JP2005019595A - ヒートシンク、その製造方法および半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】単結晶SiCからなる基板上に電気絶縁膜を形成することにより、前記基板のマイクロパイプを閉塞し、表面を平坦にして、絶縁破壊強さが2×10V以上の電子部品の放熱のためのヒートシンク素材を得る。前記基板の主面が(0001)面から10度以上離れた面とし、この面上に導電膜を形成して、この膜に半導体レーザ等の放熱すべき電子部品をロウ接合する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気絶縁性を有し、熱伝導率の高いヒートシンク、その製造方法およびかかるヒートシンクを備える半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体レーザ、電力コントロール用半導体装置または電界効果型半導体装置などでは、半導体素子の発熱により、半導体の素子機能が低下するのを避けるために、放熱体であるヒートシンクを用いる。ヒートシンクは、半導体素子より大きな熱容量を持ち、半導体素子に装着して、半導体素子の熱を熱伝導の作用により除去する。
【0003】
代表的なヒートシンクには、たとえば、アルミナ基板の表面に、同時焼成などにより厚膜メタライズしたものを絶縁放熱板とし、CuまたはAlなどの金属からなるヒートシンクを、この絶縁放熱板上にハンダ付けした後、半導体素子を搭載する面に、銅製のヒートスプレッダをハンダ付けしたものがある(特許文献1参照)。
【0004】
また、半導体素子とヒートシンクとの熱膨張係数の差が、半導体素子に歪みをもたらし、半導体素子に対し電気特性の変化または信頼性の低下などの悪影響を与える場合がある。このような場合には、ヒートシンク上に、半導体素子を構成する材料と比較的熱膨張係数が近い材料からなるサブマウントを配置し、その上にハンダ材料を介して半導体素子を搭載し固着する方法がある。
【0005】
サブマウント材料としては、たとえば、CuWなどが用いられているが、近年、半導体素子の小型化、高集積化および大容量化が進み、半導体素子の単位面積当たりの発熱量が増加し、CuWなどからなるサブマウントでは、熱により誘発される半導体素子の歪みを十分に抑制することが困難となっている。かかる問題を解消するため、サブマウント材料として、熱膨張係数が小さいSiCを用いる技術が紹介されている(特許文献2参照)。
【0006】
SiC単結晶の熱伝導率は、490W/mKであり、金属、セラミックスなどのほとんどの材料の熱伝導率が300W/mK程度であるから、SiC単結晶は優れた熱伝導率を有している。熱伝導率が490W/mKを凌ぐ材料としては、ダイヤモンドまたはダイヤモンド構造のc−BN程度しかない。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−309688号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2003−78084号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、多くの半導体装置において、ヒートシンクには電気絶縁性が要求されるが、単結晶SiCは、窒素が添加されたn型半導体材料が一般的であって、導電性がある。これは、単結晶SiCの成長温度が2000℃以上という高温であり、炉材から揮発する不純物を抑えることが難しく、窒素がSiCに混入してしまうためである。一方、炉材を高純度化し、結晶成長に際して窒素が混入していないSiC、すなわち、絶縁性SiCを作成することは理論的には可能であるが、非常に高価な基板となるため、実用的ではない。
【0010】
また、単結晶SiC基板は、(0001)面を主面とする基板が一般的であるが、(0001)面にはマイクロパイプと呼ばれる直径10〜20μmの貫通孔が多数存在している。このため、半導体素子との接合面積が減少して熱の伝導効率が低下し、さらに貫通孔内に電極材料が入り、良好な電気絶縁性を確保できないという問題がある。
【0011】
本発明の課題は、電気絶縁性を有し、熱伝導率の高いヒートシンクを安価に提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のヒートシンクは、電子部品の放熱のために装着し、単結晶SiCからなる基板と、基板上に電気絶縁膜とを有し、絶縁破壊強さが2×10V以上であることを特徴とする。また、本発明のヒートシンクの他の態様は、単結晶SiCからなる基板を有し、基板の主面が、(0001)面から10度以上離れた面であることを特徴とし、かかるヒートシンクは、基板上に電気絶縁膜を有し、絶縁破壊強さが2×10V以上であるものが好ましい。電気絶縁膜は、SiO2、Si3N4、AlNおよびAl2O3からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む組成を有するものが好ましい。
【0013】
基板の主面には結晶学的に任意の面を使用することができるが、(0001)面、または(0001)面に直交する面が好ましく、中でも(0001)面に直交する面がより好ましい。これは、(0001)面においては、面内方向で物性に異方性がなく、方向を意識する必要がないためであり、(0001)面に直交する面においては、マイクロパイプが存在せず、素子との密着性が向上するためである。また、(0001)面から±10度以内の面を基板の主面とする場合には、基板の主面に存在するマイクロパイプを電気絶縁膜または導電膜により閉塞し、表面が平坦なヒートシンクが好ましい。
【0014】
さらに、レーザまたは電力コントロール用半導体装置などにおいては、発熱体である半導体素子との接合面には、熱伝導度の低い酸化膜または窒化膜などの電気絶縁膜を形成せず、SiC基板の主面のうち、半導体素子と接合する面の反対面にのみ電気絶縁膜を形成し、半導体素子およびヒートシンクを、ヒートシンクをマウントするベースから絶縁する態様が好ましい。
【0015】
本発明の製造方法は、電子部品の放熱のために装着し、絶縁破壊強さが2×10V以上であるヒートシンクの製造方法であって、単結晶SiCからなる基板上に電気絶縁膜を形成する工程を備えることを特徴とする。また、本発明のヒートシンクは、ジャンクションダウン方式の接合を形成してなる半導体レーザ、電力コントロール用半導体装置、またはフリップチップ型のマウントを形成し、絶縁を形成してなる電界効果型半導体装置用のヒートシンクとして好適である。
【0016】
【発明の実施の形態】
(ヒートシンク)
本発明のヒートシンクは、単結晶SiCからなる基板と、基板上に電気絶縁膜とを有し、絶縁破壊強さが2×10V以上であることを特徴とする。単結晶SiCは、熱伝導率は高いが、製造に際して、炉、炉材、原料およびガスの純度に特別の処置を施さない限り、窒素ガスを導入しなくても、窒素によりドーピングされている。このため、通常の条件で製造した単結晶SiCの電気抵抗率は1×100〜1×10−2Ωcmであり、微電流が流れて絶縁性を示さない。しかし、本発明によれば、通常の条件で製造し、絶縁性を示さない単結晶SiCからなる基板を使用して、電気絶縁性を有し、熱伝導率の高い、優れたヒートシンクを安価に提供することができる。
【0017】
本発明のヒートシンクは、電気絶縁膜の種類および厚さなどにより異なるが、一般的には、熱伝導率が、340W/mK以上のものが好ましく、400W/mK以上のものがより好ましく、480W/mK以上のものが特に好ましい。また、本発明のヒートシンクの電気絶縁性は、絶縁破壊強さ(破壊電圧)で、2×10V以上であり、1×102V以上のものが好ましく、2×103V以上のものがより好ましい。本明細書では、熱伝導率は、JIS−R1611に基づき測定し、絶縁破壊強さは、JIS−K6911に基づき測定する。
【0018】
電気絶縁膜は、単結晶SiCの高い熱伝導率を維持し、熱的に安定なヒートシンクとし、また、絶縁破壊強さを高めて、静電破壊および短絡を防止する点から、SiO2、Si3N4、AlN、Al2O3またはこれらの混合物からなる膜が好ましく、SiO2からなる膜が特に好ましい。電気絶縁膜の厚さは、薄過ぎると十分な電気絶縁性を確保できないため、0.5nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましい。また、SiO2、Si3N4、AlNまたはAl2O3などの材料は、熱伝導率が低いため、電気絶縁膜が厚すぎると、ヒートシンクの熱伝導率が低下する。したがって、電気絶縁膜の厚さは、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。
【0019】
電気絶縁膜上に、Cr、Ni、Tiまたはこれらの合金からなる導電膜を有するヒートシンクが好ましい。これらの導電膜は、電極として利用することができるが、Auなどからなる導電膜は、容易に剥がれ落ちるのに対して、Cr、Ni、Tiまたはこれらの合金からなる導電膜は、熱酸化膜などからなる電気絶縁膜に強固に接合され、熱処理などを要しない点で有利である。
【0020】
SiC基板のマイクロパイプが、基板上の電気絶縁膜により閉塞され、表面が平坦であるヒートシンクが、素子との密着性を高め、良好な接合を確保できる点で好ましい。単結晶SiC基板には、内径10〜20μm程度のマイクロパイプが頻繁に見られるが、電気絶縁膜によりマイクロパイプを閉塞し、表面に自由成長した電気絶縁膜の起伏を研磨することにより、表面の平坦なヒートシンクを得ることができる。電気絶縁膜の種類、厚さおよび基板の面方位などにより異なるが、一般的には、ヒートシンクの表面粗さは、二乗平均粗さで0.1μm以下が好ましく、0.01μm以下がより好ましい。
【0021】
SiC基板の面方位および電気絶縁膜の種類などにより異なるが、一般的には、電気絶縁膜を厚さ5μm程度以上形成することにより、SiC基板のマイクロパイプを電気絶縁膜により閉塞することができる。また、上述のように、電気絶縁膜上に導電膜を形成するときは、同様にして、SiC基板のマイクロパイプが、基板上の電気絶縁膜と導電膜により閉塞され、表面が平坦である態様が好ましく、一般的には、電気絶縁膜と導電膜とを合計で厚さ10μm程度以上形成することにより、SiC基板のマイクロパイプを閉塞することができる。
【0022】
しかしながら、10μm以上の厚さの電気絶縁膜を形成すると、電気絶縁膜は熱伝導率が低いため、ヒートシンクの熱伝導率の低下が無視できなくなる。このため、10μm以上の厚さの電気絶縁膜を形成した後に、機械研磨またはRIE(reactive ion etching)などを行なって、電気絶縁膜の厚さを3μm以下にすると、マイクロパイプを閉塞したまま、熱伝導率の高い電気絶縁膜を得ることができる。
【0023】
電気絶縁膜などが形成される面である基板の主面の結晶学的方位については、任意の面を使用することができるが、基板の主面が(0001)面であるときは、熱膨張率および熱伝導率などの物性値の面方向での異方性がなくなるため、基板の方向を意識する必要がなくなる。このような点から、基板の主面は(0001)面から±10度以内が好ましく、±5度以下がより好ましく、±3度以下が特に好ましい。
【0024】
一方、基板のマイクロパイプの長さ方向は、(0001)面に直交すると考えられ、基板の主面が(0001)面から10度以上離れると、マイクロパイプの貫通孔が減少し、表面の平坦なヒートシンクを得やすくなる。このような点から、本発明のヒートシンクの別の態様は、単結晶SiCからなる基板を有し、基板の主面が、(0001)面から10度以上離れた面であることを特徴とし、基板の主面は、(0001)面から60度以上離れていることが好ましく、80度以上離れた面を主面とするとより好ましい。また、かかるヒートシンクは、基板上に電気絶縁膜を有し、絶縁破壊強さが2×10V以上であるものが好ましい。SiC基板の表面が平坦であると、基板上に形成する電気絶縁膜の厚さを均一にすることができ、表面が平坦なヒートシンクを得やすく、素子との密着性が高まる結果、容易に強固な接合を得ることができるようになる。
【0025】
また、表面が平坦なSiC基板が得られる結果、基板の主面のうち片面上に電気絶縁膜を有し、基板の主面のうち他の面はSiCが露出しているヒートシンクを容易に得ることができるようになる。このようなヒートシンクを使用すると、ヒートシンクと半導体素子の間に熱伝導率の低い電気絶縁膜を有しない半導体装置を製造することができ、熱伝導率が高く、かつ電気絶縁性も高い優れたヒートシンクとして利用することができる。
【0026】
(ヒートシンクの製造方法)
本発明のヒートシンクの製造方法は、単結晶SiCからなる基板上に電気絶縁膜を形成する工程を備えることを特徴とする。単結晶SiC基板上に、SiO2、Si3N4、AlNまたはAl2O3などからなる結晶質または非晶質の薄膜を形成することにより、絶縁破壊強さが2×10V以上という高い電気絶縁性を有し、高い熱伝導率のヒートシンクを安価に製造することができる。
【0027】
単結晶SiC基板上への電気絶縁膜の形成は、物理的蒸着法または化学的蒸着法により行なうことができる。物理的蒸着法としては、真空蒸着法のほか、たとえば、窒素または酸素を導入した反応性スパッタリング法を利用することができる。化学的蒸着法では、シランガスまたはトリメチルアルミニウムを用いて行なうことができる。AlまたはSiを蒸着した後、蒸着膜を酸化し、電解酸化膜とする方法でもよい。AlNまたはAl2O3からなる電気絶縁膜の場合には、SiC基板の研磨後の表面粗さを、平均二乗粗さで20nm以下に仕上げておくと、上述の製膜方法により、電気絶縁膜の結晶が配向するようになり絶縁破壊強さおよび熱伝導率が向上するので好ましい。
【0028】
SiC単結晶を切り出し、研磨加工を行なうと、0.2nm程度の自然酸化膜が形成されており、そのまま電極を蒸着しても電気絶縁性を得ることができるが、絶縁破壊強度が1〜2V程度であり、電気絶縁性を得ることができないこともあり、実用的ではない。そこで、電極形成前に、酸素雰囲気下で、200℃以上3時間程度の熱酸化を行なうことにより、絶縁破壊強度が5〜10Vとなり、比較的安定した絶縁性を得ることができるようになるので好ましい。
【0029】
基板を1000℃以上に加熱して、アンモニアガスまたは窒素プラズマを用いて窒化処理を行ない、SiNからなる絶縁膜を形成しても、電気絶縁性および熱伝導率が高いヒートシンクを得ることができる点で好ましい。電気絶縁膜が、単結晶SiCの電解酸化により形成されたSiO2膜である態様も、電気絶縁性を有し、熱伝導率が高いヒートシンクが得られる点で好ましい。一旦、フッ酸により自然酸化膜を除去した後、その片面に金属電極を形成して陽極とし、白金を陰極として硝酸カリとエチレングリコールを用いて電解酸化(陽極酸化)を行なうと、10〜1000nm程度の電解酸化膜を得ることができる。
【0030】
電気絶縁膜が、単結晶SiCからなる基板の熱酸化により形成されたSiO2膜である態様も、電気絶縁性を有し、熱伝導率の高いヒートシンクが得られる点で好ましい。熱酸化は、たとえば、単結晶SiC基板を酸素雰囲気下、1200℃で1時間処理することにより行なうことができ、20〜200nmのSiO2酸化膜を得ることができる。熱酸化膜は、加熱温度以外に、雰囲気ガス、ガスの撹拌、圧力などの条件により厚さが変化するが、50〜500nm程度の厚さであるときは、酸化膜の成長レートに関わらず、熱伝導率および絶縁破壊強さの安定したヒートシンクが得られるので、好ましい。
【0031】
(半導体装置)
本発明のヒートシンクは、各種の電子装置に使用することができるが、絶縁破壊強さが2×10V以上という高い電気絶縁性を有するとともに高い熱伝導率を有するという特質を生かして、熱を大量に発生する半導体素子を備える半導体装置のヒートシンクとして有用である。たとえば、ジャンクションダウン方式の接合を形成してなる半導体レーザ、CPU(central processing unit)、MPU(microprocessor unit)、ユニポーラ型の電極を形成してなる半導体、サイリスタ、IGBTもしくはGTRなどの電力コントロール用半導体装置、または、フリップチップ型のマウントを形成し、絶縁を形成してなる電界効果型半導体装置などのヒートシンクとして、本発明のヒートシンクを使用することができる。さらに、本発明のヒートシンクは、サブマウントを介して半導体素子に取り付ける態様においても有効に機能を発揮する。
【0032】
レーザまたは電力コントロール用半導体装置などにおいては、発熱体である半導体素子との接合面に、熱伝導度の低い酸化膜または窒化膜などの電気絶縁膜を形成すると、熱伝導度が低下する。したがって、SiC基板の主面のうち、半導体素子と接合する面は、SiCを露出させるとともに、その反対面にのみ電気絶縁膜を形成し、半導体素子およびヒートシンクを、ヒートシンクをマウントするベースから絶縁する態様が、電気絶縁性および熱伝導度の高い半導体装置が得られる点で好ましい。
【0033】
また、フリップチップ型のマウントを形成し、絶縁を形成してなる電界効果型半導体装置などにおいては、基板の主面のうち片面上に電気絶縁膜を有し、基板の主面のうち他の面はSiCが露出しているヒートシンクを用いて、基板の主面の片面上に形成された電気絶縁膜上にフリップチップ型のマウントを形成する態様とすると、ヒートシンクの電気絶縁膜を利用して、容易に電気絶縁性が得られる点で好ましい。
【0034】
【実施例】
実施例1
本実施例では、単結晶SiC基板上に、Si3N4からなる電気絶縁膜を反応性スパッタリング法により形成し、電気絶縁性を有するヒートシンクを製造した。まず、単結晶SiCを、図1に示すように、種結晶を用いて昇華再結晶を行なう改良レイリー法により作成した。最初に、種結晶として、成長面方位が(0001)方向である六方晶型の6H−SiC単結晶からなる基板1を用意し、基板1を黒鉛製るつぼの蓋4の内面に取り付けた。また、黒鉛製るつぼ3の内部には、原料2となる高純度の立方晶型SiC粉末(JIS粒度#250)を充填した。
【0035】
つぎに、原料2を充填した黒鉛製るつぼ3を、種結晶を取り付けた蓋4で閉じ、黒鉛製の支持棒6により二重石英管5の内部に設置し、黒鉛製るつぼ3の周囲を黒鉛製の熱シールド7で被覆した。雰囲気ガスとして、アルゴンガス(Ar)を、ステンレス製チャンバ10の枝管9から二重石英管5の内部に流し、Arガスの流量は1リットル/分に設定した。つづいて、ワークコイル8に高周波電流を流し、高周波電流を調節することで、原料2の温度が2300℃、種結晶である基板1の温度が2200℃になるように調節した。
【0036】
つづいて、Arガスの流量を調節するとともに、真空ポンプ11を用いて二重石英管5の内部を減圧した。減圧は、大気圧から13Paまで20分かけて徐々に行ない、13Paの真空度で5時間保持することにより、厚さ10mmのSiC単結晶を得た。得られたSiC単結晶から、厚さ3mm、口径50mm、結晶面方位は特性の変動を抑えるために(0001)面を主面とする基板を切り出し、研磨加工を行って平坦面を形成した。平坦面の面精度は、平均二乗粗さで15nmであり、電気抵抗率は、1×10−2Ωcmであった。
【0037】
つぎに、窒素を導入した反応性スパッタリング法により、単結晶SiC基板の両面に厚さ100nmのSi3N4からなる電気絶縁膜を形成し、本発明のヒートシンクを得た。得られたヒートシンクの表面に金を蒸着して、熱伝導率を測定した結果、480W/mKであり、ほぼSiC単結晶と同じ値を示した。また、絶縁破壊強さを測定した結果、2×102Vであった。
【0038】
実施例2
本実施例では、熱酸化によりSiO2膜を厚く形成した後、さらに研磨加工を行ない、SiO2膜の表面を平坦化させたヒートシンクを製造した。まず、実施例1で切り出し、研磨加工を施した単結晶SiC基板を、大気雰囲気下、1200℃にて1時間熱処理し、電気絶縁膜として厚さ150nmのSiO2からなる熱酸化膜を形成し、その上に電極を蒸着した。得られたヒートシンクの熱伝導率は、480W/mKであり、絶縁破壊強さは、3×10Vであった。また、電極(導電膜)材料として金を蒸着すると、大変はがれやすかったが、Crを蒸着すると、熱酸化膜上で強固に接合されるため、熱処理は必要のないことがわかった。
【0039】
さらに、1200℃で100時間の熱酸化処理をすると、厚さ3μmのSiO2酸化膜が形成され、単結晶SiC基板のマイクロパイプの多くがSiO2酸化物によって閉塞した。また、表面には自由成長したSiO2酸化膜の起伏が見られるため、シリカを用いた研磨を施すと、表面の起伏が減少し、50%以上のマイクロパイプが閉塞して、二乗平均粗さが0.05μmの平坦なヒートシンクが得られた。
【0040】
実施例3
本実施例では、単結晶SiC基板上に電気絶縁膜を有する本発明のヒートシンクを半導体レーザに応用した。半導体レーザにおけるヒートシンクの接合は、半導体素子のp型側をヒートシンクに接合するジャンクションダウン方式で行なった。実施例2において、1200℃で100時間以上の熱酸化処理を施して製造したヒートシンクを用い、SiO2酸化膜上に順にCrとAuを蒸着したものに、150mWの高出力GaAlAsレーザを、Au−Snロウで接合した。レーザは0.2mm角とし、ヒートシンクは1mm角とし、n極は半導体素子からワイヤでステムに接合し、p極はヒートシンクの表面からワイヤでステムに接合した。3分間のレーザ照射後の半導体素子の温度は40℃であった。
【0041】
比較例1
実施例3における、単結晶SiC基板上に電気絶縁膜を有する本発明のヒートシンクの代わりに、AlNの焼結体からなるヒートシンクを用いた以外は実施例3と同様にしてレーザ照射を行なった。3分間のレーザ照射後の半導体素子の温度は65℃であり、実施例3と比較して、明らかに放熱が不十分であり、その後も蓄熱が進行していった。
【0042】
実施例4
本実施例では、SiC単結晶の(0001)面と直交する面である(11−20)面または(10−10)面を基板の主面として、本発明のヒートシンクを製造した。まず、実施例1で得られたSiC単結晶から、X線で(11−20)面を割り出し、(11−20)面を主面とする基板を切り出した。つぎに、基板の表面を研磨して表面を観察すると、マイクロパイプと呼ばれる貫通穴は確認できなかった。この基板について、実施例2と同様にして、自然酸化膜のついた基板を、大気雰囲気下、1200℃にて1時間熱処理し、厚さ150nmのSiO2からなる熱酸化膜を形成し、SiO2酸化膜上に電極を蒸着した。得られたヒートシンクの熱伝導率は、480W/mKであり、絶縁破壊強さは、3×10Vであった。
【0043】
つづいて、SiC単結晶から、(10−10)面を主面とする基板を切り出し、基板の表面を研磨して表面を観察すると、同様に、マイクロパイプと呼ばれる貫通穴は確認できなかった。この基板について、(11−20)面を主面とした場合と同様に熱酸化し、厚さ150nmのSiO2からなる熱酸化膜を形成し、SiO2酸化膜上に電極を蒸着した。得られたヒートシンクの熱伝導率は、480W/mKであり、絶縁破壊強さは、3×10Vであった。
【0044】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、電気絶縁性を有し、熱伝導率の高いヒートシンクを安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のヒートシンク用SiC単結晶の製造装置を示す模式図である。
【符号の説明】
1 基板、2 原料、3 ルツボ、4 蓋、5 石英管、6 支持棒、7 熱シールド、8 ワークコイル、9 枝管、10 チャンバー、11 真空ポンプ。
Claims (18)
- 電子部品の放熱のために装着するヒートシンクであって、単結晶SiCからなる基板と、該基板上に電気絶縁膜とを有し、絶縁破壊強さが2×10V以上であることを特徴とするヒートシンク。
- 前記基板のマイクロパイプが、基板上の前記電気絶縁膜により閉塞され、表面が平坦である請求項1に記載のヒートシンク。
- 前記基板の主面が、(0001)面から±10度以内の面である請求項2に記載のヒートシンク。
- 前記電気絶縁膜上に、Cr、NiおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む組成の導電膜を有する請求項1に記載のヒートシンク。
- 前記基板のマイクロパイプが、基板上の前記電気絶縁膜と導電膜により閉塞され、表面が平坦である請求項4に記載のヒートシンク。
- 電子部品の放熱のために装着するヒートシンクであって、単結晶SiCからなる基板を有し、該基板の主面が、(0001)面から10度以上離れた面であることを特徴とするヒートシンク。
- 前記基板上に電気絶縁膜を有し、絶縁破壊強さが2×10V以上である請求項6に記載のヒートシンク。
- 前記電気絶縁膜上に、Cr、NiおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む組成の導電膜を有する請求項7に記載のヒートシンク。
- 前記電気絶縁膜は、SiO2、Si3N4、AlNおよびAl2O3からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む組成を有する請求項1または7に記載のヒートシンク。
- 前記基板の主面のうち片面上に電気絶縁膜を有し、前記基板の主面のうち他の面はSiCが露出していることを特徴とする請求項1または7に記載のヒートシンク。
- 電子部品の放熱のために装着し、絶縁破壊強さが2×10V以上であるヒートシンクの製造方法であって、単結晶SiCからなる基板上に電気絶縁膜を形成する工程を備えることを特徴とするヒートシンクの製造方法。
- 前記電気絶縁膜が、単結晶SiCからなる基板の熱酸化または電解酸化により形成されたSiO2膜である請求項11に記載のヒートシンクの製造方法。
- 前記電気絶縁膜が、単結晶SiCからなる基板の窒化により形成されたSiN膜である請求項11に記載のヒートシンクの製造方法。
- 単結晶SiCからなる基板と、該基板上に電気絶縁膜とを有し、絶縁破壊強さが2×10V以上であることを特徴とするヒートシンクを備えるレーザであって、ジャンクションダウン方式の接合を形成してなるレーザである半導体装置。
- 単結晶SiCからなる基板と、該基板上に電気絶縁膜とを有し、絶縁破壊強さが2×10V以上であることを特徴とするヒートシンクを備える電力コントロール用半導体装置。
- 前記基板の主面のうち片面上に電気絶縁膜を有し、前記基板の主面のうち他の面はSiCが露出していることを特徴とするヒートシンクを備える半導体装置であって、前記基板の主面のうちSiCが露出している面と半導体素子とが接合してなる請求項14または15に記載の半導体装置。
- 単結晶SiCからなる基板と、該基板上に電気絶縁膜とを有し、絶縁破壊強さが2×10V以上であることを特徴とするヒートシンクを備え、フリップチップ型のマウントを形成し、絶縁を形成してなる電界効果型半導体装置。
- 前記基板の主面のうち片面上に電気絶縁膜を有し、前記基板の主面のうち他の面はSiCが露出していることを特徴とするヒートシンクを備える半導体装置であって、前記基板の主面の片面に形成された電気絶縁膜上にフリップチップ型のマウントを形成してなる請求項17に記載の半導体装置。
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