向を所定の方向に磁化するプロセスを経て該記録または/および該再生を行なう磁気記録再生方法に関するするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
(磁化アライナー付き磁気ヘッド)
本発明の形態としては、磁気記録媒体に一定の磁界を印加して補助磁性層の磁化を一方向にそろえて磁壁を消滅させる、磁化整列器(磁化アライナー)を、記録再生用磁気ヘッドとともにスライダーに配置して構成する。図1にその構成模式図を示す。
【0010】
磁化アライナーは磁気記録媒体の動きに対して、記録・再生用磁気ヘッドより先行する側に配置する。そして磁化アライナーは少なくとも磁気記録媒体に情報を記録する前、あるいは情報を再生する前に当該磁気記録媒体の補助磁性層に磁界を印加してその磁化方向を所定の方向にそろえて補助磁性層の不要な磁壁を消滅させるものである。その印加磁界は少なくとも磁気記録媒体の記録層の垂直方向保磁力より小さく、かつ補助磁性層の面内方向保磁力より大きくなるように、磁化アライナーの材料、形状、配置等を設計することが好適である。また、該印加磁界は記録トラックの幅より広い範囲に印加することが好適である。図12に、本発明の磁化アライナー付き磁気ヘッド用いることにより、ノイズ低減が図れた様子を示す模式図を示す。
【0011】
従来から、上述の特許文献1などに、再生時に再生部分にバイアス磁界を印加してクロストークを低減する方法は提案されていた。しかし、従来の方法では再生部(再生ヘッドのギャップ直下)とバイアス磁界の印加部分が同一であったため、当該磁界バイアスは再生ヘッドの磁束検出部の磁性体にも印加される。更に、磁界バイアスの印加は、再生と同時に行っていたため、再生感度を低下させる問題があった。本発明においては、図2のように、磁気ヘッドの磁気記録媒体に対する相対移動方向において、磁化アライナーを記録再生用磁気ヘッドに対して先行するよう隔離して配置する。これにより、該一方向磁化の過程と記録再生の過程を独立させて相互に影響を与えないようにできる。更に、記録または/および再生を行なう前に、該補助磁性層の磁化方向を所定の方向に磁化する事が可能となり、上述の問題を解決できる。そして当該磁化アライナーを通過した後に当該補助磁性層の磁化方向を一方向に整列した効果が残るように、当該補助磁性層の面内方向に保磁力を有するものを用いた。
【0012】
該磁化アライナーは、永久磁石を用いて構成する方法と、電磁石またはコイルを用いる方法とがある。電磁石あるいはコイルを用いる場合は、必要なときのみ磁界を印加することができ、また、その磁界の大きさを通電する電流により制御することができる。また、必要に応じて交流磁界を発生させることも可能である。一方永久磁石を使用する場合は、配線や電気回路などが不要であり磁気ヘッド全体の構成が簡便になる。
【0013】
該磁化アライナーを永久磁石にて構成する場合、用いる磁性体は実際的には磁気記録媒体上に数Oe〜数百Oe程度の磁界を発生可能であれば有効であるので、任意の硬質磁性材料から選択して使用することができる。たとえばアルニコ磁石、FeCrCo磁石、フェライト磁石などを用いることができる。アルニコ磁石はAl:6〜13wt%、Ni:13〜28wt%、Co:0〜42wt%、Ti:0〜10wt%、Cu:2〜6wt%、残部Feといった組成で構成される磁石であって、さらにSi、Nbなどの元素を添加してもよい。FeCrCo磁石はCr:25〜35wt%、Co;10〜25wt%、残部Feといった組成で構成される。鋳造法や粉末冶金法などにより製造できるが、真空製膜法により薄膜化して形成してもよい。また、熱処理中に磁界を印加して磁気異方性を付与することも可能である。硬質フェライト磁石の組成は示性式MO・xFe2O3で表されるマグネトプラムバイト六方結晶である。MはBa、Srおよび/またはPbでありx=4.5〜6.5である。この磁石は主にフェライト粉末を圧縮・焼結して製造する。その圧縮の際に所定の方向に磁界を印加して磁気異方性を付加することも可能である。また以上の材料の粉体を有機質バインダーで凝集させた、いわゆるボンド磁石を用いることも可能である。
【0014】
本発明にかかる磁気アライナー付き垂直磁気ヘッドの典型的な構成例について説明する。この構造の模式的俯瞰図および各方向からの透視断面図を図1〜6に示す。スライダー材としてAl2O3TiCを用いて、その上にGMR素子5をシールド6,7で挟んだ構造で再生用ヘッド部2を構成する。上部シールド6は記録用ヘッド1の補助磁極を兼ねている。その後部に記録インダクティブヘッドの主磁極が形成する。いわゆる複合型の磁気ヘッドである。記録用磁気ヘッド1は典型的には、2.1Tの高飽和磁束密度を有する軟磁性層を用いた単磁極型書き込み素子を有する薄膜磁気ヘッドを用い、ギャップ長は0.2μm〜0.02μmが望ましい。再生用磁気ヘッド2は典型的には、巨大磁気抵抗効果を有するデュアルスピンバルブ型のGMR(Giant Magneto−Resistive)磁気ヘッドを用いる。再生用磁気ヘッドの再生シールド間隔は、0.2μm〜0.02μmが望ましい。この記録再生用ヘッド部は従来の磁気ヘッド製造プロセスで作製することができる。すなわち薄膜プロセスにより記録再生用磁気ヘッドを形成し、次に加工プロセスによりブロックに切断し、該スライダーの媒体に対向する面にはABS(Air Bearing Surface)の形状の加工をする。
【0015】
このスライダー4の加工工程において磁化アライナー3を配置することが工程上好適である。すなわち、該磁化アライナー3を配置する凹部を形成し、そこへ永久磁石、電磁石またはコイルの磁化アライナー3を接着する。該磁化アライナー3の表面は樹脂などで保護のため被覆してもよい。該磁化アライナー3はスライダー4の媒体対抗面と非対向面のいずれに配置することも設計可能である。媒体に対向しない面に磁化アライナーを配置するほうが媒体から離れた位置に磁化アライナー3を配置できるので、媒体に対してより均一な磁界を印加できるように設計しやすく、またABS形状加工と独立に加工できるので、より好適である。
【0016】
(実施例1)
本発明の磁化アライナーを用いて磁化を一方向にそろえるべき補助磁性層は、典型的には垂直磁気記録媒体に用いられる軟磁性下地層である。この軟磁性下地層は記録時に、単磁極ヘッドの記録磁束を効果的に磁気記録媒体に印加させる働きを持つ。再生時には軟磁性下地層の記録層側の界面に記録層の基板側面の磁極に対応する反対の磁極が発生して該記録層基板側磁極をキャンセルする。これにより、記録層のヘッド側界面の磁極から発生する磁束を再生ヘッドが効果的にとらえて高S/Nで再生できるよう作用する。そしてその際に該軟磁性下地層の深層部(基板側)の磁化は一方向にそろって磁壁が存在しないいわゆる単一磁区の状態であることが再生雑音を低減するために望ましい。磁壁が存在するとその部分から磁束が漏洩して再生信号にノイズとして重畳してしまう。しかし、実際の媒体においては、軟磁性下地層を媒体全面に渡りそのような単一磁区にすることは非常に困難である。
【0017】
本発明にかかる第一の実施例においては、上述の磁化アライナーにより軟磁性下地層の磁化方向を一方向にそろえ、垂直磁気記録媒体の記録再生ノイズを低減した例を示す。これをPdとCoの人工格子膜を記録層とした垂直磁気記録媒体に対して適用した例について説明する。
【0018】
なお、本明細書において、用語「人工格子」とは、複数の異なる物質を単原子或いは数原子の厚さで一方向に互いに周期的に積層して得られる構造を意味する。かかる人工格子構造を有する膜のことを人工格子膜或いは交互積層多層膜とも呼ぶ。これを本明細書ではCo/Pdのように表記する。
【0019】
(Pd/Co垂直磁気記録媒体)
本発明に適用する磁気記録媒体の記録層としては、垂直磁気記録が可能な任意の材料を用いることができる。たとえばCoCr系多結晶膜や、CoとPdを交互に多層積層した人口格子膜などが好適である。人工格子膜を用いる例としては、主として白金族元素とCoとを数原子程度または単原子程度の厚みで交互に積層した人工格子膜が好適である。白金族元素は例えばPt及びPdの少なくとも一方を用いうる。CoCr系の記録層材料の例としてはCoCrPt、CoNiCr、CoCrTa等が挙げられるが、高い保磁力が得られるという点でCoCrPtが特に好ましい。
【0020】
図7に、本発明を実施した磁気記録媒体の概略断面図を示す。磁気記録媒体は基板11上に、接着層12、軟磁性下地層13、シード層14、記録層15、保護層16及び潤滑層17を備える。かかる積層構造を有する磁気記録媒体を次のような方法により製造した。
【0021】
本発明の磁気記録媒体の基板11は、例えば、アルミニウム・マグネシウム合金基板、ガラス基板、グラファイト基板などの非磁性基板を用い得る。本実施例ではガラス基板を用いた。
【0022】
(1)接着層の形成
まず、直径65mmのガラス基板11を用意し、ガラス基板11上に連続スパッタ装置により、接着層12として厚さ5nmのTiを製膜した。この層は基板とその上に積層される磁性薄膜との密着性を向上させるためのものでありSi、Crなどを用いても良い。
【0023】
(2)軟磁性下地層の形成
本実施例の磁気記録媒体では、基板11とシード層14との間に軟磁性下地層13を備える。この層が補助磁性層に相当する。軟磁性下地層13は、磁気ヘッドからの磁界を記録層15に効率的に印加するため、飽和磁束密度の高い軟磁性の面内磁化膜を用いる。材料としては、例えばFe中にTa、Nb、Zrのうちより選ばれる少なくとも1種類の元素の窒化物あるいは炭化物を分散させた微結晶構造を有する軟磁性膜が好適である。またその他に例えば、CoZrを主体とし、これにTa、Nb、Tiのうちより選ばれる少なくとも1種類の元素を含んだ合金であってもよい。これらの軟磁性膜は1.5T以上の大きな飽和磁束密度を有するため高密度記録に適している。具体的な材料としては、高透磁率を有するNiFe、CoTaZr、CoNbZr、FeTaC等を用いることができ、これらの材料からなる磁性層は、膜厚1000nm以下でスパッタ法や蒸着等によって形成する。また、Co及びFeの少なくとも一方を主体とし、これにB及びCの少なくとも一種の元素を含む合金を用いて形成することも好適である。
【0024】
本実施例では接着層12上に軟磁性下地層13としてCoB膜を製膜した。組成比はCo8515として膜厚を200nmとした。この軟磁性下地層はArガス雰囲気中で合金ターゲットを用いてDCマグネトロンスパッタ法により形成した。本発明に用いる磁気記録媒体においては、補助磁性層が磁化アライナーによって一方向磁化される方向に磁化容易軸を有することが好適であるとともに、当該磁化方向に保磁力を有することが好適である。本実施例においては補助磁性層に相当する当該軟磁性下地層の製膜時に、媒体基板の半径方向に放射状に約50〜150Oeの磁界を印加した。この製法により該軟磁性下地層は面内方向の半径方向に磁化容易軸を有するとともに、該方向に約5Oeの保磁力をもつ磁性膜とした。
【0025】
(3)シード層の形成
次いで、シード層14を成膜した。シード層はPd元素と、Si、B、C及びZr等からなり、特にPdとSi、または、PdとBとから形成されて、その膜厚が1nm〜30nmの範囲内にあることが望ましい。本実施例ではPd68Si32のシード層14を膜厚7nmで成膜した。
【0026】
(4)記録層の形成
本実施例の磁気記録媒体は記録層15として人工格子構造を有する垂直磁化膜を用いた。記録層はシード層上に直接形成され、主として白金族元素とCoとから構成され、例えばPt及びPdなどの白金族元素とCoとを数原子または単原子程度の厚みで交互に積層した交互積層多層膜である。0.05nm〜0.5nmの範囲から選択された膜厚を有するCo層と、0.5nm〜2nmの範囲内から選択された膜厚を有するPd層とを交互に積層したCo/Pd人工格子膜、あるいは、0.05nm〜0.5nmの範囲内から選択された膜厚を有するCo層と、0.1nm〜2nmの範囲内から選択された膜厚を有するPt層とを交互に積層したCo/Pt人工格子膜などが好適である。これらの記録層はPd層あるいはPt層にSi、Zr、CまたはBなどの添加元素を含んでもよい。記録膜の膜厚としては、磁気特性の点から5nm〜60nmが好適である。記録層は、基板表面に対して垂直な方向で測定したときの保磁力が1.5〔kOe〕〜10〔kOe(キロエルステッド)〕であることが望ましい。
【0027】
本実施例ではArガス中で、CoターゲットとPdターゲットのシャッターを交互に開閉しながらDCスパッタして、Co層とPd層とが交互に積層された人工格子構造の記録層6を形成した。Co層の1層あたりの膜厚は0.13nm、Pd層の1層あたりの膜厚は0.97nmであり、Pd層とCo層の積層数は、Pd層が24層であり、Co層が23層とした。
【0028】
(5)保護層、潤滑剤層の形成
記録層の保護をする層として、例えば、非晶質炭素、ケイ素含有非晶質炭素、窒素含有非晶質炭素、ホウ素含有非晶質炭素、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム及び立方晶窒化ホウ素などを用いることができる。保護層の上には、耐摺動特性を良好なものにするために、潤滑剤を塗布することができる。潤滑剤としては、主鎖構造が炭素、フッ素、酸素の3つの元素からなるパーフルオロポリエーテル系高分子潤滑剤を用いる。或いは、フッ素置換アルキル化合物を潤滑剤として用いることもできる。安定な摺動と耐久性を有する材料であれば、他の有機系潤滑剤や無機系潤滑剤を用いてもよい。潤滑剤層の膜厚としては、平均値として0.5nm〜3nmが適当である。
【0029】
本実施例においては記録層15上に、アモルファスカーボンからなる保護層16を膜厚4nmにて形成した。そして保護層16上に潤滑剤層17としてパーフロロポリエーテル系潤滑剤層をディップ法により膜厚1nmで形成した。こうして図7に示す積層構造を有する磁気記録媒体を作製した。
【0030】
(磁化アライナー付き磁気ヘッド)
該磁化アライナーを搭載した磁気ヘッドの断面模式図を図1〜4に示す。磁気ヘッドは、磁気記録媒体に情報を記録するための記録用磁気ヘッド1と、磁気記録媒体に記録された情報を再生するための再生用磁気ヘッド2と、補助磁性層の磁化方向を一方向にそろえるための磁化アライナー3から構成した。本実施例では磁化アライナー3の発生する磁界が、記録トラックに対して直行する方向(磁気記録媒体の半径方向)に向く構成とした。本実施例で用いた垂直磁気記録媒体の軟磁性下地層は面内半径方向に磁化容易軸を持つため、その磁化方向を一方向に整列させるにあたっては半径方向に一方向磁化させることが好適である。また、該磁化アライナー3は、スライダー4の媒体に対向しない側の面に組み込む形で配置した。そしてその印加磁界は、少なくともその垂直成分の最大値が磁気記録媒体の記録層の垂直方向保磁力より小さく、かつ面内成分の最大値が補助磁性層の面内方向保磁力より大きくなるように、磁化アライナーの材料、形状、配置等を設計した。スライダー材としてAl2O3TiCを用いて、磁化アライナーを配置する凹部はスライダー形状の加工工程において穿孔した。その位置は記録再生への影響が小さくなるように、記録再生ヘッドとの位置を設計した。そこへ磁化アライナーを記録トラックを横切る方向を長手方向すなわち磁化方向として配置し接着した。磁化アライナー本体は、上述のようにアルニコ、フェライトなどの永久磁石材料を直方体状に加工し、その長手方向に磁化させた。本実施例の媒体では軟磁性下地層の面内方向の保磁力が1〜5Oe程度であるので、磁化アライナーの発生する磁界は該軟磁性下地層の位置において10Oe以上あれば、種種マージンを含めても十分な大きさである。磁化アライナーの形状は直方体、円柱型などが典型的なものであるが、媒体の補助磁性層に有効に磁界を印加できるよう任意に構成することができる。たとえば端部を丸く加工してエッジ部の磁束集中をさけることなども可能である。
【0031】
本実施例では磁化アライナーのサイズを長さ100μm×30μm×30μmとした。その材質はIEC(国際電気標準会議)Publicationの404−8−1の規格に示される硬質フェライト磁石を用いた。磁化アライナーの位置は記録再生用磁気ヘッド部から水平方向距離として100〜500μmが適当であった。本実施例では300μmとした。これにより記録トラックの中心部で補助磁性層にかかる面内方向の最大磁界を約50Oeとして設計した。
【0032】
(磁気記録装置)
本発明の第1の実施態様の磁化アライナーを搭載した磁気ヘッドと、上述のCo/Pd垂直磁気記録媒体と、上記磁気記録媒体を上記磁気ヘッドに対して駆動するための駆動装置等を備えた磁気記録装置を以下のとおり構成した。
【0033】
前述の磁気記録媒体の製造工程により複数枚の磁気記録媒体を作製し、それらを図9に模式的に示すような構造の磁気記録装置20に組み込んだ。磁気記録装置20は、磁気記録媒体21と、磁気記録媒体を回転駆動するための回転駆動部(スピンドル)29と、磁化アライナーを搭載した磁気ヘッド22と、磁気ヘッド22を磁気記録媒体上で所望の位置に移動させる磁気ヘッド駆動装置(アクチュエーター)24とを備える。その他に、サスペンション23、駆動回路25、記録再生回路26、位置決め回路27、インターフェース制御回路28等を備える。
【0034】
磁気ヘッド22はサスペンション23により保持されており、サスペンション23はアクチュエータ24と駆動回路25とからなる磁気ヘッド駆動系により制御される。サスペンション23及び駆動回路25は、位置決め回路27に接続されている。位置決め回路27はインターフェース制御回路28に接続されており、インターフェース制御回路28は記録再生回路26に接続されている。また、記録再生回路26はサスペンション23を通って磁気ヘッド22に接続されている。
【0035】
磁気ヘッド22の単磁極型書き込み素子は、情報記録時に磁気記録媒体に記録するデータに応じた磁界を印加して磁気記録媒体に情報を記録することができる。磁気ヘッド22のGMR素子は、磁気記録媒体からの漏洩磁界の変化を検出して磁気記録媒体に記録されている情報を再生することができる。
【0036】
かかる構成の磁気記録装置20において、複数の磁気記録媒体21はスピンドル29により同軸回転されており、磁気ヘッドの主磁極表面と磁気記録媒体の表面との距離(磁気的スペーシング)が7nmになるように制御した。
【0037】
(記録再生特性)
本発明の磁気記録装置を用いて記録再生特性を測定した結果を示す。上記スピンドルを駆動し、磁気的スペーシングを7nmに維持しながら、線記録密度1000kBPI、トラック密度150kTPIの条件にて情報を記録し、記録した情報を再生して記録再生特性を評価したところ、トータルS/Nとして実施例1の媒体で27.1dBを得た。更に、面記録密度100〜500ギガビット/平方インチの記録密度にて記録再生することができた。比較例として、本実施例と同じ構成の磁気記録装置で、本発明による磁化アライナーのみ搭載していない磁気ヘッドを用いた場合のS/Nを同じ測定条件で測定した結果は25.4dBであった。これは主にノイズが低減された効果である。このように本発明の磁気記録装置は、本発明第1の態様の磁気アライナーを搭載した磁気ヘッドを備えるので、記録した情報を高いS/Nで再生することが可能である。
【0038】
なお、上記S/Nは下記式を用いて求めた。
S/N=20log(S0−p/Nrms
式中、S0−pは、ゼロ点からピークまで(zero to peak)の再生信号振幅の半分の値であり、Nrmsはスペクトルアナライザーにより測定したノイズの振幅の平方自乗平均値である。
【0039】
(実施例2)
この本発明の第2の実施例の磁気記録媒体は、基板上に積層された、基板面に平行な方向に磁化容易軸を有しかつ少なくとも面内方向に保磁力を有する面内磁化層と、該面内磁化層の上に積層された基板面に垂直な方向に磁化容易軸を有する記録層とを備える媒体である。本発明の磁化アライナーによって一方向に磁化を整列させる補助磁性層は当該面内磁化層である。補助磁性層の一方向磁化の効果は、このように補助磁性層である該面内磁化層が保磁力を有する場合により有効である。すなわち面内磁化層が面内方向の保磁力を有する媒体では、記録膜と当該面内磁化層との間に磁気的結合により面内磁化層の表面部の磁気モーメントのみ記録層の磁化方向に従い、かつ記録層の磁化の影響を受けない深層部の磁気モーメントは本発明の磁化アライナーによって一方向に磁化することができる。
【0040】
そして当該磁気モーメントは一方向に磁化されたのち該面内磁化層の保磁力によってその磁化方向を保持することができ、これにより当該面内磁化層内に磁壁が発生することを抑制して記録再生ノイズの低減を図ることができる。当該面内磁化層の保磁力は1Oe以上であり、かつ組み合わせる当該磁化アライナーの発生する磁界の大きさよりも小さいことが必要である。
【0041】
上述のように補助磁性層として少なくとも面内方向に保磁力を有する面内磁化層とを積層した構成をとると、磁気記録媒体としては記録磁区の熱的な安定性を向上できる。記録膜と当該面内磁化層との間に磁気的結合により面内磁化層の界面近傍の磁気モーメントは記録層の磁化方向に強く従い、それが該面内磁化層の深層部で該面内方向の保磁力で保持固定される。その結果、記録層の磁化反転を抑制でき、媒体としての熱安定性を高める効果がある。その一方、該面内磁化層の下層部の磁化方向はランダムな状態となり、記録再生ノイズの原因となる。そこで本実施例においては磁化アライナーと組合せる構成をとることにより、当該面内磁化層の磁化方向を一方向に整列させて該ノイズを抑制する。
【0042】
当該面内磁化層の保磁力の大きさとして、まず下限は1Oe以上が少なくとも必要である。これは地磁気が約0.5Oe常に存在しており、その擾乱を含めると1Oe以上の保磁力を保有すると、地磁気によって乱されることなく、面内磁化層の磁化方向を安定に保つことができる。また、上限は磁化アライナーの発生する磁界によって、該面内磁化層の磁化方向をそろえうるように、該磁化アライナーの発生磁界より低い保磁力であることが、必要な構成要件である。該磁化アライナーの発生磁界は記録層の磁化を反転したり乱したりしないために、その最大値が該記録層の保磁力よりも小さいことが必要要件である。そのため各磁気特性の関係は次のとおりとなる。
記録層の垂直方向保磁力>磁化アライナーの発生磁界の垂直方向最大成分、磁化アライナーの発生磁界の面内方向最大成分>面内磁化層の面内方向保磁力>1Oe
【0043】
実際的には記録層の垂直方向保磁力と、面内磁化層の面内方向保磁力は2桁程度異なるので、垂直と面内の方向を混在させて規定しても設計上問題はなく記録層の垂直保磁力>磁化アライナーの最大発生磁界>面内磁化層の面内保磁力>1Oe
この式の大小関係で設計を行なうことが好適である。
【0044】
さらに実際的な磁気記録媒体としては数値的に、記録層の垂直方向保磁力は2kOe以上あり、面内磁化層の面内保磁力は1〜100Oeの範囲が設計しやすい。よって該磁化アライナーの最大発生磁界は面内磁化層の保磁力にあわせて10〜1,000Oeで設計すると各設計マージンを確保しやすく好適である。
【0045】
上述のように面内方向に保磁力を有する面内磁化層を有する磁気記録媒体と本発明の磁化アライナーとの組合せとして、電磁石式または空芯コイル式のものを用いて磁界の印加をオンオフ可能な構成にすることが好適である。本構成において、該磁気記録媒体に記録を行なった後に当該磁化アライナーに通電して磁界を発生させながら該記録領域をトレースし、該面内磁化層の磁化を一方向の磁化状態する。すると該面内磁化層が面内方向に保磁力を有するので、一度一方向に磁化した後はその状態が保たれ、その後該磁化アライナーを用いなくとも低ノイズ状態での再生を実現することができる。この構成の場合、該磁化アライナーは通常の記録再生時には磁界を発生しないので、記録再生ヘッドに対する干渉などの影響もなくすることができる。
【0046】
また、該磁化アライナーに通電してトレースした後、記録信号を再生してその信号レベルやノイズレベルなど信号品質を測定する。そして次に通電する電流を変化して発生磁界を変化させた状態で該磁化アライナーを再度トレースする。そして再度、信号レベルやノイズレベルなど信号品質を測定する。この操作を繰り返して、最も良好な状態を探索するアルゴリズムを構成することも可能である。
【0047】
図8に、本発明の第2実施例にかかる磁気記録媒体の概略断面図を示す。磁気記録媒体は基板上に、接着層、面内磁化層、記録層、保護層及び潤滑剤層をこの順で有する。面内磁化層は酸素添加PtCo合金を、記録層にはCo/Pd人工格子膜を用いた。かかる積層構造を有する垂直磁気記録媒体100を主にマグネトロンスパッタ法により形成した。
【0048】
(1)接着層の形成
まず第1実施例と同様に、直径65mmのガラス基板11を用意し、ガラス基板上に連続スパッタ装置により、接着層12として厚さ5nmのTiを製膜した。
【0049】
(2)面内磁化層の形成
本実施例にかかる磁気記録媒体の面内磁化層は、記録媒体を構成した状態で少なくとも面内方向の保磁力が1Oe以上であり、かつ本発明による磁化アライナーの発生する磁界の大きさよりも小さい保磁力を有する擬似軟磁性体をもって構成すると、記録再生特性をノイズの低い良好な状態で確保することができる。ここに述べる面内磁化層が補助磁性層に相当する。
【0050】
その面内磁化層に用いる材料としては、第一にはPt、Pd、Rh、Au、Ag、Cuの少なくともひとつの貴金属と、Fe、Co、Niの少なくともひとつの遷移金属を含む合金により構成しうる。中でもPtまたはPdとCoまたはFeを含む合金層が適している。
【0051】
また、第2の材料としては人工格子膜が好適である。例えば0.8nm〜3.0nmの範囲から選択された膜厚を有する少なくともCoを含む層と、1.0nm〜10.0nmの範囲内から選択された膜厚を有する、Pt及びPdの少なくとも一方の白金族を含む層とを交互に積層して形成したCo/PdやCo/Ptなどの人工格子膜を用いることができる。人工格子膜は一般的に、その積層周期あるいは白金族層の厚さやCo層の厚さを調整することにより、所定の磁気特性をうることができるが、前述のような積層構造にすると、該人工格子膜は面内磁化層となる。
【0052】
第3の材料として、第1実施例で述べた軟磁性下地層の材料系でその組成を調整したり、添加元素を加えたりして面内方向の保磁力を持たせる方法が好適である。つまりFe中にTa、Nb、Zrのうちより選ばれる少なくとも1種類の元素の窒化物あるいは炭化物を分散させた微結晶構造を有する磁性膜、例えばFeTaC等も好適である。また、CoZrを主体とし、これにTa、Nb、Tiのうちより選ばれる少なくとも1種類の元素を含んだ合金であってもよい。具体的な材料としては、高透磁率を有するCoTaZr、CoNbZr等を用いることができる。また、その他の材料を用いることも可能であり、例えば、NiFe、ErFeCo、GdFeCo、Co、Fe、TmFeCo、あるいはCoCr系多結晶膜等の材料を用いることができる。また、Co及びFeの少なくとも一方を主体とし、これにB及びCの少なくとも一種の元素を含む合金を用いて形成することも好適である。
【0053】
いずれの材料を用いる場合にも当該面内磁化層としての機能を持たせるために、その組成比や積層構造を制御する。すなわち磁気特性として、面内方向に磁化容易軸を有するようにし、かつその面内方向の保磁力が発生するよう調整して使用する。
【0054】
その保磁力の制御の方法としては、面内磁化層の上述の材料に対して、酸素あるいは窒素を微量に添加して調整する方法も好適である。
面内磁化層の材料としてあげた上述のような系に対して、酸素や窒素を微量に添加すると、それらの金属の酸化物あるいは窒化物の相が合金相の中に混在する状態となる。それら酸化物相や窒化物相の点が、面内方向に磁壁が移動する際のピンニングポイントとなり、保磁力を発生させる要因になるのである。よってその添加の度合いによって、保磁力の大きさを制御することが可能である。
【0055】
適正な保磁力を得るための酸素または/および窒素の添加量については次のとおりである。まず保磁力を発生させるにあたっては0.1原子パーセント以上の酸素または/および窒素を添加する必要がある。一方、7原子パーセント以下の酸素や窒素を添加すると、該面内磁化層と記録層との磁気的結合力が強くなり、本発明の目的である磁化の安定化効果が十分に得られる。よって酸素または/および窒素を合わせて0.1原子パーセント以上7.0原子パーセント以下の添加が適当である。これは上述の面内磁化層の材料について全般的に有効であった。各系においてこの濃度の範囲で酸素または/および窒素の添加を行ない、面内磁化層の保磁力が所定値となるようそれらの添加量を個々に調整する。
【0056】
記録層に人工格子膜を用い、面内磁化層にも同じ材料系の人工格子膜を用いた場合には、記録層と面内磁化層とで各人工格子膜の厚さや積層周期が異なる積層構造となる。面内磁化層は面内に磁化容易軸を有しその面内方向の保磁力が発生するようにし、その上に積層される記録層は膜面に垂直な方向に磁化容易軸を有し、その垂直方向の保磁力が1.5kOe〜10kOeである垂直磁化膜となるようにそれぞれの積層構造を制御する。
【0057】
本実施例においては接着層12上に面内磁化層18として、酸素を添加したPtCo合金膜を形成した。この合金膜は磁化容易軸が面内にありかつ保磁力を有する擬似軟磁気特性を有する。PtCo合金においてはPtとCoの組成比および製膜条件により保磁力などの磁気特性を制御することが可能である。さらに添加する酸素の量によっても制御することができる。PtCo合金の組成比としてはCo10〜70原子%および85〜100原子%の範囲にすると面内方向の保磁力は約10〜600Oeとなり、本発明の面内磁化膜として適している。本実施例においてはPtとCoのふたつのターゲットを同時に放電させる、いわゆるコスパッタ法により製膜した。スパッタガスとして分圧比0.5%の酸素を含むArを導入して製膜を行い膜中への酸素添加を行なった。その結果、原子組成比としてPt84:Co15:O(酸素)1の酸素含有合金を得た。その膜厚を100nmとして面内磁化層を積層した。また当該面内磁化層の製膜時に媒体基板の半径方向に放射状に磁界を印加した。磁界の大きさを約50〜150Oeとし、この製法により面内磁化層において面内方向のうち半径方向に磁化容易軸を有する磁性膜とした。その面内方向の半径方向の保磁力は約20Oeであった。
【0058】
(3)記録層の形成
本実施例の磁気記録媒体においても第1実施例と同様に、記録層の材質として種々の垂直磁化膜を用いることが可能であり、CoCr系多結晶膜や、主としてPdやPtなどの白金族元素とCoとを数原子程度または単原子程度の厚みで交互に多層積層した人工格子膜などを用いることができる。
【0059】
本実施例では、面内磁化層の上に、CoとPdの人工格子構造の記録層15を製膜した。記録層15の製膜では、Arガス中で、CoターゲットとPdターゲットのシャッターを交互に開閉しながらスパッタ製膜を行い、Co層とPd層とが交互に積層された人工格子構造の記録層15を形成した。Co層の1層あたりの膜厚は0.14nm、Pd層の1層あたりの膜厚は0.87nmであり、Pd層とCo層の積層数は、Pd層を24層とし、Co層を23層とした。この記録層の垂直方向の保磁力Hcは約4.5kOeであった。
【0060】
(4)保護層、潤滑剤層の形成
次いで、第1実施例と同様に記録層15上に、アモルファスカーボンからなる保護層16をDCマグネトロンスパッタ法により膜厚3nmにて形成した。そして保護層16上に潤滑剤層17としてパーフロロポリエーテル系潤滑剤層をディップ法により膜厚1nmで形成した。こうして図8に示す積層構造を有する磁気記録媒体を作製した。
【0061】
(磁化アライナー)
第2実施例において、磁化アライナーは非磁性体を芯としてこれに被覆電線を巻回したコイルを用いた。このコイルの磁化アライナーを、実施例1に記載の磁気ヘッドと同様に磁気ヘッドに対してそのスライダーの媒体に対向しない側に配置した。磁化アライナーの取り付け方向は記録トラックに対して垂直(媒体の半径方向)とした。その断面を模式的に図5〜6に示す。
【0062】
本第2の実施例においては、該磁化アライナー3を搭載した磁気ヘッドと、上述の保磁力を有する面内磁化層を積層した磁気記録媒体と、該磁気記録媒体を該磁気ヘッドに対して駆動するための駆動装置等を備えた磁気記録装置を第1の実施例と同様に構成した。
【0063】
本実施例で用いた、コイルの磁化アライナーの構造について説明する。磁化アライナーを搭載した磁気ヘッドの構造は、第1実施例とほぼ同様であり、磁化アライナーの形状・大きさが異なるため、スライダーの磁化アライナー用穿孔部の大きさのみ異なっている。該コイルは記録トラックに直行する方向(媒体半径方向)に被覆電線の巻回中心軸を有するように配置した。これにより磁化アライナーが発生する磁界は媒体上で記録トラックに直行する方向に印加される。芯材として直径500μmのSiO2の円筒状部材を用い、直径20μmの絶縁材被覆電線を99ターン(33ターン×3層)巻回した。このようにして長さ660μm×外径620μmのコイルとした。このコイルに250mAの直流電流を通電して、磁気記録媒体の面内磁化層上に約35Oeの面内方向磁界を媒体半径方向に印加可能な構成とした。
【0064】
(記録再生特性)
以上のとおり、本実施例では面内方向に保磁力を有しかつ半径方向に磁化容易軸を有する面内磁化層を有する磁気記録媒体と、コイル型の磁化アライナーを搭載した磁気ヘッドを用いて磁気記録装置を構成した。本装置の操作としては記録終了後、再生を開始する前または再生時に当該磁化アライナーに通電して、少なくとも磁気記録媒体の新規記録部分を含む領域に対して、面内方向、そのうち半径方向の磁界を印加する。磁気記録媒体は駆動装置により回転させる。本実施例における磁化アライナーは記録トラックに対して垂直方向に磁界が印加されるように配置されているので、以上のように磁界を印加すると、当該面内磁化層の磁化は半径方向に磁化することができる。磁化アライナーでトレースした後、該磁化アライナーの通電を停止して磁界の印加を停止する。その後、該面内磁化層の磁化は、該面内磁化層自身の保磁力によりその方向を保持される。しかるのちに再生を行なえば、低ノイズ状態での再生が可能となる。
【0065】
記録した直後に磁化アライナーによるトレースを待たず、再生しなければならない場合には、磁界アライナーに通電して磁界を発生しつつ再生することも可能である。いずれも本実施例の構成においては記録時に磁化アライナーを作動させず磁界の印加を停止できるので、記録時に該磁化アライナーの発生する磁界による影響を全くなくすることができる。よって磁化アライナーを含めた磁気ヘッドの磁気回路設計が簡便になる利点がある。
【0066】
この磁化アライナーを搭載した磁気ヘッドを用いて記録再生特性を測定した結果を示す。上記磁気記録装置20を駆動し、磁気的スペーシング(磁気ヘッド22の主磁極表面と磁気記録媒体21の記録層表面との距離)を7nmに維持しながら、線記録密度1000kBPI、トラック密度150kTPIの条件にて情報を記録し、記録した情報を再生して記録再生特性を評価したところ、第2実施例の構成でトータルS/Nとして27.3dBを得た。更に、面記録密度100〜500ギガビット/平方インチの記録密度にて記録再生することができた。比較例として、本実施例と同じ構成の磁気記録装置で、本発明による磁化アライナーのみ搭載していない磁気ヘッドを用いた場合のS/Nを同じ測定条件で測定した結果は26.1dBであった。本実施例の磁気記録再生方式を適用すると、S/Nが向上していることがわかる。
【0067】
本実施例においては熱安定性を向上させる目的で保磁力を有する面内磁性層を積層した例であるが、本発明の主旨は面内方向に面内方向に保磁力を有する補助磁性層を積層した磁気記録媒体に対して磁化を一方向化する磁化アライナーを組み合わせた構成をとることにある。従って、他の目的の補助磁性層であっても上述の規定の面内方向保磁力を有するものであればその効果を発揮することが可能である。たとえば第1実施例で述べた軟磁性下地層において製膜プロセスや材料元素を調整することにより、面内方向に保磁力を持たせる構成をとることによっても同様の効果をうることが可能である。
【0068】
なお、上述の実施例において磁化アライナーは、その印加磁界が記録トラックに直行する方向(半径方向)となる配置の例を示したが、この磁化アライナーは記録トラックに対して平行方向(円周方向)に磁界を印加可能な配置することも可能である。この場合、補助磁性層の磁気モーメントは円周方向につながって端部を持たない円環状態となり、磁極の存在しない単一磁区にすることができる。磁極が存在しないということは補助磁性層から不要な磁束が発生することがなく、それに起因するノイズが解消される。また、磁極が存在しない状態では反磁界が発生しないので、該単一磁区を安定に保つことができる。磁化アライナーの発生磁界を記録トラック方向に対して平行にすることの利点はこれらの点にある。この場合、軟磁性下地層などの補助磁性層の磁化容易方向は磁界方向と同じく円周方向すなわち記録トラックに平行な方向であることが好適である。いずれの場合も磁化アライナーの磁界印加方向が補助磁性層の磁化容易軸方向となるように構成することが好適である。
【0069】
実施例においては、磁気記録媒体として、磁気ディスク(ハードディスク)を例に説明したが、本発明はフレキシブルディスク、磁気テープ、磁気カードなど各種記録媒体において補助磁性層を用いた場合にすべて適用できる。また、磁気記録媒体として垂直磁気記録媒体を例に説明したが、面内磁気記録媒体の場合も記録層のほかに補助磁性層を有する場合はその層内に発生する磁壁により記録再生時のノイズ源となるため、本発明の構造の適用によりノイズ低減の効果をうることが可能である。
【0070】
【発明の効果】
本発明は、磁気記録媒体に対する記録再生方法であって、該磁気記録媒体は少なくとも記録情報を担持するための磁気記録層と、補助磁性層とを保持する磁気記録媒体であって、該磁気記録媒体に対して少なくとも記録または/および再生を行なう前に、該記録または/および該再生を行なう位置の該補助磁性層の磁化方向を所定の方向に磁化するプロセスを経て該記録または/および該再生を行なう磁気記録再生方法を開示するものである。
【0071】
これにより当該補助磁性層内の磁壁から浮遊する磁束を抑制し、記録再生時のS/Nを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明第1の実施例にかかる磁気ヘッドの俯瞰模式図である。
【図2】本発明第1の実施例にかかる磁気ヘッドの記録トラックに平行方向の断面模式図である。
【図3】本発明第1の実施例にかかる磁気ヘッドの平面投射模式図である。
【図4】本発明第1の実施例にかかる磁気ヘッドの記録トラックに垂直方向の断面模式図(図2、図3の一点鎖線における断面)である。
【図5】本発明第2の実施例にかかる磁気ヘッドの記録トラックに平行方向の断面模式図である。
【図6】本発明の第2実施例にかかる磁気ヘッド、平面投射模式図である。
【図7】第1実施例で用いた磁気記録媒体の断面模式図である。
【図8】第2実施例で用いた磁気記録媒体の断面模式図である。
【図9】本発明の磁気記録装置である。
【図10】磁区の間に磁壁が形成された模式図である。
【図11】記録再生時のノイズを示す模式図である。
【図12】本発明の磁化アライナー付き磁気ヘッド用いることにより、ノイズ低減が図れた様子を示す模式図である。
【符号の説明】
1 磁気ヘッド
2 再生ヘッド
3 磁化アライナー
4 スライダー
5 GMR素子
6 上部シールド膜(下部磁極)
7 下部シールド膜
8 上部磁極
11 基板
12 接着層
13 軟磁性層
14 シード層
15 記録層
16 保護層
17 潤滑層
18 面内磁化層
20 磁気記録装置
21 磁気記録媒体
22 磁気ヘッド
23 サスペンション
24 アクチュエーター
25 駆動回路
26 記録再生回路
27 位置決め回路
28 インターフェイス制御回路
29 回転駆動部(スピンドル)

Claims (7)

  1. 磁気記録媒体に対する記録または/および再生方法であって、該磁気記録媒体は、少なくとも記録情報を担持するための磁気記録層と、補助磁性層とを保持する磁気記録媒体であって、該磁気記録媒体に対して少なくとも記録または/および再生を行なう前に、該記録または/および該再生を行なう位置の該補助磁性層の磁化方向を所定の方向に磁化するプロセスを経て該記録または/および該再生を行なう磁気記録再生方法。
  2. 請求項1に記載の磁気記録または/および再生方法であって、少なくとも記録または/および再生を行なう前に、該補助磁性層の該磁化プロセスの磁化方向が、該補助磁性層の磁化容易軸方向であることを特徴とする磁気記録再生方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の磁気記録または/および再生方法であって、該磁気記録媒体の該補助磁性層が、該磁化プロセスの磁化方向に保磁力を有する磁気記録媒体に対して、少なくとも記録または/および再生を行なう前に、該記録または/および該再生を行なう位置の該補助磁性層の磁化方向を所定の方向に磁化するプロセスを経て該記録または/および該再生を行なう磁気記録再生方法。
  4. 少なくとも記録情報を担持するための磁気記録層と、補助磁性層とを保持する磁気記録媒体に対し、記録または/および再生を行なう磁気ヘッドであって、該磁気記録層に対して記録または/および再生を行なうための記録再生手段と、該補助磁性層の磁化方向を所定の方向に磁化するための外部磁界印加手段とを具備し、該外部磁界印加手段は、該磁気記録媒体に対して少なくとも記録または/および再生を行なう前に、該記録または/および該再生を行なう位置の該補助磁性層の磁化方向を所定の方向に磁化するための外部磁界印加手段であることを、特徴とする磁気記録再生用の磁気ヘッド。
  5. 磁気記録再生装置であって、少なくとも記録情報を担持するための磁気記録層と、補助磁性層とを保持する磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に対して記録または/および再生を行なうための手段と、該磁気記録媒体に対して少なくとも記録または/および再生を行なう前に、該記録または/および該再生を行なう位置の該補助磁性層の磁化方向を所定の方向に磁化するための外部磁界印加手段とを、保有する磁気記録再生装置。
  6. 少なくとも記録情報を担持するための磁気記録層と、補助磁性層とを保持する磁気記録媒体に対し、記録または/および再生を行なう磁気ヘッドであって、該磁気記録層に対して記録または/および再生を行なうための記録再生手段と、該補助磁性層の磁化方向を所定の方向に磁化するための外部磁界印加手段とを具備し、該記録再生手段と該外部磁界印加手段は、物理的に隔離されて配置され、更に、記録再生時における該磁気ヘッドの該磁気記録媒体に対する相対移動方向において、該外部磁界印加手段が、該記録再生手段よりも先行する位置に配置されていることを特徴とする磁気記録再生用の磁気ヘッド。
  7. 請求項6記載の磁気ヘッドを搭載したことを特徴とする磁気記録再生装置。
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