JP3867351B2 - 垂直磁気記録媒体及びそれを用いた磁気記録再生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータの補助記憶装置などに用いる磁気記録再生装置及びそれに用いる磁気記録媒体に係る。
【0002】
【従来の技術】
情報化時代の進行により、日常的に扱う情報量は増加の一途を辿っている。これに伴い、磁気記録装置に対する高記録密度化と大容量化の要求が強くなっている。
【0003】
磁気記録を高密度化していった場合、記録ビット当たりの媒体面積が小さくなるため、再生出力が低下し、再生が困難になる。この問題を解決するため、記録と再生を別のヘッドで行い、再生用ヘッドとして高い感度を持つ磁気抵抗効果を利用したヘッドを用いる方式が実用化されている。さらに、高密度化を進めるために、より高い感度を持つ巨大磁気抵抗効果を利用したヘッドも検討されている。このような高感度の再生ヘッドを用いることにより、再生出力は大きくできるが、同時にノイズも増幅してしまい、ノイズの大きな媒体を用いた場合には、記録された情報の読みとりが不可能になる。したがって、高密度の記録と再生を行うための磁気記録媒体としては、媒体ノイズを低く抑えることが必須である。
【0004】
現在の磁気ディスクに用いられている面内磁気記録方式では、媒体ノイズの低減のために、結晶粒の微細化が不可欠であり、今後保磁力の確保や記録磁化状態の熱的安定性が問題になることが予想される。
【0005】
これに対して、垂直磁気記録方式は記録密度が高くなるにつれて反磁界が減少するという特徴があり、高密度に記録した場合に、記録磁化状態が安定で媒体ノイズも小さく、高密度記録に適した方式であると考えられる。ただし、垂直磁気記録方式においても、高密度に記録された情報を再生する場合には出力が小さいために、媒体ノイズの低減は必須である。垂直磁気記録媒体のノイズは、記録ビット内の逆磁区の大きさと記録ビット境界の乱れの大きさに依存すると考えられる。これらを小さくしてノイズを低減するためには、磁性膜の結晶粒径を小さくするなどして、磁化反転単位を小さくする必要がある。
【0006】
従来、垂直磁気記録媒体は連続薄膜型磁気テープを中心に研究や開発が進められており、この場合には磁性層の膜厚が100nm以上と厚く、またトラック幅の広いヘッドで記録再生を行うため、再生出力が大きく、媒体ノイズのレベルをそれほど抑える必要がなかった。これに対して磁気ディスクとして垂直磁気記録媒体を用いる場合、トラック方向にも高密度化する必要があることから、記録ビット面積は小さくなり、再生出力は非常に小さくなる。この小さな出力を高感度ヘッドにより再生することから、必然的に媒体ノイズに対する制限は厳しくなり、また出力の減衰も極力抑える必要がある。垂直磁気ディスク媒体のノイズに関する検討結果は、例えば、ジャーナル オブ マグネティズム アンド マグネティク マテクアルズ(Journal of Magnetism and Magnetic Materials)134巻304〜309頁(1994年発行)に記載されているが、CoCrTa垂直二層媒体について、90kFCIにおける媒体S/Nが23.8dB と示されており、1平方インチ当たり4ギガビット以上の高い面記録密度の記録再生は困難であると考えられ、さらなる媒体ノイズの低減が必要である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
我々の検討によると、Co−Cr−Pt磁性膜を非磁性のCo−35at%Cr下地層上にエピタキシャル成長させ、かつ膜厚を薄くすることによって磁性膜の結晶粒を微細化すれば、大幅にノイズを低減できることがわかっている。さらにこの技術を延長して、磁気記録層として残留磁化が飽和磁化の9割以上の磁性膜を用いた媒体を作製して、直流消磁状態及び低密度記録状態での逆磁区によって生じるノイズを低減することを試みた。
【0008】
ところがこのような媒体は直流消磁状態でもノイズはほとんど低下しなかった。この原因を探るために、磁気力顕微鏡により残留磁化状態を調べたところ、残留磁化の大小に関わらず媒体表面に約0.1〜0.3μmの磁化の揺らぎが観察された。十分低ノイズ化した媒体においては、この媒体表面の磁化の揺らぎが再生ヘッドの感じるノイズの主要因になっていると考えられる。
【0009】
また、低ノイズ媒体として、磁性層を非磁性層を介して積層した垂直磁気記録媒体が、特開昭60−83218 号に提案されている。この構造は結晶粒を微細化でき、媒体表面の磁化の揺らぎも小さくすることができると予想され、低ノイズ化にはたいへん有効であると考えられる。しかしながら、磁性層を単純に多層化した媒体では、磁気異方性が弱まり、またその分散も大きくなって、結果として記録磁化が不安定になると考えられる。すなわち、低密度の記録を行った場合の再生出力が時間の経過とともに減衰する現象が顕著になり、情報の長期間の保存が不可能となることが予想される。
【0010】
上述のように、垂直磁気記録媒体では低密度に記録した情報の再生出力は時間の経過とともに減衰する場合が多く、特に高密度記録に適するように媒体S/Nを十分大きくした媒体においては出力減衰の割合が大きく、情報を記録してから長期間経過した後には再生が不可能である。
【0011】
本発明の目的は、1平方インチ当たり4ギガビット以上の高密度記録に適するような、十分に高い媒体S/Nを持ち、かつ記録情報の長期間保持が可能な垂直磁気記録媒体及びそれを応用した磁気記録再生装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的の垂直磁気記録媒体は、磁気記録層として、その媒体表面側の磁化の揺らぎのサイズまたは程度が小さく、かつその内部については記録磁化が安定な程度に結晶粒が大きく、また出力が十分得られる程度に飽和磁化が大きい膜を用いることで得られる。すなわち、磁気記録層として、膜面と平行な断面で測定した結晶粒径の平均値が磁気記録層の厚み方向に分布を持ち、かつ磁気記録層における媒体表面側界面近傍の結晶粒径の平均値が磁気記録層における厚み方向の中央近傍の結晶粒径の平均値より小さい多結晶体薄膜を用いることで得られる。あるいは、磁気記録層として、飽和磁化が磁気記録層の飽和磁化の平均値より小さく、かつ膜厚が磁気記録層全体の厚さの半分より小さい磁性膜を磁気記録層の媒体表面側に有する多層構造薄膜を用いることで得られる。
【0013】
このような特徴を持つ垂直磁気記録媒体を作製するためには、磁気記録層として以下のいずれかの薄膜を用いるのが良い。CoとCrが主たる成分であり、かつCr組成が磁気記録層の平均値より大きい磁性膜を磁気記録層の媒体表面側に有する薄膜、あるいは、CoとCrとPtが主たる成分であり、かつPt組成が磁気記録層の平均値より大きい磁性膜を磁気記録層の媒体表面側に有する薄膜、あるいは、磁性層が非磁性層で分離された構造を持ち、かつ非磁性層が磁気記録層全体の厚み方向の中心より媒体表面側にのみ存在する薄膜。さらに好ましくは前記非磁性層としてTiまたはTiを主成分とする材料を用いるのが良い。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の垂直磁気記録媒体の基本的な構成図である。図1において11は強化ガラス,シリコン,カーボン,セラミックス,チタン合金,有機樹脂,Ni−P合金メッキアルミ合金基板などの非磁性基板である。12はチタンあるいはチタン合金などの下地層、または、これと磁気記録層の間にコバルトとクロムを主成分とする合金で構成される常磁性あるいは常磁性に近い磁気特性の多結晶薄膜を併せ持つ2層構造の下地層である。13はコバルトとクロムを主成分とし、例えばCo−Cr−Ta,Co−Cr−Pt,Co−Cr−Pt−Ta,Co−Cr−Nb,Co−Cr−Wなどのような強磁性薄膜を用いた磁気記録層である。14はカーボン,シリコン−カーボン,ボロン−カーボンなどの保護膜と有機系潤滑膜とから成る保護潤滑層である。
【0015】
(実験例1)
非磁性基板としては基板表面粗さRa が3nm以下の直径2.5 インチの強化ガラス製ディスクを用い、下地層,磁性層及び保護層の膜形成は直流マグネトロンスパッタ法により、以下の条件で行った。スパッタ装置内の到達真空度は1/108トール以下、放電用アルゴンガス圧力は3/103トール、投入電力は直径6インチのターゲットに対して1kWとした。下地層としては、厚さ30nmのTiまたはTi−10at%Crの単層膜、あるいはその上に厚さ20nmのCo−35at%Crを積層した2層膜を形成した。2層膜下地は磁性層の初期成長層の粒径制御に役立ち、媒体ノイズの低減と再生出力減衰の抑制に効果がある。
【0016】
磁性層としては、厚さ30nmのCo−19at%Cr−12at%Ptを形成した。保護潤滑層としては厚さ5nmのカーボン膜と厚さ5nmの有機系潤滑膜を形成した。膜形成時の基板温度は、下地層については常に260℃、磁気記録層については以下の5種類の設定を試みた。試料Aはすべて300℃、試料Bは基板側の厚さ25nmを300℃で残りの厚さ5nmを190℃、試料Cは基板側の厚さ15nmを300℃で残りの厚さ15nmを190℃、試料Dは基板側の厚さ5nmを300℃で残りの厚さ25nmを190℃、試料Eはすべて190℃とした。
【0017】
作製した磁気ディスク媒体は、スピンスタンドにおいて記録再生特性の評価を行い、媒体S/Nと再生出力の経時変化を調べた。評価の条件としては、ギャップ長0.2μm ,トラック幅1μm,巻線数20ターンの誘導電磁型ヘッドにより記録し、シールド間隔0.2μm,トラック幅0.9μmの磁気抵抗効果型ヘッドにより再生を行った。ヘッドと媒体の磁気スペーシングは40nmとした。再生出力Sは線記録密度2kFCIの孤立波出力を、媒体ノイズNは300kFCI を記録した場合の0〜50MHzの積算ノイズを測定して求め、これらの比を媒体S/Nとして評価した。また、線記録密度50kFCIの信号を、記録してから5秒後から1時間後まで再生出力を測定し、時間の対数に対してプロットして直線で近似したときの5秒後に対する1時間後の再生出力の比を求め、再生出力の経時変化の指標とした。
【0018】
結晶粒径は透過電子顕微鏡で膜面と平行な断面を観察して求めた。磁気ディスク媒体の一部分を切り出し、基板及び下地層を除去した後、磁気記録層は目的とする部分が数nmの厚みのみ残るように注意深く削り取って観察用試料とした。結晶粒が少なくとも100個以上観察できるようにいくつかの視野で像を撮り、それぞれの結晶粒の占める面積を求めて、等円直径と考えたときの直径を結晶粒径とした。
【0019】
図2及び図3に測定結果の一例を示す。図2は、結晶粒径を横軸に、その大きさの結晶粒が占める面積を全面積を1として規格化した値を縦軸にしてプロットした図である。この図からわかるように結晶粒径にはかなりの分布があり平均値を正確に求めることは難しい。この図のピークがほぼ平均粒径と考えられるが、ここではさらに正確な評価のために、この規格化結晶粒面積を積算して0.5 となる粒径を平均粒径とした。図3に、積算した規格化結晶粒面積を示した。この場合、磁気記録層の媒体表面側界面近傍部分15の平均粒径は約8.0nm ,磁気記録層の厚み方向の中央近傍部分16の平均粒径は約12.0nm と求められる。
【0020】
磁化状態の観察は磁気力顕微鏡により行った。試料は磁気ディスク媒体から切り出して保護潤滑層の一部分を削り取ったものを用い、電磁石により約15キロエルステッドの磁界を膜面垂直方向に印加したのち磁界をゼロにして、直流消磁状態を観察した。
【0021】
本実験例の5種類の垂直磁気記録媒体試料の記録再生特性と結晶粒径の測定結果を表1に示す。媒体S/Nと再生出力の経時変化の両方を考慮に入れると、記録再生特性の優れた試料は試料Bと試料Cである。これらの試料の磁気記録層は、図1における厚み方向の中央近傍部分16の平均結晶粒径に比べて媒体表面側近傍部分15の平均結晶粒径が小さくなっている。この結果から磁気記録層の媒体表面側界面近傍部分の結晶粒径を小さくすることが媒体ノイズの低減に有効であると考えられる。
【0022】
本実験例の試料Aと試料Bについて、直流消磁後の磁化状態を磁気力顕微鏡によって観察した。その結果、磁気記録層表面の結晶粒径の大きい試料Aの場合は大きなサイズの磁化の揺らぎが存在し、約0.15μm であった。これに対して、磁気記録層表面の結晶粒径の小さい試料Bの場合は磁化の揺らぎのサイズは比較的小さく、約0.09μmであった。このように媒体表面の磁化の揺らぎのサイズを小さくすることが媒体S/Nの向上に有効であると推察される。
【0023】
磁気記録層の材料として、Co−Cr−Ta,Co−Cr−Pt−Ta,Co−Cr−Nb,Co−Cr−Wなどを選び、また組成を変えて同様の比較実験を行ったところ同様の傾向を示す結果が得られた。
【0024】
【表1】
【0025】
(実験例2)
実験例1と同様の方法を用いて媒体を作製した。ただし、下地層及び磁気記録層の形成時の基板温度はすべて260℃と一定にし、磁気記録層として2種類の材料を用いて8種類の媒体を作製した。
【0026】
試料Fは飽和磁化が約410emu/cm3のCo−19at%Cr−12at%Pt磁性膜(以下19%Cr磁性膜と呼ぶ)の厚さ28nm単層を磁気記録層とした。試料Gは飽和磁化が約300emu/cm3のCo−22at%Cr−12at%Pt磁性膜(以下22%Cr磁性膜と呼ぶ)の厚さ28nm単層を磁気記録層とした。
【0027】
試料Hから試料Mまではこれら2種類の材料を積層した厚さ28nmの2層膜を磁気記録層とした。試料Hは基板側に厚さ20nmの19%Cr磁性膜を、残りの厚さ8nmを22%Cr磁性膜とした。試料Iは試料Hと同じ厚さの積層で磁性膜の材料を逆にした。試料Jは基板側に厚さ14nmの19%Cr磁性膜を、残りの厚さ14nmを22%Cr磁性膜とした。試料Kは試料Jと同じ厚さの積層で磁性膜の材料を逆にした。試料Lは基板側に厚さ8nmの19%Cr磁性膜を、残りの厚さ20nmを22%Cr磁性膜とした。試料Mは試料Lと同じ厚さの積層で磁性膜の材料を逆にした。
【0028】
これらの試料について実験例1と同様の方法で評価を行った。飽和磁化については磁気ディスク媒体より切り出した8mm角の試料片を振動試料型磁力計を用いて測定した。
【0029】
評価の結果を表2に示す。試料Hだけが他の試料と比較して、優れた記録再生特性を示している。すなわち、媒体S/Nと再生出力の経時変化の両方が他の試料に比べて優れている。この試料Hの断面構造を模式的に表したのが図4で、飽和磁化が磁気記録層全体の飽和磁化の平均より小さい磁性層を媒体表面側に持ち、しかもその膜厚は磁気記録層の半分未満であることにより、優れた磁気特性が得られている。Cr含有量が多く飽和磁化の小さい膜は磁気異方性が小さく記録磁化の安定性に欠くため、22%Cr磁性膜が磁気記録層の半分以上を占める試料は、再生出力の減衰が大きい。また、19%Cr磁性膜が媒体表面側にある試料は再生出力は大きいが媒体ノイズが非常に大きく、結局媒体S/Nとしては小さい。
【0030】
本実験例の試料Fと試料Hについて、直流消磁後の磁化状態を磁気力顕微鏡によって観察した。その結果、磁気記録層表面の飽和磁化の大きい試料Fと比較して、磁気記録層表面の飽和磁化の小さい試料Hは磁化の揺らぎの程度が小さいことが観測され、これが媒体S/Nの向上に寄与していると考えられる。
【0031】
Cr組成を変えた2種類の磁性膜を用いる代わりにPt組成が異なり飽和磁化の異なる2種類の磁性膜を用いた実施例を作製して、本実験例と同様の比較実験を行ったところ、同様の傾向を示す結果となった。また、他の組成の組み合わせや磁気記録層の膜厚についても検討したが、同様の傾向を示した。
【0032】
【表2】
【0033】
(実験例3)
実験例1と同様の方法を用いて媒体を作製した。ただし、下地層及び磁気記録層の形成時の基板温度はすべて260℃と一定にし、磁性膜はCo−19at%Cr−12at%Ptのみとした。ただし、磁性層を厚さ2nmの非磁性層によって分離した構造の磁気記録層を形成した。本実験例の垂直磁気記録媒体の断面の構造を模式的に表したのが図5である。以下に非磁性層の材料としてTiを用いた例を示す。
【0034】
作製した試料は、磁気記録層全体の厚さは30nmと一定にし、非磁性層の位置が異なっている。試料Nは比較のための非磁性層のない比較例の媒体である。試料Oは媒体表面側の磁性層が4nmの厚さで、したがって基板側は23nmの厚さである実施例の媒体である。試料P(実施例)は媒体表面側の磁性層厚さ9nm、試料Q(比較例)は14nm、試料R(比較例)は19nm、試料S(比較例)は24nmとした。
【0035】
これらの試料について実験例1と同様の方法で評価を行った。評価の結果を表3に示す。実施例の媒体である試料Oと試料Pだけが他の試料と比較して、優れた記録再生特性を示している。すなわち、媒体S/Nと再生出力の経時変化の両方が他の試料に比べて優れている。これらの試料の磁気記録層は、厚み方向の中央近傍部分56の平均結晶粒径に比べて媒体表面側近傍部分55の平均結晶粒径が小さくなっている。この結果から磁気記録層の媒体表面側界面近傍部分の結晶粒径を小さくすることが媒体ノイズの低減に有効であると考えられる。ただし、非磁性層が磁気記録層の厚み方向の中央より媒体表面側にない試料は、媒体S/Nは小さく、再生出力の経時変化も大きい。結晶粒径の小さい磁性層を磁気記録層の媒体表面側にのみ存在させることが、媒体ノイズの低減と記録磁化の安定化の両方にとって重要であると考えられる。
【0036】
【表3】
【0037】
本実験例と同様の比較実験を非磁性層として、Tiの代わりにTi−10at%Cr,Ge,Si,Al,Ru,W,Co−35at%Crなどを用いて行ったが、結果として同様の傾向を示した。ただしTiあるいはTi合金は非磁性層として用いた場合に媒体S/Nが最も大きく、媒体S/Nの向上のために好ましい非磁性層材料である。
【0038】
(実験例4)
実験例1,実験例2及び実験例3において作製した垂直磁気記録媒体の中から媒体S/Nが36dB以上の媒体を選び、これらを用いた磁気ディスク装置を作製した。その構造を図6に示す。ここで、図6(a)は装置内部の上面図、(b)は側断面図であり、61は磁気記録媒体、62は磁気記録媒体駆動部、63は磁気ヘッド、64は磁気ヘッド駆動部、65は記録再生信号処理系を示す。
【0039】
ヘッドとしては、実験例1で使用したものと同様のものを用い、ヘッドと媒体の間の磁気スペーシングは50nm以下となるように調整した。その結果、1平方インチ当たり4ギガビット以上の面記録密度での情報の記録と再生が可能であることを確認できた。これに対して、媒体S/Nが36dBに満たない媒体を用いた場合は、高記録密度での再生が困難であった。
【0040】
また、実験例1,実験例2及び実験例3において作製した垂直磁気記録媒体の中から、1時間後の再生出力が0.97 に満たない媒体を用いた場合には時間の経過にともなう再生出力の減少が顕著で、その傾向を延長して予測すると3年後には部分的に情報の読みとりが不可能になる。これに対して1時間後の再生出力が0.99の媒体は再生出力の減少はわずかであり、長期間経過した後も安定して情報の読み出しが可能である。
【0041】
再生ヘッドとして、誘導電磁型ヘッドを用いた場合には、本実験例で見られるような媒体間の媒体S/Nの差異が見られず、また高密度に記録された情報の再生も不可能であった。再生ヘッドとして、巨大磁気抵抗効果を利用したヘッドを用いた場合には、本実験例において見られた媒体S/Nの違いがより明確に現れ、本発明が有効であることが確認された。
【0042】
【発明の効果】
高密度記録に適した十分に高い媒体S/Nを持ち、かつ記録情報の長期間保持が可能な垂直磁気記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の垂直磁気記録媒体の基本的な断面の構造を示す図。
【図2】 磁気記録層の結晶粒径分布を示す図。
【図3】 磁気記録層の結晶粒径分布を積算面積で示した図。
【図4】 実験例2に記載の本発明の垂直磁気記録媒体の断面の構造を示す図。
【図5】 実験例3に記載の本発明の垂直磁気記録媒体の断面の構造を示す図。
【図6】 本発明の一実験例の磁気記録再生装置の構造を示す図。
【符号の説明】
11…非磁性基板、12…下地層、13…磁気記録層、14…保護潤滑層、15…磁気記録層の媒体表面側界面近傍部分、16…磁気記録層の媒体表面側界面近傍以外の部分、21…磁気記録層の媒体表面側界面近傍部分の結晶粒径分布、22…磁気記録層の厚み方向中央近傍部分の結晶粒径分布、31…磁気記録層の媒体表面側界面近傍部分の結晶粒径分布、32…磁気記録層の厚み方向中央近傍部分の結晶粒径分布、41…非磁性基板、42…下地層、43…磁気記録層、44…保護潤滑層、45…飽和磁化が磁気記録層全体の飽和磁化の平均値より小さい磁性層、46…飽和磁化が磁気記録層全体の飽和磁化の平均値より大きい磁性層、51…非磁性基板、52…下地層、53…磁気記録層、54…保護潤滑層、55…磁気記録層の媒体表面側の磁性層、56…磁気記録層の基板側の磁性層、57…磁性層を分離する非磁性層、61…磁気記録媒体、62…磁気記録媒体駆動部、63…磁気ヘッド、64…磁気ヘッド駆動部、65…記録再生信号処理系。
Claims (5)
- 磁気記録層が、CoとCrとPtを主たる成分とした磁性膜の多層構造薄膜であり、
Pt組成が前記磁気記録層の平均値より大きく、飽和磁化が前記磁気記録層の飽和磁化の平均値より小さく、かつ膜厚が前記磁気記録層全体の厚さの半分より小さい磁性膜を前記磁気記録層の媒体表面側に有し、
前記磁気記録層は、膜面と平行な断面で測定した結晶粒径の平均値が、前記磁気記録層の厚み方向に分布を持ち、かつ前記磁気記録層における媒体表面側界面近傍の前記結晶粒径の平均値が、前記磁気記録層における厚み方向の中央近傍の前記結晶粒径の平均値より小さい多結晶体薄膜であることを特徴とする垂直磁気記録媒体。 - 磁気記録層が、磁性膜が非磁性層で分離された構造であり、
前記非磁性層は、前記磁気記録層全体の厚み方向の中心より媒体表面側にのみ存在し、 飽和磁化が前記磁気記録層の飽和磁化の平均値より小さく、かつ膜厚が前記磁気記録層全体の厚さの半分より小さい磁性膜を前記磁気記録層の媒体表面側に有し、
前記磁気記録層は、膜面と平行な断面で測定した結晶粒径の平均値が、前記磁気記録層の厚み方向に分布を持ち、かつ前記磁気記録層における媒体表面側界面近傍の前記結晶粒径の平均値が、前記磁気記録層における厚み方向の中央近傍の前記結晶粒径の平均値より小さい多結晶体薄膜であることを特徴とする垂直磁気記録媒体。 - 前記非磁性層としてTiまたはTiを主成分とする材料を用いることを特徴とする請求項2に記載の垂直磁気記録媒体。
- 前記非磁性層としてRuを用いることを特徴とする請求項2に記載の垂直磁気記録媒体。
- 磁気記録媒体と、磁気記録媒体駆動部と、磁気ヘッドと、磁気ヘッド駆動部と、記録再生信号処理系を有する磁気記録再生装置において、
前記磁気記録媒体としてディスク状の請求項1から4のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体を用い、前記磁気ヘッドの再生部が磁気抵抗効果型磁気ヘッドまたは巨大磁気抵抗効果型ヘッドで構成されることを特徴とする磁気記録再生装置。
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