JP2005015502A - コーティング剤組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機溶剤成分を含まず、均一塗布性、非粘着性、撥水性および滑り性が良好で、特に基材に対する密着性に優れたコーティング剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明のコーティング剤組成物は、(A)エポキシ基を含有するシラン化合物またはその部分加水分解物100重量部に対して、(B)アミノ基を含有するシラン化合物またはその部分加水分解物50〜200重量部と、(C)球状微粒子1〜40重量部を混合・分散してなることを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明のコーティング剤組成物は、(A)エポキシ基を含有するシラン化合物またはその部分加水分解物100重量部に対して、(B)アミノ基を含有するシラン化合物またはその部分加水分解物50〜200重量部と、(C)球状微粒子1〜40重量部を混合・分散してなることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コーティング剤組成物に係わり、特にゴム、プラスチックなどの基材の表面を処理することにより、非粘着性、撥水性および滑り性を有し、かつ密着性および耐摩耗性に優れた被膜を形成することができるコーティング剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、自動車用ウェザーストリップとして使用されているエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)ゴムや各種ゴム製品には、その表面に非粘着性、撥水性、耐摩耗性、滑り性などを付与するため、各種のポリオルガノシロキサン組成物からなるコーティング剤を塗布することが行われている。
【0003】
このようなコーティング剤としては、例えば、末端に水酸基を持つポリジオルガノシロキサンに、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノシロキサンおよび/またはオルガノアルコキシシランと硬化触媒とを加えた組成物などが広く知られている。
【0004】
しかし、これらのコーティング剤組成物は、一般に有機溶剤を含む溶液であるため、安全・衛生上の問題や引火性に起因する取扱い上の問題があるばかりでなく、自然環境に与える影響が大きいという問題があった。そのため、有機溶剤を使用しない水系エマルジョンタイプのコーティング剤の開発が求められていた。
【0005】
しかしながら、有機溶剤希釈型のコーティング剤をそのまま水系に適用した場合、被膜の耐久性、密着性等が十分得られなかった。また、シラン成分が水と反応し、水系化が困難である、あるいは接着性が良好な被膜が得られないなどの問題があった。
【0006】
一方、エマルジョンタイプのコーティング剤として、各種のシロキサン化合物を組合わせた組成物が種々提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【0007】
また、シリコーンエマルジョンに、水溶性アミノ基含有ポリオルガノシロキサン、アミノシラン化合物、エポキシシラン化合物、およびカルボン酸などを配合することにより、均一塗布性、非粘着性、撥水性、滑り性、基材に対する密着性などの向上を図ったコーティング剤組成物が提案されている。(例えば、特許文献2参照)
【0008】
【特許文献1】
特開平8−245882号公報
【特許文献2】
特開2002−188057公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載されたエマルジョンタイプのコーティング剤においては、ソリッド系およびそれに近いゴム材料に対して、接着性や被膜強度が十分に発現しないという問題があった。また、塗布の際にはじきを生じ易い、被膜が脆い、白化現象を生じるなどの問題もあった。
【0010】
さらに、特許文献2に記載された水系のコーティング剤においても、均一塗布性、非粘着性、撥水性、滑り性、基材との密着性などの向上に対する効果が必ずしも十分でなく、さらなる改善が求められていた。
【0011】
本発明の目的は、ゴム、プラスチックなどの基材表面の処理剤として、有機溶剤成分を含まず、均一塗布性、非粘着性、撥水性および滑り性が良好で、特に基材に対する密着性に優れたコーティング剤組成物を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、高粘度のシリコーンオイルではなく球状微粒子を配合することで、滑り性が向上されるとともに、密着向上成分としてエポキシ基含有シラン化合物とアミノ基含有シラン化合物をそれぞれ配合することにより、被膜からの球状微粒子の脱落が防止され、結果として耐摩耗性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明のコーティング剤組成物は、(A)エポキシ基を含有するシラン化合物またはその部分加水分解物100重量部に対して、(B)アミノ基を含有するシラン化合物またはその部分加水分解物50〜200重量部と、(C)球状微粒子1〜40重量部を混合・分散してなることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
本発明に係るコーティング剤組成物の実施形態は、(A)エポキシ基を含有するシラン化合物またはその部分加水分解物100重量部に対して、(B)アミノ基を含有するシラン化合物またはその部分加水分解物50〜200重量部と、(C)球状微粒子1〜40重量部がそれぞれ配合され、均一に混合・分散されている。
【0016】
本発明に使用される(A)成分のエポキシ基含有シラン化合物は、エポキシ基を含有する基で置換された1価の炭化水素基がケイ素原子に結合し、かつケイ素原子に結合したアルコキシ基を有するアルコキシシランであり、その部分加水分解物も使用することができる。
【0017】
エポキシ基含有基としては、グリシドキシ基、エポキシシクロヘキシル基などが例示される。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが例示される。合成のし易さから、メトキシ基およびエトキシ基が一般に用いられる。良好な密着性を得るために、アルコキシ基は1分子中に少なくとも2個存在することが好ましい。そして、ケイ素原子に結合する他の基は、炭素数が1〜6個の1価のアルキル基であることが好ましい。
【0018】
(A)成分のエポキシ基含有シランとして、具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが例示される。これらは、単独で使用しても2種以上を併用しても良い。
【0019】
本発明に使用される(B)成分のアミノ基含有シラン化合物は、少なくとも1個の炭素原子を介してケイ素原子に結合した置換または非置換のアミノ基を有するアルコキシシランであり、その部分加水分解物も使用することができる。
【0020】
置換または非置換のアミノ基としては、アミノメチル基、β−アミノエチル基、γ−アミノプロピル基、δ−アミノブチル基、γ−(メチルアミノ)プロピル基、γ−(エチルアミノ)プロピル基、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基、N−(β−ジメチルアミノエチル)−γ−アミノプロピル基などが例示される。
【0021】
(B)成分のアミノ基含有シランは、前記した置換または非置換のアミノ基を含む基を1分子中に少なくとも1個有するものであるが、基材への密着性を増すために、さらにケイ素原子に結合したアルコキシ基を有する。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが例示される。合成のし易さから、メトキシ基およびエトキシ基が一般に用いられる。良好な密着性を得るために、このようなアルコキシ基は、1分子中に少なくとも2個存在することが好ましい。そして、ケイ素原子に結合する他の基は、炭素数が1〜6個の1価のアルキル基であることが好ましい。
【0022】
(B)成分であるアミノ基含有シラン化合物またはその部分加水分解物は、(A)成分であるエポキシ基含有シラン化合物またはその部分加水分解物100重量部に対して、50〜200重量部、より好ましくは80〜120重量部の割合で配合される。アミノ基含有シランまたはその部分加水分解物の配合量が50重量部未満では、耐摩耗性が十分でなく、また試験時に被膜から後述する(C)成分の脱落が見られる。配合量が200重量部を超える場合も、試験時に被膜からの(C)成分の脱落が見られ、また被膜自体の滑り性が悪くなり好ましくない。
【0023】
本発明に使用される(C)成分の球状微粒子は、被膜に滑り性を付与するとともに耐摩耗性を向上させ、さらに被膜に艶消しの外観を与える成分であり、平均粒径0.01〜100μmの有機樹脂粉末や無機充填剤粉末が用いられる。具体的には、ポリオルガノシルセスキオキサン、ポリエチレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ナイロン、ウレタン樹脂、シリコーンゴム、アクリルゴムなどの微粒子が挙げられる。バインダ成分である(A)成分および(B)成分との密着性の点から、球状のウレタン系樹脂微粒子の使用が最も好ましい。
【0024】
(C)成分である球状微粒子は、(A)成分であるエポキシ基含有シラン化合物またはその部分加水分解物100重量部に対して、1〜40重量部、より好ましくは5〜20重量部の割合で配合される。(C)球状微粒子の配合量が50重量部未満では、被膜の滑り性が劣り、20重量部を超えると、被膜にざらついた触感が生じ好ましくない。
【0025】
本発明のコーティング剤組成物には、硬化を促進するために、金属脂肪酸塩などの硬化触媒を添加することができる。金属脂肪酸塩としては、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレエート、ジブチルスズジステアレート、トリブチルスズアセテート、トリブチルスズオクトエート、トリブチルスズラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジエチルスズジオレエート、モノメチルスズジオレエートのように金属原子に直接結合した有機基をもつもの、およびオクテン酸亜鉛、オクテン酸鉄、オクテン酸スズのように金属原子に直接結合した有機基を持たないものが例示される。
【0026】
また、ガラス面等との擦れによる鳴き音を防止するために、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどを添加することができる。さらに、被膜の耐候性を向上させるために無機系、有機系の紫外線吸収剤、着色するために無機顔料などの着色剤を配合することができ、必要に応じて増粘剤、消泡剤、防腐剤などを適宜配合することも可能である。
【0027】
本発明のコーティング剤組成物を塗布するには、EPDM等のゴム、プラスチックから成る基材の表面に、ディップコート、スプレーコート、刷毛塗り、ナイフコート、ロールコートなどの方法によって塗布する。次いで、室温で数時間放置するか、あるいは基材の耐熱性の度合いに応じて適宜加熱を行い、塗膜を硬化させる。加熱条件は、70〜200℃の温度で1〜10分間加熱するものとし、さらに好ましくは100〜180℃の温度で1〜5分間加熱する。
【0028】
本発明の実施形態のコーティング剤組成物はぬれ性・レベリング性に優れており、これにより各種基材の表面処理を行った場合には、従来のシリコーン系の組成物による処理に比べて、均一に塗布することができ、基材に対して密着性に優れた硬化被膜を与える。特に、従来の非粘着性シリコーン系組成物では十分な密着性が得られなかったゴム、プラスチックから成る基材、特に発泡または非発泡のEPDMゴムから成る基材に対して、極めて密着性に優れ、かつ他物質に対する良好な非粘着性、撥水性を有する硬化被膜を形成する。また、この硬化被膜は、耐溶剤性にも優れている。
【0029】
さらに、本発明のコーティング剤組成物は、高粘度シリコーンオイルを含有せず、球状微粒子により滑り性を付与しているうえに、その球状微粒子が脱落しにくいので、摩擦係数が低く耐摩耗性に優れた被膜を得ることができる。さらに、2液化が可能であり、泡立ちがなく作業性が良好である。
【0030】
したがって、本発明のコーティング剤組成物は、EPDMゴムが使用される用途、例えば自動車用ウェザーストリップ、防振ゴム、建材用ガスケット等のゴム部品の表面処理剤として、好適に使用することができる。
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、粘度などの物性値は全て23℃、相対湿度50%での値を示し、表1中、部とあるのはいずれも重量部を表す。
【0032】
実施例1〜4,比較例1〜4
表1に示す組成の各成分を同表に示す上から順に配合し、溶剤成分を含まないコーティング剤組成物を調製した。
【0033】
なお、表1中、ポリエーテル変性シリコーンは、化学式;
HO(CH2CH2O)[Si(CH3)2O]5(OCH2CH2)OHで表されるものであり、ポリジメチルシロキサンエマルジョンは、シリコーン分30%、粘度100000cStで末端水酸基含有の乳化重合エマルジョンである。また、メチルハイドロジェンシロキサンエマルジョンは、平均式;
(CH2)3SiO(CH3HSiO)50Si(CH3)3で表されるポリメチルハイドロジェンシロキサンを30%の割合で含有する機械乳化エマルジョンであり、非水溶性アミノ基含有ポリシロキサンは、平均式;
{H2N(CH2)2NH(CH2)3}SiO[{(CH3)2SiO}15OH]3で表されるアミノ基含有ポリシロキサンを30%の割合で含有する乳化重合エマルジョンである。さらに、水溶性アミノシリコーンは、平均式;
(CH3)3SiO[{H2N(CH2)2NH(CH2)3}CH3SiO]100(CH3)3で表される。
【0034】
次いで、得られたコーティング剤組成物を、発泡EPDMゴムのシートの表面に、スプレーガンを用い、硬化被膜の膜厚が10μmになるように塗布した。その後、150℃のオーブンで10分間加熱し被膜を硬化させた。なお、比較例1〜4では、塗布膜から水を揮散させた後、150℃のオーブンで10分間加熱乾燥させ、硬化被膜を形成した。
【0035】
次に、このように表面処理された発泡EPDMゴムシートについて、スプレー塗布直後のコーティング剤の塗布状態(液ぬれ状態)、硬化被膜の密着性と耐溶剤性、摩擦係数、および耐摩耗性をそれぞれ調べた。結果を表1に示す。
【0036】
なお、被膜の密着性、耐溶剤性、摩擦係数および耐摩耗性は、それぞれ以下に示す方法で調べた。
【0037】
[密着性]
被膜表面に1mm間隔で縦横に各11本の平行線を入れて100個のマス目をクロスカットし、その上に、粘着テープ(シリコーン粘着剤YR3340(ジーイー東芝シリコーン(株)製)を40μmの厚さになるようにコーティングした後、恒温高湿室に48時間放置したポリエステルフィルム)を付着させた後、粘着テープを剥離し、剥離しないマス目の数を測定した。
【0038】
[耐溶剤性]
キシレンとイソプロピルアルコール(IPA)の混合溶剤を含浸させたワイピングペーパーで、被膜表面を30往復摩擦し、摩擦後の状態を調べた。
【0039】
[摩擦係数]
コーティングしたゴム表面にガラスシャーレを置き、200gの荷重をかけた状態でガラスシャーレ(底面)を900mm/minの速度で移動させ、そのときに得られる引張り応力により動摩擦係数を求めた。
【0040】
[耐摩耗性]
厚さ2mm、幅20mmで接触面が曲面加工されたガラスエッジを摩耗子として用い、これを400gの荷重で押し付け、15cm/secの速度で往復させる摩耗試験を行なった。なお、5000回の往復ごとにガラスエッジ面を紙やすりで研磨した。耐摩耗性は、ゴム表面が摩耗により擦り切れた時の往復回数により評価した。
【0041】
【表1】
【0042】
【発明の効果】
以上の記載から明らかなように、本発明のコーティング剤組成物によれば、ゴム、プラスチックから成る基材、特に発泡または非発泡のEPDMゴムから成る基材に対して、極めて密着性に優れ、かつ良好な滑り性、非粘着性、撥水性などを有する硬化被膜を形成することができる。また、この硬化被膜は、摩擦係数が低く耐摩耗性に優れている。
【0043】
したがって、本発明のコーティング剤組成物は、EPDMゴムが使用される用途、例えば自動車用ウェザーストリップ、防振ゴム、建材用ガスケット等のゴム部品の表面処理剤として、好適に使用することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、コーティング剤組成物に係わり、特にゴム、プラスチックなどの基材の表面を処理することにより、非粘着性、撥水性および滑り性を有し、かつ密着性および耐摩耗性に優れた被膜を形成することができるコーティング剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、自動車用ウェザーストリップとして使用されているエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)ゴムや各種ゴム製品には、その表面に非粘着性、撥水性、耐摩耗性、滑り性などを付与するため、各種のポリオルガノシロキサン組成物からなるコーティング剤を塗布することが行われている。
【0003】
このようなコーティング剤としては、例えば、末端に水酸基を持つポリジオルガノシロキサンに、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノシロキサンおよび/またはオルガノアルコキシシランと硬化触媒とを加えた組成物などが広く知られている。
【0004】
しかし、これらのコーティング剤組成物は、一般に有機溶剤を含む溶液であるため、安全・衛生上の問題や引火性に起因する取扱い上の問題があるばかりでなく、自然環境に与える影響が大きいという問題があった。そのため、有機溶剤を使用しない水系エマルジョンタイプのコーティング剤の開発が求められていた。
【0005】
しかしながら、有機溶剤希釈型のコーティング剤をそのまま水系に適用した場合、被膜の耐久性、密着性等が十分得られなかった。また、シラン成分が水と反応し、水系化が困難である、あるいは接着性が良好な被膜が得られないなどの問題があった。
【0006】
一方、エマルジョンタイプのコーティング剤として、各種のシロキサン化合物を組合わせた組成物が種々提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【0007】
また、シリコーンエマルジョンに、水溶性アミノ基含有ポリオルガノシロキサン、アミノシラン化合物、エポキシシラン化合物、およびカルボン酸などを配合することにより、均一塗布性、非粘着性、撥水性、滑り性、基材に対する密着性などの向上を図ったコーティング剤組成物が提案されている。(例えば、特許文献2参照)
【0008】
【特許文献1】
特開平8−245882号公報
【特許文献2】
特開2002−188057公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載されたエマルジョンタイプのコーティング剤においては、ソリッド系およびそれに近いゴム材料に対して、接着性や被膜強度が十分に発現しないという問題があった。また、塗布の際にはじきを生じ易い、被膜が脆い、白化現象を生じるなどの問題もあった。
【0010】
さらに、特許文献2に記載された水系のコーティング剤においても、均一塗布性、非粘着性、撥水性、滑り性、基材との密着性などの向上に対する効果が必ずしも十分でなく、さらなる改善が求められていた。
【0011】
本発明の目的は、ゴム、プラスチックなどの基材表面の処理剤として、有機溶剤成分を含まず、均一塗布性、非粘着性、撥水性および滑り性が良好で、特に基材に対する密着性に優れたコーティング剤組成物を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、高粘度のシリコーンオイルではなく球状微粒子を配合することで、滑り性が向上されるとともに、密着向上成分としてエポキシ基含有シラン化合物とアミノ基含有シラン化合物をそれぞれ配合することにより、被膜からの球状微粒子の脱落が防止され、結果として耐摩耗性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明のコーティング剤組成物は、(A)エポキシ基を含有するシラン化合物またはその部分加水分解物100重量部に対して、(B)アミノ基を含有するシラン化合物またはその部分加水分解物50〜200重量部と、(C)球状微粒子1〜40重量部を混合・分散してなることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
本発明に係るコーティング剤組成物の実施形態は、(A)エポキシ基を含有するシラン化合物またはその部分加水分解物100重量部に対して、(B)アミノ基を含有するシラン化合物またはその部分加水分解物50〜200重量部と、(C)球状微粒子1〜40重量部がそれぞれ配合され、均一に混合・分散されている。
【0016】
本発明に使用される(A)成分のエポキシ基含有シラン化合物は、エポキシ基を含有する基で置換された1価の炭化水素基がケイ素原子に結合し、かつケイ素原子に結合したアルコキシ基を有するアルコキシシランであり、その部分加水分解物も使用することができる。
【0017】
エポキシ基含有基としては、グリシドキシ基、エポキシシクロヘキシル基などが例示される。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが例示される。合成のし易さから、メトキシ基およびエトキシ基が一般に用いられる。良好な密着性を得るために、アルコキシ基は1分子中に少なくとも2個存在することが好ましい。そして、ケイ素原子に結合する他の基は、炭素数が1〜6個の1価のアルキル基であることが好ましい。
【0018】
(A)成分のエポキシ基含有シランとして、具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが例示される。これらは、単独で使用しても2種以上を併用しても良い。
【0019】
本発明に使用される(B)成分のアミノ基含有シラン化合物は、少なくとも1個の炭素原子を介してケイ素原子に結合した置換または非置換のアミノ基を有するアルコキシシランであり、その部分加水分解物も使用することができる。
【0020】
置換または非置換のアミノ基としては、アミノメチル基、β−アミノエチル基、γ−アミノプロピル基、δ−アミノブチル基、γ−(メチルアミノ)プロピル基、γ−(エチルアミノ)プロピル基、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基、N−(β−ジメチルアミノエチル)−γ−アミノプロピル基などが例示される。
【0021】
(B)成分のアミノ基含有シランは、前記した置換または非置換のアミノ基を含む基を1分子中に少なくとも1個有するものであるが、基材への密着性を増すために、さらにケイ素原子に結合したアルコキシ基を有する。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが例示される。合成のし易さから、メトキシ基およびエトキシ基が一般に用いられる。良好な密着性を得るために、このようなアルコキシ基は、1分子中に少なくとも2個存在することが好ましい。そして、ケイ素原子に結合する他の基は、炭素数が1〜6個の1価のアルキル基であることが好ましい。
【0022】
(B)成分であるアミノ基含有シラン化合物またはその部分加水分解物は、(A)成分であるエポキシ基含有シラン化合物またはその部分加水分解物100重量部に対して、50〜200重量部、より好ましくは80〜120重量部の割合で配合される。アミノ基含有シランまたはその部分加水分解物の配合量が50重量部未満では、耐摩耗性が十分でなく、また試験時に被膜から後述する(C)成分の脱落が見られる。配合量が200重量部を超える場合も、試験時に被膜からの(C)成分の脱落が見られ、また被膜自体の滑り性が悪くなり好ましくない。
【0023】
本発明に使用される(C)成分の球状微粒子は、被膜に滑り性を付与するとともに耐摩耗性を向上させ、さらに被膜に艶消しの外観を与える成分であり、平均粒径0.01〜100μmの有機樹脂粉末や無機充填剤粉末が用いられる。具体的には、ポリオルガノシルセスキオキサン、ポリエチレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ナイロン、ウレタン樹脂、シリコーンゴム、アクリルゴムなどの微粒子が挙げられる。バインダ成分である(A)成分および(B)成分との密着性の点から、球状のウレタン系樹脂微粒子の使用が最も好ましい。
【0024】
(C)成分である球状微粒子は、(A)成分であるエポキシ基含有シラン化合物またはその部分加水分解物100重量部に対して、1〜40重量部、より好ましくは5〜20重量部の割合で配合される。(C)球状微粒子の配合量が50重量部未満では、被膜の滑り性が劣り、20重量部を超えると、被膜にざらついた触感が生じ好ましくない。
【0025】
本発明のコーティング剤組成物には、硬化を促進するために、金属脂肪酸塩などの硬化触媒を添加することができる。金属脂肪酸塩としては、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレエート、ジブチルスズジステアレート、トリブチルスズアセテート、トリブチルスズオクトエート、トリブチルスズラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジエチルスズジオレエート、モノメチルスズジオレエートのように金属原子に直接結合した有機基をもつもの、およびオクテン酸亜鉛、オクテン酸鉄、オクテン酸スズのように金属原子に直接結合した有機基を持たないものが例示される。
【0026】
また、ガラス面等との擦れによる鳴き音を防止するために、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどを添加することができる。さらに、被膜の耐候性を向上させるために無機系、有機系の紫外線吸収剤、着色するために無機顔料などの着色剤を配合することができ、必要に応じて増粘剤、消泡剤、防腐剤などを適宜配合することも可能である。
【0027】
本発明のコーティング剤組成物を塗布するには、EPDM等のゴム、プラスチックから成る基材の表面に、ディップコート、スプレーコート、刷毛塗り、ナイフコート、ロールコートなどの方法によって塗布する。次いで、室温で数時間放置するか、あるいは基材の耐熱性の度合いに応じて適宜加熱を行い、塗膜を硬化させる。加熱条件は、70〜200℃の温度で1〜10分間加熱するものとし、さらに好ましくは100〜180℃の温度で1〜5分間加熱する。
【0028】
本発明の実施形態のコーティング剤組成物はぬれ性・レベリング性に優れており、これにより各種基材の表面処理を行った場合には、従来のシリコーン系の組成物による処理に比べて、均一に塗布することができ、基材に対して密着性に優れた硬化被膜を与える。特に、従来の非粘着性シリコーン系組成物では十分な密着性が得られなかったゴム、プラスチックから成る基材、特に発泡または非発泡のEPDMゴムから成る基材に対して、極めて密着性に優れ、かつ他物質に対する良好な非粘着性、撥水性を有する硬化被膜を形成する。また、この硬化被膜は、耐溶剤性にも優れている。
【0029】
さらに、本発明のコーティング剤組成物は、高粘度シリコーンオイルを含有せず、球状微粒子により滑り性を付与しているうえに、その球状微粒子が脱落しにくいので、摩擦係数が低く耐摩耗性に優れた被膜を得ることができる。さらに、2液化が可能であり、泡立ちがなく作業性が良好である。
【0030】
したがって、本発明のコーティング剤組成物は、EPDMゴムが使用される用途、例えば自動車用ウェザーストリップ、防振ゴム、建材用ガスケット等のゴム部品の表面処理剤として、好適に使用することができる。
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、粘度などの物性値は全て23℃、相対湿度50%での値を示し、表1中、部とあるのはいずれも重量部を表す。
【0032】
実施例1〜4,比較例1〜4
表1に示す組成の各成分を同表に示す上から順に配合し、溶剤成分を含まないコーティング剤組成物を調製した。
【0033】
なお、表1中、ポリエーテル変性シリコーンは、化学式;
HO(CH2CH2O)[Si(CH3)2O]5(OCH2CH2)OHで表されるものであり、ポリジメチルシロキサンエマルジョンは、シリコーン分30%、粘度100000cStで末端水酸基含有の乳化重合エマルジョンである。また、メチルハイドロジェンシロキサンエマルジョンは、平均式;
(CH2)3SiO(CH3HSiO)50Si(CH3)3で表されるポリメチルハイドロジェンシロキサンを30%の割合で含有する機械乳化エマルジョンであり、非水溶性アミノ基含有ポリシロキサンは、平均式;
{H2N(CH2)2NH(CH2)3}SiO[{(CH3)2SiO}15OH]3で表されるアミノ基含有ポリシロキサンを30%の割合で含有する乳化重合エマルジョンである。さらに、水溶性アミノシリコーンは、平均式;
(CH3)3SiO[{H2N(CH2)2NH(CH2)3}CH3SiO]100(CH3)3で表される。
【0034】
次いで、得られたコーティング剤組成物を、発泡EPDMゴムのシートの表面に、スプレーガンを用い、硬化被膜の膜厚が10μmになるように塗布した。その後、150℃のオーブンで10分間加熱し被膜を硬化させた。なお、比較例1〜4では、塗布膜から水を揮散させた後、150℃のオーブンで10分間加熱乾燥させ、硬化被膜を形成した。
【0035】
次に、このように表面処理された発泡EPDMゴムシートについて、スプレー塗布直後のコーティング剤の塗布状態(液ぬれ状態)、硬化被膜の密着性と耐溶剤性、摩擦係数、および耐摩耗性をそれぞれ調べた。結果を表1に示す。
【0036】
なお、被膜の密着性、耐溶剤性、摩擦係数および耐摩耗性は、それぞれ以下に示す方法で調べた。
【0037】
[密着性]
被膜表面に1mm間隔で縦横に各11本の平行線を入れて100個のマス目をクロスカットし、その上に、粘着テープ(シリコーン粘着剤YR3340(ジーイー東芝シリコーン(株)製)を40μmの厚さになるようにコーティングした後、恒温高湿室に48時間放置したポリエステルフィルム)を付着させた後、粘着テープを剥離し、剥離しないマス目の数を測定した。
【0038】
[耐溶剤性]
キシレンとイソプロピルアルコール(IPA)の混合溶剤を含浸させたワイピングペーパーで、被膜表面を30往復摩擦し、摩擦後の状態を調べた。
【0039】
[摩擦係数]
コーティングしたゴム表面にガラスシャーレを置き、200gの荷重をかけた状態でガラスシャーレ(底面)を900mm/minの速度で移動させ、そのときに得られる引張り応力により動摩擦係数を求めた。
【0040】
[耐摩耗性]
厚さ2mm、幅20mmで接触面が曲面加工されたガラスエッジを摩耗子として用い、これを400gの荷重で押し付け、15cm/secの速度で往復させる摩耗試験を行なった。なお、5000回の往復ごとにガラスエッジ面を紙やすりで研磨した。耐摩耗性は、ゴム表面が摩耗により擦り切れた時の往復回数により評価した。
【0041】
【表1】
【0042】
【発明の効果】
以上の記載から明らかなように、本発明のコーティング剤組成物によれば、ゴム、プラスチックから成る基材、特に発泡または非発泡のEPDMゴムから成る基材に対して、極めて密着性に優れ、かつ良好な滑り性、非粘着性、撥水性などを有する硬化被膜を形成することができる。また、この硬化被膜は、摩擦係数が低く耐摩耗性に優れている。
【0043】
したがって、本発明のコーティング剤組成物は、EPDMゴムが使用される用途、例えば自動車用ウェザーストリップ、防振ゴム、建材用ガスケット等のゴム部品の表面処理剤として、好適に使用することができる。
Claims (1)
- (A)エポキシ基を含有するシラン化合物またはその部分加水分解物100重量部に対して、(B)アミノ基を含有するシラン化合物またはその部分加水分解物50〜200重量部と、(C)球状微粒子1〜40重量部を混合・分散してなることを特徴とするコーティング剤組成物。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003177721A JP2005015502A (ja) | 2003-06-23 | 2003-06-23 | コーティング剤組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003177721A JP2005015502A (ja) | 2003-06-23 | 2003-06-23 | コーティング剤組成物 |
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JP (1) | JP2005015502A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2130883A2 (en) | 2008-06-05 | 2009-12-09 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Aqueous coating agent for rubber, and rubber article coated with cured film of aqueous coating agent |
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2003
- 2003-06-23 JP JP2003177721A patent/JP2005015502A/ja not_active Withdrawn
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EP2130883A2 (en) | 2008-06-05 | 2009-12-09 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Aqueous coating agent for rubber, and rubber article coated with cured film of aqueous coating agent |
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