JP2005019427A - 超音波はんだ付け方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】Al電極の消失速度を抑制しながら、はんだを電極上に直接付着させることができ、かつ地球環境を汚染しない超音波はんだ付け方法を提供する。
【解決手段】Al電極3を有する電子部品1をPbを含まない溶融はんだ11に浸漬し、この溶融はんだに超音波を印加してAl電極3にはんだを直接付着させる。溶融はんだ11は、主成分としてのSn(11a)と、Snに比べて酸化しやすい元素(11b)とを含有し、Snに比べて酸化しやすい元素は、溶融はんだ中で酸化物として固体状態で存在する。
【選択図】 図3
【解決手段】Al電極3を有する電子部品1をPbを含まない溶融はんだ11に浸漬し、この溶融はんだに超音波を印加してAl電極3にはんだを直接付着させる。溶融はんだ11は、主成分としてのSn(11a)と、Snに比べて酸化しやすい元素(11b)とを含有し、Snに比べて酸化しやすい元素は、溶融はんだ中で酸化物として固体状態で存在する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はSnを主成分とする鉛フリーはんだを電子部品のAl電極またはAl合金電極上に、直接超音波はんだ付けする方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開昭62−104143号公報
【特許文献2】特公平5−4809号公報
従来、AlまたはAl合金からなる電極上にはんだバンプを形成するには、Al電極とはんだバンプとの接合性を改善するため、Al電極上にAu/Cu/CrまたはAu/Pt/Tiなどの下地金属を予め形成しておく必要があった。しかし、この場合には下地金属の形成工程が増えるとともに、電極部以外の部分に下地金属がめっきあるいは蒸着されないように、マスクを形成しなければならず、工程が煩雑になるという欠点があった。
【0003】
この欠点を解消するため、特許文献1では、下地金属を用いずに、溶融はんだに超音波を印加してAlまたはAl合金からなる電極上に直接はんだバンプを形成する方法が提案されている。
Al電極とはんだとの直接接合メカニズムは、次のように説明されている。すなわち、AlまたはAl合金からなる電極部に溶融はんだを接触させ、この溶融はんだに超音波を印加すると、過圧と負圧とが生じ、この負圧部で溶融はんだが引き裂かれ、空洞が生じる。この現象はキャビテーション(空洞現象)と呼ばれる。この空洞は正の半サイクル時に溶融はんだの液圧によって押し潰されて瞬時に壊滅し、この時のはんだ原子の衝突により強力な衝撃波が局所的に発生する。このように発生した衝撃波がAl電極表面に強い衝撃を与えてピット(クレーター状の凹み)を形成し、Al電極表面の酸化膜が破壊されるとともに、露出したAl電極の新生面にはんだ付けが行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、超音波はんだ付け法は、上記メカニズムから容易に推察されるように、Al電極表面に与えられる強い衝撃により形成されるピットは、電極表面の酸化膜だけでなくAlそのものも浸食し、Alがはんだ中に消失してゆく現象が生じる。
【0005】
超音波はんだ付け法を応用し、SiチップまたはSiウエーハの厚膜Al電極(電極厚み:1.5μm以上)に、Sn−37Pb−5Agはんだを直接接合して、はんだバンプを形成する方法が提案されている。ここで、Al電極の厚みを1.5μm以上としているのは、上述したようにはんだバンプ形成時にAl電極が完全に消失してしまうのを防止するためである。しかし、近年のSiチップやSiウエハのAl電極の厚みは1μm以下の場合が多く、超音波を利用したAl電極とはんだの直接接合によるはんだバンプ形成ができない場合が多い。また、はんだ中にPbを含有する点で、地球環境の観点から問題がある。
【0006】
特許文献2には、Alを主成分とする電極上に、Znを含み、Sn、Pb、Alから選ばれた元素の合金である第1はんだバンプを超音波を印加して形成し、第1はんだバンプの上にZnを含まない第2はんだバンプを第1はんだバンプの融点より低い温度でかつ第1はんだバンプを実質的に溶融させないで積層する方法が提案されている。しかし、この方法では異なる方法で2段積層のはんだバンプを形成しなければならないので、工程数が増加し、工程数を削減できる超音波はんだ付け法の利点を損なうことになる。また、Al電極の消失抑制に関しては、特許文献2に「第1はんだバンプのはんだ組成がPb、Sn及びZnから成る場合において、Pbの組成比を増加してゆくと、溶融はんだによるAlの溶食速度が遅くなる傾向にある」と記述されている。ここでは、消失抑制元素としてPbが挙げられているが、Pbは地球環境の観点からはんだに添加することに問題があり、消失抑制元素として添加あるいは添加量を増やすことはできない。
以上のような理由により、超音波はんだ付け法は有用な方法ではあるが、殆ど普及していないのが現状である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、Al電極またはAl合金電極の消失速度を抑制しながら、はんだを電極上に直接付着させることができ、かつ地球環境を汚染しない超音波はんだ付け方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、Al電極またはAl合金電極を有する電子部品をPbを含まない溶融はんだに浸漬し、この溶融はんだに超音波を印加してAl電極またはAl合金電極にはんだを直接付着させる方法において、上記溶融はんだは、主成分としてのSnと、Snに比べて酸化しやすい元素とを含有し、上記Snに比べて酸化しやすい元素は、溶融はんだ中で酸化物として固体状態で存在することを特徴とする超音波はんだ付け方法を提供する。
【0009】
従来の超音波はんだ付け方法は、Al電極の消失速度が速く、はんだ付け時にAl電極が完全に消失してしまい、Alへのはんだ付けができない場合が多い。そこで、Al電極の消失速度を抑制できるはんだ組成を検討したところ、はんだの主成分であるSnに、Snより酸化しやすい元素を添加することが有効であることを発見した。この元素は、溶融はんだ内に溶けた状態では効果がなく、溶融はんだ中で酸化物として固体状態で存在することが必要である。このような酸化物の存在が、超音波の印加による負圧部での衝撃波エネルギーを抑制し、衝撃によるピット形成に起因するAl消失を抑制すると考えられる。
さらに詳しく説明すると、溶融はんだに超音波を印加すると、過圧と負圧とが生じ、この負圧部で空洞が生じる。しかし、実際は負圧部にある空洞核(空洞が発生しやすい種のようなもの)を核として空洞が発生する。空洞核は、溶存大気やゴミ、あるいは本発明の酸化物などである。本発明のはんだでは、酸化物を含んでいるために空洞核の濃度が高いので、一般的なはんだと比べて空洞は低エネルギーで発生しやすく、かつ空間密度も高い。換言すると、小さな空洞が多数発生する。壊滅エネルギーの小さい空洞が多数存在するので、Al電極に対して小さな衝撃波が多数当たり、微小なピットが多数形成される。そのため、はんだの付着を促進させつつ、Al電極の消失を抑制することができる。
上記のようにAlの消失速度を抑制できるので、Al電極またはAl合金電極とはんだとを直接接合する方法としての超音波はんだ付け方法の適用範囲が広がる。つまり、Alが消失するまでに時間がかかるので、Al電極またはAl合金電極の厚みが1.5μm以下と薄い近年のSiチップやSiウエハにも適用できる。
本発明では、Al消失抑制元素としてPbを含有しないので、地球環境を汚染することがない。
【0010】
超音波はんだ付けの具体的方法としては、特許文献1に記載された種々の方法を用いることができる。例えば、電子部品を溶融はんだ内に浸漬し、超音波振動子を挿入して溶融はんだに超音波を印加してもよいし、溶融はんだ槽自体を超音波振動させて溶融はんだに超音波を印加してもよい。また、超音波振動できるはんだごてを用い、電極に溶融はんだを接触させると同時に、溶融はんだに超音波を印加してもよい。
本発明において、Al合金電極とは、Alを主成分とし、その中に例えば数%以下のSiやCuなどの他の元素が添加されたものを指す。
本発明のはんだには、主成分であるSnと、酸化しやすい元素の他に、不可避不純物を含むものであってもよい。不可避不純物としては、はんだを製造するときに混入する元素もしくは元々入っていた元素、例えばBi、Naなどがある。
【0011】
請求項2のように、溶融はんだ中には還元剤が含まれず、かつ溶融はんだの湯面の酸化を抑制できる雰囲気中で実施するのがよい。
一般的なはんだ付けは、はんだの酸化を抑制して行う必要がある。具体的には、はんだの酸化物を還元し、かつ再酸化を抑制する作用を持つ還元剤(フラックス)を使用してはんだ付けを行うか、窒素雰囲気などの低酸素濃度雰囲気中ではんだ付けを行うか、あるいは両者を併用してはんだ付けを行う。その理由は、溶融はんだが酸化すると、対象物であるAl電極とのぬれ性が劣化し、はんだ付け性が悪化するからである。
本発明では、はんだに含有させた酸化しやすい元素が溶融はんだ中で酸化し、酸化物(固体)として存在することが重要である。フラックスあるいは強い還元性雰囲気中で超音波はんだ付けを行うと、溶融はんだ中の酸化物が還元してしまい、固体状態を維持できなくなる。そのため、本発明における超音波はんだ付けでは、還元剤(フラックス)を使用せず、かつ大気開放雰囲気(溶融はんだの湯面の酸化膜を除去するための窒素ガス吹きつけは適宜行う)中で行うのがよい。
【0012】
請求項3のように、Snに比べて酸化しやすい元素は、Mg、Al、Tiから選ばれた一つ以上の元素とするのがよい。
いずれの元素においても、Snに添加することで、純粋なSnはんだに比べてAl消失速度を50%以上抑制することができる。特に、Mg添加による抑制効果は著しく、約90%の抑制効果がある。
なお、各元素は単独の添加でもAl消失速度の抑制効果はあるが、複数の添加でもよい。
このようなSnに比べて酸化しやすい元素は、一般的なはんだには含有させない。その理由は、このような元素を含有させると、はんだの酸化が助長され、はんだ付け性が劣化するからである。特に、Alについては通常、はんだの不純物として扱われ、JIS Z3282では、はんだ中のAl濃度は0.005重量%以下に制限されている。しかしながら、本発明でははんだに超音波を印加するので、酸化しやすい元素を含有させることによるはんだ付け性の劣化は殆どない。
【0013】
請求項4のように、Snに比べて酸化しやすい元素は、Alが望ましい。すなわち、電極がAlまたはAl合金よりなるので、電極材料と同質の酸化物を用いることで、Al電極の溶融はんだ中への溶出を抑えることができるからである。
【0014】
請求項5のように、溶融はんだに対するSnに比べて酸化しやすい元素の含有率は、合計で0.01〜1重量%とするのがよい。さらに望ましくは、請求項6のように、0.01〜0.1重量%とするのがよい。
上記元素の添加量は0.01重量%未満では、Al消失速度の抑制効果が低く、1重量%を越えると、はんだの融点が高くなり、純Snはんだと同様な高融点 (液相線温度232℃)となるからである。
特に、上記元素の添加量を0.01〜0.1重量%とした場合には、Al消失速度を純Snはんだに比べて20%以下にでき、しかもはんだの融点を221℃付近に抑えることができる。
一般的に、はんだ付けに用いるはんだを溶融させるには、はんだの融点+20℃の温度で加熱することが求められる。例えば、融点が230℃のとき、250℃ではんだを溶融させる必要がある。しかし、はんだを250℃で溶融させると、電子部品をはんだに浸漬した際に、高温のため、電子部品の特性が劣化するなど不具合が発生する。また、はんだ槽などの超音波はんだ付けに用いる装置の耐熱性を考えると、加熱温度は250℃以下が求められる。上記のようにはんだの融点を221℃にできれば、加熱温度を250℃以下にできるので、電子部品の特性劣化およびはんだ槽の耐熱劣化を抑制できる。
【0015】
請求項7のように、溶融はんだは、Ag、Bi、Cu、In、Znから選ばれた一つ以上の付加元素をさらに含有するのがよい。
JIS Z3282に記述されるはんだやその他一般的なはんだには、Ag、Bi、Cu、In、Pb、Znが数重量%〜数十重量%含まれているものがある。この中で、地球環境の観点からPbを除き、これらの元素が含まれていると、純Snはんだに比べてはんだの融点を下げる効果がある。
【0016】
請求項8のように、付加元素はAgであり、かつ溶融はんだに対するAgの含有率は3.5重量%が望ましい。
付加元素Agには、はんだの融点を下げる効果を有するとともに、Sn−AgはんだにAl酸化物を添加すると、純SnはんだにAl酸化物を添加した場合に比べて、Al消失速度をさらに下げる効果がある。特に、Agの含有率が3.5重量%の場合、はんだ融点が最も低くなる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は本発明方法で使用される電子部品の一例の断面を示し、図2は本発明方法ではんだバンプが形成された電子部品の断面を示す。
図1において、1はSiチップやSiウエハなどの電子部品であり、基板2の表面にはAlまたはAl合金よりなる電極3が形成されている。Al合金としては、Al−1%Cu、Al−1%Si、Al−1%Si−0.5%CuなどCuやSiが添加されていてもよく、90%以上のAlを含有すればよい。基板3の表面にはパッシベーション保護膜4が形成され、この保護膜4には電極3を露出させるための開口4aが設けられている。
本発明方法を実施することで、図2に示すように電極3上には球状のはんだバンプ5が下地金属を介さずに直接形成される。
【0018】
図3は本発明で使用する超音波はんだ付け装置の一例を示す。このはんだ付け装置自体は特許文献1などで公知のものである。
はんだ槽10内には溶融はんだ11が収容され、この溶融はんだ11内には超音波ホーン12が挿入されている。溶融はんだ11には電子部品1が、その電極3部分がホーン12と対向するように浸漬される。
溶融はんだ11は、主成分としてのSn11aと、Snに比べて酸化しやすい元素11bとを含有しており、Snに比べて酸化しやすい元素11bは、溶融はんだ11中で酸化して分子量が大きな化合物となる。この酸化化合物は溶融はんだ11中で固体状態で存在する。この酸化しやすい元素11bとしては、例えばMg、Al、Tiなどがある。溶融はんだ11には、還元剤であるフラックスや、地球環境汚染物質であるPbは含まれていない。
なお、はんだ11の組成は、主成分であるSnと酸化元素であるMg、Al、Tiなどのほか、BiやNaなどの不可避不純物を含むものであってもよい。
【0019】
超音波ホーン12より超音波を印加すると、電極3上にはんだバンプ5が直接形成される。はんだバンプの形成原理は、既に説明した通りである。すなわち、超音波を印加すると過圧と負圧とが生じ、負圧部においては、従来よりも小さな空洞が多数発生する。正の半サイクル時に空洞が壊滅するが、空洞が小さいため、その壊滅エネルギーは小さく、Al電極に対して小さな衝撃波が多数当たる。そのため、はんだ付け時間を遅らせることなく、Al電極の消失を抑制し、確実にはんだバンプ(はんだ被膜)を形成することができる。
【0020】
表1は、Snはんだに酸化元素であるMg、Al、Tiを微量(0.1〜0.2重量%)添加した場合のAl電極におけるAl消失速度を定量化し、純SnはんだにおけるAl消失速度を100として規格化した値を示す。
なお、はんだ付け条件は、次の通りである。
超音波振動振幅:2μm
超音波の印加時間:0.2s〜1s
電極とホーンとの距離:1mm
浸漬時間:0.2s〜1s
電子部品の形状:厚み380μm、
Al電極の形状:厚み1μm、100μm□
溶融はんだの加熱温度:250℃
N2 流量:0.1リットル/min
【0021】
【表1】
【0022】
表1から明らかなように、すべての実験例において、純Snと比較してAl消失速度が50%以上抑制されていることがわかる。特に、Mg添加による抑制効果が大きく、0.1重量%のMg添加により、Al消失速度はおよそ90%抑制された。また、Alの場合も、0.1重量%のAl添加により、Al消失速度はおよそ75%抑制された。
なお、表1では、Mg、Al、Tiを単独で添加した場合であるが、複数の元素を添加しても同様の効果が得られる。
【0023】
表2は、主成分であるSnと、酸化元素であるMg、Alに加え、付加元素であるAgを3.5重量%含む場合のAl消失速度比を求めたものである。
なお、はんだ付け条件は、次の通りである。
超音波振動振幅:5.5μm
超音波の印加時間:0.6s
電極とホーンとの距離:3mm
浸漬時間:0.6s
電子部品の形状:厚み380μm、
Al電極の形状:厚み1μm、100μm□
溶融はんだの加熱温度:250℃
N2 流量:0.1リットル/min
【0024】
【表2】
【0025】
表2から明らかなように、すべての実験例において、純Snはんだと比較してAl消失速度が80%以上抑制されていることがわかる。ここで注目すべきは、Agを含有しない場合(表1参照)には、Mgを添加した場合とAlを添加した場合とで10%以上のAl消失速度の差があったにも拘わらず、Agを含有することで、両者のAl消失速度差が殆どないことである。むしろ、Alを0.3重量%添加した場合には、Mgを添加した場合よりAl消失速度が小さい。
Alを添加した場合は、電極材料と同質の酸化物であるから、Al電極の溶融はんだ中への溶出を抑えることができる利点がある。
【0026】
表2ではSnにAgを3.5wt%添加したはんだに、酸化元素Mg、Alを加えたものであるが、Agを3.5wt%添加した理由ははんだの融点が最も低くなるからである。
図4は、Snに対するAgの添加量を変化させたときの融点の変化を示す。図4から明らかなように、Agを3.5wt%添加したとき、はんだの融点が最も低く(221℃)なっていることがわかる。
【0027】
図5は、表2に示す本発明方法により形成したはんだバンプ(Sn−3.5Ag−0.1Al)と、従来の超音波はんだ付け法により形成したはんだバンプとを比較したものである。図5はAl電極の正面から写真撮影し、この写真画像を白黒画像に変換したものであり、黒い部分ははんだが付着した部分、白い部分ははんだが付着しない部分を示す。
なお、従来の超音波はんだ付け法とは、SiチップのAl電極にSn−37Pb−5Agはんだを直接接合して、はんだバンプを形成する方法であり、その時のはんだ付け条件は、表2と同様である。但し、N2 流量は5リットル/minである。
【0028】
図5から明らかなように、従来方法ではAl電極の一部が消失しているため、はんだが付着していない部分が発生していることがわかる。これに対し、本発明方法ではAl電極の消失が抑制されているため、はんだがAl電極の全面に良好に付着している。
なお、本発明方法では、大気開放雰囲気中で溶融はんだの湯面の酸化膜を除去するためのN2 ガス吹きつけを適宜行う程度でよく、N2 ガスの供給量は従来方法に比べて1/50で足りる。
【0029】
図6は、Al消失速度に及ぼす元素添加の影響を示す。即ち、Sn−3.5Agはんだに対してMgおよびAlを添加した場合の添加量とAl消失速度との関係を示す。
図から明らかなように、0.01重量%以上ではAl消失速度が20以下であるのに対し、0.01重量%未満ではAl消失速度の抑制効果が急激に低くなることがわかる。したがって、MgまたはAlの添加量は0.01重量%以上がよい。
【0030】
図7は、はんだの融点(液相線温度)に及ぼす元素添加の影響を示す。即ち、Sn−3.5Agに対してAlを添加した場合の添加量と融点との関係を示す。
図から明らかなように、Alの添加量が0.1重量%以下では融点が221℃であるのに対し、0.1重量%を越えると、液相線が高くなり、斜線で示すように液体と固体とが混在した状態となり、はんだ付け性が低下する。特に、1重量%で融点は230℃になり、純Snはんだの融点(232℃)とほぼ等しくなる。このような高融点のはんだでは、加熱温度が250℃以上になるので、電子部品の特性が劣化したり、はんだ槽が劣化する可能性があり、望ましくない。
したがって、Alの添加量は0.01〜1重量%、望ましくは0.01〜0.1重量%がよい。
なお、図7はSn−3.5Agに対してAlを添加した場合であるが、Mgを添加した場合も同様の結果が得られる。
【0031】
図6,図7では、Sn−3.5Agはんだに対してMgまたはAlを添加した場合のAl消失速度および融点を示したが、純Snはんだに対してMgまたはAlを添加した場合のAl消失速度および融点も、図6,図7と同様の結果が得られる。
【0032】
上記例では、Snに付加元素としてAgを添加したものであるが、それ以外の付加元素でも、同様に融点を下げる効果を有する。
表3は、Snに付加元素としてAg、Bi、Cu、In、Znを添加した場合の融点を示す。
表3から明らかなように、Ag以外に、Bi、Cu、In、Znを添加した場合でも、Snはんだの融点232℃に比べて、融点が下がっていることがわかる。
【0033】
【表3】
【0034】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、溶融はんだに主成分としてのSnの他に、Snに比べて酸化しやすい元素が酸化物として固体状態で存在するので、このような酸化物の存在が超音波の印加による負圧部での衝撃波エネルギーを抑制し、はんだの付着を促進させつつ、Al電極の消失を抑制することができる。
このようにAl電極の消失を抑制できるので、超音波はんだ付け方法の適用範囲が広がり、電極厚みが1.5μm以下と薄い近年のSiチップやSiウエハにも適用できる。また、本発明では、Al電極の消失抑制元素としてPbを含有しないので、地球環境を汚染することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる超音波はんだ付け方法で使用される電子部品の一例の断面図である。
【図2】本発明にかかる超音波はんだ付け方法ではんだバンプが形成された電子部品の断面図である。
【図3】本発明で使用する超音波はんだ付け装置の一例を示す概略図である。
【図4】はんだの融点に及ぼすAg添加の影響を示す図である。
【図5】従来方法と本発明方法とによるはんだバンプの形成状況を示す図である。
【図6】Al消失速度に及ぼす元素添加の影響を示す図である。
【図7】はんだの融点(液相線温度)に及ぼす元素添加の影響を示す図である。
【符号の説明】
1 電子部品
3 電極
5 はんだバンプ
11 溶融はんだ
11a Sn
11b 酸化物
12 超音波ホーン
【発明の属する技術分野】
本発明はSnを主成分とする鉛フリーはんだを電子部品のAl電極またはAl合金電極上に、直接超音波はんだ付けする方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開昭62−104143号公報
【特許文献2】特公平5−4809号公報
従来、AlまたはAl合金からなる電極上にはんだバンプを形成するには、Al電極とはんだバンプとの接合性を改善するため、Al電極上にAu/Cu/CrまたはAu/Pt/Tiなどの下地金属を予め形成しておく必要があった。しかし、この場合には下地金属の形成工程が増えるとともに、電極部以外の部分に下地金属がめっきあるいは蒸着されないように、マスクを形成しなければならず、工程が煩雑になるという欠点があった。
【0003】
この欠点を解消するため、特許文献1では、下地金属を用いずに、溶融はんだに超音波を印加してAlまたはAl合金からなる電極上に直接はんだバンプを形成する方法が提案されている。
Al電極とはんだとの直接接合メカニズムは、次のように説明されている。すなわち、AlまたはAl合金からなる電極部に溶融はんだを接触させ、この溶融はんだに超音波を印加すると、過圧と負圧とが生じ、この負圧部で溶融はんだが引き裂かれ、空洞が生じる。この現象はキャビテーション(空洞現象)と呼ばれる。この空洞は正の半サイクル時に溶融はんだの液圧によって押し潰されて瞬時に壊滅し、この時のはんだ原子の衝突により強力な衝撃波が局所的に発生する。このように発生した衝撃波がAl電極表面に強い衝撃を与えてピット(クレーター状の凹み)を形成し、Al電極表面の酸化膜が破壊されるとともに、露出したAl電極の新生面にはんだ付けが行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、超音波はんだ付け法は、上記メカニズムから容易に推察されるように、Al電極表面に与えられる強い衝撃により形成されるピットは、電極表面の酸化膜だけでなくAlそのものも浸食し、Alがはんだ中に消失してゆく現象が生じる。
【0005】
超音波はんだ付け法を応用し、SiチップまたはSiウエーハの厚膜Al電極(電極厚み:1.5μm以上)に、Sn−37Pb−5Agはんだを直接接合して、はんだバンプを形成する方法が提案されている。ここで、Al電極の厚みを1.5μm以上としているのは、上述したようにはんだバンプ形成時にAl電極が完全に消失してしまうのを防止するためである。しかし、近年のSiチップやSiウエハのAl電極の厚みは1μm以下の場合が多く、超音波を利用したAl電極とはんだの直接接合によるはんだバンプ形成ができない場合が多い。また、はんだ中にPbを含有する点で、地球環境の観点から問題がある。
【0006】
特許文献2には、Alを主成分とする電極上に、Znを含み、Sn、Pb、Alから選ばれた元素の合金である第1はんだバンプを超音波を印加して形成し、第1はんだバンプの上にZnを含まない第2はんだバンプを第1はんだバンプの融点より低い温度でかつ第1はんだバンプを実質的に溶融させないで積層する方法が提案されている。しかし、この方法では異なる方法で2段積層のはんだバンプを形成しなければならないので、工程数が増加し、工程数を削減できる超音波はんだ付け法の利点を損なうことになる。また、Al電極の消失抑制に関しては、特許文献2に「第1はんだバンプのはんだ組成がPb、Sn及びZnから成る場合において、Pbの組成比を増加してゆくと、溶融はんだによるAlの溶食速度が遅くなる傾向にある」と記述されている。ここでは、消失抑制元素としてPbが挙げられているが、Pbは地球環境の観点からはんだに添加することに問題があり、消失抑制元素として添加あるいは添加量を増やすことはできない。
以上のような理由により、超音波はんだ付け法は有用な方法ではあるが、殆ど普及していないのが現状である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、Al電極またはAl合金電極の消失速度を抑制しながら、はんだを電極上に直接付着させることができ、かつ地球環境を汚染しない超音波はんだ付け方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、Al電極またはAl合金電極を有する電子部品をPbを含まない溶融はんだに浸漬し、この溶融はんだに超音波を印加してAl電極またはAl合金電極にはんだを直接付着させる方法において、上記溶融はんだは、主成分としてのSnと、Snに比べて酸化しやすい元素とを含有し、上記Snに比べて酸化しやすい元素は、溶融はんだ中で酸化物として固体状態で存在することを特徴とする超音波はんだ付け方法を提供する。
【0009】
従来の超音波はんだ付け方法は、Al電極の消失速度が速く、はんだ付け時にAl電極が完全に消失してしまい、Alへのはんだ付けができない場合が多い。そこで、Al電極の消失速度を抑制できるはんだ組成を検討したところ、はんだの主成分であるSnに、Snより酸化しやすい元素を添加することが有効であることを発見した。この元素は、溶融はんだ内に溶けた状態では効果がなく、溶融はんだ中で酸化物として固体状態で存在することが必要である。このような酸化物の存在が、超音波の印加による負圧部での衝撃波エネルギーを抑制し、衝撃によるピット形成に起因するAl消失を抑制すると考えられる。
さらに詳しく説明すると、溶融はんだに超音波を印加すると、過圧と負圧とが生じ、この負圧部で空洞が生じる。しかし、実際は負圧部にある空洞核(空洞が発生しやすい種のようなもの)を核として空洞が発生する。空洞核は、溶存大気やゴミ、あるいは本発明の酸化物などである。本発明のはんだでは、酸化物を含んでいるために空洞核の濃度が高いので、一般的なはんだと比べて空洞は低エネルギーで発生しやすく、かつ空間密度も高い。換言すると、小さな空洞が多数発生する。壊滅エネルギーの小さい空洞が多数存在するので、Al電極に対して小さな衝撃波が多数当たり、微小なピットが多数形成される。そのため、はんだの付着を促進させつつ、Al電極の消失を抑制することができる。
上記のようにAlの消失速度を抑制できるので、Al電極またはAl合金電極とはんだとを直接接合する方法としての超音波はんだ付け方法の適用範囲が広がる。つまり、Alが消失するまでに時間がかかるので、Al電極またはAl合金電極の厚みが1.5μm以下と薄い近年のSiチップやSiウエハにも適用できる。
本発明では、Al消失抑制元素としてPbを含有しないので、地球環境を汚染することがない。
【0010】
超音波はんだ付けの具体的方法としては、特許文献1に記載された種々の方法を用いることができる。例えば、電子部品を溶融はんだ内に浸漬し、超音波振動子を挿入して溶融はんだに超音波を印加してもよいし、溶融はんだ槽自体を超音波振動させて溶融はんだに超音波を印加してもよい。また、超音波振動できるはんだごてを用い、電極に溶融はんだを接触させると同時に、溶融はんだに超音波を印加してもよい。
本発明において、Al合金電極とは、Alを主成分とし、その中に例えば数%以下のSiやCuなどの他の元素が添加されたものを指す。
本発明のはんだには、主成分であるSnと、酸化しやすい元素の他に、不可避不純物を含むものであってもよい。不可避不純物としては、はんだを製造するときに混入する元素もしくは元々入っていた元素、例えばBi、Naなどがある。
【0011】
請求項2のように、溶融はんだ中には還元剤が含まれず、かつ溶融はんだの湯面の酸化を抑制できる雰囲気中で実施するのがよい。
一般的なはんだ付けは、はんだの酸化を抑制して行う必要がある。具体的には、はんだの酸化物を還元し、かつ再酸化を抑制する作用を持つ還元剤(フラックス)を使用してはんだ付けを行うか、窒素雰囲気などの低酸素濃度雰囲気中ではんだ付けを行うか、あるいは両者を併用してはんだ付けを行う。その理由は、溶融はんだが酸化すると、対象物であるAl電極とのぬれ性が劣化し、はんだ付け性が悪化するからである。
本発明では、はんだに含有させた酸化しやすい元素が溶融はんだ中で酸化し、酸化物(固体)として存在することが重要である。フラックスあるいは強い還元性雰囲気中で超音波はんだ付けを行うと、溶融はんだ中の酸化物が還元してしまい、固体状態を維持できなくなる。そのため、本発明における超音波はんだ付けでは、還元剤(フラックス)を使用せず、かつ大気開放雰囲気(溶融はんだの湯面の酸化膜を除去するための窒素ガス吹きつけは適宜行う)中で行うのがよい。
【0012】
請求項3のように、Snに比べて酸化しやすい元素は、Mg、Al、Tiから選ばれた一つ以上の元素とするのがよい。
いずれの元素においても、Snに添加することで、純粋なSnはんだに比べてAl消失速度を50%以上抑制することができる。特に、Mg添加による抑制効果は著しく、約90%の抑制効果がある。
なお、各元素は単独の添加でもAl消失速度の抑制効果はあるが、複数の添加でもよい。
このようなSnに比べて酸化しやすい元素は、一般的なはんだには含有させない。その理由は、このような元素を含有させると、はんだの酸化が助長され、はんだ付け性が劣化するからである。特に、Alについては通常、はんだの不純物として扱われ、JIS Z3282では、はんだ中のAl濃度は0.005重量%以下に制限されている。しかしながら、本発明でははんだに超音波を印加するので、酸化しやすい元素を含有させることによるはんだ付け性の劣化は殆どない。
【0013】
請求項4のように、Snに比べて酸化しやすい元素は、Alが望ましい。すなわち、電極がAlまたはAl合金よりなるので、電極材料と同質の酸化物を用いることで、Al電極の溶融はんだ中への溶出を抑えることができるからである。
【0014】
請求項5のように、溶融はんだに対するSnに比べて酸化しやすい元素の含有率は、合計で0.01〜1重量%とするのがよい。さらに望ましくは、請求項6のように、0.01〜0.1重量%とするのがよい。
上記元素の添加量は0.01重量%未満では、Al消失速度の抑制効果が低く、1重量%を越えると、はんだの融点が高くなり、純Snはんだと同様な高融点 (液相線温度232℃)となるからである。
特に、上記元素の添加量を0.01〜0.1重量%とした場合には、Al消失速度を純Snはんだに比べて20%以下にでき、しかもはんだの融点を221℃付近に抑えることができる。
一般的に、はんだ付けに用いるはんだを溶融させるには、はんだの融点+20℃の温度で加熱することが求められる。例えば、融点が230℃のとき、250℃ではんだを溶融させる必要がある。しかし、はんだを250℃で溶融させると、電子部品をはんだに浸漬した際に、高温のため、電子部品の特性が劣化するなど不具合が発生する。また、はんだ槽などの超音波はんだ付けに用いる装置の耐熱性を考えると、加熱温度は250℃以下が求められる。上記のようにはんだの融点を221℃にできれば、加熱温度を250℃以下にできるので、電子部品の特性劣化およびはんだ槽の耐熱劣化を抑制できる。
【0015】
請求項7のように、溶融はんだは、Ag、Bi、Cu、In、Znから選ばれた一つ以上の付加元素をさらに含有するのがよい。
JIS Z3282に記述されるはんだやその他一般的なはんだには、Ag、Bi、Cu、In、Pb、Znが数重量%〜数十重量%含まれているものがある。この中で、地球環境の観点からPbを除き、これらの元素が含まれていると、純Snはんだに比べてはんだの融点を下げる効果がある。
【0016】
請求項8のように、付加元素はAgであり、かつ溶融はんだに対するAgの含有率は3.5重量%が望ましい。
付加元素Agには、はんだの融点を下げる効果を有するとともに、Sn−AgはんだにAl酸化物を添加すると、純SnはんだにAl酸化物を添加した場合に比べて、Al消失速度をさらに下げる効果がある。特に、Agの含有率が3.5重量%の場合、はんだ融点が最も低くなる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は本発明方法で使用される電子部品の一例の断面を示し、図2は本発明方法ではんだバンプが形成された電子部品の断面を示す。
図1において、1はSiチップやSiウエハなどの電子部品であり、基板2の表面にはAlまたはAl合金よりなる電極3が形成されている。Al合金としては、Al−1%Cu、Al−1%Si、Al−1%Si−0.5%CuなどCuやSiが添加されていてもよく、90%以上のAlを含有すればよい。基板3の表面にはパッシベーション保護膜4が形成され、この保護膜4には電極3を露出させるための開口4aが設けられている。
本発明方法を実施することで、図2に示すように電極3上には球状のはんだバンプ5が下地金属を介さずに直接形成される。
【0018】
図3は本発明で使用する超音波はんだ付け装置の一例を示す。このはんだ付け装置自体は特許文献1などで公知のものである。
はんだ槽10内には溶融はんだ11が収容され、この溶融はんだ11内には超音波ホーン12が挿入されている。溶融はんだ11には電子部品1が、その電極3部分がホーン12と対向するように浸漬される。
溶融はんだ11は、主成分としてのSn11aと、Snに比べて酸化しやすい元素11bとを含有しており、Snに比べて酸化しやすい元素11bは、溶融はんだ11中で酸化して分子量が大きな化合物となる。この酸化化合物は溶融はんだ11中で固体状態で存在する。この酸化しやすい元素11bとしては、例えばMg、Al、Tiなどがある。溶融はんだ11には、還元剤であるフラックスや、地球環境汚染物質であるPbは含まれていない。
なお、はんだ11の組成は、主成分であるSnと酸化元素であるMg、Al、Tiなどのほか、BiやNaなどの不可避不純物を含むものであってもよい。
【0019】
超音波ホーン12より超音波を印加すると、電極3上にはんだバンプ5が直接形成される。はんだバンプの形成原理は、既に説明した通りである。すなわち、超音波を印加すると過圧と負圧とが生じ、負圧部においては、従来よりも小さな空洞が多数発生する。正の半サイクル時に空洞が壊滅するが、空洞が小さいため、その壊滅エネルギーは小さく、Al電極に対して小さな衝撃波が多数当たる。そのため、はんだ付け時間を遅らせることなく、Al電極の消失を抑制し、確実にはんだバンプ(はんだ被膜)を形成することができる。
【0020】
表1は、Snはんだに酸化元素であるMg、Al、Tiを微量(0.1〜0.2重量%)添加した場合のAl電極におけるAl消失速度を定量化し、純SnはんだにおけるAl消失速度を100として規格化した値を示す。
なお、はんだ付け条件は、次の通りである。
超音波振動振幅:2μm
超音波の印加時間:0.2s〜1s
電極とホーンとの距離:1mm
浸漬時間:0.2s〜1s
電子部品の形状:厚み380μm、
Al電極の形状:厚み1μm、100μm□
溶融はんだの加熱温度:250℃
N2 流量:0.1リットル/min
【0021】
【表1】
【0022】
表1から明らかなように、すべての実験例において、純Snと比較してAl消失速度が50%以上抑制されていることがわかる。特に、Mg添加による抑制効果が大きく、0.1重量%のMg添加により、Al消失速度はおよそ90%抑制された。また、Alの場合も、0.1重量%のAl添加により、Al消失速度はおよそ75%抑制された。
なお、表1では、Mg、Al、Tiを単独で添加した場合であるが、複数の元素を添加しても同様の効果が得られる。
【0023】
表2は、主成分であるSnと、酸化元素であるMg、Alに加え、付加元素であるAgを3.5重量%含む場合のAl消失速度比を求めたものである。
なお、はんだ付け条件は、次の通りである。
超音波振動振幅:5.5μm
超音波の印加時間:0.6s
電極とホーンとの距離:3mm
浸漬時間:0.6s
電子部品の形状:厚み380μm、
Al電極の形状:厚み1μm、100μm□
溶融はんだの加熱温度:250℃
N2 流量:0.1リットル/min
【0024】
【表2】
【0025】
表2から明らかなように、すべての実験例において、純Snはんだと比較してAl消失速度が80%以上抑制されていることがわかる。ここで注目すべきは、Agを含有しない場合(表1参照)には、Mgを添加した場合とAlを添加した場合とで10%以上のAl消失速度の差があったにも拘わらず、Agを含有することで、両者のAl消失速度差が殆どないことである。むしろ、Alを0.3重量%添加した場合には、Mgを添加した場合よりAl消失速度が小さい。
Alを添加した場合は、電極材料と同質の酸化物であるから、Al電極の溶融はんだ中への溶出を抑えることができる利点がある。
【0026】
表2ではSnにAgを3.5wt%添加したはんだに、酸化元素Mg、Alを加えたものであるが、Agを3.5wt%添加した理由ははんだの融点が最も低くなるからである。
図4は、Snに対するAgの添加量を変化させたときの融点の変化を示す。図4から明らかなように、Agを3.5wt%添加したとき、はんだの融点が最も低く(221℃)なっていることがわかる。
【0027】
図5は、表2に示す本発明方法により形成したはんだバンプ(Sn−3.5Ag−0.1Al)と、従来の超音波はんだ付け法により形成したはんだバンプとを比較したものである。図5はAl電極の正面から写真撮影し、この写真画像を白黒画像に変換したものであり、黒い部分ははんだが付着した部分、白い部分ははんだが付着しない部分を示す。
なお、従来の超音波はんだ付け法とは、SiチップのAl電極にSn−37Pb−5Agはんだを直接接合して、はんだバンプを形成する方法であり、その時のはんだ付け条件は、表2と同様である。但し、N2 流量は5リットル/minである。
【0028】
図5から明らかなように、従来方法ではAl電極の一部が消失しているため、はんだが付着していない部分が発生していることがわかる。これに対し、本発明方法ではAl電極の消失が抑制されているため、はんだがAl電極の全面に良好に付着している。
なお、本発明方法では、大気開放雰囲気中で溶融はんだの湯面の酸化膜を除去するためのN2 ガス吹きつけを適宜行う程度でよく、N2 ガスの供給量は従来方法に比べて1/50で足りる。
【0029】
図6は、Al消失速度に及ぼす元素添加の影響を示す。即ち、Sn−3.5Agはんだに対してMgおよびAlを添加した場合の添加量とAl消失速度との関係を示す。
図から明らかなように、0.01重量%以上ではAl消失速度が20以下であるのに対し、0.01重量%未満ではAl消失速度の抑制効果が急激に低くなることがわかる。したがって、MgまたはAlの添加量は0.01重量%以上がよい。
【0030】
図7は、はんだの融点(液相線温度)に及ぼす元素添加の影響を示す。即ち、Sn−3.5Agに対してAlを添加した場合の添加量と融点との関係を示す。
図から明らかなように、Alの添加量が0.1重量%以下では融点が221℃であるのに対し、0.1重量%を越えると、液相線が高くなり、斜線で示すように液体と固体とが混在した状態となり、はんだ付け性が低下する。特に、1重量%で融点は230℃になり、純Snはんだの融点(232℃)とほぼ等しくなる。このような高融点のはんだでは、加熱温度が250℃以上になるので、電子部品の特性が劣化したり、はんだ槽が劣化する可能性があり、望ましくない。
したがって、Alの添加量は0.01〜1重量%、望ましくは0.01〜0.1重量%がよい。
なお、図7はSn−3.5Agに対してAlを添加した場合であるが、Mgを添加した場合も同様の結果が得られる。
【0031】
図6,図7では、Sn−3.5Agはんだに対してMgまたはAlを添加した場合のAl消失速度および融点を示したが、純Snはんだに対してMgまたはAlを添加した場合のAl消失速度および融点も、図6,図7と同様の結果が得られる。
【0032】
上記例では、Snに付加元素としてAgを添加したものであるが、それ以外の付加元素でも、同様に融点を下げる効果を有する。
表3は、Snに付加元素としてAg、Bi、Cu、In、Znを添加した場合の融点を示す。
表3から明らかなように、Ag以外に、Bi、Cu、In、Znを添加した場合でも、Snはんだの融点232℃に比べて、融点が下がっていることがわかる。
【0033】
【表3】
【0034】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、溶融はんだに主成分としてのSnの他に、Snに比べて酸化しやすい元素が酸化物として固体状態で存在するので、このような酸化物の存在が超音波の印加による負圧部での衝撃波エネルギーを抑制し、はんだの付着を促進させつつ、Al電極の消失を抑制することができる。
このようにAl電極の消失を抑制できるので、超音波はんだ付け方法の適用範囲が広がり、電極厚みが1.5μm以下と薄い近年のSiチップやSiウエハにも適用できる。また、本発明では、Al電極の消失抑制元素としてPbを含有しないので、地球環境を汚染することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる超音波はんだ付け方法で使用される電子部品の一例の断面図である。
【図2】本発明にかかる超音波はんだ付け方法ではんだバンプが形成された電子部品の断面図である。
【図3】本発明で使用する超音波はんだ付け装置の一例を示す概略図である。
【図4】はんだの融点に及ぼすAg添加の影響を示す図である。
【図5】従来方法と本発明方法とによるはんだバンプの形成状況を示す図である。
【図6】Al消失速度に及ぼす元素添加の影響を示す図である。
【図7】はんだの融点(液相線温度)に及ぼす元素添加の影響を示す図である。
【符号の説明】
1 電子部品
3 電極
5 はんだバンプ
11 溶融はんだ
11a Sn
11b 酸化物
12 超音波ホーン
Claims (8)
- Al電極またはAl合金電極を有する電子部品をPbを含まない溶融はんだに浸漬し、この溶融はんだに超音波を印加してAl電極またはAl合金電極にはんだを直接付着させる方法において、
上記溶融はんだは、主成分としてのSnと、Snに比べて酸化しやすい元素とを含有し、
上記Snに比べて酸化しやすい元素は、溶融はんだ中で酸化物として固体状態で存在することを特徴とする超音波はんだ付け方法。 - 上記溶融はんだ中には還元剤が含まれず、かつ溶融はんだの湯面の酸化を抑制できる雰囲気中で実施されることを特徴とする請求項1に記載の超音波はんだ付け方法。
- 上記Snに比べて酸化しやすい元素は、Mg、Al、Tiから選ばれた一つ以上の元素であることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波はんだ付け方法。
- 上記Snに比べて酸化しやすい元素は、Alであることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波はんだ付け方法。
- 上記溶融はんだに対するSnに比べて酸化しやすい元素の含有率は、合計で0.01〜1重量%であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の超音波はんだ付け方法。
- 上記溶融はんだに対するSnに比べて酸化しやすい元素の含有率は、合計で0.01〜0.1重量%であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の超音波はんだ付け方法。
- 上記溶融はんだは、Ag、Bi、Cu、In、Znから選ばれた一つ以上の付加元素をさらに含有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の超音波はんだ付け方法。
- 上記付加元素はAgであり、かつ溶融はんだに対するAgの含有率は3.5重量%であることを特徴とする請求項7に記載の超音波はんだ付け方法。
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2003
- 2003-06-23 JP JP2003177731A patent/JP2005019427A/ja active Pending
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