JP2009207449A - ラミニンコイルドコイル(lcc)ドメインヘテロ多量体を含むタンパク質会合体の調製方法 - Google Patents

ラミニンコイルドコイル(lcc)ドメインヘテロ多量体を含むタンパク質会合体の調製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】種々のラミニン又はその会合部分を効率よく大量に調製する方法を提供すること
【解決手段】還元剤が存在しない条件下、昆虫培養細胞抽出液由来の無細胞タンパク質合成系を用い、目的のタンパク質会合体を構成する各サブユニットを合成することによって、ラミニンコイルドコイル(LCC)ドメインヘテロ多量体を含むタンパク質会合体を得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、ラミニンの会合部分であるコイルドコイルドメインヘテロ多量体を少なくとも含むタンパク質会合体を調製する方法に関する。
生体内に大量に存在する細胞外マトリックスは(extracellular matrix: ECM)、以前は「細胞と細胞の隙間を埋める単なる詰め物」と見なされることが多かったが、近年、細胞の運命決定に重要な役割を担っていることが次第に明らかとなり、哺乳動物の組織形成の理解には、細胞自体の性質や挙動だけでなく、それらを制御するECMの時間的・空間的挙動を理解することが必須となっている。特に近年注目を集めている体性幹細胞を用いた再生医学・組織工学においては、幹細胞の維持あるいは分化に必要なECMの組成が解明されつつあり、医療材料としての幹細胞にとって欠くことのできない存在になることが予想される。目的のECMを必要なときに必要なだけ調製する技術が開発できれば、再生医療分野に体性幹細胞発見以来の新たな改革をもたらすものと期待される。このように、本格的に始まろうとしている再生医療を見据えて、幹細胞の培養基質としてヒト型ラミニンを大量に調製する方法を確立することが切望されている。
ECMはその存在様式から間質と基底膜の二つに大別することができる。間質型のECMは結合組織において細胞を取り囲むように存在しており、フィブロネクチンやコラーゲン繊維などが有名である。一方、基底膜は上皮細胞がその基底面で接する厚さ100 nmほどの薄いシート状の構造をしており、ラミニンやIV型コラーゲンなどから構成される。従って、生体組織から基底膜成分を精製することは、一般的に困難である。
Engelbreth-Holm-Swarm(EHS)腫瘍と呼ばれる特殊なマウス移植腫瘍から、ラミニン−111(α1β1γ1)を大量に精製することが可能なため、ラミニンの構造や機能、生理活性の解析は、これまでほとんどラミニン−111について行われてきた。
さまざまな種類のラミニンを解析に用いるためには、長大なラミニン各鎖の遺伝子の全長を単離して、哺乳動物培養細胞で組換えラミニンを発現・分泌させる手法が取られてきたが、この方法ではせいぜい1 mg/L程度の組み換えラミニンしか得られない。ラミニンの大量調製系構築の試みは、酵母や蚕を用いた系で行われたがいずれも成功していない。おそらくラミニン各鎖の分子量が10万以上と非常に大きく、複数のジスルフィド結合により複雑なコンフォメーションをとるのに加えて、三量体を形成することも原因のひとつであろう。
林良敬ら(特許文献1)は、EHS腫瘍からラミニンを大量に分泌する細胞株の樹立方法を発明しているが、ヒト型ラミニンを得るためには3本の鎖を同時に導入しなければならず、またヒト−マウス・キメララミニンも生成することから、精製効率も高くない。同じく、林良敬ら(特許文献2)はラミニン−111を大量に分泌するマウスの胚性腫瘍細胞株を用い、α1鎖の遺伝子を相同組み替えによって、他のラミニン鎖と入れ替える方法を発明したが、この方法ではヒト型ラミニンは作成できない。
尚、本出願人の一人は、先行する特許出願(特許文献3)において、昆虫培養細胞抽出液由来の新規無細胞タンパク質合成系の開発に成功したことを報告した。また、当該無細胞タンパク質合成系に関連する技術についても出願している(特許文献4、5)。一方、当該無細胞タンパク質合成系の適用例として、還元剤が存在しない条件下で大腸菌アルカリホスファターゼとヒトリソザイムの合成に成功したことが報告されている(非特許文献1)。また、無細胞タンパク合成系において、合成反応液に界面活性剤を添加することで、通常は不溶化してしまい合成が難しい膜蛋白質を大量に調製することが出来たことが報告されている(非特許文献2)。
特開2004−135519号公報 特開2006−304668号公報 特開2004−215651号公報 特開2006−187275号公報 特開2007−143435号公報 Ezure, T., Suzuki, T., Shikata, M., Ito, M. et al., Expression of proteins containing disulfide bonds in an insect cell-free system and confirmation of their arrangements by MALDI-TOF mass spectrometry. Proteomics 2007, 7, 4424-4434 Related Articles, LinksIshihara G, Goto M, Saeki M, Ito K, Hori T, Kigawa T, Shirouzu M, Yokoyama S. Expression of G protein coupled receptors in a cell-free translational system using detergents and thioredoxin-fusion vectors. Protein Expr Purif. 2005 May;41(1):27-37.
以上の背景の下、本発明の目的は、種々のラミニン又はその会合部分を効率よく大量に調製する方法を提供することである。
特許文献3に開示された、昆虫培養細胞抽出液由来の無細胞タンパク質合成系では、通常、酸化防止などの目的で還元剤を含む反応液を用いる。本願発明者らは、ラミニンを対象とした研究の経験とそれによって習得した知識を踏まえ、上記無細胞タンパク質合成系をラミニンの合成に適用する場合、反応液中の還元剤がサブユニットの会合に悪影響を及ぼすと予想した。言い換えれば、無細胞タンパク質合成の際に、反応組成液より還元剤を除いた反応系を用いれば、ラミニンサブユニットのジスルフィド結合による多量体の形成(サブユニットの会合)が促され、天然型ラミニンの構造を備える分子が生成すると考えた。この考えに基づく調製法の実効性及び有効性を確認すべく、一例としてヒトラミニンα3A鎖、β3鎖、γ2鎖の各コイルドコイルドメインが会合した分子の調製を試みたところ、ヘテロ二量体及びヘテロ三量体の形成を認めた。一方、ラミニンサブユニットであるラミニンβ鎖の合成実験の結果、合成時に界面活性剤を添加すると、合成されたβ鎖の可溶化が顕著に促進されることが判明した。この結果を考慮しつつ、ヒトラミニンβ3鎖のコイルドコイルドメインとγ2鎖のコイルドコイルドメインが会合したヘテロ二量体の合成実験を施行した。その結果、界面活性剤の存在下でタンパク質の合成(翻訳)と精製を行うと、ジスルフィド結合による架橋によって会合した複合体を効率よく調製できることが示された。本発明は主として以上の成果に基づくものであり、次の通りである。
[1]ラミニンコイルドコイル(LCC)ドメインヘテロ多量体を含むタンパク質会合体の調製方法であって、
還元剤が存在しない条件下、昆虫培養細胞抽出液由来の無細胞タンパク質合成系を用い、目的のタンパク質会合体を構成する各サブユニットを合成することを特徴とする調製方法。
[2]各サブユニットの合成が、界面活性剤が存在する条件下で実施されることを特徴とする、[1]に記載の調製方法。
[3]以下のステップを含むことを特徴とする、[1]に記載の調製方法:
(1)目的のタンパク質会合体を構成する各サブユニットについて、それをコードするmRNAを合成するステップ;
(2)還元剤が存在しない条件下、昆虫培養細胞抽出液由来の無細胞タンパク質合成系を用い、ステップ(1)で合成した各mRNAからタンパク質を同一反応容器内において合成するステップ;
(3)ステップ(2)の結果として形成されたタンパク質会合体を精製するステップ。
[4]ステップ(2)及びステップ(3)が、界面活性剤が存在する条件下で実施されることを特徴とする、[3]に記載の調製方法。
[5]ステップ(1)後の反応液、無細胞タンパク質合成反応用試薬、及びマグネシウムイオンと錯体を形成するキレート剤を混合した後、ステップ(2)を実施することを特徴とする、[3]又は[4]に記載の調製方法。
[6]タンパク質会合体がヒト由来であることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の調製方法。
[7]LCCドメイン多量体がLCCドメインヘテロ三量体であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の調製方法。
[8]LCCドメインヘテロ三量体が、ラミニン−111、211、121、221、332、3B32、311、321、411、421、511、521、213、423、522及び523からなる群より選択されるラミニンのLCCドメインヘテロ三量体であることを特徴とする、[7]に記載の調製方法。
[9]LCCドメイン多量体が、(1)ラミニン−332のコイルドコイルドメインヘテロ三量体、又は(2)ラミニンβ3鎖のコイルドコイルドメインとラミニンγ2鎖のコイルドコイルドメインからなるヘテロ二量体であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の調製方法。
[10]昆虫培養細胞がSpodoptera frugiperda卵巣細胞由来の細胞であることを特徴とする、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の調製方法。
本発明の調製方法によれば、反応組成液より還元剤を除いた反応系を用いることで、各ラミニンサブユニットのLCCドメインが適切に会合した構造を備えるタンパク質会合体が得られる。また、当該タンパク質会合体を簡便且つ迅速に提供することが可能である。さらには、界面活性剤の存在下でタンパク質の合成と精製を行うことにすれば、精製効率が上昇し、量産が可能となる。
本発明はラミニンコイルドコイル(LCC:Laminin Coiled Coil)ドメインヘテロ多量体を含むタンパク質会合体の調製方法に関する。本発明の調製方法によって得られるタンパク質会合体は、LCCドメインヘテロ多量体を少なくとも含む。「LCCドメインヘテロ多量体」とは、ラミニンを構成する2種類以上のサブユニット(例えばヒトラミニンα鎖、β鎖、γ鎖)のコイルドコイルドメインが会合したものをいう。従って、ラミニンα鎖、β鎖及びγ鎖のコイルドコイルドメインが会合したものに限らず、例えばラミニンβ鎖とγ鎖のコイルドコイルドメインが会合したもの(ヘテロ二量体)も「LCCドメインヘテロ多量体」に該当する。但し、典型的には、本発明によって調製されるタンパク質会合体(以下、「目的産物」ともいう)はLCCドメインヘテロ三量体を含む。
完全な構造のラミニンを「目的産物」としてもよい。即ち、完全な構造のラミニンの調製にも本発明の調製方法を適用することが可能である。一方、LCCドメインヘテロ多量体のみからなるタンパク質会合体の調製に本発明の調製方法を適用してもよい。尚、ここでの「完全な構造」とは、天然型ラミニンと同様に会合部分(「長腕」とも呼ばれる)に加え、各サブユニットのN末端側領域からなる短腕も備えた構造(十字架構造)をいう。
「目的産物」の由来(換言すれば、目的産物を構成する各サブユニットの生物種)も特に限定されない。ここでの「由来」となる生物種として、哺乳類(ヒト、チンパンジー、サルなどの霊長類、ラット、マウス、モルモットなどの齧歯類、ウシ、ブタ、ウマ、羊、ヤギなどの家畜、イヌ、ネコなどのペット動物を含む)、鳥類(ニワトリ、ウズラなど)、魚類、昆虫を例示することができる。
好ましくは、「目的産物」はヒト由来である。即ち、好ましい一態様では、ヒトラミニン(ラミニン−111、211、121、221、332、3B32、311、321、411、421、511、521、213、423、522及び523のいずれか)の会合部分であるコイルドコイルドメインヘテロ三量体、又はそれを含むタンパク質会合体が調製される。各ヒトラミニンにおけるサブユニットの組合せを以下に示す。
ラミニン−111(以前の呼称はラミニン−1):α1β1γ1
ラミニン−211(以前の呼称はラミニン−2):α2β1γ1
ラミニン−121(以前の呼称はラミニン−3):α1β2γ1
ラミニン−221(以前の呼称はラミニン−4):α2β2γ1
ラミニン−332(以前の呼称はラミニン−5):α3Aβ3γ2
ラミニン−3B32(以前の呼称はラミニン−5B):α3Bβ3γ2
ラミニン−311(以前の呼称はラミニン−6):α3β1γ1
ラミニン−321(以前の呼称はラミニン−7):α3β2γ1
ラミニン−411(以前の呼称はラミニン−8):α4β1γ1
ラミニン−421(以前の呼称はラミニン−9):α4β2γ1
ラミニン−511(以前の呼称はラミニン−10):α5β1γ1
ラミニン−521(以前の呼称はラミニン−11):α5β2γ1
ラミニン−213(以前の呼称はラミニン−12):α2β1γ3
ラミニン−423(以前の呼称はラミニン−14):α4β2γ3
ラミニン−522:α5β2γ2
ラミニン−523(以前の呼称はラミニン−15):α5β2γ3
本発明では、還元剤が存在しない条件下、昆虫培養細胞抽出液由来の無細胞タンパク質合成系を用い、目的のタンパク質会合体を構成する各サブユニットを合成する。このように本発明では、還元剤が反応容器内に存在しないという特殊な条件の下、昆虫培養細胞抽出液由来の無細胞タンパク質合成系を適用する。この特徴により、合成後に各サブユニットが適切に会合し、LCCドメインヘテロ多量体が形成される。「還元剤が存在しない条件下」とは、ラミニンを構成する各サブユニット間のジスルフィド結合の切断を起こす量の還元剤を含まないという意味であり、各サブユニット間に形成されたジスルフィド結合が保持される量の還元剤を含むことを許容する。具体的には、無細胞系タンパク合成反応液中の還元剤の濃度としては、好ましくは0〜0.5mM、更に好ましくは0〜0.1mMとする。「還元剤」の例としてジチオスレイトール(DTT)や2-メルカプトエタノール、還元型グルタチオン等が挙げられる。尚、本明細書における「無細胞タンパク質合成系」は、無細胞翻訳系と同義であって、mRNAの情報を読み取ってタンパク質を合成する反応系を指すものとする。従って、ここでの「合成する」とは、mRNAからタンパク質を合成すること(即ち翻訳反応)を指すことになる。
ところで、サブユニット間の適切な会合を達成するためには、各サブユニットが可溶化状態を維持することが重要である。本発明者らの検討の結果、合成の際に界面活性剤を添加すると、合成されたサブユニットの可溶化が促されることが示された。この知見に基づけば、サブユニット間の適切な会合を生じさせるためには界面活性剤を使用することが好ましい。そこで本発明の好ましい一態様では、還元剤が存在しないという条件に加え、界面活性剤が存在するという条件の下で各サブユニットの合成を行う。合成されたサブユニットの可溶化という目的が達成される限り、界面活性剤の種類は特に問わない。好ましい界面活性剤として非イオン性界面活性剤を挙げることができる。非イオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられ、具体的にはNP−40(Nonidet P-40)やTriton X-100、Tween 20、Briji35、Digitoninを例示することができる。界面活性剤の濃度も特に限定されない。例えば、反応液中の界面活性剤の濃度が0.2%(W/V)〜1.4%(W/V)となるようにすればよい。
本発明では、「昆虫培養細胞抽出液由来の無細胞タンパク質合成系」が利用される。以下、昆虫培養細胞抽出液の調製方法(以下、「抽出液調製方法」という)を説明する。尚、詳細は特開2004−215651号公報を参照されたい。
ここで説明する抽出液調製方法では、抽出用液中に懸濁した昆虫細胞を急激に凍結させることを要する。当該抽出液調製方法において、「急激に凍結」とは、凍結処理に付した後、10秒以下、好ましくは2秒以下で昆虫細胞を凍結させることを指す。昆虫細胞の凍結を急激に行わなかった場合には、タンパク質合成に必須な成分が不活化する虞があり好ましくない。
上記のように昆虫細胞を急激に凍結させる温度としては、通常−80℃以下であり、好ましくは−150℃以下である。−80℃を越える温度で急激に凍結させると、タンパク質合成に必須な成分が失活してタンパク質合成能が低下してしまう傾向にあるためである。
上記昆虫細胞の急激な凍結は、たとえば、液体窒素や液体ヘリウムなどの不活性ガスを使用することなどによって実現できるが、入手が容易であり安価な液体窒素を用いて行うのが好ましい。
当該抽出液調製方法においては、昆虫細胞からの抽出に際して、抽出用液中に懸濁した昆虫細胞を急激に凍結させる工程を少なくとも含有しているならば、その他の工程について特に制限はない。たとえば、乳鉢中で乳棒を用いてすり潰す方法、ダウンスホモジナイザーを用いる方法、ガラスビーズを用いる方法など、大腸菌や小麦胚芽などから無細胞系タンパク質合成用の抽出液を得る際に従来より行われていた種々の手法にて昆虫細胞を破砕し、抽出を行えばよいが、昆虫細胞は、大腸菌や小麦胚芽などから無細胞系タンパク質合成用の抽出液を得る場合と比較して細胞の破砕が容易であり、さらには、この凍結・解凍によるだけの破砕法により得られた抽出液にはタンパク質合成に必須な成分が活性を保持した状態で含まれているという理由によりタンパク質合成能の高い抽出液を得ることができるという利点もあることから、上記昆虫細胞を急激に凍結させた後、解凍し、遠心分離することによって昆虫細胞を破砕するのが好ましい。
上記急激に凍結した昆虫細胞を、解凍した後、遠心分離する場合、解凍は、たとえば−10℃〜20℃の水浴または氷水浴中での解凍、室温(25℃)にての放置などによって実現できるが、タンパク質合成に必須な成分の失活を防止し、タンパク質合成能の低下を確実に防ぐことから、0℃〜20℃(特には、4℃〜10℃)の水浴または氷水浴中で解凍を行うのが好ましい。解凍した昆虫細胞の遠心分離は、当分野において通常行われている条件(10,000×g〜50,000×g、0℃〜10℃、10分間〜60分間)で行えばよい。かかる遠心分離後の上清には、目的とする昆虫細胞の抽出物が含有される。
抽出液調製方法に用いる昆虫細胞としては、特に制限はなく、たとえば、鱗翅目、直翅目、双翅目、膜翅目、鞘翅目、甲虫目、脈翅目、半翅目などの昆虫由来の細胞を使用することができる。中でも、培養細胞株が多く樹立されていることから鱗翅目、半翅目などの昆虫由来の細胞が好ましい。また、昆虫細胞としては、いかなる組織由来の細胞であってもよく、たとえば、血球細胞、生殖巣由来細胞、脂肪体由来細胞、胚由来細胞、孵化幼虫由来細胞などを特に制限なく使用することができる。中でも、タンパク質生産能が高いと考えられる生殖巣由来細胞を使用するのが好ましい。特に、細胞系においてタンパク質合成能が高く、また無血清培地にて培養が可能であることから、Trichoplusia niの卵細胞由来の細胞であるHigh Five(Invitrogen社製)やSpodoptera frugiperda卵巣細胞由来の細胞であるSf21(Invitrogen社製)を昆虫細胞として用いるのが好ましい。
尚、単一種の昆虫における単一の組織由来の昆虫細胞に限らず、単一種の昆虫における複数種の組織由来であってよく、複数種の昆虫における単一の組織由来であってもよく、無論、複数種の昆虫における複数種の組織由来であってもよい。
抽出液調製方法に用いられる抽出用液は、特に制限されるものではないが、プロテアーゼインヒビターを少なくとも含有するのが好ましい。プロテアーゼインヒビターを含有する抽出用液を用いると、昆虫細胞由来の抽出物に含有されるプロテアーゼの活性が阻害され、当該プロテアーゼによる抽出物中の活性タンパクの不所望な分解を防止でき、結果として昆虫細胞由来の抽出物が有するタンパク質合成能を有効に引き出すことができるようになるという利点がある。
上記プロテアーゼインヒビターとしては、プロテアーゼの活性を阻害し得るものであるならば特に制限はなく、たとえば、フェニルメタンスルホニルフルオリド(以下、「PMSF」ということがある。)、アプロチニン、ベスタチン、ロイペプチン、ペプスタチンA、E−64(L−trans−エポキシスクシニルロイシルアミド−4−グアニジノブタン)、エチレンジアミン四酢酸、ホスホラミドンなどを使用することができるが、昆虫細胞由来の抽出液にはセリンプロテアーゼが含まれることから、上記中でもセリンプロテアーゼに対して特異性の高いインヒビターとして働くPMSFを使用するのが好ましい。また、1種類のプロテアーゼインヒビターのみならず、数種類の混合物(プロテアーゼインヒビターカクテル)を用いてもよい。
当該抽出用液中におけるプロテアーゼインヒビターの含有量に特に制限はないが、酵素類の分解阻害能を好適に発揮できる観点から、1μM〜50mM含有されることが好ましく、0.01mM〜5mM含有されることがより好ましい。プロテアーゼインヒビターが1μM未満であると、プロテアーゼの分解活性を充分抑えることができない傾向にあるためであり、またプロテアーゼインヒビターが50mMを越えると、タンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
また、抽出用液は、上記プロテアーゼインヒビターに加えて、カリウム塩、マグネシウム塩、および緩衝剤を少なくとも含有するのが好ましい。
上記カリウム塩としては、たとえば酢酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、クエン酸水素二カリウム、硫酸カリウム、リン酸二水素カリウム、ヨウ化カリウム、フタル酸カリウムなど一般的な形態で使用することができ、中でも酢酸カリウムを使用するのが好ましい。カリウム塩は、タンパク質合成反応における補助因子として作用する。
当該抽出用液中におけるカリウム塩の含有量に特に制限はないが、保存安定性の観点から、たとえば酢酸カリウムなど1価のカリウム塩である場合、10mM〜500mM含有されることが好ましく、50mM〜300mM含有されることがより好ましい。カリウム塩が10mM未満または500mMを越えると、タンパク質合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
上記マグネシウム塩としては、たとえば酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、乳酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウムなど一般的な形態で使用することができ、中でも酢酸マグネシウムを使用するのが好ましい。マグネシウム塩も、タンパク質合成反応における補助因子として作用する。
当該抽出液中におけるマグネシウム塩の含有量に特に制限はないが、保存安定性の観点から、たとえば酢酸マグネシウムなど2価の塩である場合、0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.5mM〜5mM含有されることがより好ましい。マグネシウム塩が0.1mM未満または10mMを越えると、タンパク質の合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
上記緩衝剤は、抽出液に緩衝能を付与し、たとえば酸性または塩基性物質の添加などによって起こる抽出液のpHの急激な変化による抽出物の変性を防止する目的で配合される。このような緩衝剤としては、特に制限はなく、たとえば、HEPES−KOH、Tris−HCl、酢酸−酢酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、リン酸、ホウ酸、MES、PIPESなどを使用することができる。
緩衝剤は、当該抽出液のpHが4〜10に保持されるようなものを使用するのが好ましく、pHが6.5〜8.5に保持されるようなものを使用するのがより好ましい。抽出液のpHが4未満またはpHが10を越えると、本発明の反応に必須な成分が変性する虞があるためである。このような観点より、上記中でもHEPES−KOH(pH6.5〜8.5)を使用するのが特に好ましい。
当該抽出液中における緩衝剤の含有量に特に制限はないが、好適な緩衝能を保持する観点から、5mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜100mM含有されることがより好ましい。緩衝剤が5mM未満であると、酸性または塩基性物質の添加によりpHの急激な変動を引き起こし、抽出物が変性する傾向にあるためであり、また緩衝剤が200mMを越えると、塩濃度が高くなり過ぎ、タンパク質合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
また、上記組成に加えて、塩化カルシウムおよびグリセロールをさらに含有してなる抽出用液を用いると、タンパク質合成能がより向上された昆虫細胞抽出液を得ることができるため好ましい。
この場合、塩化カルシウムの含有量は特に制限されないが、上記タンパク質合成能の向上の効果を有効に発揮し得る観点より、0.1mM〜10mMであるのが好ましく、0.5mM〜5mMであるのがより好ましい。また、グリセロールの添加量についても特に制限されるものではないが、上記タンパク質合成能の向上の効果を有効に発揮し得る観点より、5(v/v)%〜80(v/v)%となるように添加されるのが好ましく、10(v/v)%〜50(v/v)%となるように添加されるのがより好ましい。
抽出液調製方法において、細胞破砕後から、無細胞系タンパク質合成用昆虫細胞抽出液を得るまでの手順等については特に制限されるものではない。図1は、好ましい調製方法1〜3を簡略化して示すフローチャートである。図1に示す各調製方法1〜3においては、上述したように急激な凍結後、解凍して遠心分離を行う方法によって細胞破砕を行う例を示している。
図1に示すように、抽出液調製方法においては、細胞破砕後、上記遠心分離後の上清(上清1A)をそのまま抽出液としてもよいし、また上清1Aをさらに遠心分離(10,000×g〜100,000×g、0℃〜10℃、10分間〜120分間)にかけて、得られた上清(上清1B)を抽出液(上清1)としてもよい(以下「調製方法1」と呼ぶ)。さらに、上記上清1(上清1Aまたは1B)をゲル濾過し、ゲル濾過後の濾液より280nmにおける吸光度が10以上の画分(吸収の大きな画分)を分取して、これを抽出液としてもよい(以下「調製方法2」と呼ぶ)。この場合、具体的には以下の手順にて行う。
まず、上清1Aまたは上清1Bについてゲル濾過を行うが、ゲル濾過は、たとえば脱塩カラム PD−10(アマシャム バイオサイエンス社製)を好適に使用することができ、常法にしたがって、ゲル濾過用緩衝液にてカラムを平衡化した後、試料を供給し、上記ゲル濾過用緩衝液にて溶出する、というような条件にて行えばよい。上記ゲル濾過用緩衝液としては、従来公知の適宜の組成のものを特に制限なく使用することができ、たとえば、10mM〜100mMのHEPES−KOH(pH6.5〜8.5)、50mM〜300mMの酢酸カリウム、0.5mM〜5mMの酢酸マグネシウム、0.01mM〜5mMのPMSFを含有するゲル濾過用緩衝液を用いることができる。ゲル濾過して得られる濾液は、通常のゲル濾過で行われているように、0.1mL〜1mLを1画分とすればよく、高いタンパク質合成能を有する画分を効率よく分取するという観点より、0.4mL〜0.6mLを1画分とするのが好ましい。
続いて、たとえばUltrospec3300pro(アマシャム バイオサイエンス社製)などの機器を用いて、280nmにおける吸光度が30以上の画分(吸収の大きな画分)をゲル濾過後の濾液より分取して、これを抽出液とする。
また上記調製方法2で得られた吸収の大きな画分を、さらに遠心分離にかけて、得られた上清(上清2)を抽出液とするようにしてもよい(以下、「調製方法3」と呼ぶ)。このゲル濾過後の遠心分離は、翻訳反応を阻害する不溶性の成分を除去するという理由から、30,000×g〜100,000×g、0℃〜10℃、10分間〜60分間の条件で行うのが、好ましい。
なお、抽出液調製方法に供する昆虫細胞は、培養に用いる培地の翻訳反応液への持込みを避けるため、上記急激な凍結を行う前に、プロテアーゼインヒビターおよびグリセロールを含有しない以外は、上述した昆虫細胞用の好適な抽出用液と同じ組成の洗浄液にて予め洗浄しておくのが好ましい。洗浄液での洗浄は、昆虫細胞に洗浄液を添加し、これを遠心分離(たとえば、700×g、10分間、4℃という条件)することによって行う。洗浄に用いる洗浄液の量は、培地を完全に洗い流すという理由から、湿重量1gの昆虫細胞に対し5mL〜100mLであるのが好ましく、10mL〜50mLであるのがより好ましい。洗浄回数は、1回〜5回行うのが好ましく、2回〜4回行うのがより好ましい。
また本発明の調製方法に供する昆虫細胞の量は、特に制限されるものではないが、抽出効率を最適に保つため、抽出液1mLに対して0.1g〜5gであるのが好ましく、0.5g〜2gであるのがより好ましい。
上記方法にて調製された無細胞タンパク質合成系用の昆虫細胞抽出液は、昆虫細胞由来の抽出物をタンパク質濃度で1mg/mL〜200mg/mL含有することが好ましく、10mg/mL〜100mg/mL含有することがより好ましい。当該抽出物の含有量がタンパク質濃度で1mg/mL未満であると、昆虫細胞抽出液の作用に必須な成分の濃度が低くなり、充分な合成反応が行えなくなる虞があるためであり、また当該抽出物の含有量がタンパク質濃度で200mg/mLを越えると、抽出液自体が高い粘性を有し、操作しづらい虞があるためである。
該抽出液中の昆虫細胞由来の抽出物の含有量は、タンパク質濃度を測定することで決定され、たとえば、BCA Protein assay Kit(PIERCE社製)を使用し、タンパク質濃度を測定することによって決定される。具体的には、反応試薬2mLに対してサンプルを0.1mL加え、37℃で30分間反応させ、分光光度計(Ultrospec3300pro、アマシャムバイオサイエンス社製)を用いて、562nmにおける吸光度を測定する。コントロールとしては、通常、ウシ血清アルブミン(BSA)を使用し、検量線を作成する。このような手法により測定することができる。
また抽出液中に含有される抽出物が昆虫細胞由来のものであるか否かは、たとえば、抽出液中のリボソームRNAの塩基配列解析を行うことによって判別することができる。
昆虫細胞抽出液は、昆虫細胞由来の抽出物をタンパク質濃度で10mg/mL〜100mg/mL含有するとともに、50mM〜300mMの酢酸カリウム、0.5mM〜5mMの酢酸マグネシウム、0.01mM〜5mMのPMSF、10mM〜100mMのHEPES−KOH(pH6.5〜8.5)を含有するように実現されるのが好ましい。
昆虫細胞抽出液は、無細胞系タンパク質合成に供する前に、ヌクレアーゼ処理を施されたものであることが好ましい。ヌクレアーゼ処理の施された昆虫細胞抽出液を無細胞系タンパク質合成に供することで、ヌクレアーゼ処理を施さなかった昆虫細胞抽出液を用いた場合と比較して、より多くの量の目的タンパク質を合成することができる。これは、以下のような理由による。
無細胞系において目的タンパク質を合成する際、細胞抽出液由来の内在性mRNAが含まれると、この内在性mRNAがコードするタンパク質も合成されてしまう。たとえば、無細胞系において目的タンパク質を標識したいときに、この内在性mRNAより合成されたタンパク質についても同時に標識されてしまい、その後の目的タンパク質の解析に支障をきたすことがある。また内在性mRNA存在下では目的のタンパク質の合成量も低下してしまう可能性が高い。よって、無細胞系タンパク質合成に用いられる細胞抽出液中には内在性mRNAは含まれないことが望ましい。
ヌクレアーゼ処理は、従来公知の適宜の手法を特に制限なく用いることができるが、内在性のRNAの中で、mRNAのみに対し選択的に消化を行うことから、mRNAをカルシウム存在下で選択的に分解するミクロコッカルヌクレアーゼを用いて昆虫細胞抽出液を処理することが好ましい。
具体的には、昆虫細胞抽出液に、ミクロコッカルヌクレアーゼ(ロシュ・ダイアグノスティクス社製)及び塩化カルシウムを添加し、15℃〜25℃で5分間〜60分間反応させる。ミクロコッカルヌクレアーゼは、翻訳反応開始後に外来mRNAを分解または抽出液中のタンパク質合成に必須な成分を分解する虞があるため、終濃度が10μg/mL〜100μg/mLとなるように添加するのが好ましく、30μg/mL〜60μg/mLとなるように添加するのがより好ましい。また塩化カルシウムはカルシウムがミクロコッカルヌクレアーゼの活性化に必須であるが、翻訳反応を阻害する虞があるため、終濃度が0.05mM〜50mMとなるように添加するのが好ましく、0.1mM〜1mMとなるように添加するのがより好ましい。上記反応後、ミクロコッカルヌクレアーゼがカルシウム依存性であるため、カルシウムイオンをキレートし、ミクロコッカルヌクレアーゼを失活させることを目的として、エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)四酢酸(以下、「EGTA」ということがある。)を添加する。EGTAは、カルシウムイオンを充分にキレートできるように、終濃度が0.1mM〜100mMとなるように添加するのが好ましく、1mM〜20mMとなるように添加するのがより好ましい。
次に、上記抽出液を用いた無細胞タンパク質合成系による合成反応について説明する。合成反応においては、通常、上記抽出液に無細胞系でのタンパク質合成に要する添加物を添加した反応液として調製する。上記添加物に特に制限はなく、無細胞系のタンパク質合成の分野において従来より一般に使用されているものであれば特に制限はない。
尚、上記反応液は、本発明の抽出液が10(v/v)%〜80(v/v)%、特には30(v/v)%〜60(v/v)%含有されるように調製されるのが好ましい。すなわち、上記反応液の全体において、昆虫細胞由来の抽出物の含有量が、タンパク質濃度で0.1mg/mL〜160mg/mLとなるように調製されるのが好ましく、3mg/mL〜60mg/mLとなるように調製されるのがより好ましい。当該抽出物の含有量がタンパク質濃度で0.1mg/mL未満または160mg/mLを越えると、目的のタンパク質の合成速度が低下する虞があるためである。
通常、上記反応液としては、上記抽出液を除く成分として、カリウム塩、マグネシウム塩、アデノシン三リン酸、グアノシン三リン酸、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸成分、RNaseインヒビター、tRNA、外来mRNA、緩衝剤を少なくとも含有するものを用いる。これにより、短時間で大量のタンパク質の合成が可能であるというような利点をさらに有する無細胞系タンパク質合成用の反応液を実現できる。尚、上記成分以外の添加成分の例として、EGTAを挙げることができる。
当該反応液中におけるカリウム塩としては、抽出用液の成分として上述した各種のカリウム塩、好適には酢酸カリウム、を好ましく使用できる。カリウム塩は、上述した抽出用液におけるカリウム塩の場合と同様の観点から、当該反応液中において、10mM〜500mM含有されることが好ましく、50mM〜150mM含有されることがより好ましい。
当該反応液中におけるマグネシウム塩としては、抽出用液の成分として上述した各種のマグネシウム塩、好適には酢酸マグネシウム、を好ましく使用できる。マグネシウム塩は、上述した抽出液におけるマグネシウム塩の場合と同様の観点から、当該反応液中において、0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.5mM〜3mM含有されることがより好ましい。
当該反応液中におけるアデノシン三リン酸(以下、「ATP」ということがある)は、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。ATPが0.01mM未満または10mMを越えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
当該反応液中におけるグアノシン三リン酸(以下、「GTP」ということがある。)は、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.05mM〜5mM含有されることがより好ましい。GTPが0.01mM未満または10mMを越えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
当該反応液中におけるクレアチンリン酸は、タンパク質を継続的に合成するための成分であって、ATPとGTPを再生する目的で配合される。クレアチンリン酸は、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜100mM含有されることがより好ましい。クレアチンリン酸が1mM未満であると、充分な量のATPとGTPが再生されにくく、結果としてタンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためであり、またクレアチンリン酸が200mMを越えると、阻害物質として働き、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
当該反応液中におけるクレアチンキナーゼは、タンパク質を継続的に合成するための成分であって、クレアチンリン酸と共にATPとGTPを再生する目的で配合される。クレアチンキナーゼは、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1μg/mL〜1000μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜500μg/mL含有されることがより好ましい。クレアチンキナーゼが1μg/mL未満であると、充分な量のATPとGTPが再生されにくく、結果としてタンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためであり、またクレアチンキナーゼが1000μg/mLを越えると、阻害物質として働き、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
当該反応液中におけるアミノ酸成分は、20種類のアミノ酸、すなわち、バリン、メチオニン、グルタミン酸、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、グリシン、プロリン、イソロイシン、トリプトファン、アスパラギン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、チロシン、リシン、グルタミン、シスチン、アルギニン、の20種類のアミノ酸を少なくとも含有する。このアミノ酸には、ラジオアイソトープ標識されたアミノ酸も含まれる。さらに、必要に応じて、修飾アミノ酸を含有していてもよい。当該アミノ酸成分は、通常、各種類のアミノ酸を概ね等量ずつ含有してなる。
タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において上記のアミノ酸成分が1μM〜1000μM含有されることが好ましく、10μM〜200μM含有されることがより好ましい。アミノ酸成分が1μM未満または1000μMを越えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
当該反応液中におけるRNaseインヒビターは、抽出液に混在する昆虫細胞由来のRNaseによって、無細胞系タンパク質合成の際にmRNAやtRNAが不所望に消化されて、タンパク質の合成を妨げるのを防ぐ目的で配合されるものであり、当該反応液中において0.1U/μL〜100U/μL含有されることが好ましく、1U/μL〜10U/μL含有されることがより好ましい。RNaseインヒビターが0.1U/μL未満であると、RNaseの分解活性を充分抑えることができない傾向にあるためであり、またRNaseインヒビターが100U/μLを越えると、タンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
当該反応液中におけるtRNAは、上記20種類のアミノ酸に対応した種類のtRNAを概ね等量ずつ含有してなる。本発明においては、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1μg/mL〜1000μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜500μg/mL含有されることがより好ましい。tRNAが1μg/mL未満または1000μg/mLを越えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
反応液に含有される緩衝剤としては、上述した本発明の抽出液と同様のものが好適に使用でき、同様の理由から、HEPES−KOH(pH6.5〜8.5)を使用するのが好ましい。また、緩衝剤は、上述した抽出液における緩衝剤の場合と同様の観点から、5mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜50mM含有されることがより好ましい。
また上記反応液は、EGTAを含有するのが好ましい。EGTAを含有すると、EGTAが抽出液中の金属イオンとキレートを形成することでリボヌクレアーゼ、プロテアーゼ等が不活化することにより、タンパク質合成に必須な成分の分解を阻害することができるためである。また上記のように抽出液にヌクレアーゼ処理を施した場合であっても、反応液がEGTAを含有することにより、ヌクレアーゼが無細胞系タンパク質合成に悪影響を及ぼすことを確実に防止することができる。該EGTAは、上記反応液中において、上記分解阻害能を好適に発揮し得る観点から0.01mM〜50mM含有されることが好ましく、0.1mM〜10mM含有されることがより好ましい。EGTAが0.01mM未満であると必須な成分の分解活性を充分に抑えることができない傾向にあるためであり、また、50mMを越えるとタンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
すなわち、本発明の無細胞系タンパク質合成方法に用いる反応液は、上記抽出液を30(v/v)%〜60(v/v)%含有するとともに、50mM〜150mMの酢酸カリウム、0.5mM〜3mMの酢酸マグネシウム、0.1mM〜5mMのATP、0.05mM〜5mMのGTP、10mM〜100mMのクレアチンリン酸、10μg/mL〜500μg/mLのクレアチンキナーゼ、10μM〜200μMのアミノ酸成分、1U/μL〜10U/μLのRNaseインヒビター、10μg/mL〜500μg/mLのtRNA、20μg/mL〜1000μg/mLの外来mRNA、10mM〜50mMのHEPES−KOH(pH6.5〜8.5)を含有するように実現されるのが好ましい。また、上記に加えてさらに0.1mM〜10mMのEGTAを含有するように実現されるのがより好ましい。
本発明では、外来mRNAとして、目的のタンパク質会合体を構成するサブユニットをコードするmRNAが使用される。例えば、ラミニン−332の会合部分を含むタンパク質会合体を調製する場合、α3Aの少なくともLCCドメイン部分をコードするmRNA、β3の少なくともLCCドメイン部分をコードするmRNA、及びγ2の少なくともLCCドメイン部分をコードするmRNAを用いる。尚、目的のタンパク質会合体の構造に応じて2種類又は3種類のmRNAが使用されることになる。以下、サブユニットをコードするmRNAの例を示す。
ラミニンα1:配列番号23(GenBank Acc. no. NM_005559):当該配列の4760番塩基〜6469番塩基がLCCドメインに対応する
ラミニンα2:配列番号24(GenBank Acc. no. NM_000426):当該配列の4825番塩基〜6564番塩基がLCCドメインに対応する
ラミニンα3A:配列番号25(GenBank Acc. no. NM_000227):当該配列の640番塩基〜2415番塩基がLCCドメインに対応する
ラミニンα3B配列番号26(GenBank Acc. no. NM_198129):当該配列の5550番塩基〜7335番塩基がLCCドメインに対応する
ラミニンα4:配列番号27(GenBank Acc. no. NM_001105206):当該配列の1126番塩基〜2832番塩基がLCCドメインに対応する
ラミニンα5:配列番号28(GenBank Acc. no. NM_005560):当該配列の6566番塩基〜8293番塩基がLCCドメインに対応する
ラミニンβ1:配列番号29(GenBank Acc. no. NM_002291):当該配列の3870番塩基〜5693番塩基がLCCドメインに対応する
ラミニンβ2:配列番号30(GenBank Acc. no. NM_002292):当該配列の3867番塩基〜5693番塩基がLCCドメインに対応する
ラミニンβ3:配列番号31(GenBank Acc. no. NM_000228):当該配列の1885番塩基〜3660番塩基がLCCドメインに対応する
ラミニンγ1:配列番号32(GenBank Acc. no. NM_002293):当該配列の3348番塩基〜5084番塩基がLCCドメインに対応する
ラミニンγ2:配列番号33(GenBank Acc. no. NM_005562):当該配列の2139番塩基〜3893番塩基がLCCドメインに対応する
ラミニンγ3:配列番号34(GenBank Acc. no. NM_006059):当該配列の3135番塩基〜4823番塩基がLCCドメインに対応する
本発明に用いる外来mRNAは、常法で用意すればよい(例えば、Molecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)、Current protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987)が参考になる)。例えば、合成目的のサブユニットのORF(Open reading frame)を市販のベクター、たとえば、pTNT Vector(プロメガ社製)の5’−βグロビンリーダー配列の下流に挿入し、これを用いて転写反応で得られたmRNAを用いることができる。また、転写反応の際にメチル化されたリボヌクレオチドなどを加えることにより付加されたキャップ構造を有する外来mRNAを用いてもよい。
好ましくは、mRNAからタンパク質を翻訳する際(ステップ(2)のとき)に、翻訳反応促進活性を有するDNA断片を含む発現ベクターを用いる。ここで「翻訳反応促進活性を有する」とは、当該発現ベクターを使用して無細胞系タンパク質合成反応を行うことで、この翻訳反応を促進するDNA断片を使用しなかった場合と比較して、合成量が向上されることを指す。
当該発現ベクターに含まれる翻訳反応促進活性を有するDNA断片としては、具体的には、配列表の配列番号1〜11いずれかに示される塩基配列を有する二本鎖DNA断片が挙げられる。これらのDNA断片にはこれらと均等な(配列番号1〜11いずれかに示される塩基配列より、1または数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された)塩基配列を有し、且つ翻訳反応促進活性を有する二本鎖DNA断片も含まれる。
配列表の配列番号1〜11に示す塩基配列は、それぞれ、カイコまたはバキュロウイルスにおける5'非翻訳領域(5'UTR)として公知の塩基配列である。具体的には、配列番号1に示す塩基配列はカイコのフィブロインL鎖遺伝子の5'UTRの塩基配列、配列番号2に示す塩基配列はカイコのセリシン遺伝子の5'UTRの塩基配列、配列番号3に示す塩基配列はAcNPV(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)のポリヘドリン遺伝子の5'UTRの塩基配列、配列番号4に示す塩基配列はBmCPV(Bombyx mori cytoplasmic polyhedrosis virus)のポリヘドリン遺伝子の5'UTRの塩基配列、配列番号5に示す塩基配列はEsCPV(Euxoa scandes cytoplasmic polyhedrosis virus)のポリヘドリン遺伝子の5'UTRの塩基配列、配列番号6に示す塩基配列はHcNPV(Hyphantria cunea nuclear polyhedrosis virus)のポリヘドリン遺伝子の5'UTRの塩基配列、配列番号7に示す塩基配列はCrNPV(Choristoneura rosaceana nucleopolyhedrovirus)のポリヘドリン遺伝子の5'UTRの塩基配列、配列番号8に示す塩基配列はEoNPV(Ecotropis oblique nuclear polyhedrosis virus)のポリヘドリン遺伝子の5'UTRの塩基配列、配列番号9に示す塩基配列はMnNPV(Malacosma neustria nucleopolyhedrovirus)のポリヘドリン遺伝子の5'UTRの塩基配列、配列番号10に示す塩基配列はSfNPV(Spodoptera frugiperda nucleopolyhedrovirus)のポリヘドリン遺伝子の5'UTRの塩基配列、配列番号11に示す塩基配列はWsNPV(Wiseana signata nucleopolyhedrovirus)のポリヘドリン遺伝子の5'UTRの塩基配列として、それぞれ公知である。なお、本発明における発現ベクターに含まれるDNA断片は、カイコまたはバキュロウイルスの5'UTRに由来するものであれば、上記塩基配列を必ずしも有してなくともよい。
発現ベクターに含まれる上記DNA断片は従来公知のいかなる方法により得られてもよい。たとえば、公知のDNA合成機を用いて合成することができる。
なお、発現ベクターに含まれる翻訳反応促進活性を有するDNA断片のうち、顕著な翻訳反応促進活性を発揮し、特に好適なものとして以下のものが例示される。
(1)配列番号2に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に1個組み込まれた発現ベクター;
(2)配列番号3に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に1個組み込まれた発現ベクター;
(3)配列番号4に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に1個組み込まれた発現ベクター;
(4)配列番号5に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に逆方向に2個組み込まれた発現ベクター;
(5)配列番号6に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に逆方向に1個組み込まれた発現ベクター;
(6)配列番号6に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に逆方向に2個組み込まれた発現ベクター;
(7)配列番号7に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に1個組み込まれた発現ベクター;
(8)配列番号7に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に逆方向に1個組み込まれた発現ベクター;
(9)配列番号8に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に逆方向に1個組み込まれた発現ベクター;
(10)配列番号9に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に1個または2個組み込まれた発現ベクター;
(11)配列番号9に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に逆方向に1個組み込まれた発現ベクター;
(12)配列番号10に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に1個組み込まれた発現ベクター;
(13)配列番号11に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に1個組み込まれた発現ベクター。
発現ベクターは上記DNA断片の5'上流側に、通常プロモーター配列を少なくとも一つ有する。プロモーター配列としては、たとえば、従来公知のT7プロモーター配列、SP6プロモーター配列、T3プロモーター配列などが挙げられる。
発現ベクターは、上記DNA断片を一つまたは複数個含む。上記DNA断片は、プロモーター配列の3'下流側において、順方向(5'→3')に組み込まれてもよいし、逆方向に組み込まれてもよい。複数個の上記DNA断片を含む場合、上記DNA断片は同じものであっても互いに異なるものであってもよい。また、2個以上のDNA断片が組み込まれた場合、全てのDNA断片が同じ方向に組み込まれていなくともよい。
また、発現ベクターは、発現させるタンパク質をコードする構造遺伝子を挿入するための配列を有する。挿入させるための配列としては、従来公知のマルチクローニングサイトや、相同性組み換え反応を起こす配列などが挙げられる。かかるタンパク質をコードする構造遺伝子を挿入させるための配列は、上記翻訳反応促進活性を有するDNA断片の3'下流側に組み込まれる。かかる構造遺伝子を挿入するための配列に、発現させたタンパク質の精製を容易にするという観点から従来公知のヒスチジンタグや、GSTタグをコードする塩基配列などを付加させてもよい。
また、発現ベクターは上記タンパク質をコードする構造遺伝子を挿入させるための配列の3'下流側に、合成されたmRNAの安定性などの観点から3'非翻訳領域(3'UTR)およびポリA配列を有しているのが好ましい。
また、発現ベクターは上記ポリA配列の3'下流側に転写を終結させる機能を有するターミネーター配列を有していることが好ましい。上記ターミネーター配列としては、たとえば、従来公知のT7ターミネーター配列、SP6ターミネーター配列、T3ターミネーター配列などが挙げられる。
また、発現ベクターは、宿主内で安定に保持されるために薬剤耐性マーカーを有することが好ましい。薬剤耐性マーカーとしては、たとえば従来公知のアンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子などが挙げられる。
また、発現ベクターは、宿主内で自立複製を行うために複製起点を有する。複製起点としては、たとえば従来公知のpBR322 Ori、pUC Ori、SV40 Oriなどが挙げられる。また、シャトルベクターとして使用できるように、異なる宿主間で機能する複製起点を有していてもよい。
上記発現ベクターは、従来公知の遺伝子組み換え技術を用いて作製することができる。
無細胞系タンパク質合成用の反応液中において、外来mRNAは、タンパク質合成の速度の観点から、5μg/mL〜2000μg/mL含有されることが好ましく、20μg/mL〜1000μg/mL含有されることがより好ましい。外来mRNAが5μg/mL未満または2000μg/mLを越えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
無細胞系タンパク質合成は、上記の通り用意した反応液を用いて、従来公知のたとえば低温恒温槽にて行う。反応温度は、通常、10℃〜40℃、好ましくは15℃〜30℃の範囲内である。反応温度が10℃未満であると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあり、また反応温度が40℃を越えると、必須な成分が変性する傾向にあるためである。
反応の時間は、通常、1時間〜72時間、好ましくは3時間〜24時間である。
本発明の調製方法では、典型的には、以下に示すステップ(1)〜(3)を順番に実施する。
(1)目的のタンパク質会合体を構成する各サブユニットについて、それをコードするmRNAを合成するステップ;
(2)還元剤が存在しない条件下、昆虫培養細胞抽出液由来の無細胞タンパク質合成系を用い、ステップ(1)で合成した各mRNAからタンパク質を同一反応容器内において合成するステップ;
(3)ステップ(2)の結果として形成されたタンパク質会合体を精製するステップ。
以下、ステップ毎に説明する。尚、これまでの説明と重複する事項(例えば、目的産物であるタンパク質会合体や無細胞タンパク質合成系など)については特に言及しない。
ステップ(1)では転写反応を実施し、目的のタンパク質会合体(目的産物)を構成する各サブユニットについて、それをコードするmRNAを得る。転写反応は常法に従って行えばよい。但し、好ましくは以下に示す方法を採用する。
まず、転写反応液は、インビトロで転写反応を行い得る従来公知の適宜の組成のものを使用でき、特に制限されるものではない。たとえば、鋳型DNA、RNAポリメラーゼ、NTPs(ATP、GTP、CTP、UTP)、マグネシウム塩を少なくとも含有する転写反応液が例示される。
転写反応液に含有される鋳型DNAは、プラスミドDNAなどの環状DNAであってもよいし、PCR産物などの直鎖状DNAであってもよい。上記鋳型DNAは、目的タンパク質(目的産物を構成するサブユニット)をコードする塩基配列と、その5’上流側に位置するプロモーター配列とを少なくとも有する。また、鋳型DNAにおけるプロモーター配列としては、特に制限されるものではないが、たとえば、従来公知のT7プロモーター配列、SP6プロモーター配列、T3プロモーター配列などが挙げられる。また、本発明に用いる鋳型DNAは、上記目的タンパク質をコードする塩基配列の3’下流側に転写を終結させる機能を有するターミネーター配列、および/または、合成されたmRNAの安定性などの観点からポリA配列を有しているのが好ましい。上記ターミネーター配列としては、たとえば、従来公知のT7ターミネーター配列、SP6ターミネーター配列、T3ターミネーター配列などが挙げられる。
鋳型DNAは、転写反応液中において、1μg/mL〜200μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜100μg/mL含有されることがより好ましい。鋳型DNAが1μg/mL未満または200μg/mLを越えると、充分な量のタンパク質を合成し得る量のmRNAをインビトロ転写反応により得られない傾向にあるためである。
転写反応液中におけるRNAポリメラーゼは、鋳型DNAが有するプロモーター配列に応じて適宜選択することができる。たとえば、鋳型DNAがT7プロモーター配列を有している場合は、その配列を認識するT7 RNAポリメラーゼを使用することが好ましい。また、外来鋳型DNAが、SP6またはT3プロモーター配列を有している場合は、それぞれ、SP6 RNAポリメラーゼまたはT3 RNAポリメラーゼを使用することが好ましい。
RNAポリメラーゼは、mRNA合成の速度の観点から、転写反応液中に0.1U/μL〜10U/μL含有されることが好ましく、0.5U/μL〜5U/μL含有されることがより好ましい。RNAポリメラーゼが0.1U/μL未満または10U/μLを越えると、充分な量のタンパク質を合成し得る量のmRNAをインビトロ転写反応により得られにくい傾向にあるためである。
転写反応液中におけるNTPs(ATP、GTP、CTP、UTP)の含有量に特に制限はないが、1mM〜20mM含有されるのが好ましく、2mM〜10mM含有されるのがより好ましい。NTPsの含有量が1mM未満または20mMを越えると、充分な量のタンパク質を合成し得る量のmRNAがインビトロ転写反応により得られにくくなる傾向にあるためである。当該NTPsは、通常、ATP、GTP、CTPおよびUTPを概ね等量ずつ含有してなる。
転写反応液中におけるマグネシウム塩としては、インビトロ転写反応および翻訳反応を阻害するものでなければ特に制限はなく、たとえば酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、乳酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウムなど一般的な形態で使用することができ、中でも酢酸マグネシウムを使用するのが好ましい。転写反応液中におけるマグネシウム塩の含有量に特に制限はないが、たとえば酢酸マグネシウムなど2価の塩である場合、1mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜100mM含有されることがより好ましい。マグネシウム塩が1mM未満または200mMを越えると、充分な量のタンパク質を合成し得る量のmRNAがインビトロ転写反応により得られにくくなる傾向にあるためである。
転写反応液は、さらに、RNaseインヒビターおよびスペルミジンを含有するのが好ましい。RNaseインヒビターは、インビトロ転写反応にて合成したmRNAがRNaseによって不所望に消化されるのを防止する目的で添加されるものであり、転写反応液中において0.1U/μL〜20U/μL含有されることが好ましく、0.2U/μL〜10U/μL含有されることがより好ましい。またスペルミジンは、転写における伸長反応を促進する目的で添加されるものであり、0.1mM〜20mM含有されることが好ましく、0.5mM〜10mM含有されることがより好ましい。
また転写反応液は、通常、緩衝剤を含有する。緩衝剤としては、特に制限はなく、たとえば、HEPES−KOH、Tris−HCl、酢酸−酢酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、リン酸、ホウ酸、MES、PIPESなどを使用することができる。緩衝剤は、転写反応液のpHが4〜10に保持されるようなものを使用するのが好ましく、pHが6〜8に保持されるようなものを使用するのがより好ましい。このような観点より、上記中でもHEPES−KOH(pH6〜8)を使用するのが特に好ましい。
当該転写反応液中における緩衝剤の含有量に特に制限はないが、好適な緩衝能を保持する観点から、10mM〜400mM含有されることが好ましく、20mM〜200mM含有されることがより好ましい。緩衝剤が10mM未満であると、酸性または塩基性物質の添加によりpHの急激な変動を引き起こす傾向にあるためであり、また緩衝剤が400mMを越えると、塩濃度が高くなり過ぎる傾向にあるためである。
すなわち、本発明に用いる転写反応液は、1μg/mL〜200μg/mLの鋳型DNA、0.1U/μL〜10U/μLのRNAポリメラーゼ、1mM〜20mMのNTPs、1mM〜200mMの酢酸マグネシウム、1mM〜200mMのDTT、0.1U/μL〜20U/μLのRNaseインヒビター、0.1mM〜20mMのスペルミジン、10mM〜400mMのHEPES−KOH(pH6〜8)を含有するように実現されるのが好ましい。
本発明において、上述したような転写反応液を用いたインビトロ転写反応は、従来公知のたとえば低温恒温槽にて行えばよい。転写工程の反応温度は、通常、10℃〜60℃、好ましくは20℃〜50℃の範囲内である。転写工程の反応温度が10℃未満であると、転写の速度が低下する傾向にあり、また転写工程の反応温度が60℃を越えると、反応に必須な成分が変性する傾向にあるためである。反応の時間は、全工程あわせて、通常、1時間〜8時間、好ましくは3時間〜5時間である。
本発明の一態様では、以上のようにして転写反応を行った後、各mRNAを精製する。そして、還元剤が存在しない条件下、昆虫培養細胞抽出液由来の無細胞タンパク質合成系を用い、精製した各mRNAからタンパク質を同一容器内において合成する(ステップ(2))。
一方、本発明の他の態様では、以上のようにして転写反応を行った後、転写反応液、翻訳反応用試薬、及びマグネシウムイオンと錯体を形成するキレート剤を混合して翻訳反応溶液とし、これを用いて次のステップ(2)を行う。mRNAの精製を経ることなく無細胞系タンパク合成を行う当該方法のことを「リンク法」と呼ぶことがある。リンク法によれば、反応槽内で転写反応、翻訳反応を連続的に行ってDNAからタンパク質を合成する従来法(以下、この従来法を「1ステップ法」と呼ぶ)とは異なり、転写反応と翻訳反応とで好適な塩濃度の範囲が異なるために、結果として合成量が少なくなってしまうということがない。さらに、転写反応にてmRNAを合成し、精製後のmRNAを鋳型として翻訳反応を行ってタンパク質を合成する従来法(以下、この従来法を「3ステップ法」と呼ぶ)とは異なり、mRNAの精製のステップを要することなく、効率よくタンパク質を合成することができる。加えて、マグネシウムイオン濃度のコントロールをキレート剤によって行うため、十分な量のmRNAを含む転写反応液を添加する事ができ、合成量を向上させることができる。
なお、転写反応液中にDTTが含まれる場合、翻訳反応溶液中の還元剤の濃度は、ラミニンを構成する各サブユニット間のジスルフィド結合の切断を起こす量以下、例えば、0.5mM以下、更に好ましくは、0.1mM以下となるように転写反応液中のDTTの濃度もしくは転写反応液と翻訳反応試薬の混合比を調整する。
ステップ(2)に続くステップ(3)では、ステップ(2)の結果として形成されたタンパク質会合体を精製する。例えば、遠心分離、塩析(硫安分画)、各種クロマトグラフィー(例えばゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー)を適宜組み合わせて精製すればよい。タグ(例えばFLAGタグ、Strepタグ、Hisタグ)が付加されたタンパク質を合成することにすれば、タグとの親和性を利用したアフィニティークロマトグラフィーによって簡便かつ効率的に目的産物を精製・回収することができる。
好ましくは、タンパク質の合成(ステップ(2))に加えて精製(ステップ(3))も、界面活性剤が存在する条件下で実施する。サブユニットが会合した状態を維持するとともに、凝集を防止するためである。界面活性剤としては、合成時と同様、非イオン性界面活性剤(例えばNP−40(Nonidet P-40)、Triton X-100)を用いることが好ましい。界面活性剤の濃度は所望の上記効果が奏される限り特に限定されない。精製時に目的産物が存在することになる溶液中の界面活性剤の濃度を例えば0.2%(W/V)〜1.4%(W/V)とする。
ヒト・ラミニンα3A鎖・β3鎖・γ2鎖ヘテロ三量体(ラミニン−332のコイルドコイルドメインヘテロ三量体)の合成
ヒト・ラミニン−332(α3Aβ3γ2)を構成するα3A鎖(GenBank accession number NM_000227)、β3鎖(NM_000228)およびγ2鎖(NM_005562)の会合ドメイン(LCCドメイン)のcDNAをヒト表皮角化細胞から抽出した全RNAよりRT-PCR法にて増幅した。用いたプライマーの配列は以下の通りである。
ラミニンα3A:5’-ATGGATGATTGCGACAGCTGTGTGATG-3’(配列番号12)及び5’-GGGATCCATATCCTTTCAAATCTTCCAG-3’(配列番号13、アミノ酸残基200-793(配列番号14)に対応する)。
ラミニンβ3:5’-ATGGTGGCCTGCCACCCTTGCTTCCAG-3’(配列番号15)及び5’-GGTCTAGACTACTTGCAGGTGGCATAGTAGAGCAC-3’(配列番号16、アミノ酸残基560-1153(配列番号17)に対応する)。
ラミニンγ2:5’-ATGGAGCATGGAGCATTCAGCTGTCCAG-3’(配列番号18)及び5’-GGTCTAGATCACTGTTGCTCAAGAGCCTGGGTATT-3’(配列番号19、アミノ酸残基603-1193(配列番号20)に対応する)。
増幅したcDNAをin vitro転写用ベクターpTD1に組み込み、1μgの線状化したプラスミドDNAを用い、ScriptMax Thermo T7 Transcription Kit(東洋紡)によりmRNAを合成した。合成したmRNAを終濃度2μg/μlになるようにヌクレアーゼフリーの脱イオン水で希釈し、さらに終濃度1.5 mMになるようにEDTAを添加した。
6μgの各鎖mRNA(全体で18μg)を50μlの昆虫培養細胞抽出液由来の無細胞タンパク質合成系用試薬を混合し、反応溶液(40 mM HEPES-KOH (pH 7.9), 100 mM KOAc, 1.5 mM Mg(OAc)2, 0.25mM ATP, 0.1 mM GTP, 20 mM クレアチンリン酸, 200 μg/mlクレアチンキナーゼ, 80μM 各アミノ酸(20種), 0.1 mM EGTA, 0.25mM PMSF, 200μg/ml tRNA、360μg/ml mRNA, 50%(v/v) Sf21抽出液)とした(参考文献:Ezure, T., Suzuki, T., Shikata, M., Ito, M. et al., Expression of proteins containing disulfide bonds in an insect cell-free system and confirmation of their arrangements by MALDI-TOF mass spectrometry. Proteomics 2007, 7, 4424-4434)。この反応溶液を25℃で30分から12時間インキュベートしてタンパク質を合成した。
経時的にサンプリングした反応混合液を非還元条件の8%アクリルアミドを含むSDS電気泳動で分離し、ニトロセルロース膜(GE Healthcare)に転写した。ニトロセルロース膜を5%スキムミルクでブロッキングを行った後、ラミニンγ2鎖(B-2; Santa Cruz Biotechnology)の抗体と反応させた。ニトロセルロース膜を洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識された二次抗体と反応させ、ECL検出試薬(GE Healthcare)を用いて増幅したシグナルをX線フィルム(GE Healthcare)に露光して、ヘテロ二量体およびヘテロ三量体の形成を解析した。解析結果を図2に示す。合成時間が1時間と2時間では単量体と二量体のバンドが認められる。合成時間が4時間では三量体のバンドも認められる。合成時間が12時間になると、単量体を示すバンド及び二量体を示すバンドも認められるものの、三量体を示すバンドが優位である。このように、三量体の形成が確認されるとともに、合成時間が長くなるほど三量体の形成量が増大することが示された。
実験例1
ラミニンβ鎖の可溶性発現に及ぼす界面活性剤の影響
ラミニンβ鎖のコイルドコイルドメインを実施例1と同様の方法で合成したところ、不溶化することが確認された。そのため、タンパク質合成時に界面活性剤を添加し、その影響について検討した。タンパク質合成は、実施例1と同様の方法で合成した。反応溶液には、蛍光検出するために、反応液50uLあたりに1μLのフルオロテクト(蛍光標識試薬)を添加した。界面活性剤としては、Triton X-100とNP-40を用い、最終濃度で0-1.4%(w/v)の濃度範囲にて検討を行った。
50μLスケールでタンパク質合成(25℃、4時間)を行い、10μLを全画分(Total)として回収した。残りの反応液は15000rpm、15分間遠心した後、その上清10μLを静かに回収し、これを可溶性画分(Sup)とした。各画分6μL分を12.5%プレキャストゲルにてSDS-PAGE後、蛍光イメージアナライザーにて検出した結果を図3に示す。いずれの界面活性剤においても、その添加により、β鎖が顕著に可溶化していることが明らかとなった。そのため、これ以降の実験においては反応系に界面活性剤を添加することにした。
ヒト・ラミニンβ3鎖・γ2鎖二量体(ラミニンβ3鎖コイルドコイルドメインとラミニンγ2鎖コイルドコイルドメインからなるヘテロ二量体)の合成と精製
(1)mRNAの調製
ラミニンβ3鎖を含むpTD1-lamB3とラミニンγ2鎖を含み、そのC末端にグリシン8個からなるスペーサー配列を介してStrepタグ配列を有するpTD1-strep-lamG2を鋳型として、フォワードプライマーpTD1161-179:GCAGATTGTACTGAGAGTG(配列番号21)とリバースプライマーpTD1845-827:GGAAACAGCTATGACCATG(配列番号22)を用いて、PCR反応(変性:96℃、15秒、アニール:50℃、30秒、伸長:68℃、2分30秒)を30サイクル行った。反応終了後、反応液をフェノール・クロロホルムにて抽出し、エタノール沈殿を行った。これをmRNA合成用のDNAテンプレートとした。
mRNAの合成は、プロメガ社T7RiboMAX Express Large Scale RNA Production System (P1320)を用いて行い、ゲル濾過カラムとエタノール沈殿によって精製した。
(2)タンパク質合成
上記で調製したmRNAを用い、実施例1の場合に準じて反応溶液を調製した。mRNAの添加量は各160μgとし、追加の成分として界面活性剤NP-40を最終濃度で0.4%(w/v)添加することにした。この反応溶液を用い、1mLのスケールでタンパク質合成(共発現)を実施した(25℃、4時間)。
(3)合成タンパク質の精製
Strep-Tactin Superflow(QIAGEN社30001または30003)を用いて、bed volume 0.5 mLのオープンカラムを作製し、精製を行った。まず、50 mM Tris-HCl, pH8.0, 300 mM NaCl, 0.4%(w/v)NP-40(Buffer A)でカラムを平衡化した(5 mL)。このカラムに上記タンパク質合成反応液の遠心上清(15000rpm,15min)をアプライした。0.5 mLのBuffer Aでのカラム洗浄を5回行い、次に2 mM desthiobiotin(SIGMA社D1411-1G)を含むBuffer Aを1.5 mL添加し溶出し、溶出液をスピンタイプの限外ろ過で約30μLまで濃縮した。
(4)精製タンパク質のSDS-PAGE
精製したタンパク質を還元(+2メルカプトエタノール)及び非還元(−2メルカプトエタノール)の各条件にてSDS-PAGE(10%)を行った。結果を図4に示す。非還元条件では、ジスルフィド結合により架橋されたと考えられる複合体が確認された。
本発明の調製方法では、還元剤の存在しない条件下、昆虫培養細胞抽出液由来の無細胞タンパク質合成系を用いた合成を行う。これによって、各ラミニンサブユニットのLCCドメインが適切に会合した構造を備えるタンパク質会合体が得られる。本発明の調製方法によれば、様々なラミニン種に対応したタンパク質会合体を調製することが可能である。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
昆虫培養細胞抽出液の調製方法を簡略化して示すフローチャートである。 ヒト・ラミニンα3A鎖・β3鎖・γ2鎖ヘテロ三量体形成実験の結果。t;三量体、d;二量体、m;単量体 ラミニンβ鎖の可溶性発現に及ぼす界面活性剤の影響。界面活性剤を添加した条件(1:0.2%、2:0.4%、3:1%、4:1.4%)及び添加しない条件(C:コントロール)でラミニンβ鎖を合成した後、SDS-PAGEに供し、蛍光イメージアナライザーにて検出した。(a)は界面活性剤としてTritonn X-100を使用した場合の結果。(b)は界面活性剤としてNP-40を使用した場合の結果。 精製したヒト・ラミニンβ3鎖・γ2鎖二量体を還元(+2メルカプトエタノール)及び非還元(−2メルカプトエタノール)の各条件にてSDS-PAGEを行い複合体の形成を確認した図である。+;還元条件(+2メルカプトエタノール)、−;非還元条件(−2メルカプトエタノール)

Claims (10)

  1. ラミニンコイルドコイル(LCC)ドメインヘテロ多量体を含むタンパク質会合体の調製方法であって、
    還元剤が存在しない条件下、昆虫培養細胞抽出液由来の無細胞タンパク質合成系を用い、目的のタンパク質会合体を構成する各サブユニットを合成することを特徴とする調製方法。
  2. 各サブユニットの合成が、界面活性剤が存在する条件下で実施されることを特徴とする、請求項1に記載の調製方法。
  3. 以下のステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の調製方法:
    (1)目的のタンパク質会合体を構成する各サブユニットについて、それをコードするmRNAを合成するステップ;
    (2)還元剤が存在しない条件下、昆虫培養細胞抽出液由来の無細胞タンパク質合成系を用い、ステップ(1)で合成した各mRNAからタンパク質を同一反応容器内において合成するステップ;
    (3)ステップ(2)の結果として形成されたタンパク質会合体を精製するステップ。
  4. ステップ(2)及びステップ(3)が、界面活性剤が存在する条件下で実施されることを特徴とする、請求項3に記載の調製方法。
  5. ステップ(1)後の反応液、無細胞タンパク質合成反応用試薬、及びマグネシウムイオンと錯体を形成するキレート剤を混合した後、ステップ(2)を実施することを特徴とする、請求項3又は4に記載の調製方法。
  6. タンパク質会合体がヒト由来であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の調製方法。
  7. LCCドメイン多量体がLCCドメインヘテロ三量体であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の調製方法。
  8. LCCドメインヘテロ三量体が、ラミニン−111、211、121、221、332、3B32、311、321、411、421、511、521、213、423、522及び523からなる群より選択されるラミニンのLCCドメインヘテロ三量体であることを特徴とする、請求項7に記載の調製方法。
  9. LCCドメイン多量体が、(1)ラミニン−332のコイルドコイルドメインヘテロ三量体、又は(2)ラミニンβ3鎖のコイルドコイルドメインとラミニンγ2鎖のコイルドコイルドメインからなるヘテロ二量体であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の調製方法。
  10. 昆虫培養細胞がSpodoptera frugiperda卵巣細胞由来の細胞であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の調製方法。
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