JP2005023333A - 溶鋼の二次精錬方法、二次精錬装置及び二次精錬用ランス - Google Patents
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Abstract
【課題】CAS法による溶鋼二次精錬において、取鍋底部にポーラスプラグを設けることなく溶鋼への不活性ガス吹き込みを可能にし、同時にCAS−OBによる溶鋼昇温をも可能にする溶鋼の二次精錬方法、溶鋼の二次精錬装置、及びそれに用いる二次精錬用ランスを提供する。
【解決手段】取鍋内溶鋼中に不活性ガスを吹き込む溶鋼の二次精錬方法であって、溶鋼中に浸漬したガス吹き込みランス5から溶鋼中に不活性ガスを吹き込み、溶鋼表面であって吹き込んだ不活性ガスが浮上する部分を取り囲む位置に浸漬管4を配置し、浸漬管4はその下端部を溶鋼表面に浸漬し、ガス吹き込みランス5の途中に配置した酸素ノズル7から浸漬管4で取り囲む空間24の溶鋼表面に酸素ガスを吹き付けることを特徴とする溶鋼の二次精錬方法及び二次精錬装置。
【選択図】 図1
【解決手段】取鍋内溶鋼中に不活性ガスを吹き込む溶鋼の二次精錬方法であって、溶鋼中に浸漬したガス吹き込みランス5から溶鋼中に不活性ガスを吹き込み、溶鋼表面であって吹き込んだ不活性ガスが浮上する部分を取り囲む位置に浸漬管4を配置し、浸漬管4はその下端部を溶鋼表面に浸漬し、ガス吹き込みランス5の途中に配置した酸素ノズル7から浸漬管4で取り囲む空間24の溶鋼表面に酸素ガスを吹き付けることを特徴とする溶鋼の二次精錬方法及び二次精錬装置。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、取鍋内溶鋼中に不活性ガスを吹き込む溶鋼の二次精錬方法、二次精錬装置及びそれに用いる二次精錬用ランスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
転炉等で精錬を完了した溶鋼は取鍋に移され、取鍋内溶鋼中に脱酸剤や成分調整剤としての合金を添加し、脱酸及び成分調整がなされる。転炉から取鍋への溶鋼の注入中に同時に取鍋内に合金を添加するので、溶鋼注入に伴う取鍋内の溶鋼流動により、添加した合金が溶鋼中に均一に混合される。
【0003】
取鍋内溶鋼中の合金成分範囲をさらに狭範囲に調整し、あるいはAlやCa、REM等の酸化されやすい特殊元素を歩留まりよく添加し、さらに溶鋼の清浄化を図る目的で、CAS(Composition Adjustment by Sealed Argon bubbling)設備を用いた二次精錬方法が知られている(例えば非特許文献1)。
【0004】
CAS法においては、まず取鍋内溶鋼表面に浸漬管と呼ばれる耐火構造物を浸漬する。浸漬管は円筒形状をなし、表面が耐火物で覆われ、円筒の下端部を取鍋内の溶鋼表面に浸漬する。取鍋内の溶鋼表面には転炉から排出された精錬スラグ層が形成されている。浸漬管を溶鋼表面に浸漬することにより、溶鋼表面のスラグ層が、浸漬管内部空間と浸漬管の外周部とに区分される。
【0005】
取鍋内溶鋼表面に存在する精錬スラグ層は酸化鉄を含有し、酸化性の強いスラグである。上記浸漬管を溶鋼表面に浸漬して浸漬管内部空間と外周部との間を遮断すれば、たとえ浸漬管外周部の溶鋼表面に存在するスラグ層が酸化性スラグであっても、浸漬管内部空間の溶鋼表面をスラグレスの状態にし、あるいは当該溶鋼表面に非酸化性スラグを形成することが可能になる。さらに浸漬管内部空間の雰囲気をアルゴン雰囲気などの非酸化性雰囲気とすることができる。
【0006】
CAS法においては、上記のように浸漬管内部空間を非酸化性雰囲気とした上で、取鍋の底部から溶鋼中にアルゴンガスを吹き込み、吹き込んだアルゴン気泡が溶鋼表面の上記浸漬管内部空間に浮上するように吹き込みを行う。アルゴン気泡が離脱する溶鋼表面には酸化性スラグが存在せず、雰囲気も非酸化性雰囲気であるため、アルゴン気泡浮上分離時に溶鋼が酸化されることがない。さらに、溶鋼中にアルゴンガスを吹き込むことにより、取鍋内溶鋼が攪拌される。
【0007】
このような状況において、取鍋上部から浸漬管内部空間をめがけて溶鋼に合金を添加することとすれば、合金は雰囲気中酸素あるいは溶鋼表面の酸化性スラグに接触せずに溶鋼に投入することができ、酸化ロスが少なく、かつ精度良く溶鋼中に添加することができる。AlやCa、REM等の酸化されやすい特殊元素をこの方法で溶鋼中に添加することにより、酸化ロスが少ないので添加量を削減して製造コストを低減することが可能であり、さらに高い精度で成分調整を行うことが可能になる。
【0008】
非特許文献2には、CAS法にさらに酸素付加によるAlの酸化反応熱を利用した昇温機構を有するCAS−OB法が記載されいてる。CAS法の浸漬管の上方から浸漬管内部空間の溶鋼表面に酸素ガスを吹き付ける。酸素ガスの吹き付けにはランスが用いられる。吹き付けた酸素によって溶鋼中のAlが燃焼し、溶鋼の温度が上昇する。これにより、取鍋内溶鋼温度が低すぎる場合における温度救済処理や、高温溶製鋼種の転炉吹き止め負荷低減を実現することができるとしている。燃焼で生成するアルミナの鋼の清浄性に及ぼす影響も少ないため品質面での問題もない。
【0009】
非特許文献3によると、CAS設備に上吹きランスを設置して、溶鋼へ粉体を吹き込むCAS−Inj.法も開発され、溶鋼脱硫が可能になっている。CAS設備に粉体吹き込み機能を付加したもので、上方から下降する吹き込みランスよりフラックスもしくはCa合金を溶鋼中に吹き込み、脱硫処理またはCa添加処理を実施する設備である。
【0010】
【非特許文献1】
日本鉄鋼協会編、鉄鋼便覧第3版第2巻、株式会社丸善発行、第690ページ
【非特許文献2】
鉄と鋼、第71巻(1985)、日本鉄鋼協会発行、S1086
【非特許文献3】
CAMP−ISIJ、第1巻(1988)、日本鉄鋼協会発行、第233ページ
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
CAS法において、溶鋼中への不活性ガス吹き込みは取鍋底部に設けた不活性ガス吹き出し孔から行う。不活性ガス吹き出し孔としては、取鍋底部の耐火物中に埋め込まれたポーラスプラグが用いられる。ポーラスプラグはそれ自体が高価な耐火物であり、またポーラスプラグを埋め込んだ取鍋耐火物の寿命は、ポーラスプラグを埋め込まない場合に比較して短いので、耐火物コストを増大させる原因となっている。さらに、ポーラスプラグが埋め込まれた取鍋をCAS処理以外の用途に用いると、ポーラスプラグからの不活性ガス吹き出しを行わないため、ポーラスプラグに溶鋼が浸入してポーラスプラグ詰まりを起こす原因となる。そのため、ポーラスプラグを設置した取鍋については、一度処理を終えて暖まった取鍋をCAS処理専用とせざるを得ず、取鍋回転に影響を与えるために稼働する取鍋の個数を増大する必要が生じるときがある。また、ポーラスプラグ設置取鍋をCAS専用に使用したとしてもプラグ詰まりが生じるときがあり、その際は後続のCAS処理を行うことができず、生産計画に大きな影響を及ぼす。
【0012】
CAS処理時の不活性ガス吹き込みを取鍋底部に設置したポーラスプラグを用いずに、取鍋上部から溶鋼中に浸漬する浸漬ランスを用いて行うことも考えられる。しかし、フラックス吹き込みを伴いつつ不活性ガス吹き込みを行うCAS−Inj.法は知られているものの、フラックス吹き込みを伴わずに浸漬ランスを用いて溶鋼中に不活性ガスを吹き込んだ公知例は存在せず、不活性ガス吹き出しノズル詰まりが懸念された。さらに、CAS法の浸漬管の内径は1500mm程度であり、従来から用いられているCAS−OB用の酸素吹き付けノズルと不活性ガス吹き込み用の浸漬ランスとを併用することができず、浸漬ランスから不活性ガスを吹き込もうとすると酸素ガス吹き付けによる溶鋼昇温を行うことができないという不都合が生じる。
【0013】
本発明は、CAS法による溶鋼二次精錬において、取鍋底部にポーラスプラグを設けることなく溶鋼への不活性ガス吹き込みを可能にし、同時にCAS−OBによる溶鋼昇温をも可能にする溶鋼の二次精錬方法、溶鋼の二次精錬装置、及びそれに用いる二次精錬用ランスを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1)取鍋内溶鋼中に不活性ガスを吹き込む溶鋼の二次精錬方法であって、溶鋼中に浸漬したガス吹き込みランス5から溶鋼中に不活性ガスを吹き込み、溶鋼表面であって吹き込んだ不活性ガスが浮上する部分を取り囲む位置に浸漬管4を配置し、浸漬管4はその下端部を溶鋼表面に浸漬し、ガス吹き込みランス5の途中に配置した酸素ノズル7から浸漬管4で取り囲む空間24の溶鋼表面に酸素ガスを吹き付けることを特徴とする溶鋼の二次精錬方法。
(2)酸素ノズル7は、ガス吹き込みランス5から吹き込んだ不活性ガスが浮上して溶鋼表面から離脱する部位に酸素ガスを吹き付けることを特徴とする請求項1に記載の溶鋼の二次精錬方法。
(3)取鍋内溶鋼中に不活性ガスを吹き込む溶鋼の二次精錬装置であって、該二次精錬装置はガス吹き込みランス5と浸漬管4を有し、ガス吹き込みランス5は溶鋼中に浸漬してその先端から溶鋼中に不活性ガスを吹き込むことができ、浸漬管4は溶鋼表面であって吹き込んだ不活性ガスが浮上する部分を取り囲む位置に配置してその下端部を溶鋼表面に浸漬することができ、ガス吹き込みランス5の途中には酸素ノズル7を配置し、酸素ノズル7から浸漬管で取り囲む空間24の溶鋼表面に酸素ガスを吹き付け可能であることを特徴とする溶鋼の二次精錬装置。
(4)さらに浸漬管4で取り囲む空間の溶鋼表面に合金を投入するための合金装入装置を有することを特徴とする請求項3に記載の溶鋼の二次精錬装置。
(5)溶鋼の二次精錬に用いる二次精錬用ランス5であって、該二次精錬用ランスはその先端に不活性ガスノズル6を有し、さらにランス5の途中に酸素を吹き出す酸素ノズル7を有し、ランス5を取鍋内溶鋼中に浸漬して不活性ガスノズル6から溶鋼中に不活性ガスを吹き込むことができ、酸素ノズル7から取鍋内容鋼表面に酸素ガスを吹き付けることができることを特徴とする溶鋼の二次精錬用ランス。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1に基づいて本発明の二次精錬方法及び二次精錬装置について説明する。
【0016】
本発明の二次精錬方法及び二次精錬装置において、従来のCAS法同様、取鍋内溶鋼中に不活性ガスを吹き込み、溶鋼表面であって吹き込んだ不活性ガスが浮上する部分を取り囲む位置に浸漬管4を配置し、浸漬管4はその下端部を溶鋼表面に浸漬する。浸漬管4を溶鋼表面に浸漬することにより、溶鋼表面のスラグ層3が、浸漬管内部空間と浸漬管の外周部とに区分される。
【0017】
本発明においては、溶鋼中への不活性ガス吹き込み手段として、従来のように取鍋底部にポーラスプラグを埋め込むのではなく、溶鋼中に浸漬したガス吹き込みランス5から溶鋼中に不活性ガスを吹き込む。ポーラスプラグを用いないので、取鍋耐火物を安価に製造することができ、取鍋耐火物の寿命がポーラスプラグの寿命に拘束されないので寿命を延長することができ、CAS処理専用取鍋を特定する必要がなくなるので取鍋回転に余裕が生じ、稼働する取鍋の個数を低減することができる。溶鋼中に吹き込む不活性ガスとしては、アルゴンガスが安価であり好ましい。
【0018】
本発明においては、溶鋼中に浸漬したガス吹き込みランス5から溶鋼中に不活性ガスを吹き込むに際し、従来のCAS−Inj.法のように不活性ガスとともにフラックス吹き込みを必須とするものではない。それにもかかわらず、ガス吹き込みランスのノズル詰まり発生は見られず、安定した不活性ガス吹き込みを行うことができる。
【0019】
ガス吹き込みランス5先端のノズル6からの不活性ガス吹き込みにより、取鍋内の溶鋼2中に気泡21が形成され、気泡21が溶鋼内を上昇するに従い、気泡上昇流に伴って溶鋼流23が形成される。
【0020】
本発明においては、ガス吹き込みランス5の途中に配置した酸素ノズル7から浸漬管で取り囲む空間24の溶鋼表面に酸素ガスを吹き付ける。従来のCAS−OB法のように酸素ガスを吹き付ける専用ランスを準備したのでは、本発明のように不活性ガス吹き込みランスを用いる場合、その両者を併用することが困難であった。本発明は1本のガス吹き込みランスを用い、その先端は溶鋼中に浸漬して不活性ガスを溶鋼中に吹き込むことが可能であり、ランス5の途中には酸素ノズル7を配置して溶鋼表面に酸素ガスを吹き付けることができるので、CAS法に適用することが可能になる。酸素ガスを溶鋼表面に吹き付けることにより、吹き付けた酸素によって溶鋼中のAlが燃焼し、溶鋼の温度が上昇する。これにより、従来のCAS−OB法同様、取鍋内溶鋼温度が低すぎる場合における温度救済処理や、高温溶製鋼種の転炉吹き止め負荷低減を実現することができる。
【0021】
ガス吹き込みランス5の途中に配置した酸素ノズル7は、ガス吹き込みランス5から吹き込んだ不活性ガスが浮上して溶鋼表面から離脱する部位に酸素ガスを吹き付けることとすると好ましい。不活性ガス気泡が浮上する部位においては、気泡の浮上に伴って溶鋼上昇流が存在する。従って、不活性ガス気泡離脱部位には取鍋溶鋼内部から溶鋼上昇流に伴って新たな溶鋼が常に供給され、新たな溶鋼中のAl成分が吹き付けられた酸素ガスと反応し、Al燃焼反応を効率よく行うことができる。浸漬管で取り囲む空間24の溶鋼表面にスラグ層が存在する場合、スラグ層に向けて酸素ガスを吹き付けても酸素ガスによって溶鋼中のAlを燃焼する反応を起こしにくい。これに対し、不活性ガスが浮上する部位はスラグ層が排除されて溶鋼表面が露出しているので、この部分に酸素ガスを吹き付けることにより、効率よく溶鋼中Alを燃焼させることが可能になる。
【0022】
溶鋼中に浸漬したガス吹き込みランス5の先端に配置したノズル6から横方向に不活性ガスを吹き込む場合、吹き込んだ不活性ガスが浮上しつつ経過する軌跡は、以下のSzekelyの式に従う。
d2yr/dxr 2 = 4・[g(ρl − ρg) / (ρgu0 2)]・[tan2(θc/2) / cosθ0]・[1 + (dyr/dxr)2]1/2・xr 2・C
ここで、DonaldとSingerによれば実験式として次の式が与えられている。
tan(θc/2) = 0.238・(μ/ρ)0.133
また、Cは気相の容積比で、
C = d0/d・[C+ρl/ρg・(1−C)]1/2
である。
ここにおいて、x:噴流の仮想原点からの水平距離、y:噴流の仮想原点からの垂直距離、d0:ノズル内径、yr = y/d0、xr = x/d0、g:重力加速度、ρl:液相の密度、ρg:気相の密度、ρ:噴流の密度、u0:ノズル噴き出し速度、θc:噴流の拡がり角、θ0:水平線に対するノズル噴き出し角度、μ:噴流の粘性係数、d:噴流の仮想原点からの距離xにおいて噴流軸に直角な断面での噴流径である。
【0023】
上記Szekelyの式ににおいて、浸漬ノズル先端の不活性ガス吹きだしノズル6内径がφ10.9mmでアルゴンガスを1.162Nm3/minの流量で吹き出すとき、ノズル6からの水平距離を横軸に、ノズル6からの垂直距離を縦軸にとってアルゴンガスの溶鋼中における最外径の軌跡をプロットすると、図2(b)のようになる。ランス浸漬深さ2000mm、すなわち図2(b)の縦軸のノズルからの垂直距離を2000mmとすると、図2(b)横軸のノズルからの水平距離が500mmとなり、すなわち溶鋼表面では浸漬ノズルから500mm離れた位置に最も外側の気泡が浮上分離することとなる。この数値は、実機での実際の値とほぼ合致しているが、実際の値によって補正するとより好ましい。
【0024】
ガス吹き込みランスの途中に配置した酸素ノズル7は、好ましくは当該酸素ノズル7から吹き付けた酸素ガスジェット22が上記溶鋼表面の不活性ガス浮上位置に向けて吹き付ける。酸素ガスノズルから吹き出した酸素ガスジェット22は、一般的に24°の広がり角度をもって噴出する。吹き付けた酸素ガスが浸漬管4に当たると、浸漬管4の耐火物が損傷するので好ましくない。従って、吹き付けた酸素ガスジェット22が溶鋼表面の不活性ガス浮上位置に吹き付けられ、同時に浸漬管4の耐火物には接触しないよう、酸素ノズル7と溶鋼表面との間の高さと、酸素ノズル7が鉛直方向となす角度とを適切に定めることとすると良い。図2(a)に示す例においては、気泡が溶鋼表面から分離する位置は図2(b)に示す500mm位置であり、浸漬管4の内径がφ1400の場合であり、酸素ノズル7を溶鋼表面から約800mmの高さとし、酸素ノズル7の角度を20°としている。これにより、酸素ガスジェット22は溶鋼表面の気泡浮上位置に到達し、同時に酸素ガスジェット22の広がりが浸漬管表面に衝突しない位置とすることができる。
【0025】
本発明で使用する浸漬管4としては、内径がφ1400程度の円筒形状であり、内部に円筒形状の鉄製コアを有し、コア表面にスタッドを配置し、表面にキャスタブル耐火物層を形成することによって製造すると良い。
【0026】
本発明で使用するガス吹き込みランス5は、中心部に芯金となる鉄製のパイプを有し、パイプ表面にスタッドを配置し、表面に円柱状にキャスタブル耐火物層を形成することによって製造すると良い。ランスの下端部付近には横方向に不活性ガスを吹き出すノズル6を配置する。ノズル径をφ10程度とし、不活性ガスとしてアルゴンガスを用い、ノズル1本当たりのアルゴンガス吐出量を1.0Nm3/min程度とすることにより、ノズル詰まりを起こすことなく、溶鋼を攪拌するに適した径の気泡を生成することができる。ランス先端に配置するノズルの孔数は2孔又は4孔とすると良い。溶鋼表面からノズル位置までの浸漬深さは2000mm程度とすると良い。
【0027】
ガス吹き込みランス5の途中には酸素ノズル7を配置する。ランス5の芯金に固定したステーを配置し、このステーに酸素ノズル7を固定しても良い。酸素ノズル7としては円筒ノズルを用い、ノズル内径はφ40程度、総酸素ガス流量が3000Nm3/hである酸素ガスジェットを溶鋼表面に吹き付ける。酸素ノズルの本数は2本又は4本とすると良い。
【0028】
CAS処理の開始に当たり、上方から浸漬管4を下降し、浸漬管下部を溶鋼表面に浸漬させる。浸漬前において、取鍋の溶鋼表面には一面に酸化性スラグ層3が形成されている。浸漬後において、浸漬管で取り囲む空間の溶鋼表面には酸化性スラグが存在しない状態にする必要がある。そのため、ガス吹き込みランス5を浸漬させ、不活性ガス噴き出しノズル6より不活性ガスを吹き出した状態で浸漬管4を浸漬させる。このときスラグ層3まで浮上した不活性ガスの気泡21が、スラグ層3を浸漬管4の外径以上まで押し拡げたことを確認した後に浸漬管4を浸漬させると良い。
【0029】
浸漬管内部空間において、溶鋼表面と接する雰囲気は非酸化性雰囲気とする必要がある。浸漬管内部に不活性ガス供給管13から不活性ガス、例えばアルゴンガスを吹き込むことにより、浸漬管内部空間を不活性ガス雰囲気とすることができる。
【0030】
本発明は合金投入装置14を配置し、合金投入装置14から浸漬管4で取り囲む空間24の溶鋼表面に合金を投入することとすると好ましい。これにより、溶鋼表面に酸化性スラグが存在せず、不活性雰囲気に接した中で合金を投入することができるので、合金酸化ロスが少なく、従って成分バラツキ少なく合金投入を行うことができる。
【0031】
【実施例】
取鍋内溶鋼量365トン、取鍋内溶鋼深さ3000mm、溶鋼表面直径φ4900の溶鋼の二次精錬に本発明の二次精錬方法を適用した。
【0032】
内径φ1400の浸漬管4を用い、ガス吹き込みランス5は溶鋼2の深さ2000mmの位置に内径φ10.9のガス吹き込みノズル6を2本配置し、アルゴンガスをノズル1本当たり1.0Nm3/minの流量で溶鋼中に吹き込むことができる。ガス吹き込みランス5の途中には酸素ノズル7を配置している。合計2本の酸素ノズル7をガス吹き込みランスのノズル6と同じ角度に配置する。溶鋼表面から酸素ノズル7までの高さは約800mm、酸素ノズル7が鉛直方向となす角度を20°とする。酸素ノズル7の内径はφ40.5、酸素ノズル1本当たりの酸素ガス流量を1500Nm3/hとする。
【0033】
処理前の取鍋溶鋼表面には、転炉からの溶鋼出鋼時に取鍋中に流出した転炉精錬スラグ層3が形成されている。スラグ層厚みは100mm程度であり、スラグ中のT.Feは10〜15%程度の酸化性スラグである。
【0034】
処理開始に当たり、ガス吹き込みランス5を浸漬させ、不活性ガス噴き出しノズル6より不活性ガスを吹き出した状態で浸漬管4を溶鋼中に浸漬する。これにより、浸漬管内空間における溶鋼表面はスラグが存在しない状況とすることができる。
【0035】
Al燃焼による昇熱度合は、転炉での吹き止め温度により様々であるが、通常5〜20℃の範囲で行われている。Al:10kgに対し酸素を約10Nm3吹き付けることにより、約1℃昇温することができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明は、CAS法に準じた溶鋼二次精錬において、溶鋼中への不活性ガス吹き込みを浸漬ランスを用いて行うので、ポーラスプラグを用いる必要がなく、取鍋耐火物コストの削減、必要とする取鍋の数の削減を実現することができる。
【0037】
本発明は、ガス吹き込みランスの途中に配置した酸素ノズルから浸漬管で取り囲む空間の溶鋼表面に酸素ガスを吹き付けることができるので、不活性ガス吹き込みを浸漬ランスによって行うと同時に、溶鋼に酸素を吹き付けて溶鋼温度を上昇させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶鋼の二次精錬装置を示す断面図である。
【図2】(a)は溶鋼中を浮上する不活性ガスの軌跡を示す図であり、(b)は酸素ガスノズルの配置位置を示す図である。
【符号の説明】
1 取鍋
2 溶鋼
3 スラグ層
4 浸漬管
5 ガス吹き込みランス
6 ノズル
7 酸素ノズル
10 不活性ガス供給配管
11 酸素ガス供給配管
12 ランス昇降モータ
13 不活性ガス供給配管
14 合金投入装置
21 気泡
22 酸素ガスジェット
23 溶鋼流
24 浸漬管で取り囲む空間
【発明の属する技術分野】
本発明は、取鍋内溶鋼中に不活性ガスを吹き込む溶鋼の二次精錬方法、二次精錬装置及びそれに用いる二次精錬用ランスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
転炉等で精錬を完了した溶鋼は取鍋に移され、取鍋内溶鋼中に脱酸剤や成分調整剤としての合金を添加し、脱酸及び成分調整がなされる。転炉から取鍋への溶鋼の注入中に同時に取鍋内に合金を添加するので、溶鋼注入に伴う取鍋内の溶鋼流動により、添加した合金が溶鋼中に均一に混合される。
【0003】
取鍋内溶鋼中の合金成分範囲をさらに狭範囲に調整し、あるいはAlやCa、REM等の酸化されやすい特殊元素を歩留まりよく添加し、さらに溶鋼の清浄化を図る目的で、CAS(Composition Adjustment by Sealed Argon bubbling)設備を用いた二次精錬方法が知られている(例えば非特許文献1)。
【0004】
CAS法においては、まず取鍋内溶鋼表面に浸漬管と呼ばれる耐火構造物を浸漬する。浸漬管は円筒形状をなし、表面が耐火物で覆われ、円筒の下端部を取鍋内の溶鋼表面に浸漬する。取鍋内の溶鋼表面には転炉から排出された精錬スラグ層が形成されている。浸漬管を溶鋼表面に浸漬することにより、溶鋼表面のスラグ層が、浸漬管内部空間と浸漬管の外周部とに区分される。
【0005】
取鍋内溶鋼表面に存在する精錬スラグ層は酸化鉄を含有し、酸化性の強いスラグである。上記浸漬管を溶鋼表面に浸漬して浸漬管内部空間と外周部との間を遮断すれば、たとえ浸漬管外周部の溶鋼表面に存在するスラグ層が酸化性スラグであっても、浸漬管内部空間の溶鋼表面をスラグレスの状態にし、あるいは当該溶鋼表面に非酸化性スラグを形成することが可能になる。さらに浸漬管内部空間の雰囲気をアルゴン雰囲気などの非酸化性雰囲気とすることができる。
【0006】
CAS法においては、上記のように浸漬管内部空間を非酸化性雰囲気とした上で、取鍋の底部から溶鋼中にアルゴンガスを吹き込み、吹き込んだアルゴン気泡が溶鋼表面の上記浸漬管内部空間に浮上するように吹き込みを行う。アルゴン気泡が離脱する溶鋼表面には酸化性スラグが存在せず、雰囲気も非酸化性雰囲気であるため、アルゴン気泡浮上分離時に溶鋼が酸化されることがない。さらに、溶鋼中にアルゴンガスを吹き込むことにより、取鍋内溶鋼が攪拌される。
【0007】
このような状況において、取鍋上部から浸漬管内部空間をめがけて溶鋼に合金を添加することとすれば、合金は雰囲気中酸素あるいは溶鋼表面の酸化性スラグに接触せずに溶鋼に投入することができ、酸化ロスが少なく、かつ精度良く溶鋼中に添加することができる。AlやCa、REM等の酸化されやすい特殊元素をこの方法で溶鋼中に添加することにより、酸化ロスが少ないので添加量を削減して製造コストを低減することが可能であり、さらに高い精度で成分調整を行うことが可能になる。
【0008】
非特許文献2には、CAS法にさらに酸素付加によるAlの酸化反応熱を利用した昇温機構を有するCAS−OB法が記載されいてる。CAS法の浸漬管の上方から浸漬管内部空間の溶鋼表面に酸素ガスを吹き付ける。酸素ガスの吹き付けにはランスが用いられる。吹き付けた酸素によって溶鋼中のAlが燃焼し、溶鋼の温度が上昇する。これにより、取鍋内溶鋼温度が低すぎる場合における温度救済処理や、高温溶製鋼種の転炉吹き止め負荷低減を実現することができるとしている。燃焼で生成するアルミナの鋼の清浄性に及ぼす影響も少ないため品質面での問題もない。
【0009】
非特許文献3によると、CAS設備に上吹きランスを設置して、溶鋼へ粉体を吹き込むCAS−Inj.法も開発され、溶鋼脱硫が可能になっている。CAS設備に粉体吹き込み機能を付加したもので、上方から下降する吹き込みランスよりフラックスもしくはCa合金を溶鋼中に吹き込み、脱硫処理またはCa添加処理を実施する設備である。
【0010】
【非特許文献1】
日本鉄鋼協会編、鉄鋼便覧第3版第2巻、株式会社丸善発行、第690ページ
【非特許文献2】
鉄と鋼、第71巻(1985)、日本鉄鋼協会発行、S1086
【非特許文献3】
CAMP−ISIJ、第1巻(1988)、日本鉄鋼協会発行、第233ページ
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
CAS法において、溶鋼中への不活性ガス吹き込みは取鍋底部に設けた不活性ガス吹き出し孔から行う。不活性ガス吹き出し孔としては、取鍋底部の耐火物中に埋め込まれたポーラスプラグが用いられる。ポーラスプラグはそれ自体が高価な耐火物であり、またポーラスプラグを埋め込んだ取鍋耐火物の寿命は、ポーラスプラグを埋め込まない場合に比較して短いので、耐火物コストを増大させる原因となっている。さらに、ポーラスプラグが埋め込まれた取鍋をCAS処理以外の用途に用いると、ポーラスプラグからの不活性ガス吹き出しを行わないため、ポーラスプラグに溶鋼が浸入してポーラスプラグ詰まりを起こす原因となる。そのため、ポーラスプラグを設置した取鍋については、一度処理を終えて暖まった取鍋をCAS処理専用とせざるを得ず、取鍋回転に影響を与えるために稼働する取鍋の個数を増大する必要が生じるときがある。また、ポーラスプラグ設置取鍋をCAS専用に使用したとしてもプラグ詰まりが生じるときがあり、その際は後続のCAS処理を行うことができず、生産計画に大きな影響を及ぼす。
【0012】
CAS処理時の不活性ガス吹き込みを取鍋底部に設置したポーラスプラグを用いずに、取鍋上部から溶鋼中に浸漬する浸漬ランスを用いて行うことも考えられる。しかし、フラックス吹き込みを伴いつつ不活性ガス吹き込みを行うCAS−Inj.法は知られているものの、フラックス吹き込みを伴わずに浸漬ランスを用いて溶鋼中に不活性ガスを吹き込んだ公知例は存在せず、不活性ガス吹き出しノズル詰まりが懸念された。さらに、CAS法の浸漬管の内径は1500mm程度であり、従来から用いられているCAS−OB用の酸素吹き付けノズルと不活性ガス吹き込み用の浸漬ランスとを併用することができず、浸漬ランスから不活性ガスを吹き込もうとすると酸素ガス吹き付けによる溶鋼昇温を行うことができないという不都合が生じる。
【0013】
本発明は、CAS法による溶鋼二次精錬において、取鍋底部にポーラスプラグを設けることなく溶鋼への不活性ガス吹き込みを可能にし、同時にCAS−OBによる溶鋼昇温をも可能にする溶鋼の二次精錬方法、溶鋼の二次精錬装置、及びそれに用いる二次精錬用ランスを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1)取鍋内溶鋼中に不活性ガスを吹き込む溶鋼の二次精錬方法であって、溶鋼中に浸漬したガス吹き込みランス5から溶鋼中に不活性ガスを吹き込み、溶鋼表面であって吹き込んだ不活性ガスが浮上する部分を取り囲む位置に浸漬管4を配置し、浸漬管4はその下端部を溶鋼表面に浸漬し、ガス吹き込みランス5の途中に配置した酸素ノズル7から浸漬管4で取り囲む空間24の溶鋼表面に酸素ガスを吹き付けることを特徴とする溶鋼の二次精錬方法。
(2)酸素ノズル7は、ガス吹き込みランス5から吹き込んだ不活性ガスが浮上して溶鋼表面から離脱する部位に酸素ガスを吹き付けることを特徴とする請求項1に記載の溶鋼の二次精錬方法。
(3)取鍋内溶鋼中に不活性ガスを吹き込む溶鋼の二次精錬装置であって、該二次精錬装置はガス吹き込みランス5と浸漬管4を有し、ガス吹き込みランス5は溶鋼中に浸漬してその先端から溶鋼中に不活性ガスを吹き込むことができ、浸漬管4は溶鋼表面であって吹き込んだ不活性ガスが浮上する部分を取り囲む位置に配置してその下端部を溶鋼表面に浸漬することができ、ガス吹き込みランス5の途中には酸素ノズル7を配置し、酸素ノズル7から浸漬管で取り囲む空間24の溶鋼表面に酸素ガスを吹き付け可能であることを特徴とする溶鋼の二次精錬装置。
(4)さらに浸漬管4で取り囲む空間の溶鋼表面に合金を投入するための合金装入装置を有することを特徴とする請求項3に記載の溶鋼の二次精錬装置。
(5)溶鋼の二次精錬に用いる二次精錬用ランス5であって、該二次精錬用ランスはその先端に不活性ガスノズル6を有し、さらにランス5の途中に酸素を吹き出す酸素ノズル7を有し、ランス5を取鍋内溶鋼中に浸漬して不活性ガスノズル6から溶鋼中に不活性ガスを吹き込むことができ、酸素ノズル7から取鍋内容鋼表面に酸素ガスを吹き付けることができることを特徴とする溶鋼の二次精錬用ランス。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1に基づいて本発明の二次精錬方法及び二次精錬装置について説明する。
【0016】
本発明の二次精錬方法及び二次精錬装置において、従来のCAS法同様、取鍋内溶鋼中に不活性ガスを吹き込み、溶鋼表面であって吹き込んだ不活性ガスが浮上する部分を取り囲む位置に浸漬管4を配置し、浸漬管4はその下端部を溶鋼表面に浸漬する。浸漬管4を溶鋼表面に浸漬することにより、溶鋼表面のスラグ層3が、浸漬管内部空間と浸漬管の外周部とに区分される。
【0017】
本発明においては、溶鋼中への不活性ガス吹き込み手段として、従来のように取鍋底部にポーラスプラグを埋め込むのではなく、溶鋼中に浸漬したガス吹き込みランス5から溶鋼中に不活性ガスを吹き込む。ポーラスプラグを用いないので、取鍋耐火物を安価に製造することができ、取鍋耐火物の寿命がポーラスプラグの寿命に拘束されないので寿命を延長することができ、CAS処理専用取鍋を特定する必要がなくなるので取鍋回転に余裕が生じ、稼働する取鍋の個数を低減することができる。溶鋼中に吹き込む不活性ガスとしては、アルゴンガスが安価であり好ましい。
【0018】
本発明においては、溶鋼中に浸漬したガス吹き込みランス5から溶鋼中に不活性ガスを吹き込むに際し、従来のCAS−Inj.法のように不活性ガスとともにフラックス吹き込みを必須とするものではない。それにもかかわらず、ガス吹き込みランスのノズル詰まり発生は見られず、安定した不活性ガス吹き込みを行うことができる。
【0019】
ガス吹き込みランス5先端のノズル6からの不活性ガス吹き込みにより、取鍋内の溶鋼2中に気泡21が形成され、気泡21が溶鋼内を上昇するに従い、気泡上昇流に伴って溶鋼流23が形成される。
【0020】
本発明においては、ガス吹き込みランス5の途中に配置した酸素ノズル7から浸漬管で取り囲む空間24の溶鋼表面に酸素ガスを吹き付ける。従来のCAS−OB法のように酸素ガスを吹き付ける専用ランスを準備したのでは、本発明のように不活性ガス吹き込みランスを用いる場合、その両者を併用することが困難であった。本発明は1本のガス吹き込みランスを用い、その先端は溶鋼中に浸漬して不活性ガスを溶鋼中に吹き込むことが可能であり、ランス5の途中には酸素ノズル7を配置して溶鋼表面に酸素ガスを吹き付けることができるので、CAS法に適用することが可能になる。酸素ガスを溶鋼表面に吹き付けることにより、吹き付けた酸素によって溶鋼中のAlが燃焼し、溶鋼の温度が上昇する。これにより、従来のCAS−OB法同様、取鍋内溶鋼温度が低すぎる場合における温度救済処理や、高温溶製鋼種の転炉吹き止め負荷低減を実現することができる。
【0021】
ガス吹き込みランス5の途中に配置した酸素ノズル7は、ガス吹き込みランス5から吹き込んだ不活性ガスが浮上して溶鋼表面から離脱する部位に酸素ガスを吹き付けることとすると好ましい。不活性ガス気泡が浮上する部位においては、気泡の浮上に伴って溶鋼上昇流が存在する。従って、不活性ガス気泡離脱部位には取鍋溶鋼内部から溶鋼上昇流に伴って新たな溶鋼が常に供給され、新たな溶鋼中のAl成分が吹き付けられた酸素ガスと反応し、Al燃焼反応を効率よく行うことができる。浸漬管で取り囲む空間24の溶鋼表面にスラグ層が存在する場合、スラグ層に向けて酸素ガスを吹き付けても酸素ガスによって溶鋼中のAlを燃焼する反応を起こしにくい。これに対し、不活性ガスが浮上する部位はスラグ層が排除されて溶鋼表面が露出しているので、この部分に酸素ガスを吹き付けることにより、効率よく溶鋼中Alを燃焼させることが可能になる。
【0022】
溶鋼中に浸漬したガス吹き込みランス5の先端に配置したノズル6から横方向に不活性ガスを吹き込む場合、吹き込んだ不活性ガスが浮上しつつ経過する軌跡は、以下のSzekelyの式に従う。
d2yr/dxr 2 = 4・[g(ρl − ρg) / (ρgu0 2)]・[tan2(θc/2) / cosθ0]・[1 + (dyr/dxr)2]1/2・xr 2・C
ここで、DonaldとSingerによれば実験式として次の式が与えられている。
tan(θc/2) = 0.238・(μ/ρ)0.133
また、Cは気相の容積比で、
C = d0/d・[C+ρl/ρg・(1−C)]1/2
である。
ここにおいて、x:噴流の仮想原点からの水平距離、y:噴流の仮想原点からの垂直距離、d0:ノズル内径、yr = y/d0、xr = x/d0、g:重力加速度、ρl:液相の密度、ρg:気相の密度、ρ:噴流の密度、u0:ノズル噴き出し速度、θc:噴流の拡がり角、θ0:水平線に対するノズル噴き出し角度、μ:噴流の粘性係数、d:噴流の仮想原点からの距離xにおいて噴流軸に直角な断面での噴流径である。
【0023】
上記Szekelyの式ににおいて、浸漬ノズル先端の不活性ガス吹きだしノズル6内径がφ10.9mmでアルゴンガスを1.162Nm3/minの流量で吹き出すとき、ノズル6からの水平距離を横軸に、ノズル6からの垂直距離を縦軸にとってアルゴンガスの溶鋼中における最外径の軌跡をプロットすると、図2(b)のようになる。ランス浸漬深さ2000mm、すなわち図2(b)の縦軸のノズルからの垂直距離を2000mmとすると、図2(b)横軸のノズルからの水平距離が500mmとなり、すなわち溶鋼表面では浸漬ノズルから500mm離れた位置に最も外側の気泡が浮上分離することとなる。この数値は、実機での実際の値とほぼ合致しているが、実際の値によって補正するとより好ましい。
【0024】
ガス吹き込みランスの途中に配置した酸素ノズル7は、好ましくは当該酸素ノズル7から吹き付けた酸素ガスジェット22が上記溶鋼表面の不活性ガス浮上位置に向けて吹き付ける。酸素ガスノズルから吹き出した酸素ガスジェット22は、一般的に24°の広がり角度をもって噴出する。吹き付けた酸素ガスが浸漬管4に当たると、浸漬管4の耐火物が損傷するので好ましくない。従って、吹き付けた酸素ガスジェット22が溶鋼表面の不活性ガス浮上位置に吹き付けられ、同時に浸漬管4の耐火物には接触しないよう、酸素ノズル7と溶鋼表面との間の高さと、酸素ノズル7が鉛直方向となす角度とを適切に定めることとすると良い。図2(a)に示す例においては、気泡が溶鋼表面から分離する位置は図2(b)に示す500mm位置であり、浸漬管4の内径がφ1400の場合であり、酸素ノズル7を溶鋼表面から約800mmの高さとし、酸素ノズル7の角度を20°としている。これにより、酸素ガスジェット22は溶鋼表面の気泡浮上位置に到達し、同時に酸素ガスジェット22の広がりが浸漬管表面に衝突しない位置とすることができる。
【0025】
本発明で使用する浸漬管4としては、内径がφ1400程度の円筒形状であり、内部に円筒形状の鉄製コアを有し、コア表面にスタッドを配置し、表面にキャスタブル耐火物層を形成することによって製造すると良い。
【0026】
本発明で使用するガス吹き込みランス5は、中心部に芯金となる鉄製のパイプを有し、パイプ表面にスタッドを配置し、表面に円柱状にキャスタブル耐火物層を形成することによって製造すると良い。ランスの下端部付近には横方向に不活性ガスを吹き出すノズル6を配置する。ノズル径をφ10程度とし、不活性ガスとしてアルゴンガスを用い、ノズル1本当たりのアルゴンガス吐出量を1.0Nm3/min程度とすることにより、ノズル詰まりを起こすことなく、溶鋼を攪拌するに適した径の気泡を生成することができる。ランス先端に配置するノズルの孔数は2孔又は4孔とすると良い。溶鋼表面からノズル位置までの浸漬深さは2000mm程度とすると良い。
【0027】
ガス吹き込みランス5の途中には酸素ノズル7を配置する。ランス5の芯金に固定したステーを配置し、このステーに酸素ノズル7を固定しても良い。酸素ノズル7としては円筒ノズルを用い、ノズル内径はφ40程度、総酸素ガス流量が3000Nm3/hである酸素ガスジェットを溶鋼表面に吹き付ける。酸素ノズルの本数は2本又は4本とすると良い。
【0028】
CAS処理の開始に当たり、上方から浸漬管4を下降し、浸漬管下部を溶鋼表面に浸漬させる。浸漬前において、取鍋の溶鋼表面には一面に酸化性スラグ層3が形成されている。浸漬後において、浸漬管で取り囲む空間の溶鋼表面には酸化性スラグが存在しない状態にする必要がある。そのため、ガス吹き込みランス5を浸漬させ、不活性ガス噴き出しノズル6より不活性ガスを吹き出した状態で浸漬管4を浸漬させる。このときスラグ層3まで浮上した不活性ガスの気泡21が、スラグ層3を浸漬管4の外径以上まで押し拡げたことを確認した後に浸漬管4を浸漬させると良い。
【0029】
浸漬管内部空間において、溶鋼表面と接する雰囲気は非酸化性雰囲気とする必要がある。浸漬管内部に不活性ガス供給管13から不活性ガス、例えばアルゴンガスを吹き込むことにより、浸漬管内部空間を不活性ガス雰囲気とすることができる。
【0030】
本発明は合金投入装置14を配置し、合金投入装置14から浸漬管4で取り囲む空間24の溶鋼表面に合金を投入することとすると好ましい。これにより、溶鋼表面に酸化性スラグが存在せず、不活性雰囲気に接した中で合金を投入することができるので、合金酸化ロスが少なく、従って成分バラツキ少なく合金投入を行うことができる。
【0031】
【実施例】
取鍋内溶鋼量365トン、取鍋内溶鋼深さ3000mm、溶鋼表面直径φ4900の溶鋼の二次精錬に本発明の二次精錬方法を適用した。
【0032】
内径φ1400の浸漬管4を用い、ガス吹き込みランス5は溶鋼2の深さ2000mmの位置に内径φ10.9のガス吹き込みノズル6を2本配置し、アルゴンガスをノズル1本当たり1.0Nm3/minの流量で溶鋼中に吹き込むことができる。ガス吹き込みランス5の途中には酸素ノズル7を配置している。合計2本の酸素ノズル7をガス吹き込みランスのノズル6と同じ角度に配置する。溶鋼表面から酸素ノズル7までの高さは約800mm、酸素ノズル7が鉛直方向となす角度を20°とする。酸素ノズル7の内径はφ40.5、酸素ノズル1本当たりの酸素ガス流量を1500Nm3/hとする。
【0033】
処理前の取鍋溶鋼表面には、転炉からの溶鋼出鋼時に取鍋中に流出した転炉精錬スラグ層3が形成されている。スラグ層厚みは100mm程度であり、スラグ中のT.Feは10〜15%程度の酸化性スラグである。
【0034】
処理開始に当たり、ガス吹き込みランス5を浸漬させ、不活性ガス噴き出しノズル6より不活性ガスを吹き出した状態で浸漬管4を溶鋼中に浸漬する。これにより、浸漬管内空間における溶鋼表面はスラグが存在しない状況とすることができる。
【0035】
Al燃焼による昇熱度合は、転炉での吹き止め温度により様々であるが、通常5〜20℃の範囲で行われている。Al:10kgに対し酸素を約10Nm3吹き付けることにより、約1℃昇温することができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明は、CAS法に準じた溶鋼二次精錬において、溶鋼中への不活性ガス吹き込みを浸漬ランスを用いて行うので、ポーラスプラグを用いる必要がなく、取鍋耐火物コストの削減、必要とする取鍋の数の削減を実現することができる。
【0037】
本発明は、ガス吹き込みランスの途中に配置した酸素ノズルから浸漬管で取り囲む空間の溶鋼表面に酸素ガスを吹き付けることができるので、不活性ガス吹き込みを浸漬ランスによって行うと同時に、溶鋼に酸素を吹き付けて溶鋼温度を上昇させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶鋼の二次精錬装置を示す断面図である。
【図2】(a)は溶鋼中を浮上する不活性ガスの軌跡を示す図であり、(b)は酸素ガスノズルの配置位置を示す図である。
【符号の説明】
1 取鍋
2 溶鋼
3 スラグ層
4 浸漬管
5 ガス吹き込みランス
6 ノズル
7 酸素ノズル
10 不活性ガス供給配管
11 酸素ガス供給配管
12 ランス昇降モータ
13 不活性ガス供給配管
14 合金投入装置
21 気泡
22 酸素ガスジェット
23 溶鋼流
24 浸漬管で取り囲む空間
Claims (5)
- 取鍋内溶鋼中に不活性ガスを吹き込む溶鋼の二次精錬方法であって、溶鋼中に浸漬したガス吹き込みランスから溶鋼中に不活性ガスを吹き込み、溶鋼表面であって吹き込んだ不活性ガスが浮上する部分を取り囲む位置に浸漬管を配置し、該浸漬管はその下端部を溶鋼表面に浸漬し、前記ガス吹き込みランスの途中に配置した酸素ノズルから浸漬管で取り囲む空間の溶鋼表面に酸素ガスを吹き付けることを特徴とする溶鋼の二次精錬方法。
- 前記酸素ノズルは、前記ガス吹き込みランスから吹き込んだ不活性ガスが浮上して溶鋼表面から離脱する部位に酸素ガスを吹き付けることを特徴とする請求項1に記載の溶鋼の二次精錬方法。
- 取鍋内溶鋼中に不活性ガスを吹き込む溶鋼の二次精錬装置であって、該二次精錬装置はガス吹き込みランスと浸漬管を有し、該ガス吹き込みランスは溶鋼中に浸漬してその先端から溶鋼中に不活性ガスを吹き込むことができ、前記浸漬管は溶鋼表面であって吹き込んだ不活性ガスが浮上する部分を取り囲む位置に配置してその下端部を溶鋼表面に浸漬することができ、前記ガス吹き込みランスの途中には酸素ノズルを配置し、該酸素ノズルから浸漬管で取り囲む空間の溶鋼表面に酸素ガスを吹き付け可能であることを特徴とする溶鋼の二次精錬装置。
- さらに浸漬管で取り囲む空間の溶鋼表面に合金を投入するための合金装入装置を有することを特徴とする請求項3に記載の溶鋼の二次精錬装置。
- 溶鋼の二次精錬に用いる二次精錬用ランスであって、該二次精錬用ランスはその先端に不活性ガスノズルを有し、さらにランスの途中に酸素を吹き出す酸素ノズルを有し、該ランスを取鍋内溶鋼中に浸漬して不活性ガスノズルから溶鋼中に不活性ガスを吹き込むことができ、前記酸素ノズルから取鍋内容鋼表面に酸素ガスを吹き付けることができることを特徴とする溶鋼の二次精錬用ランス。
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WO2007091700A1 (ja) * | 2006-02-09 | 2007-08-16 | Jfe Steel Corporation | 溶鋼の脱窒方法 |
CN115232916A (zh) * | 2022-07-18 | 2022-10-25 | 包头钢铁(集团)有限责任公司 | 一种cas-ob精炼炉升温的方法 |
-
2003
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WO2007091700A1 (ja) * | 2006-02-09 | 2007-08-16 | Jfe Steel Corporation | 溶鋼の脱窒方法 |
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CN115232916A (zh) * | 2022-07-18 | 2022-10-25 | 包头钢铁(集团)有限责任公司 | 一种cas-ob精炼炉升温的方法 |
CN115232916B (zh) * | 2022-07-18 | 2024-01-30 | 包头钢铁(集团)有限责任公司 | 一种cas-ob精炼炉升温的方法 |
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