JP4778670B2 - プロパン脱れきアスファルト及びこれを用いて製造したストレートアスファルト - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロパン脱れきアスファルト及びこれを用いて製造したストレートアスファルトに関し、詳しくは高い針入度と良好な感温性を有する新規なプロパン脱れきアスファルト、及び該アスファルトを高比率でブレンドして得られる改良ストレートアスファルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
アスファルトは粘着性、加工性、防水性に優れ、また安価であるため、広く使用され、その代表的なものである道路舗装用アスファルトとしては、一般に原油の常圧蒸留残油を減圧蒸留する工程において得られるストレートアスファルトが用いられている。しかし、従来型のストレートアスファルトは、パラフィン分が15質量%以上と高く、施工後アスファルトと骨材(砕石,砂等)とのなじみが悪く骨材との剥離性に問題があった。
【0003】
一方、原油の常圧蒸留残油を減圧蒸留する工程において得られる減圧蒸留残油からプロパン等の溶剤により潤滑油成分を抽出して得られる従来の脱れきアスファルトは、一般に針入度は10以下であり、また、120℃〜180℃における感温性は−0.046以下であり、このため、従来の脱れきアスファルトをストレートアスファルトにブレンドして舗装用アスファルト製品を製造する際に、30%以上ブレンドして使用することは困難であった。また、ブレンド時には、製品のストレートアスファルトの感温性が悪化し、減圧蒸留により精製した一般の舗装用ストレートアスファルトと比較した場合、感温性が悪く、高温では粘度が高く、低温では脆いという問題点があった。
また、近年、道路舗装の長寿命化への対応としてアスファルトにゴム、熱可塑性エラストマー、樹脂等の改質剤を混合した改質アスファルトの需要が増加しているが(例えば、特許文献1参照)、従来のストレートアスファルトは、芳香族分の比率が50質量%以下と低いため、改質アスファルトの材料として使用した場合には、改質剤の相溶性に限界があった。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−3858号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アスファルトの針入度及び感温性が改良され、合材製造時や舗装施工時などの高温での取り扱いが容易で良質のプロパン脱れき改質アスファルトを提供することである。また、本発明は、該プロパン脱れきアスファルトを含有させることにより、骨材との耐剥離性や感温性が改良された良質のストレートアスファルトを提供することをも目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、パラフィン分が一定量以下で、かつ特定の物性を持つように調整された特定のプロパン脱れき改質アスファルトを用いることが有効であることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、密度0.86g/cm 3 未満の原油の常圧蒸留残油を減圧蒸留する工程において得られる原油の常圧蒸留残油を減圧蒸留する工程において得られる減圧蒸留残油をプロパン脱れき処理して得られるアスファルトであって、JIS K2207による25℃の針入度が20〜100の範囲にあり、120℃〜180℃における感温性が−0.040から−0.050の範囲にあり、かつパラフィン分が10質量%以下であることを特徴とするプロパン脱れきアスファルトを提供するものである。
【0007】
また、本発明は、(A)減圧蒸留残油0〜70質量%と、(B)前記プロパン脱れきアスファルト30〜100質量%とからなるアスファルトであり、かつ(A)成分と(B)成分との全体組成中のパラフィン分が10質量%以下であり、芳香族分が50質量%以上であることを特徴とするストレートアスファルトを提供するものである。
さらに、本発明は、前記ストレートアスファルトからなる改質アスファルト用基材をも提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のプロパン脱れきアスファルトは、減圧蒸留残油を、プロパン脱れき処理して得られるものであり、針入度は20〜100で、かつ120℃から180℃における感温性が−0.040から−0.050の範囲にあることを必須とする。
ここで、針入度はJIS K2207により25℃で測定された値である。このプロパン脱れきアスファルトの針入度を20〜100の範囲とすることで、これをブレンドした舗装用アスファルトにおいて、プロパン脱れきアスファルトのブレンド比率を増加することができるので、溶剤脱れきアスファルトの有効な利用範囲を拡大することができる。
また、前記感温性は、120℃、150℃及び180℃の動粘度の対数を温度に対してプロットした際の傾きを最小二乗法で求めた値で、温度変化に対する動粘度の感度を示すものである。感温性(傾き)の絶対値が0.04未満では、150℃及び180℃の動粘度が増加し、合材工場でのアスファルトと骨材の混合時に不具合を生じ、0.05を超えれば、120℃動粘度及び60℃絶対粘度が低下し、施工後にわだち掘れの発生が懸念される。
【0009】
また、本発明のプロパン脱れきアスファルトは、パラフィン分が10質量%以下であることを必須とする。このことにより、これを用いた舗装用製品ストレートアスファルトのワックス分が低下し、該ストレートアスファルトと骨材との耐剥離性を向上させることができる。さらに、該プロパン脱れきアスファルト中の芳香族分は50質量%以上が好ましい。このことにより、改質材を添加した改質アスファルトとして使用する場合には、改質材の溶解性(相溶性)が良好となる。この観点から、さらに53質量%以上、特に55質量%以上が好ましい。
【0010】
上記の如き良質のプロパン脱れきアスファルトの製造は、原油を常圧蒸留精製した後、その残油を減圧蒸留装置で蒸留し、さらにその減圧蒸留残油をプロパン脱れき装置により、潤滑油留分を抽出した残渣分として得られる。この製造工程の流れを図1に示す。
ここで、原油としては、密度が0.86g/cm3未満の中軽質原油を用いることが必要である。このことにより、プロパン脱れきアスファルトの針入度を大きく向上させることができる。
【0011】
図1において、原油は、常圧蒸留によって石油ガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油等を留出させ、さらに、残油より減圧蒸留によって軽油、潤滑油留分等を分離して減圧蒸留残油(減圧残油)が得られる。この減圧蒸留残油は、100℃動粘度が700mm2/sec以下であることが好ましい。この場合に、針入度が大きいプロパン脱れきアスファルトが得られる。また、減圧蒸留残油中のワックス分は2質量%以下が好ましい。この場合に、製品ストレートアスファルトと骨材との耐剥離性を大きく向上させることができる。
なお、原油として、前記中軽質原油を用いた場合には、精製の目安として減圧蒸留残油中の硫黄分が5質量%以下であることが好ましい。
このようにして得られた減圧蒸留残油は、さらに、プロパンを溶剤として用い、潤滑油留分を抽出し、その残渣分として本発明のプロパン脱れきアスファルトが得られる。この際、プロパン脱れき装置の運転条件としては、特に制限されるものではないが、潤滑油留分抽出の上部温度を60〜110℃の範囲とし、また底部の温度を30〜90℃の範囲とし、上部と底部の温度勾配20〜40℃とすることが、プロパン脱れきアスファルトの針入度と潤滑油留分の得率のバランスから好ましい。また、抽出溶剤と原料減圧蒸留残油の比を4〜12の範囲で運転することが、プロパン脱れきアスファルトの針入度と潤滑油留分の得率のバランスから好ましい。
【0012】
次に、本発明において得られるストレートアスファルトは、(A)減圧蒸留残油0〜70質量%と、(B)前記プロパン脱れきアスファルト30〜100質量%とを含有したものである。
ここで、上記(A)成分としては、特に制限されず各種性状のものを用いることができるが、特にパラフィン分10〜30質量%、芳香族分45〜70質量%であり、かつ針入度が30〜500、120℃〜180℃における感温性が−0.030から−0.045の範囲にあるものが好ましく、従来型のストレートアスファルトも含まれる。
【0013】
また、本発明による上記ストレートアスファルトは、(A)と(B)との全体組成として、パラフィン分10質量%以下で、かつ芳香族分50質量%以上であることを必須とする。パラフィン分が10質量%以下であることによりワックス分が低下し、ストレートアスファルトと骨材との耐剥離性が向上する。また、芳香族分が50質量%以上であることにより、改質アスファルト用基材として用いた場合に、改質材との溶解性が良好となる。また、ワックス分は、ストレートアスファルトと骨材との耐剥離性向上の観点から2質量%以下が好ましい。
【0014】
さらに、本発明のストレートアスファルトは、感温性が−0.040から−0.048の範囲にあるものが好ましい。感温性の絶対値が0.040未満の場合には、150℃〜180℃での動粘度が増加し、合材工場でのアスファルトと骨材との混合時に不具合を生じることがある。
一方、感温性の絶対値が0.048を超える場合には、120℃動粘度及び60℃絶対粘度が低下し、施工後のわだち掘れが懸念される。
【0015】
また、本発明におけるストレートアスファルトは、針入度が41〜100であり、かつパラフィン分2〜10質量%、芳香族分53〜70質量%であることが好ましい。
上記本発明のストレートアスファルトは、JIS K2207に規定されるアスファルトの針入度により下記の3グレードのストレートアスファルトに分類することができる。
すなわち、第1は、グレード40−60相当品であり、針入度が41〜60で、120℃〜180℃における感温性が−0.043から−0.048の範囲にあリ、かつフラース脆化点が−6℃以下のストレートアスファルトである。
第2は、グレード60−80相当品であり、針入度が61〜80で、120℃〜180℃における感温性が−0.041から−0.044の範囲にあり、かつフラース脆化点が−8℃以下のストレートアスファルトである。フラース脆化点−8℃以下で施工後の耐ひび割れ性能が良好となる。
【0016】
第3は、グレード80−100相当品であり、針入度が81〜100で、120℃〜180℃における感温性が−0.040から−0.043の範囲にあり、かつフラース脆化点が−11℃以下のストレートアスファルトである。フラース脆化点−11℃以下で施工後の耐ひび割れ性能が良好となる。
これらのストレートアスファルトは1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
また、一般に、改質アスファルトは、夏場のわだち掘れ、冬場の脆化対策としてアスファルトにゴム、樹脂、熱可塑性エラストマー、繊維等の改質材を添加したものとして知られているが、本発明のストレートアスファルトは、前記の如く、改質材との相溶性がよいことから、改質アスファルト組成物の基材としてのアスファルトとして有効に用いることができる。
【0017】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、アスファルトの各種評価は下記の方法で行った。
(評価方法)
(1)針入度
JIS 2207に準じ、25℃で測定した。
(2)感温性
120℃〜180℃における感温性は、120℃,150℃,180℃の動粘度を測定し、この動粘度値を温度に対し対数プロットし、その直線の傾きを感温性として求めた。なお、動粘度は、JIS K2283に準じて測定した。
(3)アスファルトの組成
パラフィン分、芳香族分は、カラムクロマトによる組成分析により求めた。
(4)フラース脆化点
JIS 2207に準じて測定した。
(5)相溶性
アスファルトの改質剤として、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)を5%添加してアスファルトを改質後、185℃にて、3日間放置した。その後、サンプルの上・下部の軟化点を測定し、軟化点の温度差(Δ)により評価した。評価は、温度差(Δ)が10℃未満を◎、10〜25℃未満を○、25〜30℃未満を△、30℃以上を×として表わした。
(6)耐剥離性
粒度10〜13mmの砕石を用いて、最多パターン法にて剥離試験を実施した。実施は3人で行い、その平均値を用いて下表により評価した。
Figure 0004778670
【0018】
実施例1〜3及び比較例1
第1表に記載の密度を有する原油を用いて、常圧蒸留を行い、その残油を減圧蒸留することにより減圧蒸留残油(VR)(1)'〜(5)'を得た。この減圧蒸留残油の性状は第1表の如きものであり、プロパン脱れき装置への原料として用いた。プロパン脱れき処理は第1表に示す運転条件で行い、同表下欄に示す性状のプロパン脱れきアスファルト(PDAS(1)(5))を得た。
【0019】
【表1】
Figure 0004778670
【0020】
【表2】
Figure 0004778670
【0021】
(注)
PDAS:プロパン脱れきアスファルト
VR :減圧蒸留残油
比較例3
第1表に記載の原料原油の常圧蒸留残油を減圧蒸留して減圧蒸留残油(VR(6)')を得た。その性状を第1表に示した。
実施例4〜6及び比較例4〜6
上記で得られたプロパン脱れきアスファルト(PDAS(1)(5))と減圧蒸留残油(VR(1)'〜(5)')及び比較例3で得られた減圧蒸留残油(VR(6)')を用いて、第2表に示すPDAS/VRの組成のストレートアスファルトを製造した。なお、比較例6は、減圧蒸留残油(VR(6)')単独のものである。得られたストレートアスファルトについて、前記の各種項目について測定した。結果を第2表に示す。
【0022】
【表3】
Figure 0004778670
【0023】
上記の結果、本発明における実施例4〜6のストレートアスファルトのみが、フラース脆化点と耐剥離性の双方を満足するものであった。
なお、相溶性については、JIS K2207の60〜80グレード相当品(針入度が60〜80)についてのみ測定したため、実施例4についての測定はしなかった。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、プロパン脱れきアスファルトの針入度は20以上と高く、また、感温性も良好であるために、プロパン脱れきアスファルトを30質量%以上の高比率で含有することが容易であり、このため、舗装用の良質のストレートアスファルトを生産することが可能である。
また、本発明によれば、パラフィンが10%以下の舗装用ストレートアスファルトの提供が可能となり、このことにより、骨材などとの耐剥離性が改善された良質の舗装用ストレートアスファルトを得ることができる。
さらに、本発明のストレートアスファルトは、改質アスファルトの基材として有効に使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるアスファルトの製造工程を説明するための図である。

Claims (9)

  1. 密度0.86g/cm 3 未満の原油の常圧蒸留残油を減圧蒸留する工程において得られる減圧蒸留残油をプロパン脱れき処理して得られるアスファルトであって、針入度が20〜100の範囲にあり、120℃〜180℃における感温性が−0.040から−0.050の範囲にあり、かつパラフィン分が10質量%以下であることを特徴とするプロパン脱れきアスファルト。
  2. さらに、芳香族分が50質量%以上である請求項1記載のプロパン脱れきアスファルト。
  3. (A)減圧蒸留残油0〜70質量%と、(B)請求項1又は2に記載のプロパン脱れきアスファルト30〜100質量%とからなるアスファルトであり、かつ(A)成分と(B)成分との全体組成中のパラフィン分が10質量%以下であり、芳香族分が50質量%以上であることを特徴とするストレートアスファルト。
  4. 前記減圧蒸留残油が、パラフィン分10〜30質量%、芳香族分45〜70質量%であり、かつ針入度が30〜500、120℃〜180℃における感温性が−0.030から−0.045の範囲にある請求項記載のストレートアスファルト。
  5. パラフィン分2〜10質量%、芳香族分50〜70質量%であり、針入度が41〜100である請求項記載のストレートアスファルト。
  6. 針入度が41〜60であり、かつフラース脆化点が−6℃以下であり、120℃〜180℃における感温性が−0.043から−0.048の範囲にある請求項記載のストレートアスファルト。
  7. 針入度が61〜80であり、かつフラース脆化点が−8℃以下であり、120℃〜180℃における感温性が−0.041から−0.044の範囲にある請求項記載のストレートアスファルト。
  8. 針入度が81〜100であり、かつフラース脆化点が−11℃以下であり、120℃〜180℃における感温性が−0.040から−0.043の範囲にある請求項記載のストレートアスファルト。
  9. 請求項ないしのいずれかに記載のストレートアスファルトからなる改質アスファルト用基材。
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