JP2007202491A - タンパク質への修飾基の導入を制御する無細胞タンパク質合成方法 - Google Patents

タンパク質への修飾基の導入を制御する無細胞タンパク質合成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】合成タンパク質へ任意の修飾基を導入することができる方法、及び修飾タンパク質及び非修飾タンパク質の合成を容易にコントロールすることができる方法を提供する。
【解決手段】無細胞タンパク質合成反応液として、真核細胞由来の抽出液と、翻訳後修飾基として導入すべき所望の基を有する物質を基質として含ませた試薬液との混合液を用いて、無細胞タンパク質合成を行い、前記翻訳後修飾基が導入されたタンパク質を得る、無細胞タンパク質合成方法。好ましくは、前記導入すべき基は、脂肪酸のアシル基であり、前記翻訳後修飾の形態は、タンパク質のN末端における脂質修飾である。
【選択図】図3

Description

本発明は、無細胞タンパク質合成系を用いた、タンパク質への修飾基導入の制御方法および非天然型修飾基を有するタンパク質合成方法に関する。
タンパク質の翻訳後修飾は、タンパク質の局在、安定性、機能発現に重要な役割を果たす。現在、翻訳後修飾されたタンパク質を取得するために、バキュロウィルス発現系や哺乳動物培養細胞などの生細胞を用いる発現系(以下、「細胞系」ということがある)が広く利用されている。細胞系を用いて発現させたタンパク質は、宿主となる細胞における翻訳後修飾と同一の修飾が生じる。すなわち、細胞系における翻訳後修飾はその宿主に依存している。
例えば、真核生物の細胞系を用いた場合、ほとんどが修飾タンパク質として得られる。この細胞系を用いて修飾されていないタンパク質(以下「非修飾タンパク質」)を得るためには、以下の方法が用いられている。例えば、Utsumi, T. et al(2003). FEBS Letters, 539, 37-44においては、N−ミリストイル化タンパク質を発現する細胞系において、N−ミリストイル化が生じないように、2番目のグリシンを遺伝子工学的にアラニンに改変する方法が用いられている。
一方、原核生物の細胞系を用いた場合、得られるタンパク質は全て非修飾タンパク質である。しかし、この細胞系を用いて修飾タンパク質を得ることはできない。
Utsumi, T. et al(2003). FEBS Letters, 539, 37-44
上記のように、真核生物の細胞系では、ほとんどが修飾タンパク質として合成され、非修飾タンパク質を得られたとしてもタンパク質自体の変異を伴う。原核生物の細胞系では、修飾タンパク質を得ることができない。このため、修飾タンパク質の合成と天然型非修飾タンパク質の合成とをコントロールすることは不可能である。
真核生物の細胞系を用いて発現させたタンパク質がN末端において翻訳後修飾を受けた場合、その修飾形態としてはさまざまなものが知られているが、脂質修飾の場合、通常N−ミリストイル化である。すなわち、真核生物の細胞系を用いて脂質修飾タンパク質を得た場合、そのN末端が有する修飾基は、通常炭素数14のN−ミリストイル基のみである。従って、得られるタンパク質に、任意の修飾基を導入することは不可能である。
そこで本発明の目的は、合成タンパク質へ任意の修飾基を導入することができる方法、及び修飾タンパク質及び非修飾タンパク質の合成を容易にコントロールすることできる方法を提供することにある。
本発明は、以下の発明を含む。なお、本明細書において「タンパク質」とは、オリゴペプチド、ポリペプチドをも含む意味で用いる。
[A] 下記(1)〜(8)は、無細胞タンパク質合成方法に関する。
(1) 無細胞タンパク質合成反応液として、真核細胞由来の抽出液と、翻訳後修飾基として導入すべき所望の基を有する物質を基質として含ませた試薬液との混合液を用いて、無細胞タンパク質合成を行い、前記翻訳後修飾基が導入されたタンパク質を得る、無細胞タンパク質合成方法。
(2) 前記翻訳後修飾基として導入すべき所望の基は、天然型の翻訳後修飾基とは異なる基である、(1)に記載の無細胞タンパク質合成方法。
(3) 前記翻訳後修飾基として導入すべき所望の基は、脂肪酸のアシル基であり、前記翻訳後修飾の形態は、タンパク質のN末端における脂質修飾である、(1)又は(2)に記載の無細胞タンパク質合成方法。
(4) 前記翻訳後修飾基として導入すべき所望の基を有する物質が、脂肪酸及び脂肪酸のCoAエステルから選ばれる、(3)に記載の無細胞タンパク質合成方法。
(5) 前記翻訳後修飾基として導入すべき所望の基を有する物質が、飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸のCoAエステルから選ばれる、(3)に記載の無細胞タンパク質合成方法。
(6) 前記真核細胞由来の抽出液は昆虫細胞由来の抽出液である、(1)〜(5)のいずれかに記載の無細胞タンパク質合成方法。
(7) 前記昆虫細胞由来の抽出液が、昆虫培養細胞由来の抽出液である、(6)に記載の無細胞タンパク質合成方法。
(8) 前記昆虫培養細胞は、Spodoptera frugiperda21細胞である、(7)に記載の無細胞タンパク質合成方法。
前記真核細胞由来の抽出液は、低分子物質を実質的に含まないものであることが好ましい。
下記(9)は、無細胞タンパク質合成によって得られたタンパク質に関する。
(9) (1)〜(8)のいずれかに記載の無細胞タンパク質合成方法により得られた修飾タンパク質。
[B] 下記(10)は、タンパク質への翻訳後修飾基の導入を制御する方法に関する。
(10) 無細胞タンパク質合成反応液として、低分子物質を実質的に含まない真核細胞由来の抽出液と、翻訳後修飾基として導入すべき所望の基を有する物質を基質として含ませた試薬液との混合液を用いて、無細胞タンパク質合成を行い、前記翻訳後修飾基が導入された修飾タンパク質を得るか、或いは、
無細胞タンパク質合成反応液として、低分子物質を実質的に含まない真核細胞由来の抽出液と、前記翻訳後修飾基として導入すべき所望の基を有する物質を基質として含まない試薬液との混合液を用いて、無細胞タンパク質合成を行い、非修飾タンパク質を得るか、
を選択することによって、タンパク質への翻訳後修飾基の導入を制御する方法。
(11) 前記翻訳後修飾基として導入すべき所望の基が、天然型の翻訳後修飾基、又は、天然型の翻訳後修飾基と異なる基である、(10)に記載の方法。
下記(12)は、無細胞タンパク質合成によって得られたタンパク質に関する。
(12) (10)又は(11)に記載の方法によって得られた、修飾タンパク質及び/又は非修飾タンパク質。
下記(13)は、無細胞タンパク質合成キットに関する。
(13) 低分子物質を実質的に含まない真核細胞由来の抽出液、及び翻訳後修飾基として導入すべき基を有する物質を、それぞれアイテムとして含む、無細胞タンパク質合成反応キット。
本発明によると、合成タンパク質へ任意の修飾基を導入することができる方法、及び修飾タンパク質及び非修飾タンパク質の合成を容易にコントロールすることができる方法を提供することができる。
本発明は、[A]所望の翻訳後修飾基が導入されたタンパク質を得るための無細胞タンパク質合成方法、及び、[B]タンパク質への翻訳後修飾基の導入を制御する方法である。
[A]所望の翻訳後修飾基が導入されたタンパク質を得る方法
本発明は、所望の翻訳後修飾基が導入されたタンパク質を得る方法を提供する。本方法では、得られる合成タンパク質に翻訳後修飾基として導入したい基を有する物質を、無細胞タンパク質合成系における基質成分の一つとして含ませた無細胞タンパク質合成用反応液を用いることによって、任意の修飾基をタンパク質に導入する。
この方法は、翻訳後修飾基として導入すべき所望の基が、天然型の翻訳後修飾基とは異なる基(すなわち、非天然型翻訳後修飾基)である場合に、特に有用に用いられる。ここで、現在、天然型の翻訳後修飾基として知られているのは、N末端の脂質修飾基としてはグリシン残基に結合するミリストイル基のみであり、その他の修飾基としては、N末端のアミノ酸残基に結合するアセチル基、分子内システイン残基に生じるパルミトイル基、C末端システイン残基に生じるファルネシル基及びゲラニルゲラニル基などがある。
従来は、天然型翻訳後修飾基として知られている基以外の翻訳後修飾基のタンパク質への導入は不可能であった。しかしながら本発明では、非天然型翻訳後修飾基として、上記以外の翻訳後修飾基も導入することが可能になる。このことにより、翻訳後修飾基が非天然型である修飾タンパク質を得ることが可能になる。
上記非天然型翻訳後修飾基を導入する場合、本発明は、目的とする翻訳後修飾形態が、タンパク質N末端における脂質付加とする場合に有用である。この場合、翻訳後修飾基としては、脂肪酸のアシル基が挙げられる。脂肪酸のアシル基としては、具体的には、飽和脂肪酸のアシル基が挙げられる。より具体的には、炭素数8〜14の飽和脂肪酸のアシル基(ただし天然型翻訳後修飾基と同じ基は除く)が挙げられる。
このような翻訳後修飾基を導入するためには、当該翻訳後修飾基を有する物質を基質として用いる。そのような物質としては、例えば、脂肪酸及び脂肪酸のCoAエステルから選択することができる。具体的には、飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸のCoAエステルから選択することができる。より具体的には、例えば後述のように無細胞タンパク質合成反応液が昆虫細胞抽出液を含む場合などは、炭素数8〜16、好ましくは8〜14の飽和脂肪酸、及び炭素数8〜16、好ましくは8〜14の飽和脂肪酸のCoAエステルから選択することができる。
本発明においては、このような物質を基質として無細胞タンパク質合成反応系に組み込むことで、合成タンパク質へ導入する修飾基をコントロールすることが可能になる。
導入すべき翻訳後修飾基を有する物質の使用量は特に限定されないが、期待するタンパク質合成量に対して1当量以上、例えば1〜20当量、好ましくは10当量程度を目安にすることができる。例えば後述のように無細胞タンパク質合成反応液が昆虫細胞Sf21の抽出液を含む場合、期待されるタンパク質の合成量は、反応液1mlあたり30〜50μg程度である。
本発明において、上記の翻訳後修飾基を有する物質をのぞいた無細胞タンパク質合成反応液中の他の全ての成分は、タンパク質合成活性を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、以下のものが挙げられる。
無細胞タンパク質合成反応液中に含まれる生細胞由来の抽出液としては、真核生物に由来するものであれば特に限定されるものではない。例えば、従来公知のコムギ、オオムギ、イネ、コーン等のイネ科の植物、及びホウレンソウなど植物種子の胚芽、ウサギ網状赤血球などに由来する抽出液を特に制限なく使用することができる。これらは市販のものを用いることもできるし、それ自体既知の方法に準じて調製することもできる。市販のタンパク質合成用細胞抽出液としては、ウサギ網状赤血球由来では、rabbit reticulocyte lysate systems(プロメガ社製)など;コムギ胚芽由来ではwheat germ extract(プロメガ社製)、PROTEIOS(東洋紡績社製)などが挙げられる。
無細胞系タンパク質合成用反応液には、上述のような抽出液が含まれていてもよいが、本発明者らが提案してきている動物由来の抽出液が含まれているものであっても良い。例えば、昆虫細胞に由来する抽出液などが挙げられる。
昆虫細胞としては、特に制限はなく、たとえば、鱗翅目、直翅目、双翅目、膜翅目、鞘翅目、甲虫目、脈翅目、半翅目などの昆虫由来の細胞を使用することができる。中でも、培養細胞株が多く樹立されていることから鱗翅目、半翅目などの昆虫由来の細胞が好ましい。また、本発明における昆虫細胞としては、いかなる組織由来の細胞であってもよく、たとえば、血球細胞、生殖巣由来細胞、脂肪体由来細胞、胚由来細胞、孵化幼虫由来細胞などを特に制限なく使用することができる。中でも、タンパク質生産能が高いと考えられる生殖巣由来細胞を使用するのが好ましい。さらに昆虫細胞は、培養細胞であることが好ましい。そして、細胞系においてタンパク質合成能が高く、また無血清培地にて培養が可能であることから、Trichoplusia niの卵細胞由来の細胞であるHigh Five(Invitrogen社製)やSpodoptera fruglperda卵巣細胞由来の細胞であるSf21(Invitrogen社製)を昆虫細胞として用いるのが好ましい。
なお本発明においては、単一種の昆虫における単一の組織由来の昆虫細胞に限らず、単一種の昆虫における複数種の組織由来であってよく、複数種の昆虫における単一の組織由来であってもよく、無論、複数種の昆虫における複数種の組織由来であってもよい。
昆虫細胞抽出液の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開2004−215651号公報に記載の方法、すなわち、抽出用液に懸濁した昆虫細胞を急激に凍結させた後に昆虫細胞を破砕し、抽出を行うという方法を用いることができる。この方法は、緩和な状態で細胞破砕を行うことから無細胞タンパク質合成に必須な成分を破壊することなく細胞外に取り出すことができる点、使用器具などからのRNaseなどの混入を防ぐことができる点、界面活性剤などの試薬を用いた細胞破砕の場合に懸念される翻訳反応阻害物質の持込がない点などから、好ましく用いられる。
なお本発明においては、生細胞由来抽出液は、複数種の真核生物由来抽出液を組み合わせて用いることもできる。
本発明においては、生細胞由来抽出液が、低分子物質を実質的に含まないものであることが好ましい。
ここでいう低分子物質には、水は含まれず、生細胞抽出液の調製の過程で通常に行われる、分子の大きさに基づいて分離・精製する作業によって除かれる物質全般が含まれる。このような分離・精製作業としては、ゲル濾過、透析法、限外濾過などが挙げられる。低分子物質としては、好ましくは、生細胞抽出液に含まれる物質の中の、分子量1000以下の物質、より好ましくは5000以下の物質が挙げられる。このような低分子物質としては、まず塩類が挙げられる。そして、無細胞タンパク質合成中に、合成タンパク質へ所望しない基として導入され得る構造を有する基質なども挙げられる。
低分子物質を実質的に含まないとは、生細胞抽出液の調製の過程で、分子の大きさに基づいて分離・精製する上記作業を行うことによって達成される程度に、低分子物質が除去されていることをいう。好ましくは、上記低分子物質の90%以上、より好ましくは98%以上の低分子物質が除かれる。
このように低分子物質を除くと、次のような利点がある。たとえば、低分子物質として塩類を除去することによって、翻訳反応をより効率的に行うことができる。また、無細胞タンパク質合成中に、合成タンパク質へ所望しない基として導入され得る構造を有する基質を除去することによって、目的とする翻訳後修飾タンパク質が合成されない虞や、あるいは目的とする翻訳後修飾タンパク質に所望しない基が導入された修飾タンパク質が混在する虞を伴うことなく、翻訳反応を行うことができる。
低分子物質を除去するための分離・精製作業としてゲル濾過を行う場合、ゲル濾過は、以下のようにして行うことができる。たとえば、生細胞由来抽出液の調製において、細胞破砕後に遠心分離を行い、得られた上清をゲル濾過する。ゲル濾過後の濾液より280nmにおける吸光度が10以上の画分(吸収の大きな画分)を分取して、これを抽出液とすることができる。ゲル濾過は、たとえば脱塩カラム PD−10(アマシャム バイオサイエンス社製)を好適に使用することができ、常法にしたがって、ゲル濾過用緩衝液にてカラムを平衡化した後、試料を供給し、上記ゲル濾過用緩衝液にて溶出する、というような条件にて行えばよい。上記ゲル濾過用緩衝液としては、従来公知の適宜の組成のものを特に制限なく使用することができ、たとえば、10mM〜100mMのHEPES−KOH(pH6.5〜8.5)、50mM〜300mMの酢酸カリウム、0.5mM〜5mMの酢酸マグネシウム、0.5mM〜5mMのDTT、0.01mM〜5mMのPMSFを含有するゲル濾過用緩衝液を用いることができる。ゲル濾過して得られる濾液は、通常のゲル濾過で行われているように、0.1mL〜1mLを1画分とすればよく、高いタンパク質合成能を有する画分を効率よく分取するという観点より、0.4mL〜0.6mLを1画分とするのが好ましい。続いて、たとえばUltrospec3300pro(アマシャム バイオサイエンス社製)などの機器を用いて、280nmにおける吸光度が30以上の画分(吸収の大きな画分)をゲル濾過後の濾液より分取して、これを抽出液とすることができる。
本発明においては、細胞抽出液としては、タンパク質濃度で1mg/mL〜200mg/mL、好ましくは10mg/mL〜100mg/mL含有するとともに、10mM〜500mM、好ましくは50mM〜300mMの酢酸カリウム、0.1mM〜10mM、好ましくは0.5mM〜5mMの酢酸マグネシウム、0.1mM〜10mM、好ましくは0.5mM〜5mMのDTT、1μM〜50mM、好ましくは0.01mM〜5mMのPMSF、及び、5mM〜200mM、好ましくは10mM〜100mMのHEPES−KOH(pH4〜10、好ましくは6.5〜8.5)を含有する水溶液として調製され、好ましくはヌクレアーゼ処理を施されたものを用いると良い。
本発明の無細胞タンパク質合成方法においては、通常、上記細胞抽出液に、無細胞系でのタンパク質合成に要する添加物を添加することによって調製された反応液を用いる。上記添加物に特に制限はなく、無細胞系のタンパク質合成の分野において従来より一般に使用されているものであれば特に制限はない。
なお上記反応液は、細胞抽出液が10(v/v)%〜80(v/v)%、特には30(v/v)%〜60(v/v)%含有されるように調製されるのが好ましい。すなわち、上記反応液の全体において、細胞由来の抽出物の含有量が、タンパク質濃度で0.1mg/mL〜160mg/mLとなるように調製されるのが好ましく、3mg/mL〜60mg/mLとなるように調製されるのがより好ましい。当該抽出物の含有量がタンパク質濃度で0.1mg/mL未満または160mg/mLを越えると、目的のタンパク質の合成速度が低下する虞があるためである。
通常、上記反応液としては、細胞抽出液を除く成分として、カリウム塩、マグネシウム塩、DTT、アデノシン三リン酸、グアノシン三リン酸、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、アミノ酸成分、RNaseインヒビター、tRNA、外来mRNA、緩衝剤を少なくとも含有するものを用いる。これにより、短時間で大量のタンパク質の合成が可能であるというような利点をさらに有する無細胞系タンパク質合成用の反応液を実現できる。
当該反応液中におけるカリウム塩としては、本発明の作用を阻害するようなものでなければ特に制限はなく、たとえば酢酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、クエン酸水素二カリウム、硫酸カリウム、リン酸二水素カリウム、ヨウ化カリウム、フタル酸カリウムなど一般的な形態で使用することができ、中でも酢酸カリウムを使用するのが好ましい。カリウム塩は、タンパク質合成反応における補助因子として作用する。
当該反応液中におけるカリウム塩の含有量に特に制限はないが、保存安定性の観点から、たとえば酢酸カリウムなど1価のカリウム塩である場合、反応液中に10mM〜500mM含有されることが好ましく、50mM〜150mM含有されることがより好ましい。カリウム塩が10mM未満または500mMを越えると、タンパク質合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
上記マグネシウム塩としては、本発明の作用を阻害するようなものでなければ特に制限はなく、たとえば酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、乳酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウムなど一般的な形態で使用することができ、中でも酢酸マグネシウムを使用するのが好ましい。マグネシウム塩も、タンパク質合成反応における補助因子として作用する。
当該反応液中におけるマグネシウム塩の含有量に特に制限はないが、保存安定性の観点から、たとえば酢酸マグネシウムなど2価の塩である場合、反応液中0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.5mM〜3mM含有されることがより好ましい。マグネシウム塩が0.1mM未満または10mMを越えると、タンパク質の合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
上記ジチオトレイトール(以下、「DTT」ということがある。)は、酸化防止の目的で配合されるものであり、当該反応液中において0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.2mM〜5mM含有されることがより好ましい。DTTが0.1mM未満または10mMを越えると、タンパク質の合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
当該反応液中におけるアデノシン三リン酸(以下、「ATP」ということがある。)は、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。ATPが0.01mM未満または10mMを越えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
当該反応液中におけるグアノシン三リン酸(以下、「GTP」ということがある。)は、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.05mM〜5mM含有されることがより好ましい。GTPが0.01mM未満または10mMを越えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
当該反応液中におけるクレアチンリン酸は、タンパク質を継続的に合成するための成分であって、ATPとGTPを再生する目的で配合される。クレアチンリン酸は、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜100mM含有されることがより好ましい。クレアチンリン酸が1mM未満であると、充分な量のATPとGTPが再生されにくく、結果としてタンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためであり、またクレアチンリン酸が200mMを越えると、阻害物質として働き、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
当該反応液中におけるクレアチンキナーゼは、タンパク質を継続的に合成するための成分であって、クレアチンリン酸と共にATPとGTPを再生する目的で配合される。クレアチンキナーゼは、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1μg/mL〜1000μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜500μg/mL含有されることがより好ましい。クレアチンキナーゼが1μg/mL未満であると、充分な量のATPとGTPが再生されにくく、結果としてタンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためであり、またクレアチンキナーゼが1000μg/mLを越えると、阻害物質として働き、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
当該反応液中におけるアミノ酸成分は、20種類のアミノ酸、すなわち、バリン、メチオニン、グルタミン酸、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、グリシン、プロリン、イソロイシン、トリプトファン、アスパラギン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、チロシン、リシン、グルタミン、シスチン、アルギニン、の20種類のアミノ酸を少なくとも含有する。このアミノ酸には、ラジオアイソトープ標識されたアミノ酸も含まれる。さらに、必要に応じて、修飾アミノ酸を含有していてもよい。当該アミノ酸成分は、通常、各種類のアミノ酸を概ね等量ずつ含有してなる。
本発明においては、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において上記のアミノ酸成分が1μM〜1000μM含有されることが好ましく、10μM〜200μM含有されることがより好ましい。アミノ酸成分が1μM未満または1000μMを越えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
当該反応液中におけるRNaseインヒビターは、抽出液に混在する細胞由来のRNaseによって、本発明の無細胞系タンパク質合成の際にmRNAやtRNAが不所望に消化されて、タンパク質の合成を妨げるのを防ぐ目的で配合されるものであり、当該反応液中において0.1U/μL〜100U/μL含有されることが好ましく、1U/μL〜10U/μL含有されることがより好ましい。RNaseインヒビターが0.1U/μL未満であると、RNaseの分解活性を充分抑えることができない傾向にあるためであり、またRNaseインヒビターが100U/μLを越えると、タンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
当該反応液中における外来mRNAにおいては、細胞に由来しないmRNAであるならば、コードするタンパク質(ペプチドを含む)に特に制限はなく、毒性を有するタンパク質をコードするものであってもよいし、また糖タンパク質をコードするものであってもよい。反応液に含有されるmRNAが外来mRNAであるか細胞に由来するmRNAであるかは、まず、抽出液中より、mRNAを単離精製後、逆転写酵素によりcDNAを合成し、得られたcDNAの塩基配列を解析し、既知の外来mRNAの塩基配列と比較することで判別することができる。
なお用いる外来mRNAは、塩基数に特に制限はなく、目的とするタンパク質を合成し得るならば外来mRNA全てが同じ塩基数でなくともよい。また、目的とするタンパク質を合成し得る程度に相同な配列であれば、各外来mRNAは、複数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加されたものであってよい。
本発明に用いる外来mRNAは、市販のものでもよいし、目的とするタンパク質のORF(Open reading frame)を市販のベクター、たとえば、pTT Vector(プロメガ社製)の5’−βグロビンリーダー配列の下流に挿入し、これを用いて転写反応で得られたmRNAを用いても構わない。また、転写反応の際にメチル化されたリボヌクレオチドなどを加えることにより付加されたキャップ構造を有する外来mRNAを用いてもよい。
当該反応液中において、外来mRNA(以下、「mRNA」ということがある。)は、タンパク質合成の速度の観点から、5μg/mL〜2000μg/mL含有されることが好ましく、20μg/mL〜1000μg/mL含有されることがより好ましい。mRNAが5μg/mL未満または2000μg/mLを越えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
当該反応液中におけるtRNAは、上記20種類のアミノ酸に対応した種類のtRNAを概ね等量ずつ含有してなる。本発明においては、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1μg/mL〜1000μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜500μg/mL含有されることがより好ましい。tRNAが1μg/mL未満または1000μg/mLを越えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
上記緩衝剤は、反応液に緩衝能を付与し、たとえば酸性または塩基性物質の添加などによって起こる反応液のpHの急激な変化による抽出物及び/又は反応生成物の変性を防止する目的で配合される。このような緩衝剤としては、特に制限はなく、たとえば、HEPES−KOH、Tris−HCl、酢酸−酢酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、リン酸、ホウ酸、MES、PIPESなどを使用することができる。
緩衝剤は、当該反応液のpHが4〜10に保持されるようなものを使用するのが好ましく、pHが6.5〜8.5に保持されるようなものを使用するのがより好ましい。反応液のpHが4未満またはpHが10を越えると、本発明の反応に必須な成分が変性する虞があるためである。このような観点より、上記中でもHEPES−KOH(pH6.5〜8.5)を使用するのが特に好ましい。
当該反応液中における緩衝剤の含有量に特に制限はないが、好適な緩衝能を保持する観点から、5mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜50mM含有されることがより好ましい。緩衝剤が5mM未満であると、酸性または塩基性物質の添加によりpHの急激な変動を引き起こし、抽出物及び/又は反応生成物が変性する傾向にあるためであり、また緩衝剤が200mMを越えると、塩濃度が高くなり過ぎ、タンパク質合成に必須な成分が不安定になる傾向にあるためである。
また上記反応液は、EGTAを含有するのが好ましい。EGTAを含有すると、EGTAが抽出液中の金属イオンとキレートを形成することでリボヌクレアーゼ、プロテアーゼ等が不活化することにより、本発明のタンパク質合成に必須な成分の分解を阻害することができるためである。また上記のように抽出液にヌクレアーゼ処理を施した場合であっても、反応液がEGTAを含有することにより、ヌクレアーゼが無細胞系タンパク質合成に悪影響を及ぼすことを確実に防止することができる。該EGTAは、上記反応液中において、上記分解阻害能を好適に発揮し得る観点から0.01mM〜50mM含有されることが好ましく、0.1mM〜10mM含有されることがより好ましい。EGTAが0.01mM未満であると必須な成分の分解活性を充分に抑えることができない傾向にあるためであり、また、50mMを越えるとタンパク質合成反応を阻害する傾向にあるためである。
すなわち、本発明の無細胞系タンパク質合成方法に用いる反応液は、上記抽出液を30(v/v)%〜60(v/v)%含有するとともに、50mM〜150mMの酢酸カリウム、0.5mM〜3mMの酢酸マグネシウム、0.2mM〜5mMのDTT、0.1mM〜5mMのATP、0.05mM〜5mMのGTP、10mM〜100mMのクレアチンリン酸、10μg/mL〜500μg/mLのクレアチンキナーゼ、10μM〜200μMのアミノ酸成分、1U/μL〜10U/μLのRNaseインヒビター、10μg/mL〜500μg/mLのtRNA、20μg/mL〜1000μg/mLの外来mRNA、10mM〜50mMのHEPES−KOH(pH6.5〜8.5)を含有する水溶液として実現されるのが好ましい。また、上記に加えてさらに0.1mM〜10mMのEGTAを含有するように実現されるのがより好ましい。
本発明の無細胞系タンパク質合成方法においては、上記のような反応液を調製し、適切な反応温度にて合成を開始する。反応温度としては、通常、10℃〜40℃、好ましくは15℃〜30℃の範囲内である。反応温度が10℃未満であると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあり、また反応温度が40℃を越えると、必須な成分が変性する傾向にあるためである。反応時間としては、通常、1時間〜72時間、好ましくは3時間〜24時間である。
[B]タンパク質への翻訳後修飾基の導入を制御する方法
本発明は、タンパク質への翻訳後修飾基の導入を制御する方法を提供する。本発明のタンパク質への翻訳後修飾基の導入を制御する方法とは、すなわち、修飾タンパク質と非修飾タンパク質との合成分けを、無細胞タンパク質合成を用いて行う方法である。この方法においては、下記(B1)又は(B2)のいずれかを選択することによって、タンパク質への翻訳後修飾基の導入を制御する。
(B1)無細胞タンパク質合成反応液として、低分子物質を実質的に含まない真核細胞由来の抽出液と、翻訳後修飾基として導入すべき所望の基を有する物質を基質として含ませた試薬液との混合液を用いて、無細胞タンパク質合成を行う。
本発明のタンパク質への翻訳後修飾基の導入を制御する方法においては、得られる合成タンパク質に翻訳後修飾基として導入すべき基としては、天然型の翻訳後修飾基及び非天然型の翻訳後修飾基を問わない。
上記(B1)を行うことによって、前記翻訳後修飾基が導入された修飾タンパク質が得られる。すなわち、翻訳後修飾基が天然型である修飾タンパク質、又は、翻訳後修飾基が非天然型である修飾タンパク質を得ることができる。
(B2)無細胞タンパク質合成反応液として、低分子物質を実質的に含まない真核細胞由来の抽出液と、前記翻訳後修飾基として導入すべき所望の基を有する物質を基質として含まない試薬液との混合液を用いて、無細胞タンパク質合成を行う。
上記(B2)を行うことによって、非修飾タンパク質が得られる。本発明のタンパク質への翻訳後修飾基の導入を制御する方法においては、得られる非修飾タンパク質は、アミノ酸配列が天然型であるものが得られる。すなわち、変異を伴うことなく非修飾タンパク質を得ることができる。
上記のように、タンパク質への翻訳後修飾基の導入を制御する方法[B]では、(B1)及び(B2)ともに、低分子物質を実質的に含まない生細胞由来抽出液(真核細胞由来の抽出液)を用いる。低分子を実質的に含まないとは、上記所望の翻訳後修飾基が導入されたタンパク質を得る方法[A]において記載したとおりである。
翻訳後修飾基として導入すべき所望の基としての、天然型翻訳後修飾基/非天然型翻訳後修飾基、及び、当該基を有する基質としての物質についても、上記所望の翻訳後修飾基が導入されたタンパク質を得る方法[A]において記載したとおりである。
さらに、生細胞由来抽出液(真核細胞由来の抽出液)、当該抽出液と試薬液との混合液についても、上記所望の翻訳後修飾基が導入されたタンパク質を得る方法[A]において記載したとおりである。
本発明は、上記所望の翻訳後修飾基が導入されたタンパク質を得る方法[A]によって得られた修飾タンパク質、及び、上記タンパク質への翻訳後修飾基の導入を制御する方法[B]によって得られた修飾タンパク質及び/又は非修飾タンパク質をも提供する。上記方法[A]や上記方法[B]によって得られたタンパク質は、反応終了後の反応液から、通常の方法によって精製すると良い。
本発明は、上記所望の翻訳後修飾基が導入されたタンパク質を得る方法[A]、及び、上記タンパク質への翻訳後修飾基の導入を制御する方法[B]を行うために有用に用いることができる無細胞タンパク質合成反応キットをも提供する。本発明のタンパク質合成キットは、低分子物質を実質的に含まない真核細胞由来の抽出液、及び翻訳後修飾基として導入すべき基を有する物質を、それぞれアイテムとして含む。ここで、低分子物質を実質的に含まないこと、真核細胞由来の抽出液、翻訳後修飾基として導入すべき基、及び当該基を有する物質については、すでに述べたとおりである。本発明のキットには、さらに、翻訳反応を促進する作用を有する発現ベクター、翻訳反応を最適な条件で行うための反応バッファ、mRNAの不所望な分解を抑制するためのRNaseインヒビターなどが含まれていても良い。
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
本実験例及び本実施例においては、以下の工程1.〜4.に記載されたプロトコルに従って操作を行った。
工程1.発現用プラスミドの構築
Truncated-ゲルゾリン(t-ゲルゾリン;ゲルゾリンのカスパーゼ消化後のC末端側フラグメント)のcDNA(配列番号1)を鋳型に、tGel-N primer(配列番号2)およびtGel-strep-C primer(配列番号3)を用いてPCRを行い、t-ゲルゾリンのORFのC末端にstrep-tagを導入した。増幅されたDNA断片をKpnI(東洋紡績社製)で消化した後、pTD1 vector(島津製作所社製)のEcoRV切断部位とKpnI切断部位とに挿入し、大腸菌DH5αを形質転換させた。上記のようにして得られた発現用プラスミドをpTD1-tGelsolin strepと名づけた。
工程2.インビトロ転写反応およびmRNAの精製
上記工程1.で作製した発現用プラスミドpTD1-tGelsolin strepを、HindIII(東洋紡績社製)で消化した後、フェノール−クロロホルム抽出、エタノール沈殿により精製した。得られたベクター5μgを鋳型として、RiboMax Large Scale RNA production System−T7(プロメガ社製)を用い、100μlスケールで37℃4時間のインビトロ転写反応を行うことにより、mRNAを合成した。得られた反応液をNick column(アマシャムバイオサイエンス社製)にアプライした後、滅菌水で溶出した。溶出画分に酢酸カリウムを終濃度0.3Mとなるように添加し、エタノール沈殿を行った。合成されたmRNAの定量は260nmと280nmとにおける吸光度を測定することにより行った。
工程3.翻訳反応と合成タンパク質の精製
下記いずれかの無細胞タンパク質合成系を用い、1mLスケールで25℃、5時間翻訳反応を行った。
・翻訳後修飾基を有する基質を加えない反応系、すなわち、を用いて、上記2.で作製したmRNAを、反応液に終濃度320μg/mLとなるように添加して構築した無細胞タンパク質合成系
・翻訳後修飾基を有する基質を加えた反応系、すなわち、TransdirectTMinsect cell(島津製作所社製)を用いて、上記2.で作製したmRNAを、反応液に終濃度320μg/mLとなるように添加し、更に翻訳後修飾基を有する基質を終濃度50μMとなるように添加して構築した無細胞タンパク質合成系
なお、TransdirectTM insect cell(島津製作所社製)は、Sf21昆虫培養細胞抽出液を用いた無細胞タンパク質合成系であり、当該抽出液はゲル濾過により、低分子物質が除去されている。
50mM Tris-HCl, 300mM NaCl, pH8.0(BufferA)で平衡化した0.5mLのStrep-Tactin su perflow(QIAGEN社製)に得られた反応液をアプライした。2.5mLのBufferAでカラムを洗浄した後、1.5mLの2mM desthiobiotinを含むBufferAで溶出した。溶出液を回収し、限外ろ過により濃縮した。
工程4.質量分析計を用いた翻訳後修飾の解析
上記工程3.で得られた精製タンパク質1μgをSDS-PAGEに供した。泳動終了後、CBBにてタンパク質を検出した。バンドを切り取り、還元アルキル化を行った後、In gelトリプシン消化を行った。50 %アセトニトリル−0.1%TFA水溶液(v/v/v)を用いてゲルから消化ペプチドを抽出した。抽出した消化ペプチドを減圧乾燥にて幹固させた後、10μLの50 %アセトニトリル−0.1%TFA水溶液(v/v/v)に溶解した。このようにして得られたサンプルをAXIMA CFR-plus(島津製作所社製)又はAXIMA-QIT(島津製作所社製)を用いて解析した。
<実験例1.タンパク質への修飾導入の制御>
[翻訳後修飾基を有する基質を含む無細胞タンパク質細胞系によるタンパク質合成]
上記プロトコル中、工程3において、翻訳後修飾基を有する基質としてN−ミリストイルCoA(SIGMA社製)を加えた反応系aを構築し、工程4において、AXIMA CFR-plusによるペプチドマスフィンガープリンティング(PMF)解析、及び、AXIMA-QITによるMS/MS解析を行った。
PMF解析で得られたマススペクトルを図1(a)に示す。一方、C末端strep-tagを有するt-ゲルゾリンをトリプシンで消化して得られるペプチドフラグメントのうち、質量1700−2000のものの理論上のMS値を表1に示す。
図1(a)の結果を表1の理論値に照らし合わせると、t-ゲルゾリンの、開始メチオニンが脱離したN末端ペプチドフラグメント(2番目-17番目、質量1715.9)に、N-ミリストイル化が生じたペプチドフラグメントと考えられる、質量1926.1に相当するピークが検出された。この質量1926.1のピークとして示されるペプチドフラグメントは、基質としてのN−ミリストイルCoAに起因するN−ミリストイル化が起こることにより生じたものであることが考えられる。
そこで、質量1926.1のピークをプリカーサーイオンとしてMS/MS解析を行うことにより、その内部アミノ酸配列を同定した。その結果を図2に示す。図2の結果より、図1(a)で得られた1926.1のピークは、N-ミリストイル化されたN末端のペプチドフラグメントであることが明らかとなった。
[翻訳後修飾基を有する基質を含まない無細胞タンパク質合成系によるタンパク質合成]
一方で、上記プロトコル中、工程3において、翻訳後修飾基を有する基質を加えない反応系bを構築し工程4において、AXIMA CFR-plusによるPMF解析を行った。得られたマススペクトルを、図1(b)に示す。図1(b)が示すように、基質を添加しない場合は、開始メチオニンの脱離が生じたN末端ペプチドフラグメント(2番目-17番目、質量1715.9)のみが検出され、修飾されたペプチドフラグメントは検出されなかった。
以上の結果から、無細胞タンパク質合成系を用いて、翻訳後修飾基を有する基質の添加の有無により、タンパク質への修飾基の導入を制御できることが明らかとなった。
<実施例1.炭素鎖長の異なるN末端脂質修飾タンパク質の合成>
上記プロトコル中、工程3において、翻訳後修飾基を有する基質としてオクタノイルCoA(SIGMA社製)を加えた反応系c;翻訳後修飾基を有する基質としてデカノイルCoA(SIGMA社製)を加えた反応系d;及び翻訳後修飾基を有する基質としてラウロイルCoA(SIGMA社製)を加えた反応系eの3パターンを構築し、それぞれ、工程4において、AXIMA CFR-plusによるPMF解析を行った。
反応系c、d及びeによって得られた合成タンパク質の消化物のPMF解析で得られたマススペクトルを、それぞれ図3の(c)、(d)及び(e)に示す。図3においては、上記実験例1で得られた、反応系a及びbによって得られた合成タンパク質の消化物のPMF解析で得られたマススペクトル(a)及び(b)も並べて示した。
図3が示すように、添加した基質が有する翻訳後修飾基をN末端に有するペプチドフラグメントがそれぞれ検出された。すなわち、オクタノイルCoAを添加した場合は質量1842.1(炭素鎖長8)、デカノイルCoAを添加した場合は質量1870.1(炭素鎖長10)、及びラウロイルCoAを添加した場合は質量1898.1(炭素鎖長12)のピークがそれぞれ検出された。
以上の結果から、反応液に添加する基質によって、任意の炭素鎖長からなるN末端の脂質修飾が可能であると結論した。
実験例1において、翻訳後修飾基を有する基質としてN−ミリストイルCoAを加えた反応系aによって得られたタンパク質の消化物をPMF解析した結果(a)、及び、翻訳後修飾基を有する基質を加えない反応系bによって得られたタンパク質の消化物をPMF解析した結果(b)を示す。 実験例1において、翻訳後修飾基を有する基質としてN−ミリストイルCoAを加えた反応系aによって得られたタンパク質の消化物をMS/MS解析した結果を示す。 実施例1において、翻訳後修飾基を有する基質としてオクタノイルCoAを加えた反応系c;デカノイルCoAを加えた反応系d;及びラウロイルCoAを加えた反応系eのそれぞれによって得られたタンパク質の消化物をPMF解析した結果(c)、(d)及び(e)を、上記図1に示された結果(a)及び(b)と並べて示したものである。
配列番号2及び3は、合成プライマーである。

Claims (13)

  1. 無細胞タンパク質合成反応液として、真核細胞由来の抽出液と、翻訳後修飾基として導入すべき所望の基を有する物質を基質として含ませた試薬液との混合液を用いて、無細胞タンパク質合成を行い、前記翻訳後修飾基が導入されたタンパク質を得る、無細胞タンパク質合成方法。
  2. 前記翻訳後修飾基として導入すべき所望の基は、天然型の翻訳後修飾基とは異なる基である、請求項1に記載の無細胞タンパク質合成方法。
  3. 前記翻訳後修飾基として導入すべき所望の基は、脂肪酸のアシル基であり、前記翻訳後修飾の形態は、タンパク質のN末端における脂質修飾である、請求項1又は2に記載の無細胞タンパク質合成方法。
  4. 前記翻訳後修飾基として導入すべき所望の基を有する物質が、脂肪酸及び脂肪酸のCoAエステルから選ばれる、請求項3に記載の無細胞タンパク質合成方法。
  5. 前記翻訳後修飾基として導入すべき所望の基を有する物質が、飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸のCoAエステルから選ばれる、請求項3に記載の無細胞タンパク質合成方法。
  6. 前記真核細胞由来の抽出液は昆虫細胞由来の抽出液である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の無細胞タンパク質合成方法。
  7. 前記昆虫細胞由来の抽出液が、昆虫培養細胞由来の抽出液である、請求項6に記載の無細胞タンパク質合成方法。
  8. 前記昆虫培養細胞は、Spodoptera frugiperda21細胞である、請求項7に記載の無細胞タンパク質合成方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の無細胞タンパク質合成方法により得られた修飾タンパク質。
  10. 無細胞タンパク質合成反応液として、低分子物質を実質的に含まない真核細胞由来の抽出液と、翻訳後修飾基として導入すべき所望の基を有する物質を基質として含ませた試薬液との混合液を用いて、無細胞タンパク質合成を行い、前記翻訳後修飾基が導入された修飾タンパク質を得るか、或いは、
    無細胞タンパク質合成反応液として、低分子物質を実質的に含まない真核細胞由来の抽出液と、前記翻訳後修飾基として導入すべき所望の基を有する物質を基質として含まない試薬液との混合液を用いて、無細胞タンパク質合成を行い、非修飾タンパク質を得るか、
    を選択することによって、タンパク質への翻訳後修飾基の導入を制御する方法。
  11. 前記翻訳後修飾基として導入すべき所望の基が、天然型の翻訳後修飾基、又は、天然型の翻訳後修飾基と異なる基である、請求項10に記載の方法。
  12. 請求項10又は11に記載の方法によって得られた、修飾タンパク質及び/又は非修飾タンパク質。
  13. 低分子物質を実質的に含まない真核細胞由来の抽出液、及び翻訳後修飾基として導入すべき基を有する物質を、それぞれアイテムとして含む、無細胞タンパク質合成反応キット。
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