JP4739944B2 - 舗装用アスファルトの製造方法およびそれにより得られる舗装用アスファルト - Google Patents
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Description
特許文献1には、アスファルト舗装の破損原因であるわだち掘れ、疲労ひびわれ、低温ひび割れを起こさない良好な供用可能温度を有することを目的として、特殊な原油混合物を減圧蒸留して得た残油を含む、25℃における針入度が45以上71以下かつ180℃における動粘度が90mm2/s以下となるように調整したストレートアスファルトの製造方法が開示されている。
しかしながら、この製造方法は特殊な原油を複数組み合わせて使用する必要があり、必ずしも安価なものが得られるとはいえないという欠点がある。
しかしながら、この製造方法は煩雑なブローイング操作(減圧残油を200〜300℃の加熱下で、空気を数時間吹き込む操作)が必要という欠点がある。
しかしながら、このようなストレートアスファルトは、近年の舗装の供用寿命を出来るだけ長くのばすための耐流動性や耐ひび割れ性の要求を十分に満足するものが得られない。
すなわち、上記特許文献2の方法は、従来には例のない減圧蒸留の高いカット温度を採用により安価なアスファルトを製造する方法を提供するものであるが、石油中のガソリン、灯軽油の得率を高めることを主たる目的としているが故に、アスファルトの耐流動性および耐ひび割れ性の向上については、ほとんど考慮されず、この点では必ずしも満足するアスファルトではない。
(1)減圧蒸留のカット温度が600℃以上のときに、25℃における針入度が200以上、軟化点が20〜50℃以下、120℃における動粘度が100〜400mm2/sの性状を有するストレートアスファルトが得られ得る原油を、常圧蒸留後、常圧蒸留残油をカット温度が500〜650℃の範囲で減圧蒸留して得られる減圧蒸留残油A、
(2)減圧蒸留のカット温度が600℃未満のときに、25℃における針入度が10〜85、軟化点が40〜65℃、120℃における動粘度が600から4000mm2/sとなる性状を有するストレートアスファルトが得られ得る原油を、常圧蒸留後、常圧蒸留残油をカット温度が500〜650℃の範囲で減圧蒸留し得られる減圧蒸留残油B、および
(3)アスファルテン分が13質量%未満の溶剤脱れき残油C、
を混合することを特徴とする舗装用アスファルトの製造方法に関する。
また、本発明の第2は、減圧蒸留残油Aを10〜60重量部、減圧蒸留残油Bを10〜60重量部および剤脱れき残油Cを5〜50重量部混合してなる、25℃における針入度が40〜120、軟化点40〜55℃の舗装用アスファルト製造方法に関する。
また、本発明の第3は、本発明の第1または第2の方法により得られる25℃における針入度が40〜120、軟化点が40〜55℃である舗装用アスファルトに関する。
なお、本明細書でいうカット温度とは大気圧における温度に換算した温度である。
なお、ここでいう針入度、軟化点および動粘度はいずれもJIS K2207「石油アスファルト」により測定した値である。
減圧蒸留残油Bの性状が上記範囲を逸脱すると、減圧蒸留残油A、減圧蒸留残油Bおよび溶剤脱れき残油Cを所定量配合しても舗装要項に規定する舗装用アスファルトの規格値を満足することが出来ないため好ましくない。
装置上の制約もあり従来上記のように高温のカット温度とした例が少ないものではあるが、具体的に利用できる原油の種類としては、パラフィン基原油とナフテン基原油の中間に位置する中間基原油が好ましく、例えば、アラビアンエキストラライト原油、アラビアンライト原油、ウムシャイフ原油、オマーン原油、スエズミックス原油、ドバイ原油、ベリー原油、マーバン原油、アッパーザクム原油、カタールマリン原油等が挙げられる。これらの原油は混合して用いることができる。
具体的には、パラフィン基原油とナフテン基原油の中間に位置する中間基原油およびナフテン基原油が好ましく、例えば、イラニアンライト原油、イラニアンヘビー原油、アラビアンミディアム原油、アラビアンヘビー原油、カフジ原油、クウェート原油、ミナス原油、アルライアン原油、イスムス原油、エオシン原油、ソリューシュ原油、ディアファナ原油、バチャケロ原油、ボスカン原油、ニュートラルゾーンスペシャル原油、マヤ原油、ラタウェー原油等が挙げられる。これらの原油は混合して用いることができる。
なお、周知慣用の技術常識に従い、原油の種類を適宜に選択すると共に、常圧蒸留温度操作条件、減圧蒸留のカット温度を適宜に操作することにより針入度、軟化点、動粘度等が前記性状の減圧蒸留残油Aおよび減圧蒸留残油Bをそれぞれ容易に得ることができる。
溶剤脱れき残油が上記範囲を逸脱する場合は、減圧蒸留残油A、減圧蒸留残油Bおよび溶剤脱れき残油Cを所定量配合しても舗装要項に規定する舗装用アスファルトの規格値を満足することが出来ないため好ましくない。
好ましい溶剤脱れき残油は、25℃における針入度が2〜25、好ましくは7〜20、軟化点55〜70℃、好ましくは55〜65℃、120℃における動粘度が1000〜5000mm2/s、好ましくは1500〜4000mm2/sの性状を有する溶剤脱れき残油である。
溶剤脱れき残油は、これらの原油から得られた減圧残油、常圧残油を原料油とし、溶剤としてはプロパン、ブタン、n−ペンタン等を用い、圧力20〜40kg/cm2の加圧下で、抽出温度40〜190℃の条件で、飽和分、芳香族分を多く含んだ成分を抽出除去することにより得ることが出来る。好ましい溶剤はプロパンである。
各成分の配合割合は、適宜に決定されるが、減圧蒸留残油Aを10〜60重量部、好ましくは20〜50重量部、減圧蒸留残油Bを20〜60重量部、好ましくは20〜50重量部、および溶剤脱れき残油Cを5〜50重量部、好ましくは10〜45重量部の割合で配合、混合する。
かくして得られる舗装用アスファルトは、25℃における針入度40〜120が好ましく、舗装用アスファルトとして、さらに好ましくは25℃における針入度が40〜120、軟化点が40〜55℃のアスファルトである。
以上の方法により得られるアスファルトは、慣用の手段で適宜に骨材等と混合され舗装の用に好適に供され得る。
実施例・比較例における耐流動性は、ホイールトラッキング試験による動的安定度により評価した。また同じく耐ひび割れ性は、アスファルト混合物の曲げ試験により評価した。ホイールトラッキング試験および曲げ試験は、各々、社団法人 日本道路協会「舗装試験法便覧」の3−7−3「ホイールトラッキング試験方法」、3−7−5「曲げ試験方法」記載の方法で行った。以下には参考に当該試験法の概略を記す。
アスファルトと骨材を加熱混合したアスファルト混合物を所定の型枠(300×300×50mm)に入れ整形した供試体を、60℃の恒温室において規定荷重(686±10N)の小型車輪を往復動させ、45分および60分における変形量(わだち掘れ量)を測定して、その間の小型車輪の通過回数を変形量で除した動的安定度(回/mm)を求め、アスファルト混合物のわだち掘れに対する抵抗性を評価する。
動的安定度(DS:Dynamic Stability)の値は、大きいほど高温時におけるアスファルト舗装体の耐流動性が良いことを示す。一般的には、わだち掘れが起こらないためには動的安定度が500以上である必要がある。
供試体は、アスファルトと骨材を加熱混合し、アスファルト混合物を所定の型枠(300×300×50mm)に入れて整形した後、300×100×50mmの形状に切り出して作製した。曲げ試験は、所定温度の室内に設置した載荷試験機にセットし、載荷速度50mm/minで中央部に集中載荷し、破断時の最大荷重を求める。試験温度を変えて供試体の破断時の最大荷重を繰り返し測定し、最大荷重と温度の関係曲線から、試験温度を降下させた際の、流動破断からぜい性破断に移行する時の温度(ぜい化温度)を求め、アスファルト舗装体の低温時の耐ひび割れ性を評価する。ぜい化温度は、0℃以下であることが必要である。
ホイールトラッキング試験結果より、動的安定度が500(回/mm)以上である場合は、耐わだち掘れ性が良好(○)と評価した。(X)は不良である。
また、曲げ試験結果より、ぜい化温度が0℃以上である場合を良好(○)と評価した。(X)は不良である。
なお、上記減圧蒸留残油A(VR-A1、VR-A2、VR-A3)と減圧蒸留残油B(VR-B1、VR-B2、VR-B3)およびPDAが得られた原油の組成を表1に示す。
PDAの製造は、溶剤としてプロパンを使用し、圧力35kg/cm2、抽出温度60℃で行なった。
上記減圧蒸留残油A、減圧蒸留残油Bおよび溶剤脱れき残油Cを混合し、舗装用アスファルトとしてもっとも一般的に使用される針入度グレード60〜80相当品として針入度を約70に調製して、舗装用アスファルトを製造した。
各成分の混合割合、性状およびアスファルト混合物試験による評価結果を表2に示す。
表2から実施例1〜実施例3のいずれも、耐流動性および耐ひび割れ性において優れた特性を示した。
上記減圧蒸留残油A、減圧蒸留残油Bおよび溶剤脱れき残油Cを、所定配合量の範囲の上限値、下限値にそれぞれ近い混合量で配合して、舗装用アスファルトを製造した。
各成分の混合割合、性状およびアスファルト混合物試験による評価結果を表2に示す。
表2から実施例4〜実施例7のいずれも、耐流動性および耐ひび割れ性において優れた特性を示した。
前記減圧蒸留残油Bの3種類のアスファルト原料(VR-B1、VR-B2、VR-B3)のうち、VR-B2は、減圧蒸留のカット温度が550℃であり、得られた残油の針入度70、軟化点48.5℃また動粘度817mm2/sと、従来の方法で製造されるストレートアスファルトに近く、また舗装用アスファルトの規格に適合するものであるので、これ単独をそのまま舗装用アスファルトとして試験した。
表2に示すように、比較例1は、耐流動性および耐ひび割れ性ともに、目標の耐流動性および耐ひび割れ性能を満足に維持することはできなかった。
前記減圧蒸留残油Aのみ、または前記減圧蒸留残油Bのみに、同じく前記溶剤脱れき残油Cをそれぞれ配合して、2成分系の舗装用アスファルトを製造した。
各成分の混合割合、性状およびアスファルト混合物試験による評価結果を表2に示す。
表2に示すように、比較例2および比較例3のいずれも、目標の耐流動性および耐ひび割れ性を同時に満足することは出来なかった。
Claims (3)
- (1)減圧蒸留のカット温度が600℃以上のときに、25℃における針入度が200以上、軟化点が20〜50℃、120℃における動粘度が100〜400mm2/sの性状を有するストレートアスファルトが得られ得る原油を、常圧蒸留後、常圧蒸留残油をカット温度が500〜650℃の範囲で減圧蒸留して得られる25℃における針入度が200以上、軟化点が20〜50℃、120℃における動粘度が100〜400mm2/sの減圧蒸留残油A、
(2)減圧蒸留のカット温度が600℃未満のときに、25℃における針入度が10〜90、軟化点が40〜65℃、120℃における動粘度が600から4000mm2/sとなる性状を有するストレートアスファルトが得られ得る原油を、常圧蒸留後、常圧蒸留残油をカット温度が500〜650℃の範囲で減圧蒸留し得られる25℃における針入度が10〜90、軟化点が40〜65℃、120℃における動粘度が600から4000mm2/sの減圧蒸留残油B、および
(3)アスファルテン分が13質量%未満の溶剤脱れき残油Cを混合することを特徴とする舗装用アスファルトの製造方法。 - (1)減圧蒸留残油Aを10〜60重量部、(2)減圧蒸留残油Bを10〜60重量部および(3)溶剤脱れき残油Cを5〜50重量部混合することにより、25℃における針入度が40〜120、軟化点が40〜55℃の舗装用アスファルトを製造することを特徴とする請求項1記載の舗装用アスファルトの製造方法。
- 請求項1または2記載の方法により得られる25℃における針入度が40〜120、軟化点が40〜55℃である舗装用アスファルト。
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