JP2005281468A - 水性コーティング剤組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】特にEPDMゴムなどの基材へのコーティング剤として、均一塗布性、非粘着性、撥水性および滑り性に優れ、接着性が改善された被膜を形成し得る水性コーティング剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の水性コーティング剤組成物は、(A)硬化性ポリマーを主体とする被膜形成成分と、(B)無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンおよび/または無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィンと、(C)メルカプト基含有シラン化合物、および(D)水をそれぞれ含有する。(A)成分は、(A1)25℃における粘度が50〜10,000,000mPa・sの両末端水酸基封鎖のポリジオルガノシロキサンと、(A2)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、(A3)硬化触媒を含有することができる。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の水性コーティング剤組成物は、(A)硬化性ポリマーを主体とする被膜形成成分と、(B)無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンおよび/または無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィンと、(C)メルカプト基含有シラン化合物、および(D)水をそれぞれ含有する。(A)成分は、(A1)25℃における粘度が50〜10,000,000mPa・sの両末端水酸基封鎖のポリジオルガノシロキサンと、(A2)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、(A3)硬化触媒を含有することができる。
【選択図】なし
Description
本発明は、コーティング剤組成物に係わり、特にゴム、プラスチックなどの基材の表面に塗布することにより、該表面に、非粘着性、撥水性および耐摩耗性を有し、接着性に優れた被膜を形成することができる水性コーティング剤組成物に関する。
従来から、自動車用ウェザーストリップとして使用されているエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)ゴムをはじめとする各種ゴム製品には、その表面に非粘着性、撥水性、耐摩耗性、滑り性などを付与するために、シリコーン(ポリオルガノシロキサン)組成物からなるコーティング剤を塗布することが行われている。
このようなコーティング剤としては、例えば、末端に水酸基を持つポリジオルガノシロキサンに、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノシロキサンおよび/またはオルガノアルコキシシランと硬化触媒とを加えた組成物などが知られている。
しかしこれらのコーティング剤組成物は、一般に有機溶剤を含む溶液として調製されるため、安全・衛生上や引火性の大きさに起因する取扱い上の問題があるばかりでなく、自然環境の悪化に与える影響が大きいという問題があった。そのため、近年は、有機溶剤を使用しない水系エマルジョンタイプのコーティング剤の開発が進められている。
水系エマルジョンタイプのコーティング剤としては、脱水素縮合タイプのシリコーンを含むエマルジョンに、特定の接着性(密着性)向上成分(アミノシラン化合物、エポキシシラン化合物、カルボン酸など)を配合したコーティング剤が提案されている。(特許文献1参照)また、架橋剤成分としてオルガノトリアルコキシシランを有し、密着性向上成分としてアミド基およびカルボキシル基含有オルガノトリアルコキシシラン、エポキシ基含有トリアルコキシシランをそれぞれ含有する脱アルコール縮合タイプのコーティング剤が提案されている。(特許文献2参照)
さらに、脱アルコール縮合タイプのシリコーンを含むエマルジョンに、無水マレイン酸基を有する塩素化ポリオレフィンを配合したコーティング剤も提案されている。(特許文献3参照)
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載されたコーティング剤では、得られる被膜の強度が十分でないため、強度的に使用することができない用途が多くあった。また、特に特許文献1に記載されたコーティング剤においては、アミノシラン化合物が配合されているため、経時的に硬化被膜が著しく黄変して外観が損なわれ、黒色以外のゴム基材には適さないという問題があった。
さらに、特許文献3に記載されたコーティング剤は、被膜の黄変性が低く強度的にも有用であるが、接着力が十分でないため、使用することができるゴム基材の種類が限られていた。例えば、非発泡のEPDMゴムや樹脂成分が多いEPDMゴム発泡体に対しては、十分な接着性が得られず、被膜が容易に剥離してしまうという問題があった。
特開2002−188057公報
特開2003−155411公報
特開2001−207106公報
本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、ゴム基材の表面処理剤として、特に発泡あるいは非発泡のEPDMなどのゴム成形体基材へのコーティング剤として、均一塗布性、非粘着性、撥水性および滑り性に優れ、接着性が大幅に改善された被膜を形成し得る水性コーティング剤組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、硬化性のベースポリマーのエマルジョンに、無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンと無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィンの少なくとも一方と、メルカプト基含有シラン化合物をそれぞれ配合することにより、優れた接着性を有する水性コーティング剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の水性コーティング剤組成物は、(A)硬化性ポリマーを主体とする被膜形成成分と、(B)無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンおよび/または無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィンと、(C)メルカプト基含有シラン化合物、および(D)水をそれぞれ含有することを特徴としている。
本発明の水性コーティング剤組成物において、(A)成分の硬化性ポリマーは、硬化性のポリオルガノシロキサンであることができる。また、(A)成分である硬化性ポリマーを主体とする被膜形成成分は、(A1)25℃における粘度が50〜10,000,000mPa・sの両末端水酸基封鎖のポリジオルガノシロキサンと、(A2)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、(A3)硬化触媒をそれぞれ含有することができる。
本発明の水性コーティング剤組成物によれば、ゴム、プラスチックから成る基材、特に従来のコーティング剤では十分な接着性乃至密着性が得られなかった発泡または非発泡のEPDMゴムから成る基材に対して、極めて接着性に優れ、かつ良好な均一塗布性、非粘着性、撥水性および滑り性を有する被膜を形成することができる。また、常温または比較的低温度の加熱で被膜が得られるので、耐熱性の低い基材や大型で加熱処理しにくい基材に対しても表面処理が可能である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施形態の水性コーティング剤組成物は、(A)硬化性ポリマーを主体とする被膜形成成分を含むエマルジョンに、(B)無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンおよび/または無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィンと、(C)メルカプト基含有シラン化合物がそれぞれ配合されている。
実施形態の水性コーティング剤組成物において、(A)成分は被膜形成のベース成分である。主成分である硬化性のポリマーとしては、加熱によりあるいは常温で硬化するものであれば、種類は特に限定されず、硬化型のエマルジョン(水系塗料)に使用されているポリマーを使用することができる。例えば、シリコーン系エラストマーやウレタン系ポリマーなどが挙げられる。
本発明では、縮合硬化型シリコーン(ポリオルガノシロキサン)を含むエマルジョンの使用が好ましく、中でも以下に示すような脱水素硬化型シリコーンを含むエマルジョンの使用が望ましい。
すなわち、本発明の水性コーティング剤組成物の好ましい実施形態は、(A1)25℃における粘度が50〜10,000,000mPa・sの両末端水酸基封鎖のポリジオルガノシロキサンと、(A2)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、(A3)硬化触媒と、(B)無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンおよび/または無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィンと、(C)メルカプト基含有シラン化合物、および(D)水をそれぞれ含有する。
以下、この実施形態について詳細に説明する。
この実施形態に使用される(A1)成分の両末端水酸基封鎖ポリジオルガノシロキサンは、分子の両末端にケイ素原子に結合した水酸基を有し、その反応性によって硬化反応に関与するものである。
ポリジオルガノシロキサン中のケイ素原子に結合した有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基のようなアルキル基;ビニル基、プロペニル基のようなアルケニル基;フェニル基のようなアリール基;フェネチル基のようなアラルキル基;およびこれらの炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子、ニトリル基などで置換されたものが例示される。合成のし易さと硬化後の被膜の物性とのかね合いから、メチル基が好ましい。
このような両末端水酸基封鎖ポリジオルガノシロキサンの粘度は、25℃において50〜10,000,000mPa・sであり、好ましくは1,000〜2,000,000mPa・sである。粘度が50mPa・s未満では硬化後の被膜が脆くなり、また10,000,000mPa・sを超えると、安定したエマルジョンを得ることが困難となる。
(A1)成分として使用されるポリジポリオルガノシロキサンは、25℃における粘度が上記範囲内であればよく、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。さらに、直鎖状のポリシロキサンであることが好ましいが、部分的に分岐構造や網状構造があってもよい。また、粘度が100,000mPa・s以上である場合には、安定なエマルジョンを得るために、公知の乳化重合により製造することが好ましい。
実施形態に使用される(A2)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、前記(A1)成分の両末端水酸基封鎖ポリジオルガノシロキサンと脱水素縮合反応し、網状構造を形成する成分である。
分子中のケイ素原子に結合した有機基としては、前記した(A1)成分のケイ素原子に結合する有機基と同様なものが例示される。このようなポリオルガノハイドロジェンシロキサンのシロキサン鎖は、直鎖状、分岐状および環状のいずれでもよい。
(A2)成分の配合量は、前記(A1)両末端水酸基封鎖ポリジオルガノシロキサン100重量部に対して0.5〜20重量部とすることが好ましい。0.5重量部未満では、硬化速度が遅すぎて連続的な被膜を形成することが難しく、また20重量部を超えると、硬化被膜が脆くなり好ましくない。
実施形態に使用される(A3)硬化触媒は、(A1)成分の両末端水酸基封鎖ポリジオルガノシロキサンの水酸基と、(A2)成分のポリオルガノハイドロジェンシロキサンのSi−H基との間の脱水素縮合反応を促進する触媒である。このような硬化触媒としては、金属脂肪酸塩、アミン類、第4アンモニウムヒドロキシド類などが挙げられる。これらのものを併用してもよい。
金属脂肪酸塩としては、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレエート、ジブチルスズジステアレート、トリブチルスズアセテート、トリブチルスズオクトエート、トリブチルスズラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジエチルスズジオレエート、モノメチルスズジオレエートのように金属原子に直接結合した有機基をもつもの、およびオクテン酸亜鉛、オクテン酸鉄、オクテン酸スズのように金属原子に直接結合した有機基を持たないものが例示される。
アミン類としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチルテトラアミンのような有機アミン;α−アミノプロピルトリエトキシシランのようなアミノ基を有するシラン化合物やそれらの塩が例示される。第4アンモニウムヒドロキシド類としては、テトラメチルアンモニウム、ジメチルベンジルアンモニウムおよびそれらの塩が例示される。
(A3)硬化触媒の配合量は、(A1)両末端水酸基封鎖ポリジオルガノシロキサン100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲が好ましい。0.1重量部未満では、硬化速度が遅すぎて連続的な被膜を形成することが難しく、また10重量部を超えると、組成物の安定性が悪くなり好ましくない。
実施形態に使用される(B)成分の無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンおよび/または無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィンは、本発明の特徴的成分の一つである。反応基として無水マレイン酸基を有する塩素化ポリオレフィンである無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンと、反応基として無水マレイン酸基とアクリル基をそれぞれ有するポリオレフィンである無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィンの少なくとも一方を配合することにより、本発明のコーティング剤組成物から得られる被膜に、ゴムに対する優れた接着性と耐摩耗性を付与することができる。また、このコーティング剤組成物は各成分配合後の安定性にも優れているので、長い可使時間が可能となる。
この(B)無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンおよび/または無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィンは、エマルジョンの形態のものを配合することが好ましい。このエマルジョンについて、無水マレイン酸の変性量(含有量)、塩素含有量、アクリル変性量(含有量)、およびベースとなっている塩素化ポリオレフィンあるいはポリオレフィンの分子量などに特に制限はないが、無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンエマルジョンとしては、分子量が10,000〜200,000で、塩素含有量が5〜35重量%で、無水マレイン酸基含有量が0.5〜25重量%である変性塩素化ポリオレフィンを、乳化(エマルジョン化)したものが好ましい。また、無水マレイン酸アクリル変性ポリオレフィンエマルジョンとしては、分子量が10,000〜200,000で、アクリル基含有量が5〜35重量%で、無水マレイン酸基含有量が0.5〜25重量%である変性ポリオレフィンを乳化したものが好ましい。
このような(B)成分の含有量は、(A1)両末端水酸基封鎖ポリジオルガノシロキサン100重量部に対して5〜50重量部、より好ましくは10〜40重量部とする。(B)成分の含有量を上記範囲に限定したのは、5重量部未満であると、配合目的であるゴム基材との接着性向上および耐摩耗性の付与を十分に達成することができず、一方50重量部を超えて配合しても、ゴム基材との接着性向上および耐摩耗性付与の効果が飽和し、かえって耐候性など他の特性が低下するためである。
実施形態に使用される(C)メルカプト基含有シラン化合物は、本発明のコーティング剤組成物から得られる被膜の接着性を向上させる成分である。この(C)メルカプト基含有シラン化合物を前記(B)成分と併用することにより、EPDMのような難接着性のゴム基材に対する接着性を大幅に高めることができ、表面処理剤乃至コーティング剤として使用することが可能なゴム基材の適用範囲を広げることができる。このような(C)メルカプト基含有シラン化合物としては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
(C)メルカプト基含有シラン化合物の含有量は、(A1)両末端水酸基封鎖ポリジオルガノシロキサン100重量部に対して5〜50重量部、より好ましくは10〜40重量部とする。(C)成分の含有量を上記範囲に限定したのは、5重量部未満であると、配合目的であるゴム基材との接着性向上を十分に達成することができず、一方50重量部を超えて配合しても、ゴム基材との接着性向上効果が飽和し、かえって被膜が脆くなるなど他の特性が低下するためである。
実施形態の水性コーティング剤組成物を製造するには、前記した(A1)成分〜(A3)成分を含む(A)成分と、(B)成分である無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンおよび/または無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィン、および(C)メルカプト基含有シラン化合物を、それぞれ適当な乳化剤を用いて単独でエマルジョン化したものを混合してもよいし、あるいは2種または3種の成分を混合した後、エマルジョン化を行ってもよい。エマルジョンとしては、適宜、既存の機械乳化あるいは乳化重合により製造したものを用いることができる。
塗布効率や塗布の均一性の観点から、実施形態の水性コーティング剤組成物には(D)成分として水が加えられ、その成分(固形分)濃度が3〜50重量%となるように調整される。
実施形態の水性コーティング剤組成物においては、ゴム基材表面などに対する濡れ性を向上させ、塗布の際の寄りや弾きを防止する成分として、アルキルアミンオキサイドを、エマルジョンに対する固形分比で0.5〜10重量%の範囲で添加することができる。なお、アルキルアミンオキサイドはジメチルアルキルアミンオキサイドに代表され、アルキル基としては、ラウリル基、ミリスチル基、ヤシ油等の天然油脂変性基などが例示される。
また、被膜の接着性を向上させるために、非水溶性アミノ基含有ポリオルガノシロキサンを含有するエマルジョンを添加することができる。非水溶性アミノ基含有ポリオルガノシロキサンの添加量は、塗布効率や塗布性の点から、成分濃度がエマルジョンの固形分の3〜50重量%になるように、水で調整することが望ましい。
非水溶性アミノ基含有ポリシロキサンとしては、一般式:[R1 aSi(OR2)bO(4−a−b)/2]n(ただし、R1は水素原子および1価の置換または非置換の炭化水素基から選ばれる少なくとも2種のものを示し、1分子中の全R1のうち少なくとも2個は、1個以上の炭素原子を介してケイ素原子に結合した置換または非置換のアミノ基で置換された1価の炭化水素基である。R2は水素原子および1価の置換または非置換の炭化水素基を示す。aおよびbは、1≦a≦2.5、1≦a+b≦2.5、0≦b≦0.5の関係を満たす数であり、nは4〜5,000の数を示す。)で示されるポリオルガノシロキサンが挙げられる。
そして、少なくとも1個の炭素原子を介してケイ素原子に結合した置換または非置換のアミノ基としては、アミノメチル基、β−アミノエチル基、γ−アミノプロピル基、δ−アミノブチル基、γ−(メチルアミノ)プロピル基、γ−(エチルアミノ)プロピル基、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基、N−(β−ジメチルアミノエチル)−γ−アミノプロピル基などが例示される。これらのアミノ基含有炭化水素基以外のR1としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基のようなアルキル基;ビニル基、プロペニル基のようなアルケニル基;フェニル基のようなアリール基;フェネチル基のようなアラルキル基;およびこれら炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子、ニトリル基などで置換されたものが例示される。合成のし易さ、取扱の容易さから、これらの中でも、水素原子、メチル基、ビニル基、フェニル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
R2としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が例示される。合成のし易さ、取扱の容易さから、これらの中でも、水素原子、メチル基、エチル基であることが好ましい。
前記平均組成式中でaおよびbは、前記した関係を満たす数であり、aおよび(a+b)が1未満あるいは2.5を超えるものでは、基材に対する接着性が向上しない。bはケイ素原子に結合するヒドロキシル基あるいはアルコキシ基の数を示し、0.5以下であればよい。0.5を超えるとコーティング剤の保存安定性が悪くなる。
また、合成のし易さ、硬化前の組成物の粘度が作業に支障をきたさない範囲であること、および硬化後の被膜の接着性から、非水溶性アミノ基含有ポリシロキサンの重合度nは、4〜5,000好ましくは4〜1,000の範囲から選ばれる。重合度が4より低いと接着性が十分に向上せず、重合度が5,000より高いと、合成しにくいうえに粘度が高くなりすぎて取扱いが不便である。
このアミノ基含有ポリシロキサン中でアミノ基の量は、単独で非水溶性となるような量であればよく、アミノ当量として100〜15,000(g/mol)、好ましくは150〜1,000(g/mol)のものが使用可能である。アミノ当量が15,000(g/mol)を超えるもの、あるいは100(g/mol)未満のものでは、接着性を向上させる効果がない。
また、本発明においては、基材との接着性をさらに向上させるために、各種シランカップリング剤の単体あるいは混合物を、そのままであるいは部分縮合させて添加することができる。
さらに、本発明においては、耐候性を向上させるために無機系、有機系の紫外線吸収剤を、滑り性を向上させるために高粘度のポリジメチルシロキサンを、つや消し性と滑り性を向上させるために、平均粒径0.01〜100μm程度のポリアルキルシルセスキオキサン、ポリエチレンのようなポリオレフィンやポリカーボネート樹脂等の有機フィラーあるいは無機フィラーを、着色するために無機顔料などを、それぞれ本発明の趣旨を変えない範囲で添加することができる。また必要に応じて、増粘剤、消泡剤、防腐剤を適宜配合することもできる。
本発明の水性コーティング剤組成物を塗布するには、紙、ゴム、プラスチック、金属などから成る基材の表面に、ディップコート、スプレーコート、刷毛塗り、ナイフコート、ロールコートなどの方法によって塗布する。次いで、室温で数時間放置するか、あるいは基材の耐熱性の度合いに応じて適宜加熱を行い、塗膜を硬化させる。加熱条件は、基材が紙の場合には120〜180℃の温度で10〜30秒間、基材がゴムの場合には80〜180℃の温度で1〜5分間、プラスチックの場合には70〜150℃の温度で30秒〜2分間とすることが好ましい。
本発明の実施形態の水性コーティング剤組成物は、各種基材の表面に塗布した場合に、従来のシリコーン組成物による塗布に比べて、均一塗布性に優れ、基材に対して接着性および耐摩耗性に優れた硬化被膜を与える。特に、従来の非粘着性被膜形成用シリコーン組成物では十分な接着性が得られなかったゴム、プラスチック基材、特に発泡または非発泡のEPDMゴムから成る基材に対して、優れた接着性および耐摩耗性を有する硬化被膜を形成することができる。
また、本発明の実施形態のコーティング剤組成物は、常温乃至比較的低温で硬化被膜を形成するので、耐熱性の低い基材や大型で加熱処理のしにくい基材に対しても表面処理が可能であり、他の物質に対する非粘着性が良好で、撥水性を有しかつ優れた耐摩耗性を有する硬化被膜を形成する。さらに、各成分のエマルジョンがそれぞれ保存安定性に優れ、また各成分配合後の安定性にも優れており、可使時間が長い。
したがって、実施形態の水性コーティング剤組成物は、EPDMゴムなどが使用される用途、例えば自動車用ウェザーストリップ、プリンターブレード、防振ゴム、建材用ガスケット等のゴム部品の表面処理剤として、好適に使用することができる。さらに実施形態のコーティング剤組成物は、ゴム、プラスチックをはじめ各種基材に、非粘着性で撥水性を付与する場合に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、粘度などの物性値は全て25℃、相対湿度50%での値を示す。
実施例1〜3、比較例1〜3
表1に示す組成の各成分を同表に示す順に配合して混合し、コーティング剤組成物を調製した。
表1に示す組成の各成分を同表に示す順に配合して混合し、コーティング剤組成物を調製した。
なお、表1中、ポリジメチルシロキサンエマルジョン-1は、粘度100,000mPa・sの末端水酸基封鎖ポリジメチルシロキサンを30重量%の割合で含む乳化重合エマルジョンであり、ポリジメチルシロキサンエマルジョン-2は、粘度1,000mPa・sの末端水酸基封鎖ポリジメチルシロキサンを30重量%の割合で含む機械乳化エマルジョンである。
また、ポリメチルハイドロジェンシロキサンエマルジョン-1は、平均式:
(CH2)3SiO(CH3HSiO)50Si(CH3)3で表されるポリメチルハイドロジェンシロキサンを30重量%の割合で含有する機械乳化エマルジョンであり、メチルハイドロジェンシロキサンエマルジョン-2は、平均式:
(CH2)3SiO(CH3HSiO)40{(CH3)2SiO}10Si(CH3)3で表されるポリメチルハイドロジェンシロキサンを30重量%の割合で含有する機械乳化エマルジョンである。
(CH2)3SiO(CH3HSiO)50Si(CH3)3で表されるポリメチルハイドロジェンシロキサンを30重量%の割合で含有する機械乳化エマルジョンであり、メチルハイドロジェンシロキサンエマルジョン-2は、平均式:
(CH2)3SiO(CH3HSiO)40{(CH3)2SiO}10Si(CH3)3で表されるポリメチルハイドロジェンシロキサンを30重量%の割合で含有する機械乳化エマルジョンである。
また、非水溶性アミノ基含有ポリシロキサンは、平均式;
{H2N(CH2)2NH(CH2)3}SiO[{(CH3)2SiO}15OH]3
で表されるアミノ基含有ポリシロキサンを30重量%の割合で含有する乳化重合エマルジョンである。
{H2N(CH2)2NH(CH2)3}SiO[{(CH3)2SiO}15OH]3
で表されるアミノ基含有ポリシロキサンを30重量%の割合で含有する乳化重合エマルジョンである。
さらに、無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンエマルジョンは、無水マレイン酸含有量7重量%、塩素含有量15重量%、分子量約40,000の無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンを27重量%含有するエマルジョンであり、無水マレイン酸アクリル変性ポリオレフィンエマルジョンは、無水マレイン酸含有量8重量%、アクリル含有量18重量%、分子量約50,000の無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィンを27重量%含有するエマルジョンである。
次いで、得られたコーティング剤組成物を、非発泡EPDMゴム(以下、ソリッドゴムと示す。)シートおよび発泡EPDMゴム(以下、発泡ゴムと示す。)シートの表面に、スプレーガンを用いて、硬化被膜の膜厚が10μmになるように塗布した。その後、塗布膜から水を揮散させた後、150℃のオーブンで10分間加熱乾燥させ、硬化被膜を形成した。
このように表面処理されたソリッドゴムシートおよび発泡ゴムシートについて、塗布状態(濡れ性)、硬化被膜の接着性、耐溶剤性、摩擦係数、および耐摩耗性を、それぞれ以下に示す方法で調べた。
[接着性]
被膜表面に1mm間隔で縦横に各11本の平行線を入れて100個のマス目をクロスカットし、その上に粘着テープを付着させた後、粘着テープを剥離し、剥離しないマス目の数を測定した。なお、粘着テープとしては、ポリエステルテープ上にシリコーン粘着剤YR3340(ジーイー東芝シリコーン(株)製)を40μmの厚さになるようにコーティングした後、恒温高湿室に48時間放置したものを使用した。
被膜表面に1mm間隔で縦横に各11本の平行線を入れて100個のマス目をクロスカットし、その上に粘着テープを付着させた後、粘着テープを剥離し、剥離しないマス目の数を測定した。なお、粘着テープとしては、ポリエステルテープ上にシリコーン粘着剤YR3340(ジーイー東芝シリコーン(株)製)を40μmの厚さになるようにコーティングした後、恒温高湿室に48時間放置したものを使用した。
[耐溶剤性]
ヘキサンを含浸させたワイピングペーパーで、被膜表面を30往復摩擦し、摩擦後の状態を調べた。
ヘキサンを含浸させたワイピングペーパーで、被膜表面を30往復摩擦し、摩擦後の状態を調べた。
[摩擦係数]
コーティングした被膜表面に、幅10mm、長さ100mmのガラス板を置き、200gの荷重をかけてガラス板を900mm/min.の速度で移動させ、そのときに得られる引っ張り応力により動摩擦係数を求めた。なお、最大静止摩擦係数はガラス板が動き出すときの値である。
コーティングした被膜表面に、幅10mm、長さ100mmのガラス板を置き、200gの荷重をかけてガラス板を900mm/min.の速度で移動させ、そのときに得られる引っ張り応力により動摩擦係数を求めた。なお、最大静止摩擦係数はガラス板が動き出すときの値である。
[耐摩耗性]
厚さ2mm、幅20mmで接触面が曲面加工された図1に示すガラス板を摩耗子として用い、これを400gの荷重で被膜表面に押し付け、15cmの間隔を60回/min.の速度で往復させる摩耗性試験を行なった。耐摩耗性は、ゴム表面が摩耗により擦り切れた時の往復回数により評価した。
厚さ2mm、幅20mmで接触面が曲面加工された図1に示すガラス板を摩耗子として用い、これを400gの荷重で被膜表面に押し付け、15cmの間隔を60回/min.の速度で往復させる摩耗性試験を行なった。耐摩耗性は、ゴム表面が摩耗により擦り切れた時の往復回数により評価した。
測定結果を表1に示す。なお、表中の耐溶剤性の評価において、擦り跡が全く付かなかったものを「良好」、擦り跡が若干あるが実用上問題がないものを「ほぼ良好」として記載した。
本発明の水性コーティング剤組成物によれば、ゴム、プラスチックから成る基材、特に発泡または非発泡のEPDMゴムから成る基材に対して、極めて接着性に優れ、かつ良好な滑り性、非粘着性、撥水性などを有する被膜を形成することができる。また、この被膜は、摩擦係数が低く耐摩耗性に優れている。
したがって、本発明のコーティング剤組成物は、EPDMゴムが使用される用途、例えば自動車用ウェザーストリップ、プリンターブレード、防振ゴム、建材用ガスケット等のゴム部品の表面処理剤として、好適に使用することができる。
Claims (6)
- (A)硬化性ポリマーを主体とする被膜形成成分と、
(B)無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンおよび/または無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィンと、
(C)メルカプト基含有シラン化合物、および
(D)水
をそれぞれ含有することを特徴とする水性コーティング剤組成物。 - 前記硬化性ポリマーが、硬化性のポリオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項1記載の水性コーティング剤組成物。
- 前記(A)硬化性ポリマーを主体とする被膜形成成分が、
(A1)25℃における粘度が50〜10,000,000mPa・sの両末端水酸基封鎖のポリジオルガノシロキサンと、
(A2)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(A3)硬化触媒をそれぞれ含有することを特徴とする請求項1または2記載の水性コーティング剤組成物。 - 前記(B)成分である無水マレイン酸変性塩素化ポリオレフィンおよび/または無水マレイン酸・アクリル変性ポリオレフィンの含有量が、前記(A)成分の硬化性ポリマー100重量部に対して5〜50重量部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の水性コーティング剤組成物。
- 前記(C)メルカプト基含有シラン化合物の含有量が、前記(A)成分の硬化性ポリマー100重量部に対して5〜50重量部であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の水性コーティング剤組成物。
- 発泡あるいは非発泡のエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体から成る基材の上に塗布されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の水性コーティング剤組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004097005A JP2005281468A (ja) | 2004-03-29 | 2004-03-29 | 水性コーティング剤組成物 |
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JP (1) | JP2005281468A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008155492A (ja) * | 2006-12-25 | 2008-07-10 | Momentive Performance Materials Japan Kk | 離型剤組成物 |
JP2008155493A (ja) * | 2006-12-25 | 2008-07-10 | Momentive Performance Materials Japan Kk | 離型剤組成物 |
-
2004
- 2004-03-29 JP JP2004097005A patent/JP2005281468A/ja not_active Withdrawn
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