JP4258199B2 - 酢酸製造用触媒の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、気相でエチレンと酸素とから酢酸を製造する際に用いる酢酸製造用触媒、該触媒の製造方法及び該触媒を用いた酢酸の製造方法に関する。
【0002】
さらに詳しくは、パラジウム化合物、ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上が担体に担持された触媒であって、パラジウム1g当たりの一酸化炭素(以下「CO」と記す。)吸着量が一定の数値以上であることを特徴とする酢酸製造用触媒、該触媒の製造方法及び該触媒を用いた酢酸の製造方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
従来、酢酸の製造方法としてはアセトアルデヒドの酸化法、メタノールとCOを反応させる方法、低級パラフィンを酸化する方法等が実用化されている。
【0004】
中でも、エチレンから酢酸を一段で製造する方法は、工業的製造工程上と経済的に多くの有利な点を有しているために、多くの提案がなされている。具体的には例えば、パラジウム−コバルト、パラジウム−鉄などの金属イオン対の酸化還元触媒を用いた液相一段酸化法(フランス特許第1448361号公報)、パラジウム−リン酸又は硫黄含有変性剤からなる触媒を用いる方法(特開昭47−013221号公報、特開昭51−029425号公報)、3群系酸素化合物からなる触媒(特開昭46−006763号公報)を用いた気相一段酸化法などが提案されている。
【0005】
また、パラジウム化合物とヘテロポリ酸を含む触媒を用いた酢酸の製造方法としては、特開昭54−57488号公報においてリンバナドモリブデン酸パラジウム塩からなる触媒を用いた気相一段酸化法などが提案されている。
【0006】
さらに最近、パラジウムとヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有する触媒を用い、エチレン及び酸素から気相一段で酢酸を製造する方法(特開平7−89896号公報(特許文献1)、特開平9−67298号公報(特許文献2))が開示されている。この触媒を用いる方法によれば、比較的高収率で酢酸を得ることができる。
【0007】
またさらに、パラジウムとヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を必須成分とする触媒を用いて、エチレンを直接酸化して酢酸を製造する際に用いる触媒、該触媒の製造方法、該触媒を用いた酢酸の製造方法に関する改良方法として、特開平11−347412号公報(特許文献3)、特開2000−308830号公報(特許文献4)、国際公開第00/051725号パンフレット(特許文献5)、国際公開第00/061535号パンフレット(特許文献6)等が開示されている。
【0008】
以上のように、従来提案されたパラジウムとヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を含有する触媒を用い、エチレン、酸素から気相一段で酢酸を製造する方法は、工業的規模で実施する上で十分ではある。しかしながら、さらなる触媒活性の向上が達成できるならば、経済性において有利である。
【0009】
【特許文献1】
特開平7−89896号公報
【特許文献2】
特開平9−67298号公報
【特許文献3】
特開平11−347412号公報
【0010】
【特許文献4】
特開2000−308830号公報
【特許文献5】
国際公開第00/051725号パンフレット
【特許文献6】
国際公開第00/061535号パンフレット
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、エチレンと酸素とから酢酸を製造する方法に用いるパラジウムとタングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物が担体に担持された酢酸製造用触媒において、より高活性、高選択的に酢酸を得ることができ、さらに経時変化に伴う性能の低下が低い酢酸製造用触媒の提供を目的の一つとする。さらに、該触媒の製造方法の提供及び該触媒を用いた酢酸の製造方法の提供を目的の一つとする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を行った。その結果驚くべきことに、エチレンと酸素とから酢酸を製造する方法において、用いる触媒がパラジウムとタングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を含む触媒であり、且つそのCO吸着量が一定の範囲以上である場合に、より高い生産性が得られることを見いだし本発明を完成させた。
【0013】
即ち、本発明(I)は、エチレンと酸素とを気相で反応させる酢酸の製造方法に用いる触媒において、該触媒が(a)パラジウム及び(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を含む担体担持型触媒であり、且つ該触媒のCO吸着量が触媒中のパラジウム1g当たり30ml以上であることを特徴とする酢酸製造用触媒である。
【0014】
また本発明(II)は、本発明(I)の触媒にさらに(c)V,Cr,Mo,Mn,Fe,Ru,Co,Cu,Au,Zn,Sn,Pb,Sb,Bi及びTeからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の元素を含む担体担持型触媒であり、且つ該触媒のCO吸着量が触媒中のパラジウム1g当たり30ml以上であることを特徴とする酢酸製造用触媒である。
【0015】
またさらに本発明(III)は、本発明(I)又は本発明(II)の酢酸製造用触媒の製造方法である。
【0016】
さらに本発明(IV)は、本発明(I)又は本発明(II)の酢酸製造用触媒を用いた酢酸の製造方法である。
【0017】
さらに本発明は、例えば以下の事項からなる。
【0018】
〔1〕 エチレンと酸素とを気相で反応させる酢酸の製造方法に用いる触媒の製造方法において、該触媒が
(a)パラジウム
並びに
(b)ケイタングステン酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物
を含む担体担持型触媒であり、且つ該触媒のCO吸着量がパラジウム1g当たり30ml以上であり、
【0019】
該製造方法が、以下の第1工程〜第2工程を含むことを特徴とする酢酸製造用触媒の製造方法。
【0020】
第1工程
担体に、(a−1)パラジウム化合物並びに(b)ケイタングステン酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を担持して、担持触媒を得る工程
【0021】
第2工程
第1工程で得られた担持触媒に含まれる(a−1)パラジウム化合物の一部又は全部を気相で水素還元して酢酸製造用触媒を得る工程
【0022】
〔2〕 第1工程で、(a−1)パラジウム化合物を担持した後に、(b)ケイタングステン酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物の担持を行うことを特徴とする〔1〕に記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
【0023】
〔3〕 第1工程で、(a−1)パラジウム化合物並びに(b)ケイタングステン酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を同時に担持することを特徴とする〔1〕に記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
【0024】
〔4〕 触媒が
(c)Te
を含む担体担持型触媒であって、
第1工程において当該元素を含む化合物も担持することを特徴とする〔1〕に記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
【0025】
〔5〕 第1工程で、(a−1)パラジウム化合物並びに(c)Teを含む化合物を担持した後に、(b)ケイタングステン酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物の担持をおこなうことを特徴とする〔4〕に記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
【0026】
〔6〕 第1工程で、(a−1)パラジウム化合物、(b)ケイタングステン酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物並びに(c)Teを含む化合物を、全て同時に担持することを特徴とする〔4〕に記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
【0027】
〔7〕 (b)ケイタングステン酸が、以下のヘテロポリ酸のいずれか又はその混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
【0028】
1−12−ケイタングステン酸:H4[SiW12O40]・nH2O
(nは0〜40の値を表す。)
【0029】
〔8〕 (b)ケイタングステン酸の塩が、以下のヘテロポリ酸の塩のいずれか又はその混合物であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
【0030】
1−12−ケイタングステン酸:H4[SiW12O40]・nH2O
(nは0〜40の値を表す。)
【0031】
〔9〕 (a)パラジウム並びに(b)ケイタングステン酸及びその塩から選ばれる少なくとも一種以上の化合物が担体に保持されている触媒における(a)及び(b)の組成が、(a)0.5質量%〜4.0質量%であり、(b)5質量%〜50質量%であることを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
【0032】
〔10〕 (a)パラジウム、(b)ケイタングステン酸及びその塩から選ばれる少なくとも一種以上の化合物及び(c)群元素が担体に保持されている触媒における(a)、(b)及び(c)の組成が、(a)0.5質量%〜2.5質量%であり、(b)5質量%〜50質量%であり、(c)0.05質量%〜3.0質量%であることを特徴とする〔4〕〜〔8〕のいずれかに記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
【0033】
〔11〕 (a−1)パラジウム化合物が、硝酸パラジウム又は酢酸パラジウムであることを特徴とする〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
【0034】
〔12〕 (a−1)パラジウム化合物が、以下のヘテロポリ酸とのパラジウム塩の一種以上であることを特徴とする〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
【0035】
1−12−ケイタングステン酸:H4[SiW12O40]・nH2O
(nは0〜40の値を表す。)
【0036】
【発明の実施の形態】
以下にその詳細を説明する。
[[本発明(I)−酢酸製造用触媒]]
まず、本発明(I)について説明する。本発明(I)は、エチレンと酸素とを気相で反応させる酢酸の製造方法に用いる触媒において、該触媒が(a)パラジウム及び(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を含む担体担持型触媒であり、且つ該触媒のCO吸着量が触媒中のパラジウム1g当たり30ml以上であることを特徴とする酢酸製造用触媒である。
【0037】
本発明(I)における(a)パラジウムとは、いかなる状態のものでもよい。例えば、化合物や元素そのままの状態であっても構わない。すなわち、イオン性であっても0価のいわゆる金属状態であってもよいが、好ましくは金属状態である。
【0038】
本発明(I)の触媒に用いられる(b)タングステン系ヘテロポリ酸は、ポリ原子としてタングステンからなるヘテロポリ酸である。またヘテロ原子としては、リン、ケイ素、ホウ素、アルミニウム、ゲルマニウム、チタニウム、ジルコニウム、セリウム、コバルト及びクロム等が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。好ましくは、リン、ケイ素、ホウ素である。具体的なタングステン系ヘテロポリ酸としては、好ましくは、ケイタングステン酸、リンタングステン酸及びホウタングステン酸が挙げられる。さらに好ましくは、ケイタングステン酸、リンタングステン酸である。さらにはケギン型構造として知られる下記の化学式で表されるタングステン系ヘテロポリ酸が実用上好ましいが、触媒上のヘテロポリ酸が全てこの構造を取り得なくても構わない。
【0039】
1−12−リンタングステン酸:H3[PW12O40]・nH2O
1−12−ケイタングステン酸:H4[SiW12O40]・nH2O
(nは0〜40の値を表す。)
【0040】
さらに本発明(I)の触媒に用いられる(b)タングステン系ヘテロポリ酸の塩は、二種以上の無機酸素酸が縮合して生成した酸の水素原子の一部又は全部を置換した金属塩あるいはオニウム塩である。ヘテロポリ酸の水素原子を置換した金属は、周期律表における1族元素、2族元素、11族元素及び13族よりなる群から選ばれた少なくとも一種以上の元素が好ましく、又、ヘテロポリ酸のオニウム塩としてはアンモニウム塩などが例示される。これらヘテロポリ酸の塩の中でも、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、バリウム、銅、金及びガリウムの金属塩が特に好ましい。
【0041】
さらに触媒性能上、及び実用上好ましいヘテロポリ酸の塩としては、リンタングステン酸のリチウム塩、リンタングステン酸のナトリウム塩、リンタングステン酸の銅塩、ケイタングステン酸のリチウム塩、ケイタングステン酸のナトリウム塩及びケイタングステン酸の銅塩を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0042】
本発明(I)に用いられる担体には制限はない。一般に担体として用いられている多孔質物質であれば良い。好ましくはシリカ、シリカ−アルミナ、珪藻土、モンモリロナイト又はチタニア等が挙げられ、より好ましくはシリカである。また担体の形状には特に制限はない。具体的には、粉末状、球状、ペレット状等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
さらに、本発明(I)で用いられる担体の粒子の大きさに特に制限はない。固定床の管状型反応器に用いる際は、担体が球状である場合、その粒子直径は1mm〜10mmの範囲であるのが好ましく、より好ましくは2mm〜8mmである。
【0044】
管状型反応器に触媒を充填して反応を行う場合、粒子直径が1mmより小さいとガスを流通させるときに大きな圧力損失が生じ、有効にガス循環ができなくなる恐れがあり好ましくない。また粒子直径が10mmより大きいと、触媒内部まで反応ガスが拡散できなくなり、有効に触媒反応が進まなくなる恐れがあり好ましくない。
【0045】
さらに、担体の細孔構造は、その細孔直径が1nm〜1000nmにあることが好ましく、2nm〜800nmの間がより好ましい。
【0046】
本発明(I)において、担体担持型触媒とは、(a)パラジウム及び(b)タングステン系ヘテロポリ酸又はその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物が担体に保持されている状態の触媒を示す。
【0047】
(a)パラジウム及び(b)タングステン系ヘテロポリ酸又はその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物は担体に担持せず、そのまま酢酸製造用触媒として用いることも出来るが、担体に担持することで担体表面に分散されるため、高い触媒性能を得られることが出来る。また、適当な強度を有する触媒となるため、ハンドリングもしやすくなる。
【0048】
本発明(I)の酢酸製造用触媒において、(a)パラジウム、及び(b)タングステン系ヘテロポリ酸又はその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物が担体中に保持されている触媒中の(a)及び(b)の組成は特に制限はない。好ましくは触媒全体を100質量%とした場合に、(a)0.5質量%〜4.0質量%であり、(b)5質量%〜50質量%の範囲であり、特に(a)1.0質量%〜2.5質量%であり、(b)10質量%〜40質量%の範囲において、より好ましい結果を与える。
【0049】
本発明(I)の触媒中に含まれる金属元素、及びタングステン系ヘテロポリ酸の担持量は、以下の方法で測定できる。一定量の触媒を、乳鉢等で粉砕し均一な粉末とした後、その触媒粉末をフッ酸、王水等の酸に加えて加熱攪拌し、溶解させ均一な溶液とする。次に、その溶液を純水によって適当な濃度まで希釈し、分析用の溶液とする。その溶液を高周波誘導結合プラズマ発光分析装置(以下「ICP」と記す。)(例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製SPS−1700)によって、定量分析する。装置の精度は、市販されている各元素の標準試薬によって容易に補正することが可能で、再現性のある定量が可能である。
【0050】
本発明(I)の酢酸製造用触媒において、パラジウム1g当たりのCO吸着量がある一定以上であれば高い触媒活性を示す理由は、完全には明らかではないが、次のような理由であると考えられる。
【0051】
本反応は、いわゆる固気反応であり、固体金属表面とガスの接触反応と想定できる。固気反応では、通常、
1.ガスが固体触媒中に拡散し金属表面に吸着する過程、
2.固体触媒表面で化学反応を起こす過程、
3.生じた生成物が固体触媒表面から脱着し拡散する過程
からなると考えられる。その反応速度は一般に反応に寄与できる金属表面(有効金属表面)の面積が広い方が有利と考えられる。
【0052】
本触媒である(a)パラジウム及び(b)ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物が担持された触媒においても同様に考えられる。本触媒の場合、有効金属表面の面積は、貴金属の担持量が一定であるならば、貴金属粒子の分散性(粒子直径、その分布)や、ヘテロポリ酸等の被覆や細孔の閉塞状況により左右される。CO吸着量の測定では、一般にCOガスが触媒中に拡散し、露出した金属表面にのみ吸着すると考えられておりよってCO吸着量は、有効金属表面の面積と対応すると想定することができる。従って、CO吸着量が多い触媒では、反応に寄与できる金属表面が多いことを示し、そのために、高い活性を示すと考えられる。
【0053】
本発明者らは、触媒構造が触媒性能に及ぼす影響について鋭意検討を重ねた。その結果、その製造方法については、触媒調製に関する全ての要素(例えば、担体の物性、活性成分の元素種及びそれを溶解して得られた溶液の物性、含浸方法、乾燥方法等)に左右されるため一概には特定できないが、その多くの組み合わせの中で結果的に得られた触媒のCO吸着量が、触媒性能に極めて重要な因子であり、そのCO吸着量がある一定以上の値を有する固体触媒は非常に高い触媒性能を示すことを見いだした。
【0054】
触媒当たりのCO吸着量を増加させる方法としては、単純に触媒中のパラジウム担持量を増加させる方法が考えられる。しかしながら、貴金属は高価であり、やみくもに担持量を増加させることは、経済的に不利になる恐れがあるため好ましくない。
【0055】
そのため、パラジウムの使用量が少なくてかつ高い活性を維持するためには、パラジウム単位質量当たりのCO吸着量が多くなるような酢酸製造用触媒を使用することが重要となる。触媒中のパラジウム1g当たりのCO吸着量は高ければ高いほど良い。少なくとも、パラジウム1g当たり30ml以上が好ましい。さらに好ましくは、パラジウム1g当たり32ml以上である。
【0056】
CO吸着量の測定とは、COが金属表面に化学吸着する特性を用いて、その吸着量から触媒中の金属表面積を測定する方法である。CO吸着量を測定する手法としては、一般的には、COパルス吸着法が用いられる。COパルス吸着法による一般的な概念としては、例えば、「触媒講座第3巻(基礎編3)固体触媒のキャラクタリゼーション」(講談社発行、1985年、160ページ〜162ページ)に、また定量的な手法としては、例えば、「触媒講座、別巻、触媒実験ハンドブック」(講談社発行、1986年、183ページ〜185ページ)等に記載されている。
【0057】
その一般的な原理としては、以下のようである。COパルス吸着測定は、前処理工程と、本測定に分けられる。前処理工程では、触媒をサンプル管に充填し、水素などの還元剤を流通させることにより、触媒中の金属元素を還元する工程である。本測定では、先に還元した触媒中に、He等の不活性ガスを流通させながら、一定温度、パルス的に一定量のCOガスを、触媒に導入し、その吸着量を測定する工程である。通常、触媒を充填したサンプル管に導入すると、初めの数回はCOガスが金属表面に吸着するが、さらにCOガスを導入していくと、触媒の金属表面積がCOガスで飽和されてしまい、吸着されずにサンプル管を通過するようになる。触媒サンプル管の後ろに、熱伝導度検出器(以下「TCD」と記す。)などを設置し、そのCOガスの増減を追跡し、触媒に吸着されるCOガスの量を測定するものである。
【0058】
[[本発明(II)−酢酸製造用触媒]]
以下、本発明(II)の酢酸製造用触媒について説明する。
【0059】
本発明(II)は、本発明(I)の触媒にさらに(c)V,Cr,Mo,Mn,Fe,Ru,Co,Cu,Au,Zn,Sn,Pb,Sb,Bi及びTeからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の元素(以下「(c)群元素」と記す。)を含む担体担持型触媒であり、且つ該触媒のCO吸着量が触媒中のパラジウム1g当たり30ml以上であることを特徴とする酢酸製造用触媒である。
【0060】
本発明(II)において、パラジウム、ヘテロポリ酸及びその塩から選ばれた少なくとも一種以上の化合物及び担体については、本発明(I)と同様である。
【0061】
本発明(II)に用いられる(c)群元素としては、V,Cr,Mo,Mn,Fe,Ru,Co,Cu,Au,Zn,Sn,Pb,Sb,Bi及びTeが挙げられる。
【0062】
さらに(c)群元素として、好ましくは、(c−1)Sn,Pb,Sb,Bi及びTeからなる群から選ばれる少なくとも一つ以上、並びに(c−2)V,Cr,Mo,Mn,Fe,Ru,Co,Cu,Au及びZnからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の元素を含むことが好ましい。さらに好ましくは、(c−1)がTeであり、かつ(c−2)V,Cr,Mo,Mn,Au及びZnから選ばれる少なくとも一種以上の元素である。
【0063】
本発明(II)の酢酸製造用触媒において、(a)パラジウム、(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩から選ばれる少なくとも一種以上の化合物及び(c)群元素が担体に保持されている触媒中の(a)、(b)及び(c)の組成は、特に制限はない。好ましくは、触媒全体を100質量%とした場合に、(a)0.5質量%〜2.5質量%であり、(b)5質量%〜50質量%であり、(c)0.05質量%〜3.0質量%である。特に(a)1.0質量%〜2.5質量%であり、(b)10質量%〜40質量%であり、(c)0.08質量%〜1.0質量%において、より好ましい結果を与える。
【0064】
本発明(II)において好ましいCO吸着量は本発明(I)と同様である。
本発明(II)の触媒中に含まれる金属元素、及びタングステン系ヘテロポリ酸の担持量は、本発明(I)の触媒と同様な測定方法で測定できる。
【0065】
[[本発明(III)−酢酸製造用触媒の製造方法]]
以下、本発明(I)及び本発明(II)の酢酸製造用触媒の製造方法について説明する。
【0066】
本発明(I)及び本発明(II)の酢酸製造用触媒において、該触媒の製造方法は、本発明(I)及び本発明(II)の詳細な説明に示したような性状が得られれば良く、その目的を達成する方法であれば特に限定されるものではない。例えば、特開平7−89896号公報、特開平9−67298号公報、特開平11−347412号公報、特開平2000−308830号公報、WO00/051725号公報及びWO00/061535号公報で示される方法、具体的には塩化パラジウム酸ナトリウム水溶液を担体に含浸した後、アルカリ処理を行った後、ヒドラジンで湿式還元を行った後水洗することで、金属パラジウム担持触媒を得た後に、ヘテロポリ酸を担持する方法が開示されている。また、塩化Pd(PdCl2)の塩酸溶液をシリカに担持し気相還元することで、金属Pd/SiO2触媒を得た後、ケイタングステン酸を担持する方法(M.Furuta,M.C.Kung,H.H.Kungは、Applied Catalysis A:Genearal 201(2000)L9)が挙げられる。
【0067】
特に、以下の製造方法によれば高いCO吸着量を示す酢酸製造用触媒を得ることが出来る。
【0068】
以下、本発明(III)である酢酸製造用触媒の製造方法について説明する。[本発明(III)−(1):本発明(I)である酢酸製造用触媒の製造方法]
【0069】
本発明(III)−(1)は、本発明(I)の酢酸製造用触媒の製造方法であり、以下の第1工程〜第2工程を含む酢酸製造用触媒の製造方法である。
第1工程
担体に、(a−1)パラジウム化合物及び(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を担持して、担持触媒を得る工程
第2工程
第1工程で得られた担持触媒に含まれる(a−1)パラジウム化合物の一部又は全部を気相で還元して酢酸製造用触媒を得る工程
【0070】
[本発明(III)−(1):本発明(I)である酢酸製造用触媒の製造方法の第1工程]
本発明(I)である酢酸製造用触媒の製造方法である本発明(III)−(1)の第1工程は、以下の工程である。
第1工程
担体に、(a−1)パラジウム化合物(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を担持して、担持触媒を得る工程
【0071】
本発明(III)−(1)の第1工程において、用いられる(a−1)パラジウム化合物は特に限定されるものではない。具体的には、酢酸パラジウム等の有機酸塩、硝酸パラジウム等の硝酸塩等などが挙げられ、さらにアセチルアセトナート、ニトリル、アンモニウム等の有機化合物を配位子に持つ錯体も挙げられる。好ましくは、塩素の含有していないかつ、酸性水溶液に溶解するパラジウム化合物が好ましく、硝酸パラジウム、酢酸パラジウムが挙げられる。塩化パラジウム、塩化パラジウム酸、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム等のハロゲン化物を用いて酢酸製造用触媒の製造を行った場合、触媒からハロゲンを十分に取り除かずに用いると、反応立ち上げ時もしくは反応中にハロゲンが反応管中に流通し腐食の原因の恐れとなる。完全にハロゲンを取り除くことは、通常の方法では困難であり、例えば触媒を水溶液で洗浄したり、高温で長時間の加熱をする必要があり、好ましくない。
【0072】
(a−1)パラジウム化合物及び(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を担体に担持する方法は、含浸法、スプレー法等の手段が挙げられるが、これらに限定されるものではない。重要なことは、還元処理を行う前に、(a−1)パラジウム化合物及び(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を担持することである。
【0073】
また、担持する順番については、別々でも同時でも良い。好ましくは、同時に担持する方法である。
【0074】
別々に担持する場合は、(a−1)パラジウム化合物を担体に担持し、そのまま直ぐに、あるいは、水酸化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等の水溶液で処理することにより、パラジウム酸化物または水酸化物に変換した後に、乾燥する。その際、必要ならば、残存するナトリウム等のアルカリ塩は水洗除去される。ついで、乾燥した後、(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を担持することで、酢酸製造用触媒を得る方法が挙げられる。
【0075】
また、同時に担持する方法としては、(a−1)パラジウム化合物及び(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を含んだ均一溶液として、同時に担体に担持する方法である。具体的には、水又はアセトンなどの適当な溶媒や塩酸、硝酸、酢酸などの無機酸または有機酸に、(a−1)パラジウム化合物、(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を溶解させ、均一溶液としたのち、これを担体に含浸した後、乾燥するなどの方法である。また(a−1)パラジウム化合物、(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物から調製されたタングステン系ヘテロポリ酸パラジウム塩を得た後に、タングステン系ヘテロポリ酸パラジウム塩を、適当な溶媒に溶解させ、担体に担持しても良い。
【0076】
タングステン系ヘテロポリ酸パラジウム塩に用いる好ましいタングステン系ヘテロポリ酸及びその塩としては、
1−12−リンタングステン酸:H3[PW12O40]・nH2O
1−12−ケイタングステン酸:H4[SiW12O40]・nH2O
(nは0〜40の値を表す。)
が挙げられる。タングステン系ヘテロポリ酸は、例えば、硝酸パラジウムとタングステン系ヘテロポリ酸を溶解させた水溶液を調製し、乾燥することで得ることができる。
【0077】
(a−1)パラジウム化合物及び(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を溶液で担持した後の触媒の乾燥方法については、いかなる方法で行っても良く、例えば、低温で真空処理を行うことや、熱風乾燥機で熱処理により、溶媒を取り除く方法等が挙げられる。
【0078】
以上のようにして、第1工程において、(a−1)パラジウム化合物、(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を含んだ担持触媒を得ることができる。
【0079】
[本発明(III)−(1):本発明(I)である酢酸製造用触媒の製造方法の第2工程]
本発明(I)である酢酸製造用触媒の製造方法である本発明(III)−(1)の第2工程は、以下の工程である。
第2工程
第1工程で得られた担持触媒に含まれる(a−1)パラジウム化合物の一部又は全部を気相で還元して酢酸製造用触媒を得る工程
【0080】
本発明(III)−(1)の第1工程において得られる担持触媒の還元処理により、パラジウム塩を金属へと変換させることができる。還元処理は、気相で行う限りは、一般的な還元条件であれば特に制限はない。
【0081】
還元剤としては、水素、エチレン、メタノール、CO等が挙げられるが特に制限はない。好ましくは、水素、エチレンであり、さらに好ましくは、水素である。
【0082】
還元処理を行う場合は、その温度に特に制限はないが、第1工程で得られた触媒を、50℃〜350℃前後に加熱する事が好ましい。さらに好ましくは、100℃〜300℃である。350℃以上で反応を行うと、ヘテロポリ酸が分解してしまう恐れがあるので好ましくない。
【0083】
処理圧力は設備の点から0.0MPa(ゲージ圧)〜3.0MPa(ゲージ圧)であることが実用上有利であるが、特に制限はない。より好ましくは0.1MPa(ゲージ圧)〜1.5MPa(ゲージ圧)の範囲である。
【0084】
ガス状還元剤を流通させる場合の還元剤の濃度は、いかなる濃度で行っても良く、必要に応じて窒素、二酸化炭素又は希ガスなどを希釈剤として使用することができる。また、気化させた水の存在下に、エチレン、水素等を存在させて、還元を行っても良い。また、第1工程で調製した触媒を、反応系リアクターに充填し、エチレンで還元した後、さらに酸素を導入し、エチレンと酸素から酢酸を製造しても良い。
【0085】
ガス状還元剤を含んだ混合ガスは、標準状態において、空間速度(以下「SV」と記す。)10hr−1〜15000hr−1、特に、100r−1〜8000hr−1で触媒に通すのが好ましい。
【0086】
処理形式としては、特に制限はないが、好ましくは、耐蝕性を有する反応管に前述の触媒を充填した固定床を採用することが、実用上有利である。
以上のようにして、酢酸製造用触媒(I)を得ることができる。
【0087】
[本発明(III)−(2):本発明(II)である酢酸製造用触媒の製造方法]
本発明(III)−(2)は、本発明(II)の酢酸製造用触媒の製造方法であり、以下の第1工程〜第2工程を含む酢酸製造用触媒の製造方法である。
第1工程
担体に、(a−1)パラジウム化合物、(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物及び(c)V,Cr,Mo,Mn,Fe,Ru,Co,Cu,Au,Zn,Sn,Pb,Sb,Bi及びTeからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の元素を含む化合物を担持して、担持触媒を得る工程
第2工程
第1工程で得られた担持触媒に含まれる(a−1)パラジウム化合物の一部又は全部を気相で還元して酢酸製造用触媒を得る工程
【0088】
[本発明(III)−(2):本発明(II)である酢酸製造用触媒の製造方法の第1工程]
本発明(II)である酢酸製造用触媒の製造方法である本発明(III)−(2)の第1工程は、以下の工程である。
第1工程
担体に、(a−1)パラジウム化合物、(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物及び(c)V,Cr,Mo,Mn,Fe,Ru,Co,Cu,Au,Zn,Sn,Pb,Sb,Bi及びTeからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の元素を含む化合物を担持して、担持触媒を得る工程
【0089】
本発明(III)−(2)の第1工程において、用いられる(a−1)パラジウム化合物、(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物については、本発明(III)−(1)の第1工程と同様である。
【0090】
本発明(III)−(2)の製造方法に用いられる(c)群元素は、本発明(II)と同様である。
【0091】
(c)群元素の原料化合物は、特に制限されるものではなく、該元素そのもの、あるいは該元素を含有する硝酸塩、酢酸塩、リン酸塩、硫酸塩、酸化物等が挙げられ、さらにアセチルアセトナート、ニトリル等の有機物を配位子に持つ錯体等も挙げられる。好ましくは、硝酸塩、酢酸塩が特に好ましい。ハロゲン化物を用いて酢酸製造用触媒の製造を行った場合、触媒からハロゲンを十分に取り除かずに用いると、反応立ち上げ時もしくは反応中にハロゲンが反応管中に流通し腐食の原因の恐れとなる。完全にハロゲンを取り除くことは、通常の方法では困難であり、例えば触媒を水溶液で洗浄したり、高温で長時間の加熱をする等特殊な方法でしか取り除けないために好ましくない。
【0092】
具体的な(c)群元素の原料化合物としては、硝酸アンチモン、硝酸スズ、硝酸ビスマス、硝酸鉛、硝酸クロム、硝酸マンガン、硝酸ニッケル、硝酸亜鉛等の硝酸塩、酢酸スズ、酢酸ビスマス、酢酸鉛、酢酸クロム、酢酸マンガン、酢酸レニウム、酢酸ルテニウム、酢酸ニッケル、酢酸金、酢酸亜鉛等の酢酸塩、酸化テルル、テルル酸(H6TeO6)及びその塩類、亜テルル酸(H2TeO3)及びその塩類、又はアンチモン酸カリウム、メタバナジン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、さらに、リンモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸等のヘテロポリ酸が挙げられる。
【0093】
(a−1)パラジウム化合物、(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物及び(c)群元素を担体に担持する方法、担持する順番、溶液で担持した後の触媒の乾燥方法については、本発明(III)−(1)の第1工程と同様である。
【0094】
以上のようにして、第1工程において、(a−1)パラジウム化合物、(b)タングステン系ヘテロポリ酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物及び(c)群元素を含んだ担持触媒を得ることができる。
【0095】
[本発明(III)−(2):本発明(II)である酢酸製造用触媒の製造方法の第2工程]
本発明(II)である酢酸製造用触媒の製造方法である本発明(III)−(2)の第2工程は、以下の工程である。
第2工程
第1工程で得られた担持触媒に含まれる(a−1)パラジウム化合物の一部又は全部を気相で還元して酢酸製造用触媒を得る工程
第2工程において、気相還元処理する方法は、本発明(III)−(1)の製造方法の第2工程と同様である。
【0096】
[[本発明(IV)−酢酸製造用触媒を用いた酢酸の製造方法]]
次に、本発明(IV)について説明する。本発明(IV)は、本発明(I)又は本発明(II)の触媒を用いたエチレンと酸素から酢酸を製造する方法である。
【0097】
本発明(IV)の酢酸の製造方法において、エチレンと酸素を反応させて、酢酸を製造する際の反応温度に特に制限はない。好ましくは、100℃〜300℃であり、更に好ましくは、120℃〜250℃である。また、反応圧力は設備の点から0.0MPa(ゲージ圧)〜3.0MPa(ゲージ圧)であることが実用上有利であるが、特に制限はない。より好ましくは0.1MPa(ゲージ圧)〜1.5MPa(ゲージ圧)の範囲である。
【0098】
本発明(IV)の酢酸の製造方法において、反応系に供給するガスは、エチレンと酸素を含み、更に必要に応じて窒素、二酸化炭素又は希ガスなどを希釈剤として使用することができる。
【0099】
かかる供給ガス全量に対して、エチレンは5容量%〜80容量%、好ましくは8容量%〜50容量%の割合となる量で、酸素は1容量%〜15容量%、好ましくは3容量%〜12容量%の割合となる量で、反応系に供給される。
【0100】
また、この反応系においては、水を反応系内に存在させると、酢酸生成活性と選択率の向上及び触媒の活性維持に著しく効果がある。水蒸気は反応ガス中に1容量%〜50容量%の範囲で含まれるのが好適であるが、好ましくは5容量%〜40容量%である。
【0101】
本発明(IV)の酢酸の製造方法において、原料エチレンとして高純度のものを用いることが好ましいが、メタン、エタン、プロパン等の低級飽和炭化水素が混入しても差し支えない。また、酸素は窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈されたもの、例えば、空気の形でも供給できるが、反応ガスを循環させる場合には、一般には高濃度、好適には、99%以上の酸素を用いる方が有利である。
反応混合ガスは、標準状態において、SVは、10hr−1〜15000hr−1、特に、300r−1〜8000hr−1で触媒に通すのが好ましい。
【0102】
反応形式としては、特に制限はなく、公知の方法、例えば固定床、流動床などの形式を採り得る。好ましくは、耐蝕性を有する反応管に前述の触媒を充填した固定床を採用することが、実用上有利である。
【0103】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の概要を示すもので、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[担体の前処理]
本実施例で用いた全ての担体は、前処理として、110℃、空気下で、4時間乾燥を行った。
[水の使用]
本実施例で用いた水は、全て脱イオン水を用いた。
【0104】
[担体の使用]
本実施例で用いた担体は、全てシリカ担体[BET比表面積220m2/g、嵩密度407g/l、5mmφ]を用いた。
[原料化合物の使用]
本実施例で用いた塩化パラジウム[PdCl2]の塩酸(以下、HClと記す。)水溶液及び硝酸パラジウム[Pd(NO3)2]の硝酸水溶液は、エヌイーケムキャット製のものを用いた。ケイタングステン酸26水和物[H4SiW12O40・26H2O]は、日本無機化学工業製のものを用いた。
【0105】
[実施例1]
塩化パラジウムのHCl水溶液(Pdとして、0.925g)及びケイタングステン酸26水和物(11.5g)を混合し、水溶液45mlを調製した(A溶液)。このA溶液に、シリカ担体(40g)を含浸し、全量吸水させた。ついで空気気流下110℃で4時間乾燥することで、触媒を得た。
【0106】
ついで、触媒をパイレックス(登録商標)製ガラス管に充填し気相還元を行った。還元条件は、窒素12NLHを流通させ温度200℃まで昇温し、水素:窒素=6NLH:6NLHの混合ガスに切り替え200℃で4時間保持した。ついで、窒素12NLHに切り替え、室温まで降温した。パイレックス(登録商標)製ガラス管から取り出し、酢酸製造用触媒1を得た。
【0107】
[実施例2]
塩化パラジウムのHCl水溶液(Pdとして、0.925g)の代わりに、硝酸パラジウム水溶液(Pdとして、0.925g)を用いた以外は、実施例1と同様に操作し、酢酸製造用触媒2を得た。
【0108】
[参考例1]
塩化パラジウムのHCl水溶液(Pdとして、0.925g)の代わりに、硝酸パラジウム水溶液(Pdとして、0.925g)を用い、さらに触媒の還元条件として、窒素12NLHを流通させ温度150℃まで昇温し、エチレン:窒素:水=15NLH:15NLH:11.3NLHの混合ガスに切り替え150℃で、2時間保持した以外は、実施例1と同様に操作し、酢酸製造用触媒3を得た。
【0109】
[比較例1]
塩化パラジウムのHCl水溶液(Pdとして、0.925g)をイオン交換水でメスアップし、水溶液45mlを調製した(A溶液)。このA溶液に、シリカ担体(40g)を含浸し、全量吸水させた。ついで空気気流下、110℃で4時間乾燥することで、塩化パラジウム担持触媒を得た。
【0110】
ついでヒドラジン1水和物[和光純薬製:N2H4・H2O](6.5g)を溶解させた水溶液に、先に得られた塩化パラジウム担持触媒を投入した。緩やかに攪拌した後、室温で4時間静置し、金属パラジウムに還元した。その後、デカンテーションを行った後、空気気流下、110℃で4時間乾燥することで、金属パラジウム担持触媒を得た。
【0111】
さらにケイタングステン酸26水和物(11.5g)を均一水溶液とし、45mlにメスアップした(C溶液)。このC溶液に、先に調製した金属パラジウム担持触媒を含浸し、全量吸収させた。ついで空気気流下110℃で4時間乾燥することで、酢酸製造用触媒11を得た。
【0112】
[比較例2]
塩化パラジウムのHCl水溶液(Pdとして、0.925g)をイオン交換水でメスアップし、水溶液45mlを調製した(A溶液)。このA溶液に、シリカ担体(40g)を含浸し、全量吸水させた。ついで空気気流下、110℃で4時間乾燥することで、塩化パラジウム担持触媒を得た。
【0113】
ついで、触媒をパイレックス(登録商標)製ガラス管に充填し気相還元を行った。還元条件は、窒素12NLHを流通させ温度200℃まで昇温し、水素:窒素=6NLH:6NLHの混合ガスに切り替え200℃で4時間保持した。ついで、窒素12NLHに切り替え、室温まで降温した。パイレックス(登録商標)製ガラス管から取り出し、金属パラジウム担持触媒を得た。
【0114】
さらにケイタングステン酸26水和物(11.5g)を均一水溶液とし、45mlにメスアップした(C溶液)。このC溶液に、先に調製した金属パラジウム担持触媒を含浸し、全量吸収させた。ついで空気気流下110℃で4時間乾燥することで、酢酸製造用触媒12を得た。
【0115】
[比較例3]
塩化パラジウムのHCl水溶液(Pdとして、0.925g)をイオン交換水でメスアップし、水溶液45mlを調製した(A溶液)。このA溶液に、シリカ担体(40g)を含浸し、全量吸水させた。次に、メタケイ酸ナトリウム9水和物[和光純薬製:Na2SiO3・9H2O](8.0g)の水溶液(90ml)に加え、室温で、20時間静置した。ついで、これに、ヒドラジン1水和物[和光純薬製:N2H4・H2O](6.5g)を添加し、緩やかに攪拌した後、室温で4時間静置し、金属パラジウムに還元した。その後触媒を濾取し、デカンテーションを行った後、ストップコック付きのガラスカラムに移し、40時間純水を流通させ洗浄した。ついで空気気流下110℃で4時間乾燥し、金属Pd担持触媒を得た。
【0116】
さらに、ケイタングステン酸26水和物(11.5g)を均一水溶液とし、45mlにメスアップした(B溶液)。このB溶液に、先に調製した金属Pd担持触媒を含浸し、全量吸収させた。ついで空気気流下110℃で4時間乾燥することで、酢酸製造用触媒13を得た。
【0117】
[比較例4]
塩化パラジウムのHCl水溶液(Pdとして、0.925g)の代わりに、硝酸パラジウム水溶液(Pdとして、0.925g)を用いた以外は、比較例1と同様に操作し、酢酸製造用触媒14を得た。
【0118】
[実施例4]
硝酸パラジウム水溶液(Pdとして、0.925g)、テルル酸[和光純薬製:H6TeO6]72mg及びケイタングステン酸26水和物(5.75g)を混合し、水溶液45mlを調製した(A溶液)。このA溶液に、シリカ担体(40g)を含浸し、全量吸水させた。ついで空気気流下110℃で4時間乾燥することで、触媒を得た。
【0119】
ついで、触媒をパイレックス(登録商標)製ガラス管に充填し、気相還元を行った。還元条件は、窒素12NLHを流通させ、温度200℃まで昇温し、水素:窒素=6NLH:6NLHの混合ガスに切り替え、200℃で3時間保持した。ついで、窒素12NLHに切り替え、室温まで降温した。パイレックス(登録商標)製ガラス管から取り出し、酢酸製造用触媒4を得た。
【0120】
[実施例5〜実施例7]
ケイタングステン酸26水和物(5.75g)の代わりに、表1に記載したヘテロポリ酸の種類及び質量を用いた以外は、実施例4と同様な操作を行うことにより、酢酸製造用触媒5〜7を得た。表1を以下に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
[参考例2]
ケイタングステン酸26水和物(5.75g)の代わりに、ケイタングステン酸26水和物(11.5g)を用い、また触媒の還元条件として、窒素12NLHを流通させ温度150℃まで昇温し、エチレン:窒素:水=15NLH:15NLH:11.3NLHの混合ガスに切り替え150℃で2時間保持した以外は、参考例1と同様に操作し、酢酸製造用触媒8を得た。
【0123】
[参考例3]
塩化パラジウムのHCl水溶液(Pdとして、0.925g)、塩化亜鉛[和光純薬製:ZnCl2](54mg)を混合し、イオン交換水でメスアップし、水溶液45mlを調製した(A溶液)。このA溶液に、シリカ担体(40g)を含浸し、全量吸水させた。次に、メタケイ酸ナトリウム9水和物[和光純薬製:Na2SiO3・9H2O](8.0g)の水溶液(90ml)に加え、室温で、20時間静置した。ついで、これに、ヒドラジン1水和物[和光純薬製:N2H4・H2O](6.5g)を添加し、緩やかに攪拌した後、室温で4時間静置し、金属パラジウムに還元した。その後触媒を濾取し、デカンテーションを行った後、ストップコック付きのガラスカラムに移し、40時間純水を流通させ洗浄した。ついで空気気流下110℃で4時間乾燥し、Znを含む金属Pd担持触媒を得た。
【0124】
ついで、亜テルル酸ナトリウム[和光純薬製:Na2TeO3](72mg)を溶解させた水溶液45mlを調製した(B溶液)。このB溶液に、先に調製した金属Pd担持触媒を含浸し、全量吸収させた。ついで空気気流下110℃で4時間乾燥することで、Zn,Teを含む金属Pd担時触媒を得た。
【0125】
さらに、ケイタングステン酸26水和物(20.7g)を均一水溶液とし、45mlにメスアップした(C溶液)。このC溶液に、先に調製したZn,Teを含む金属Pd担持触媒を含浸し、全量吸収させた。ついで空気気流下110℃で4時間乾燥することで、酢酸製造用触媒9を得た。
【0126】
[比較例5]
硝酸パラジウム水溶液(Pdとして、0.925g)をイオン交換水でメスアップし、水溶液45mlを調製した(A溶液)。このA溶液に、シリカ担体(40g)を含浸し、全量吸水させた。ついで空気気流下110℃で4時間乾燥することで、Pd塩担持触媒を得た。
【0127】
次にPd塩担持触媒をパイレックス(登録商標)製ガラス管に充填し、気相還元を行った。還元条件は、窒素12NLHを流通させ、温度200℃まで昇温し、水素:窒素=6NLH:6NLHの混合ガスに切り替え、200℃で3時間保持した。ついで、窒素12NLHに切り替え、室温まで降温することで、金属Pd担持触媒を得た。
【0128】
さらに、ケイタングステン酸26水和物(5.75g)及びテルル酸[和光純薬製:H6TeO6](72mg)を均一水溶液とし、45mlにメスアップした(B溶液)。このB溶液に、先に調製した金属Pd担持触媒を含浸し、全量吸収させた。ついで空気気流下110℃で4時間乾燥することで、酢酸製造用触媒15を得た。
【0129】
[比較例6〜比較例8]
ケイタングステン酸26水和物(5.75g)の代わりに、表2に記載したヘテロポリ酸の種類及び質量を用いた以外は、比較例5と同様な操作を行うことにより、酢酸製造用触媒16〜18を得た。表2を以下に示す。
【0130】
【表2】
【0131】
[比較例9]
塩化パラジウムのHCl水溶液(Pdとして、0.925g)をイオン交換水でメスアップし、水溶液45mlを調製した(A溶液)。このA溶液に、シリカ担体(40g)を含浸し、全量吸水させた。
【0132】
次に、メタケイ酸ナトリウム9水和物[和光純薬製:Na2SiO3・9H2O](8.0g)の水溶液(90ml)に加え、室温で、20時間静置した。ついで、これに、ヒドラジン1水和物[和光純薬製:N2H4・H2O](6.5g)を添加し、緩やかに攪拌した後、室温で4時間静置し、金属パラジウムに還元した。その後触媒を濾取し、デカンテーションを行った後、ストップコック付きのガラスカラムに移し、40時間純水を流通させ洗浄した。ついで空気気流下110℃で4時間乾燥し、金属Pd担持触媒を得た。
【0133】
さらに、ケイタングステン酸26水和物(5.75g)及びテルル酸[和光純薬製:H6TeO6](72mg)を均一水溶液とし、45mlにメスアップした(B溶液)。このB溶液に、先に調製した金属Pd担持触媒を含浸し、全量吸収させた。ついで空気気流下110℃で4時間乾燥することで、酢酸製造用触媒19を得た。
【0134】
[比較例10〜比較例12]
ケイタングステン酸26水和物(5.75g)の代わりに、表3に記載したヘテロポリ酸の種類及び質量を用いた以外は、比較例9と同様な操作を行うことにより、酢酸製造用触媒20〜22を得た。表3を以下に示す。
【0135】
【表3】
【0136】
[各触媒中の成分]
実施例1〜7、参考例1〜3及び比較例1〜12で得た酢酸製造用触媒中に含まれる金属元素、及びヘテロポリ酸の元素分析は、以下のようにして行った。各酢酸製造用触媒を、王水及び/又はフッ酸と王水の混合液に圧力存在下、加熱処理することにより溶解させ、各成分を完全に抽出し、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法により測定した。ICP発光分析測定装置として、セイコーインスツルメンツ株式会社製SPS−1700を用いた。
【0137】
表4及び表5に実施例1〜7、参考例1〜3及び比較例1〜12で得た酢酸製造用触媒1〜9、及び11〜22について、各成分の触媒中における質量%を示した。なお(b)タングステン系ヘテロポリ酸の質量%は、無水物として計算した。
【0138】
【表4】
【0139】
【表5】
【0140】
[CO吸着量の測定]
CO吸着量の測定には、大倉理研製全自動ガス吸着測定装置R6015形式を用いた。サンプル管はサンプル充填部が15φであるパイレックス(登録商標)製サンプル管を使用した。測定する酢酸製造用触媒を、2.0g正確に秤取り、サンプル管に充填し、ガス吸着測定装置に取り付けた。前処理は、40℃、ヘリウム20ml/分で、10分間流通させ、その後、40℃、水素20ml/分で、1時間流通させた。ついで、ヘリウム気流下に切り替え、本測定を行った。
【0141】
本測定は、40℃、ヘリウム気流下、CO(100%)を正確に計量した計量管(1.180ml)を用いてパルス的に、触媒サンプルに流通させた。サンプル管を通過したCOを、TCDで定量分析した。パルスを打ち込む間隔は10分間とした。その際のTCDで検出されるCOガスのチャートの面積が連続して3%以内の差に達した場合を終了とし、その3%以内の差に達した時のチャート面積の平均値を吸着平衡時のCO面積と捉えた。「吸着平衡」とは、打ち込んだCOが触媒に全く吸着されずに通過することを意味する。検出されたガス量の和と打ち込んだパルス回数及び打ち込み量から、以下の式を用いて、Pd1g当たりのCO吸着量を算出した。
触媒中に吸着されたCOガス吸着量 =(パルス回数xパルス打ち込み量)―(検出されたガス量の和)
Pd1g当たりのCO吸着量= (触媒中に吸着されたCOガス量)/ (触媒中のPd量)
表6に、実施例1〜実施例2、参考例1及び比較例1〜比較例4で得た酢酸製造用触媒のCO吸着量の測定結果を示す。
【0142】
【表6】
【0143】
表7に、実施例4〜実施例7、参考例2〜3及び比較例5〜比較例22で得た酢酸製造用触媒のCO吸着量の測定結果を示す。
【0144】
【表7】
【0145】
[実施例10、11、13〜16、参考例4〜6、及び比較例13〜比較例24]
実施例1〜実施例7、参考例1〜3及び比較例1〜比較例12で得た各酢酸製造用触媒を、それぞれ5mlと希釈用のシリカ担体11mlを良く混合して、SUS316製反応管(内径25mm)に充填し、触媒層の反応ピーク温度200℃、反応圧力0.8MPaG(ゲージ圧)で、エチレン:酸素:水:窒素の容量比=10:6:25:59の割合で混合したガスを、空間速度9000h−1にて導入して、エチレンと酸素から酢酸を得る反応を行った。
反応における分析方法として、触媒充填層を通過した出口ガスの全量を冷却し、凝縮した反応捕集液は全量を回収しガスクロマトグラフィーで分析した。凝縮せずに残った未凝縮ガスはサンプリング時間内に流出した未凝縮ガスの全量を測定し、その一部を取り出し、ガスクロマトグラフィーで組成を分析した。生成したガスを冷却し、冷却後の凝縮液及びガス成分をそれぞれガスクロマトグラフィーにて分析した。
【0146】
1.酢酸、アセトアルデヒド、エタノール、酢酸エチル
:ガスクロマトグラフィー:島津製作所製GC−14B、FID検出器:キャピラリーカラムTC−WAX(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)
2.酸素、窒素、CO
:ガスクロマトグラフィー:島津製作所製GC−14B、TCD検出器:Unibeads IS 60/80mesh、3mX3mmφ、SUSカラム
【0147】
3.エチレン、二酸化炭素
:ガスクロマトグラフィー:島津製作所製GC−14B、TCD検出器:MS−5A IS 60/80mesh、ガラスカラム
触媒の活性度を、時間当たりの触媒体積(リットル)当たりで製造された酢酸の質量(空間時間収率(STY)(単位:g/hlcat))として計算し、選択率をエチレンに対する生成物のパーセントとして計算した。
反応結果を、表8、表9に示す。
【0148】
【表8】
【0149】
【表9】
【0150】
【発明の効果】
以上、説明したように、(a)パラジウム及び(b)ケイタングステン酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を含む担体担持型触媒であり、且つ該触媒のCO吸着量がパラジウム1g当たり30ml以上である酢酸製造用触媒を用いて、エチレンと酸素とを気相で反応させることで、高い酢酸の生産性が得られることは明らかである。また、酢酸製造用触媒の製造方法として、従来公知技術である液相還元法に比べ、簡便な気相還元方法においても、上記の性状を示す酢酸製造用触媒を得られることがわかる。
Claims (12)
- エチレンと酸素とを気相で反応させる酢酸の製造方法に用いる触媒の製造方法において、該触媒が
(a)パラジウム
並びに
(b)ケイタングステン酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物
を含む担体担持型触媒であり、且つ該触媒のCO吸着量がパラジウム1g当たり30ml以上であり、
該製造方法が、以下の第1工程〜第2工程を含むことを特徴とする酢酸製造用触媒の製造方法。
第1工程
担体に、(a−1)パラジウム化合物並びに(b)ケイタングステン酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を担持して、担持触媒を得る工程
第2工程
第1工程で得られた担持触媒に含まれる(a−1)パラジウム化合物の一部又は全部を気相で水素還元して酢酸製造用触媒を得る工程 - 第1工程で、(a−1)パラジウム化合物を担持した後に、(b)ケイタングステン酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物の担持を行うことを特徴とする請求項1に記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
- 第1工程で、(a−1)パラジウム化合物並びに(b)ケイタングステン酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物を同時に担持することを特徴とする請求項1に記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
- 触媒が
(c)Te
を含む担体担持型触媒であって、
第1工程において当該元素を含む化合物も担持することを特徴とする請求項1に記載の酢酸製造用触媒の製造方法。 - 第1工程で、(a−1)パラジウム化合物並びに(c)Teを含む化合物を担持した後に、(b)ケイタングステン酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物の担持をおこなうことを特徴とする請求項4に記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
- 第1工程で、(a−1)パラジウム化合物、(b)ケイタングステン酸及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の化合物並びに(c)Teを含む化合物を、全て同時に担持することを特徴とする請求項4に記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
- (b)ケイタングステン酸が、以下のヘテロポリ酸のいずれか又はその混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
1−12−ケイタングステン酸:H4[SiW12O40]・nH2O
(nは0〜40の値を表す。) - (b)ケイタングステン酸の塩が、以下のヘテロポリ酸の塩のいずれか又はその混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
1−12−ケイタングステン酸:H4[SiW12O40]・nH2O
(nは0〜40の値を表す。) - (a)パラジウム並びに(b)ケイタングステン酸及びその塩から選ばれる少なくとも一種以上の化合物が担体に保持されている触媒における(a)及び(b)の組成が、(a)0.5質量%〜4.0質量%であり、(b)5質量%〜50質量%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
- (a)パラジウム、(b)ケイタングステン酸及びその塩から選ばれる少なくとも一種以上の化合物及び(c)群元素が担体に保持されている触媒における(a)、(b)及び(c)の組成が、(a)0.5質量%〜2.5質量%であり、(b)5質量%〜50質量%であり、(c)0.05質量%〜3.0質量%であることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
- (a−1)パラジウム化合物が、硝酸パラジウム又は酢酸パラジウムであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
- (a−1)パラジウム化合物が、以下のヘテロポリ酸とのパラジウム塩の一種以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の酢酸製造用触媒の製造方法。
1−12−ケイタングステン酸:H4[SiW12O40]・nH2O
(nは0〜40の値を表す。)
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