JP2005023173A - 舗装用アスファルト - Google Patents

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Abstract

【課題】耐わだち掘れ性に優れ、かつ熱安定性に優れた舗装用アスファルトを
提供する。
【解決手段】25℃における針入度が30〜80、芳香族分の数平均分子量が850以上、レジン分の数平均分子量が1400以上であることを特徴とする舗装用アスファルト。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は重交通道路舗装用アスファルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の道路舗装用アスファルトは、原油を常圧蒸留して得られた常圧残油をさらに減圧蒸留して得られる25℃における針入度40〜100のストレートアスファルトが使用されているが、重交通道路においてわだち掘れが顕著となり、車両の走行安全に支障をきたすという問題がある。
【0003】
この対策として、わだち掘れの少ない、25℃における針入度40〜100で、60℃における粘度が従来のストレートアスファルトより高いアスファルトが要求されている。
【0004】
そこで、従来は原油を蒸留して得られる減圧残油を、さらに200〜300℃の加熱下で空気を数時間吹き込んで製造したセミブロ一ンアスフアルトを用いていた(非特許文献1参照)。このセミブローンアスファルトは、アスファルト舗装道路のわだち掘れを防止する改質アスファルトである。しかしながら、セミブローンアスファルトを製造する方法はストレートアスファルトの製造方法に比べて、蒸留操作に加えて煩雑なブローイング操作(減圧残油をさらに200〜300℃の加熱下で空気を数時間吹き込む操作)が必要であり、また反応に伴う廃ガスの処理設備が必要という欠点がある。またセミブローンアスファルトで舗装した道路ではひび割れを起こし易い。
さらに、セミブローンアスファルトは輸送時、貯蔵時および道路舗装用骨材との混合時の加熱で、変質しやすいという欠点がある。
【0005】
【非特許文献1】
多田、伊藤、アスファルト、(社)日本アスファルト協会、Vol.23、No.157、41ページ
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐わだち掘れ性に優れ、かつ熱安定性に優れた舗装用アスファルトを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定な性状を有する鉱油系アスファルトが、耐わだち掘れ性および熱安定性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1は、25℃における針入度が30〜80、芳香族分の数平均分子量が850以上、レジン分の数平均分子量が1400以上であることを特徴とする舗装用アスファルトに関するものである。
【0009】
本発明の第2は、本発明の第1の舗装用アスファルトが、(1)減圧蒸留のカット温度が600℃未満、25℃における針入度が100以下、25℃における針入度が40〜100の範囲でPVNが−0.5以上のストレートアスファルトが得られる原油、
(2)減圧蒸留のカット温度が600℃以上、25℃における針入度が100以上の減圧残油が得られる原油、
を混合し、常圧蒸留した後、減圧蒸留を行うことによって得られるものであることを特徴とする舗装用アスファルトに関するものである。
【0010】
本発明の第3は、本発明の第1の舗装用アスファルトが、脱れきアスファルトに沸点400℃以上の脱れき油または留出油を混合することによって得られるものであることを特徴とする舗装用アスファルトに関するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のアスファルトは、わだち掘れを起こりにくくし、施工時の作業性の悪化を防止する観点から、25℃における針入度が30〜80、好ましくは40〜80、さらに好ましくは40〜60、芳香族分の数平均分子量が850以上、好ましくは850〜2500、さらに好ましくは1000〜2000、レジン分の数平均分子量が1400以上、好ましくは1400〜3000、さらに好ましくは1500〜2500である。
【0012】
芳香族分の数平均分子量が850未満、レジン分の数平均分子量が1400未満の場合には、60℃における粘度が式(1)で求めた値より低くなり、重交通道路においてわだち掘れが起こり易くなる。
【0013】
1ogY=6.16−0.109PT+1.84×10−3PT−1.53×10−5PT+4.80×1O−8PT ……(1)
この式(1)において、
Y=アスファルトの60℃における粘度(ポアズ(P))
PT=アスファルトの25℃における針入度
【0014】
また芳香族分の数平均分子量が850未満あるいはレジン分の数平均分子量が1400未満の場合であっても、60℃における粘度が式(1)で求めた値より高くなる場合があるが、このアスファルトは薄膜加熱試験による60℃粘度比が3.0以上となり、熱安定性が劣る。例えばセミブローンアスファルトが挙げられる。
【0015】
また、本発明のアスファルトの芳香族分およびレジン分の分子量分布としては芳香族分の分子量が好ましくは850以上の割合が60%以上、さらに好ましくは1000〜10000の割合が45%以上、特に50〜95%で、かつ、レジン分の分子量が好ましくは1400以上の割合が60%以上、さらに好ましくは1500〜10000の割合が45%以上、特に50〜95%の範囲である。
【0016】
本発明のアスファルトは以下の組成を有する。その組成として、飽和分は好ましくは8〜30質量%、より好ましくは10〜25質量%で、芳香族分は好ましくは25〜60質量%、より好ましくは30〜55質量%で、レジン分は好ましくは12〜35質量%、より好ましくは15〜30質量%の範囲である。アスファルテン分は好ましくは1〜30質量%、より好ましくは8〜25質量%の範囲である。
【0017】
なお、本発明でいうアスファルテン分、レジン分、芳香族分および飽和分は石油学会規格JPI−5S−22−83のアスファルトのカラムクロマトグラフィーによる組成分析法で測定した。数平均分子量はASTM D2503に準拠した蒸気圧浸透圧法で測定した。分子量分布はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析法で測定した。分析条件は、カラム:東ソー(株)製G3000H8・G2000H8、溶媒:テトラヒドロフラン、温度:23℃であり、検量線の作成にはポリスチレン標準物質を用いた。
【0018】
本発明のアスファルトの製造方法は、例えば、下記に示す(1)の原油(以下原油(1)という。)と(2)の原油(以下原油(2)という。)を混合し、常圧蒸留した後、減圧蒸留を行なうことにより製造できる。
【0019】
(1)減圧蒸留のカット温度が600℃未満で、25℃における針入度が100以下、25℃における針入度が40〜100の範囲でPVNが−0.5以上のストレートアスファルトが得られる原油。
【0020】
(2)減圧蒸留のカット温度が600℃以上で、25℃における針入度が100以上、の性状を有する減圧残油が得られる原油。
【0021】
前記のPVN(Penetration Viscosity Number)は次式で表わされる。
PVN=[(logL−logX)/(logL−logM)]×(−1.5)
logL=4.25800−0.79674logPT
logM=3.46289−0.61094logPT
L:PVN=0.0における135℃動粘度(cSt)
M=PVN=−1.5における135℃動粘度(cSt)
X:アスファルトの135℃動粘度(cSt)
PT1アスファルトの2ポCにおける針入度(1/10mm)
【0022】
前記性状のストレートアスファルトあるいは減圧残油が得られればどんな種類の原油でもよい。
【0023】
原油(1)としては、中間基原油およびナフテン基原油が好ましく、例えばカフジ原油、アラビアンヘビー原油、マヤ原油、ボスカン原油、フート原油、クェート原油、ラタウェー原油、アルライアン原油、エシオン原油、ソリューシュ原油等が挙げられる。これらの原油は混合して用いることができる。中間基原油の内、好ましいのはカフジ油、マヤ油、ラタウェー原油、アルライアン原油、エシオン原油、ソリューシュ原油である。
【0024】
原油(2)としては、中問基原油が好ましく、例えばマーバン原油、ベリー原油、ウムシャイフ原油、ロアーザクム原油、オマーン原油、エコフィスク原油、スエズミックス原油、アラビアンエキストラライトが挙げられる。これらの原油は混合して用いることができる。
【0025】
原油(1)と原油(2)の混合割合は、2〜95容量%:98〜5容量%(全体で100容量%)が好ましく、さらに5〜90容量%:95〜10容量%が好ましい。
【0026】
原油(1)と原油(2)との混合原油を常圧蒸留した残油からストレートアスファルトを採取する際の減圧蒸留のカット温度は650℃未満、好ましくは450〜590℃の範囲である。この減圧蒸留のカット温度はアスファルトの25℃における針入度が30〜80になるように選択する。
【0027】
本発明において、原油の常圧蒸留、減圧蒸留は通常の方法で行うことができる。
【0028】
また、溶剤脱れきで得られた脱れきアスファルトに、沸点400℃以上の脱れき油または留出油等を混合することによっても本発明の舗装用アスファルトが製造できる。脱れきアスファルトとは原油から得られる減圧残油を溶剤脱れき法(溶剤としてプロパン、ブタン、n一ペンタン等を用い、圧力20〜40kg/cmの加圧下で、抽出温度40〜190℃の条件で抽出を行う)で、溶剤に抽出されずに残ったアスファルテン分を13質量%以上含む残油である。脱れき油は前記溶剤脱れき法で溶剤に抽出された飽和分の多い、沸点が400℃以上、好ましくは500〜750℃の油である。留出油は減圧蒸留で得られた、沸点が400℃以上、好ましくは450〜600℃の留分である。
【0029】
脱れき油および留出油の飽和分含有量は、6質量%以上が好ましく、さらに6〜50質量%が好ましく、特に15〜40質量%が好ましい。飽和分の測定はASTM D2549“Standard Test Method for Separation of Representative Aromatics and Nonaromatics Fraction of High−Boiling Oils by Elution Chromatography”で規定された溶出クロマト分析法で行なった。
【0030】
脱れきアスファルトに対する脱れき油または留出油の混合割合は、好ましくは5〜80質量%、さらに好ましくは5〜70質量%の範囲である。脱れき油または留出油の混合割合は、混合したアスファルトの飽和分が好ましくは8〜30質量%、さらに好ましくは10〜25質量%、芳香族分が好ましくは25〜60質量%、さらに好ましくは30〜55質量%になるように選択する。
【0031】
脱れきアスファルトと脱れき油または留出油の混合割合は、アスファルトの針入度が30〜80になるように混合する。
【0032】
本発明において、原油(1)と原油(2)の混合方法、あるいは脱れきアスファルトと脱れき油または留出油の混合方法は通常の方法で行なうことができる。例えば、タンクブレンド、ラインブレンドミキサー等がある。タンクブレンドとは、タンク内でジェットミキサー、プロペラミキサー等で混合する方法である。ラインブレンドミキサーとは、配管で・移送する際に配管内を乱流にして混合する方法である。
【0033】
【実施例】
以下に、本発明を次の実施例等により詳細に説明する。
原油(1)、原油(2)に分類される原油から得られたストレートアスファルトおよび減圧残油の減圧蒸留のカット温度、25℃における針入度(1/10mm)、PVNの値を表1に示す。
【0034】
<実施例1>
原油(A)(原油(1))50容量%と原油(a)(原油(2))50容量%を混合し、この混合原油を常圧蒸留し、得られた常圧残油をカット温度570℃まで減圧蒸留してストレートアスファルトを得た。その性状を表2に示した。
【0035】
<実施例2>
原油(B)(原油(1))50容量%と原油(b)(原油(2))50容量%を混合し、この混合原油を常圧蒸留し、得られた常圧残油をカット温度560℃まで減圧蒸留してストレートアスファルトを得た。その性状を表2に示した。
【0036】
<実施例3>
原油(C)(原油(1))50容量%と原油(c)(原油(2))50容量%を混合し、この混合原油を常圧蒸留し、得られた常圧残油をカット温度550℃まで減圧蒸留してストレートアスファルトを得た。その性状を表2に示した。
【0037】
<実施例4>
原油(D)の減圧残油をn−ペンタンで溶剤脱れき処理して得られた脱れきアスファルト(針入度0、軟化点166℃)39容量%と脱れき油(100℃動粘度30cSt)61容量%を混合して、ストレートアスファルトを得た。その性状を表2に示した。脱れきアスファルトおよび脱れき油の性状を表3にそれぞれ示した。
【0038】
<実施例5>
実施例4と同様の脱れきアスファルト(針入度0、軟化点166℃)50容量%と留出油(100℃動粘度18cSt)50容量%を混合して、ストレートアスファルトを得た。その性状を表2に示した。脱れきアスファルトおよび留出油の性状を表3にそれぞれ示した。
【0039】
<比較例1>
市販のストレートアスファルトの性状を表2に示した。
【0040】
<比較例2>
市販のセミブローンアスファルト1の性状を表2に示した。
【0041】
<比較例3>
市販のセミブローンアスファルト2の性状を表2に示した。
【0042】
【表1】
Figure 2005023173
【0043】
*1:薄膜加熱試験の60℃粘度比はJIS K2207に従って測定した。
【0044】
【表2】
Figure 2005023173
【0045】
【表3】
Figure 2005023173
【0046】
実施例1〜5で得られたアスファルトは60℃における粘度が前記の式(1)で求めた値より大きく、薄膜加熱試験による60℃粘度比が2.0〜2.4と小さく、耐わだち掘れ性および熱安定性に優れていることが明らかである。
【0047】
比較例1は60℃における粘度が前記の式(1)で求めた値より小さいので、耐わだち掘れ性が劣る。
【0048】
比較例2および3は薄膜加熱試験による60℃粘度比が3.O以上であるので、熱安定性が劣る。
【0049】
【発明の効果】
本発明のアスファルトは、60℃における粘度が式(1)で求めた値以上になり、耐わだち掘れ性が優れ、また、薄膜加熱試験後の60℃粘度比が3.0未満、好ましくは1.5〜2.5の範囲内となり、熱安定性が優れている。
【0050】
このアスファルトを用いれば、従来のストレートアスファルトに比べ、アスファルト舗装道路においてわだち掘れが非常に少なくなるという利点がある。また、ゴムや熱可塑性樹脂を添加した改質アスファルトの基材としても優れている。
【0051】
また、従来のセミブローンアスファルトの製造における、原油を蒸留して減圧残油を得た後、さらにこの減圧残油を煩雑なブローイング操作を行う必要がなく、簡単な操作で目的のアスファルトが得られるという利点がある。また、セミブローンアスファルトで舗装した道路ではひび割れが起こり易く、さらに、セミブローンアスファルトは輸送時、貯蔵時、道路舗装用骨材との混合時の加熱で変質し易いが、本発明で得られたアスファルトはこれらの問題が殆どない。

Claims (3)

  1. 25℃における針入度が30〜80、芳香族分の数平均分子量が850以上、レジン分の数平均分子量が1400以上であることを特徴とする舗装用アスファルト。
  2. (1)減圧蒸留のカット温度が600℃未満、25℃における針入度が100以下、25℃における針入度が40〜100の範囲でPVNが−0.5以上のストレートアスファルトが得られる原油、
    (2)減圧蒸留のカット温度が600℃以上、25℃における針入度が100以上の減圧残油が得られる原油、
    を混合し、常圧蒸留した後、減圧蒸留を行うことによって得られる請求項1記載の舗装用アスファルト。
  3. 脱れきアスファルトに沸点400℃以上の脱れき油または留出油を混合することによって得られる請求項1記載の舗装用アスファルト。
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