JP2005013800A - 固体触媒及びこれを用いた酸化的付加生成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】パラジウムとテルルを有効成分として無機多孔体に担持した固体触媒であって、工業的に十分満足できる高活性を発現する触媒を得る。また、オレフィン又は芳香族化合物に、酸素求核剤を酸化的付加させて対応する生成物を製造する方法において、これら生成物を、工業的に十分満足できる高収率で得る。
【解決手段】パラジウムとテルルを活性成分として無機多孔体に担持した固体触媒であって、EPMA(X線マイクロアナライザー)で測定された活性成分の担持分布において、 担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に、触媒に担持された全パラジウム及び触媒に担持された全テルルのそれぞれ99重量%以上が存在する固体触媒、及びこれを用いたオレフィン又は芳香族化合物と酸素求核剤との酸化的付加生成物の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】パラジウムとテルルを活性成分として無機多孔体に担持した固体触媒であって、EPMA(X線マイクロアナライザー)で測定された活性成分の担持分布において、 担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に、触媒に担持された全パラジウム及び触媒に担持された全テルルのそれぞれ99重量%以上が存在する固体触媒、及びこれを用いたオレフィン又は芳香族化合物と酸素求核剤との酸化的付加生成物の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はパラジウムとテルルを有効成分として無機多孔体に担持した固体触媒、およびこの触媒と分子状酸素との存在下、オレフィン又は芳香族化合物に、酸素求核剤を酸化的付加させて対応する生成物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
不飽和グリコールジエステル、例えばブテンジオールジエステルはエンジニアリングプラスチックス、エラストマー、弾性繊維、合成皮革等の原料である1,4−ブタンジオールや、高性能溶剤、弾性繊維の原料であるテトラヒドロフランを製造するための重要な中間化合物である。
【0003】
このブテンジオールジエステルを製造する方法の一つとして、パラジウムとテルルを活性炭に担持させた固体触媒を使用し、ブタジエンをカルボン酸及び分子状酸素と反応させてブテンジオールジエステルを製造する方法がある。
またパラジウムとテルルを含む触媒は、この他にも共役ジエンのジアルコキシ化反応(特許文献1)、シクロオレフィンのアセトキシ化反応(特許文献2)等の様々な反応に使用できる。
【0004】
しかしながら本触媒の活性は、工業的に目的物を製造する上では、まだ十分に高いとは言えない。また、パラジウムは高価な貴金属であるため、単位パラジウム当たりの活性をできるだけ高め、他の触媒に比して特に高活性な触媒を得ることが望まれている。
そこで、触媒活性を向上させる手法として、パラジウム及びテルルを触媒の外表面近傍に多く担持させる方法が提案されている(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−9473号公報
【特許文献2】特開平11−315049号公報
【特許文献3】特開平10−175917号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献3によれば、パラジウム−テルル触媒の活性はかなり高めることができるが、工業的に目的物を製造する上では未だ十分とは言えなかった。
上記事情に鑑み、本発明の目的は、パラジウムとテルルを有効成分として無機多孔体に担持した固体触媒であって、工業的に十分満足できる高活性を発現する触媒を得ることにある。また、オレフィンや芳香族化合物に、酸素求核剤を酸化的付加させて対応する生成物を製造する方法において、これら生成物を、工業的に十分満足できる高収率で得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、活性成分であるパラジウムとテルルの担持分布を、従来より更に外表面近傍に集中させることにより、飛躍的に触媒性能が向上することを見出し、本発明を完成するに到った。
即ち、本発明は、パラジウムとテルルを活性成分として無機多孔体に担持した固体触媒であって、EPMA(X線マイクロアナライザー)で測定された活性成分の担持分布において、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に、触媒に担持された全パラジウム及び触媒に担持された全テルルのそれぞれ99重量%以上が存在することを特徴とする固体触媒に存する。
【0008】
好ましくは、該担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在するパラジウムの内、テルル/パラジウム原子比が0.15〜0.35であるパラジウムが80重量%以上を占める。
以下、本願発明においては、EPMA(X線マイクロアナライザー)で測定された活性成分の担持分布において、触媒に担持された全パラジウムの内、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在するパラジウムの量(重量%)を「パラジウムのA比率」と称する。同じく、EPMA(X線マイクロアナライザー)で測定された活性成分の担持分布において、触媒に担持された全テルルの内、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在するテルルの量(重量%)を「テルルのA比率」と称する。また、EPMA(X線マイクロアナライザー)で測定された活性成分の担持分布において、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在するパラジウムの内、テルル/パラジウム原子比が0.15〜0.35であるパラジウムの量(重量%)を「B比率」と称する。
【0009】
本発明においては、無機多孔体の粒子径は1mm以上であることが好ましい。より好ましくは粒子径が8mm以下である。
また、無機多孔体としてはシリカが特に好ましい。
本固体触媒は、液相酸化用触媒として用いることが好ましい。中でも液相酸化的アシロキシ化(アシルオキシ化)及び/又はアルコキシ化用の触媒として用いると活性が高く好ましい。
【0010】
本発明の別の要旨は、上記固体触媒の存在下、オレフィン又は芳香族化合物に酸素求核剤および分子状酸素を酸化的付加させることを特徴とする、酸化的付加反応方法に存する。
本発明の別の要旨は、上記固体触媒の存在下、オレフィン又は芳香族化合物に酸素求核剤および分子状酸素を酸化的付加させて対応する生成物を製造することを特徴とする、オレフィン又は芳香族化合物と酸素求核剤および分子状酸素との酸化的付加生成物の製造方法に存する。
【0011】
或いは、本発明の別の要旨は、上記固体触媒の存在下、側鎖アルキル基を有する芳香族化合物に酸素求核剤および分子状酸素を酸化的付加させることを特徴とする、酸化的付加反応方法に存する。
本発明の別の要旨は、上記固体触媒の存在下、側鎖アルキル基を有する芳香族化合物に酸素求核剤および分子状酸素を酸化的付加させて対応する生成物を製造することを特徴とする、側鎖アルキル基を有する芳香族化合物と酸素求核剤および分子状酸素との酸化的付加生成物の製造方法に存する。
【0012】
これら製造方法の一例は、上記固体触媒の存在下に共役ジエンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて、対応する不飽和グリコールジエステルを製造する方法である。
他の一例は、上記固体触媒の存在下に共役ジエンとアルコール及び分子状酸素を反応させて対応する不飽和グリコールジエーテルを製造する方法である。
【0013】
他の一例は、上記固体触媒の存在下にシクロヘキセンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応するアシロキシシクロヘキセンを製造する方法である。
他の一例は、上記固体触媒の存在下にアルキルベンゼンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応するアシロキシアルキルベンゼンを製造する方法である。
【0014】
これらの製造方法において、好ましくは共役ジエンがブタジエン、ピペリレン、アルキル置換ブタジエンから選ばれるものとする。また、好ましくはカルボン酸が酢酸である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いる触媒は、パラジウムとテルルを活性成分として無機多孔体に担持した固体触媒であって、EPMA(X線マイクロアナライザー)で測定された活性成分の担持分布(無機多孔体上での活性成分の分布)において、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に、触媒に担持された全パラジウム及び触媒に担持された全テルルのそれぞれ99重量%以上が存在することを特徴とする。より好ましくは、担体表面から中心に対する半径の10%の深さ迄の表層部に、触媒に担持された全パラジウム及び触媒に担持された全テルルのそれぞれ90重量%以上が存在し、さらに好ましくは95重量%以上が存在する。パラジウムに関しては、該10%の深さ迄の表層部に99重量%以上が存在するのが特に好ましい。
【0016】
従来、固体触媒において活性成分を外表面近傍に存在させることで触媒活性によい影響を与えることが知られていた。例えば前記特許文献3には、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に、触媒に担持された全パラジウムの約80〜90重量%が存在し、且つ、触媒に担持された全テルルの75〜90重量%が存在するような触媒が高い活性を示したことが記載されている。
【0017】
しかしながら、本発明者らは従来の約80〜90重量%という程度を大幅に越えた、99重量%以上ものパラジウム及びテルルを外表面へ集中させることで、触媒活性が飛躍的に高まることを見出したものである。
図1は、本発明の実施例及び比較例に係る、パラジウムのA比率(%)と、単位パラジウム当たりの触媒活性(mmol/mmol−Pd・h)との関係を示すグラフである。黒丸は本発明に係る実施例を示し、白丸は従来技術である比較例を示している。図1によれば、パラジウムのA比率が70〜90重量%の範囲でもA比率が上がるにつれて触媒活性が徐々に高まってはいくものの、A比率を99重量%以上とすることで、著しく高い活性が得られていることが判る。
【0018】
本発明における特定の担持分布を有する触媒が顕著に高活性である理由は、今のところ明らかではないが次のように推定される。反応の進行は、(1)反応基質が触媒細孔内に浸入し、(2)反応基質が細孔内を拡散し、(3)細孔内に担持された活性成分の活性点に吸着し、(4)吸着点で反応が起こり、(5)反応生成物が活性点より脱離し、(6)反応生成物が細孔内を拡散し、(7)反応生成物が細孔内より離脱する、の段階に分けることができる。
【0019】
そして、(2)及び(6)に要する時間が他段階に比べて長いほど、触媒粒子表層部により多くの活性成分が存在する方が反応速度的に有利となる。
更に、(2)及び(6)における細孔内拡散速度が触媒粒子内で一様ではなく、触媒粒子深部より表層部のほうが速い場合、表層部に多くの活性成分が集中すれば、ますます反応速度的に有利となる。
【0020】
本発明の触媒反応系はこの場合に当たると考えられ、本発明で示されたパラジウム及びテルルのA比率が99%以上である触媒は、反応速度的に極めて有利な状態になっていると考えられる。
また本発明においては、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在するパラジウムの内、テルル/パラジウム原子比が0.15〜0.35であるパラジウムが、通常80重量%以上が好ましい。より好ましくは90重量%以上を占める。
【0021】
テルル/パラジウム原子比とは、担体のある位置において担持されたパラジウムとテルルの原子数比率(担持量の比率)であって、担持されたパラジウム1モルに対する担持されたテルルのモル数に相当する。通常0.05から5.0の範囲が良いとされているが、本発明においては0.15〜0.35の範囲が特に好ましい。これが小さすぎると、本触媒を用いて基質を反応させた場合、パラジウムが担体から反応液中に流出する恐れがある。一方、大きすぎると、テルルが反応液中に流出する恐れがあり、何れの場合も触媒活性低下の原因となる。
【0022】
ところで、一般に、担体上においてパラジウムとテルルは異なった担持分布を持つため、パラジウム/テルル原子比は担体上の位置によって異なる場合が多い。テルル/パラジウム原子比のばらつきがあまり大きすぎるのは好ましくないが、ある程度の範囲内に納まっていれば、反応に支障はなく問題はない。
また本発明においては、反応に主に関与する活性成分、即ち担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在するパラジウムについてのテルル/パラジウム原子比が重要である。
【0023】
これらを総合して本発明においては、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在するパラジウムの内、テルル/パラジウム原子比が0.15〜0.35であるパラジウムが通常80重量%以上が好ましい。より好ましくは90重量%以上を占める。
つまり、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在するパラジウムについて、テルル/パラジウム原子比をヒストグラム化したとき、その比が0.15〜0.35である範囲内に該パラジウムの80重量%以上、或いは90重量%以上が含まれる。
【0024】
本発明によれば、以上のような構成により、パラジウムとテルルを有効成分として無機多孔体に担持した固体触媒であって、工業的に十分満足できる高活性を発現する触媒を得ることができる。
なお、本発明に関わる活性種の担持分布は、触媒調製に関わる多くの要素によって決まるため(例えば、担体の物性、活性成分の原料塩種及びそれを溶解して得られた溶液の物性、含浸方法、乾燥方法等)、特定の担持分布が得られる手法は一つに限られない。
【0025】
例えば同一条件で触媒を調製しても原料テルル塩が異なれば担持分布は大きく異なり、また同一の触媒原料(担体、パラジウム塩、テルル塩)を使用しても乾燥方法を変えたり、或いは条件の一部を変えるだけでも、その担持分布を変えることができる。
次に、本発明におけるA比率及びB比率の求め方を説明する。
【0026】
本発明において、担持分布を測定する手法は一般的にEPMAが用いられるが、実際には同一手法で調製した触媒でもその担持分布は正確に同一ではなく、更には同じロットの触媒でも粒子1つ1つによりある程度のバラツキがあるために、1粒子についての担持分布を測定しただけでは、その担持分布による効果を正確に知る事は難しい。また、1つの粒子の担持分布も、その粒子の中である程度の偏り(この場合の偏りとは触媒粒子中心を中心とした一様な偏りの事ではなく、例えば、球状触媒の任意の断面に於いて、その断面の中心を通る任意の直線上を複数測定した場合、それらの測定線上の担持分布が全て同一ではない等)が有る事が多く、1つの線上を測定しただけでは、その粒子の正確な担持分布を表す事は難しい。また、仮にその測定された担持分布に偏りがなかったとしても、担体の形状が球状であれば任意の中心線上を測定した結果でその触媒粒子の担持分布を代表させる事はできるが、不定形の担体では線分析の結果のみでは正確な担持分布を表す事は難しい。従って、全ての触媒について、その触媒を代表する正確な担持分布を得る事は事実上困難である。
【0027】
そこで本発明者らは、担持分布を得る手法として以下に記す測定方法により得られた担持分布をその触媒を代表する担持分布とした。即ち、触媒の内10個の触媒粒子を任意に選び、各々の粒子についての最大面積を与える各断面に於いて、その断面を切る線の長さが最大になる直線(以後、この直線を長径線と記す。またその長さを長径方向の直径、長径線の中点を長径方向の中心、直径の1/2を長径方向の半径とする)上、及び長径線と直交する直線で、その長さが最大になる直線(以後、この直線を短径線と記す。またその長さを短径方向の直径、短径線の中点を短径方向の中心、直径の1/2を短径方向の半径とする)上についてEPMAにより20μmの間隔で測定し、後述の(1)〜(5)式の計算により補正された10本の長径線直径担持分布と10本の短径線直径担持分布を得る。この時、担体が球状の場合には、その担体形状を真球と仮定して長径線のみを測定し、その値から求められた担持分布をその触媒を代表する担持分布とする。担体が円柱状の場合には担体の形状を真の円柱と仮定し、軸(断面が与える長方形の長径方向中心線)を長径線とし、短径線は長径線の中点を直交する直線とする。また、それ以外の担体形状の場合にはその断面を、長径線を長軸、短径線を短軸とした楕円に置き換え、その面を長軸を軸として回転させた立体をその触媒粒子の形状として計算する。
【0028】
次に、この各長径線直径担持分布について長径線の両端(触媒粒子表面)の位置を0%と、長径線の中点の位置を100%として各測定点の位置(%)を求め、更に各長径線を中心で2分割し、合計20本の長径線半径担持分布を得る。この20本の長径線半径担持分布を各位置(%)毎に平均化する事により、長径線平均半径担持分布を得る。また、短径線についても長径線と同様に合計20本の短径線半径担持分布と短径線平均担持分布を求める。
【0029】
EPMAによる具体的な定量手法としてはZAF補正法を用いるのが好ましい。ZAF補正法とは、Z:原子番号効果、A:吸収効果、F:蛍光励起効果についての補正係数、即ち下式の
【0030】
【数1】
[式中、Cunkは各元素の濃度、Cstdは標準試料の濃度、Iunkは各成分の測定強度、Isdtは標準試料の測定強度、fZAFはZAF補正法により得られた補正係数、fotherはその他の補正係数を示す。]
fZAFを求める手法の詳細は専門書に記載がある(例えば「電子線マイクロアナリシス」福島啓義著、日刊工業新聞社発行、等)。また、本発明の触媒の如く多孔体を用いる場合は、密度効果等によりfotherが無視できなくなるため、測定に用いられる標準試料は、測定される触媒と同じ担体に活性成分が既知の濃度で均質に担持された試料である事が望ましい(この場合の「均質」とは、入射電子の拡散領域と特定X線の発生領域及び脱出経路が10nm程度まで均質であること、即ち、標準試料全体がnmスケールまで均質であることを言う)。しかし、そのような標準試料を調製する事は難しいため、本発明者らは標準試料を、パラジウムについてはパラジウム金属、テルルについてはテルル金属、担体を構成する各元素については活性成分が担持されていない担体として、ZAF補正法により担持分布を測定し以下の計算により求めた。
【0031】
以下、パラジウムを例として測定方法及び計算方法を説明するが、テルルについても同じ手法を用いることができる。
即ち、仮に触媒粒子が球状であった場合には、各測定点に於けるパラジウムの濃度Irw(wt%;重量%)は次式で求められる。
【0032】
【数2】
Vfr=r3−(r−20)3 (2)
(但し、r<20の場合はr=20とする)
Wcalc=Σ(Ir×Vfr)/ΣVfr (3)
fwt=(Wanl×n)/(全ての測定粒子のWcalcの合計) (4)
Irw=Ir×fwt (5)
[式中、Vfrは各測定位置における体積補正係数、rは測定直線の中点からの測定点迄の距離(μm)、WcalcはEPMA測定結果より求めた各測定試料のパラジウム濃度(wt%)、Irは各測定試料のZAF補正法により求められた各測定位置におけるパラジウムの濃度(wt%)、Σは各測定直線毎の直径の範囲の総和を示す。fwtは担持率補正係数であり(1)式のfotherに相当する。Wanlはその触媒のパラジウムの担持率(wt%)、nは測定試料数、Irwは各測定試料の各測定点に於ける補正後のパラジウム濃度(wt%)を示す。]
触媒粒子が円柱状の場合には、上記(2)式は長径方向については下記(2−b1)式、短径方向については下記(2−b2)式により各々Vfrを求め、続いて各々上記(3)〜(4)式よりfwtを求め、その2つのfwtの平均値をその触媒のfwtとして上記(5)式を計算する。
【0033】
【数3】
Vfr=1
(2−b1)
Vfr=r2−(r−20)2
(2−b2)
(但し、r<20の場合はr=20とする)
また、それ以外の担体形状については(2−b1)式及び(2−b2)式を(2−c)式とした事以外は円柱状の場合と同様にして計算する。
【0034】
【数4】
上式の計算で長径方向の計算時には、ra1は長径方向の測定直線の中点からの測定点迄の距離(μm)とし、ra2、rb1、rb2は下式により求める。
【0035】
【数5】
ra2=ra1−20 (2−c−a1)
(但し、ra1<20の場合はra1=20とする)
rb1=(ra1/Da)×Db (2−c−a2)
rb2=(ra2/Da)×Db (2−c−a3)
また短径方向の計算時には、rb1は長径方向の測定直線の中点からの測定点迄の距離(μm)とし、rb2、ra1、ra2は下式により求める。
【0036】
【数6】
rb2=rb1−20 (2−c−b1)
(但し、rb1<20の場合はrb1=20とする)
ra1=(rb1/Db)×Da (2−c−b2)
ra2=(rb2/Db)×Da (2−c−b3)
[式中、Daは長径線の直径(μm)、Dbは短径線の直径(μm)を示す]
次に、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在する活性成分の、触媒に担持された各活性成分全量に対する比率を、以下の如く計算して求めた。
【0037】
即ち、仮に固体触媒が球状である場合には、触媒表面からの距離r1からr2までの範囲にあるパラジウムの全パラジウムに対する割合Cra(%)は次式で求められる。
【0038】
【数7】
[式中、Vfrは各測定位置における体積補正係数、Rは半径、Crは各測定試料の触媒表面からの距離r1からr2までの範囲にあるパラジウムの全パラジウムに対する割合(%)、Irwは各測定試料の各測定位置における補正後のパラジウムの濃度(wt%)、Σは各測定試料の触媒表面から中心までの総和、nは測定試料数を示す]
従って、触媒表面から中心に対する半径の30%の深さ迄に担持されたパラジウムの全パラジウムに対する比率Cr30(%)は、
【0039】
【数8】
Cr30=(深さ0%から30%迄の各測定位置におけるCraの総和) (9)
となる。球状以外では、長径線平均半径分布と短径線平均半径分布の各々につきCr30を求め、その平均値をその触媒のCr30とする。その際、担体の形状が円柱状の場合では、(6)式を長径線平均半径担持分布の計算時には(6−b1)式に、短径線平均半径担持分布の計算時には(6−b2)式に置き換えて計算する。
【0040】
【数9】
Vfr=1
(6−b1)
Vfr=(R−r1)2−(R−r2)2 (6−b2)
また、それ以外の担体形状の場合では、長径線平均半径担持分布の計算時には(6)式を(6−c1)に置き換えて計算し、
【0041】
【数10】
[式中、R’は短径線の半径を表し、r1’=(r1/R)×R’であり、r2’=(r2/R)×R’である。]
短径線平均担持分布の計算時には(6)式を(6−c2)式に置き換えて計算する。
【0042】
【数11】
[式中、R’は長径線の半径を表し、r1’=(r1/R)×R’であり、r2’=(r2/R)×R’である。]
以上の手順で(9)式により求めたCr30を、パラジウムのA比率(wt%)と称する。テルルについても同様の計算に従ってテルルのA比率(wt%)を求めることができる。
【0043】
なお、触媒表面から中心に対する半径の10%の深さ迄に担持されたパラジウムの全パラジウムに対する比率や、テルルの全テルルに対する比率も、同様に求めることができる。
次に、触媒表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の範囲に担持された活性成分において、各測定試料の各測定位置におけるテルル/パラジウム原子比Xrは次式で求められる。
【0044】
【数12】
[式中、Irw(Te)は各測定試料の各測定位置における補正後のテルルの濃度(wt%)、Irw(Pd)は各測定試料の各測定位置における補正後のパラジウムの濃度(wt%)を示す。]
従って、触媒表面から中心に対する半径の30%の深さ迄に担持されたパラジウムの内、テルル/パラジウム原子比Xrが0.15〜0.35であるパラジウムの比率Ctp(%)は、
【0045】
【数13】
Ctp=((半径の0%から30%の深さ迄にあるパラジウムでXrが0.15〜0.35であるCrの全測定半径の総和)/((長径方向のCr30×n)+(短径方向のCr30×n)))×100 (11)
で求められる。但し、触媒粒子が球状の場合には上記(11)式を下記(11)’式として求める。
【0046】
【数14】
Ctp=((半径の0%から30%の深さ迄にあるパラジウムでXrが0.15から0.35の範囲にあるCrの全測定半径の総和)/(Cr30×n))×100 (11)’
以上の手順で(11)式又は(11)’式により求めたCtpを、B比率(wt%)と称する。
【0047】
次に、本発明の固体触媒の構成及び製造方法について説明する。
本発明における触媒の担体としては、本質的に反応条件下に変化しない無機多孔体が使用される。例えば、活性炭やシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の酸化物担体及びそれらの混合酸化物等が用いられ、特にシリカが好ましい。その形状については特に限定されるものではないが、液相反応用触媒としては、工業的にはその担体粒子径が1mm以上であるのが好ましい。但し、担体粒子径が8mm以下であるのが好ましい。担体粒子径が大きすぎると触媒粒子の外表面積が相対的に小さくなってしまう。逆に小さすぎると触媒充填層の圧力損失が大きくなる。また、その担体物性としては多孔質である必要があり、平均細孔直径は10〜50nmの範囲が好ましい。
【0048】
本発明において無機多孔体に活性成分を担持させる方法としては、本発明に係る特定の担持分布を達成するものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば以下が用いうる。
活性成分を含有する水溶液を尿素の存在下で多孔性担体に含浸する方法(特開昭51−40392号公報)、ポリエチレングリコールを添加した活性成分を含有する溶液を無機担体に含浸する方法(特公昭55−33381号公報)、活性成分塩を溶解するケトン類、エステル類、アルコール類から選ばれた少なくとも一種類の溶媒に炭化水素類を添加してアセトンより極性の低い性状の混合溶液を無機多孔質担体に含浸する方法(特公昭57−5578号公報)、加熱した担体に活性成分溶液を噴霧し担体表層部に析出させる方法(特開平3−293036号公報)等の触媒表面に活性成分を担持させる方法や、最初に少量の活性成分を担体に担持した後に必要量の活性成分を担持する方法(特公昭54−8638号公報)等の如く担体表面付近に担持する方法、競争吸着法(例えば特公昭52−23920号公報、特公昭52−30475号公報等)、水溶性金属化合物と反応して非水溶性金属化合物を形成せしめることができる化合物溶液と接触させ、触媒担体上に非水溶性金属化合物として沈殿させた後に、還元及び水洗し、引き続きアルカリ金属酢酸塩と接触させる方法(特公昭59−46668号公報)、塩基性金属塩成分を含む担体を乾燥したものを70℃以上の温度に保持された金属化合物溶液に瞬時に投入する方法(WO98/26867号公報)等のように活性成分を担持する位置を制御する方法、更には活性成分が担体に強く吸着される条件で担体表層部に吸着させた後に乾燥し担持させる方法や、活性成分が担体に吸着されない条件で活性成分溶液を担体に含浸し、短時間で乾燥する事により担体表層部に活性成分を多く析出させる方法、或いは担体を表面処理等により疎水性を高め、活性成分を含有する水溶液を担体表層部にのみ含浸した後に乾燥し担持する方法等である。
【0049】
このように活性成分を担持した触媒は、還元処理をした後に使用されるが、必要な場合は、例えば活性成分を担持させた後でも乾燥が不十分な場合や、予めある程度塩を分解させたい場合等には、還元前に乾燥や焼成処理を行っても良く、必要とあればそれらを繰り返し行っても良い。乾燥、焼成、還元の方法は、本発明による触媒の特定の担持分布を達成する事を妨げない限り特に限定されるものではなく、例えば、乾燥方法としてはロータリエバポレータやコニカルブレンダーを用いた流動床減圧乾燥、減圧乾燥機や棚段乾燥装置等の静置式乾燥、キルン乾燥装置等の流動床乾燥、窒素や空気、水素、水蒸気等気流中での乾燥等のいずれでも良く、焼成方法としては窒素や空気及びその混合物気流中、固定床或いはキルンの如く流動床に窒素や空気及びその混合物等のガス気流中で加熱する方法や、ガスを流通せずに加熱する方法のいずれでも良く、還元方法としては水素ガスやメタノールガス等による気相還元、ヒドラジンやホルマリンで代表されるような液相還元のいずれでも良い。
【0050】
触媒調製のために用いられるパラジウム化合物としては、酸化パラジウムや、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、硫酸パラジウム等の無機酸塩、酢酸パラジウム等の有機酸塩、テトラアンミンパラジウムクロリド等の錯塩、さらにはパラジウムアセチルアセトナートに代表されるような有機金属化合物等が挙げられるが、必要ならば金属パラジウムも使用できる。担体に担持されるパラジウム濃度は、一般的には0.1重量%以上であり、好ましくは0.5重量%以上である。但し、一般的には20重量%以下であり、好ましくは10重量%以下である。下限未満では単位触媒重量当たりの活性が低く実用的ではない。また前記範囲の上限を越えると単位パラジウム当たりの活性が低下し、更には高価なパラジウムを多量に必要とする事から触媒費が高くなり、そのいずれも経済的に好ましくない。
【0051】
触媒調製に用いられるテルル化合物としては、塩化テルル(II),塩化テルル(IV)のようなハロゲン化合物、酸化テルル(IV),酸化テルル(VI)のような酸化物、テルル酸(H6TeO6)及びその塩類、亜テルル酸(H2TeO3)及びその塩類、金属テルル、ソジウムハイドロジェンテルライド(NaHTe)、ジフェニルジテルライド([PhTe]2)に代表される有機テルル等が用いられる。担体に担持されるテルル量については、パラジウム量との関係で、本発明を満たす範囲であれば良い。但し通常、テルルの担持量はパラジウム1モルに対して0.05〜0.5モル程度である。
【0052】
本発明に係る触媒は広く触媒反応の触媒として使用することができるが、液相反応での使用が好ましい。特に、反応基質と分子状酸素を触媒と接触させる酸化反応に用いて有効である。中でも、オレフィン又は芳香族化合物に酸素求核剤および分子状酸素を酸化的付加させる酸化的付加反応方法と、これを用いた酸化的付加生成物の製造方法に適用すると効果が高い。
【0053】
例えば、オレフィンの酸化によるアルデヒド合成、オキシクロリネーションや酸化的アシロキシ化、酸化的シアノ化、酸化的アルコキシ化等のオキシアニオニゼーション、オレフィン及び/または芳香族のカップリング反応、酸化的カルボキシル化等の反応で使用できる。
より具体的には、アルデヒド合成としてはエチレンからのアセトアルデヒド合成等があげられる。オキシクロリネーションとしては、エチレンからの塩化ビニル合成、プロピレンからの塩化アリル合成、ブタジエンからのジククロロブテン合成、イソプレンからのジクロロメチルブテン合成、ベンゼンからのクロロベンゼン合成、トルエンやキシレンの側鎖クロロ化等があげられる。アシロキシ化としては、エチレンから酢酸ビニルで代表されるようなアシロキシビニル合成、ブタジエンからのジアシロキシブテン合成、イソプレンからのジアシロキシメチルブテン合成、ベンゼンからのアシロキシベンゼン合成、トルエンやキシレンの側鎖アシロキシ化等があげられる。シアノ化としては、エチレンからのアクリロニトリル合成、ブタジエンからのジシアノブテン合成、イソプレンからのジシアノメチルブテン合成、ベンゼンからのシアノベンゼン合成、トルエンやキシレンの側鎖シアノ化等があげられる。アルコキシ化としては、エチレンからのメチルエチルエーテル合成、ブタジエンからのジアルコキシブテン合成、イソプレンからのジアルコキシメチルブテン合成、ベンゼンからのアルコキシベンゼン合成、トルエンやキシレンの側鎖アルコキシ化等があげられる。カップリング反応としてはベンゼンからのビフェニル合成、トルエンからのメチルベンゼン二量体合成、酢酸ビニルからのジアセトキシブタジエン合成、スチレンとベンゼンからのスチルベン合成、スチレンまたはスチレンとベンゼンからのトリフェニルベンゼン及びテトラフェニルベンゼン合成等があげられる。酸化的カルボキシル化としてはエチレンと一酸化炭素からのアクリル酸合成、一酸化炭素とアルコールからのシュウ酸ジエステル合成、エチレンと一酸化炭素及びアルコールからのコハク酸ジエステル合成、ブタジエンと一酸化炭素及びアルコールからのアジピン酸エステル類の合成等があげられる。
【0054】
最も好ましくは、液相酸化的アシロキシ化及び/又はアルコキシ化反応用の触媒として用いると、活性が極めて高く好ましい。中でも、オレフィン又は芳香族化合物に酸素求核剤および分子状酸素を酸化的付加させる酸化的付加反応方法と、これを用いた酸化的付加生成物の製造方法に適用すると効果が高い。この場合、酸素求核剤は、例えばオレフィン又は芳香族化合物の不飽和結合部位に対して酸化的付加反応を行う。
【0055】
或いは、側鎖アルキル基を有する芳香族化合物に酸素求核剤および分子状酸素を酸化的付加させる酸化的付加反応方法と、これを用いた酸化的付加生成物の製造方法に適用すると効果が高い。この場合、酸素求核剤は、例えば通常側鎖アルキル基の芳香環に隣接した炭素に酸化的付加反応を行う。
本発明の反応で使用される原料のオレフィンとしては、反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はないが、直鎖又は分岐状のオレフィン、もしくは単環、多環又は縮合環式のシクロオレフィンが好ましく、中でも直鎖又は分岐状のオレフィンまたは単環のシクロオレフィンが好ましい。これらのオレフィン又はシクロオレフィンは、本発明の酸化反応に悪影響を与えない置換基で置換されていてもよい。
【0056】
置換基としては例えば、アリル基、アリール基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アシロキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの置換基が挙げられるが、これに限定されるものではない。
直鎖又は分枝状のオレフィンの炭素数は通常2〜30、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜10であり、単環、多環又は縮合環式のシクロオレフィンの炭素数は通常4〜30、好ましくは5〜12、より好ましくは6〜10である。
【0057】
オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、2,3−ジメチルブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ブタジエン、シクロヘキサジエンなどが挙げられる。
中でも好ましくは共役ジエンが挙げられる。共役ジエンとしては、具体的にはブタジエン、ピペリレン(1,3−ペンタジエン)、1,4−ヘキサジエンの他、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチルブタジエン等のアルキル置換ブタジエン(分岐状オレフィンの一種である。)、更にはシクロペンタジエン、シクロヘキサジエンのような環状ジエンを使用する事ができる。好ましくはブタジエン、ピペリレン、アルキル置換ブタジエンのいずれかであり、最も好ましくはブタジエン又はアルキル置換ブタジエンのいずれかである。
またシクロオレフィンも好ましく、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテンなどが挙げられる。特に好ましくはシクロヘキセンである。
【0058】
本発明に用いる芳香族化合物としては、反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はないが、単環又は縮合環の芳香族化合物が用いられ、縮合環の環の数は通常2〜10、好ましくは2〜6、より好ましくは2または3である。これらの中でも好ましくは単環または2環の縮合環の芳香族化合物、より好ましくは単環の芳香族化合物である。これらの芳香族化合物は、本発明の酸化反応に悪影響を与えない置換基で置換されていてもよい。
【0059】
置換基としては例えば、アルキル基、アリル基、アリール基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アシロキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの置換基が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0060】
以上のようなオレフィン又は芳香族化合物に対して、酸素求核剤は、例えばその不飽和結合部位に酸化的付加反応を行う。
また、本発明に用いる側鎖アルキル基を有する芳香族化合物としては、反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はないが、上記の芳香族化合物が一つのアルキル基で置換された化合物、またはこれにさらにアルキル基、アリル基、アリール基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アシロキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの置換基が直接結合した芳香族化合物等が例示される。
【0061】
具体的な例は次の通りである。トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、ジエチルベンゼン、o−クロロトルエン、m−クロロトルエン、p−クロロトルエン、ジクロロトルエン、o−ニトロトルエン、m−ニトロトルエン、p−ニトロトルエン、o−メトキシトルエン、m−メトキシトルエン、p−メトキシトルエン、o−フェノキシトルエン、m−フェノキシトルエン、p−フェノキシトルエン、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−メチルベンジルアルコール、m−メチルベンジルアルコール、p−メチルベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0062】
以上のような側鎖アルキル基を有する芳香族化合物に対して、酸素求核剤は、例えば側鎖アルキル基の芳香環に隣接した炭素に酸化的付加反応を行う。
これら反応を用いた具体的な製造方法としては、例えば、共役ジエンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応する不飽和グリコールジエステルを製造する方法、共役ジエンとアルコール及び分子状酸素を反応させて対応する不飽和グリコールジエーテルを製造する方法、シクロヘキセンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応するアシロキシシクロヘキセンを製造する方法、アルキルベンゼンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応するアシロキシアルキルベンゼンを製造する方法、などが挙げられる。
【0063】
これらの製造方法において、好ましくは共役ジエンがブタジエン、ピペリレン、アルキル置換ブタジエンから選ばれるものとする。また、好ましくはカルボン酸が酢酸である。
上記反応例の内、一例として共役ジエンのアシロキシ化による不飽和グリコールジエステル製造に関して、以下に詳細説明する。
【0064】
本発明で示された触媒を用いて不飽和グリコールジエステルを製造する際に使用する反応原料である共役ジエン、例えばブタジエンは必ずしも純粋なものである必要はなく、窒素ガスのような不活性ガスや、メタン、エタン、ブタン等の飽和炭化水素、又はブテン等の不飽和炭化水素を含むものであっても良い。共役ジエンとしては他のジエン類、アルキル置換ブタジエン類、環状ジエン類を使用する事ができる。好ましくは共役ジエンがブタジエン、ピペリレン、アルキル置換ブタジエンから選ばれるものとする。
【0065】
他方の反応原料であるカルボン酸は、脂肪族、脂環族、芳香族など任意のものを用いることができるが、工業的には酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸等の低級脂肪族のモノカルボン酸(炭素数4以下)を用いることが好ましく、特に反応性及び価格の点から酢酸がより好ましい。前記カルボン酸は反応原料でありながら溶媒を兼ねても良く、また必要であれば反応に不活性な有機溶媒、例えば飽和炭化水素、エステル等が存在していても良い。しかし、反応溶媒の50重量%以上は原料のカルボン酸である事が好ましい。カルボン酸の使用量は共役ジエン1モルに対する化学量論量以上、60モル以下の範囲が好ましい。
【0066】
本発明の方法では、上述の原料を分子状酸素を含有する気体を用いて、好ましくは液相下で固体触媒と接触させる。ここで分子状酸素を含有する気体とは、純酸素あるいは酸素と不活性気体の混合気体を指す。この不活性気体とは、窒素、アルゴン、ヘリウム等であり、混合気体としては空気も含まれる。分子状酸素は不活性気体と任意の混合比率にて、大気圧〜加圧状態として反応系に供給することができるが、酸素濃度は反応系内で気体が爆発組成とならない範囲が好ましい。また、加圧状態として反応系に供給する際には、反応系内の酸素分圧が好ましくは1kg/cm2以上、より好ましくは2kg/cm2以上に保持されるように供給気体の圧力及び酸素濃度を調整するとよい。但し好ましくは20kg/cm2以下とし、より好ましくは8kg/cm2以下に保持されるようにする。
【0067】
本発明において、共役ジエンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応する不飽和グリコールのカルボン酸ジエステルを製造する反応は、回分式、連続式のいずれの方法でも行う事ができる。また反応方式としては固定床式、流動床式、懸濁槽式等任意の方式を採用する事ができるが、工業的には固定床式がより好ましい。反応温度は通常20℃以上の温度で行われるが、反応速度及び副生物の生成等を考慮すると、好適な反応温度の範囲は40〜120℃である。また反応圧力は常圧、加圧のいずれも可能である。反応速度を高めるには加圧の方が好ましいが反応設備経費が高くなり、それらを考慮すると好適なのは常圧(1気圧)〜100kgf/cm2の範囲である。
【0068】
なお、上記反応例において、共役ジエンに代えてシクロヘキセンを用いることで、アシロキシシクロヘキセンを製造することができる。このとき、用いられるシクロヘキセンの純度には特に制限は無く、例えば若干のシクロヘキサン、ベンゼンを含んでいても、また微量の水を含んでいても特にさしつかえない。また、共役ジエンに代えてアルキルベンゼンを用いることで、アシロキシアルキルベンゼンを製造することができる。このとき、用いられるアルキルベンゼンの純度には特に制限は無く、例えば若干のベンゼン等を含んでいても、また微量の水を含んでいても特にさしつかえない。
【0069】
更に、上記反応例において、カルボン酸に代えてアルコールを用いることで、不飽和グリコールジエーテルを製造することができる。本発明に用いうるアルコールは、特に限定されないが、工業的には例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数4以下の低級アルコールが用いられる。
【0070】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り下記実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
1リットル当り440gの密度および担体1g当り1.0mlの細孔容積を有し、かつ、水懸濁液中で6.0〜8.0のpHを有する、平均直径3mmの球体の形状にあるシリカ担体1.2Lを、17.70gのパラジウムと6.14gのテルルを含有する530mlのNa2PdCl4およびH6TeO6の水溶液(担体の吸水量の99%)に加え混合物とした。この混合物を入れた容器を、溶液がシリカ担体によって完全に吸収し含浸されるまで、機械的に回転させた。次いで60.8gのメタ珪酸ナトリウム(Na2SiO3・9H2O)を含有する550mlの水溶液を加えて、湿潤した含浸担体が完全に浸るまで機械的に回転させたのち、これを室温において1晩放置した。次いで触媒を洗浄槽に移し、蒸留水で3回洗浄したのち、1時間当り1〜2リットルの蒸留水で17時間連続的に洗浄した。その後に硝酸銀溶液を用いて試験しても沈殿が生じず、洗浄水は塩素イオンを含有していないことが認められた。洗浄終了が確認できたのち、160L/Hの流量で空気を流通させながら、110℃の温度で3時間乾燥した。この触媒を53gを内径4cm(有効断面積12.6cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、2.06Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて150℃に昇温し、次いで2.06Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒を得た。この触媒はパラジウム2.9重量%及びテルル0.9重量%を含有していた。
【0071】
このようにして得られた触媒のパラジウム担持量(wt%)、テルル/パラジウム重量比、パラジウムのA比率(%)、テルルのA比率(%)、B比率(%)を表−1に示した。
また、パラジウム及びテルルの平均担持分布を図2(A)、(B)に示した。横軸は担体表面からの半径位置(%)であり、縦軸はパラジウム量及びテルル量(重量%)である。
【0072】
担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に、触媒に担持された全パラジウムの100.0重量%が、また、触媒に担持された全テルルの100.0重量%が存在し、担体表面から中心に対する半径の10%の深さ迄の表層部に、触媒に担持された全パラジウムの99.2重量%が、また、触媒に担持された全テルルの96.9重量%が存在していた。
【0073】
触媒上のパラジウム及びテルルの担持分布は以下の如く求めた。上記触媒の内、無作為に10個の触媒粒子を選び、その各々の触媒粒子についての最大断面積を与える各断面に於いて、その断面を切る線の長さが最大になる直線上をEPMA(日本電子製JXA−8600M)により20μmの間隔で測定を実施し、その各測定点毎にZAF補正及び担持率補正を行い、パラジウム及びテルル毎に合計20本の半径担持分布と平均半径担持分布を求めた。この平均半径担持分布よりA比率を求め、更に、20本の半径担持分布からB比率を求めた。
【0074】
次に、この触媒4gを内径12mm(有効断面積1.005cm2)のステンレス製反応管に充填し、反応圧力60kgf/cm2、反応温度80℃に於いて、1,3−ブタジエン0.15モル/時、酢酸2.5モル/時、酸素6容量%を含有する窒素を100Nl/時の流量で流し、連続的に7時間、反応を実施した。この反応に於いて、反応開始後4〜5時間の間の反応液留分及び6〜7時間の間の反応液留分を各々ガスクロマトグラフィーにより生成物を定量し、その平均値をもって反応結果とした。反応結果より活性を求め、その結果を表−1に示した。
【0075】
なお、実施例1及び比較例1〜12の評価項目において、活性は、反応生成物の内、3,4−ジアセトキシブテン−1、3−ヒドロキシ−4−アセトキシブテン−1、1−アセトキシクロトンアルデヒド、1,4−ジアセトキシブテン−2(14DABE)、1−ヒドロキシ−4−アセトキシブテン−2、1,4−ジヒドロキシブテン−2、ジアセトキシオクタトリエン、トリアセトキシブテンの合計の生成量から求めた。これらの生成量が、触媒1kg、1時間当たり何mmolであったかを活性X(mmol/kg−cat.h)、同生成量がパラジウム1mmol当たり何mmolであったかを活性Y(mmol/mmol−Pd.h)で表す。
【0076】
【表1】
(比較例1)
50mlのメスフラスコにテルル金属(NEケムキャット製)0.843gを入れ、続いて35重量%硝酸水溶液20gを加え溶解した。これに10.0重量%硝酸パラジウム水溶液(NEケムキャット製)27.05gを加え、更に35重量%硝酸水溶液を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(富士シリシア化学製CARiACT−Q−15:商品名、1.7〜3.36mm、以下CARiACT−15と記す)25.05gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により56.05gを得た。この触媒の内28.0gを横型キルン(内径3cm、有効断面積7.1cm2)の中に入れ、毎分30回転の速度で回転させながら4.2Nl/分の水素ガスを流し、室温から150℃まで1時間で昇温し、更に150℃で2時間保持して乾燥及び還元を同時に行った後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒13.39gを得た。この触媒はパラジウム5.0重量%及びテルル1.56重量%を含有していた。
【0077】
次に、この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
(比較例2)
乾燥及び還元の際の水素ガス流量を0.26Nl/分とした以外は比較例1と同様にして触媒を調製した。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0078】
(比較例3)
50mlのメスフラスコに二酸化テルル(三津和化学製)1.244gを入れ、続いて35重量%硝酸水溶液28gを入れて溶解し、これに10.0重量%硝酸パラジウム水溶液20.89gを加え、更に35重量%硝酸水溶液を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(シェル化学社製S980G:商品名、粒子直径2.4〜3.4mm)20.81gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により49.10gを得た。この触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、6.7Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて2時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥した。次いで0.42Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒22.23gを得た。この触媒はパラジウム4.4重量%及びテルル1.98重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0079】
(比較例4)
テルル金属27.2gを36重量%硝酸水溶液735.6gに溶解し、これに10.0重量%硝酸パラジウム水溶液758.8gを加え、更に36重量%硝酸水溶液を加える事により液量を1400mlとした。この溶液に球状シリカ担体(CARiACT−Q−15)950gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により2145.5gを得た。この触媒を内径8cm(有効断面積50.2cm2)のSUS反応管中に入れ、317Nl/分の乾燥空気を流しながら90℃に於いて2時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥したのち取り出し、1024.1gの触媒を得た。さらに内径5.2cm(有効断面積21.2cm2)のSUS反応管に乾燥した触媒268.4gを充填し5.2Nl/分で窒素ガスを流しながら150℃まで昇温した。次いで5.2Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に4時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒260.5gを得た。この触媒はパラジウム4.9重量%及びテルル1.76重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0080】
(比較例5)
50mlのメスフラスコに二酸化テルル1.244gを入れ、続いて35重量%硝酸水溶液28gを入れて溶解し、これに10.0重量%硝酸パラジウム水溶液22.09gを加え、更に35重量%硝酸水溶液を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(富士シリシア化学[旧社名:富士デヴィソン化学]製CARiACT−15、粒子直径2.4〜4.0mm)20.56gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により45.39gを得た。この触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、6.7Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて2時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥した。次いで0.42Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒21.89gを得た。この触媒はパラジウム4.9重量%及びテルル1.18重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0081】
(比較例6)
50mlのメスフラスコに金属テルル0.955gを入れ、続いて35重量%硝酸水溶液20gを入れて溶解し、これに10.0重量%硝酸パラジウム水溶液26.51gを加え、更に35重量%硝酸水溶液を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(CARiACT−Q−15)20.78gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により45.97gを得た。この触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、1.7Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて3時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥した。次いで0.42Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒22.26gを得た。この触媒はパラジウム4.9重量%及びテルル1.76重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0082】
(比較例7)
球状シリカ担体(シェル化学社製S980G:商品名、粒子直径2.4〜3.4mm)56gに、10重量%硝酸パラジウム水溶液57g及び二酸化テルル2.6gを硝酸に溶解して得られた水溶液140gを添加し、30℃に2時間保持した後、5時間放冷した。これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液することにより触媒136gを得た。この触媒を内径4.6cm(有効断面積16.6cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ2.3Nl/分の窒素ガスを流しながら、65℃に於いて6時間、次いで100℃に昇温して2時間乾燥した。次に150℃に昇温した後、水素ガスを330Nl/時の流量で流通させながら毎時50℃の割合で昇温し、300℃に4時間保持した後、窒素気流中で冷却し、活性化処理した触媒60gを得た。この触媒はパラジウム4.86重量%及びテルル1.76重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0083】
(比較例8)
触媒担体として富士シリシア化学(旧社名:富士デヴィソン化学)製CARiACT−15(商品名、粒子直径2.4〜4.0mm)を使用した事及び使用される二酸化テルルの量を1.3gとした事以外は比較例7と同様に触媒を調製し、実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0084】
(比較例9)
触媒担体としてピート成形炭(オランダノリット社製、商品名Sorbnorit−2X、直径2mm、長さ6mmの円柱状)を用い、この40gに水60g及び60重量%硝酸水溶液60gを加え、90〜94℃に3時間保持した。これを冷却した後濾過して溶液を除去し、硝酸処理した活性炭を得た。次に、この活性炭に10.0重量%硝酸パラジウム水溶液20g及び金属テルル0.55gを35重量%硝酸に溶解して得られた水溶液120gを添加し、30℃に3時間保持した後、5時間放冷した。これを濾過した溶液を除去した後、240トルの減圧下に最高140℃で8時間乾燥し、パラジウム4.2重量%及びテルル0.78重量%を含有する担持触媒を得た。
【0085】
この担持触媒の内、30mlを内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)製ガラス管に充填し、これに8容量%のメタノールを含有する窒素を39Nl/時の流量で流通させながら毎時50℃の割合で350℃まで昇温し、この温度に4時間保持した後、窒素気流中で室温まで放冷した。次に酸素2容量%を含有する窒素を39Nl/時で流通させながら300℃まで昇温してこの温度に10時間保持した後、窒素気流中で室温まで放冷した。次にメタノール8容量%を含有する窒素を39Nl/時の流量で流通させながら、毎時50℃の割合で350℃まで昇温し、この温度に15時間保持した後、窒素気流中で室温まで放冷した。次に酸素2容量%を含有する窒素を39Nl/時の流量で流通させながら300℃まで昇温してこの温度に4時間保持した後、窒素気流中で室温まで放冷した。次に水素を39Nl/時の流量で流通させながら、毎時50℃の割合で350℃まで昇温し、この温度に4時間保持した後、窒素気流中で室温まで放冷した。次に酸素2容量%を含有する窒素を39Nl/時の流量で流通させながら300℃まで昇温してこの温度に15時間保持した後、窒素気流中で室温まで放冷した。次に水素を39Nl/時の流量で流通させながら、毎時50℃の割合で350℃まで昇温し、この温度に4時間保持した後、窒素気流中で室温まで放冷した。以上のような酸化及び還元を繰り返す活性化処理を行って調製した担持触媒は、パラジウム4.7重量%及びテルル0.87重量%を含有していた。
【0086】
この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応を行い、その結果を表−1に示した。また、担持分布については、その担体の形状が円柱状である事から以下の如く求めた。上記触媒の内、無作為に10個の触媒粒子を選び、その各粒子についての最大断面を与える各断面に於いて、軸(断面が与える長方形の長径方向中心線)を長径線とし、その長径線の中点を直交する直線を短径線として、それらの線上をEPMA(日本電子製JXA−8600M)により20μmの間隔で測定を実施し、その各測定点毎にZAF補正及び担持率補正を行い合計20本の長径線半径担持分布と長径線平均半径担持分布、20本の短径線半径担持分布及び短径線平均半径担持分布を求めた。この長径線平均半径担持分布及び短径線平均半径担持分布よりA比率を求め、更に、合計40本の半径担持分布(長径及び短径)からB比率を求めた。その結果を表−1に示した。
【0087】
(比較例10)
50mlのメスフラスコに金属テルル1.062gを入れ、続いて35重量%硝酸水溶液20gを入れて溶解し、これに10.0重量%硝酸パラジウム水溶液28.55gを加え、更に35重量%硝酸水溶液を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(CARiACT−Q−15)20.28gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により44.40gを得た。この触媒を200mlのナスフラスコに入れ毎分30回転の速度で回転させながら6.7Nl/分の窒素ガスを吹き込み、80℃で4時間、更に150℃で3時間保持して乾燥した。次にこの触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、窒素ガスを流しながら30分で150℃迄昇温した後0.42Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒21.79gを得た。この触媒はパラジウム5.1重量%及びテルル1.82重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0088】
(比較例11)
50mlのメスフラスコにテルル金属1.008gを入れ、続いて35重量%硝酸水溶液20gを加え溶解した。これに10.0重量%硝酸パラジウム水溶液27.10gを加え、更に35重量%硝酸水溶液を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(CARiACT−Q−15)25.11gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により54.28gを得た。この触媒の内28.2gを横型キルン(内径3cm、有効断面積7.1cm2)の中に入れ、毎分30回転の速度で回転させながら4.3Nl/分の窒素ガスを流し、60℃で5時間、更に150℃で2時間保持して乾燥した。次にこの触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、窒素ガスを流しながら30分で150℃迄昇温した後0.27Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒13.98gを得た。この触媒はパラジウム5.0重量%及びテルル1.86重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0089】
(比較例12)
50mlのメスフラスコに金属テルル0.988gを入れ、続いて35重量%硝酸水溶液20gを入れて溶解し、これに10.0重量%硝酸パラジウム水溶液26.52gを加え、更に35重量%硝酸水溶液を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(CARiACT−Q−15)20.47gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により45.27gを得た。この触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、0.017Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて40時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥した。次いで0.42Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒21.91gを得た。この触媒はパラジウム4.9重量%及びテルル1.81重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0090】
実施例1及び比較例1〜12におけるパラジウムのA比率と活性との関係を表すグラフを図1に示した。この図より、本発明の触媒は極めて特異的に高活性であることが判る。
(実施例2)
実施例1と同一の触媒4gを内径12mm(有効断面積1.005cm2)のステンレス製反応管に充填し、反応圧力60kgf/cm2、反応温度80℃に於いてイソプレン81ミリモル/時、酢酸2.2モル/時、酸素6容量%を含有する窒素を100Nl/時の流量で流し、連続的に7時間、反応を実施した(イソプレンのジアセトキシ化反応)。この反応に於いて、反応開始後4〜5時間の間の反応液留分及び6〜7時間の間の反応液留分を各々ガスクロマトグラフィーにより1,4−ジアセトキシ−2−メチルブテン−2を定量し、その平均値をもって反応結果とした。反応結果より活性Yを求めた。その結果を、触媒の担持分布と併せて表−2に示した。
【0091】
(比較例13)
比較例4と同一の触媒を用いたこと以外は、実施例2と同様にイソプレンのジアセトキシ化反応を行った。その結果を表−2に示した。
【0092】
【表2】
(実施例3)
実施例1と同一の触媒8g及び酢酸140gを仕込んだ300mlのフラスコを窒素で置換した後に80℃のオイルバスに浸し、触媒が動く程度に撹拌する。その状態で酸素10容量%を含有する窒素を50Nml/分の流量で流しながら、ピペリレン16.6gを4時間かけてゆっくりと滴下し、それに引き続いて更に2時間加熱して合計6時間の反応を実施した(ピペリレンのジアセトキシ化反応)。その後窒素気流に切換えてから放冷、ろ過により触媒を分離して反応液127gを得た。この反応液をガスクロマトグラフィーによりジアセトキシペンテンを定量し、活性Yを求めた。その結果を表−3に示した。
【0093】
(比較例14)
比較例4と同一の触媒を用いたこと以外は、実施例3と同様にピペリレンのジアセトキシ化反応を行った。その結果を表−3に示した。
【0094】
【表3】
(実施例4)
実施例1と同一の触媒4gを内径12mm(有効断面積1.005cm2)のステンレス製反応管に充填し、反応圧力60kgf/cm2、反応温度80℃に於いてシクロヘキセン0.16モル/時、酢酸2.3モル/時、酸素6容量%を含有する窒素を100Nl/時の流量で流し、連続的に7時間反応を実施した(シクロヘキセンのアセトキシ化反応)。この反応に於いて、反応開始後4〜5時間の間の反応液留分及び6〜7時間の間の反応液留分を各々ガスクロマトグラフィーによりアセトキシシクロヘキセンを定量し、その平均値をもって反応結果とした。反応結果より活性Yを求め、その結果を表−4に示した。
【0095】
(比較例15)
比較例4と同一の触媒を用いたこと以外は、実施例4と同様にシクロヘキセンのアセトキシ化反応を行った。その結果を表−4に示した。
【0096】
【表4】
(実施例5)
実施例1と同一の触媒4gを内径12mm(有効断面積1.005cm2)のステンレス製反応管に充填し、反応圧力60kgf/cm2、反応温度80℃に於いてトルエン0.23モル/時、酢酸2.2モル/時、酸素6容量%を含有する窒素を100Nl/時の流量で流し、連続的に7時間反応を実施した(トルエンのアセトキシ化反応)。この反応に於いて、反応開始後4〜5時間の間の反応液留分及び6〜7時間の間の反応液留分を各々ガスクロマトグラフィーによりベンジルアセテート生成物を定量し、その平均値をもって反応結果とした。反応結果より活性Yを求め、その結果を表−5に示した。
【0097】
(比較例16)
比較例4と同一の触媒を用いたこと以外は、実施例5と同様にトルエンのアセトキシ化反応を行った。その結果を表−5に示した。
【0098】
【表5】
(実施例6)
実施例1と同一の触媒4gを内径12mm(有効断面積1.005cm2)のステンレス製反応管に充填し、反応圧力60kgf/cm2、反応温度80℃に於いてブタジエン0.15モル/時、メタノール3.1モル/時、酸素6容量%を含有する窒素を100Nl/時の流量で流し、連続的に7時間反応を実施した(ブタジエンのジメトキシ化反応)。この反応に於いて、反応開始後4〜5時間の間の反応液留分及び6〜7時間の間の反応液留分を各々ガスクロマトグラフィーにより1,4−ジメトキシブテン−2を定量し、その平均値をもって反応結果とした。反応結果より活性Yを求め、その結果を表−6に示した。
【0099】
(比較例17)
比較例4と同一の触媒を用いたこと以外は、実施例6と同様にブタジエンのジメトキシ化反応を行った。その結果を表−6に示した。
【0100】
【表6】
【0101】
【発明の効果】
本発明によれば、パラジウムとテルルを有効成分として無機多孔体に担持した固体触媒であって、工業的に十分満足できる高活性を発現する触媒を得ることができる。また、本発明の触媒及び分子状酸素の存在下、オレフィン又は芳香族化合物に酸素求核剤を酸化的付加させて対応する生成物を製造する方法において、これら生成物を、工業的に十分満足できる高収率で得ることができ、その工業的価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例及び比較例に係る、パラジウムのA比率(%)と、単位パラジウム当たりの触媒活性(mmol/mmol−Pd・h)との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例1における(A)パラジウムの平均担持分布、及び(B)テルルの平均担持分布を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明はパラジウムとテルルを有効成分として無機多孔体に担持した固体触媒、およびこの触媒と分子状酸素との存在下、オレフィン又は芳香族化合物に、酸素求核剤を酸化的付加させて対応する生成物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
不飽和グリコールジエステル、例えばブテンジオールジエステルはエンジニアリングプラスチックス、エラストマー、弾性繊維、合成皮革等の原料である1,4−ブタンジオールや、高性能溶剤、弾性繊維の原料であるテトラヒドロフランを製造するための重要な中間化合物である。
【0003】
このブテンジオールジエステルを製造する方法の一つとして、パラジウムとテルルを活性炭に担持させた固体触媒を使用し、ブタジエンをカルボン酸及び分子状酸素と反応させてブテンジオールジエステルを製造する方法がある。
またパラジウムとテルルを含む触媒は、この他にも共役ジエンのジアルコキシ化反応(特許文献1)、シクロオレフィンのアセトキシ化反応(特許文献2)等の様々な反応に使用できる。
【0004】
しかしながら本触媒の活性は、工業的に目的物を製造する上では、まだ十分に高いとは言えない。また、パラジウムは高価な貴金属であるため、単位パラジウム当たりの活性をできるだけ高め、他の触媒に比して特に高活性な触媒を得ることが望まれている。
そこで、触媒活性を向上させる手法として、パラジウム及びテルルを触媒の外表面近傍に多く担持させる方法が提案されている(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−9473号公報
【特許文献2】特開平11−315049号公報
【特許文献3】特開平10−175917号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献3によれば、パラジウム−テルル触媒の活性はかなり高めることができるが、工業的に目的物を製造する上では未だ十分とは言えなかった。
上記事情に鑑み、本発明の目的は、パラジウムとテルルを有効成分として無機多孔体に担持した固体触媒であって、工業的に十分満足できる高活性を発現する触媒を得ることにある。また、オレフィンや芳香族化合物に、酸素求核剤を酸化的付加させて対応する生成物を製造する方法において、これら生成物を、工業的に十分満足できる高収率で得ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、活性成分であるパラジウムとテルルの担持分布を、従来より更に外表面近傍に集中させることにより、飛躍的に触媒性能が向上することを見出し、本発明を完成するに到った。
即ち、本発明は、パラジウムとテルルを活性成分として無機多孔体に担持した固体触媒であって、EPMA(X線マイクロアナライザー)で測定された活性成分の担持分布において、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に、触媒に担持された全パラジウム及び触媒に担持された全テルルのそれぞれ99重量%以上が存在することを特徴とする固体触媒に存する。
【0008】
好ましくは、該担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在するパラジウムの内、テルル/パラジウム原子比が0.15〜0.35であるパラジウムが80重量%以上を占める。
以下、本願発明においては、EPMA(X線マイクロアナライザー)で測定された活性成分の担持分布において、触媒に担持された全パラジウムの内、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在するパラジウムの量(重量%)を「パラジウムのA比率」と称する。同じく、EPMA(X線マイクロアナライザー)で測定された活性成分の担持分布において、触媒に担持された全テルルの内、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在するテルルの量(重量%)を「テルルのA比率」と称する。また、EPMA(X線マイクロアナライザー)で測定された活性成分の担持分布において、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在するパラジウムの内、テルル/パラジウム原子比が0.15〜0.35であるパラジウムの量(重量%)を「B比率」と称する。
【0009】
本発明においては、無機多孔体の粒子径は1mm以上であることが好ましい。より好ましくは粒子径が8mm以下である。
また、無機多孔体としてはシリカが特に好ましい。
本固体触媒は、液相酸化用触媒として用いることが好ましい。中でも液相酸化的アシロキシ化(アシルオキシ化)及び/又はアルコキシ化用の触媒として用いると活性が高く好ましい。
【0010】
本発明の別の要旨は、上記固体触媒の存在下、オレフィン又は芳香族化合物に酸素求核剤および分子状酸素を酸化的付加させることを特徴とする、酸化的付加反応方法に存する。
本発明の別の要旨は、上記固体触媒の存在下、オレフィン又は芳香族化合物に酸素求核剤および分子状酸素を酸化的付加させて対応する生成物を製造することを特徴とする、オレフィン又は芳香族化合物と酸素求核剤および分子状酸素との酸化的付加生成物の製造方法に存する。
【0011】
或いは、本発明の別の要旨は、上記固体触媒の存在下、側鎖アルキル基を有する芳香族化合物に酸素求核剤および分子状酸素を酸化的付加させることを特徴とする、酸化的付加反応方法に存する。
本発明の別の要旨は、上記固体触媒の存在下、側鎖アルキル基を有する芳香族化合物に酸素求核剤および分子状酸素を酸化的付加させて対応する生成物を製造することを特徴とする、側鎖アルキル基を有する芳香族化合物と酸素求核剤および分子状酸素との酸化的付加生成物の製造方法に存する。
【0012】
これら製造方法の一例は、上記固体触媒の存在下に共役ジエンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて、対応する不飽和グリコールジエステルを製造する方法である。
他の一例は、上記固体触媒の存在下に共役ジエンとアルコール及び分子状酸素を反応させて対応する不飽和グリコールジエーテルを製造する方法である。
【0013】
他の一例は、上記固体触媒の存在下にシクロヘキセンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応するアシロキシシクロヘキセンを製造する方法である。
他の一例は、上記固体触媒の存在下にアルキルベンゼンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応するアシロキシアルキルベンゼンを製造する方法である。
【0014】
これらの製造方法において、好ましくは共役ジエンがブタジエン、ピペリレン、アルキル置換ブタジエンから選ばれるものとする。また、好ましくはカルボン酸が酢酸である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いる触媒は、パラジウムとテルルを活性成分として無機多孔体に担持した固体触媒であって、EPMA(X線マイクロアナライザー)で測定された活性成分の担持分布(無機多孔体上での活性成分の分布)において、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に、触媒に担持された全パラジウム及び触媒に担持された全テルルのそれぞれ99重量%以上が存在することを特徴とする。より好ましくは、担体表面から中心に対する半径の10%の深さ迄の表層部に、触媒に担持された全パラジウム及び触媒に担持された全テルルのそれぞれ90重量%以上が存在し、さらに好ましくは95重量%以上が存在する。パラジウムに関しては、該10%の深さ迄の表層部に99重量%以上が存在するのが特に好ましい。
【0016】
従来、固体触媒において活性成分を外表面近傍に存在させることで触媒活性によい影響を与えることが知られていた。例えば前記特許文献3には、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に、触媒に担持された全パラジウムの約80〜90重量%が存在し、且つ、触媒に担持された全テルルの75〜90重量%が存在するような触媒が高い活性を示したことが記載されている。
【0017】
しかしながら、本発明者らは従来の約80〜90重量%という程度を大幅に越えた、99重量%以上ものパラジウム及びテルルを外表面へ集中させることで、触媒活性が飛躍的に高まることを見出したものである。
図1は、本発明の実施例及び比較例に係る、パラジウムのA比率(%)と、単位パラジウム当たりの触媒活性(mmol/mmol−Pd・h)との関係を示すグラフである。黒丸は本発明に係る実施例を示し、白丸は従来技術である比較例を示している。図1によれば、パラジウムのA比率が70〜90重量%の範囲でもA比率が上がるにつれて触媒活性が徐々に高まってはいくものの、A比率を99重量%以上とすることで、著しく高い活性が得られていることが判る。
【0018】
本発明における特定の担持分布を有する触媒が顕著に高活性である理由は、今のところ明らかではないが次のように推定される。反応の進行は、(1)反応基質が触媒細孔内に浸入し、(2)反応基質が細孔内を拡散し、(3)細孔内に担持された活性成分の活性点に吸着し、(4)吸着点で反応が起こり、(5)反応生成物が活性点より脱離し、(6)反応生成物が細孔内を拡散し、(7)反応生成物が細孔内より離脱する、の段階に分けることができる。
【0019】
そして、(2)及び(6)に要する時間が他段階に比べて長いほど、触媒粒子表層部により多くの活性成分が存在する方が反応速度的に有利となる。
更に、(2)及び(6)における細孔内拡散速度が触媒粒子内で一様ではなく、触媒粒子深部より表層部のほうが速い場合、表層部に多くの活性成分が集中すれば、ますます反応速度的に有利となる。
【0020】
本発明の触媒反応系はこの場合に当たると考えられ、本発明で示されたパラジウム及びテルルのA比率が99%以上である触媒は、反応速度的に極めて有利な状態になっていると考えられる。
また本発明においては、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在するパラジウムの内、テルル/パラジウム原子比が0.15〜0.35であるパラジウムが、通常80重量%以上が好ましい。より好ましくは90重量%以上を占める。
【0021】
テルル/パラジウム原子比とは、担体のある位置において担持されたパラジウムとテルルの原子数比率(担持量の比率)であって、担持されたパラジウム1モルに対する担持されたテルルのモル数に相当する。通常0.05から5.0の範囲が良いとされているが、本発明においては0.15〜0.35の範囲が特に好ましい。これが小さすぎると、本触媒を用いて基質を反応させた場合、パラジウムが担体から反応液中に流出する恐れがある。一方、大きすぎると、テルルが反応液中に流出する恐れがあり、何れの場合も触媒活性低下の原因となる。
【0022】
ところで、一般に、担体上においてパラジウムとテルルは異なった担持分布を持つため、パラジウム/テルル原子比は担体上の位置によって異なる場合が多い。テルル/パラジウム原子比のばらつきがあまり大きすぎるのは好ましくないが、ある程度の範囲内に納まっていれば、反応に支障はなく問題はない。
また本発明においては、反応に主に関与する活性成分、即ち担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在するパラジウムについてのテルル/パラジウム原子比が重要である。
【0023】
これらを総合して本発明においては、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在するパラジウムの内、テルル/パラジウム原子比が0.15〜0.35であるパラジウムが通常80重量%以上が好ましい。より好ましくは90重量%以上を占める。
つまり、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在するパラジウムについて、テルル/パラジウム原子比をヒストグラム化したとき、その比が0.15〜0.35である範囲内に該パラジウムの80重量%以上、或いは90重量%以上が含まれる。
【0024】
本発明によれば、以上のような構成により、パラジウムとテルルを有効成分として無機多孔体に担持した固体触媒であって、工業的に十分満足できる高活性を発現する触媒を得ることができる。
なお、本発明に関わる活性種の担持分布は、触媒調製に関わる多くの要素によって決まるため(例えば、担体の物性、活性成分の原料塩種及びそれを溶解して得られた溶液の物性、含浸方法、乾燥方法等)、特定の担持分布が得られる手法は一つに限られない。
【0025】
例えば同一条件で触媒を調製しても原料テルル塩が異なれば担持分布は大きく異なり、また同一の触媒原料(担体、パラジウム塩、テルル塩)を使用しても乾燥方法を変えたり、或いは条件の一部を変えるだけでも、その担持分布を変えることができる。
次に、本発明におけるA比率及びB比率の求め方を説明する。
【0026】
本発明において、担持分布を測定する手法は一般的にEPMAが用いられるが、実際には同一手法で調製した触媒でもその担持分布は正確に同一ではなく、更には同じロットの触媒でも粒子1つ1つによりある程度のバラツキがあるために、1粒子についての担持分布を測定しただけでは、その担持分布による効果を正確に知る事は難しい。また、1つの粒子の担持分布も、その粒子の中である程度の偏り(この場合の偏りとは触媒粒子中心を中心とした一様な偏りの事ではなく、例えば、球状触媒の任意の断面に於いて、その断面の中心を通る任意の直線上を複数測定した場合、それらの測定線上の担持分布が全て同一ではない等)が有る事が多く、1つの線上を測定しただけでは、その粒子の正確な担持分布を表す事は難しい。また、仮にその測定された担持分布に偏りがなかったとしても、担体の形状が球状であれば任意の中心線上を測定した結果でその触媒粒子の担持分布を代表させる事はできるが、不定形の担体では線分析の結果のみでは正確な担持分布を表す事は難しい。従って、全ての触媒について、その触媒を代表する正確な担持分布を得る事は事実上困難である。
【0027】
そこで本発明者らは、担持分布を得る手法として以下に記す測定方法により得られた担持分布をその触媒を代表する担持分布とした。即ち、触媒の内10個の触媒粒子を任意に選び、各々の粒子についての最大面積を与える各断面に於いて、その断面を切る線の長さが最大になる直線(以後、この直線を長径線と記す。またその長さを長径方向の直径、長径線の中点を長径方向の中心、直径の1/2を長径方向の半径とする)上、及び長径線と直交する直線で、その長さが最大になる直線(以後、この直線を短径線と記す。またその長さを短径方向の直径、短径線の中点を短径方向の中心、直径の1/2を短径方向の半径とする)上についてEPMAにより20μmの間隔で測定し、後述の(1)〜(5)式の計算により補正された10本の長径線直径担持分布と10本の短径線直径担持分布を得る。この時、担体が球状の場合には、その担体形状を真球と仮定して長径線のみを測定し、その値から求められた担持分布をその触媒を代表する担持分布とする。担体が円柱状の場合には担体の形状を真の円柱と仮定し、軸(断面が与える長方形の長径方向中心線)を長径線とし、短径線は長径線の中点を直交する直線とする。また、それ以外の担体形状の場合にはその断面を、長径線を長軸、短径線を短軸とした楕円に置き換え、その面を長軸を軸として回転させた立体をその触媒粒子の形状として計算する。
【0028】
次に、この各長径線直径担持分布について長径線の両端(触媒粒子表面)の位置を0%と、長径線の中点の位置を100%として各測定点の位置(%)を求め、更に各長径線を中心で2分割し、合計20本の長径線半径担持分布を得る。この20本の長径線半径担持分布を各位置(%)毎に平均化する事により、長径線平均半径担持分布を得る。また、短径線についても長径線と同様に合計20本の短径線半径担持分布と短径線平均担持分布を求める。
【0029】
EPMAによる具体的な定量手法としてはZAF補正法を用いるのが好ましい。ZAF補正法とは、Z:原子番号効果、A:吸収効果、F:蛍光励起効果についての補正係数、即ち下式の
【0030】
【数1】
[式中、Cunkは各元素の濃度、Cstdは標準試料の濃度、Iunkは各成分の測定強度、Isdtは標準試料の測定強度、fZAFはZAF補正法により得られた補正係数、fotherはその他の補正係数を示す。]
fZAFを求める手法の詳細は専門書に記載がある(例えば「電子線マイクロアナリシス」福島啓義著、日刊工業新聞社発行、等)。また、本発明の触媒の如く多孔体を用いる場合は、密度効果等によりfotherが無視できなくなるため、測定に用いられる標準試料は、測定される触媒と同じ担体に活性成分が既知の濃度で均質に担持された試料である事が望ましい(この場合の「均質」とは、入射電子の拡散領域と特定X線の発生領域及び脱出経路が10nm程度まで均質であること、即ち、標準試料全体がnmスケールまで均質であることを言う)。しかし、そのような標準試料を調製する事は難しいため、本発明者らは標準試料を、パラジウムについてはパラジウム金属、テルルについてはテルル金属、担体を構成する各元素については活性成分が担持されていない担体として、ZAF補正法により担持分布を測定し以下の計算により求めた。
【0031】
以下、パラジウムを例として測定方法及び計算方法を説明するが、テルルについても同じ手法を用いることができる。
即ち、仮に触媒粒子が球状であった場合には、各測定点に於けるパラジウムの濃度Irw(wt%;重量%)は次式で求められる。
【0032】
【数2】
Vfr=r3−(r−20)3 (2)
(但し、r<20の場合はr=20とする)
Wcalc=Σ(Ir×Vfr)/ΣVfr (3)
fwt=(Wanl×n)/(全ての測定粒子のWcalcの合計) (4)
Irw=Ir×fwt (5)
[式中、Vfrは各測定位置における体積補正係数、rは測定直線の中点からの測定点迄の距離(μm)、WcalcはEPMA測定結果より求めた各測定試料のパラジウム濃度(wt%)、Irは各測定試料のZAF補正法により求められた各測定位置におけるパラジウムの濃度(wt%)、Σは各測定直線毎の直径の範囲の総和を示す。fwtは担持率補正係数であり(1)式のfotherに相当する。Wanlはその触媒のパラジウムの担持率(wt%)、nは測定試料数、Irwは各測定試料の各測定点に於ける補正後のパラジウム濃度(wt%)を示す。]
触媒粒子が円柱状の場合には、上記(2)式は長径方向については下記(2−b1)式、短径方向については下記(2−b2)式により各々Vfrを求め、続いて各々上記(3)〜(4)式よりfwtを求め、その2つのfwtの平均値をその触媒のfwtとして上記(5)式を計算する。
【0033】
【数3】
Vfr=1
(2−b1)
Vfr=r2−(r−20)2
(2−b2)
(但し、r<20の場合はr=20とする)
また、それ以外の担体形状については(2−b1)式及び(2−b2)式を(2−c)式とした事以外は円柱状の場合と同様にして計算する。
【0034】
【数4】
上式の計算で長径方向の計算時には、ra1は長径方向の測定直線の中点からの測定点迄の距離(μm)とし、ra2、rb1、rb2は下式により求める。
【0035】
【数5】
ra2=ra1−20 (2−c−a1)
(但し、ra1<20の場合はra1=20とする)
rb1=(ra1/Da)×Db (2−c−a2)
rb2=(ra2/Da)×Db (2−c−a3)
また短径方向の計算時には、rb1は長径方向の測定直線の中点からの測定点迄の距離(μm)とし、rb2、ra1、ra2は下式により求める。
【0036】
【数6】
rb2=rb1−20 (2−c−b1)
(但し、rb1<20の場合はrb1=20とする)
ra1=(rb1/Db)×Da (2−c−b2)
ra2=(rb2/Db)×Da (2−c−b3)
[式中、Daは長径線の直径(μm)、Dbは短径線の直径(μm)を示す]
次に、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に存在する活性成分の、触媒に担持された各活性成分全量に対する比率を、以下の如く計算して求めた。
【0037】
即ち、仮に固体触媒が球状である場合には、触媒表面からの距離r1からr2までの範囲にあるパラジウムの全パラジウムに対する割合Cra(%)は次式で求められる。
【0038】
【数7】
[式中、Vfrは各測定位置における体積補正係数、Rは半径、Crは各測定試料の触媒表面からの距離r1からr2までの範囲にあるパラジウムの全パラジウムに対する割合(%)、Irwは各測定試料の各測定位置における補正後のパラジウムの濃度(wt%)、Σは各測定試料の触媒表面から中心までの総和、nは測定試料数を示す]
従って、触媒表面から中心に対する半径の30%の深さ迄に担持されたパラジウムの全パラジウムに対する比率Cr30(%)は、
【0039】
【数8】
Cr30=(深さ0%から30%迄の各測定位置におけるCraの総和) (9)
となる。球状以外では、長径線平均半径分布と短径線平均半径分布の各々につきCr30を求め、その平均値をその触媒のCr30とする。その際、担体の形状が円柱状の場合では、(6)式を長径線平均半径担持分布の計算時には(6−b1)式に、短径線平均半径担持分布の計算時には(6−b2)式に置き換えて計算する。
【0040】
【数9】
Vfr=1
(6−b1)
Vfr=(R−r1)2−(R−r2)2 (6−b2)
また、それ以外の担体形状の場合では、長径線平均半径担持分布の計算時には(6)式を(6−c1)に置き換えて計算し、
【0041】
【数10】
[式中、R’は短径線の半径を表し、r1’=(r1/R)×R’であり、r2’=(r2/R)×R’である。]
短径線平均担持分布の計算時には(6)式を(6−c2)式に置き換えて計算する。
【0042】
【数11】
[式中、R’は長径線の半径を表し、r1’=(r1/R)×R’であり、r2’=(r2/R)×R’である。]
以上の手順で(9)式により求めたCr30を、パラジウムのA比率(wt%)と称する。テルルについても同様の計算に従ってテルルのA比率(wt%)を求めることができる。
【0043】
なお、触媒表面から中心に対する半径の10%の深さ迄に担持されたパラジウムの全パラジウムに対する比率や、テルルの全テルルに対する比率も、同様に求めることができる。
次に、触媒表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の範囲に担持された活性成分において、各測定試料の各測定位置におけるテルル/パラジウム原子比Xrは次式で求められる。
【0044】
【数12】
[式中、Irw(Te)は各測定試料の各測定位置における補正後のテルルの濃度(wt%)、Irw(Pd)は各測定試料の各測定位置における補正後のパラジウムの濃度(wt%)を示す。]
従って、触媒表面から中心に対する半径の30%の深さ迄に担持されたパラジウムの内、テルル/パラジウム原子比Xrが0.15〜0.35であるパラジウムの比率Ctp(%)は、
【0045】
【数13】
Ctp=((半径の0%から30%の深さ迄にあるパラジウムでXrが0.15〜0.35であるCrの全測定半径の総和)/((長径方向のCr30×n)+(短径方向のCr30×n)))×100 (11)
で求められる。但し、触媒粒子が球状の場合には上記(11)式を下記(11)’式として求める。
【0046】
【数14】
Ctp=((半径の0%から30%の深さ迄にあるパラジウムでXrが0.15から0.35の範囲にあるCrの全測定半径の総和)/(Cr30×n))×100 (11)’
以上の手順で(11)式又は(11)’式により求めたCtpを、B比率(wt%)と称する。
【0047】
次に、本発明の固体触媒の構成及び製造方法について説明する。
本発明における触媒の担体としては、本質的に反応条件下に変化しない無機多孔体が使用される。例えば、活性炭やシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の酸化物担体及びそれらの混合酸化物等が用いられ、特にシリカが好ましい。その形状については特に限定されるものではないが、液相反応用触媒としては、工業的にはその担体粒子径が1mm以上であるのが好ましい。但し、担体粒子径が8mm以下であるのが好ましい。担体粒子径が大きすぎると触媒粒子の外表面積が相対的に小さくなってしまう。逆に小さすぎると触媒充填層の圧力損失が大きくなる。また、その担体物性としては多孔質である必要があり、平均細孔直径は10〜50nmの範囲が好ましい。
【0048】
本発明において無機多孔体に活性成分を担持させる方法としては、本発明に係る特定の担持分布を達成するものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば以下が用いうる。
活性成分を含有する水溶液を尿素の存在下で多孔性担体に含浸する方法(特開昭51−40392号公報)、ポリエチレングリコールを添加した活性成分を含有する溶液を無機担体に含浸する方法(特公昭55−33381号公報)、活性成分塩を溶解するケトン類、エステル類、アルコール類から選ばれた少なくとも一種類の溶媒に炭化水素類を添加してアセトンより極性の低い性状の混合溶液を無機多孔質担体に含浸する方法(特公昭57−5578号公報)、加熱した担体に活性成分溶液を噴霧し担体表層部に析出させる方法(特開平3−293036号公報)等の触媒表面に活性成分を担持させる方法や、最初に少量の活性成分を担体に担持した後に必要量の活性成分を担持する方法(特公昭54−8638号公報)等の如く担体表面付近に担持する方法、競争吸着法(例えば特公昭52−23920号公報、特公昭52−30475号公報等)、水溶性金属化合物と反応して非水溶性金属化合物を形成せしめることができる化合物溶液と接触させ、触媒担体上に非水溶性金属化合物として沈殿させた後に、還元及び水洗し、引き続きアルカリ金属酢酸塩と接触させる方法(特公昭59−46668号公報)、塩基性金属塩成分を含む担体を乾燥したものを70℃以上の温度に保持された金属化合物溶液に瞬時に投入する方法(WO98/26867号公報)等のように活性成分を担持する位置を制御する方法、更には活性成分が担体に強く吸着される条件で担体表層部に吸着させた後に乾燥し担持させる方法や、活性成分が担体に吸着されない条件で活性成分溶液を担体に含浸し、短時間で乾燥する事により担体表層部に活性成分を多く析出させる方法、或いは担体を表面処理等により疎水性を高め、活性成分を含有する水溶液を担体表層部にのみ含浸した後に乾燥し担持する方法等である。
【0049】
このように活性成分を担持した触媒は、還元処理をした後に使用されるが、必要な場合は、例えば活性成分を担持させた後でも乾燥が不十分な場合や、予めある程度塩を分解させたい場合等には、還元前に乾燥や焼成処理を行っても良く、必要とあればそれらを繰り返し行っても良い。乾燥、焼成、還元の方法は、本発明による触媒の特定の担持分布を達成する事を妨げない限り特に限定されるものではなく、例えば、乾燥方法としてはロータリエバポレータやコニカルブレンダーを用いた流動床減圧乾燥、減圧乾燥機や棚段乾燥装置等の静置式乾燥、キルン乾燥装置等の流動床乾燥、窒素や空気、水素、水蒸気等気流中での乾燥等のいずれでも良く、焼成方法としては窒素や空気及びその混合物気流中、固定床或いはキルンの如く流動床に窒素や空気及びその混合物等のガス気流中で加熱する方法や、ガスを流通せずに加熱する方法のいずれでも良く、還元方法としては水素ガスやメタノールガス等による気相還元、ヒドラジンやホルマリンで代表されるような液相還元のいずれでも良い。
【0050】
触媒調製のために用いられるパラジウム化合物としては、酸化パラジウムや、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、硫酸パラジウム等の無機酸塩、酢酸パラジウム等の有機酸塩、テトラアンミンパラジウムクロリド等の錯塩、さらにはパラジウムアセチルアセトナートに代表されるような有機金属化合物等が挙げられるが、必要ならば金属パラジウムも使用できる。担体に担持されるパラジウム濃度は、一般的には0.1重量%以上であり、好ましくは0.5重量%以上である。但し、一般的には20重量%以下であり、好ましくは10重量%以下である。下限未満では単位触媒重量当たりの活性が低く実用的ではない。また前記範囲の上限を越えると単位パラジウム当たりの活性が低下し、更には高価なパラジウムを多量に必要とする事から触媒費が高くなり、そのいずれも経済的に好ましくない。
【0051】
触媒調製に用いられるテルル化合物としては、塩化テルル(II),塩化テルル(IV)のようなハロゲン化合物、酸化テルル(IV),酸化テルル(VI)のような酸化物、テルル酸(H6TeO6)及びその塩類、亜テルル酸(H2TeO3)及びその塩類、金属テルル、ソジウムハイドロジェンテルライド(NaHTe)、ジフェニルジテルライド([PhTe]2)に代表される有機テルル等が用いられる。担体に担持されるテルル量については、パラジウム量との関係で、本発明を満たす範囲であれば良い。但し通常、テルルの担持量はパラジウム1モルに対して0.05〜0.5モル程度である。
【0052】
本発明に係る触媒は広く触媒反応の触媒として使用することができるが、液相反応での使用が好ましい。特に、反応基質と分子状酸素を触媒と接触させる酸化反応に用いて有効である。中でも、オレフィン又は芳香族化合物に酸素求核剤および分子状酸素を酸化的付加させる酸化的付加反応方法と、これを用いた酸化的付加生成物の製造方法に適用すると効果が高い。
【0053】
例えば、オレフィンの酸化によるアルデヒド合成、オキシクロリネーションや酸化的アシロキシ化、酸化的シアノ化、酸化的アルコキシ化等のオキシアニオニゼーション、オレフィン及び/または芳香族のカップリング反応、酸化的カルボキシル化等の反応で使用できる。
より具体的には、アルデヒド合成としてはエチレンからのアセトアルデヒド合成等があげられる。オキシクロリネーションとしては、エチレンからの塩化ビニル合成、プロピレンからの塩化アリル合成、ブタジエンからのジククロロブテン合成、イソプレンからのジクロロメチルブテン合成、ベンゼンからのクロロベンゼン合成、トルエンやキシレンの側鎖クロロ化等があげられる。アシロキシ化としては、エチレンから酢酸ビニルで代表されるようなアシロキシビニル合成、ブタジエンからのジアシロキシブテン合成、イソプレンからのジアシロキシメチルブテン合成、ベンゼンからのアシロキシベンゼン合成、トルエンやキシレンの側鎖アシロキシ化等があげられる。シアノ化としては、エチレンからのアクリロニトリル合成、ブタジエンからのジシアノブテン合成、イソプレンからのジシアノメチルブテン合成、ベンゼンからのシアノベンゼン合成、トルエンやキシレンの側鎖シアノ化等があげられる。アルコキシ化としては、エチレンからのメチルエチルエーテル合成、ブタジエンからのジアルコキシブテン合成、イソプレンからのジアルコキシメチルブテン合成、ベンゼンからのアルコキシベンゼン合成、トルエンやキシレンの側鎖アルコキシ化等があげられる。カップリング反応としてはベンゼンからのビフェニル合成、トルエンからのメチルベンゼン二量体合成、酢酸ビニルからのジアセトキシブタジエン合成、スチレンとベンゼンからのスチルベン合成、スチレンまたはスチレンとベンゼンからのトリフェニルベンゼン及びテトラフェニルベンゼン合成等があげられる。酸化的カルボキシル化としてはエチレンと一酸化炭素からのアクリル酸合成、一酸化炭素とアルコールからのシュウ酸ジエステル合成、エチレンと一酸化炭素及びアルコールからのコハク酸ジエステル合成、ブタジエンと一酸化炭素及びアルコールからのアジピン酸エステル類の合成等があげられる。
【0054】
最も好ましくは、液相酸化的アシロキシ化及び/又はアルコキシ化反応用の触媒として用いると、活性が極めて高く好ましい。中でも、オレフィン又は芳香族化合物に酸素求核剤および分子状酸素を酸化的付加させる酸化的付加反応方法と、これを用いた酸化的付加生成物の製造方法に適用すると効果が高い。この場合、酸素求核剤は、例えばオレフィン又は芳香族化合物の不飽和結合部位に対して酸化的付加反応を行う。
【0055】
或いは、側鎖アルキル基を有する芳香族化合物に酸素求核剤および分子状酸素を酸化的付加させる酸化的付加反応方法と、これを用いた酸化的付加生成物の製造方法に適用すると効果が高い。この場合、酸素求核剤は、例えば通常側鎖アルキル基の芳香環に隣接した炭素に酸化的付加反応を行う。
本発明の反応で使用される原料のオレフィンとしては、反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はないが、直鎖又は分岐状のオレフィン、もしくは単環、多環又は縮合環式のシクロオレフィンが好ましく、中でも直鎖又は分岐状のオレフィンまたは単環のシクロオレフィンが好ましい。これらのオレフィン又はシクロオレフィンは、本発明の酸化反応に悪影響を与えない置換基で置換されていてもよい。
【0056】
置換基としては例えば、アリル基、アリール基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アシロキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの置換基が挙げられるが、これに限定されるものではない。
直鎖又は分枝状のオレフィンの炭素数は通常2〜30、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜10であり、単環、多環又は縮合環式のシクロオレフィンの炭素数は通常4〜30、好ましくは5〜12、より好ましくは6〜10である。
【0057】
オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、2,3−ジメチルブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ブタジエン、シクロヘキサジエンなどが挙げられる。
中でも好ましくは共役ジエンが挙げられる。共役ジエンとしては、具体的にはブタジエン、ピペリレン(1,3−ペンタジエン)、1,4−ヘキサジエンの他、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチルブタジエン等のアルキル置換ブタジエン(分岐状オレフィンの一種である。)、更にはシクロペンタジエン、シクロヘキサジエンのような環状ジエンを使用する事ができる。好ましくはブタジエン、ピペリレン、アルキル置換ブタジエンのいずれかであり、最も好ましくはブタジエン又はアルキル置換ブタジエンのいずれかである。
またシクロオレフィンも好ましく、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテンなどが挙げられる。特に好ましくはシクロヘキセンである。
【0058】
本発明に用いる芳香族化合物としては、反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はないが、単環又は縮合環の芳香族化合物が用いられ、縮合環の環の数は通常2〜10、好ましくは2〜6、より好ましくは2または3である。これらの中でも好ましくは単環または2環の縮合環の芳香族化合物、より好ましくは単環の芳香族化合物である。これらの芳香族化合物は、本発明の酸化反応に悪影響を与えない置換基で置換されていてもよい。
【0059】
置換基としては例えば、アルキル基、アリル基、アリール基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アシロキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの置換基が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0060】
以上のようなオレフィン又は芳香族化合物に対して、酸素求核剤は、例えばその不飽和結合部位に酸化的付加反応を行う。
また、本発明に用いる側鎖アルキル基を有する芳香族化合物としては、反応に悪影響を与えないものであれば特に制限はないが、上記の芳香族化合物が一つのアルキル基で置換された化合物、またはこれにさらにアルキル基、アリル基、アリール基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アシロキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの置換基が直接結合した芳香族化合物等が例示される。
【0061】
具体的な例は次の通りである。トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、ジエチルベンゼン、o−クロロトルエン、m−クロロトルエン、p−クロロトルエン、ジクロロトルエン、o−ニトロトルエン、m−ニトロトルエン、p−ニトロトルエン、o−メトキシトルエン、m−メトキシトルエン、p−メトキシトルエン、o−フェノキシトルエン、m−フェノキシトルエン、p−フェノキシトルエン、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−メチルベンジルアルコール、m−メチルベンジルアルコール、p−メチルベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0062】
以上のような側鎖アルキル基を有する芳香族化合物に対して、酸素求核剤は、例えば側鎖アルキル基の芳香環に隣接した炭素に酸化的付加反応を行う。
これら反応を用いた具体的な製造方法としては、例えば、共役ジエンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応する不飽和グリコールジエステルを製造する方法、共役ジエンとアルコール及び分子状酸素を反応させて対応する不飽和グリコールジエーテルを製造する方法、シクロヘキセンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応するアシロキシシクロヘキセンを製造する方法、アルキルベンゼンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応するアシロキシアルキルベンゼンを製造する方法、などが挙げられる。
【0063】
これらの製造方法において、好ましくは共役ジエンがブタジエン、ピペリレン、アルキル置換ブタジエンから選ばれるものとする。また、好ましくはカルボン酸が酢酸である。
上記反応例の内、一例として共役ジエンのアシロキシ化による不飽和グリコールジエステル製造に関して、以下に詳細説明する。
【0064】
本発明で示された触媒を用いて不飽和グリコールジエステルを製造する際に使用する反応原料である共役ジエン、例えばブタジエンは必ずしも純粋なものである必要はなく、窒素ガスのような不活性ガスや、メタン、エタン、ブタン等の飽和炭化水素、又はブテン等の不飽和炭化水素を含むものであっても良い。共役ジエンとしては他のジエン類、アルキル置換ブタジエン類、環状ジエン類を使用する事ができる。好ましくは共役ジエンがブタジエン、ピペリレン、アルキル置換ブタジエンから選ばれるものとする。
【0065】
他方の反応原料であるカルボン酸は、脂肪族、脂環族、芳香族など任意のものを用いることができるが、工業的には酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸等の低級脂肪族のモノカルボン酸(炭素数4以下)を用いることが好ましく、特に反応性及び価格の点から酢酸がより好ましい。前記カルボン酸は反応原料でありながら溶媒を兼ねても良く、また必要であれば反応に不活性な有機溶媒、例えば飽和炭化水素、エステル等が存在していても良い。しかし、反応溶媒の50重量%以上は原料のカルボン酸である事が好ましい。カルボン酸の使用量は共役ジエン1モルに対する化学量論量以上、60モル以下の範囲が好ましい。
【0066】
本発明の方法では、上述の原料を分子状酸素を含有する気体を用いて、好ましくは液相下で固体触媒と接触させる。ここで分子状酸素を含有する気体とは、純酸素あるいは酸素と不活性気体の混合気体を指す。この不活性気体とは、窒素、アルゴン、ヘリウム等であり、混合気体としては空気も含まれる。分子状酸素は不活性気体と任意の混合比率にて、大気圧〜加圧状態として反応系に供給することができるが、酸素濃度は反応系内で気体が爆発組成とならない範囲が好ましい。また、加圧状態として反応系に供給する際には、反応系内の酸素分圧が好ましくは1kg/cm2以上、より好ましくは2kg/cm2以上に保持されるように供給気体の圧力及び酸素濃度を調整するとよい。但し好ましくは20kg/cm2以下とし、より好ましくは8kg/cm2以下に保持されるようにする。
【0067】
本発明において、共役ジエンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応する不飽和グリコールのカルボン酸ジエステルを製造する反応は、回分式、連続式のいずれの方法でも行う事ができる。また反応方式としては固定床式、流動床式、懸濁槽式等任意の方式を採用する事ができるが、工業的には固定床式がより好ましい。反応温度は通常20℃以上の温度で行われるが、反応速度及び副生物の生成等を考慮すると、好適な反応温度の範囲は40〜120℃である。また反応圧力は常圧、加圧のいずれも可能である。反応速度を高めるには加圧の方が好ましいが反応設備経費が高くなり、それらを考慮すると好適なのは常圧(1気圧)〜100kgf/cm2の範囲である。
【0068】
なお、上記反応例において、共役ジエンに代えてシクロヘキセンを用いることで、アシロキシシクロヘキセンを製造することができる。このとき、用いられるシクロヘキセンの純度には特に制限は無く、例えば若干のシクロヘキサン、ベンゼンを含んでいても、また微量の水を含んでいても特にさしつかえない。また、共役ジエンに代えてアルキルベンゼンを用いることで、アシロキシアルキルベンゼンを製造することができる。このとき、用いられるアルキルベンゼンの純度には特に制限は無く、例えば若干のベンゼン等を含んでいても、また微量の水を含んでいても特にさしつかえない。
【0069】
更に、上記反応例において、カルボン酸に代えてアルコールを用いることで、不飽和グリコールジエーテルを製造することができる。本発明に用いうるアルコールは、特に限定されないが、工業的には例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数4以下の低級アルコールが用いられる。
【0070】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り下記実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
1リットル当り440gの密度および担体1g当り1.0mlの細孔容積を有し、かつ、水懸濁液中で6.0〜8.0のpHを有する、平均直径3mmの球体の形状にあるシリカ担体1.2Lを、17.70gのパラジウムと6.14gのテルルを含有する530mlのNa2PdCl4およびH6TeO6の水溶液(担体の吸水量の99%)に加え混合物とした。この混合物を入れた容器を、溶液がシリカ担体によって完全に吸収し含浸されるまで、機械的に回転させた。次いで60.8gのメタ珪酸ナトリウム(Na2SiO3・9H2O)を含有する550mlの水溶液を加えて、湿潤した含浸担体が完全に浸るまで機械的に回転させたのち、これを室温において1晩放置した。次いで触媒を洗浄槽に移し、蒸留水で3回洗浄したのち、1時間当り1〜2リットルの蒸留水で17時間連続的に洗浄した。その後に硝酸銀溶液を用いて試験しても沈殿が生じず、洗浄水は塩素イオンを含有していないことが認められた。洗浄終了が確認できたのち、160L/Hの流量で空気を流通させながら、110℃の温度で3時間乾燥した。この触媒を53gを内径4cm(有効断面積12.6cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、2.06Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて150℃に昇温し、次いで2.06Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒を得た。この触媒はパラジウム2.9重量%及びテルル0.9重量%を含有していた。
【0071】
このようにして得られた触媒のパラジウム担持量(wt%)、テルル/パラジウム重量比、パラジウムのA比率(%)、テルルのA比率(%)、B比率(%)を表−1に示した。
また、パラジウム及びテルルの平均担持分布を図2(A)、(B)に示した。横軸は担体表面からの半径位置(%)であり、縦軸はパラジウム量及びテルル量(重量%)である。
【0072】
担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に、触媒に担持された全パラジウムの100.0重量%が、また、触媒に担持された全テルルの100.0重量%が存在し、担体表面から中心に対する半径の10%の深さ迄の表層部に、触媒に担持された全パラジウムの99.2重量%が、また、触媒に担持された全テルルの96.9重量%が存在していた。
【0073】
触媒上のパラジウム及びテルルの担持分布は以下の如く求めた。上記触媒の内、無作為に10個の触媒粒子を選び、その各々の触媒粒子についての最大断面積を与える各断面に於いて、その断面を切る線の長さが最大になる直線上をEPMA(日本電子製JXA−8600M)により20μmの間隔で測定を実施し、その各測定点毎にZAF補正及び担持率補正を行い、パラジウム及びテルル毎に合計20本の半径担持分布と平均半径担持分布を求めた。この平均半径担持分布よりA比率を求め、更に、20本の半径担持分布からB比率を求めた。
【0074】
次に、この触媒4gを内径12mm(有効断面積1.005cm2)のステンレス製反応管に充填し、反応圧力60kgf/cm2、反応温度80℃に於いて、1,3−ブタジエン0.15モル/時、酢酸2.5モル/時、酸素6容量%を含有する窒素を100Nl/時の流量で流し、連続的に7時間、反応を実施した。この反応に於いて、反応開始後4〜5時間の間の反応液留分及び6〜7時間の間の反応液留分を各々ガスクロマトグラフィーにより生成物を定量し、その平均値をもって反応結果とした。反応結果より活性を求め、その結果を表−1に示した。
【0075】
なお、実施例1及び比較例1〜12の評価項目において、活性は、反応生成物の内、3,4−ジアセトキシブテン−1、3−ヒドロキシ−4−アセトキシブテン−1、1−アセトキシクロトンアルデヒド、1,4−ジアセトキシブテン−2(14DABE)、1−ヒドロキシ−4−アセトキシブテン−2、1,4−ジヒドロキシブテン−2、ジアセトキシオクタトリエン、トリアセトキシブテンの合計の生成量から求めた。これらの生成量が、触媒1kg、1時間当たり何mmolであったかを活性X(mmol/kg−cat.h)、同生成量がパラジウム1mmol当たり何mmolであったかを活性Y(mmol/mmol−Pd.h)で表す。
【0076】
【表1】
(比較例1)
50mlのメスフラスコにテルル金属(NEケムキャット製)0.843gを入れ、続いて35重量%硝酸水溶液20gを加え溶解した。これに10.0重量%硝酸パラジウム水溶液(NEケムキャット製)27.05gを加え、更に35重量%硝酸水溶液を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(富士シリシア化学製CARiACT−Q−15:商品名、1.7〜3.36mm、以下CARiACT−15と記す)25.05gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により56.05gを得た。この触媒の内28.0gを横型キルン(内径3cm、有効断面積7.1cm2)の中に入れ、毎分30回転の速度で回転させながら4.2Nl/分の水素ガスを流し、室温から150℃まで1時間で昇温し、更に150℃で2時間保持して乾燥及び還元を同時に行った後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒13.39gを得た。この触媒はパラジウム5.0重量%及びテルル1.56重量%を含有していた。
【0077】
次に、この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
(比較例2)
乾燥及び還元の際の水素ガス流量を0.26Nl/分とした以外は比較例1と同様にして触媒を調製した。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0078】
(比較例3)
50mlのメスフラスコに二酸化テルル(三津和化学製)1.244gを入れ、続いて35重量%硝酸水溶液28gを入れて溶解し、これに10.0重量%硝酸パラジウム水溶液20.89gを加え、更に35重量%硝酸水溶液を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(シェル化学社製S980G:商品名、粒子直径2.4〜3.4mm)20.81gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により49.10gを得た。この触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、6.7Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて2時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥した。次いで0.42Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒22.23gを得た。この触媒はパラジウム4.4重量%及びテルル1.98重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0079】
(比較例4)
テルル金属27.2gを36重量%硝酸水溶液735.6gに溶解し、これに10.0重量%硝酸パラジウム水溶液758.8gを加え、更に36重量%硝酸水溶液を加える事により液量を1400mlとした。この溶液に球状シリカ担体(CARiACT−Q−15)950gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により2145.5gを得た。この触媒を内径8cm(有効断面積50.2cm2)のSUS反応管中に入れ、317Nl/分の乾燥空気を流しながら90℃に於いて2時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥したのち取り出し、1024.1gの触媒を得た。さらに内径5.2cm(有効断面積21.2cm2)のSUS反応管に乾燥した触媒268.4gを充填し5.2Nl/分で窒素ガスを流しながら150℃まで昇温した。次いで5.2Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に4時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒260.5gを得た。この触媒はパラジウム4.9重量%及びテルル1.76重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0080】
(比較例5)
50mlのメスフラスコに二酸化テルル1.244gを入れ、続いて35重量%硝酸水溶液28gを入れて溶解し、これに10.0重量%硝酸パラジウム水溶液22.09gを加え、更に35重量%硝酸水溶液を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(富士シリシア化学[旧社名:富士デヴィソン化学]製CARiACT−15、粒子直径2.4〜4.0mm)20.56gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により45.39gを得た。この触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、6.7Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて2時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥した。次いで0.42Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒21.89gを得た。この触媒はパラジウム4.9重量%及びテルル1.18重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0081】
(比較例6)
50mlのメスフラスコに金属テルル0.955gを入れ、続いて35重量%硝酸水溶液20gを入れて溶解し、これに10.0重量%硝酸パラジウム水溶液26.51gを加え、更に35重量%硝酸水溶液を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(CARiACT−Q−15)20.78gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により45.97gを得た。この触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、1.7Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて3時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥した。次いで0.42Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒22.26gを得た。この触媒はパラジウム4.9重量%及びテルル1.76重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0082】
(比較例7)
球状シリカ担体(シェル化学社製S980G:商品名、粒子直径2.4〜3.4mm)56gに、10重量%硝酸パラジウム水溶液57g及び二酸化テルル2.6gを硝酸に溶解して得られた水溶液140gを添加し、30℃に2時間保持した後、5時間放冷した。これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液することにより触媒136gを得た。この触媒を内径4.6cm(有効断面積16.6cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ2.3Nl/分の窒素ガスを流しながら、65℃に於いて6時間、次いで100℃に昇温して2時間乾燥した。次に150℃に昇温した後、水素ガスを330Nl/時の流量で流通させながら毎時50℃の割合で昇温し、300℃に4時間保持した後、窒素気流中で冷却し、活性化処理した触媒60gを得た。この触媒はパラジウム4.86重量%及びテルル1.76重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0083】
(比較例8)
触媒担体として富士シリシア化学(旧社名:富士デヴィソン化学)製CARiACT−15(商品名、粒子直径2.4〜4.0mm)を使用した事及び使用される二酸化テルルの量を1.3gとした事以外は比較例7と同様に触媒を調製し、実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0084】
(比較例9)
触媒担体としてピート成形炭(オランダノリット社製、商品名Sorbnorit−2X、直径2mm、長さ6mmの円柱状)を用い、この40gに水60g及び60重量%硝酸水溶液60gを加え、90〜94℃に3時間保持した。これを冷却した後濾過して溶液を除去し、硝酸処理した活性炭を得た。次に、この活性炭に10.0重量%硝酸パラジウム水溶液20g及び金属テルル0.55gを35重量%硝酸に溶解して得られた水溶液120gを添加し、30℃に3時間保持した後、5時間放冷した。これを濾過した溶液を除去した後、240トルの減圧下に最高140℃で8時間乾燥し、パラジウム4.2重量%及びテルル0.78重量%を含有する担持触媒を得た。
【0085】
この担持触媒の内、30mlを内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)製ガラス管に充填し、これに8容量%のメタノールを含有する窒素を39Nl/時の流量で流通させながら毎時50℃の割合で350℃まで昇温し、この温度に4時間保持した後、窒素気流中で室温まで放冷した。次に酸素2容量%を含有する窒素を39Nl/時で流通させながら300℃まで昇温してこの温度に10時間保持した後、窒素気流中で室温まで放冷した。次にメタノール8容量%を含有する窒素を39Nl/時の流量で流通させながら、毎時50℃の割合で350℃まで昇温し、この温度に15時間保持した後、窒素気流中で室温まで放冷した。次に酸素2容量%を含有する窒素を39Nl/時の流量で流通させながら300℃まで昇温してこの温度に4時間保持した後、窒素気流中で室温まで放冷した。次に水素を39Nl/時の流量で流通させながら、毎時50℃の割合で350℃まで昇温し、この温度に4時間保持した後、窒素気流中で室温まで放冷した。次に酸素2容量%を含有する窒素を39Nl/時の流量で流通させながら300℃まで昇温してこの温度に15時間保持した後、窒素気流中で室温まで放冷した。次に水素を39Nl/時の流量で流通させながら、毎時50℃の割合で350℃まで昇温し、この温度に4時間保持した後、窒素気流中で室温まで放冷した。以上のような酸化及び還元を繰り返す活性化処理を行って調製した担持触媒は、パラジウム4.7重量%及びテルル0.87重量%を含有していた。
【0086】
この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応を行い、その結果を表−1に示した。また、担持分布については、その担体の形状が円柱状である事から以下の如く求めた。上記触媒の内、無作為に10個の触媒粒子を選び、その各粒子についての最大断面を与える各断面に於いて、軸(断面が与える長方形の長径方向中心線)を長径線とし、その長径線の中点を直交する直線を短径線として、それらの線上をEPMA(日本電子製JXA−8600M)により20μmの間隔で測定を実施し、その各測定点毎にZAF補正及び担持率補正を行い合計20本の長径線半径担持分布と長径線平均半径担持分布、20本の短径線半径担持分布及び短径線平均半径担持分布を求めた。この長径線平均半径担持分布及び短径線平均半径担持分布よりA比率を求め、更に、合計40本の半径担持分布(長径及び短径)からB比率を求めた。その結果を表−1に示した。
【0087】
(比較例10)
50mlのメスフラスコに金属テルル1.062gを入れ、続いて35重量%硝酸水溶液20gを入れて溶解し、これに10.0重量%硝酸パラジウム水溶液28.55gを加え、更に35重量%硝酸水溶液を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(CARiACT−Q−15)20.28gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により44.40gを得た。この触媒を200mlのナスフラスコに入れ毎分30回転の速度で回転させながら6.7Nl/分の窒素ガスを吹き込み、80℃で4時間、更に150℃で3時間保持して乾燥した。次にこの触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、窒素ガスを流しながら30分で150℃迄昇温した後0.42Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒21.79gを得た。この触媒はパラジウム5.1重量%及びテルル1.82重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0088】
(比較例11)
50mlのメスフラスコにテルル金属1.008gを入れ、続いて35重量%硝酸水溶液20gを加え溶解した。これに10.0重量%硝酸パラジウム水溶液27.10gを加え、更に35重量%硝酸水溶液を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(CARiACT−Q−15)25.11gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により54.28gを得た。この触媒の内28.2gを横型キルン(内径3cm、有効断面積7.1cm2)の中に入れ、毎分30回転の速度で回転させながら4.3Nl/分の窒素ガスを流し、60℃で5時間、更に150℃で2時間保持して乾燥した。次にこの触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、窒素ガスを流しながら30分で150℃迄昇温した後0.27Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒13.98gを得た。この触媒はパラジウム5.0重量%及びテルル1.86重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0089】
(比較例12)
50mlのメスフラスコに金属テルル0.988gを入れ、続いて35重量%硝酸水溶液20gを入れて溶解し、これに10.0重量%硝酸パラジウム水溶液26.52gを加え、更に35重量%硝酸水溶液を加える事により50mlへメスアップした。この溶液に球状シリカ担体(CARiACT−Q−15)20.47gを加え室温で1時間浸漬した後、これを濾過して溶液を除去し、更に遠心分離器で脱液する事により45.27gを得た。この触媒を内径2.5cm(有効断面積4.9cm2)のパイレックス(登録商標)ガラス管の中に入れ、0.017Nl/分の窒素ガスを流しながら90℃に於いて40時間、更に150℃に昇温して2時間乾燥した。次いで0.42Nl/分の水素に切り替え毎時50℃の割合で昇温し、400℃に2時間保持した後、窒素気流中で冷却し活性化処理した触媒21.91gを得た。この触媒はパラジウム4.9重量%及びテルル1.81重量%を含有していた。この触媒を使用した以外は実施例1と同様にブタジエンのアセトキシ化反応及び担持分布測定を行った。その結果を表−1に示した。
【0090】
実施例1及び比較例1〜12におけるパラジウムのA比率と活性との関係を表すグラフを図1に示した。この図より、本発明の触媒は極めて特異的に高活性であることが判る。
(実施例2)
実施例1と同一の触媒4gを内径12mm(有効断面積1.005cm2)のステンレス製反応管に充填し、反応圧力60kgf/cm2、反応温度80℃に於いてイソプレン81ミリモル/時、酢酸2.2モル/時、酸素6容量%を含有する窒素を100Nl/時の流量で流し、連続的に7時間、反応を実施した(イソプレンのジアセトキシ化反応)。この反応に於いて、反応開始後4〜5時間の間の反応液留分及び6〜7時間の間の反応液留分を各々ガスクロマトグラフィーにより1,4−ジアセトキシ−2−メチルブテン−2を定量し、その平均値をもって反応結果とした。反応結果より活性Yを求めた。その結果を、触媒の担持分布と併せて表−2に示した。
【0091】
(比較例13)
比較例4と同一の触媒を用いたこと以外は、実施例2と同様にイソプレンのジアセトキシ化反応を行った。その結果を表−2に示した。
【0092】
【表2】
(実施例3)
実施例1と同一の触媒8g及び酢酸140gを仕込んだ300mlのフラスコを窒素で置換した後に80℃のオイルバスに浸し、触媒が動く程度に撹拌する。その状態で酸素10容量%を含有する窒素を50Nml/分の流量で流しながら、ピペリレン16.6gを4時間かけてゆっくりと滴下し、それに引き続いて更に2時間加熱して合計6時間の反応を実施した(ピペリレンのジアセトキシ化反応)。その後窒素気流に切換えてから放冷、ろ過により触媒を分離して反応液127gを得た。この反応液をガスクロマトグラフィーによりジアセトキシペンテンを定量し、活性Yを求めた。その結果を表−3に示した。
【0093】
(比較例14)
比較例4と同一の触媒を用いたこと以外は、実施例3と同様にピペリレンのジアセトキシ化反応を行った。その結果を表−3に示した。
【0094】
【表3】
(実施例4)
実施例1と同一の触媒4gを内径12mm(有効断面積1.005cm2)のステンレス製反応管に充填し、反応圧力60kgf/cm2、反応温度80℃に於いてシクロヘキセン0.16モル/時、酢酸2.3モル/時、酸素6容量%を含有する窒素を100Nl/時の流量で流し、連続的に7時間反応を実施した(シクロヘキセンのアセトキシ化反応)。この反応に於いて、反応開始後4〜5時間の間の反応液留分及び6〜7時間の間の反応液留分を各々ガスクロマトグラフィーによりアセトキシシクロヘキセンを定量し、その平均値をもって反応結果とした。反応結果より活性Yを求め、その結果を表−4に示した。
【0095】
(比較例15)
比較例4と同一の触媒を用いたこと以外は、実施例4と同様にシクロヘキセンのアセトキシ化反応を行った。その結果を表−4に示した。
【0096】
【表4】
(実施例5)
実施例1と同一の触媒4gを内径12mm(有効断面積1.005cm2)のステンレス製反応管に充填し、反応圧力60kgf/cm2、反応温度80℃に於いてトルエン0.23モル/時、酢酸2.2モル/時、酸素6容量%を含有する窒素を100Nl/時の流量で流し、連続的に7時間反応を実施した(トルエンのアセトキシ化反応)。この反応に於いて、反応開始後4〜5時間の間の反応液留分及び6〜7時間の間の反応液留分を各々ガスクロマトグラフィーによりベンジルアセテート生成物を定量し、その平均値をもって反応結果とした。反応結果より活性Yを求め、その結果を表−5に示した。
【0097】
(比較例16)
比較例4と同一の触媒を用いたこと以外は、実施例5と同様にトルエンのアセトキシ化反応を行った。その結果を表−5に示した。
【0098】
【表5】
(実施例6)
実施例1と同一の触媒4gを内径12mm(有効断面積1.005cm2)のステンレス製反応管に充填し、反応圧力60kgf/cm2、反応温度80℃に於いてブタジエン0.15モル/時、メタノール3.1モル/時、酸素6容量%を含有する窒素を100Nl/時の流量で流し、連続的に7時間反応を実施した(ブタジエンのジメトキシ化反応)。この反応に於いて、反応開始後4〜5時間の間の反応液留分及び6〜7時間の間の反応液留分を各々ガスクロマトグラフィーにより1,4−ジメトキシブテン−2を定量し、その平均値をもって反応結果とした。反応結果より活性Yを求め、その結果を表−6に示した。
【0099】
(比較例17)
比較例4と同一の触媒を用いたこと以外は、実施例6と同様にブタジエンのジメトキシ化反応を行った。その結果を表−6に示した。
【0100】
【表6】
【0101】
【発明の効果】
本発明によれば、パラジウムとテルルを有効成分として無機多孔体に担持した固体触媒であって、工業的に十分満足できる高活性を発現する触媒を得ることができる。また、本発明の触媒及び分子状酸素の存在下、オレフィン又は芳香族化合物に酸素求核剤を酸化的付加させて対応する生成物を製造する方法において、これら生成物を、工業的に十分満足できる高収率で得ることができ、その工業的価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例及び比較例に係る、パラジウムのA比率(%)と、単位パラジウム当たりの触媒活性(mmol/mmol−Pd・h)との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例1における(A)パラジウムの平均担持分布、及び(B)テルルの平均担持分布を示すグラフである。
Claims (3)
- パラジウムとテルルを活性成分として無機多孔体に担持した固体触媒であって、EPMA(X線マイクロアナライザー)で測定された活性成分の担持分布において、担体表面から中心に対する半径の30%の深さ迄の表層部に、触媒に担持された全パラジウム及び触媒に担持された全テルルのそれぞれ99重量%以上が存在することを特徴とする固体触媒。
- 請求項1に記載の固体触媒及び分子状酸素の存在下、オレフィン又は芳香族化合物に、酸素求核剤を酸化的付加させて対応する生成物を製造することを特徴とする、オレフィン又は芳香族化合物と酸素求核剤との酸化的付加生成物の製造方法。
- 請求項1に記載の固体触媒及び分子状酸素の存在下、側鎖アルキル基を有する芳香族化合物に、酸素求核剤を酸化的付加させて対応する生成物を製造することを特徴とする、側鎖アルキル基を有する芳香族化合物と酸素求核剤との酸化的付加生成物の製造方法。
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