JP2005022899A - 有機基担持シリカゲル - Google Patents

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寛 森
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Abstract

【課題】目的とする有機基を高濃度で担持するとともに、シャープな細孔分布を示し、耐熱性、耐水性、物性安定性等にも優れ、且つ生産性に優れるようにする。
【解決手段】(a)細孔容積が0.5〜1.6ml/g、(b)比表面積が300〜900m/g、(c)細孔の最頻直径(Dmax)が20nm未満、(d)直径がDmax±20%の範囲内にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の40%以上、(e)非晶質であり、(f)全ケイ素原子のうち炭素原子と直接結合したケイ素原子の割合が0.1%以上であり、且つ、固体Si−NMR測定において、(g)下記式(I)
/(Q+Q)≧0.151×(Dmax)+1.01 ・・・式(I)
を満足するとともに、(h)下記式(II)及び/又は下記式(III)
/D≦2 ・・・式(II)
/(T+T)≦2 ・・・式(III)
を満足するようにする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高純度で、制御された細孔特性を有し、有用な有機基を担持する新規なシリカゲルに関する。
【0002】
【従来の技術】
シリカゲルは、古くから乾燥剤として広く用いられてきたが、最近ではその用途が触媒担体,分離剤,吸着剤等へと広がっており、こうした用途の広がりに応じて、シリカゲルの性能に対する要求も多様化している。シリカゲルの性能は、シリカゲルの表面積、細孔径、細孔容積、細孔径分布等の物性によって決定される。
【0003】
ところで、近年、純粋なシリカゲルでは得られなかった表面物性、例えば、化学反応性や、有機物に見られる疎水性、親水性、又は物理化学的な性質等をシリカゲルに付与することが望まれている。
【0004】
そこで、シリカゲル単独では発現し得ない機能性を付与するために、シリカゲルの表面をシランカップリング剤やシラノールと反応する有機合成試薬等により処理して、各種の有機基を導入することにより、その有機基に由来する様々な機能をシリカゲルに付与する技術が知られている。例えば、シリカゲルに不飽和結合を持つ有機基を導入することによって、樹脂中への分散性が良好で且つ共有結合により強固に樹脂と結合し得るフィラーを製造した例や、シリカゲル表面に親疎水性や分離性能を調整する有機基を導入することによって、液体クロマトグラフィー担体や各種分離材料としての用途への適性を持たせた例、更には、その他の粉体物性を変化させることによって、疎水性フィラーを製造したり、静電特性を変化させたりした例、また、アミノ基やカルボキシル基等を導入することによって、固定化酵素担体を製造した例がある。
【0005】
このような、シリカゲルに各種の有機基を導入する手法として、細孔制御後のシリカゲルに、導入対象の有機基を含有する物質を後担持させる方法が広く用いられている。有機基を導入するための物質としては、例えば、加水分解性シリル基を含むシランカップリング剤の他、目的官能基を含む有機基導入試薬を用いることができるが、価格や取扱いの容易さの面から、主として前者が用いられている。
【0006】
有機基を共有結合によりシリカ材料へ導入する技術の例として、原料となるシリカ材料を液相や気相中にてシランカップリング処理して表面改質を行なう方法が広く知られている。この技術は各種の多孔性シリカに応用されており、結晶性のミセルテンプレートシリカに応用された例も報告されている(非特許文献1)。しかしながら、この技術によって得られるシリカは、細孔壁が非常に薄いので、機械的強度が弱く、処理の過程で細孔特性が変化し易い問題があった。また、細孔の最頻直径(Dmax)が20nm以下の従来のシリカゲルにシランカップリング処理する例も知られている。しかしながら、細孔分布が充分にシャープではない上に、処理の過程で細孔分布が広がったり小孔径化したりして細孔特性が変化する場合があった。
【0007】
上記技術におけるシランカップリング処理は、表面処理の手法として広く用いられているが、制御された多孔性を維持しながら充分な効果を得ることは大変難しかった。例えば、温度、時間、用いる試薬の量、水分量、溶媒等、多くの変動因子を各々のシランカップリング剤について設定しなければならず、最適化できない場合も多かった。また、仮に最適化できた場合でも、従来のシリカゲルでは製品としての安定性や、多孔性物性を満足することは出来なかった。また、このような物性変化しやすい傾向は、担体となるシリカゲルに金属不純物が多い場合により顕著に現れる。一方、シリコンアルコキシドを原料とした場合、高純度なシリカゲルが得られるが、十分にシャープな細孔分布のシリカゲルを得る技術は未だ報告されていないため、本発明のシリカゲルの担体として使用するには不十分であった。
【0008】
このように、上記の従来技術をもってしても、目的とする有機基を高濃度で担持するとともに、不純物金属量が少なく、シャープな細孔分布を示し、物性安定性に優れ、かつ生産性にも優れた、すなわち各種物性をバランス良く満たした有機基担持シリカゲルを得ることは出来なかった。
【0009】
【非特許文献1】
Science, 276, 923 (1997)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上の背景から、目的とする有機基を高濃度で担持するとともに、シャープな細孔分布を示し、物性安定性に優れ、且つ生産性にも優れた、すなわち各種特性をバランスよく満たした有機基担持シリカゲルが望まれていた。
【0011】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、細孔容積及び比表面積が大きいだけでなく、細孔分布が狭く、有用な有機基を担持できるとともに、耐熱性、耐水性、物性安定性(熱安定性等)などにも優れた、新規な有機基担持シリカゲルを提供することに存する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の方法によって製造された有機基担持シリカゲルが、各種特性をバランスよく満たしており、上記課題を効果的に解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は、(a)細孔容積が0.5〜1.6ml/gであり、(b)比表面積が300〜900m/gであり、(c)細孔の最頻直径(Dmax)が20nm未満であり、(d)直径がDmax±20%の範囲内にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の40%以上であり、(e)非晶質であり、(f)全ケイ素原子のうち炭素原子と直接結合したケイ素原子の割合が、0.1%以上であり、(g)固体Si−NMR測定において、Q,Q,Qの各ピーク面積が、下記式(I)
/(Q+Q)≧0.151×(Dmax)+1.01 ・・・式(I)
を満足するとともに、(h)固体Si−NMR測定において、D,D,T,T,Tの各ピーク面積が、下記式(II)及び/又は下記式(III)
/D≦2 ・・・式(II)
/(T+T)≦2 ・・・式(III)
を満足することを特徴とする、有機基担持シリカゲルに関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明の有機基担持シリカゲルは、細孔容積及び比表面積が通常のものより大きい範囲にあることを、特徴の一つとする。具体的に、細孔容積の値は、通常0.5〜1.6ml/gの範囲、好ましくは0.6〜1.6ml/gの範囲に、また、比表面積の値は、通常300〜900m/gの範囲、好ましくは400〜900m/gの範囲に存在する。これらの細孔容積及び比表面積の値は、窒素ガス吸脱着によるBET法で測定される。
【0015】
また、本発明の有機基担持シリカゲルは、窒素ガス吸脱着法で測定した等温脱着曲線から、E. P. Barrett, L. G. Joyner, P. H. Haklenda, J. Amer. Chem. Soc., vol. 73, 373(1951)に記載のBJH法により算出される細孔分布曲線、即ち、細孔直径d(nm)に対して微分窒素ガス吸着量(ΔV/Δ(logd);Vは窒素ガス吸着容積)をプロットした図上での最頻直径(Dmax)が20nm未満であり、下限は特に制限はないが、好ましくは2nm以上である。このことは、本発明の有機基担持シリカゲルが有する細孔の最頻直径(Dmax)が、通常のシリカゲルに比べてより小さい範囲に存在することを意味する。
【0016】
更に、本発明の有機基担持シリカゲルは、上記の最頻直径(Dmax)の値の±20%の範囲にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の通常40%以上、好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上である点においても特徴づけられる。また、上記の最頻直径(Dmax)の値を中心として±20%の範囲にある細孔の総容積は、全細孔容積の通常90%以下である。このことは、本発明の有機基担持シリカゲルが有する細孔の直径が、最頻直径(Dmax)付近の細孔で揃っていることを意味する。
【0017】
かかる特徴に関連して、本発明の有機基担持シリカゲルは、上記のBJH法により算出された最頻直径(Dmax)における微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が、通常2〜20ml/g、特に3〜12ml/gであることが好ましい(なお、上式において、dは細孔直径(nm)であり、Vは窒素ガス吸着容積である)。微分細孔容積ΔV/Δ(logd)が前記範囲に含まれるものは、最頻直径(Dmax)の付近に揃っている細孔の絶対量が極めて多いものと言える。
【0018】
また、本発明の有機基担持シリカゲルは、以上の細孔構造の特徴に加えて、その三次元構造を見るに、非結晶質であること、即ち、結晶性構造が認められないことを特徴とする。このことは、本発明の有機基担持シリカゲルをX線回折で分析した場合に、結晶性ピークが実質的に認められないことを意味する。なお、本明細書において結晶質であるシリカゲルとは、X線回折パターンで6オングストローム(Å Units d−spacing)を越えた位置に、少なくとも一つの結晶構造のピークを示すものを指す。この様なシリカ材料として、有機テンプレートを用いて細孔を形成するミセルテンプレートシリカが挙げられる。非結晶質のシリカゲルは、結晶性のシリカゲルに較べて、極めて生産性に優れている。
【0019】
本発明の有機基担持シリカゲルは、更に、アルカリ金属,アルカリ土類金属,周期表の13族,14族及び15族並びに遷移金属からなる群に属する金属元素(金属不純物)の合計の含有率の値が、特に限定されるものではないが、低く抑えられ、高純度であることが好ましい。具体的には、通常500ppm以下、中でも300ppm以下、好ましくは100ppm以下、更に好ましくは10ppm以下の範囲が好適である。このように、金属不純物の含有率を低く抑え、その影響を少なくすることによって、本発明の有機基担持シリカゲルは高い耐熱性や耐水性などの優れた性質をより一層発現できるようになる。
【0020】
シリカゲル中の不純物の存在は、その総含有率がたとえ数百ppm程度の微量であっても、シリカゲルの性能に大きな影響を与える。例えば、1)これらの不純物の存在が、高温下ではシリカゲルの結晶化を促進する、2)これらの不純物の存在が、水存在下ではシリカゲルの水熱反応を促進して、細孔径や細孔容積の拡大,比表面積の低下,細孔分布の拡大をもたらす、3)これらの不純物は焼結温度を低下させるので、これらの不純物を含むシリカゲルを加熱すると、比表面積の低下が促進される、等の影響が挙げられる。そして、かかる影響は、アルカリ金属やアルカリ土類金属に属する元素を含む不純物において、特にその傾向が強い。
【0021】
本発明者らは更に検討した結果、本発明の物性を満たしつつ有機基を導入するためには、シリカ源の不純物金属濃度を最小限にすることが好ましいことを見いだした。これら不純物金属のうち、いかなる成分が特に影響を与えるのかは明らかではないが、シリカ源を高純度化すると、有機基を高濃度に含有し、かつ制御された細孔特性を併せ持つ、優れた有機基担持シリカゲルを得られることが分かった。
【0022】
これらの不純物金属が有機基の導入に悪影響を及ぼす理由は、明らかではないが、以下の点が考えられる。
(1)不純物金属の存在する部分が、シランカップリング剤や有機基導入試薬の吸着や集合を促し、シランカップリング剤の均一な分散を阻害する。
(2)不純物金属の存在が、シランカップリング処理中のシランカップリング剤や有機基導入試薬の安定性に悪影響を与える。
(3)有機基がシリカゲル中に導入された後に、不純物金属の触媒的な作用により分解され、シリカゲルより脱離してしまう。
【0023】
具体的には、例えば不純物金属としてアルミニウムが多い場合、その場所に多くのシランカップリング剤が吸着される。また、チタンが多い場合には、有機基が変性を受けやすい。更に、アルカリ金属やアルカリ土類金属は、シラノールと容易にイオン交換し、シランカップリング剤の結合を阻害することなどが知られている。
このように、金属不純物は有機基を含まないシリカゲルの物性変化に影響を与えるほか、有機基の導入にも影響を与えるものと考えられる。
【0024】
上述してきた各種特徴に加えて、本発明の有機基担持シリカゲルは、全ケイ素原子のうち炭素原子と直接結合したケイ素原子の割合が、通常0.1%以上、好ましくは0.2%以上、更に好ましくは1%以上であり、上限は特に制限はないが、好ましくは100%であることを特徴とする。これらの炭素原子と直接結合したケイ素原子の存在は、有機基がシリカゲル骨格に共有結合により導入されていることを示している。これらの有機基の存在状態は任意であり、それらが細孔内の表面に均一に分散していても、その一部に添着、付着していても良い。また、それらの一部が集合し、微小な粒子状となっていても良いが、その大きさは概ね細孔の最頻直径(Dmax)の2.5倍以下であることが望ましい。
【0025】
本発明において規定する全ケイ素原子中の炭素原子と直接結合したケイ素原子の量(以下X(%)と表記)は、いかなる方法により求めても良いが、一例として、シリカゲルの固体Si−NMRスペクトルにより示されるQピークとそれ以外のピークの和(Dピーク+Tピーク)との面積比により求める方法が挙げられる。
【0026】
本発明のシリカゲルは前記の示性式で表されるが、構造的には、Siの四面体の各頂点にOが結合され、これらのOに更にSiが結合してネット状に広がった構造を有する。そして、Si−O−Si−O−の繰り返し単位において、Oの一部が他の成員(例えば−H、−CHなど)で置換されているものもあり、一つのSiに注目した場合、下記式(A)に示す様に4個の−OSiを有するSi(Q)、下記式(B)に示す様に3個の−OSiを有するSi(Q)等が存在する(下記式(A)及び(B)では、上記の四面体構造を無視し、Si−Oのネット構造を平面的に表わしている)。そして、固体Si−NMR測定において、上記の各Siに基づくピークは、順にQピーク、Qピーク、・・と呼ばれる。
【0027】
【化1】
Figure 2005022899
【0028】
これら酸素がSiの周りに4つ結合したケイ素は、一般にQサイトと総称される。本発明においては、Qサイトに由来するQ〜Qの各ピークをQピーク群と呼ぶこととする。シリカゲルのQピーク群は、通常はケミカルシフト−80〜−130ppmの領域に連続した多峰性のピークとして観測される。
【0029】
これに対し、酸素原子が3つ結合し、それ以外の原子(通常は炭素である)が1つ結合しているケイ素は、一般にTサイトと総称される。Tサイトに由来するピークは、Qサイトの場合と同様に、T〜Tの各ピークとして観測される。本発明においては、Tサイトに由来する各ピークをTピーク群と呼ぶこととする。シリカゲルのTピーク群は、一般にQピーク群より高磁場側(通常ケミカルシフト−20〜−100ppm)の領域に連続した多峰性のピークとして観測される。
【0030】
更に、酸素原子が2つ結合するとともに、それ以外の原子(通常は炭素である)が2つ結合しているケイ素は、一般にDサイトと総称される。Dサイトに由来するピークも、QサイトやTサイトに由来するピーク群と同様に、D〜Dの各ピーク(Dピーク群)として観測され、QやTのピーク群より更に、高磁場側の領域(通常ケミカルシフト0〜−40ppmの領域)に、二峰性のピークとして観測される。
【0031】
本発明の有機基含有シリカゲルの固体Si−NMRスペクトルを測定すると、シリカゲルに導入された有機基の炭素が直接結合したケイ素に由来するDピーク群及びTピーク群と、有機基の炭素と結合していないケイ素に由来するQピーク群とが、各々異なる領域に出現する。これらのD,T,Qの各ピーク群の面積との比は、各ピーク群に対応する環境におかれたケイ素のモル比と夫々等しいので、全ピークの面積を全ケイ素のモル量とすれば、Dピーク群及びTピーク群の合計面積はこれに対する炭素原子と直接結合した全ケイ素のモル量と対応することになる。
【0032】
すなわち、Qピーク群の合計面積をA、Dピーク群及びTピーク群の合計面積をBとしたとき、全ケイ素原子中炭素原子と直接結合したケイ素原子の割合X(%)は、以下の式で表される。
【数1】
Figure 2005022899
以上説明した方法は、炭素原子に結合したケイ素原子を直接検出できる点で優れているが、各ピークがややブロードであるために、上記Xが1%以下の低濃度である場合には感度が不十分なことがある。
【0033】
また、他の方法の一例として、シリカゲル中の全炭素量分析を行なうことにより、X(%)を求める方法がある。即ち、有機基の分子量が既知であって、且つ、導入される有機基の種類が単一である場合には、測定された全炭素量と使用したシランカップリング剤のケイ素含有量とを比較することにより、炭素原子に結合したケイ素量を間接的に求めることができる。この方法は、分析が比較的容易である上に、高感度であり低濃度の炭素でも分析可である点で優れている。しかし、ケイ素に結合した炭素をそれ以外の炭素と識別することはできず、全炭素量を検出してしまうので、ケイ素に結合している有機基が高分子量である場合には誤差を生じやすい。また、シリカゲル中に残留溶媒等、有機物としての不純物が多い場合にも、全炭素量の測定値が高めとなる誤差を生じる。
【0034】
この他にも、C−NMR測定によりケイ素に結合した炭素の量を求める方法や、赤外吸収分光分析法により有機基に含まれる官能基を定量する方法、イオン交換性や化学反応性の高い官能基を滴定法により定量する方法等を用いて、有機基の量を求めることにより、有機基と結合したケイ素の量を間接的に算出することができる。
【0035】
以上説明した各種方法には、各々長所・短所があるため、これらの長所・短所をよく理解した上で、必要に応じて複数の方法を組み合わせ、より正確な数値を求めることが好ましい。上記の各種方法の中でも、固体Si−NMR測定による方法が簡便であり、且つ有機基と結合したケイ素の量を直接的に測定できるので、最も好ましい。
【0036】
更に、本発明のシリカゲルは、固体Si−NMR測定において、Q,Q,Qの各ピーク面積が下記式(I)を満足するとともに、D,D,T,T,Tの各ピーク面積が下記式(II)及び/又は式(III)を満足することを特徴とする。
/(Q+Q)≧0.151×(Dmax)+1.01 ・・・式(I)
/D≦2 ・・・式(II)
/(T+T)≦2 ・・・式(III)
【0037】
一般に、シリカヒドロゲルの水熱処理により細孔径を制御するシリカゲルにおいて、シリカゲルを構成するシロキサン結合の縮合の度合いを表す数値であるQ/(Q+Q)の値は、そのシリカ源が水ガラス及びシリコンアルコキシドの何れであっても、概ね担持前のDmaxの値と比例関係にあり、その関係は上記式(I)の右辺で表される。これは、細孔制御のための水熱処理条件が厳しい程、言い換えれば製品シリカゲルの細孔径Dmaxが大きくなる程、シリカゲルを構成するシロキサン結合の縮合が進むためと考えられる。
【0038】
シリカゲルにおいて、Q及びQは共に、水酸基を持つケイ素即ちシラノールに由来するピークである。シランカップリング剤を用いて有機基を後担持させた場合、シリカゲルのシラノール(Q、Q)は、シランカップリング剤の持つ加水分解性シリル基と反応して消費され、シロキサン結合(Q)に変わるために、Q及びQのピーク面積は減少し、Qのピーク面積が増加する。従って、有機基を担持させたシリカゲルのQ/(Q+Q)値は、担持後のDmaxを用いて上記式(I)の右辺0.151×(Dmax)+1.01で表される値〔即ち、担持後のシリカゲルの予想されるQ/(Q+Q)値〕より、必ず高くなる。上記式(I)は、この現象を示したものである。また、この事実は、シランカップリング剤の有する有機基が、共有結合をもってシリカゲル表面に導入されたことをも意味する。
【0039】
更に、シランカップリング剤を用いた後担持法によってシリカゲルの細孔表面に有機基を導入する場合、▲1▼シランカップリング剤のシリカゲル表面への吸着、▲2▼シリカゲル表面のシラノールとシランカップリング剤の加水分解性シリル基との反応、という二段階の過程を経由するが、後者の反応は固体表面上で起きるため立体障害が生じやすく、シランカップリング剤の全ての加水分解性シリル基が縮合に関与してシロキサン結合に変わることは殆ど無く、多くの場合は1個又は2個のシラノールが残存したままとなる。この結果、有機基担持後のシリカゲルの固体Si−NMRスペクトルにおいて、シランカップリング剤の加水分解性シリル基ケイ素に由来するDピーク群やTピーク群は、未反応シラノールを持つケイ素に由来するDやT,Tのピークが残存し易く、最も縮合度の高いケイ素に由来するDやTピークとの面積比、即ちD/D及びT/(T+T)の比が一定値を超えない傾向が見られ、本発明においてその比は通常2以下、好ましくは1.5以下、特に好ましくは1以下となる。上記の式(II)及び式(III)は、この現象を示したものである。
【0040】
これに対して、例えばテトラアルコキシシランとシランカップリング剤を共にモノマー状態から加水分解してゲルを得たような場合には、加水分解及び縮合反応は上記のような固体表面上の反応と異なり立体障害を受けにくいため、シランカップリング剤の加水分解性シリル基の縮合度は後担持の場合と比較して高くなり、上記の式(II)及び式(III)の右辺は2を超えることが多い。この様な同時加水分解の系でも、シランカップリング剤の加水分解性シリル基の反応性が特異的に低い場合には、縮合が進み難くなるために上記の式(II)及び式(III)の右辺が2以下となることがあるが、こうした場合には上記式(I)の条件は満たされないので、後担持の系と区別することは可能である。
【0041】
すなわち、上記式(I)と上記の式(II)及び/又は式(III)とを同時に満たすシリカゲルは、シランカップリング剤を用いて有機基を後担持させることによりシリカゲル表面に導入したシリカゲルであり、本発明の目的とする有機基担持シリカゲルである。
【0042】
なお、導入された有機基が複数種ある場合には、固体Si−NMRスペクトルパターンが複雑となるが、この場合には、得られたシリカゲルの固体Si−NMRスペクトルを、各々の有機基を含有するシランカップリング剤を単独で加水分解したもののSi−NMRスペクトルと比較することにより、各ピークの同定を行なった上で、前述の解析を行なえば良い。有機基の種類が異なることにより、例えば、有機基Aに由来するT ピーク群と有機基Bに由来するT ピーク群とが同時に出現した場合は、上記式(II)は(T +T )/{(T +T )+(T +T )}≦2の如く計算し、上記式(III)におけるDピーク群についての計算もこれに準じる。また、Dピーク群とTピーク群とが同時に出現した場合は、上記式(II)と上記式(III)とを同時に満たすべきこととする。
【0043】
本発明の有機基担持シリカゲルに導入される有機基の種類は、いわゆるシランカップリング剤の有機基として公知のものを、いずれも選択して使用することができる。本発明において特に有用な有機基とは、以下のYに表される群(有用有機基群)から選ばれるものである。
【0044】
Y:C1からC1000(好ましくはC1〜C500、更に好ましくはC1〜C100、特に好ましくはC1〜C50)の脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、脂肪芳香族化合物より誘導される1価以上の有機基であり、Yの水素の少なくとも一部が下記に示す原子及び/又は有機官能基で置換されていても良い。Yの複数の水素が下記に示す原子及び/又は有機官能基で置換されていても良く、この場合は、下記に示す原子及び/又は有機官能基の中から選択した1種又は2種以上の組み合わせにより置換されていても良い。更に、上記全ての場合において、下記に示す有機官能基の水素の少なくとも一部がF,Cl,Br,Iで置換されていても良い。また、Yはその中に連結基としてO、N、又はS等の各種の原子または原子団を有するものであっても良い。なお、下記に示す有機官能基は導入しやすいものの一例であり、使用目的に応じてこの他各種の化学的反応性、物理化学的機能性を持つ有機官能基を導入しても良い。
【0045】
例えば、上述したような一群から選ばれた有機基を導入し、シリカ表面の一部、またはほぼ全部を疎水化したものは、有害な有機化合物の吸着剤として極めて有用である。この際の有機基としては、脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水基等が挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖状炭化水素基や、フェニル基、ナフチル基、トルイル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。中でもメチル基やフェニル基の様に、珪素−炭素結合の耐熱性が高くなるような有機基が好ましい。
また、炭素数の小さい炭化水素基、例えば炭素数1〜4程度の低級アルキル基などは、その分子量が小さいので、本発明のシリカゲルの単位体積あたりの有機基導入量を多くすることが出来るので、好ましい。
【0046】
<Yの水素と置換可能な元素及び有機官能基の例>
F、Cl、Br、I、ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、スチリル基、メルカプト基、エポキシ基、エポキジシクロヘキシル基、グリシドキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシ基。
【0047】
本発明の有機基担持シリカゲルは、上記範囲の中で構造の異なる各種の有機基Yの中から選択した1種、又は任意の組み合わせの2種以上を目的有機基として同時に担持することが出来る。これらの有機基Yは本発明のシリカゲル中において、有機基Yの価数に応じた数のケイ素原子と共有結合により直接結合していることを特徴とする。これらのケイ素原子はシリカゲル骨格を形成するものの一部であり、有機基Yは実質的にシリカゲル骨格に直接導入された状態となっている。このような状態で有機基Yをシリカゲルへ導入するためには、有機基Yにシロキサン結合を形成し得る反応性末端が導入された試薬を用いればよい。このような試薬として最も入手が容易であり代表的なものは、下記に示すシランカップリング剤である。このほかにもシラノールと反応し、有機基を直接導入する一般合成試薬(以下、有機基導入試薬と表記)が数種あるが、工業的な入手がより容易であり、また反応条件に制限の少ないシランカップリング剤を用いることが好ましい。本発明においてシランカップリング剤とは、ケイ素原子に前述のような有機基Yが直結しているものの総称であり、以下の式(I)〜(III)に示される化合物である。
【0048】
(I)XSiY
X:水溶液中、空気中の水分、または無機質表面に吸着された水分などにより加水分解されて、反応性に富むシラノール基を生成する加水分解性シリル基であり、従来より公知のものを使用することが出来る。例えば、C1〜C4の低級アルコキシ基、アセトキシ基、ブタノキシム基、クロル基等が挙げられ、これらの加水分解性基は1種、又は2種以上を組み合わせた状態で、担持することができる。
Y:上記有機基Yであり、(I)の場合、1価の有機基である。
【0049】
このようなシランカップリング剤(I)はもっとも汎用であり、具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、4−クロロフェニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等を挙げることが出来る。
【0050】
(II)XSiY
X:(I)のXと同様の加水分解性シリル基である。
,Y:各々(I)のYと同様の1価の有機基であり、Y,Yは同じ基であっても各々異なる基であってもよい。
【0051】
このようなシランカップリング剤(II)の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン等を挙げることが出来る。
【0052】
(III)(XSi)
X:(I)のXと同様の加水分解性シリル基である。
Y:上記官能基Yであり、この場合Yはn価の有機基である。このようなシランカップリング剤の具体例としては、各種有機ポリマーやオリゴマーに側鎖として加水分解性シリル基が複数結合しているものが挙げられる。
【0053】
これら(I)〜(III)に具体的に例示した化合物は、入手容易な市販のシランカップリング剤の一部であり、更に詳しくは、科学技術総合研究所発行の「カップリング剤最適利用技術」9章のカップリング剤及び関連製品一覧表により示すことが出来る。また、当然のことながら、本発明に使用できるシランカップリング剤は、これらの例示により制限されるものではない。
【0054】
以上説明してきた物性を有する本発明の有機基担持シリカゲルは、細孔を制御した高純度のシリカゲルを担体として、これに目的有機基を含む化合物を後担持させることにより製造できる。
【0055】
担体となるシリカゲルの製造方法は、細孔制御のための水熱処理の前にシリカヒドロゲルを熟成しないという点を除けば、実質的に制限されるべきではなく、珪酸アルカリ塩を加水分解して得られるシリカヒドロゲル、またはシリコンアルコキシドを加水分解して得られるシリカヒドロゲルを水熱処理する方法を応用して製造することができる。中でも、シリコンアルコキシドを加水分解する方法が好ましい。
【0056】
担体シリカゲルの原料として使用されるシリコンアルコキシドとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の炭素数1〜4の低級アルキル基を有するトリまたはテトラアルコキシシラン或いはそれらのオリゴマーが挙げられるが、好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びそれらのオリゴマーである。以上のシリコンアルコキシドは蒸留により容易に精製し得るので、高純度の有機基担持シリカゲルの原料として好適である。シリコンアルコキシド中の金属不純物の総含有率は、通常好ましくは100ppm以下、更に好ましくは50ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。これらのいわば金属不純物の含有率は、一般的なシリカゲル中の不純物含有率の測定法と同じ方法で測定できる。
【0057】
シリコンアルコキシドの加水分解は、シリコンアルコキシド単独で加水分解する場合、シリコンアルコキシド1モルに対して、通常2〜20モル、好ましくは3〜10モル、特に好ましくは4〜8モルの水を用いて行なう。シリコンアルコキシドの加水分解により、シリカのヒドロゲルとアルコールが生成する。この加水分解反応は、通常、室温から100℃程度であるが、加圧下で液相を維持することでより高い温度で行なうことも可能である。
【0058】
また、加水分解時には必要に応じて、水と相溶性のあるアルコール類等の溶媒を添加しても良い。具体的には、炭素数1〜3の低級アルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルエチルケトン、その他の水と任意に混合出来る有機溶媒を任意に用いることができるが、中でも強い酸性や塩基性を示さないものが、均一なシリカヒドロゲルを生成出来る理由から好ましい。
【0059】
反応時間は反応液組成(シリコンアルコキシドの種類や、水とのモル比)並びに反応温度に依存し、ゲル化するまでの時間が異なるので、一概には規定されない。反応時間はヒドロゲルの破壊応力が6MPaを越えない時間である。なお、反応系に、触媒として、酸、アルカリ、塩類などを添加することで加水分解を促進させることができる。しかしながら、かかる添加物の使用は、後述のように、生成したヒドロゲルの熟成を引き起こすことになるので、本発明の有機基担持シリカゲルの製造においてはあまり好ましいことではない。
【0060】
結晶構造を有するシリカゲルは、水中熱安定性に乏しくなる傾向にあり、ゲル中に細孔を形成するのに用いられる界面活性剤等のテンプレートの存在下でシリコンアルコキシドを加水分解すると、ゲルは容易に結晶構造を含むものとなる。従って、本発明においては、界面活性剤等のテンプレートの非存在下で、すなわち、これらがテンプレートとしての機能を発揮するほどの量は存在しない条件下で加水分解するのが好ましい。
【0061】
反応時間は、反応液組成(シリコンアルコキシドの種類や、水とのモル比)や反応温度などに依存し、ゲル化するまでの時間が異なるので、一概には規定されない。なお、反応系に触媒として、酸、アルカリ、塩類などを添加することで加水分解を促進させることができる。しかしながら、かかる添加物の使用は、後述するように、生成したヒドロゲルの熟成を引き起こすことになるので、本発明の有機基担持シリカゲルの製造においてはあまり好ましくない。
【0062】
上記のシリコンアルコキシドの加水分解反応では、シリコンアルコキシドが加水分解してシリケートが生成するが、引き続いて該シリケートの縮合反応が起こり、反応液の粘度が上昇し、最終的にゲル化してシリカヒドロゲルとなる。本発明の有機基担持シリカゲルを製造するためには、シリカヒドロゲルを実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行なうことが重要である。
【0063】
上記のシリコンアルコキシドの加水分解反応では、シリコンアルコキシドが加水分解してシリケートが生成するが、引き続いて該シリケートの縮合反応が起こり、反応液の粘度が上昇し、最終的にゲル化してシリカヒドロゲルとなる。本発明の有機基担持シリカゲルを製造するためには、上記の加水分解により生成したシリカのヒドロゲルの硬さが上昇しないように、実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行なうことが重要である。シリコンアルコキシドを加水分解すると、軟弱なシリカのヒドロゲルが生成するが、このヒドロゲルを安定した熟成、あるいは乾燥させ、更にこれに水熱処理を施し、最終的に細孔特性の制御されたシリカゲルとする従来の方法では、本発明で規定する物性範囲のシリカゲルを製造することができない。
【0064】
上記にある、加水分解により生成したシリカのヒドロゲルを、実質的に熟成することなく、直ちに水熱処理を行なうということは、シリカのヒドロゲルが生成した直後の軟弱な状態が維持されたままで、次の、水熱処理に供するようにするということを意味する。シリコンアルコキシドの加水分解反応系に酸、アルカリ、塩類等を添加すること、または該加水分解反応の温度を厳しくし過ぎることなどは、ヒドロゲルの熟成を進行させるため好ましくない。また、加水分解後の後処理における水洗、乾燥、放置などにおいて、必要以上に温度や時間をかけるべきではない。
【0065】
ヒドロゲルの熟成状態を具体的に確認する手段としては、後述の実施例に示すような方法で測定したヒドロゲルの硬度を参考にすることができる。即ち、破壊応力が、通常6MPa以下、好ましくは3MPa以下、更に好ましくは2MPa以下の柔らかい状態のヒドロゲルを水熱処理することで、本発明で規定する物性範囲の担体シリカゲルを得ることができる。
【0066】
この水熱処理の条件としては、水の状態が液体、気体のいずれでもよく、溶媒や他の気体によって希釈されていてもよいが、好ましくは液体の水が使われる。水熱処理を行ない易いように粗砕されたシリカのヒドロゲルに対して、通常0.1〜10重量倍、好ましくは0.5〜5重量倍、特に好ましくは1〜3重量倍の水を加えてスラリー状とし、通常40〜250℃、好ましくは50〜200℃の温度で、通常0.1〜100時間、好ましくは1〜10時間実施される。水熱処理に使用される水には低級アルコール類、メタノール、エタノール、プロパノールや、ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルスルホキシド(DMSO)、その他の有機溶媒などが含まれてもよい。また、メンブランリアクターなどを作る目的で、シリカゲルを膜状あるいは層状に粒子、基板、あるいは管などの基体上に形成させた材料の場合にも、この水熱処理方法は適用される。なお、加水分解反応の反応器を用い、続けて温度条件変更により水熱処理を行なうことも可能であるが、加水分解反応とその後の水熱処理では最適条件が通常は異なっているため、この方法で本発明の有機基担持シリカゲルの材料となる担体シリカゲルを得ることは一般的には難しい。
【0067】
以上の水熱処理条件において温度を高くすると、得られるシリカゲルの細孔径、細孔容積が大きくなる傾向がある。水熱処理温度としては、100〜200℃の範囲であることが好ましい。また、処理時間とともに、得られるシリカゲルの比表面積は、一度極大に達した後、緩やかに減少する傾向がある。以上の傾向を踏まえて、所望の物性値に応じて条件を適宜選択する必要があるが、水熱処理は、シリカゲルの物性を変化させる目的なので、通常、前記の加水分解の反応条件より高温条件とすることが好ましい。
【0068】
水熱処理の温度、時間を上記範囲外に設定すると、本発明の有機基担持シリカゲルの材料として適した担体シリカゲルを得ることが困難となる。例えば、水熱処理の温度が高すぎると、シリカゲルの細孔径、細孔容積が大きくなりすぎ、また、細孔分布も広がる。逆に、水熱処理の温度が低過ぎると、生成するシリカゲルは、架橋度が低く、熱安定性に乏しくなり、細孔分布にピークが発現しなくなる傾向がある。
【0069】
なお、水熱処理をアンモニア水中で行なうと、純水中で行なう場合よりも低温で同様の効果が得られる。また、アンモニア水中で水熱処理すると、純水中で処理する場合と比較して、最終的に得られるシリカゲルは一般に疎水性となるが、通常30〜250℃、好ましくは40〜200℃という比較的高温で水熱処理すると、特に疎水性が高くなる。ここでのアンモニア水のアンモニア濃度としては、好ましくは0.001〜10%、特に好ましくは0.005〜5%である。
【0070】
水熱処理されたシリカヒドロゲルは、通常40〜200℃、好ましくは60〜120℃で乾燥する。乾燥方法は特に限定されるものではなく、バッチ式でも連続式でもよく、且つ、常圧下でも減圧下でも乾燥することができる。以上の方法により、本発明の有機基担持シリカゲルの材料となる担体シリカゲルを得ることができる。
【0071】
なお、以上により得られたシリカゲルに対して、目的有機基を担持させる前に前処理を行なってもよい。例えば、担体シリカゲルの原料であるシリコンアルコキシド等に由来する炭素分が含まれている場合には、必要に応じて、通常400〜600℃で焼成除去してもよい。更に、表面状態をコントロールするために、最高900℃の温度で焼成したり、無機酸により煮沸処理したりしてもよい。
【0072】
続いて、上述の高純度の担体シリカゲルに対して、目的有機基を含む化合物を後担持させる。具体的には、まず、担体シリカゲルの細孔中に目的有機基を含むシランカップリング剤又は有機基導入試薬を導入する。その方法としては公知の方法の何れを用いてもよいが、細孔内部を均一に修飾するためには、非水溶媒系を用いた湿式法や、ドライコンセントレート法による乾式法の他、気相法(Chemical Vapor Deposition:CVD法)等が好ましい。
【0073】
湿式法や乾式法を用いる場合、本発明において規定される範囲の物性を得るためには、水を溶媒としない方法を用いることが特に好ましい。使用可能な非水溶媒としては、トルエンやシクロヘキサン等の疎水性溶媒の他、脱水処理をしたメタノール、エタノール等の親水性溶媒も挙げられる。
【0074】
反応温度に関しては、加水分解性シリル基をシリカゲル表面のシラノールと反応させるためにある程度の加温が必要であり、通常50℃以上、好ましくは80℃以上である。但し、あまり高温とするとシランカップリング剤が分解してしまい好ましくないので、通常200℃以下である。
【0075】
また、反応時間に関しては、十分なシランカップリング処理を行なうためにはある程度以上の反応時間が必要なので、通常1時間以上、好ましくは3時間以上である。但し、あまり長時間とするとシランカップリング剤が変質してしまい好ましくないので、通常96時間以下である。
【0076】
使用するシランカップリング剤の量は、多過ぎると担体シリカゲルの細孔特性を生かすことができず、少な過ぎると導入する有機基による機能性をシリカゲルに十分に付与することができない。一般に、導入する有機基の量が比較的少ない(例えば、シランカップリング剤による最小被覆面積が、シリカゲルの総表面積よりも小さい)場合には、導入したい有機基の量に対して等量から10倍量までの範囲で処理を行なうことが好ましい。一方、導入する有機基の量を比較的多くしたい場合には、シランカップリング剤の最小被覆面積から計算される量を最低として、それ以上の量を用いることが好ましいが、最適な使用量は、使用するシランカップリング剤の種類や担体シリカゲルの種類に応じて決められる。
【0077】
反応に必要な水分としては、▲1▼担体由来の水分(吸着水あるいは潜在的な水分としてのシラノール)と、▲2▼使用する試薬・溶媒由来の水分との2種類があるが、水分総量が多過ぎると均一な修飾ができず、少な過ぎると反応そのものが進行しない。一般的には、担体に含まれる極微量の水分のみで十分に反応は進行する。▲1▼に関しては、加熱減量(160℃で2時間処理した際の減量)が、通常10%以下、中でも7%以下のシリカゲルを用いることが好ましく、また、強熱減量(160℃で2時間前処理したシリカゲルを1000℃で1時間焼成した際の減量)が、通常2.0〜10%、中でも2.5〜7%のシリカゲルを用いることが好ましい。▲2▼に関しては、シランカップリング剤に水分が含まれていると、加水分解縮合して変質してしまうため、水分を含まないシランカップリング剤を使用することが好ましい。また、溶媒由来の水分量に関しては、使用するシランカップリング剤の量により許容される上限は異なるが、使用するシランカップリング剤に対して、通常等モル量以下、好ましくは1/2モル量以下となるようにすることが好ましい。
【0078】
溶媒の種類に関しては、用いるシランカップリング剤により溶解性などが異なるため、各種選ばれるべきであって一概には言えないが、少なくともシランカップリング剤と反応しない溶媒が選択される。一般には炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、アルコール、ハロゲン化炭化水素等が用いられる。中でも、あまりに低沸点の溶媒は、処理温度を高くすることができないので有機基導入の効果が低いという問題点があり、また、あまりに高沸点の溶媒は、処理温度を選択することができる反面、有機基導入後の溶媒除去が困難であり好ましくない。よって一般に沸点が80〜200℃の範囲の溶媒を用いることが好ましい。
【0079】
シランカップリング処理中の雰囲気は、水分を遮断した条件であることが好ましい。反応性の高いシランカップリング剤を用いる場合には、特に不活性ガスの条件下にて処理を行なうことが望ましい。
【0080】
なお、シランカップリング処理を気相法にて行なう場合にも、上記の湿式法や乾式法の場合と同様に、系内の水分量、処理温度、シランカップリング剤の量、希釈ガスの選択、ガス流量などの最適化が重要である。
【0081】
上記の各種方法を用いて担体シリカゲルに導入させる目的有機基の種類及び量は、目的有機基が機能性を発現する範囲であれば特に限定されず、これらの目的有機基を有するシランカップリング剤又は有機基導入試薬であれば、どのような種類のものを用いても良い。また、高純度な有機基担持シリカゲルを得る観点から、目的有機基を含むシランカップリング剤又は有機基導入試薬も、それぞれ高純度なものを用いることが好ましい。
【0082】
以上の操作により担体シリカゲルの細孔内に目的有機基を導入した後、必要に応じて200〜400℃で焼成することにより、目的有機基を含む化合物とシリカゲルとの間の架橋反応を促進させたり、目的有機基を残しつつ、溶媒等の不要な有機成分を除去したりすることができる。必要であれば、目的有機基の前駆体となる有機基を導入した後に酸化や還元等の化学処理を行ない、本来の目的有機基に変換しても良い。更に、必要に応じて粉砕、分級することで、最終的に目的としていた本発明の有機基担持シリカゲルを得る。
【0083】
本発明の有機基担持シリカゲルに担持させる目的有機基の選択対象となる有機基のうち、特に有用なものは、C1〜C50の有機基Y、及びYの水素がF,C1,Br,Iなどの原子に置換されたものの他、フェニル基、ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、スチリル基、メルカプト基、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、アミノ基、アンモニウム基、シアノ基、ニトロ基、スルホン酸基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシ基、アリル基等で置換されたものである。本発明の有機基担持シリカゲルにこれらの有機基を導入すると、上記有機官能基の各々の官能基特性に基づいた機能性が発現するわけであるが、どのような官能基を選択するかは、官能基を導入したシリカ材料の用途に負うところが大きい。
【0084】
シリカ材料のような無機材料の表面を改質する場合、望まれる特性のひとつに有機物質との親和性向上がある。この目的のために、有機基YとしてC1〜50の直鎖アルキル基が直接使用される他、導入される有機官能基として、ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、スチリル基、メルカプト基、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基等のような有機樹脂等のマトリックスとの親和性もしくは化学反応性が高い官能基が選択される。中でも、ビニル基、メタクリロキシ基、アグリロキシ基、スチリル基は、官能基内に二重結合を持ち、同様に二重結合を有する有機樹脂と共有結合により強固に結合するので、得られた有機−無機複合材料が高い構造強度及び耐水性を発現する。また、各種の機能性材料の骨格としても用いられる。
【0085】
反応性の極性基や水溶性の物質と複合化する場合、シリカ材料の表面にメルカプト基、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシ基、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルホン酸基などの官能基を導入することがそれらの化学的特性を最大限に利用できて好ましい。
【0086】
一般の触媒担体用途において、シリカゲル表面に触媒活性を持つ金属又は金属イオンを担持するにあたり、補助となる官能基を導入することがある。この場合、アミノ基、スルホン酸基、カルボキシ基等のイオン交換可能な基や、メルカプト基、ヒドロキシ基等の親水性の有機官能基、又はそれらを化学的に修飾した有機官能基が好ましい。
【0087】
バイオ技術における固定化酵素用担体などの用途では、シリカゲル表面に酵素やタンパク質、アミノ酸等を固定化するための補助となる官能基を導入することがある。この場合、アミノ基、カルボキシ基などのペプチド結合を形成出来る官能基が好ましい。また、メルカプト基も同様に結合を形成でき、一般に金属または金属イオンと強く相互作用するので好ましい。
【0088】
クロマトグラフィー分野では、表面を疎水化した材料が広く用いられており、通常はアルキル基を結合させる。また、光学活性物質の分離用途では、光学活性物質を持った有機化合物を結合させるため、アミノ基等が広く用いられる。また、有機基YにFを導入したパーフルオロアルキル基等を官能基として導入し、シリカ材料の表面を高度に疎水化することも行われる。勿論、これらの用例は一例であり、好ましい官能基の例はこれらに限定されるわけではない。
【0089】
本発明の有機基担持シリカゲルは、従来からのシリカゲルの用途の他、いかなる用途においても利用することができる。このうち従来の用途としては、以下のようなものが挙げられる。
【0090】
例えば、産業用設備で製品の製造及び処理に用いられる用途分野においては、各種触媒及び触媒担体(酸塩基触媒、光触媒、貴金属触媒等)、廃水・廃油処理剤、臭気処理剤、ガス分離剤、工業用乾燥剤、バイオリアクター、バイオセパレーター、メンブランリアクター等の用途が挙げられる。建材用途では、調湿剤、防音・吸音材、耐火物、断熱材等の用途が挙げられる。また、空調分野の用途では、デシカント空調機用調湿剤、ヒートポンプ用蓄熱剤等が挙げられる。塗料・インク用途分野においては、艶消し剤、粘度調整剤、色度調整剤、沈降防止剤、消泡剤、インク裏抜け防止剤、スタンピングホイル用、壁紙用等の用途が挙げられる。樹脂用添加剤用途分野においては、フィルム用アンチブロッキング剤(ポリオレフィンフィルム等)、プレートアウト防止剤、シリコーン樹脂用補強剤、ゴム用補強剤(タイヤ用・一般ゴム用等)、流動性改良材、パウダー状樹脂の固結防止剤、印刷適性改良剤、合成皮革やコーティングフィルム用の艶消し剤、接着剤・粘着テープ用充填剤、透光性調整剤、防眩性調整剤、多孔性ポリマーシート用フィラー等の用途が挙げられる。また、製紙用途分野においては、感熱紙用フィラー(カス付着防止剤等)、インクジェット紙画像向上用フィラー(インク吸収剤等)、ジアゾ感光紙用フィラー(感光濃度向上剤等)、トレーシングペーパー用筆記性改良剤、コート紙用フィラー(筆記性、インク吸収性、アンチブロッキング性改良剤等)、静電記録用フィラー等の用途が挙げられる。食品用途分野においては、ビール用濾過助剤、醤油・清酒・ワイン等発酵製品のおり下げ剤、各種発酵飲料の安定化剤(混濁因子タンパクや酵母の除去等)、食品添加剤、粉末食品の固結防止剤等の用途が挙げられる。医農薬分野においては、薬品等の打錠助剤、粉砕助剤、分散・医薬用担体(分散・徐放・デリバリー性改善等)、農薬用担体(油状農薬キャリア・水和分散性改善、徐放・デリバリー性改善等)、医薬用添加剤(固結防止剤・粉粒性改良剤等)・農薬用添加剤(固結防止剤・沈降防止剤等)等が挙げられる。分離材料分野では、クロマトグラフィー用充填剤、分離剤、フラーレン分離剤、吸着剤(タンパク質・色素・臭等)、脱湿剤等の用途が挙げられる。農業用分野では、飼料用添加剤、肥料用添加剤が挙げられる。更に、その他の用途として、生活関連分野では、調湿剤、乾燥剤、化粧品添加剤、抗菌剤、消臭・脱臭・芳香剤、洗剤用添加剤(界面活性剤粉末化等)、研磨剤(歯磨き用等)、粉末消火剤(粉粒性改良剤・固結防止剤等)、消泡剤、バッテリーセパレーター等が挙げられる。
【0091】
特に、各種有機基を担体となるシリカゲルに後担持させて製造した本発明の有機基担持シリカゲルは、例えば有機基を予めドープした有機基ドープシリカゲルと比較して、以下の利点を有する。
・担体シリカゲルの細孔制御を終えてから有機基担持をするので、シリコンアルコキシドの加水分解に影響を与える有機基、例えば酸性や塩基性の有機基でも担持させることが可能となり、選択できる有機基の種類の幅が広い。
・比較的少量のシランカップリング剤にて、担体シリカゲルの表面のみを有効に処理することが可能である。
・高い硬度を有し、機械的強度に優れた有機基担持シリカゲルを製造することができる。
【0092】
従って、本発明の有機基担持シリカゲルは、上に挙げた各種用途の中でも、特に制御された細孔特性が要求されるとともに、長期にわたって物性変化の少ないことが要求され、且つ、上述した各種利点が要求される分野において、特に好適に用いることができる。
但し、他の方法で有機基を導入したシリカゲル、例えば上述の有機基ドープシリカゲルには、導入する有機基の量を極めて多くすることが可能である上に、少ない工程数で簡便に製造できる等の利点も存在する。従って、目的に応じた方法で有機基を導入することが好ましい。
【0093】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0094】
(1) シリカのヒドロゲルの硬度測定:
5Lセパラブルフラスコ中でシリコンアルコキシドと6モル倍の水を反応させ、反応液の温度が反応により生成するアルコールの沸点に達した後に、反応液をフラスコより抜き取り、抜き出した反応液を50ccのガラス製スクリュー管に一定量(液深で20mm程度)移し、密栓して実質的に一定温度にコントロールされた水浴に保持し、熟成時間の経過と共に破壊強度をデジタルフォースゲージ(株式会社エイ・アンド・ディー社製、型式:AD−4935)にて測定した。該測定器にはプローブ(ステンレス製直径5mmの丸棒)が装着されており、ヒドロゲル中にゆっくりと押し込まれることにより、容器中に保持されたヒドロゲルを圧縮破壊する。ヒドロゲルが圧縮されて破壊される迄の間に示される最大の応力値をもって破壊応力とした。
【0095】
測定結果を図1に示した。図1は、シリカヒドロゲルの熟成時間の常用対数を横軸に、破壊応力を縦軸にプロットしたものである。図1より、熟成時間の経過とともに破壊応力が大きくなること、熟成速度が温度に依存していることがわかる。
【0096】
(2)有機基担持シリカゲルの分析方法
2−1)細孔容積、比表面積:
カンタクローム社製AS−1にてBET窒素吸着等温線を測定し、細孔容積、比表面積を求めた。具体的には細孔容積は相対圧P/P=0.98のときの値を採用し、比表面積はP/P=0.1,0.2,0.3の3点の窒素吸着量よりBET多点法を用いて算出した。また、BJH法で細孔分布曲線及び最頻直径(Dmax)における微分細孔容積を求めた。測定する相対圧の各点の間隔は0.025とした。
【0097】
2−2)粉末X線回折:
理学電機社製RAD−RB装置を用い、CuKαを線源として測定を行なった。発散スリット1/2deg、散乱スリット1/2deg、受光スリット0.15mmとした。
【0098】
2−3)金属不純物の担持量:
試料2.5gにフッ酸を加えて加熱し、乾涸させたのち、水を加えて50mlとした。この水溶液を用いてICP発光分析を行なった。なお、ナトリウム及びカリウムはフレーム炎光法で分析した。
【0099】
2−4)全ケイ素中の炭素と結合したケイ素の含有量の測定等:
Bruker社製固体NMR装置(「MSL300」)を使用するとともに、共鳴周波数59.2MHz(7.05テスラ)、7mmのサンプルチューブを使用し、CP/MAS(Cross Polarization / Magic Angle Spinning)プローブの条件で測定した。具体的な測定条件を下の表1に示す。
【0100】
【表1】
Figure 2005022899
【0101】
測定データの解析(各々のピークの分離)は、ピーク分割によって各ピークを抽出する方法で行なう。具体的には、ガウス関数を使用した波形分離解析を行なう。この解析には、サーモガラテック(Thermogalatic)社製の波形処理ソフト「GRAMS386」を使用することが出来る。
【0102】
測定により得られた個体Si−NMRスペクトルの全Qピークの面積の合計をA、全Dピーク及び全Tピークの面積の合計をBとして、下記式により全ケイ素中の炭素と結合したケイ素の含有率X(%)を算出した。
【数2】
Figure 2005022899
【0103】
さらに、下記の式(I)〜式(III)に関しても検証を行った。
/(Q+Q)≧0.151×(Dmax)+1.01 ・・・式(I)
/D≦2 ・・・式(II)
/(T+T)≦2 ・・・式(III)
【0104】
(3) 有機基担持シリカゲルの製造、評価
[実施例1]
・担体シリカゲルの製造:
ガラス製で上部に大気解放の水冷コンデンサが取り付けてある1Lセバラブルフラスコ(ジャケット付き)に純水446.1gを仕込んだ。これを80rpmで攪拌しながら、テトラメトキシシラン150g及びビニルトリメトキシシラン37.5g(テトラメトキシシランの25重量%)の混合液を、1分間かけて加えた。水/(テトラメトキシシラン+ビニルメトキシシラン)のモル比は約20である。セバラブルフラスコのジャケットには50℃の温水を通水した。引き続き攪拌を継続し、内容物が沸点に到達した時点で攪拌を停止した。引き続きジャケットに50℃の温水を通水して、生成したゾルをゲル化させた。その後、速やかにゲルを取り出し、目開き600μmのナイロン製網を通してゲルを粉砕し、粉体状のウエットゲル(シリカヒドロゲル)を得た。このヒドロゲル20gと純水20gを容量60m1のミクロボンベに仕込み、150℃で3時間水熱処理を行なった。水熱処理の終了後、No.5A濾紙で濾過し、濾滓を水洗することなく100℃で恒量となるまで減圧乾燥した。得られたシリカゲル(実施例1の担体シリカゲル)の諸物性を下の表2に示す。
【0105】
・シリカゲル表面への有機基(ビニル基)の導入:
大気開放の水冷コンデンサが取り付けてある500m1三頭フラスコに、上記操作により得られた実施例1の担体シリカゲル20gを精秤し、脱水トルエン200m1を加え、攪拌及び窒素パージを行ないながら25gのビニルトリメトキシシランを加え、加熱して還流を5時間行なった後、濾過により固形物を取り出し、脱水トルエン及びメタノールで洗浄して70℃で真空乾燥した。得られたビニル基含有シリカゲル(実施例1の有機基担持シリカゲル)の諸物性を表3に示す。粉末X線回折図によれば、周期的構造による低角度側(2θ≦5deg)のピークは認められなかった。金属含有率を分析すると、ナトリウム0.2ppm、カリウム0.1ppm、カルシウム0.2ppmで、その他の金属は検出されなかった。
【0106】
[比較例1]
富士シリシア化学(株)の触媒担体用シリカゲル CARIACT G−6 を担体として使用した他は、実施例1と同様の条件にて有機基の導入を行ない、比較例1のビニル基担持シリカゲルを得た。担体シリカゲルの諸物性を表2に、得られたビニル基担持シリカゲルの諸物性を表3に示す。粉末X線回折図によれば、周期的構造による低角度側(2θ≦5deg)のピークは認められなかった。金属含有率を分析すると、ナトリウム165ppm、マグネシウム28ppm、アルミニウム14ppm、カリウム20ppm、カルシウム152ppm、チタン251ppm、クロム3ppm、鉄24ppm、ジルコニウム40ppmであった。
【0107】
【表2】
Figure 2005022899
【0108】
【表3】
Figure 2005022899
【0109】
なお、使用したビニルトリメトキシシランの有機基に結合しているケイ素は、酸素原子が3つ結合し、ビニル基の炭素原子が1つ結合している、いわゆるTサイトのケイ素である。このため、固体Si−NMRスペクトルを測定した結果、実施例1及び比較例1の何れの有機基担持シリカゲルでも、Qピーク群及びTピーク群のみが検出され、Dサイトに由来するDピーク群は検出されなかった。
【0110】
実施例1及び比較例1の何れの有機基担持シリカゲルでも、上記式(I)及び式(II)をともに満たしていることから、目的とする有機基(ビニル基)が共有結合により担体シリカゲルに導入されていることが確認できる。
実施例1の有機基担持シリカゲルは、比較例1の有機基担持シリカゲルと比較して、より細孔分布がシャープで、高比表面積,高細孔容積であり、優れた細孔容積を有している。また、純度がより高く、耐熱性や耐水性等にも優れていると考えられる。更に、有機基導入前後の細孔特性の劣化の度合いも少ない。
【0111】
【発明の効果】
本発明の新規な有機基担持シリカゲルは、従来からの有機基担持シリカゲルと比較して、目的とする有機基を高濃度で担持するとともに、生産性に優れ、シャープな細孔分布を示し、且つ耐熱性、耐水性、物性安定性(熱安定性等)などにも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリカのヒドロゲルを35℃、45℃及び55℃の各温度で熟成させた場合の各熟成時間とその際のヒドロゲルの破壊応力との関係を示す図である。

Claims (7)

  1. (a)細孔容積が0.5〜1.6ml/gであり、
    (b)比表面積が300〜900m/gであり、
    (c)細孔の最頻直径(Dmax)が20nm未満であり、
    (d)直径がDmax±20%の範囲内にある細孔の総容積が、全細孔の総容積の40%以上であり、
    (e)非晶質であり、
    (f)全ケイ素原子のうち炭素原子と直接結合したケイ素原子の割合が、0.1%以上であり、
    (g)固体Si−NMR測定において、Q,Q,Qの各ピーク面積が、下記式(I)
    /(Q+Q)≧0.151×(Dmax)+1.01 ・・・式(I)
    を満足し、且つ、
    (h)固体Si−NMR測定において、D,D,T,T,Tの各ピーク面積が、下記式(II)及び/又は下記式(III)
    /D≦2 ・・・式(II)
    /(T+T)≦2 ・・・式(III)
    を満足する
    ことを特徴とする、有機基担持シリカゲル。
  2. 細孔容積が0.6〜1.6ml/gである
    ことを特徴とする、請求項1記載の有機基担持シリカゲル。
  3. 比表面積が400〜900m/gである
    ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の有機基担持シリカゲル。
  4. 細孔の最頻直径(Dmax)が2nm以上である
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の有機基担持シリカゲル。
  5. 直径がDmax±20%以内の細孔の総容積が、全細孔の総容積の50%以上である
    ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の有機基担持シリカゲル。
  6. 金属不純物の含有率が500ppm以下である
    ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の有機基担持シリカゲル。
  7. 最頻直径(Dmax)における微分細孔容積が2〜20ml/gである
    ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の有機基担持シリカゲル。
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