JP2005008950A - 希土類−遷移金属系合金粉末、希土類−遷移金属−窒素系合金粉末及びその製造方法 - Google Patents

希土類−遷移金属系合金粉末、希土類−遷移金属−窒素系合金粉末及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】還元拡散法で得られた希土類−遷移金属系合金粉末の表面から希土類リッチ相を取り除くことで、高保磁力が可能な希土類−遷移金属系合金粉末、充分に窒化でき磁気特性を向上させた希土類−遷移金属−窒素系合金粉末及びその安定的な製造方法を提供。
【解決手段】希土類金属を遷移金属粉末に拡散させる還元拡散法を用いて希土類−遷移金属系合金を合成する還元拡散工程、得られた希土類元素量(B)の反応生成物を密閉容器に装入して水素処理する水素処理工程、その後、水中に投入し、洗浄する水洗工程、次いで酸を添加し、希土類元素量(A)の合金スラリーを得る酸洗工程を含む希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法において、希土類元素量(B)が25〜27wt%であり、かつ酸洗工程で、希土類元素の溶出量(B−A)が、1.5≦B−A≦2.5となるように合金表面から希土類元素を溶出する希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、希土類−遷移金属系合金粉末、希土類−遷移金属−窒素系合金粉末及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、還元拡散法で得られた希土類−遷移金属系合金粉末の表面から希土類リッチ相を取り除くことで、高保磁力が可能な希土類−遷移金属系合金粉末、充分に窒化でき磁気特性を向上させた希土類−遷移金属−窒素系合金粉末及びその安定的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
Sm−Fe−Nで代表される希土類−遷移金属−窒素系磁石は、高性能かつ安価な希土類磁石として知られており、年々その用途が拡大している。そして、この希土類−遷移金属−窒素系磁石は、従来、熔解法や還元拡散法により製造されている。しかし、熔解法では原料として必要とされる希土類金属が高価であるという理由から、希土類−遷移金属−窒素系磁石の製造には、安価な希土類酸化物粉末を原料として用いる還元拡散法が主に採用されてきた。
【0003】
上記還元拡散法は、希土類酸化物粉末と遷移金属粉末とを目的組成に応じた所定割合で混合し、更にこれに該希土類酸化物粉末を還元するのに十分な当量以上の金属カルシウムを混合し、該混合物を非酸化性雰囲気中、850〜1150℃で所定時間熱処理することにより、該希土類酸化物粉末が該金属カルシウムで還元されて生成した希土類元素を該遷移金属粉末の粒子中に拡散させる。上記熱処理後、室温まで冷却し、得られた焙焼物を純水中に投入して、生成した酸化カルシウムと残留金属カルシウムとを除去し、得られたスラリーを乾燥して希土類−遷移金属系合金とするものである。
【0004】
この方法で希土類−遷移金属系合金を得れば、熔解法と比較して原料が安価であるだけでなく、鋳造合金塊の破砕、粗砕が不要であり、また、組織が緻密で均質な合金が得られるという長所がある。希土類−遷移金属−窒素系磁石は、上記合金粉末を抽出し、この粉末状の希土類−遷移金属系合金を窒化処理することで製造されている。そして、得られた希土類−遷移金属−窒素系磁石合金の粉末は、希土類−遷移金属−窒素系磁石における保磁力の発生機構がニュークリエーション型であることから、磁気特性の一つである減磁曲線の角形を高めるために、微粉砕後に希土類−遷移金属−窒素系磁石粉の粒度をそろえるのが一般的である。
【0005】
従来の還元拡散法で得られた合金を原料として用いた希土類−遷移金属−窒素系合金の永久磁石は、熔解法で得られた合金を同じ条件で窒化して得た原料による永久磁石と比較して、磁気特性が劣っていた。これは、希土類−遷移金属−窒素系磁石は、ニュークリエーション型の保磁力発生機構をもつため、原料の合金粒子の表面構造に特性が敏感であり、合金粒子の表面に微細な凹凸があると逆磁区発生の芽となり、磁石の保磁力が低下すると考えられている。
【0006】
従来の還元拡散法で製造した合金粉では、その合金粒子表面に微細な凹凸が多数見られ、これが磁気特性の低下原因となり、さらに、拡散反応を十分に行わせるために目的の組成より希土類原料を多く混合する必要があり、このため得られる合金粉に主相以外の希土類リッチな副相が生じ、これが磁化を低下させる原因にもなっていた。
【0007】
この問題を解決するため、本出願人は、従来の還元拡散法を改良して、還元拡散法における熱処理後の希土類−遷移金属系合金粉を酸性水溶液で表面処理し、合金粒子の表面状態を改質するとともに、余分な希土類リッチ相を選択的に溶解、溶出させ、磁石特性が改善された永久磁石を製造する方法を提案した(特許文献1参照)。
また、本出願人は、合金スラリーのpH値が特定値になるように、溶出剤(酢酸、塩酸など)を加えて、希土類リッチ相を溶出させ、そのpH値を維持することにより水洗工程から連続処理できるR−Fe−B系合金粉末の製造方法を提案した(特許文献2参照)。
【0008】
しかし、上記の方法によれば合金の粉砕性、耐酸化性を改良することができるが、希土類リッチ相をどこまで少なくするか、その程度が明瞭になっていなかった。すなわち、希土類リッチ相の前述した作用(主相結合作用および保磁力発現作用)が発揮できる程度にpH値、および処理時間を選択することとしているが、適切な溶出処理がなされているかどうかは磁石化してから判断しなければならず、原料粉やその他製造条件の微細な変動等があった場合にも十分に溶出処理を制御できているとは言えなかった。
【0009】
このような状況下、還元拡散工程後に得られた希土類−遷移金属系合金粒子の表面に存在する希土類リッチ相を除去し、明確な指標をもって高磁気特性の希土類−遷移金属−窒素系磁石合金を安定に得られる希土類−遷移金属系合金粉末を製造できる方法の出現が切望されていた。
【0010】
【特許文献1】
特開平10−60505号公報(特許請求の範囲、段落0008)
【特許文献2】
特開平11−222608号公報(特許請求の範囲、段落0036)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来の問題点に鑑み、還元拡散法で得られた希土類−遷移金属系合金粉末の表面から希土類リッチ相を取り除くことで、高保磁力が可能な希土類−遷移金属系合金粉末、充分に窒化でき磁気特性を向上させた希土類−遷移金属−窒素系合金粉末及びその安定的な製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、還元拡散法により得られた希土類−遷移金属系合金を酸洗する際に、合金表面から希土類リッチ相を溶出除去する程度(希土類元素の溶出量)を明確化し、特定量の希土類元素が溶出するような条件で酸洗浄することにより、原料粉やその他の製造条件に微細な変動等があっても容易に希土類−遷移金属系合金粉末の溶出処理を制御でき、結果として、高磁気特性の希土類−遷移金属−窒素系磁石合金を安価かつ安定して得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、希土類酸化物粉末、遷移金属粉末、及び還元剤からなる混合物を非酸化性雰囲気下で加熱処理し還元反応を起こさせ、希土類金属を遷移金属粉末に拡散させる還元拡散法を用いて希土類−遷移金属系合金を合成する還元拡散工程、得られた希土類元素量(B)の反応生成物を密閉容器に装入して水素処理する水素処理工程、その後、水中に投入し、洗浄する水洗工程、次いで得られた合金スラリーに酸を添加し、希土類元素量(A)の合金粉末とする酸洗工程を含む希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法であって、希土類元素量(B)が25〜27wt%であり、かつ酸洗工程で、希土類元素の溶出量(B−A)が、1.5≦B−A≦2.5となるように合金表面から希土類元素を溶出することを特徴とする希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法が提供される。
【0014】
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、希土類−遷移金属系合金が、SmとFeを主成分とする合金であることを特徴とする希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法が提供される。
【0015】
本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、水素処理工程において、予め密閉容器内を減圧して雰囲気ガスを排出してから、水素を充満させて大気圧よりも0.01〜0.11MPa高い圧力とし合金を自己発熱させ、その後、合金が実質的に発熱しなくなるまで水素で大気圧より高くなるように加圧を続けることを特徴とする希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法が提供される。
【0016】
本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、酸洗工程において、合金スラリーが、10〜25℃の温度に維持されることを特徴とする希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法が提供される。
【0017】
本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、酸洗工程において、合金スラリーに対して酢酸を投入し、pH=4〜6とすることを特徴とする希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法が提供される。
【0018】
本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかに係る希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法で得られた希土類−遷移金属系合金粉末が提供される。
【0019】
本発明の第7の発明によれば、第6の発明に係る希土類−遷移金属系合金粉末を用いて、窒素雰囲気中で熱処理を行い、合金粉末を窒化することを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法が提供される。
【0020】
本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、窒素雰囲気が、アンモニアと水素との混合ガスであることを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法が提供される。
【0021】
本発明の第9の発明によれば、第7又は8の発明に係る製造方法で得られた希土類−遷移金属−窒素系合金粉末が提供される。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の希土類−遷移金属系合金粉末、希土類−遷移金属−窒素系合金粉末及びその製造方法について、各項目ごとに詳細に説明する。
【0023】
1.希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法
本発明の希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法は、(1)希土類酸化物粉末、遷移金属粉末、及び還元剤の混合物を非酸化性雰囲気で加熱処理し、得られた希土類−遷移金属系合金を含む反応生成物を密閉容器に装入し、(2)密閉容器を減圧(真空引き)してから、水素処理して合金を自己発熱させ、(3)水素処理された合金を水中に投入し、デカンテーションによる洗浄を繰り返し、(4)次いで、希土類元素が合金表面から特定量だけ溶出するように酸洗して、固液分離し、(5)水洗・濾過・乾燥することで希土類−遷移金属系合金粉末を製造する方法である。
【0024】
(1)希土類金属の遷移金属粉末への還元拡散
まず、希土類酸化物粉末、遷移金属粉末、及び還元剤を配合し、原料混合物を調製する。必要により、その他の原料粉末を配合しても良い。
【0025】
希土類酸化物粉末としては、Yを含むランタノイド元素のいずれか1種または2種以上の酸化物であり、例えば、Y、La、Ce、Pr、Nd、及びSmの群から選ばれる少なくとも一種以上の酸化物が挙げられる。これらの少なくとも一種と、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbの群から選ばれる少なくとも一種の酸化物を組合せれば、磁気特性を高めることができる。特に、Pr、Nd、又はSmの酸化物を用いると、磁石の磁気特性が極めて高くなる。希土類元素の配合量は、希土類−遷移金属系合金中で、20〜28wt%、特に25〜27wt%とすることが磁気特性の点で望ましい。
【0026】
遷移金属粉末としては、鉄、コバルト、或いはニッケルなどが挙げられるが、磁気特性上、鉄が好ましい。鉄は、希土類−遷移金属系合金粉末の必須成分であるが、磁気特性を損なうことなく温度特性や耐食性を改善する目的で、その一部をCoまたはNiの一種以上で置換してもよい。粒度分布は、目標製品の粒度に近い分布のものを用いることができるが、例えば、10〜100μmの粒径であることが好ましい。
【0027】
還元剤としては、Li及び/又はCa、あるいはこれらの元素とNa、K、Rb、Cs、Mg、Sr又はBaから選ばれる少なくとも一種からなるアルカリ金属又はアルカリ土類金属元素が使用できる。これらアルカリ金属又はアルカリ土類金属元素を合金粉末の結晶相内部に0.001〜0.1wt%含有させることで、窒化処理に要する時間を短くすることができる。
【0028】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属元素の含有量が0.001wt%未満では処理効果が小さく、0.1wt%を超えると希土類−鉄−窒素系磁石合金の磁気特性、特に磁化が低下するので好ましくない。
【0029】
これら還元剤を使用する際、その投入量、還元剤と希土類酸化物の粉体性状、各種原料粉末の混合状態、還元拡散反応の温度と時間が注意深く制御される。なお、上記還元剤の中では、取り扱いの安全性とコストの点から金属Li又はCaが好ましく、特にCaが好ましい。
【0030】
また、その他の原料粉末としては、Ti、V、Cr、Mn、Cu、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Al、Si、又はCが挙げられ、その少なくとも一種以上を含有させることで、結晶構造が安定化し、窒化後の磁気特性を向上することができる。ただし、その含有量が多すぎると、磁気特性、特に飽和磁化が低下するため12wt%以下であることが望ましい。
【0031】
希土類酸化物粉末、遷移金属粉末、及び還元剤は、互いに均一な混合物になるように攪拌する。これら金属原料粉末混合物の粒度分布は、目標製品の粒度に近い分布が望ましい。この混合物は、アルゴンガスなどの不活性ガスが流通する非酸化性雰囲気中において、還元剤が蒸発しない温度まで昇温保持し、加熱焼成する。
【0032】
Caの融点は、838℃(沸点は1480℃)であるため、加熱処理は、1000〜1200℃程度の温度範囲とし、5〜15時間かけて加熱する。この条件であれば、還元剤は溶解するが蒸気にはならないため、効率的に処理できる。加熱焼成により、希土類酸化物が希土類元素に還元されるとともに、還元された希土類元素が遷移金属に拡散されて希土類−遷移金属系合金が合成される。
【0033】
この時、反応生成物に含まれる希土類−遷移金属系合金は、希土類元素量(B)が25〜27wt%にならなければならない。この元素量(B)は、原料仕込み時に、デカンテーションまでの工程で飛散流出する希土類元素量を考慮した濃度である。
【0034】
(2)水素処理
水素処理工程は、(i)合金を密閉容器内で真空引きする工程、(ii)水素を導入し、合金に水素を吸蔵させる工程、及び、(iii)合金を水素加圧し、自己発熱させる工程からなる。
【0035】
この工程では、得られた希土類−遷移金属系合金を含む反応生成物を、まず密閉容器に装入する。密閉容器は、ガス導入口と排気口をもち合金に対して水素を常に供給できる構造でなければならない。密閉容器へ合金を装入する際、なるべく合金の表面積が大きくなるようにするのが望ましい。
【0036】
(i)真空引き
この工程は、上記還元拡散により得られた反応生成物(希土類−遷移金属系合金)を効果的に水素処理するための準備工程である。
【0037】
希土類−遷移金属系合金は、通常、加熱炉内でアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下、加熱焼成して得られるので、合金の微細な細孔内或いは合金粉末同士の間隙には不活性ガスが吸蔵された状態にある。このような不活性ガスが吸蔵された状態では、水素を流通させても水素が合金の内部(細孔)に浸透しにくい。また、酸素が存在すると可燃性の水素と反応して危険なので、不活性ガスとともに予め排出しておく必要がある。密閉容器内を真空引きすることで水素を安全に使用でき、合金の還元反応を促進することができる。
【0038】
密閉容器内は、10−3Pa以下、好ましくは10−4Pa以下、さらに好ましくは10−5Pa以下の真空度に減圧する。この範囲の真空度とするのは、水素を供給したときに合金内の隅々まで水素が行き渡るようにするためである。10−3Paよりも高いと合金中に残留ガスが残り、その部分は水素の供給が遅れ水素吸蔵にバラツキが発生しやすくなる。ただし、10−5Paよりも小さくすることは、高価な真空設備を要することから経済的ではない。
【0039】
(ii)水素処理
真空引き後、希土類−遷移金属系合金を含む反応生成物を特定条件で水素処理する。本発明において、水素処理とは、反応生成物に対して外部から加熱を行わず、密閉容器内に水素を充満させて、一定の水素加圧下で処理させることをいう。
【0040】
密閉容器の導入口から水素ガスを導入し、容器内が大気圧よりも0.01〜0.11MPa、好ましくは0.03〜0.08MPaだけ高い圧力となるようにする。大気圧+0.01MPaよりも圧力が低いと、合金内で水素吸蔵反応が促進できず、大気圧+0.11MPaよりも高いと反応熱が高くなりすぎるので好ましくない。
【0041】
合金への水素吸蔵速度は温度に依存するものの、室温程度の温度環境下でも十分に吸蔵が開始され、また水素を吸蔵することによって自己発熱が起こり、この反応熱によって吸蔵速度が加速される。特開平9−241708号公報は、本出願人が還元反応生成物の粉砕性、水中での崩壊性を改善することを目的として提案したものである。アルゴンガスを封入した加熱炉で希土類金属を還元し遷移金属粉末に拡散し、反応終了後に還元反応生成物をステンレス容器に入れ、水素ガスを流しながら一定時間処理することを提案した。この方法では、還元拡散法における反応生成物(合金)を水素雰囲気中、100〜600℃で水素を吸蔵させている。これに対して、本発明は、合金を高温雰囲気に置かず自発的に水素を吸蔵させるので、その時の発熱を有効に利用できる。こうして高温雰囲気を要しないことから、さらにエネルギーを削減でき、より安価で安全に水素処理することも可能である。
【0042】
(iii)合金の水素加圧
合金を密閉容器内に入れてから水素を充満させることによって、合金は自発的に水素吸蔵を開始し、自己発熱して容器内の水素を消費するので、消費分の水素を補充しながら加圧する。
【0043】
密閉容器の導入口を開閉制御して、水素により容器内を大気圧よりも0.005〜0.03MPa、好ましくは0.008〜0.025MPaだけ高く加圧して、合金が吸蔵した分の水素を常に供給させる。供給量が少なくて、加圧が0.005MPa未満であると水素吸蔵反応を促進できず、容器内が大気圧よりも低い圧力になった場合は、容器内に空気(酸素)が逆流し、水素が爆発する危険性がある。一方、0.03MPaよりも高いと反応熱が高くなりすぎることもあり、容器劣化や容器破裂の可能性もあるため好ましくない。
【0044】
合金の温度が上昇して約300℃程度になり、自己発熱が実質的になくなるまで水素加圧条件をコントロールし続ける。自己発熱が始まってから発熱しなくなるまでの時間は、合金の種類、粒度、処理量、密閉容器の構造などによって異なるので、一概にはいえないが、5〜30時間、好ましくは8〜27時間、好ましくは10〜24時間とする。なお、合金の自己発熱が実質的になくなる時間とは、水素ガス雰囲気で合金の温度が室温に低下するまでの時間をさすものとする。5時間未満では合金が自己発熱を完了していない場合があり、30時間を超えれば自己発熱が完了しているので、そのまま放置しておくのは無駄である。
【0045】
前記の特開平9−241708号公報では、水素ガスを流しながら処理するため、合金に吸蔵されない分の水素が無駄になっていた。また、容器加熱用のヒーターで爆発がおきないように配管工事が必要であったが、本発明によれば合金が吸蔵した分の水素を補給するだけでよく、しかも容器外に水素ガスが漏れる恐れもない。
合金を含む反応生成物の温度を監視し、室温程度まで低下したのを確認できたら、水素処理は完了する。
【0046】
(3)デカンテーションによる合金の粉砕
次いで、反応生成物を密閉容器から取り出し、大気中に約0.5〜3時間放置した後、水中に投入してデカンテーションを行う。
【0047】
本発明によれば、上記のように合金が水素処理され室温まで冷却されているので、合金を含む反応生成物は、水との反応性が増している。その程度は、大気中にさらされるだけで大気中の水分と反応し自然崩壊が進行するほど大きい。このため、従来必要であった還元生成物を1cm角大に破砕する工程は必要なくなる。また、水中崩壊性が格段に向上しているので、デカンテーション前の篩分け時に篩上を減少させることができる。さらに、粒度は、デカンテーション前の段階で従来行っていた破砕粉砕工程を経た合金よりも細かくなっており、水洗で一層細かく粉砕されるので、その回数も減少させることが可能である。
【0048】
反応生成物は、水中に投入し0.1〜3時間攪拌すると、細かく崩壊しスラリー化する。得られた合金スラリーは、粗い篩を通し水洗槽に移す。このときスラリーのpHは11〜12程度であり、崩壊しないで篩上に残留する塊は殆どなくなり、残ったロスを非常に少なくすることができる。
【0049】
その後、スラリーのpHが10以下になるまでデカンテーションを繰り返す。合金を含む反応生成物の水崩壊性が高いために、スラリーのpHが10になるまでの合計水洗時間は、約60〜120分とすることができる。なお、デカンテーション条件は、1mの水を注水し、攪拌1分、静置分離1分、排水することを標準条件とし、デカンテーション開始から終了までの時間を1回の水洗時間とした。
【0050】
(4)酸洗
酸洗工程では、水洗して得た合金スラリーを溶出剤と接触させて、該スラリーの粒子表面に存在する希土類元素リッチ相を溶出させる。
【0051】
希土類元素の溶出量(B−A)が、1.5≦B−A≦2.5となるように合金表面から希土類元素を溶出することが重要である。このための溶出剤としては、酢酸、塩酸などの鉱酸が挙げられ、希酸、中でも希酢酸が好ましい。
【0052】
具体的には、まず、水洗して得た合金スラリーに多量の水を再び加える。そしてこのスラリーを攪拌しながら、スラリーの温度を10〜25℃に保ち、pH値が4〜6になるまで希酢酸を加えた後、そのpH値を維持するように希酢酸を添加していく。このようにすれば、水洗工程から連続して本工程の溶出処理を行うことができる。上記したように希酢酸が特に好ましいのは、この際、(イ)少量添加するだけで溶出液のpHを4〜6に維持することができ、つまり溶出液のpHコントロールが容易であること、(ロ)溶出反応の終点を容易に判定することができるからである。維持するpH値が4よりも低いと、希土類元素リッチ相以外の内部の相まで溶出しやすくなり、またpH値が6よりも高いと溶出に長時間を要するので好ましくない。
【0053】
また、スラリーの温度を10〜25℃に保つことが重要である。スラリーの温度が10℃よりも低いと、溶出が十分行えず、一方、25℃よりも高いと、希土類−遷移金属系合金粉の表面が酸化してしまい、この合金粉を用いた希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を磁石化したときの保磁力を低下させるので好ましくない。
【0054】
溶出反応の終わり(終点)は、希酢酸を添加しなくても上記pH値が維持できるようになった時点で判定する。希土類リッチ相を少なくする程度は、希土類リッチ相の前述した作用(主相結合作用および保磁力発現作用)が発揮できる程度にすればよい。そのために、適当な温度、pH値、および適当な処理時間(添加し始めてから上記溶出反応終点までの間の時間)を決めるようにする。
【0055】
上記水洗後の処理物は、希土類リッチ相が粒子表面に分散して存在しているので、本工程において用いる溶出剤と極めて容易に反応する。従って溶出効率よく溶出処理を行うことができる。得られた希土類−遷移金属系合金中の希土類元素量(A)は、上記のようにデカンテーション・酸洗工程を制御することで22.5〜25.5wt%となる。
本工程で得られた溶出処理物は、希土類リッチ相が少なくなっているため、製造されたR−Fe−B系合金粉末は、磁石化工程での耐酸化性を向上することができる。
【0056】
(5)水洗・濾過・乾燥
酸性水溶液で攪拌した後は、酸を完全に除去すべく、更にこの溶出処理物を純水で洗浄・ろ過し、乾燥して合金粉とする。乾燥には自然乾燥、流動乾燥、オーブン等公知の乾燥方法が使用できる。この際、水をアルコールと置換すると迅速に乾燥させることができる。
上記の方法で、本発明の希土類−遷移金属系合金粉末を得ることができる。
【0057】
2.希土類−遷移金属系合金粉末
得られた希土類−遷移金属系合金は、上記の方法によるデカンテーション・酸洗工程が制御され、溶出量(B−A)が1.5≦B−A≦2.5、好ましくは1.7≦B−A≦2.5となるように合金表面から希土類元素を溶出されている。この結果、合金中の希土類元素量(A)は22.5〜25.5wt%となる。
本発明では希土類と遷移金属が、Sm及びFeを主成分とする場合に特に大きな効果を得ることができる。
【0058】
3.希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法
上記の希土類−遷移金属系合金粉末は、窒素雰囲気中で熱処理すれば窒化される。
【0059】
希土類−遷移金属系合金粉末としては、その窒化率を良好にするために、通常106μm程度以下の粒子を用いることが望ましい。窒化処理では、合金粉(粒子)の大小によって窒化の程度が異なり、粒径が106μm程度を超える大きな粒子を用いると窒化が進まず、粒子内部が未窒化のまま残留してしまい、磁石化したときには磁化、保磁力の低下につながる。したがって、希土類−遷移金属系合金粉末に未崩壊の塊が残っている場合には、更に粉砕することが必要である。一方、粒径が30μmよりも小さいものでは、窒化が進行しすぎて求める結晶相が壊れアモルファス化してしまい、磁石化したときには保磁力の低下につながる。
【0060】
窒化のための窒素雰囲気は、窒素又はアンモニアを含む雰囲気であり、アンモニアは水素との混合ガスとして用いることが好ましい。アンモニアと水素との混合割合は、特に限定されないが、10〜70:30〜90、好ましくは30〜60:40〜70が好ましい。この範囲を外れ、アンモニアが少なすぎると窒化の効率が低下する。
【0061】
窒化処理は、300〜650℃、好ましくは350〜600℃の温度で行う。本発明では比較的低温で合金を窒化することができるが、温度が300℃未満では窒化反応に時間がかかるため好ましくない。窒化に要する処理時間も特に制限されないが、5〜10時間でよい。
【0062】
4.希土類−遷移金属−窒素系合金粉末
上記の方法により得られる希土類−遷移金属−窒素系合金粉末は、平均粒径が15〜30μmで、最大粒径が45〜50μmの比較的シャープな粒径分布を呈している。
【0063】
特に好ましい希土類−遷移金属−窒素系合金粉末は、累積10%粒度:8〜11μm、累積50%粒度:20〜25μm、累積90%粒度:35〜43μmで、かなりシャープな粒径分布をもつものである。
この希土類−遷移金属−窒素系の合金粉末に対し、平均粒径:3〜5μm程度になるように湿式ボールミルなどで粉砕を行えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いて製造されるボンド磁石の材料として適した希土類−遷移金属−窒素系の合金磁石粉となる。
【0064】
希土類−遷移金属−窒素系合金粉(微粉砕粉体)の磁気特性は、この合金粉を粉末圧縮成形機で成形し圧粉体とし、これをチオフィー型自記磁束計などで評価すればよい。本発明の合金磁石粉を用いて異方性射出成形磁石を製造すれば、BH)maxが12〜16MGOe(96〜128kJ/m)のように高い磁気特性をもつ磁石を得ることができる。
【0065】
【実施例】
次に実施例、比較例を用いて本発明をさらに説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
Sm粉末40kg、Fe粉90kg、金属カルシウム17kgを混合し、得られた混合物をステンレス製の反応容器内に入れ、アルゴンガスを封入し、これを加熱炉に装填し、2時間かけて1150℃まで昇温し、この温度に約10時間維持して還元拡散反応を行わせた。その後、反応容器を加熱炉に装填したまま室温まで冷却し、反応生成物を反応容器より取り出した。反応生成物は140kgであり、硬く焼結した状態になっていた。
この焼成物140kgをステンレス製密閉容器に封じ、容器内を真空にした後に水素を充填した。また、容器は、供給する水素により0.01MPa程度の圧力で容器内を常に加圧できるようにし、この状態で24時間放置した。その際、反応生成物は水素ガス充填の数分後から水素吸蔵が開始するとともに自己発熱が開始し、約1時間後に反応生成物温度が約300℃まで上昇する。その後、吸蔵反応が飽和するとともに反応生成物温度は低下し、大気開放が可能と考えられる室温程度まで降下するのに約24時間を要した。
こうして得られた反応生成物を大気中に約1時間放置し、全量を100リットルの水中に投入した。そして、1時間攪拌し、反応生成物を崩壊させた。得られたスラリーをJIS#48(篩下約300μm以下)の篩を通し、実効容量1mの水洗槽に移入した。このときのスラリーのpHは12であり、篩上に残ったロスは0.1kgであった。
スラリーのpHが10以下になるまでデカンテーションを繰り返した。デカンテーションは1mの水を注水し、攪拌1分、静置分離1分後、排水する条件とした。デカンテーション開始から終了までの時間を1回の水洗時間とした。その結果、スラリーのpHが10になるまで水洗時間の合計量は約80分となった。
その後、一端排水した後に約10℃の水を充填しスラリーとした。このスラリーを攪拌しながらpHを5±0.2になるように酢酸を添加しながら80分間、酸洗を行い固液分離し、乾燥してSmFe合金粉末120kgを得た。
このとき、酸洗前の希土類−遷移金属合金中の希土類元素量(B)は26.5wt%、酸洗後の希土類元素量(A)は24.1wt%であり、溶出量(B−A)=2.4wt%であった。
更に、得られたSmFe粉に対し、アンモニア+水素(アンモニア流量:30L/min+水素流量:30L/min)の雰囲気下で460℃、8時間の熱処理を行い、SmFeN合金粉とした。
更に、得られたSmFeN合金粉に対し、平均粒径3μm程度になるように、SmFeN合金粉を湿式ボールミルで粉砕してSmFeN微粉とし、粉末圧縮成形した圧粉体の磁気特性をチオフィー型自記磁束計(東英科学社製)を用いて測定した。
同様の方法で5ロットのSmFeN合金粉を製造し、それぞれについて磁気特性の評価を行った。その磁気特性を表1に示す。
【0067】
(実施例2)
実施例1と同様な方法で還元反応生成物(焼成物)を作り、得られた反応生成物を実施例1に示した条件で大気中に放置後、水中に投入し、1時間攪拌し反応生成物を崩壊した。得られたスラリーを水洗槽に移し、スラリーのpHが10以下になるまでデカンテーションを繰り返した。デカンテーション条件は1mの水を注水し、攪拌1分、静置分離1分、排水とした。デカンテーション開始から終了までの時間を1回の水洗時間とした。その結果、スラリーのpHが10になるまで水洗時間合計量は約80分となった。
その後、一旦排水した後に約10℃の水を充填しスラリーとした。このスラリーを攪拌しながら、pHを5.8±0.2になるように酢酸を添加し、80分間、酸洗を行い固液分離し、乾燥してSmFe合金粉末120kgを得た。このとき、酸洗前の希土類−遷移金属合金中の希土類元素量(B)は26.5wt%、酸洗後の希土類元素量(A)は24.8wt%であり、溶出量(B−A)=1.7wt%であった。
更に、得られたSmFe粉に対し、アンモニア+水素(アンモニア流量:30L/min+水素流量:30L/min)の雰囲気下で460℃、8時間の熱処理を行いSmFeN合金粉とした。
更に、得られたSmFeN合金粉に対し、平均粒径:3μm程度になるように、SmFeN合金粉を湿式ボールミル粉砕してSmFeN微粉とし、粉末圧縮成形した圧粉体の磁気特性をチオフィー型自記磁束計(東英科学社製)を用いて測定した。
同様の方法で5ロットのSmFeN合金粉を製造し、それぞれについて磁気特性の評価を行った。その磁気特性を表1に示す。
【0068】
(実施例3)
実施例1と同様な方法で還元反応生成物(焼成物)を作り、得られた反応生成物を実施例1に示した条件で大気中に放置後、水中に投入し、1時間攪拌し反応生成物を崩壊した。得られたスラリーを水洗槽に移し、スラリーのpHが10以下になるまでデカンテーションを繰り返した。デカンテーション条件は1mの水を注水し、攪拌1分、静置分離1分、排水とした。デカンテーション開始から終了までの時間を1回の水洗時間とした。その結果、スラリーのpHが10になるまで水洗時間合計量は約80分となった。
その後、一旦排水した後に約10℃の水を充填しスラリーとした。このスラリーを攪拌しながら、pHを4.2±0.2になるように酢酸を添加し80分間、酸洗を行い固液分離し、乾燥してSmFe合金粉末120kgを得た。このとき、酸洗前の希土類−遷移金属合金中の希土類元素量(B)は26.5wt%、酸洗後の希土類元素量(A)は24.0wt%であり、溶出量(B−A)=2.5wt%であった。
更に、得られたSmFe粉に対しアンモニア+水素(アンモニア流量:30L/min+水素流量:30L/min)の雰囲気下で460℃、8時間の熱処理を行いSmFeN合金粉とした。更に、得られたSmFeN合金粉に対し、平均粒径:3μm程度になるように、SmFeN合金粉を湿式ボールミル粉砕してSmFeN微粉とし、粉末圧縮成形した圧粉体の磁気特性をチオフィー型自記磁束計(東英科学社製)を用いて測定した。
同様の方法で5ロットのSmFeN合金粉を製造し、それぞれについて磁気特性の評価を行った。その磁気特性を表1に示す。
【0069】
(実施例4)
実施例1と同様な方法で還元反応生成物(焼成物)を作り、得られた反応生成物を実施例1に示した条件で大気中に放置後、水中に投入し、1時間攪拌し反応生成物を崩壊した。得られたスラリーを水洗槽に移し、スラリーのpHが10以下になるまでデカンテーションを繰り返した。デカンテーション条件は1mの水を注水し、攪拌1分、静置分離1分、排水とした。デカンテーション開始から終了までの時間を1回の水洗時間とした。その結果、スラリーのpHが10になるまで水洗時間合計量は約80分となった。
その後、一旦排水した後に約20℃の水を充填しスラリーとした。このスラリーを攪拌しながら、pHを5±0.2になるように酢酸を添加し、80分間、酸洗を行い固液分離し、乾燥してSmFe合金粉末120kgを得た。このとき、酸洗前の希土類−遷移金属合金中の希土類元素量(B)は26.5wt%、酸洗後の希土類元素量(A)は24.1wt%であり、溶出量(B−A)=2.4wt%であった。
更に、得られたSmFe粉に対しアンモニア+水素(アンモニア流量:30L/min+水素流量:30L/min)の雰囲気下で460℃、8時間の熱処理を行いSmFeN合金粉とした。
更に、得られたSmFeN合金粉に対し、平均粒径:3μm程度になるように、SmFeN合金粉を湿式ボールミル粉砕してSmFeN微粉とし、粉末圧縮成形した圧粉体の磁気特性をチオフィー型自記磁束計(東英科学社製)を用いて測定した。
同様の方法で5ロットのSmFeN合金粉を製造し、それぞれについて磁気特性の評価を行った。その磁気特性を表1に示す。
【0070】
(比較例1)
実施例1と同様な方法で還元反応生成物(焼成物)を作り、得られた反応生成物を実施例1に示した条件で大気中に放置後、水中に投入し、1時間攪拌し反応生成物を崩壊した。得られたスラリーを水洗槽に移し、スラリーのpHが10以下になるまでデカンテーションを繰り返した。デカンテーション条件は1mの水を注水し、攪拌1分、静置分離1分、排水とした。デカンテーション開始から終了までの時間を1回の水洗時間とした。その結果、スラリーのpHが10になるまで水洗時間合計量は約80分となった。
その後、一旦排水した後に約5℃の水を充填しスラリーとした。このスラリーを攪拌しながら、pHを5±0.2になるように酢酸を添加し、80分間、酸洗を行い固液分離し、乾燥してSmFe合金粉末120kgを得た。このとき、酸洗前の希土類−遷移金属合金中の希土類元素量(B)は26.4wt%、酸洗後の希土類元素量(A)は25.5wt%であり、溶出量(B−A)=0.9wt%であった。
更に、得られたSmFe粉に対しアンモニア+水素(アンモニア流量:30L/min+水素流量:30L/min)の雰囲気下で460℃、8時間の熱処理を行いSmFeN合金粉とした。
更に、得られたSmFeN合金粉に対し、平均粒径:3μm程度になるように、SmFeN合金粉を湿式ボールミル粉砕してSmFeN微粉とし、粉末圧縮成形した圧粉体の磁気特性をチオフィー型自記磁束計(東英科学社製)を用いて測定した。
同様の方法で5ロットのSmFeN合金粉を製造し、それぞれについて磁気特性の評価を行った。その磁気特性を表1に示す。
【0071】
(比較例2)
実施例1と同様な方法で還元反応生成物(焼成物)を作り、得られた反応生成物を実施例1に示した条件で大気中に放置後、水中に投入し、1時間攪拌し反応生成物を崩壊した。得られたスラリーを水洗槽に移し、スラリーのpHが10以下になるまでデカンテーションを繰り返した。デカンテーション条件は1mの水を注水し、攪拌1分、静置分離1分、排水とした。デカンテーション開始から終了までの時間を1回の水洗時間とした。その結果、スラリーのpHが10になるまで水洗時間合計量は約80分となった。
その後、一旦排水した後に約27℃の水を充填しスラリーとした。このスラリーを攪拌しながらpHを5±0.2になるように酢酸を添加しながら、80分間酸洗を行い固液分離し、乾燥してSmFe合金粉末120kgを得た。このとき、酸洗前の希土類−遷移金属合金中の希土類元素量(B)は26.6wt%、酸洗後の希土類元素量(A)は23.9wt%であり、溶出量(B−A)=2.7wt%であった。
更に、得られたSmFe粉に対しアンモニア+水素(アンモニア流量:30L/min+水素流量:30L/min)の雰囲気下で460℃、8時間の熱処理を行いSmFeN合金粉とした。
更に、得られたSmFeN合金粉に対し、平均粒径:3μm程度になるように、SmFeN合金粉を湿式ボールミル粉砕してSmFeN微粉とし、粉末圧縮成形した圧粉体の磁気特性をチオフィー型自記磁束計(東英科学社製)を用いて測定した。
同様の方法で5ロットのSmFeN合金粉を製造し、それぞれについて磁気特性の評価を行った。その磁気特性を表1に示す。
【0072】
(比較例3)
実施例1と同様な方法で還元反応生成物(焼成物)を作り、得られた反応生成物を実施例1に示した条件で大気中に放置後、水中に投入し、1時間攪拌し反応生成物を崩壊した。得られたスラリーを水洗槽に移し、スラリーのpHが10以下になるまでデカンテーションを繰り返した。デカンテーション条件は1mの水を注水し、攪拌1分、静置分離1分、排水とした。デカンテーション開始から終了までの時間を1回の水洗時間とした。その結果、スラリーのpHが10になるまで水洗時間合計量は約80分となった。
その後、一旦排水した後に、約10℃の水を充填しスラリーとした。このスラリーを攪拌しながら、pHを3±0.2になるように酢酸を添加し、80分間、酸洗を行い固液分離し、乾燥してSmFe合金粉末120kgを得た。このとき、酸洗前の希土類−遷移金属合金中の希土類元素量(B)は26.6wt%、酸洗後の希土類元素量(A)は23.5wt%であり、溶出量(B−A)=3.1wt%であった。
更に、得られたSmFe粉に対しアンモニア+水素(アンモニア流量:30L/min+水素流量:30L/min)の雰囲気下で460℃、8時間の熱処理を行いSmFeN合金粉とした。
更に、得られたSmFeN合金粉に対し、平均粒径:3μm程度になるように、SmFeN合金粉を湿式ボールミル粉砕してSmFeN微粉とし、粉末圧縮成形した圧粉体の磁気特性をチオフィー型自記磁束計(東英科学社製)を用いて測定した。
同様の方法で5ロットのSmFeN合金粉を製造し、それぞれについて磁気特性の評価を行った。その磁気特性を表1に示す。
【0073】
(比較例4)
実施例1と同様な方法で還元反応生成物(焼成物)を作り、得られた反応生成物を実施例1に示した条件で大気中に放置後、水中に投入し、1時間攪拌し反応生成物を崩壊した。得られたスラリーを水洗槽に移し、スラリーのpHが10以下になるまでデカンテーションを繰り返した。デカンテーション条件は1mの水を注水し、攪拌1分、静置分離1分、排水とした。デカンテーション開始から終了までの時間を1回の水洗時間とした。その結果、スラリーのpHが10になるまで水洗時間合計量は約80分となった。
その後、一旦排水した後に約10℃の水を充填しスラリーとした。このスラリーを攪拌しながら、pHを7±0.2になるように酢酸を添加し、80分間、酸洗を行い固液分離し、乾燥してSmFe合金粉末120kgを得た。このとき、酸洗前の希土類−遷移金属合金中の希土類元素量(B)は26.6wt%、酸洗後の希土類元素量(A)は25.5wt%であり、溶出量(B−A)=1.1wt%であった。
更に、得られたSmFe粉に対しアンモニア+水素(アンモニア流量:30L/min+水素流量:30L/min)の雰囲気下で460℃、8時間の熱処理を行いSmFeN合金粉とした。
更に、得られたSmFeN合金粉に対し、平均粒径:3μm程度になるように、SmFeN合金粉を湿式ボールミル粉砕してSmFeN微粉とし、粉末圧縮成形した圧粉体の磁気特性をチオフィー型自記磁束計(東英科学社製)を用いて測定した。
同様の方法で5ロットのSmFeN合金粉を製造し、それぞれについて磁気特性の評価を行った。その磁気特性を表1に示す。
【0074】
【表1】
Figure 2005008950
【0075】
【表2】
Figure 2005008950
【0076】
全般に実施例では合金の酸洗工程において、特定の条件(pH、温度)を採用したために、比較例に対して、保磁力(iHc)のばらつきが1/10程度に小さく、かつ磁気特性が高くなっていることが分かる。
すなわち、上記実施例1〜3と比較例3、4を対比すると、合金の酸洗工程において、合金スラリーのpHが低いと希土類元素が溶出しやすくなり、pHが高いと溶出しにくくなるために、実施例では保磁力(iHc)の平均が高く、標準偏差が小さくなっている。これに対して、比較例3では、残留磁束密度(Br)が高くなる場合もあるが、保磁力(iHc)が低下してしまい、サンプル間のばらつきも大きくなっている。また、比較例4では、pHが高めの条件としたため溶出量が少な目になり、残留磁束密度(Br)が低くなっている。
一方、実施例1、4と比較例1、2を対比すると、合金の酸洗工程において、合金スラリーの温度が低いと希土類元素が溶出しにくく、温度が高いと溶出しやすくなるために、実施例では保磁力(iHc)の平均が高く、標準偏差が小さくなっている。これに対して、比較例1では、温度が低いため、溶出量が減少し、残留磁束密度(Br)が低下している。また、比較例2では、温度が高すぎる条件としたため溶出量が増加し、残留磁束密度(Br)は高めであるが、保磁力(iHc)が低下し、サンプル間のばらつきも大きくなっている。
【0077】
【発明の効果】
本発明によれば、希土類−遷移金属系合金粉末の表面から希土類リッチ相を少なくすることができるので、希土類−遷移金属系合金粉末を充分に窒化できることから磁気特性が向上した希土類−遷移金属−窒素系合金粉末を効率的に製造することができる。
特に、特定の溶出条件で合金粉末を酸洗するので製造ロットによって製品特性(磁気特性)のばらつきが少なくなり、安定して合金磁石粉末を生産できることから、工業的価値は極めて大きい、

Claims (9)

  1. 希土類酸化物粉末、遷移金属粉末、及び還元剤からなる混合物を非酸化性雰囲気下で加熱処理し還元反応を起こさせ、希土類金属を遷移金属粉末に拡散させる還元拡散法を用いて希土類−遷移金属系合金を合成する還元拡散工程、得られた希土類元素量(B)の反応生成物を密閉容器に装入して水素処理する水素処理工程、その後、水中に投入し、洗浄する水洗工程、次いで得られた合金スラリーに酸を添加し、希土類元素量(A)の合金粉末とする酸洗工程を含む希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法であって、
    希土類元素量(B)が25〜27wt%であり、かつ酸洗工程で、希土類元素の溶出量(B−A)が、1.5≦B−A≦2.5となるように合金表面から希土類元素を溶出することを特徴とする希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法。
  2. 希土類−遷移金属系合金が、SmとFeを主成分とする合金であることを特徴とする請求項1に記載の希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法。
  3. 水素処理工程において、予め密閉容器内を減圧して雰囲気ガスを排出してから、水素を充満させて、大気圧よりも0.01〜0.11MPa高い圧力とし合金を自己発熱させ、その後、合金が実質的に発熱しなくなるまで水素で大気圧より高くなるように加圧を続けることを特徴とする請求項1に記載の希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法。
  4. 酸洗工程において、合金スラリーが、10〜25℃の温度に維持されることを特徴とする請求項1に記載の希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法。
  5. 酸洗工程において、合金スラリーに対して酢酸を投入し、pH=4〜6とすることを特徴とする請求項1に記載の希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の希土類−遷移金属系合金粉末の製造方法で得られた希土類−遷移金属系合金粉末。
  7. 請求項6に記載の希土類−遷移金属系合金粉末を用いて、窒素雰囲気中で熱処理を行い、合金粉末を窒化することを特徴とする希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法。
  8. 窒素雰囲気が、アンモニアと水素との混合ガスであることを特徴とする請求項7に記載の希土類−遷移金属−窒素系合金粉末の製造方法。
  9. 請求項7又は8に記載の方法で得られた希土類−遷移金属−窒素系合金粉末。
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