JP2005006539A - 無細胞系タンパク質合成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】カイコ抽出液または昆虫培養細胞抽出液を使用して無細胞系でタンパク質を製造する方法であって、ハイスループット化可能な新規な無細胞系タンパク質合成方法を提供する。
【解決手段】インビトロで転写反応を行う工程と、転写反応後の転写反応液を、マグネシウムの最終濃度が10mM以下となるように節足動物由来の抽出物を含有する翻訳反応用溶液に添加して調製した翻訳反応液を用いて翻訳反応を行う工程とを含む、無細胞系でタンパク質を製造する方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無細胞系タンパク質合成方法(無細胞系でタンパク質を製造する方法)に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ヒトゲノムを始め多くの生物の遺伝情報が解読されてきている。このような中、ポストゲノム研究として、これらの遺伝情報に対応するタンパク質の機能解析やゲノム創薬が注目を集めている。これらの遺伝情報に対応するタンパク質を医薬品などに応用、利用するには、莫大な種類のタンパク質を短時間で簡単に合成することが必要となってくる。
【0003】
現在、タンパク質の生産方法には、遺伝子組換え技術によって酵母や昆虫細胞などの生細胞を用いる発現系(以下、「細胞系」ということがある)が広く利用されている。しかし、生細胞は自己機能を維持するために外来タンパク質を排除する傾向があり、また生細胞で細胞毒タンパク質を発現すると細胞が生育しないなど発現が困難なタンパク質も多い。
【0004】
一方、細胞系を使用しないタンパク質の生産方法として、細胞破砕液や抽出液に基質や酵素などを加えるなどして生物の遺伝情報翻訳系または遺伝情報転写/翻訳系を試験管内に取り揃え、目的タンパク質をコードするmRNAまたは鋳型DNAを用いて、アミノ酸を望みの順番に必要な残基数結合させることのできる合成系を再構築する、無細胞系のタンパク質合成が知られている。このような無細胞系タンパク質合成では、上記細胞系のタンパク質合成のような制約を受けにくく、生物の命を断つことなくタンパク質の合成を行うことができ、またタンパク質の生産に培養などの操作を伴わないため細胞系と比較して短時間にタンパク質の合成を行うことができる。さらに無細胞系タンパク質合成では、生命体が利用していないアミノ酸配列からなるタンパク質の大量生産も可能となることから、有望な発現方法であると期待されている。このような無細胞系のタンパク質合成に供する細胞破砕液や抽出液として、種々の生物由来のものを使用することが検討され、研究が進められている。
【0005】
無細胞系タンパク質合成用抽出液としては、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球、大腸菌、昆虫培養細胞など由来のものが、従来より知られている。本発明者らは、これまで、カイコ組織由来の抽出液や昆虫培養細胞由来の抽出液を使用した無細胞系タンパク質合成方法を提案してきている(たとえば、特願2002−355906号明細書、特願2002−365142号明細書、特願2002−382415号明細書)。本発明者らが提案するカイコ組織由来の抽出液(カイコ抽出液)や昆虫培養細胞由来の抽出液(昆虫培養細胞抽出液)を用いた無細胞系タンパク質合成方法では、従来の方法と比較して、抽出液の調製が格段に容易であり、真核生物由来であるため糖タンパク質の合成も可能であるという利点があり、非常に有用である。
【0006】
上記本発明者らが提案する無細胞系タンパク質合成方法は、DNAもしくはmRNAを鋳型として、コードされているタンパク質を合成するものである。すなわち、DNAよりmRNAを転写する転写反応と、該転写反応で得られたmRNAの情報を読み取ってタンパク質を合成する翻訳反応とを、上記抽出液を用いて連続的に行う方法(転写/翻訳系)、あるいは、mRNAを鋳型として翻訳反応のみを、上記抽出液を用いて行う方法(翻訳系)の二通りの方法で、無細胞系のタンパク質合成を行う。しかしながら、DNAを鋳型とする方法(転写/翻訳系)では、最終的なタンパク質合成量が非常に低くなってしまっていた。また、mRNAを鋳型とする方法(翻訳系)では、インビトロ転写反応、転写反応で得られたmRNAの精製、と抽出液を用いた翻訳反応に至るまでの工程数が多く煩雑な手間を要し、全工程を鑑みると、1ステップ法と同程度のタンパク質合成量を得るまでに長時間を要する。このようにこれまでの方法では、無細胞系タンパク質合成を多検体処理のようなハイスループットな技術とするための大きな障壁があった。
このようにカイコ抽出液または昆虫培養細胞抽出液を使用して、ハイスループットにタンパク質を合成し得るべく、DNAを鋳型とする場合よりもタンパク質合成量が向上されつつも、mRNAを鋳型とする場合よりも簡略化されたステップでタンパク質を合成し得る、新規な無細胞系タンパク質合成方法の開発が望まれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、カイコ抽出液または昆虫培養細胞抽出液を使用して無細胞系でタンパク質を製造する方法であって、ハイスループット化可能な新規な無細胞系タンパク質合成方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下のとおりである。
(1)インビトロで転写反応を行う工程と、
転写反応後の転写反応液を、マグネシウムの最終濃度が10mM以下となるように節足動物由来の抽出物を含有する翻訳反応用溶液に添加して調製した翻訳反応液を用いて翻訳反応を行う工程とを含む、無細胞系でタンパク質を製造する方法。
(2)節足動物由来の抽出物がカイコ組織から抽出されたものである、上記(1)に記載の方法。
(3)節足動物由来の抽出物が昆虫培養細胞から抽出されたものである、上記(1)に記載の方法。
(4)昆虫培養細胞がTrichoplusia ni卵細胞由来の培養細胞である、上記(3)に記載の方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の無細胞系タンパク質合成方法(無細胞系でタンパク質を製造する方法)は、インビトロで転写反応を行う工程と、インビトロで転写反応を行った後の転写反応液を、マグネシウムが特定の濃度以下となるように、節足動物由来の抽出物を含有する翻訳反応用溶液に添加して調製した翻訳反応液を用いて翻訳反応を行う工程とを含むことを特徴とする。以下、本明細書中において、この本発明の方法を「2ステップ法」と呼ぶことがある(▲1▼DNAを鋳型として転写反応を行うステップと、▲2▼転写反応後の転写反応液を上記のように翻訳反応用溶液に添加して調製した翻訳反応液を用いて翻訳反応を行うステップ、との2ステップを含有する)。
2ステップ法によれば、反応槽内で転写反応、翻訳反応を連続的に行ってDNAからタンパク質を合成する従来法(以下、この従来法を「1ステップ法」と呼ぶ。)とは異なり、転写反応と翻訳反応とで好適な塩濃度の範囲が異なるために、結果として合成タンパク質の量が少なくなってしまうということがない。さらに、転写反応にてmRNAを合成し、精製後のmRNAを鋳型として翻訳反応を行ってタンパク質を合成する従来法(以下、この従来法を「3ステップ法」と呼ぶ;▲1▼転写反応を行うステップと、▲2▼転写反応で得られたmRNAを精製するステップと、▲3▼精製後のmRNAを用いて翻訳反応液を用いて翻訳反応を行うステップ、との3ステップを含有する)とは異なり、mRNAの精製のステップを要することなく上記の如き合成量にて効率よくタンパク質を合成することができる。このような本発明の2ステップ法は、多検体処理などのようなハイスループットを要する無細胞系タンパク質合成に非常に有用である。
【0010】
3ステップ法に使用される転写反応液、翻訳反応用溶液は、通常、マグネシウム塩を含有しており、各液中における好適なマグネシウム濃度は異なる(後述するように、転写反応液において好ましくは1mM〜200mM(より好ましくは10mM〜100mM)、翻訳反応用溶液において好ましくは0.1mM〜10mM(より好ましくは0.5mM〜3mM))。1ステップ法では、このように転写反応と翻訳反応とでその反応に要する好適なマグネシウム濃度が異なるところ、1液(転写/翻訳反応液)で反応を行うため、良好なタンパク質合成量を達成することができなかったものと考えられる。しかし3ステップ法では、好適な組成に調製された転写反応液を用いてインビトロで転写反応を行った後、得られたmRNAを精製し、これを好適な組成に調製された翻訳反応用溶液に添加して、翻訳反応を行う。このように3ステップ法の場合、転写反応液および翻訳反応用溶液としては好適な組成に予め調製されたものを用いているため、転写反応から翻訳反応への際の塩の持込み(翻訳反応用溶液の不所望な塩濃度の増加)を防止する観点から、mRNAを精製しこれを翻訳反応用溶液に添加するようにしている。
本発明の2ステップ法では、インビトロ転写反応後の転写反応液を、マグネシウムの最終濃度が10mM以下(好ましくは5mM以下)となるように、翻訳反応用溶液に添加する。本明細書中では、マグネシウム濃度が上記となるようにインビトロ転写反応後の転写反応液を翻訳反応用溶液に添加して調製した液を「翻訳反応液」と呼ぶ。上記マグネシウムの最終濃度が10mMを越える場合には、翻訳反応を行うにはマグネシウムの濃度が高すぎる条件となり、翻訳反応の効率が低下してしまう。
【0011】
具体的には、インビトロ転写反応後の転写反応液を、好適なマグネシウム濃度に予め調製した翻訳反応用溶液に、添加後のマグネシウム濃度が10mM以下となるように、体積量を減少させて添加し、翻訳反応液を調製する。あるいは、上記好適なマグネシウム濃度よりも低い濃度に予め調製した翻訳反応用溶液に、上記よりは多目の体積量となるように減少させて、翻訳反応液を調製するようにしてもよい。
【0012】
また、上記転写反応液を添加して調製した後の翻訳反応液中におけるマグネシウムの最終濃度は0.1mM以上であるのが好ましく、1mM以上であるのがより好ましい。上記マグネシウムの最終濃度が0.1mM未満であると、翻訳反応の効率が極端に低下してしまう傾向にあるためである。
【0013】
本発明における転写反応液は、インビトロで転写反応を行い得る従来公知の適宜の組成のものを使用でき、特に制限されるものではない。たとえば、鋳型DNA、RNAポリメラーゼ、NTPs(ATP、GTP、CTP、UTP)、マグネシウム塩を少なくとも含有する転写反応液が例示される。
【0014】
転写反応液に含有される鋳型DNAは、プラスミドDNAなどの環状DNAであってもよいし、PCR産物などの直鎖状DNAであってもよい。上記鋳型DNAは、目的タンパク質をコードする塩基配列と、その5’上流側に位置するプロモーター配列とを少なくとも有する。本発明に用いる鋳型DNAは、コードするタンパク質(ペプチドを含む)に特に制限はなく、生細胞で細胞毒となるタンパク質をコードする塩基配列を有するものであってもよいし、また糖タンパク質をコードする塩基配列を有するものであってもよい。また鋳型DNAにおけるプロモーター配列としては、特に制限されるものではないが、たとえば、従来公知のT7プロモーター配列、SP6プロモーター配列、T3プロモーター配列などが挙げられる。また、本発明に用いる鋳型DNAは、上記目的タンパク質をコードする塩基配列の3’下流側に転写を終結させる機能を有するターミネーター配列、および/または、合成されたmRNAの安定性などの観点からポリA配列を有しているのが好ましい。上記ターミネーター配列としては、たとえば、従来公知のT7ターミネーター配列、SP6ターミネーター配列、T3ターミネーター配列などが挙げられる。
なお本発明に用いる鋳型DNAは、塩基数に特に制限はなく、目的とするタンパク質を合成し得るならば全てが同じ塩基数でなくともよい。また、目的とするタンパク質を合成し得る程度に相同な配列であれば、各鋳型DNAは、複数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加されたものであってよい。
【0015】
鋳型DNAは、転写反応液中において、1μg/mL〜200μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜100μg/mL含有されることがより好ましい。鋳型DNAが1μg/mL未満または200μg/mLを越えると、本発明の2ステップ法にて充分な量のタンパク質を合成し得る量のmRNAをインビトロ転写反応により得られない傾向にあるためである。
【0016】
転写反応液中におけるRNAポリメラーゼは、鋳型DNAが有するプロモーター配列に応じて適宜選択することができる。たとえば、鋳型DNAがT7プロモーター配列を有している場合は、その配列を認識するT7 RNAポリメラーゼを使用することが好ましい。また、外来鋳型DNAが、SP6またはT3プロモーター配列を有している場合は、それぞれ、SP6 RNAポリメラーゼまたはT3 RNAポリメラーゼを使用することが好ましい。
RNAポリメラーゼは、mRNA合成の速度の観点から、転写反応液中に0.1U/μL〜10U/μL含有されることが好ましく、0.5U/μL〜5U/μL含有されることがより好ましい。RNAポリメラーゼが0.1U/μL未満または10U/μLを越えると、本発明の2ステップ法にて充分な量のタンパク質を合成し得る量のmRNAをインビトロ転写反応により得られにくい傾向にあるためである。
【0017】
転写反応液中におけるNTPs(ATP、GTP、CTP、UTP)の含有量に特に制限はないが、1mM〜20mM含有されるのが好ましく、2mM〜10mM含有されるのがより好ましい。NTPsの含有量が1mM未満または20mMを越えると、本発明の2ステップ法にて充分な量のタンパク質を合成し得る量のmRNAがインビトロ転写反応により得られにくくなる傾向にあるためである。当該NTPsは、通常、ATP、GTP、CTPおよびUTPを概ね等量ずつ含有してなる。
【0018】
転写反応液中におけるマグネシウム塩としては、インビトロ転写反応および翻訳反応を阻害するものでなければ特に制限はなく、たとえば酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、乳酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウムなど一般的な形態で使用することができ、中でも酢酸マグネシウムを使用するのが好ましい。転写反応液中におけるマグネシウム塩の含有量に特に制限はないが、たとえば酢酸マグネシウムなど2価の塩である場合、1mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜100mM含有されることがより好ましい。マグネシウム塩が1mM未満または200mMを越えると、本発明の2ステップ法にて充分な量のタンパク質を合成し得る量のmRNAがインビトロ転写反応により得られにくくなる傾向にあるためである。
【0019】
転写反応液は、さらに、ジチオトレイトール(DTT)、RNaseインヒビターおよびスペルミジンを含有するのが好ましい。DTTは、酸化防止の目的で配合されるものであり、転写反応液中において1mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜100mM含有されることがより好ましい。RNaseインヒビターは、インビトロ転写反応にて合成したmRNAがRNaseによって不所望に消化されるのを防止する目的で添加されるものであり、転写反応液中において0.1U/μL〜20U/μL含有されることが好ましく、0.2U/μL〜10U/μL含有されることがより好ましい。またスペルミジンは、転写における伸長反応を促進する目的で添加されるものであり、0.1mM〜20mM含有されることが好ましく、0.5mM〜10mM含有されることがより好ましい。
【0020】
また転写反応液は、通常、緩衝剤を含有する。緩衝剤としては、特に制限はなく、たとえば、HEPES−KOH、Tris−HCl、酢酸−酢酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、リン酸、ホウ酸、MES、PIPESなどを使用することができる。緩衝剤は、転写反応液のpHが4〜10に保持されるようなものを使用するのが好ましく、pHが6〜8に保持されるようなものを使用するのがより好ましい。このような観点より、上記中でもHEPES−KOH(pH6〜8)を使用するのが特に好ましい。
当該転写反応液中における緩衝剤の含有量に特に制限はないが、好適な緩衝能を保持する観点から、10mM〜400mM含有されることが好ましく、20mM〜200mM含有されることがより好ましい。緩衝剤が10mM未満であると、酸性または塩基性物質の添加によりpHの急激な変動を引き起こす傾向にあるためであり、また緩衝剤が400mMを越えると、塩濃度が高くなり過ぎる傾向にあるためである。
【0021】
すなわち、本発明に用いる転写反応液は、1μg/mL〜200μg/mLの鋳型DNA、0.1U/μL〜10U/μLのRNAポリメラーゼ、1mM〜20mMのNTPs、1mM〜200mMの酢酸マグネシウム、1mM〜200mMのDTT、0.1U/μL〜20U/μLのRNaseインヒビター、0.1mM〜20mMのスペルミジン、10mM〜400mMのHEPES−KOH(pH6〜8)を含有するように実現されるのが好ましい。
【0022】
本発明において、上述したような転写反応液を用いたインビトロ転写反応は、従来公知のたとえば低温恒温槽にて行えばよい。転写工程の反応温度は、通常、10℃〜60℃、好ましくは20℃〜50℃の範囲内である。転写工程の反応温度が10℃未満であると、転写の速度が低下する傾向にあり、また転写工程の反応温度が60℃を越えると、反応に必須な成分が変性する傾向にあるためである。反応の時間は、全工程あわせて、通常、1時間〜8時間、好ましくは3時間〜5時間である。
【0023】
本発明の2ステップ法における翻訳反応用溶液としては、節足動物由来の抽出物を含有しており、無細胞系で翻訳反応を行い得るものであれば特に制限されるものではない。
ここで「節足動物」とは、後生動物の一門であって、左右相称、裂体腔を有する旧口動物を指し、鋏角亜門、大顎亜門のいずれに属するものであってもよく、たとえば、昆虫綱、クモ綱などに属する動物を包含する。中でも、昆虫綱またはクモ綱(特に、クモ亜綱)に属する節足動物が好ましく、昆虫綱に属する節足動物が特に好ましい。昆虫綱に属する節足動物としては、たとえば、鱗翅目(チョウ目)、直翅目、双翅目、膜翅目、鞘翅目、甲虫目、脈翅目、半翅目などに属するものが挙げられ、特に制限されるものではないが、中でも、カイコガ科、ヤガ科などの鱗翅目に属するものが好適に使用される。
本発明における翻訳反応用溶液中に含有される上記抽出物は、上記節足動物由来であるならば、成長段階のいずれを問わずいかなる組織から抽出されたものであってもよく、また、節足動物のいずれの組織由来の培養細胞より抽出されたものであってもよい。中でも、カイコ組織または昆虫培養細胞から抽出されたものであるのが特に好ましい。
【0024】
「カイコ」は、カイコガ科に属する鱗翅目昆虫(絹糸昆虫)と同義であり、その一生において「卵(胚)」(産卵直後より孵化直前までの間)、「幼虫」(孵化直後から繭の形成終了直前(1齢期〜5齢期に分けられる))、「蛹」(繭の形成終了直前から羽化する直前までの間)、ならびに「成虫(蛾)」(羽化直後より死亡までの間)の各状態を経るものであり、その一生にわたる形態のいずれをも含むものとする。カイコは、卵より孵化した後の幼虫の状態では、桑を食べて発育する期間(齢)と、食べずに脱皮の準備をする期間(眠)を交互に繰り返す。カイコの幼虫において、孵化してから1回目の脱皮までを1齢期、1回目の脱皮から2回目の脱皮までを2齢期といい、通常、4回脱皮して5齢期で成熟する(この成熟した状態のカイコ幼虫は「熟蚕」とも呼ばれる)。カイコの幼虫は、熟蚕になると体が透明になり絹糸を吐いて繭を形成し、蛹化する。蛹の後、羽化して成虫となる。
【0025】
翻訳反応用溶液がカイコ組織由来の抽出物を含有する場合、組織としてはカイコの一生のうちのどの状態(卵、幼虫(1齢期〜5齢期)、蛹、成虫)のいずれの組織であってよい。またカイコ組織は、単一の状態における単一の組織(たとえば、5齢期のカイコ幼虫における後部絹糸腺のみ)に限らず、単一の状態における複数の組織(たとえば、5齢期のカイコ幼虫における後部絹糸腺および脂肪体)であってもよく、複数の状態における単一の組織(たとえば、3齢期、4齢期、5齢期の各カイコ幼虫における後部絹糸腺)であってもよいものとする。無論、複数の状態における複数の組織であってもよい。なおカイコ組織は、カイコ組織の全体(たとえば、後部絹糸腺全体)である必要はない。
【0026】
ここで、カイコ組織の「絹糸腺」とは、カイコ幼虫の両体側において、頭部の下唇先端に位置する吐出口から盲管にまで連なる一対の管状の外分泌腺であり、前部絹糸腺、中部絹糸腺および後部絹糸腺に大きく分けられる。後部絹糸腺は、絹糸の中心部を為すフィブロインを分泌する。また中部絹糸腺は、セリシンを分泌する。フィブロインは中部絹糸腺に蓄積されるとともに、セリシンによってその外周を覆われて、ゲル状の絹物質となる。この絹物質は、前部絹糸腺を通って吐出口から排出され、固体化して絹糸となる。
またカイコ組織の「脂肪体」とは、カイコ幼虫において、体内の至るところに分布し、白色の柔らかい扁平な帯状、ひも状あるいは葉状の組織である。脂肪体は、ヒトの肝臓に似て栄養、エネルギー源を貯蔵する役目を果たしているので、細胞内には脂肪球、タンパク質、グリコーゲンその他の新陳代謝に関係する種々の物質を含んでいる。
また「胚」は、カイコの卵の状態の組織を指す。
【0027】
またカイコ組織に由来する抽出物を含有する場合、カイコ幼虫の絹糸腺、脂肪体およびカイコの胚から選ばれる少なくともいずれか由来の抽出物であるのが好ましい。カイコ幼虫の絹糸腺(特に、後部絹糸腺)より調製を行うと、短時間で大量のタンパク質が合成可能であるという特に優れた利点がある。またカイコ幼虫の脂肪体から抽出液を調製すると、脂肪体が柔らかい組織であるために、すり潰す作業が短時間で済み、結果として容易に抽出液を調製できる利点がある。さらに、カイコの胚から調製を行うと、胚が1つの個体であるために他の組織とは異なり摘出する作業を要さず、結果として容易に抽出液を調製できるという利点がある。
【0028】
カイコを抽出対象とする場合、カイコは1齢期〜5齢期の幼虫であればよいが、5齢期のカイコ幼虫が好ましい。これは、カイコ幼虫は繭の形成期に近づくにつれて組織が成熟し、特に5齢期のカイコ幼虫においては組織が1齢期〜5齢期のうちで最も成熟しているため、同量の抽出物を得るために要する数は少なくて済むためである。中でも、5齢期のカイコ幼虫の絹糸腺または脂肪体(好ましくは5齢期のカイコ幼虫の後部絹糸腺、より好ましくは5齢期の3日〜7日のカイコ幼虫の後部絹糸腺)からの抽出物を含有すると、他の齢期のものと比べて短時間で大量のタンパク質が合成可能な無細胞系タンパク質合成用抽出液が得られるという利点もあり、特に好ましい。
【0029】
また、上述したように翻訳反応用溶液に含有される節足動物由来の抽出物は、従来公知の節足動物を由来とする培養細胞から得られたものであってもよい。かかる培養細胞としては、培養細胞株が多く樹立されており、また、多くの哺乳類系の培養細胞と異なり二酸化炭素雰囲気下での培養を必要とせず、無血清培地においても培養が可能であることから、鱗翅目、半翅目などの昆虫由来の培養細胞(昆虫培養細胞)を使用するのが好ましい。昆虫培養細胞も、いかなる組織由来の細胞であってもよく、たとえば、血球細胞、生殖巣由来細胞、脂肪体由来細胞、胚由来細胞、孵化幼虫由来細胞などを特に制限なく使用することができるが、中でも、タンパク質生産能が高いと考えられる生殖巣由来の昆虫培養細胞を使用するのが好ましい。特には、細胞系においてタンパク質合成能が高く、また無血清培地にて培養が可能である、Trichoplusia niの卵細胞由来の細胞High Five(Invitrogen社製)が好適な昆虫培養細胞として例示される。
【0030】
上記節足動物由来の抽出物を含有する翻訳反応用溶液は、従来公知の適宜の組成の抽出用液を用いて、節足動物の組織または培養細胞より抽出操作を行って得られた抽出液(抽出液=抽出用液+抽出物)を調製し、これに後述するような翻訳反応に要する成分(カリウム塩、マグネシウム塩、DTT、ATP、GTP、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸成分、RNaseインヒビター、tRNA、緩衝剤など)を適宜添加することで、調製することができる。
【0031】
節足動物からの抽出操作に用いられる抽出用液としては、特には制限されるものではないが、プロテアーゼインヒビターを少なくとも含有するのが好ましい。
プロテアーゼインヒビターを含有する抽出用液を用いると、節足動物由来の抽出物に含有されるプロテアーゼの活性が阻害され、当該プロテアーゼによる抽出物中の活性タンパクの不所望な分解を防止でき、結果として節足動物由来の抽出物が有するタンパク質合成能を有効に引き出すことができるようになるという利点がある。上記プロテアーゼインヒビターとしては、プロテアーゼの活性を阻害し得るものであるならば特に制限はなく、たとえば、フェニルメタンスルホニルフルオリド(以下、「PMSF」ということがある。)、アプロチニン、ベスタチン、ロイペプチン、ペプスタチンA、E−64(L−trans−エポキシスクシニルロイシルアミド−4−グアニジノブタン)、エチレンジアミン四酢酸、ホスホラミドンなどを使用することができるが、節足動物由来の抽出物にはセリンプロテアーゼが含まれることが多いことから、上記中でもセリンプロテアーゼに対して特異性の高いインヒビターとして働くPMSFを使用するのが好ましい。
また、1種類のプロテアーゼインヒビターのみならず、数種類の混合物(プロテアーゼインヒビターカクテル)を用いてもよい。
当該抽出用液中におけるプロテアーゼインヒビターの含有量に特に制限はないが、無細胞系タンパク質合成に必須な酵素類の分解阻害能を好適に発揮できる観点から、1μM〜50mM含有されることが好ましく、0.01mM〜5mM含有されることがより好ましい。プロテアーゼインヒビターが1μM未満であると、プロテアーゼの分解活性を充分抑えることができない傾向にあるためであり、またプロテアーゼインヒビターが50mMを越えると、タンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
【0032】
また本発明に用いる抽出用液は、上記プロテアーゼインヒビターに加えて、カリウム塩、マグネシウム塩、DTTおよび緩衝剤を少なくとも含有するのが好ましい。
【0033】
上記カリウム塩としては、たとえば酢酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、クエン酸水素二カリウム、硫酸カリウム、リン酸二水素カリウム、ヨウ化カリウム、フタル酸カリウムなど一般的な形態で使用することができ、中でも酢酸カリウムを使用するのが好ましい。
カリウム塩は、タンパク質合成反応における補助因子として作用する。
当該抽出用液中におけるカリウム塩の含有量に特に制限はないが、保存安定性の観点から、たとえば酢酸カリウムなど1価のカリウム塩である場合、10mM〜500mM含有されることが好ましく、50mM〜300mM含有されることがより好ましい。カリウム塩が10mM未満または500mMを越えると、タンパク質合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
【0034】
上記マグネシウム塩としては、たとえば酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、乳酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウムなど一般的な形態で使用することができ、中でも酢酸マグネシウムを使用するのが好ましい。マグネシウム塩も、タンパク質合成反応における補助因子として作用する。
当該抽出用液中におけるマグネシウム塩の含有量に特に制限はないが、保存安定性の観点から、たとえば酢酸マグネシウムなど2価の塩である場合、0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.5mM〜5mM含有されることがより好ましい。マグネシウム塩が0.1mM未満または10mMを越えると、タンパク質の合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
【0035】
上記DTTは、酸化防止の目的で配合されるものであり、当該抽出用液中において0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.5mM〜5mM含有されることがより好ましい。DTTが0.1mM未満または10mMを越えると、タンパク質の合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
【0036】
上記緩衝剤は、抽出用液に緩衝能を付与し、たとえば酸性または塩基性物質の添加などによって起こる抽出液のpHの急激な変化による抽出物の変性を防止する目的で配合される。このような緩衝剤としては特に制限はなく、たとえば、HEPES−KOH、Tris−HCl、酢酸−酢酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、リン酸、ホウ酸、MES、PIPESなどを使用することができる。
緩衝剤は、得られた抽出液のpHが4〜10に保持されるようなものを使用するのが好ましく、pHが6.5〜8.5に保持されるようなものを使用するのがより好ましい。抽出液のpHが4未満またはpHが10を越えると、本発明の反応に必須な成分が変性する虞があるためである。このような観点より、上記中でもHEPES−KOH(pH6.5〜8.5)を使用するのが特に好ましい。
当該抽出用液中における緩衝剤の含有量に特に制限はないが、好適な緩衝能を保持する観点から、5mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜100mM含有されることがより好ましい。緩衝剤が5mM未満であると、酸性または塩基性物質の添加によりpHの急激な変動を引き起こし、抽出物が変性する傾向にあるためであり、また緩衝剤が200mMを越えると、塩濃度が高くなり過ぎ、タンパク質合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
【0037】
また抽出対象である節足動物が昆虫培養細胞である場合、上記組成に加えて、塩化カルシウムおよびグリセロールをさらに含有してなる抽出用液を用いると、タンパク質合成能がより向上された昆虫培養細胞抽出液を得ることができるため好ましい。
この場合、塩化カルシウムの含有量は特に制限されないが、上記タンパク質合成能の向上の効果を有効に発揮し得る観点より、0.1mM〜10mMであるのが好ましく、0.5mM〜5mMであるのがより好ましい。また、グリセロールの添加量についても特に制限されるものではないが、上記タンパク質合成能の向上の効果を有効に発揮し得る観点より、5(v/v)%〜80(v/v)%となるように添加されるのが好ましく、10(v/v)%〜50(v/v)%となるように添加されるのがより好ましい。
【0038】
抽出液を抽出する方法についても特に制限はなく、従来公知の適宜の方法にて行うことができる。
たとえば、節足動物由来の抽出物として、カイコ組織由来の抽出物または昆虫培養細胞由来の抽出物を使用する場合、上述したような組成の抽出用液を使用して、本発明者らが提案している抽出方法にて抽出液を調製するのが、好適である。
以下、それぞれの場合について詳述する。
【0039】
〔A〕カイコ組織由来の抽出物を含有する抽出液の調製方法
まず、常法にしたがって、たとえばハサミ、ピンセット、メスなどの器具を使用して、カイコより所望の組織を摘出する。この摘出によって得る後述の抽出に使用する組織量としては、特に制限はないが、通常、1g〜100gの範囲内である。
次に、摘出した組織を、たとえば液体窒素で凍結した後、−80℃で凍結させた乳鉢中ですり潰し、これに上述した抽出用液を添加して抽出操作を行う。
あるいは、上記抽出用液の添加後、一旦抽出用液も凍結させた後、シャーベット状になるまで(具体的には、ウェットな黄色いシャリシャリ状態の氷になるまで)、薬さじで攪拌しながら溶解する。その後、再度液体窒素で完全に凍結させた後、シャーベット状になるまで(具体的には、ウェットな黄色いシャリシャリ状態の氷になるまで)薬さじで攪拌しながら溶解させる。かかる方法によれば、タンパク質合成に関与する成分が効率的に抽出され且つ安定化されるという利点がある。
このようにして、まず、カイコの組織からの抽出物を含有する液状物を得る。
【0040】
次に、上記抽出処理で得られた液状物を遠心分離にかける。該遠心分離は、当分野において通常行われている条件(10,000×g〜50,000×g、0℃〜10℃、10分間〜60分間)で行う。該遠心分離を1回行った後の上清(上清A1)をそのまま用いて抽出液とするようにしてもよいし、また、該上清A1に上記と同様の条件にて再度の遠心分離を行い、得られた上清(上清A2)を抽出液としてもよい。
また、上記上清A1と、上記1回目の遠心分離後の沈殿から上記抽出用液を用いてさらに抽出を行った後に、上記と同様の条件にて遠心分離して得られた上清(上清A3)とを混合して、抽出液として調製するようにしてもよい。このように上清A1と上清A3とを混合して抽出液を調製することで、上清A1、上清A3を単独で抽出液とする場合と比較して、タンパク質合成効率が向上するという利点がある。またさらに、上清A2を、上清A3と混合して抽出液を調製してもよい。これにより上記効果はさらに増強される。勿論、上記上清A1〜上清A3を混合して、抽出液を調製するようにしてもよい。
この場合、調製される混合物(抽出液)における上清A1および/または上清A2(両方混合する場合には、その総量)と上清A3との混合割合に特に制限はないが、タンパク質の合成効率の観点からは、体積比で10:90〜90:10であるのが好ましく、20:80〜80:20であるのがより好ましい。
【0041】
なお上述のようにそれぞれ調製した後に、ゲル濾過を施し、ゲル濾過後の濾液より280nmにおける吸光度が最も高い画分付近を分取して抽出液として調製するようにしてもよい。しかしながらタンパク質の合成効率の観点からは、当該ゲル濾過および画分の分取を経ずに抽出液として調製するのが好ましい。
【0042】
なお、上記ゲル濾過を施し、ゲル濾過後の濾液より280nmにおける吸光度が最も高い画分付近を分取する場合には、具体的には以下の手順にて行えばよい。
たとえば脱塩カラム PD−10(アマシャム バイオサイエンス社製)を使用し、常法にしたがって、ゲル濾過用緩衝液にてカラムを平衡化した後、試料を供給し、上記抽出用液にて溶出する、というような条件にて行う。上記ゲル濾過用緩衝液は、上記抽出用液に、グリセロールをさらに添加したものであることが好ましい。グリセロールは、通常、5(v/v)%〜40(v/v)%(好ましくは、20(v/v)%)となるように添加すればよい。ゲル濾過して得られる濾液は、通常のゲル濾過で行われているように、0.1mL〜1mLを1画分とすればよく、高いタンパク質合成能を有する画分を効率よく分取するという観点より、0.4mL〜0.6mLを1画分とするのが好ましい。
次に、ゲル濾過後の濾液より280nmにおける吸光度が10以上の画分を分取する。当該処理は、たとえばUltrospec3300pro(アマシャムバイオサイエンス社製)などの機器を用いて、各画分について上記280nmにおける吸光度を測定し、この吸光度が最も高い画分付近を分取し、これを抽出液とする。
【0043】
〔B〕昆虫培養細胞由来の抽出物を含有する抽出液の調製方法
昆虫培養細胞から抽出液を調製する場合、本発明者らが提案する、抽出用液中に懸濁した昆虫培養細胞を急激に凍結させる工程を少なくとも含有する方法によって調製するのが好ましい。ここで「急激に凍結」とは、10秒以下、好ましくは2秒以下にて、昆虫培養細胞を凍結させることを指す。また昆虫培養細胞を急激に凍結させる温度としては、通常−80℃以下であり、好ましくは−150℃以下である。上記昆虫培養細胞の急激な凍結は、たとえば、液体窒素や液体ヘリウムなどの不活性ガスを使用することなどによって実現できるが、入手が容易であり安価な液体窒素を用いて行うのが好ましい。
かかる方法によって昆虫培養細胞からの抽出を行うことにより、緩和な状態で細胞の破砕を行うことができ、無細胞系タンパク質合成に必須な成分を破壊することなく細胞外に取り出すことができ、従来よりもタンパク質の合成量の高い無細胞系タンパク質合成用抽出液を容易に調製することができる。さらに、使用器具などからのRNaseなどの混入も防ぐことができ、また、界面活性剤などの試薬を用いた細胞破砕法の場合に懸念される翻訳反応を阻害するような物質の持込みもない。
【0044】
上記本発明者らが提案する抽出液の調製方法では、上述した急激に凍結させる工程を少なくとも含有しているならば、その他の工程について特に制限はない。
たとえば、乳鉢中で乳棒を用いてすり潰す方法、ダウンスホモジナイザーを用いる方法、ガラスビーズを用いる方法など、大腸菌や小麦胚芽などから無細胞系タンパク質合成用抽出液を得る際に従来より行われていた種々の手法にて昆虫培養細胞を破砕し、抽出を行えばよい。中でも、上記昆虫培養細胞を急激に凍結させた後、解凍し、遠心分離することによって昆虫培養細胞を破砕するのが好ましい。
【0045】
上記急激に凍結した昆虫培養細胞を、解凍した後、遠心分離する場合、解凍は、たとえば−10℃〜20℃の水浴または氷水浴中での解凍、室温(25℃)にての放置などによって実現できるが、タンパク質合成に必須な成分の失活を防止し、タンパク質合成能の低下を確実に防ぐことから、0℃〜20℃(特には、4℃〜10℃)の水浴または氷水浴中で解凍を行うのが好ましい。解凍した昆虫培養細胞の遠心分離は、当分野において通常行われている条件(10,000×g〜50,000×g、0℃〜10℃、10分間〜60分間)で行えばよい。かかる遠心分離後の上清には、目的とする昆虫培養細胞の抽出物が含有される。
【0046】
細胞破砕後、上記遠心分離後の上清(上清B1)をそのまま抽出液としてもよいし、上清B1をさらに遠心分離(10,000×g〜100,000×g、0℃〜10℃、10分間〜120分間)にかけて、得られた上清(上清B2)を抽出液としてもよい。さらに、上記上清B1または上清B2をゲル濾過し、ゲル濾過後の濾液より280nmにおける吸光度が10以上の画分(吸収の大きな画分)を分取して、これを抽出液としてもよい。この場合、具体的には以下の手順にて行う。
まず、上清B1または上清B2についてゲル濾過を行うが、ゲル濾過は、たとえば脱塩カラム PD−10(アマシャム バイオサイエンス社製)を好適に使用することができ、常法にしたがって、ゲル濾過用緩衝液にてカラムを平衡化した後、試料を供給し、上記ゲル濾過用緩衝液にて溶出する、というような条件にて行えばよい。上記ゲル濾過用緩衝液としては、従来公知の適宜の組成のものを特に制限なく使用することができ、たとえば、10mM〜100mMのHEPES−KOH(pH6.5〜8.5)、50mM〜300mMの酢酸カリウム、0.5mM〜5mMの酢酸マグネシウム、0.5mM〜5mMのDTT、0.01mM〜5mMのPMSFを含有するゲル濾過用緩衝液を用いることができる。ゲル濾過して得られる濾液は、通常のゲル濾過で行われているように、0.1mL〜1mLを1画分とすればよく、高いタンパク質合成能を有する画分を効率よく分取するという観点より、0.4mL〜0.6mLを1画分とするのが好ましい。
続いて、たとえばUltrospec3300pro(アマシャム バイオサイエンス社製)などの機器を用いて、280nmにおける吸光度が30以上の画分(吸収の大きな画分)をゲル濾過後の濾液より分取して、これを抽出液とする。
【0047】
また上記ゲル濾過で得られた吸収の大きな画分を、さらに遠心分離にかけて、得られた上清(上清B3)を抽出液とするようにしてもよい。このゲル濾過後の遠心分離は、翻訳反応を阻害する不溶性の成分を除去するという理由から、30,000×g〜100,000×g、0℃〜10℃、10分間〜60分間の条件で行うのが、好ましい。
【0048】
なお、本発明の調製方法に供する昆虫培養細胞は、培養に用いる培地の翻訳反応液への持込みを避けるため、上記急激な凍結を行う前に、プロテアーゼインヒビターおよびグリセロールを含有しない以外は、上述した昆虫培養細胞用の好適な抽出用液と同じ組成の洗浄液にて予め洗浄しておくのが好ましい。洗浄液での洗浄は、昆虫培養細胞に洗浄液を添加し、これを遠心分離(たとえば、700×g、10分間、4℃という条件)することによって行う。洗浄に用いる洗浄液の量は、培地を完全に洗い流すという理由から、湿重量1gの昆虫培養細胞に対し5mL〜100mLであるのが好ましく、10mL〜50mLであるのがより好ましい。洗浄回数は、1回〜5回行うのが好ましく、2回〜4回行うのがより好ましい。
【0049】
本発明の抽出液中における節足動物由来の抽出物の含有量に特に制限はないが、タンパク質濃度で1mg/mL〜200mg/mLであるのが好ましく、中でも10mg/mL〜100mg/mLであるのがより好ましい。当該抽出物の含有量がタンパク質濃度で1mg/mL未満であると、無細胞系タンパク質合成に必須な成分の濃度が低くなり、充分な合成反応が行えなくなる虞があるためであり、また当該抽出物の含有量がタンパク質濃度で200mg/mLを越えると、抽出液自体が高い粘性を有し、操作しづらい虞があるためである。
なお上記範囲の量の節足動物由来の抽出物を含有する抽出液は、抽出液のタンパク質濃度測定を利用して、調製できる。当該タンパク質濃度測定は、当分野において通常行われているように、たとえばBCA Protein assayKit(PIERCE社製)を使用し、反応試薬2mLに対してサンプルを0.1mL加え、37℃で30分間反応させ、562nmにおける吸光度を測定する、といった手順によって行う。分光光度計(Ultrospec3300pro、アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて、562nmにおける吸光度を測定する。コントロールとしては、通常、ウシ血清アルブミン(BSA)を使用する。
【0050】
本発明における翻訳反応用溶液は、上記抽出液を10(v/v)%〜80(v/v)%、特には30(v/v)%〜60(v/v)%含有するように調製されたものであるのが好ましい。すなわち、翻訳反応用溶液の全体において、節足動物由来の抽出物の含有量が、タンパク質濃度で0.1mg/mL〜160mg/mLとなるように調製されるのが好ましく、3mg/mL〜60mg/mLとなるように調製されるのがより好ましい。当該抽出物の含有量がタンパク質濃度で0.1mg/mL未満または160mg/mLを越えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
翻訳反応用溶液は、上記抽出液を除く成分として、カリウム塩、マグネシウム塩、DTT、ATP、GTP、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸成分、RNaseインヒビター、tRNA、緩衝剤を少なくとも含有するのが好ましい。かかる翻訳反応用溶液を使用して翻訳反応を行うことで、短時間で大量のタンパク質の合成が可能である。
【0051】
翻訳反応用溶液中におけるカリウム塩としては、抽出用液の成分として上述した各種のカリウム塩、好適には酢酸カリウム、を好ましく使用できる。カリウム塩は、上述した抽出用液におけるカリウム塩の場合と同様の観点から、当該翻訳反応用溶液中において10mM〜500mM含有されることが好ましく、50mM〜150mM含有されることがより好ましい。
【0052】
翻訳反応用溶液中におけるマグネシウム塩としては、抽出用液の成分として上述した各種のマグネシウム塩、好適には酢酸マグネシウム、を好ましく使用できる。マグネシウム塩は、上述した抽出用液におけるマグネシウム塩の場合と同様の観点から、当該翻訳反応用溶液中において0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.5mM〜3mM含有されることがより好ましい。
【0053】
翻訳反応用溶液中におけるDTTは、上述した抽出用液におけるDTTの場合と同様の観点から、0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.2mM〜5mM含有されることがより好ましい。
【0054】
翻訳反応用溶液中におけるATPは、タンパク質合成の速度の観点から、0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。ATPが0.01mM未満または10mMを越えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
【0055】
翻訳反応用溶液中におけるGTPは、タンパク質合成の速度の観点から、0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。GTPが0.01mM未満または10mMを越えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
【0056】
翻訳反応用溶液中におけるクレアチンリン酸は、タンパク質を継続的に合成するための成分であって、ATPとGTPを再生する目的で配合される。クレアチンリン酸は、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜100mM含有されることがより好ましい。クレアチンリン酸が1mM未満であると、充分な量のATPとGTPが再生されにくく、結果としてタンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためであり、またクレアチンリン酸が200mMを越えると、阻害物質として働き、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
【0057】
翻訳反応用溶液中におけるクレアチンキナーゼは、タンパク質を継続的に合成するための成分であって、クレアチンリン酸と共にATPとGTPを再生する目的で配合される。クレアチンキナーゼは、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1μg/mL〜1000μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜500μg/mL含有されることがより好ましい。クレアチンキナーゼが1μg/mL未満であると、充分な量のATPとGTPが再生されにくく、結果としてタンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためであり、またクレアチンキナーゼが1000μg/mLを越えると、阻害物質として働き、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
【0058】
翻訳反応用溶液中におけるアミノ酸成分は、20種類のアミノ酸、すなわち、バリン、メチオニン、グルタミン酸、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、グリシン、プロリン、イソロイシン、トリプトファン、アスパラギン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、チロシン、リシン、グルタミン、シスチン、アルギニン、の20種類のアミノ酸を少なくとも含有する。このアミノ酸には、ラジオアイソトープ標識されたアミノ酸も含まれる。さらに、必要に応じて、修飾アミノ酸を含有していてもよい。当該アミノ酸成分は、通常、各種類のアミノ酸を概ね等量ずつ含有してなる。
本発明においては、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において上記のアミノ酸成分が1μM〜1000μM含有されることが好ましく、10μM〜200μM含有されることがより好ましい。アミノ酸成分が1μM未満または1000μMを越えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
【0059】
翻訳反応用溶液中におけるRNaseインヒビターは、抽出液に混在する節足動物由来のRNaseによって、無細胞系タンパク質合成の際にmRNAやtRNAが不所望に消化されて、タンパク質の合成を妨げるのを防ぐ目的で配合されるものであり、当該反応液中において0.1U/μL〜100U/μL含有されることが好ましく、1U/μL〜10U/μL含有されることがより好ましい。
RNaseインヒビターが0.1U/μL未満であると、RNaseの分解活性を充分抑えることができない傾向にあるためであり、またRNaseインヒビターが100U/μLを越えると、タンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
【0060】
翻訳反応用溶液中におけるtRNAは、上記20種類のアミノ酸に対応した種類のtRNAを概ね等量ずつ含有してなる。本発明においては、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1μg/mL〜1000μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜500μg/mL含有されることがより好ましい。tRNAが1μg/mL未満または1000μg/mLを越えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
【0061】
翻訳反応用溶液に含有される緩衝剤としては、上述した抽出用液に用いたものと同様のものが好適に使用でき、同様の理由から、HEPES−KOH(pH6〜8)を使用するのが好ましい。また、緩衝剤は、上述した抽出用液における緩衝剤の場合と同様の観点から、5mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜50mM含有されることがより好ましい。
【0062】
また翻訳反応用溶液は、さらにグリセロールを添加されたものであるのがより好ましい。グリセロールを添加すると、翻訳系合成反応においてタンパク質合成に必須な成分を安定化できるという利点があるためである。グリセロールを添加する場合、通常、5(v/v)%〜20(v/v)%となるように添加する。
【0063】
さらに、翻訳反応用溶液は、エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)四酢酸(以下、「EGTA」ということがある。)を含有するのが好ましい。EGTAを含有すると、EGTAが抽出液中の金属イオンとキレートを形成することでリボヌクレアーゼ、プロテアーゼなどを不活化させることにより、無細胞系タンパク質合成に必須な成分の分解を阻害することができるためである。
該EGTAは、上記反応液中において、上記分解阻害能を好適に発揮し得る観点から0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。EGTAが0.01mM未満であると必須な成分の分解活性を充分に抑えることができない傾向にあるためであり、また、10mMを越えるとタンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
【0064】
すなわち、翻訳反応用溶液としては、節足動物由来抽出物を含有する抽出液を30(v/v)%〜60(v/v)%含有するとともに、50mM〜150mMの酢酸カリウム、0.5mM〜3mMの酢酸マグネシウム、0.2mM〜5mMのDTT、5(v/v)%〜20(v/v)%のグリセロール、0.1mM〜5mMのATP、0.1mM〜5mMのGTP、10mM〜100mMのクレアチンリン酸、10μg/mL〜500μg/mLのクレアチンキナーゼ、10μM〜200μMのアミノ酸成分、1U/μL〜10U/μLのRNaseインヒビター、10μg/mL〜500μg/mLのtRNA、10mM〜50mMのHEPES−KOH(pH6〜8)を含有するように実現されるのが好ましい。また、上記に加えてさらに0.1mM〜5mMのEGTAを含有するように実現されるのがより好ましい。
【0065】
上述してきたように、本発明の2ステップ法に用いる翻訳反応液は、インビトロ転写反応を行った後の転写反応液を、マグネシウムが特定の濃度以下となるように上記翻訳反応用溶液に添加して得られるものである。かかる翻訳反応液を用いた翻訳反応(無細胞系タンパク質合成反応)は、従来公知のたとえば低温恒温槽にて行う。反応温度は、通常、10℃〜40℃、好ましくは20℃〜30℃の範囲内である。反応温度が10℃未満であると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあり、また反応温度が40℃を越えると、必須な成分が変性する傾向にあるためである。反応の時間は、通常、1時間〜72時間、好ましくは3時間〜24時間である。
【0066】
本発明の2ステップ法にて合成できるタンパク質に特に制限はない。合成されたタンパク質の量は、酵素の活性の測定、SDS−PAGE、免疫検定法などによって測定できる。
【0067】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
参考例1
:発現ベクターの構築
pGEM−luc Vector(プロメガ社製)5ngを鋳型とし、配列表配列番号1に示す塩基配列を有するプライマー(Luc T7−F3−Kpn)と、配列表配列番号2に示す塩基配列を有するプライマー(Luc T7−R4−Kpn)と、KOD plus(東洋紡績社製)を用いて、97℃15秒、55℃30秒、68℃120秒、30サイクルのPCRを行った。エタノール沈殿によりDNA断片を精製した後、KpnIで消化した。これとは別に、pTTVector(プロメガ社製)をKpnIで消化した。これらの反応液をアガロースゲル電気泳動で分離した後、Gen Elute Gel Purification Kit(シグマ社製)を用いてDNA断片を精製した。Ligation High(東洋紡績社製)を用いて、これらのDNA断片をライゲーションした後、大腸菌DH5α(東洋紡績社製)を形質転換した。形質転換した大腸菌からアルカリ−SDS法により調製したプラスミドを、配列表配列番号3に示す塩基配列を有するプライマー(T7 promoter)およびBig Dye Terminator Cycle Sequencing FS(アプライドバイオシステムズ社製)を用いてシークエンシング反応(96℃10秒、50℃5秒、60℃4分、30サイクル)を行った。この反応液をABI PRISM 310 Genetic Analyzer(アプライドバイオシステムズ社製)に供し、塩基配列解析を行った。pTT Vector由来の5’−βグロビンリーダー配列の下流にルシフェラーゼ遺伝子の開始コドンが挿入されたプラスミドをpTT−Lucと命名した。
【0068】
参考例2
:カイコ由来の抽出物を含有する翻訳反応用溶液の調製
(1)カイコ組織由来の抽出物を含有する抽出液(カイコ抽出液)の調製
5齢期4日目のカイコ幼虫15匹よりハサミ、ピンセット、メス、スパーテルを使用して、後部絹糸腺3.07gを摘出し、これを−80℃で凍結させた乳鉢ですり潰し、下記組成の抽出用液を用いて、抽出を行った。
〔抽出用液の組成〕
・20mM HEPES−KOH(pH7.4)
・100mM 酢酸カリウム
・2mM 酢酸マグネシウム
・2mM DTT
・0.5mM PMSF
抽出後、得られた液状物を遠心分離機(himacCR20B3(日立工機社製))にて、30,000×g、30分間、4℃の条件にて遠心分離を行った。
遠心分離後、上清のみを単離し、再び30,000×g、10分間、4℃の条件にて遠心分離を行った。遠心分離後、上清のみを単離した。脱塩カラム PD−10(アマシャム バイオサイエンス社製)に、20%グリセロールを含む抽出用液を加えカラムを平衡化した後、上清を供給し、上記抽出用液にて溶出することによりゲル濾過を行った。
ゲル濾過後の濾液の画分を、分光光度計(Ultrospec3300pro、アマシャム バイオサイエンス社製)を用いて、280nmにおける吸光度が10以上の画分を分取して、5齢期のカイコ幼虫の後部絹糸腺由来の無細胞系タンパク質合成用抽出液を得た。
得られた抽出液について、BCA Protein assay Kit(PIERCE社製)を用い、タンパク質濃度を測定した。まず反応試薬2mLに対してサンプルを0.1mL加え、37℃で30分間反応させ、分光光度計(Ultrospec3300pro、アマシャム バイオサイエンス社製)を用いて、562nmにおける吸光度を測定した。コントロールとして、BSAを用い、検量線を作成した。
抽出液中におけるカイコ幼虫の後部絹糸腺の含有量は、タンパク質濃度で17.5mg/mLであった。
【0069】
(2)翻訳反応用溶液の調製
上記(1)で調製したカイコ抽出液を用いて、以下の組成の翻訳反応用溶液を調製した。
〔翻訳反応用溶液の組成〕
・50(v/v)% カイコ抽出液
・30mM HEPES−KOH(pH7.4)
・100mM 酢酸カリウム
・1.5mM 酢酸マグネシウム
・2mM DTT
・0.75mM ATP
・0.5mM GTP
・25mM クレアチンリン酸
・200μg/mL クレアチンキナーゼ
・40μM アミノ酸(20種)
・0.25mM EGTA
・2U/μL RNaseインヒビター(ヒト胎盤由来)
・100μg/mL tRNA
ATP(シグマ社製)、GTP(シグマ社製)、アミノ酸(20種)(シグマ社製)、RNaseインヒビター(宝酒造社製)、tRNA(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)をそれぞれ用いた。
【0070】
実施例1
:2ステップ法による無細胞系タンパク質合成(カイコ)
(1)インビトロ転写反応
参考例1で作製したpTT−LucをBamHIで消化した後、フェノール−クロロホルム抽出、エタノール沈殿により精製した。これを鋳型とし、インビトロ転写反応を行った。転写反応液としては、以下の組成のものを用いた。
〔転写反応液の組成〕
・80mM HEPES−KOH(pH7.4)
・24mM 酢酸マグネシウム
・40mM DTT
・7.5mM NTPs(ATP、GTP、UTP、CTP)
・2mM スペルミジン
・1U/μL RNaseインヒビター(ヒト胎盤由来)
・1U/μL T7 RNAポリメラーゼ
・50μg/mL pTT−Luc/BamHI
NTPs(シグマ社製)、RNaseインヒビター(宝酒造社製)、T7 RNA ポリメラーゼ(プロメガ社製)をそれぞれ用いた。反応装置として低温アルミブロック恒温槽MG−1000(東京理化器械社製)を用いた。転写反応は37℃、4時間で行い、反応液量は20μLとした。
【0071】
(2)翻訳反応
上記(1)の転写反応後の転写反応液を、参考例2で調製した翻訳反応用溶液に1/10体積量添加し、マグネシウムを最終濃度で3.9mM(=24/10mM+1.5mM)含有する翻訳反応液を調製し、翻訳反応を行った。反応装置として低温アルミブロック恒温槽MG−1000(東京理化器械社製)を用いた。翻訳反応は反応温度25℃で6時間行い、反応液量は25μLとした。合成されたルシフェラーゼはルシフェラーゼアッセイキット(E−1500、プロメガ社製)を用いて定量した。ルシフェラーゼアッセイ試薬50μLに反応液2.5μLを添加し、ルミノメーター(Tuner Designs TD−20/20、プロメガ社製)を用いて、ルシフェラーゼによる発光を測定した。
【0072】
実施例2
:2ステップ法による無細胞系タンパク質合成(カイコ)
転写反応後の転写反応液を、参考例2で調製した翻訳反応用溶液に1/20体積量添加し、マグネシウムを最終濃度で2.7mM(=24/20mM+1.5mM)含有する翻訳反応液を調製し、翻訳反応を行った以外は、実施例1と同様にして行った。
【0073】
実施例3
:2ステップ法による無細胞系タンパク質合成(カイコ)
転写反応後の転写反応液を、参考例2で調製した翻訳反応用溶液に1/30体積量添加し、マグネシウムを最終濃度で2.3mM(=24/30mM+1.5mM)含有する翻訳反応液を調製し、翻訳反応を行った以外は、実施例1と同様にして行った。
【0074】
実施例4
:2ステップ法による無細胞系タンパク質合成(カイコ)
転写反応後の転写反応液を、参考例2で調製した翻訳反応用溶液に1/40体積量添加し、マグネシウムを最終濃度で2.1mM(=24/40mM+1.5mM)含有する翻訳反応液を調製し、翻訳反応を行った以外は、実施例1と同様にして行った。
【0075】
実施例5
:2ステップ法による無細胞系タンパク質合成(カイコ)
転写反応後の転写反応液を、参考例2で調製した翻訳反応用溶液に1/50体積量添加し、マグネシウムを最終濃度で1.98mM(=24/50mM+1.5mM)含有する翻訳反応液を調製し、翻訳反応を行った以外は、実施例1と同様にして行った。
【0076】
比較例1
:1ステップ法による無細胞系タンパク質合成(カイコ)
参考例1で作成したpTT−Lucを鋳型DNAとして、参考例2(1)で調製したカイコ幼虫の後部絹糸腺由来の抽出液を用いた下記組成の転写/翻訳反応液を使用して行った。
〔転写/翻訳反応液の組成〕
・50(v/v)% カイコ抽出液
・50μg/ml 鋳型DNA(ルシフェラーゼをコード)
・10mM HEPES−KOH(pH7.4)
・100mM 酢酸カリウム
・1mM 酢酸マグネシウム
・1mM DTT
・0.2mM ATP
・0.2mM GTP
・0.2mM UTP
・0.2mM CTP
・25mM クレアチンリン酸
・200μg/mL クレアチンキナーゼ
・40μM アミノ酸(20種)
・0.1mM スペルミジン
・2U/μL RNaseインヒビター
・200μg/mL tRNA
・1U/μL T7 RNAポリメラーゼ
ATP(シグマ社製)、GTP(シグマ社製)、CTP(シグマ社製)、UTP(シグマ社製)、アミノ酸(20種)(シグマ社製)、T7 RNAポリメラーゼ(プロメガ社製)、RNaseインヒビター(宝酒造社製)、tRNA(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)をそれぞれ用いた。各々調製した反応液を用いて、反応装置として低温アルミブロック恒温槽MG−1000(東京理化器械社製)を用い、無細胞系のタンパク質(ルシフェラーゼ)の合成反応を行った。反応液量は25μLとした。反応温度20℃で、8時間反応を行った。
【0077】
図1は、実施例1〜5、比較例1の実験結果を示すグラフである。図1のグラフにおいて縦軸は、比較例1で得られたタンパク質合成量に対する実施例1〜5の結果それぞれ得られたタンパク質合成量の割合(相対合成量:%)を表している。
【0078】
実施例6
:2ステップ法による無細胞系タンパク質合成(カイコ)
酢酸マグネシウムの濃度を1mMとした以外は参考例2と同様にして調製した翻訳反応用溶液に、転写反応後の転写反応液を、1/40体積量添加し、マグネシウムを最終濃度で1.6mM(=24/40mM+1mM)含有する翻訳反応液を調製し、翻訳反応を行った以外は、実施例1と同様にして行った。
【0079】
実施例7
:2ステップ法による無細胞系タンパク質合成(カイコ)
酢酸マグネシウムの濃度を1.25mMとした以外は参考例2と同様にして調製した翻訳反応用溶液に、転写反応後の転写反応液を、1/40体積量添加し、マグネシウムを最終濃度で1.85mM(=24/40mM+1.25mM)含有する翻訳反応液を調製し、翻訳反応を行った以外は、実施例1と同様にして行った。
【0080】
実施例8
:2ステップ法による無細胞系タンパク質合成(カイコ)
酢酸マグネシウムの濃度を1.5mMとした以外は参考例2と同様にして調製した翻訳反応用溶液に、転写反応後の転写反応液を、1/20体積量添加し、マグネシウムを最終濃度で2.1mM(=24/40mM+1.5mM)含有する翻訳反応液を調製し、翻訳反応を行った以外は、実施例1と同様にして行った。
【0081】
図2は、実施例6〜8の実験結果を示すグラフである。図2のグラフにおいて縦軸は、比較例1で得られたタンパク質合成量に対する実施例6〜8の結果それぞれ得られたタンパク質合成量の割合(相対合成量:%)を表している。結果、翻訳反応用溶液中の酢酸マグネシウムの濃度を1mMとした場合(実施例6)においてタンパク質合成量が最も高く、比較例1と比較して約5.6倍のタンパク質合成量となった。この結果は、本来翻訳反応液の最適濃度は1.5mMであるところ、実施例6においては転写反応液からの持込みが0.6mMであり、実際の反応液中のマグネシウム濃度は1.6mMとなっていることに大きく起因するものと考えられる。
【0082】
参考例3
:昆虫培養細胞由来の抽出物を含有する翻訳反応用溶液の調製
(1)昆虫培養細胞の培養
細胞数2.1×10個の昆虫培養細胞High Five(Invitrogen社製)を、L−グルタミンを添加したExpress Five無血清培地(Invitrogen社製)を入れた培養フラスコ(600cm)内で27℃で6日間培養した。結果、細胞数1.0×10個、湿重量1.21gとなった。
【0083】
(2)昆虫培養細胞抽出液の調製
まず、上記(1)で培養した昆虫培養細胞を集菌し、下記組成の洗浄液で3回洗浄(700×g、4℃、10分間の条件で遠心分離)した。
〔洗浄液の組成〕
・40mM HEPES−KOH(pH7.9)
・100mM 酢酸カリウム
・2mM 酢酸マグネシウム
・2mM 塩化カルシウム
・1mM DTT
洗浄後の昆虫培養細胞に、下記組成の抽出用液を1mL加え、懸濁した。
〔抽出用液の組成〕
・40mM HEPES−KOH(pH7.9)
・100mM 酢酸カリウム
・2mM 酢酸マグネシウム
・2mM 塩化カルシウム
・20(v/v)% グリセロール
・1mM DTT
・1mM PMSF
この懸濁液を液体窒素中にて急速に凍結させた。充分に凍結させた後、約4℃の氷水浴中で解凍した。完全に解凍した後、30,000×g、4℃で10分間遠心分離(himacCR20B3、日立工機社製)し、上清を回収した。この上清をさらに45,000×g、4℃で30分間遠心分離し、その上清を回収した。回収した上清1.5mLを下記組成のゲル濾過用緩衝液で平衡化したPD−10脱塩カラム(アマシャム バイオサイエンス社製)にアプライした。
〔ゲル濾過用緩衝液の組成〕
・40mM HEPES−KOH(pH7.9)
・100mM 酢酸カリウム
・2mM 酢酸マグネシウム
・1mM DTT
・1mM PMSF
アプライした後、ゲル濾過用緩衝液4mLにて溶出し、分光光度計(Ultrospec3300pro、アマシャム バイオサイエンス社製)を用いて、280nmにおける吸光度が30以上の画分を回収し、昆虫培養細胞抽出液とした。
【0084】
(3)翻訳反応用溶液の調製
上記(2)で調製した昆虫培養細胞抽出液を用いて、以下の組成の翻訳反応用溶液を調製した。
〔翻訳反応用溶液の組成〕
・50(v/v)% 昆虫培養細胞抽出液
・30mM HEPES−KOH(pH7.9)
・100mM 酢酸カリウム
・2mM 酢酸マグネシウム
・2mM DTT
・0.5mM ATP
・0.25mM GTP
・20mM クレアチンリン酸
・200μg/mL クレアチンキナーゼ
・40μM アミノ酸(20種)
・0.25mM EGTA
・1U/μL RNaseインヒビター(ヒト胎盤由来)
・200μg/mL tRNA
ATP(シグマ社製)、GTP(シグマ社製)、アミノ酸(20種)(シグマ社製)、RNaseインヒビター(宝酒造社製)、tRNA(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)をそれぞれ用いた。
【0085】
実施例9
:2ステップ法による無細胞系タンパク質合成(昆虫培養細胞)
(1)インビトロ転写反応
参考例1で作製したpTT−LucをBamHIで消化した後、フェノール−クロロホルム抽出、エタノール沈殿により精製した。これを鋳型とし、インビトロ転写反応を行った。転写反応液としては、以下の組成のものを用いた。
〔転写反応液の組成〕
・80mM HEPES−KOH(pH7.4)
・24mM 酢酸マグネシウム
・40mM DTT
・7.5mM NTPs(ATP、GTP、UTP、CTP)
・2mM スペルミジン
・1U/μL RNaseインヒビター(ヒト胎盤由来)
・1U/μL T7 RNAポリメラーゼ
・50μg/mL pTT−Luc/BamHI
NTPs(シグマ社製)、RNaseインヒビター(宝酒造社製)、T7 RNA ポリメラーゼ(プロメガ社製)をそれぞれ用いた。反応装置として低温アルミブロック恒温槽MG−1000(東京理化器械社製)を用いた。転写反応は37℃、4時間で行い、反応液量は20μLとした。
【0086】
(2)翻訳反応
上記(1)の転写反応後の転写反応液を、参考例3で調製した翻訳反応用溶液に1/10体積量添加し、マグネシウムを最終濃度で4.4mM(=24/10mM+2mM)含有する翻訳反応液を調製し、翻訳反応を行った。反応装置として低温アルミブロック恒温槽MG−1000(東京理化器械社製)を用いた。翻訳反応は反応温度25℃で6時間行い、反応液量は25μLとした。合成されたルシフェラーゼはルシフェラーゼアッセイキット(E−1500、プロメガ社製)を用いて定量した。ルシフェラーゼアッセイ試薬50μLに反応液2.5μLを添加し、ルミノメーター(Tuner Designs TD−20/20、プロメガ社製)を用いて、ルシフェラーゼによる発光を測定した。
【0087】
実施例10
:2ステップ法による無細胞系タンパク質合成(昆虫培養細胞)
転写反応後の転写反応液を、参考例3で調製した翻訳反応用溶液に1/20体積量添加し、マグネシウムを最終濃度で3.2mM(=24/20mM+2mM)含有する翻訳反応液を調製し、翻訳反応を行った以外は、実施例1と同様にして行った。
【0088】
実施例11
:2ステップ法による無細胞系タンパク質合成(昆虫培養細胞)
転写反応後の転写反応液を、参考例3で調製した翻訳反応用溶液に1/30体積量添加し、マグネシウムを最終濃度で2.8mM(=24/30mM+2mM)含有する翻訳反応液を調製し、翻訳反応を行った以外は、実施例1と同様にして行った。
【0089】
実施例12
:2ステップ法による無細胞系タンパク質合成(昆虫培養細胞)
転写反応後の転写反応液を、参考例3で調製した翻訳反応用溶液に1/40体積量添加し、マグネシウムを最終濃度で2.6mM(=24/40mM+2mM)含有する翻訳反応液を調製し、翻訳反応を行った以外は、実施例1と同様にして行った。
【0090】
実施例13
:2ステップ法による無細胞系タンパク質合成(昆虫培養細胞)
転写反応後の転写反応液を、参考例3で調製した翻訳反応用溶液に1/50体積量添加し、マグネシウムを最終濃度で2.48mM(=24/50mM+2mM)含有する翻訳反応液を調製し、翻訳反応を行った以外は、実施例1と同様にして行った。
【0091】
比較例2
:1ステップ法による無細胞系タンパク質合成(昆虫培養細胞)
参考例1で作成したpTT−Lucを鋳型DNAとして、参考例3(2)で調製した昆虫培養細胞由来の抽出液を用いた下記組成の転写/翻訳反応液を使用して行った。
〔転写/翻訳反応液の組成〕
・50(v/v)% 昆虫培養細胞抽出液
・50μg/ml 鋳型DNA(ルシフェラーゼをコード)
・20mM HEPES−KOH(pH7.9)
・100mM 酢酸カリウム
・1.5mM 酢酸マグネシウム
・2mM DTT
・0.3mM ATP
・0.3mM GTP
・0.3mM UTP
・0.3mM CTP
・20mM クレアチンリン酸
・200μg/mL クレアチンキナーゼ
・40μM アミノ酸(20種)
・0.025mM スペルミジン
・1U/μL RNaseインヒビター
・200μg/mL tRNA
・0.8U/μL T7 RNAポリメラーゼ
ATP(シグマ社製)、GTP(シグマ社製)、CTP(シグマ社製)、UTP(シグマ社製)、アミノ酸(20種)(シグマ社製)、T7 RNAポリメラーゼ(プロメガ社製)、RNaseインヒビター(宝酒造社製)、tRNA(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)をそれぞれ用いた。各々調製した反応液を用いて、反応装置として低温アルミブロック恒温槽MG−1000(東京理化器械社製)を用い、無細胞系のタンパク質(ルシフェラーゼ)の合成反応を行った。反応液量は25μLとした。反応温度20℃で、8時間反応を行った。
【0092】
図3は、実施例9〜13、比較例2の実験結果を示すグラフである。図3のグラフにおいて縦軸は、比較例2で得られたタンパク質合成量に対する実施例9〜13の結果それぞれ得られたタンパク質合成量の割合(相対合成量:%)を表している。
【0093】
実施例14
:2ステップ法による無細胞系タンパク質合成(昆虫培養細胞)
酢酸マグネシウムの濃度を1mMとした以外は参考例3と同様にして調製した翻訳反応用溶液に、転写反応後の転写反応液を、1/20体積量添加し、マグネシウムを最終濃度で2.2mM(=24/20mM+1mM)含有する翻訳反応液を調製し、翻訳反応を行った以外は、実施例1と同様にして行った。
【0094】
実施例15
:2ステップ法による無細胞系タンパク質合成(昆虫培養細胞)
酢酸マグネシウムの濃度を1.25mMとした以外は参考例3と同様にして調製した翻訳反応用溶液に、転写反応後の転写反応液を、1/20体積量添加し、マグネシウムを最終濃度で2.45mM(=24/20mM+1.25mM)含有する翻訳反応液を調製し、翻訳反応を行った以外は、実施例1と同様にして行った。
【0095】
実施例16
:2ステップ法による無細胞系タンパク質合成(昆虫培養細胞)
酢酸マグネシウムの濃度を1.5mMとした以外は参考例3と同様にして調製した翻訳反応用溶液に、転写反応後の転写反応液を、1/20体積量添加し、マグネシウムを最終濃度で2.7mM(=24/20mM+1.5mM)含有する翻訳反応液を調製し、翻訳反応を行った以外は、実施例1と同様にして行った。
【0096】
実施例17
:2ステップ法による無細胞系タンパク質合成(昆虫培養細胞)
酢酸マグネシウムの濃度を2mMとした以外は参考例3と同様にして調製した翻訳反応用溶液に、転写反応後の転写反応液を、1/20体積量添加し、マグネシウムを最終濃度で3.2mM(=24/20mM+2mM)含有する翻訳反応液を調製し、翻訳反応を行った以外は、実施例1と同様にして行った。
【0097】
図4は、実施例14〜17の実験結果を示すグラフである。図4のグラフにおいて縦軸は、比較例2で得られたタンパク質合成量に対する実施例14〜17の結果それぞれ得られたタンパク質合成量の割合(相対合成量:%)を表している。結果、翻訳反応用溶液中の酢酸マグネシウムの濃度を1mMとした場合(実施例14)においてタンパク質合成量が最も高く、比較例2と比較して約23倍のタンパク質合成量となった。この結果は、本来翻訳反応液の最適濃度は2mMであるところ、実施例14においては転写反応液からの持込みが1.2mMであり、実際の反応液中のマグネシウム濃度は2.2mMとなっていることに大きく起因するものと考えられる。
【0098】
参考例4
:外来mRNAの精製
上記実施例1(1)と同様にしてインビトロ転写反応を行った後の転写反応液20μLに、1UのRQ1 RNase free DNase(プロメガ社製)を添加し、37℃、15分間インキュベートし、鋳型DNAを消化した。フェノール−クロロホルム抽出によりタンパク質を除去した後、酢酸カリウムを終濃度0.3Mとなるように添加し、エタノール沈殿を行った。得られた沈殿を100μLの滅菌水に溶解し、Nick Column(アマシャム バイオサイエンス社製)にアプライした。滅菌水400μLで溶出を行った。溶出画分を回収し、酢酸カリウムを終濃度0.3Mとなるように添加し、エタノール沈殿を行った。合成された外来mRNAの定量は、260nmの吸光度を測定して行った。
その結果、20μLスケールの反応で約60μgの外来mRNAが合成された。
【0099】
比較実験例1
:1ステップ法と3ステップ法とのタンパク質合成量の比較(カイコ)
従来法である1ステップ法と3ステップ法とでのタンパク質合成量の違いを比較実験した。
1ステップ法は、比較例1と同様にして行った。
3ステップ法は、上述したとおり、上記参考例4で精製したmRNAを、参考例2で調製した翻訳反応用溶液に最終濃度160μg/mLとなるように添加して調製した翻訳反応液を用いて翻訳反応を行った以外は、実施例1と同様にして行った。
図5は、上記比較実験例1の結果を示すグラフである。結果、1ステップ法でのタンパク質合成量は、3ステップ法でのタンパク質合成量の約2.45%と非常に低い値となった。
【0100】
比較実験例2
:1ステップ法と3ステップ法とのタンパク質合成量の比較(昆虫培養細胞)
従来法である1ステップ法と3ステップ法とでのタンパク質合成量の違いを比較実験した。
1ステップ法は、比較例2と同様にして行った。
3ステップ法は、上述したとおり、上記参考例4で精製したmRNAを、参考例3で調製した翻訳反応用溶液に最終濃度320μg/mLとなるように添加して調製した翻訳反応液を用いて翻訳反応を行った以外は、実施例9と同様にして行った。
図6は、上記比較実験例2の結果を示すグラフである。結果、1ステップ法でのタンパク質合成量は、3ステップ法でのタンパク質合成量の約1.6%と非常に低い値となった。
【0101】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、カイコ抽出液または昆虫培養細胞抽出液を使用した無細胞系タンパク質合成方法であって、ハイスループット化可能な新規な無細胞系タンパク質合成方法を提供することができる。
【0102】
【配列表のフリーテキスト】
配列番号1:
プライマー Luc T7−F3−Kpn
配列番号2:
プライマー Luc T7−R4−Kpn
配列番号3:
プライマー T7 promoter
【0103】
【配列表】
Figure 2005006539
Figure 2005006539

【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜5、比較例1の実験結果を示すグラフである。
【図2】実施例6〜8、比較例1の実験結果を示すグラフである。
【図3】実施例9〜13、比較例2の実験結果を示すグラフである。
【図4】実施例14〜17、比較例2の実験結果を示すグラフである。
【図5】比較実験例1の結果を示すグラフである。
【図6】比較実験例2の結果を示すグラフである。

Claims (4)

  1. インビトロで転写反応を行う工程と、
    転写反応後の転写反応液を、マグネシウムの最終濃度が10mM以下となるように節足動物由来の抽出物を含有する翻訳反応用溶液に添加して調製した翻訳反応液を用いて翻訳反応を行う工程とを含む、無細胞系でタンパク質を製造する方法。
  2. 節足動物由来の抽出物がカイコ組織から抽出されたものである、請求項1に記載の方法。
  3. 節足動物由来の抽出物が昆虫培養細胞から抽出されたものである、請求項1に記載の方法。
  4. 昆虫培養細胞がTrichoplusia ni卵細胞由来の培養細胞である、請求項3に記載の方法。
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