JP4851410B2 - ロジウム−テルル金属間化合物粒子及びその利用 - Google Patents

ロジウム−テルル金属間化合物粒子及びその利用 Download PDF

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Description

本発明は、ロジウム−テルル金属間化合物粒子の製造方法及びそれにより得られるロジウム−テルル金属間化合物粒子と、そのロジウム−テルル金属間化合物粒子を用いた酸化触媒、並びにその酸化触媒を用いた酸化的付加生成物の製造方法に関する。
共役ジエンの酸化的アシルオキシ化反応を行なう触媒として、工業的にはPdTe系触媒が使用されている。
これに対して、RhTe系触媒はPdTe系触媒よりも極めて高い選択性を有し、それが使用できれば、経済的に極めて優位になることから、RhTe系触媒の開発は極めて意義が大きい。しかし、RhTe系触媒は、反応中にRhが溶媒である酢酸中へ多量に溶解することにより、極めて短時間で活性が低下してしまうため、これまでのところ工業化には至っていない。
一方で、合金粒子を製造する一般的な技術として、金属塩を含有する溶液と還元剤を含有する溶液を混合し、その際に還元反応を進行させて合金粒子を得る方法が知られている。具体的には、非特許文献1に記載されている、加熱した還元溶媒に金属塩溶液を滴下する方法や、特許文献1に記載されている、加熱した金属塩溶液に還元剤溶液を滴下する方法等が採用されている。しかし、これらの方法では、還元剤と金属塩とが混合・拡散しながら還元反応が進行するため、金属塩の還元のされ方に差が生じ、結果的に不均質な合金粒子しか得ることができなかった。
その課題を改善するべく、還元反応の速度を高め、混合・拡散の影響を低減化することを目的に、特許文献2では、予め還元力の弱い第一の還元剤を金属塩溶液に混合した溶液を、強い還元力を有する第二の還元剤を含む溶液を加熱したものに滴下する方法が提案されているが、その効果は不十分であった。
また、非特許文献2には、錯化剤としてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用い、中性の条件で還元剤と接触させることが記載されているが、この方法では錯化したRh塩が析出する為、その後に還元操作を行なっても、金属間化合物を合成することは困難であった。
Journal of the American Chemical Society, 83, 4916, 1962 第96回触媒討論会予稿集、3E12、3E13. 特開昭61−12802号公報 米国特許4294608号公報
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の目的は、高純度のロジウム−テルル金属間化合物粒子を効率的に製造することが可能な方法と、その方法により製造された高純度のロジウム−テルル金属間化合物粒子を提供すること、並びに、ロジウム−テルル金属間化合物粒子を担体に担持させてなる酸化触媒であって、ロジウムが溶出し難く、経時劣化が少ない酸化触媒と、その酸化触媒を用いた酸化的付加生成物の製造方法を提供することに存する。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、硫黄原子及び/又は窒素原子を含む有機化合物を錯化剤として用い、ロジウム塩及びテルル塩並びに錯化剤を含有する溶液を還元剤と接触させることにより、高純度のロジウム−テルル金属間化合物粒子を効率的に製造することが可能となること、また、得られたロジウム−テルル金属間化合物粒子は、担体に担持させて酸化触媒とした場合に、活性種であるロジウムが溶出し難く、経時劣化が少ないことを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明の要旨は、ロジウム及びテルルからなる金属間化合物の粒子であって、粒子径が6〜16nmであり、ロジウムとテルルとの原子比が、3:2〜3:4であることを特徴とする、ロジウム−テルル金属間化合物粒子に存する(請求項1)。
ここで、ロジウムとテルルとの原子比が3:2、3:4又は1:1のいずれかであることが好ましい(請求項2)。
本発明の別の要旨は、本発明のロジウム−テルル金属間化合物粒子が担体に担持されてなることを特徴とする、酸化触媒に存する(請求項3)。
ここで、本発明の酸化触媒は、アシルオキシ化反応用触媒であることが好ましい(請求項4)。
本発明によれば、比較的簡単な方法により、高純度のロジウム−テルル金属間化合物粒子を、効率的に製造することが可能となる。
また、得られたロジウム−テルル金属間化合物粒子を担体に担持させてなる酸化触媒は、ロジウムが溶出し難く、経時劣化が少ないという利点を有する。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
[1.ロジウム−テルル金属間化合物粒子の製造方法]
本発明のロジウム−テルル金属間化合物粒子の製造方法(以下適宜「本発明の製造方法」と略称する。)は、ロジウム塩及びテルル塩並びに錯化剤を含有する溶液を還元剤と接触させる工程を有し、錯化剤が硫黄原子及び/又は窒素原子を含む有機化合物であることを特徴とする。
本発明においては、金属塩及び錯化剤並びに還元剤の種類、還元反応時のpHを制御することにより、金属塩の還元属度を制御し、均質なナノ金属間化合物を合成する。
[1−1.ロジウム塩]
本発明の製造方法に使用されるロジウム塩としては、無機化合物(ロジウムの酸化物、硝酸塩、硫酸塩等)、ハロゲン化物(ロジウムの塩化物等)、有機酸塩(ロジウムの酢酸塩等)、錯塩(ロジウムのアンミン錯体等)、有機金属化合物(ロジウムのアセトルアセトナート錯体等)等が挙げられる。また、ロジウム金属そのものを反応溶液中に溶解させて使用してもよい。
中でも、ロジウム塩としては、ロジウムを含有する無機化合物、ロジウムのハロゲン化物、又はロジウムを含有する有機金属化合物を用いることが好ましく、具体的には、ロジウムの塩化物を用いることが特に好ましい。
なお、ロジウム塩は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で組み合わせて用いてもよい。
[1−2.テルル塩]
本発明の製造方法に使用されるテルル塩としては、無機化合物(テルルの酸化物、硝酸塩テルル酸及びその塩類、亜テルル酸及びその塩類等)、ハロゲン化物(テルルの塩化物、臭化物等)、有機テルル化合物(ジフェニルジテルライド等)等が挙げられる。また、テルル金属そのものを反応溶液中に溶解して使用してもよい。
中でも、テルル塩としては、テルルを含有する無機化合物、テルルのハロゲン化物、テルルを含有する有機テルル化合物が好ましく、テルルを含有する無機酸化物又はテルルの塩化物がより好ましい。
特に、テルル塩としては、テルル酸及びその塩類並びに亜テルル酸及びその塩類からなる群より選択される化合物が最も好ましい。
なお、テルル塩は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で組み合わせて用いてもよい。
[1−3.錯化剤]
本発明の製造方法において、錯化剤は極めて重要な因子である。
本発明の製造方法は、錯化剤として、硫黄原子及び/又は窒素原子を含む有機化合物を使用することを特徴とする。
硫黄原子又は窒素原子を含む錯化剤の例としては、有機酸、リン化合物、オキシム類、アミド類、アミン類、アルコール類等が挙げられる。
有機酸の具体例としては、以下に挙げる化合物が挙げられる。
D−2−アミノ−3−メルカプト−3−メチルブタン酸(D-2-Amino-3-mercapto-3-methylbutanoic acid)(ペニシラミン(penicillamine):分子式C5112NS)、
イミノ二酢酸(Iminodiacetic acid)(略称IDA:C474N)、
(N−シクロヘキシル)イミノ二酢酸(N-(Cyclohexyl)iminodiacetic acid)(分子式C10174N)、
ニトリロ三酢酸(Nitrilotriacetic acid)(略称NTA:分子式C696N)、
N−(2−テトラヒドロピラニルメチル)イミノ二酢酸(N-(2-Tetrahydro pyranylmethyl)iminodiacetic acid)(分子式C10175N)、
N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジニトリロ−N,N’,N’−三酢酸(N-(2-Hydroxyethyl)ethylenedinitrilo-N,N',N'-triacetic acid)(略称HEDTA:分子式C101872)、
エチレンジニトリロ四酢酸(Ethylenedinitrilotetraacetic acid)(略称EDTA:分子式C101682)、
DL−(メチルエチレン)ジニトリロ四酢酸(DL-(Methylethylene)dinitrilotetraacetic acid)(略称PDTA:分子式C111882)、
トランス−1,2−シクロヘキシレンジニトリロ四酢酸(trans-1,2-Cyclohexylene dinitrilotetraacetic acid)(略称CDTA:分子式C142282)、
エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸(Ethylenebis(oxyethylenenitrilo) tetraacetic acid)(略称EGTA:分子式C1424102)、
ジエチレントリニトリロ四酢酸(Diethylenetrinitrilotetraacetic acid)(略称DTPA:分子式C1423103)、
トリエチレンテトラニトリロ六酢酸(Triethylenetetranitrilohexaacetic acid)(略称TTHA:分子式C1830124)、
6−メチルピリジン−2−カルボン酸(6-Methlpyridine-2-carboxylic acid)(分子式C772N)、
N−(2−ピリジルメチル)イミノ二酢酸(N-(2-Pyridylmethyl)iminodiacetic acid)(分子式C101242)、
式Z−SCH2CO2Hで表わされる(置換チオ)酢酸((Substituted thio)acetic acid)(前記式中、Zは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素数1〜30のアルキル基;2−プロペニル(Prop-2-enyl)基、3−ブテニル(But-3-enyl)基、4−ペンテニル(Pent-4-enyl)基等の炭素数2〜30のアルケニル基;ベンジル基等の炭素数6〜30のアリール基を表わす。)、
DL−メルカプトブタン二酸(DL-Mercaptobutanedioic acid)(チオリンゴ酸(thiomalic acid):分子式C464S)、
(エチレンジチオ)二酢酸((Ethylenedithio)diacetic acid)(分子式C61042)、
オキシビス(エチレンチオ酢酸)(Oxybis(ethylenethioacetic acid))(分子式C81452)、
チオビス(エチレンチオ酢酸)(Thiobis(ethylenethioacetic acid))(分子式C81443)、
カルボキシメチルチオブタン二酸(Carboxymethylthiobutanedioic acid)(分子式C686S)、
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−メルカプトプロパノール(2,2-Bis(hydroxy methyl)-3-mercaptopropanol)(モノチオペンタエリスチトール(monothio pentaerythtitol):分子式C5123S)、
チオサリチル酸酸(Thiosalicylic acid)(略称TS:分子式C762S)。
リン化合物の具体例としては、3−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルフォン酸(3-(Diphenylphosphino) benzenesulfonic acid)(3−スルホトリフェニルホスフィン(3-sulfotriphenylphosphine):分子式C18153SP)等が挙げられる。
オキシム類の具体例としては、ブタン−2,3−ジオンジオキシム(Butane-2,3-dion dioxime)(ジメチルグリオキシム(dimethylglyoxime):分子式C4822)、1,2−ジフェニルエタン−1,2−ジオキシム(1,2-Diphenylethane-1,2-dione dioxime)(慣用名α−ベンジルジオキシム(α-benzil dioxime):分子式C141222)、等が挙げられる。
アミド類の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
チオカルバミド(Thiocarbamide)(チオ尿素(thiourea):分子式CH42S)、
モノチオカルバミド(Monothiooxamide)(分子式C24ON2S)、
N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)モノチオオキシアミド(N,N'-Bis(2-hydroxyethyl)monothiooxamide)(分子式C61232S)、
N,N’−ビス(3−ヒドロキシプロピル)モノチオオキシアミド(N,N'-Bis(3-hydroxypropyl)monothiooxamide)(分子式C81632S)、
N,N’−ビス(4−ヒドロキシブチル)モノチオオキシアミド(N,N'-Bis(4-hydroxybutyl)monothiooxamide)(分子式C102032S)、
N,N’−ビス(5−ヒドロキシペンチル)モノチオオキシアミド(N,N'-Bis(5-hydroxypentyl)monothiooxamide)(分子式C122432S)、
N,N’−ビス(2−スルフォエチル)ジチオオキシアミド(N,N'-Bis(2-sulfoethyl) dithiooxamide)(分子式C612624)。
アミン類の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
メチルアミン(Methylamine)(分子式CH5N)、
エチルアミン(Ethylamine)(分子式C27N)、
プロピルアミン(Propylamine)(分子式C39N)、
ブチルアミン(Butylamine)(分子式C411N)、
ペンチルアミン(Pentylamine)(分子式C513N)、
ヘキシルアミン(Hexylamine)(分子式C615N)、
イソブチルアミン(Isobutylamine)(分子式C411N)、
2−アミノエタノール(2-Aminoethanol)(エタノールアミン(ethanolamine):分子式C27ON)、
エチレンジアミン(Ethylenediamine)(分子式C282)、
トリメチレンジアミン(Trimethylenediamine)(分子式C3102)、
テトラエチレンジアミン(Tetraethylenediamine)(分子式C4122)、
ペンタメチレンジアミン(Pentamethylenediamine)(分子式C5142)、
1,3−ジアミノ−2−プロパノール(1,3-Diamino-2-propanol)(2−ヒドロキシトリメチレンジアミン(2-hydroxytrimethylenediamine):分子式C310ON2)、
オキシビス(2−エチルアミン)(Oxybis(2-ethylamine))(1,7−ジアザ−4−オキサヘプタン(1,7-Diaza-4-oxaheptane):分子式C412ON2)、
エチレンビス(オキシ−2−エチルアミン)(Ethylenebis(oxy-2-ethylamine))(1,10−ジアザ−4,7−ジオキサデカン(1,10-diaza-4,7-dioxadecane):分子式C61622)、
チオビス(2−エチルアミン)(Thiobis(2-ethylamine))(1,7−ジアザ−4−チアヘプタン(1,7-diaza-4-thiaheptane):分子式C4122S)、
1,2,3−トリアミノプロパン(1,2,3-Triaminopropane)(分子式C3113)、
トリス(アミノメチル)メタン(Tris(aminomethyl)methane)(分子式C4133)、
ジメチルアミン(Dimethylamine)(分子式C27N)、
1,4,7−トリアザヘプタン(1,4,7-Triazaheptane)(分子式C4133)。
アルコール類の具体例としては、1,3−ジヒドロキシ−4−(2−ピリジルアゾ)ベンゼン(1,3-dihydroxy-4-(2-pyridylazo)benzene)(略称PAR:分子式C11923)が挙げられる。
中でも、錯化剤としては、有機酸又はアルコール類が好ましく、具体的には、以下に挙げる化合物が好ましい。
オキシビス(エチレンチオ酢酸)(Oxybis(ethylenethioacetic acid))(分子式C81452)、
N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジニトリロ−N,N’,N’−三酢酸(N-(2-Hydroxyethyl)ethylenedinitrilo-N,N',N'-triacetic acid)(略称HEDTA:組成式C101872)、
エチレンジニトリロ四酢酸(Ethylenedinitrilotetraacetic acid)(略称EDTA:組成式C101682)、
3−(ジフェニルホスフィノ)ベンゼンスルフォン酸(3-(Diphenylphosphino)benzene sulfonic acid)(3−スルホトリフェニルホスフィン(3-sulfotriphenylphosphine):分子式C18153SP)、
DL−メルカプトブタン二酸(DL-Mercaptobutanedioic acid)(チオリンゴ酸(thiomalic acid):組成式C464S)、
チオサリチル酸酸(Thiosalicylic acid)(略称TS:組成式C762S)、
1,3−ジヒドロキシ−4−(2−ピリジルアゾ)ベンゼン(1,3-dihydroxy-4-(2-pyridylazo)benzene)(略称PAR:組成式C11923)。
中でも、錯化剤としては、
エチレンジニトリロ四酢酸(Ethylenedinitrilotetraacetic acid)(略称EDTA:組成式C101682)、
チオサリチル酸酸(Thiosalicylic acid)(略称TS:組成式C762S)、
1,3−ジヒドロキシ−4−(2−ピリジルアゾ)ベンゼン(1,3-dihydroxy-4-(2-pyridylazo)benzene)(略称PAR:組成式C11923
が、より好ましい。
特に、
チオサリチル酸酸(Thiosalicylic acid)(略称TS:組成式C762S)、
1,3−ジヒドロキシ−4−(2−ピリジルアゾ)ベンゼン(1,3-dihydroxy-4-(2-pyridylazo)benzene)(略称PAR:組成式C11923
が、とりわけ好ましい。
なお、上記例示の各種の錯化剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、必要に応じて、以下に挙げる第二の錯化剤を使用してもよい。特に、テルル塩としてテルル酸を使用した場合には、第二の錯化剤を使用する方が望ましい。
第二の錯化剤としては、カルボキシル基及び/又は水酸基を有し、水に可溶な錯化剤が挙げられる。具体例としては、クエン酸、マロン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、マレイン酸、フタル酸、酸性アミノ酸、中性アミノ酸、塩基性アミノ酸等が挙げられる。中でも、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸が好ましく、更には、クエン酸が最も好ましい。
なお、上記例示の第二の錯化剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[1−4.金属塩溶液]
本発明の製造方法では、ロジウム塩及びテルル塩並びに錯化剤を溶媒に溶解させた溶液(以下「金属塩溶液」という。)を用いて、後述の還元反応を行なう。
溶媒の種類は、本発明の課題を解決し効果を奏する限り何ら制限されないが、通常は水または有機溶媒が使用される。有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール等のアルコール類が挙げられる。
中でも、溶媒としては、pHを制御しやすいという観点から、水が好ましく、特に蒸留水を用いることが好ましい。
なお、溶媒は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上述の溶媒にロジウム塩、テルル塩、及び錯化剤を混合し、ロジウム塩及びテルル塩を錯化して、ロジウム及びテルルを金属錯体の状態で溶媒中に溶解させることにより、金属塩溶液を得る。
なお、本発明の製造方法では、還元剤により還元反応が進行する時点で、ロジウム塩及びテルル塩及び錯化剤が金属塩溶液中に完全に溶解し、析出のない均一な溶液となっていることが重要である。
以上の点が達成出来れば、各金属塩(ロジウム塩及びテルル塩)や錯化剤を溶解・混合する方法は、特に制限されるものではない。各金属塩や錯化剤を各々溶媒に溶解してから混合してもよく、金属塩及び錯化剤を先に混合してから溶媒に溶解してもよい。
但し、金属塩溶液の析出を防ぐために、溶媒に対する金属塩(ロジウム塩及びテルル塩)及び錯化剤の濃度や混合・溶解時の温度を適切に選択することが望ましい。
即ち、金属塩溶液中における各金属塩(ロジウム塩及びテルル塩)及び錯化剤の濃度を、それぞれ、各金属塩(ロジウム塩及びテルル塩)及び錯化剤の飽和溶解度以下の濃度とする。飽和溶解度は、各金属塩及び錯化剤の種類や溶媒の種類、溶解時の温度等により異なるため、それに応じて各金属塩(ロジウム塩及びテルル塩)及び錯化剤の濃度を選択すればよい。
一般に、金属塩溶液に対する各金属塩(ロジウム塩及びテルル塩)の濃度は、金属重量換算で、何れも通常0.001重量%以上、中でも0.005重量%以上、更には0.01重量%以上、また、通常10重量%以下、中でも5重量%以下、更には2重量%以下の範囲であることが好ましい。
また、金属塩(ロジウム塩及びテルル塩)における各金属原子(ロジウム及びテルル)の含有量の比率は、目的とするロジウム−テルル金属間化合物の組成にほぼ一致した各金属原子仕込み比率とする。
金属塩(ロジウム塩及びテルル塩)が有する金属原子(ロジウム及びテルル)に対する錯化剤の使用量の比率は、金属に配位する量論比以上であればよいが、錯化剤の比率が高過ぎると、溶解度の関係で結果的に金属濃度が低くなり、一回の操作で担持できる金属量が少なくなってしまう場合があり、また経済的にも好ましくない場合がある。一般的には、量論比の通常1.0倍以上、また、通常10倍以下、中でも5倍以下、更には2倍以下、特に1.5倍以下の範囲が好ましい。
なお、金属塩溶液は、後述の還元反応を妨げない範囲において、上述のロジウム塩、テルル塩、錯化剤、及び溶媒に加え、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例としては、ロジウム及びテルル以外の金属原子を有する金属塩等が挙げられる。なお、これらは一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[1−5.還元反応]
本発明の製造方法は、ロジウム塩及びテルル塩並びに錯化剤を含有する溶液(金属塩溶液)を、還元剤と接触させて還元反応を行なう工程を有する。
本発明の製造方法に使用される還元剤は、金属塩溶液の溶媒に可溶なものであれば、その種類は制限されない。
還元剤の具体例としては、ヒドラジン等の窒素化合物、水素化ホウ素ナトリウム等のホウ素化合物、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類、ギ酸及びその塩等のカルボン酸類、メタノール等のアルコール類、等が挙げられる。
中でも、還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジンが好ましい。
なお、上記例示の還元剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
還元剤の使用量としては、上記の金属塩溶液中に含有される全ての金属錯体を、十分に金属に還元できる量が好ましい。
一般的には、金属1当量に対して、通常1倍当量以上であればよく、還元反応の効率を考慮すれば、好ましくは1.2倍当量以上、より好ましくは1.5倍当量以上、更に好ましくは2倍当量以上が望ましい。また、未反応物の後処理等を考慮すると、上限としては通常、500倍当量以下、中でも100倍当量以下、更には40倍当量以下が好ましい。
なお、還元剤としてヒドラジンを使用する場合、ヒドラジンによる還元反応は還元される金属塩の種類やpH等、条件により還元反応が異なることが知られており、ヒドラジンの還元当量を一律で特定できないので、本発明においては、ヒドラジン1モル当たり2当量とする。
金属塩溶液と還元剤とを接触させる方法は制限されない。通常は、上述の金属塩溶液に還元剤を加えて混合し、還元反応を行なえばよい。
なお、金属塩溶液に還元剤を直接加えて混合してもよいが、金属塩溶液に対する混合・溶解を容易にするために、還元剤を予め溶媒に溶解させておき、この溶液(還元剤溶液)を金属塩溶液に加えて混合してもよい。
この場合、溶媒としては、還元剤を溶解させることが可能なものであれば、その種類は制限されない。また、一種の溶媒を単独で用いてもよく、二種以上の溶媒を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。但し、通常は金属塩溶液の溶媒と同種の溶媒を用いる。
還元剤溶液における還元剤の濃度や、還元剤溶液の使用量も特に制限されない。還元剤溶液を金属塩溶液に加えた場合に、金属塩溶液中の金属に対する還元剤の量が上記範囲を満たすように、適宜調整すればよい。
還元反応時の温度は、通常55℃以上、好ましくは70℃以上、また、通常沸点以下、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下の範囲である。還元反応時の温度が高過ぎると、還元反応が速く進行する為、目的の金属間化合物以外が生成する場合がある一方、温度が低過ぎると、還元力が弱すぎて目的の金属間化合物を得ることができない場合がある。なお、以下の記載では上記規定の温度範囲を「規定温度範囲」という。
なお、還元反応を開始する手順としては、以下の二つの手法が挙げられるが、何れの手順を用いてもよい。
・還元剤を加えても還元反応が進行しない程度の低い温度(上記規定還元温度範囲未満の温度。通常は常温以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは5℃以下)において、金属塩溶液に還元剤(還元剤溶液)を加えて混合し、その後に還元反応が進行するのに十分な温度(上記規定温度範囲内の温度)まで昇温する手法。
・金属塩の還元反応が十分に進行する温度(上記規定温度範囲内の温度)まで金属塩溶液を予め加熱しておき、その状態で還元剤を加えて還元反応を開始する手法。
また、還元反応時には、反応液(金属塩溶液に還元剤を加えた液)をアルカリ性に調整することが好ましい。具体的には、反応液のpHを通常10以上、好ましくは12以上、更に好ましくは13以上とすることが望ましい。反応液のpHが低過ぎる(即ち、アルカリ性が弱過ぎる)と、Rh錯体を形成できない場合がある。
反応液のpHを調整する手法は制限されないが、通常はpH調整剤を用いる。
pH調整剤としては、金属塩中の金属(ロジウム及びテルル)と配位しないか、或いは錯化剤による金属の錯体形成を阻害しないほどの配位の程度が低い化合物であれば、その種類は制限されない。
pH調整剤の例としては、塩酸、硝酸、硫酸、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。中でも、塩酸、硝酸、水酸化ナトリウムが好ましい。
なお、pH調整剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
pH調整剤を用いてpHを調整する手順は制限されない。還元反応が進行する前に、金属塩が析出しない状態を保持したまま、反応液のpHを上記規定範囲内に調整することが出来ればよい。具体的には、以下の手順が挙げられるが、何れであってもよい。
・ロジウム塩、テルル塩及び錯化剤を各々別々に溶媒に溶解させた後、これらの溶液を混合して金属塩溶液を調製する前に、各溶液のpHをpH調整剤により個別に調整する。
・ロジウム塩、テルル塩及び錯化剤を含有する金属塩溶液を調製した後、還元反応に供する前に、この金属塩溶液のpHをpH調整剤により調整する。
・金属塩溶液を調製し、還元反応が進行しない温度条件(上記規定温度範囲未満の温度条件)下で還元剤を加えた後、還元反応が進行する温度条件(上記規定温度範囲内の温度条件)に反応液を加熱する前に、この反応液のpHをpH調整剤により調整する。
なお、pH調整剤によるpHの調整は、一回で行なってもよいが、二回以上に分けて行なってもよい。
[1−6.後処理]
上述の還元反応により、ロジウム−テルル金属間化合物粒子が得られる。得られたロジウム−テルル金属間化合物粒子は、そのまま用いてもよいが、必要に応じて分離、洗浄、乾燥、熱処理等の後処理を加えてもよい。
得られたロジウム−テルル金属間化合物粒子を反応液から分離する方法としては、限定されるものではないが、例えば濾紙や濾布を用いた濾過法、遠心分離、沈降分離(デカンテーション等)等が挙げられる。中でも、一般的には濾過法が採用される。これらの手法は何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。
分離されたロジウム−テルル金属間化合物粒子を洗浄する場合、洗浄に用いる溶剤(洗浄溶剤)としては、ロジウム−テルル金属間化合物粒子と反応を生じるものや、ロジウム−テルル金属間化合物粒子の用途(触媒等の用途)に好ましからぬ影響を与えるものでない限り、限定されるものではないが、通常は上述の金属塩溶液に用いた溶媒と同種の溶媒が挙げられる。なお、洗浄溶剤は、何れか一種を単独で使用してもよく、任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
分離(又は洗浄)後のロジウム−テルル金属間化合物粒子を乾燥する場合、乾燥時の圧力は制限されるものではなく、常圧でも、減圧(又は真空)でも、加圧でもよいが、一般的には、常圧付近(常圧又は多少の加減圧)の条件下で乾燥を行なう。
乾燥方式としては、オーブン等の静置式乾燥、キルンやロータリーエバポレーターのような回転式乾燥、固定床気流乾燥、流動床乾燥、スプレードライヤー等の噴霧乾燥、ベルト炉等の移送型乾燥等が挙げられるが、何れを用いてもよい。
乾燥方式の選定は処理量等に応じて決定されるが、何れの乾燥方式を用いる場合でも、ガスを流通させながら乾燥させるのが望ましい。
乾燥時に流通させるガスとしては、限定されるものではないが、経済的観点から、通常は空気、窒素等が使用される。また、ロジウム−テルル金属間化合物粒子の水素処理を行なう場合には、乾燥時に流通させるガスに水素を加えてもよい。
一方、乾燥後に水素処理をすることなくロジウム−テルル金属間化合物粒子を所望の用途に用いる場合には、不活性ガスが好ましく、経済的観点からは窒素が好ましい。なお、これらのガスは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
また、高速に乾燥を行う観点からは、過熱水蒸気の流通下で乾燥を行なうことも好ましい。
乾燥時の温度も特に制限されない。残留する溶媒又は洗浄溶剤の融点以下で乾燥する凍結乾燥でも、残留する溶媒又は洗浄溶剤の融点から室温までの温度で乾燥する低温乾燥又は常温乾燥、室温よりも高い温度で残留する溶媒又は洗浄溶剤の蒸気圧を高める加熱乾燥の何れであってもよいが、一般的には加熱乾燥が用いられる。加熱乾燥の場合、乾燥温度は通常40℃以上、300℃以下の範囲である。流通させるガスが過熱水蒸気以外の場合には、急激な突沸を防ぐ観点から、残留する溶媒又は洗浄溶剤の沸点以下の温度で処理される。
乾燥後のロジウム−テルル金属間化合物粒子に熱処理を行なう場合、熱処理の方式としては、オーブン等の静置式、キルンやロータリーエバポレーター等の回転式、固定床、流動床、ベルト炉等の移送式等が挙げられるが、何れを採用してもよい。
乾燥方式の選定は処理量等に応じて決定されるが、何れの乾燥方式を用いる場合でも、ガスを流通させながら乾燥させるのが望ましい。
流通させるガスとしては、酸素を含まないガスが好ましい。具体的には、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス、水素等が挙げられる。これらのガスは何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。中でも、窒素又は水素を単独で、或いは混合物として用いることが好ましい。
熱処理の温度の下限は、通常100℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上、更に好ましくは300℃以上である。
熱処理の温度の上限は、通常はロジウム−テルル金属間化合物粒子の融点以下であればよいが、高過ぎるとロジウム−テルル金属間化合物粒子がシンタリングにより大きくなり、金属表面積が低下することによって、得られたロジウム−テルル金属間化合物粒子を触媒用途に使用した場合における触媒活性が低下する。従って、触媒の活性を向上させる観点からは、熱処理の温度の上限は、通常800℃以下、中でも600℃以下、更には500℃以下が好ましい。
[2.ロジウム−テルル金属間化合物粒子]
本発明の製造方法により得られたロジウム−テルル金属間化合物粒子(以下「本発明のロジウム−テルル金属間化合物粒子」或いは単に「本発明の粒子」という。)は、通常は、高純度のロジウム及びテルルからなる金属間化合物である。
ここで、本発明の粒子は金属間化合物であり、アモルファス合金やコロイド粒子ではない点に留意すべきである。本発明の粒子が金属間化合物であることは、実施例で検証されているように、粉末X線回折測定の結果から確認できる。
なお、本明細書において「金属間化合物」とは、2種以上の金属元素が簡単な整数比で結合してできた化合物で、成分金属元素と異なる特有の物理的・化学的性質を示す化合物をいう。
Journal of Phase Equilibria, 12(1), 1991によると、ロジウム及びテルルからなる金属間化合物としては、例えばRh3Te2、RhTe0.9、Rh1Te1、Rh3Te4、Rh3Te8等の存在が示されている。このように、本発明のロジウム−テルル金属間化合物粒子は、ロジウムとテルルとの原子比が、3:2〜3:4であることが好ましく、3:2、3:4又は1:1のいずれかであることがより好ましい。
本発明のロジウム−テルル金属間化合物粒子の形状は、制限されるものではないが、通常は、平均粒径1nm以上100nm以下程度の一次粒子が凝集して二次粒子を形成した凝集体である。これは、粒子表面が保護基によって覆われているコロイド粒子とは全く異なる形状である。
また、本発明のロジウム−テルル金属間化合物粒子の粒子径は、6nm以上16nm以下であることが好ましい。
本発明のロジウム−テルル金属間化合物粒子の用途は、制限されるものではないが、例えば以下に説明するように、酸化反応用の触媒(酸化触媒)として広く用いることが可能である。中でも、アシルオキシ化反応用触媒として用いて好適である。
[3.酸化触媒]
本発明のロジウム−テルル金属間化合物粒子を酸化触媒として使用する場合には、還元反応により得られたロジウム−テルル金属間化合物粒子をそのまま用いてもよい。この場合、還元反応後の反応液に酸化反応の反応基質を加えて、酸化反応を行なうことが可能である。
また、還元反応により得られたロジウム−テルル金属間化合物粒子に、上述した任意の後処理(分離、洗浄、乾燥、熱処理等)を加えた上で、酸化触媒としての用途に供してもよい。
但し、一次粒子の分散性を向上させる観点からは、本発明のロジウム−テルル金属間化合物粒子を多孔質の担体に担持させた状態で、酸化触媒として使用することが好ましい。
以下、本発明のロジウム−テルル金属間化合物粒子を多孔質の担体に担持させてなる酸化触媒(これを「本発明の酸化触媒」と略称する。)について説明する。
担体としては、制限されるものではないが、通常は無機多孔体が用いられる。無機多孔体の例としては、活性炭、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化アルミニウム(Al23)、二酸化チタン(TiO2)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(SiN)等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。これらの無機多孔体の中でも、担体としては活性炭、二酸化ケイ素(SiO2)が好ましい。
担体は必要に応じて表面処理してから用いてもよい。例えば、二酸化ケイ素(SiO2)の表面をカーボンでコーティングしてから使用してもよい。
本発明のロジウム−テルル金属間化合物粒子を担体に担持させる方法は、限定されるものではないが、例えば、還元反応が進行しない温度(上記規定温度範囲未満の温度)において金属塩溶液と還元剤とを混合した後に、得られた混合溶液を担体の細孔内へ含浸させ、還元反応が進行する温度(上記規定温度範囲内の温度)まで加熱することにより、還元反応を進行させて本発明のロジウム−テルル金属間化合物粒子を合成しながら、担体の細孔内へ担持させればよい。
本発明の酸化触媒は、液相反応での使用が好ましい。即ち、反応時に、基質及び酸素求核剤のうち、少なくとも1つ以上が液状で本発明の酸化触媒と接触することが好ましい。
中でも、本発明の酸化触媒は、オレフィン又は芳香族化合物に酸素求核剤を酸化的付加させる反応(酸化的付加反応)と、これを用いた酸化的付加生成物の製造方法に適用すると、高い効果が得られるので好ましい。この場合、酸素求核剤は、例えばオレフィン又は芳香族化合物の不飽和結合部位または芳香族の側鎖に対して酸化的付加反応を行なう。
本発明の酸化触媒を使用可能な酸化的付加反応の例としては、オレフィンの酸化によるアルデヒド合成、オキシクロリネーションや酸化的アシロキシ化、酸化的シアノ化、酸化的アルコキシ化等のオキシアニオニゼーション、オレフィン及び/又は芳香族のカップリング反応、酸化的カルボキシル化等が挙げられる。
オキシクロリネーションの具体例としては、エチレンからの塩化ビニル合成、プロピレンからの塩化アリル合成、ブタジエンからのジククロロブテン合成、イソプレンからのジクロロメチルブテン合成、ベンゼンからのクロロベンゼン合成、トルエンやキシレンの側鎖クロロ化等が挙げられる。
アシロキシ化の具体例としては、エチレンから酢酸ビニルで代表されるようなアシロキシビニル合成、ブタジエンからのジアシロキシブテン合成、イソプレンからのジアシロキシメチルブテン合成、ベンゼンからのアシロキシベンゼン合成、トルエンやキシレンの側鎖アシロキシ化等が挙げられる。
シアノ化の具体例としては、エチレンからのアクリロニトリル合成、ブタジエンからのジシアノブテン合成、イソプレンからのジシアノメチルブテン合成、ベンゼンからのシアノベンゼン合成、トルエンやキシレンの側鎖シアノ化等が挙げられる。
アルコキシ化の具体例としては、エチレンからのメチルエチルエーテル合成、ブタジエンからのジアルコキシブテン合成、イソプレンからのジアルコキシメチルブテン合成、ベンゼンからのアルコキシベンゼン合成、トルエンやキシレンの側鎖アルコキシ化等が挙げられる。
カップリング反応の具体例としては、ベンゼンからのビフェニル合成、トルエンからのメチルベンゼン二量体合成、酢酸ビニルからのジアセトキシブタジエン合成、スチレンとベンゼンからのスチルベン合成、スチレン又はスチレンとベンゼンからのトリフェニルベンゼン及びテトラフェニルベンゼン合成等が挙げられる。
酸化的カルボキシル化の具体例としては、エチレンと一酸化炭素からのアクリル酸合成、一酸化炭素とアルコールからのシュウ酸ジエステル合成、エチレンと一酸化炭素及びアルコールからのコハク酸ジエステル合成、ブタジエンと一酸化炭素及びアルコールからのアジピン酸エステル類の合成等が挙げられる。
アルデヒド合成の具体例としては、エチレンからのアセトアルデヒド合成等が挙げられる。
中でも、本発明の酸化触媒は、液相酸化的アシロキシ化及び/又はアルコキシ化反応用の触媒として用いると、活性が極めて高く好ましい。
或いは、本発明の酸化触媒は、側鎖アルキル基を有する芳香族化合物に酸素求核剤を酸化的付加させる反応(酸化的付加反応)と、これを用いた酸化的付加生成物の製造方法に適用しても効果が高い。この場合、酸素求核剤は、例えば側鎖アルキル基の芳香環に隣接した炭素に酸化的付加することになる。
[4.酸化的付加生成物の製造方法]
続いて、本発明の酸化触媒を用いて、オレフィン又は芳香族化合物(若しくは側鎖アルキル基を有する芳香族化合物)に酸素求核剤を酸化的付加させる反応(酸化的付加反応)を行なうことにより、酸化的付加生成物を製造する方法(以下「本発明の酸化的付加生成物の製造方法」と称する。)について説明する。
本発明の酸化的付加生成物の製造方法は、本発明の酸化触媒及び分子状酸素の存在下、オレフィン又は芳香族化合物に酸素求核剤を酸化的付加させることにより、酸化的付加生成物を製造するものである。
本発明の酸化的付加生成物の製造方法において原料として使用されるオレフィン(以下「原料オレフィン」という。)は、反応に好ましからぬ影響を与えないものであれば、その種類に制限はないが、直鎖若しくは分岐状の鎖状オレフィン、又は、単環、多環又は縮合環式のシクロオレフィンが好ましく、中でも直鎖若しくは分岐状の鎖状オレフィン又は単環のシクロオレフィンが好ましい。
原料オレフィンは、本発明の酸化反応に好ましからぬ影響を与えない範囲において、置換基を有していてもよい。
置換基の例としては、アリル基、アリール基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アシロキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基等が挙げられる。
原料オレフィンが有する上述の置換基の数は、オレフィン一分子当たり、通常0以上、また、通常3以下、好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。原料オレフィンが二以上の置換基を有する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
直鎖若しくは分岐状の鎖状オレフィンの炭素数は、通常2以上、通常30以下、好ましくは12以下、より好ましくは10以下の範囲である。
単環、多環又は縮合環式のシクロオレフィンの炭素数は、通常4以上、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、また、通常30以下、好ましくは12以下、より好ましくは10以下の範囲である。
なお、原料オレフィンが置換基を有する場合には、それらの置換基も含めた全体の炭素数が、上記範囲を満たすことが好ましい。
原料オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、2,3−ジメチルブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ブタジエン、シクロヘキサジエン等が挙げられる。
中でも、原料オレフィンとしては、共役ジエンが好ましい。
共役ジエンの具体例としては、ブタジエン、アルキル置換ブタジエン(イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチルブタジエン等)、ピペリレン(1,3−ペンタジエン)、1,4−ヘキサジエン、環状共役ジエン(シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等)などが挙げられる。
中でも、共役ジエンとしては、ブタジエン、ピペリレン、アルキル置換ブタジエンが好ましく、ブタジエン又はアルキル置換ブタジエンが特に好ましい。
中でも、原料オレフィンとしては、シクロオレフィンも好ましい。
シクロオレフィンの具体例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン等が挙げられるが、シクロヘキセンが特に好ましい。
なお、これらの原料オレフィンは、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の酸化的付加生成物の製造方法において原料として使用される芳香族化合物(以下「原料芳香族化合物」という。)は、反応に好ましからぬ影響を与えないものであれば、その種類に制限はない。例としては、単環又は縮合環の芳香族化合物が挙げられる。縮合環の場合、その環数は通常2以上、また、通常10以下、好ましくは6以下、より好ましくは3以下である。これらの中でも、原料芳香族化合物としては、単環又は2環の縮合環の芳香族化合物が好ましく、単環の芳香族化合物がより好ましい。
原料芳香族化合物は、本発明の酸化反応に好ましからぬ影響を与えない範囲において、置換基を有していてもよい。
置換基の例としては、アルキル基、アリル基、アリール基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミド基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基、ホルミル基、アシロキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基から選ばれる少なくとも一つの置換基が挙げられる。
原料芳香族化合物が有する上述の置換基の数は、芳香族化合物一分子当たり、通常0以上、また、通常3以下、好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。原料芳香族化合物が二以上の置換基を有する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
原料芳香族化合物の具体例としては、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、ジエチルベンゼン、o−クロロトルエン、m−クロロトルエン、p−クロロトルエン、ジクロロトルエン、o−ニトロトルエン、m−ニトロトルエン、p−ニトロトルエン、o−メトキシトルエン、m−メトキシトルエン、p−メトキシトルエン、o−フェノキシトルエン、m−フェノキシトルエン、p−フェノキシトルエン、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−メチルベンジルアルコール、m−メチルベンジルアルコール、p−メチルベンジルアルコール等が挙げられる。
なお、これらの原料芳香族化合物は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記例示の原料オレフィン又は原料芳香族化合物に対して、酸素求核剤は、例えばその不飽和結合部位に酸化的付加反応を行なう。
本発明の酸化的付加生成物の製造方法の具体例としては、共役ジエンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応する不飽和グリコールジエステルを製造する方法、共役ジエンとアルコール及び分子状酸素を反応させて対応する不飽和グリコールジエーテルを製造する方法、シクロヘキセンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応するアシロキシシクロヘキセンを製造する方法、アルキルベンゼンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させて対応するアシロキシアルキルベンゼンを製造する方法等が挙げられる。
上記具体例において、共役ジエンは、上述のようにブタジエン、ピペリレン、及びアルキル置換ブタジエンから選択されることが好ましい。また、カルボン酸は、酢酸であることが好ましい。
以下の記載では、上記具体例のうち、共役ジエンとカルボン酸及び分子状酸素を反応させてアシロキシ化することにより、対応する不飽和グリコールジエステルを製造する場合を主に取り上げて、本発明の酸化的付加生成物の製造方法の詳細を説明する。
反応原料である共役ジエンとしては、上述のように、ブタジエン、アルキル置換ブタジエン(イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチルブタジエン等。)、ピペリレン(1,3−ペンタジエン)、1,4−ヘキサジエン、環状共役ジエン(シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等)などを使用することができる。中でも、ブタジエン、ピペリレン、アルキル置換ブタジエンが好ましい。
反応原料である共役ジエンは、必ずしも純粋なものである必要はなく、窒素ガスのような不活性ガスや、メタン、エタン、ブタン等の飽和炭化水素、ブテン等の不飽和炭化水素等、その他の成分を含むものであってもよい。但し、その場合でも、その他の成分は微量であることが好ましい。具体的には、共役ジエン及びその他の成分に対する共役ジエンの割合が、通常10重量%以上、好ましくは50重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
他方の反応原料であるカルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、脂環族カルボン酸、芳香族カルボン酸など、任意のものを用いることができる。中でも、工業的には、低級(炭素数4以下の)脂肪族モノカルボン酸を用いることが好ましい。具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸等が挙げられるが、反応性及び価格の点から、酢酸が好ましい。
反応原料であるカルボン酸が、通常は溶媒を兼ねることになるが、必要であれば、反応に不活性な有機溶媒、例えば飽和炭化水素、エステル等の溶媒を用いてもよい。但し、反応溶媒の50重量%以上は、反応原料のカルボン酸であることが好ましい。
カルボン酸の使用量は、共役ジエン1モルに対して、通常2モル以上、100モル以下の範囲が好ましい。
本発明の酸化的付加生成物の製造方法では、上述の原料(共役ジエン及びカルボン酸)を、分子状酸素を含有する気体を用いて、好ましくは液相下で固体触媒と接触させる。
ここで、分子状酸素を含有する気体とは、純酸素或いは酸素と不活性気体の混合気体を指す。不活性気体としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。また、混合気体には、空気も含まれる。
分子状酸素は、不活性気体と任意の混合比率にて、大気圧又は加圧状態において反応系に供給することができるが、酸素濃度は反応系内の気相部が爆発組成とならない範囲が好ましい。
一般的に、酸化反応は、酸素分圧が高い程反応速度的に有利なので、その限定された範囲内で安全率を考慮した最大濃度で供給することがより好ましい。しかし、空気よりも高い酸素濃度については、燃焼反応の促進や、酸素高濃度化の為の設備が必要になり、更には高濃度酸素ガスそのものの危険性も増大するため、特に反応速度が必要な場合を除き、一般的には使用されない。
また、酸素分圧は、供給する酸素濃度、反応系中の組成と反応圧力、温度により決定される。
本発明の酸化的付加生成物の製造方法は、回分式、連続式の何れの方法でも行なうことができる。
また、反応方式としては固定床式、流動床式、懸濁槽式等、任意の方式を採用することができるが、工業的には固定床式がより好ましい。
反応温度は、通常20℃以上の温度で行なうことが可能であるが、反応速度及び副生物の生成等を考慮すると、40℃以上、120℃以下の温度で行なうことが好ましい。
また、反応圧力は、常圧、加圧の何れも可能である。反応速度を高めるためには、加圧の方が好ましいが、反応設備経費が高くなる傾向がある。それらを考慮すると、好適な反応圧力は、常圧(1気圧)以上、100kgf/cm2以下の範囲である。
なお、上記の手順において、共役ジエンに代えてシクロヘキセンを用いることで、アシロキシシクロヘキセンを製造することができる。
この場合、原料として使用するシクロヘキセンは、例えば若干のシクロヘキサン、ベンゼン等を含んでいてもよく、また、微量の水を含んでいても差し支えない。
但し、その場合でも、原料のシクロヘキセンの純度はある程度高いことが好ましい。具体的には、原料のシクロヘキセンの純度は通常50重量%以上、好ましくは90重量%以上であることが好ましい。
また、上記の手順において、共役ジエンに代えてアルキルベンゼンを用いることで、アシロキシアルキルベンゼンを製造することができる。
この場合、原料として使用するアルキルベンゼンは、例えば若干のベンゼン等を含んでいてもよく、また、微量の水を含んでいても差し支えない。
但し、その場合でも、原料のアルキルベンゼンの純度はある程度高いことが好ましい。具体的には、原料のアルキルベンゼンの純度は通常50重量%以上、好ましくは90重量%以上であることが好ましい。
更に、上記の手順において、カルボン酸に代えてアルコールを用いることで、不飽和グリコールジエーテルを製造することができる。
アルコールの種類は特に限定されないが、工業的には、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数4以下の低級アルコールが用いられる。
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
蒸留水に対して、0.15molの塩化ロジウム、及び、0.30mmolの1,3−ジヒドロキシ−4−(2−ピリジルアゾ)ベンゼン(1,3-dihydroxy-4-(2-pyridylazo) benzene):(略称PAR:分子式C11923)を加え、更に水酸化ナトリウムを加えてpHを13に調整することにより塩化ロジウムとPARを溶解させ、ロジウム含有溶液10mlを調製した。これをA溶液とする。
また、蒸留水に対して、0.40mmolのクエン酸を加えて溶解させた後、0.10mmolのテルル酸を加えて溶解させ、テルル含有溶液10mlを調製した。これをB溶液とする。
次に、A溶液とB溶液を混合し、これに蒸留水と水酸化ナトリウムを加えてpH13に調整し全量を48mlとした後、十分な時間をかけて混合し、更に80%飽水ヒドラジン溶液2mlを加え、70℃で3時間還元した。
還元で得られた黒色粉末を窒素雰囲気中で濾過、水洗し、窒素気流下90℃で1時間乾燥後150℃まで昇温し1時間保持後、室温まで冷却し、化合物粉末(実施例1の化合物粉末)を得た。
実施例1の化合物粉末0.015gを、50gの酢酸が入っている100mlの四つ口フラスコに添加し、酢酸層に窒素を吹き込みながら90℃に昇温した。窒素の吹き込みを停止し、それに替えて1,3−ブタジエンを10ml/minの流量で、10%酸素/窒素混合ガスを25ml/minの流量でそれぞれ吹き込み、反応を開始した。3時間反応させた後、吹き込むガスを再び窒素に切り替え、室温まで冷却し、化合物粉末を濾別した。
反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2.99mmolの1,4−ジアセトキシ−2−ブテンが生成していた。
また、反応液に溶解しているロジウムの濃度を誘導結合プラズマ質量分析装置(Inductively coupled plasma mass spectrometry:以下適宜「ICP−MS」と略す。)で測定したところ、21ppmであった。後述の比較例3と比較して、ロジウムの溶出が抑制されていることが分かる。
[実施例2]
実施例1の化合物粉末を窒素気流中で150℃に昇温した後、流通させるガスを窒素から水素に切り替え、更に400℃まで昇温し2時間保持することにより、熱処理を行なった。その後、流通させるガスを再び窒素に切り替えて室温まで冷却し、化合物粉末(実施例2の化合物粉末)を得た。
実施例2の化合物粉末について、粉末X線回折測定を行なった。得られた粉末X線回折パターンを、Rh3Te2の標準ピークとともに図1に示す。図1から明らかなように、実施例2の化合物粉末の粉末X線回折パターンは、標準ピークとほぼ一致していることから、実施例2の化合物粉末は金属間化合物であり、かつ、高純度のRh3Te2であることが分かる。
[実施例3]
蒸留水に対して、0.15molの塩化ロジウム、及び、0.45mmolのチオサリチル酸を加えて溶解させた後に、水酸化ナトリウムを加えてpHを13に調整することにより、ロジウム含有溶液10mlを調製した。これをA溶液とする。
また、蒸留水に対して、0.15mmolの亜テルル酸ナトリウムを加えて溶解させた後に、水酸化ナトリウムを加えてpHを13に調整することにより、テルル含有溶液10mlを調製した。これをB溶液とする。
また、蒸留水に対して2mmolの水素化ホウ素ナトリウムを加えて溶解させた後に、水酸化ナトリウムを加えてpHを13に調整することにより、水素化ホウ素ナトリウム含有溶液10mlを調製した。これをC溶液とする。
次に、A溶液とB溶液を混合し、これに蒸留水と水酸化ナトリウムを加えてpH13に調整し全量を48mlとした後、十分な時間をかけて混合し、更にC溶液を加え、70℃で3時間還元した。
還元で得られた黒色粉末を窒素雰囲気中で濾過、水洗し、窒素気流下90℃で1時間乾燥後150℃まで昇温し、流通させるガスを窒素から水素に切り替え更に400℃まで昇温し2時間保持した。再び窒素に切り替え室温まで冷却し、化合物粉末(実施例3の化合物粉末)を得た。
実施例3の化合物粉末について、粉末X線回折測定を行なった。得られた粉末X線回折パターンを、Rh1Te1の標準ピークとともに図2に示す。図2から明らかなように、実施例3の化合物粉末の粉末X線回折パターンは、標準ピークとほぼ一致していることから、実施例3の金属間化合物粉末は、金属間化合物であり、かつ、高純度のRh1Te1であることが分かる。
[実施例4]
使用したテルル酸の量を、蒸留水に対して0.20mmolとしたこと以外は、実施例1と同様の条件で化合物粉末の合成を行ない、更に実施例2と同様の条件で熱処理を行なうことにより、化合物粉末(実施例4の化合物粉末)を得た。
実施例4の化合物粉末について、粉末X線回折測定を行なった。得られた粉末X線回折パターンを、Rh3Te4の標準ピークとともに図3に示す。図3から明らかなように、実施例4の化合物粉末の粉末X線回折パターンは、標準ピークとほぼ一致していることから、実施例4の化合物粉末は、金属間化合物であり、かつ、高純度のRh3Te4であることが分かる。
[比較例1]
蒸留水に対して、0.15mmolの塩化ロジウムと、0.45mmolのチオサリチル酸を加え、更に水酸化ナトリウムを加えて、pHを各々3、5、9、10、11、12と調整した。何れの場合も、チオサリチル酸は溶解せず、目的物の前駆体であるRh錯体を形成することはできなかった。
[比較例2]
蒸留水に対して、0.15mmolの塩化ロジウムと、0.30mmolの1,3−ジヒドロキシ−4−(2−ピリジルアゾ)ベンゼン(1,3-dihydroxy-4-(2-pyridylazo) benzene):(略称PAR:分子式C11923)を加え、更に水酸化ナトリウムを加えて、pHを各々3、5、9、10、11、12と調整した。何れの場合も、PARは溶解せず、目的物の前駆体であるRh錯体を形成することはできなかった。
[比較例3]
蒸留水1mlに対し、0.15mmolの塩化ロジウム、及び、0.10mmolのテルル酸を加えて溶解させた。得られた溶液をD溶液とする。
80%飽水ヒドラジン0.2gを蒸留水10gに加え、85℃に加熱した。これにD溶液をゆっくりと滴下し、更に2時間加熱し、還元を行なった。
還元で得られた黒色粉末を窒素雰囲気中で濾過・水洗し、窒素気流下、90℃で1時間加熱し、乾燥した。更に150℃まで昇温し、1時間保持した後、室温まで冷却し、化合物の粉末(比較例3の化合物粉末)を得た。
比較例3の化合物粉末0.015gを、50gの酢酸が入っている100mlの四つ口フラスコ内に加え、酢酸層に窒素を吹き込みながら90℃に昇温した。窒素の吹き込みを止め、それに替えて1,3−ブタジエンを1分間当たり10mlの流量で、10%酸素/窒素混合ガスを1分間当たり25mlの流量でそれぞれ吹き込み、反応を開始した。3時間反応を行なった後、吹き込むガスを再び窒素に切り替え、室温まで冷却し、合金粉末を濾別した。反応液に溶解しているロジウムの濃度をICP−MSで測定したところ、60ppmであった。
[比較例4]
比較例3の化合物粉末を窒素気流中で150℃に昇温した後、流通させるガスを窒素から水素に切り替え、更に400℃まで昇温し2時間保持することにより、熱処理を行なった。その後、流通させるガスを再び窒素に切り替え、室温まで冷却し、化合物の粉末(比較例4の化合物粉末)を得た。
比較例4の合金粉末について、粉末X線回折測定を行なった。得られた粉末X線回折パターンを、Rh3Te2の標準ピークとともに図1に示す。図1から明らかなように、比較例4の化合物粉末の粉末X線回折パターンは、実施例2とは異なり、標準ピークと一致していないことが分かる。
[比較例5]
使用したテルル酸の量を、蒸留水に対して0.15mmolとしたこと以外は、比較例3と同様の条件で化合物粉末の合成を行ない、更に比較例4と同様の条件で熱処理を行なうことにより、化合物粉末(比較例5の化合物粉末)を得た。
比較例5の化合物粉末について、粉末X線回折測定を行なった。得られた粉末X線回折パターンを、Rh1Te1の標準ピークとともに図2に示す。図2から明らかなように、比較例5の化合物粉末の粉末X線回折パターンには、実施例3とは異なり、Rh1Te1の標準ピーク以外にも、不純物と思われるピークが混在していることが分かる。
[比較例6]
使用したテルル酸の量を、蒸留水に対して0.20mmolとしたこと以外は、比較例3と同様の条件で化合物粉末の合成を行ない、更に比較例4と同様の条件で熱処理を行なうことにより、化合物粉末(比較例6の化合物粉末)を得た。
比較例6の化合物粉末について、粉末X線回折測定を行なった。得られた粉末X線回折パターンを、Rh3Te4の標準ピークとともに図3に示す。図3から明らかなように、比較例6の合金粉末の粉末X線回折パターンには、実施例4とは異なり、Rh3Te4の標準ピーク以外にも、不純物と思われるピークが混在していることが分かる。
[実施例5]
蒸留水に対して、0.97molの塩化ロジウム、及び、2.92mmolのチオサリチル酸を加えて溶解させた後に、水酸化ナトリウムを加えてpHを13に調整することにより、ロジウム含有溶液10mlを調製した。これをE溶液とする。
また、蒸留水に対して1.94mmolの亜テルル酸ナトリウムを加えて溶解させた後に、水酸化ナトリウムを加えてpHを13に調整することにより、テルル含有溶液10mlを調製した。これをF溶液とする。
また、蒸留水に対して68.0mmolの水素化ホウ素ナトリウムを溶解させ、水酸化ナトリウムを加えてpHを13に調整することにより、水素化ホウ素ナトリウム含有溶液10mlを調製した。これをG溶液とする。
ピート成形炭(NORIT社製2X)40gに蒸留水60g及び60%硝酸60gを加え、80℃で3時間加熱処理した後、室温まで冷却し、蒸留水で水洗した。更に、窒素気流中、90℃で3時間、次いで150℃で2時間乾燥処理した。処理後の活性炭を担体Hとする。
E溶液1mlとF溶液0.5mlを混合し、十分な時間をかけて混合した後、その混合溶液を0℃に冷却した。これにG溶液0.5mlを加え、更に2.0gの担体Hを加えて溶液を含浸させ、70℃に加熱し3時間還元を行なった後、室温まで冷却した。得られたロジウム及びテルルを含有する活性炭を焼成管に移し、窒素気流中で90℃で3時間、更に150℃で2時間乾燥処理し、活性炭からなる担体にロジウム−テルル金属間化合物粒子が担持された酸化触媒(実施例5の酸化触媒)を得た。
実施例5の酸化触媒を透過型電子顕微鏡で観察した。得られた実施例5の酸化触媒の透過型電子顕微鏡写真(図面代用写真)を図4に示す。図4の写真より、活性炭担体上へロジウム−テルル金属間化合物粒子が6〜16nmの粒子径で、高分散で担持されていることが分かる。
本発明のロジウム−テルル金属間化合物粒子は、例えば、酸化反応用の触媒(酸化触媒)等として広く用いることが可能である。
また、本発明の酸化触媒は、例えば、オレフィン又は芳香族化合物に酸素求核剤を酸化的付加させる反応により、酸化的付加生成物を製造する方法(酸化的付加生成物の製造方法)等に使用することが可能である。
実施例2及び比較例4の化合物粉末の粉末X線回折パターンを、Rh3Te2の標準ピークとともに示す図である。 実施例3及び比較例5の化合物粉末の粉末X線回折パターンを、Rh1Te1の標準ピークとともに示す図である。 実施例4及び比較例6の化合物粉末の粉末X線回折パターンを、Rh3Te4の標準ピークとともに示す図である。 実施例5の酸化触媒の透過型電子顕微鏡写真(図面代用写真)である。

Claims (4)

  1. ロジウム及びテルルからなる金属間化合物の粒子であって、
    粒子径が6〜16nmであり、
    ロジウムとテルルとの原子比が、3:2〜3:4である
    ことを特徴とする、ロジウム−テルル金属間化合物粒子。
  2. ロジウムとテルルとの原子比が3:2、3:4及び1:1のいずれかである
    ことを特徴とする、請求項1記載のロジウム−テルル金属間化合物粒子。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のロジウム−テルル金属間化合物粒子が担体に担持されてなる
    ことを特徴とする、酸化触媒。
  4. アシルオキシ化反応用触媒である
    ことを特徴とする、請求項3に記載の酸化触媒
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