JP2015007034A - アミド化合物の合成方法、および該方法で得られるアミド化合物 - Google Patents

アミド化合物の合成方法、および該方法で得られるアミド化合物 Download PDF

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Abstract

【課題】高分子量エラスチン様ポリペプチドなどのアミド化合物を、高収率かつ高純度で簡便に合成する方法、および該方法で得られるアミド化合物を提供すること。【解決手段】カルボキシ基を少なくとも有する化合物とアミノ基を少なくとも有する化合物とを反応させる工程を含むアミド化合物の合成方法であって、前記反応を、水系媒体中、アルカリ金属の硫酸塩及びアルカリ土類金属の硫酸塩から選ばれる1種以上の硫酸塩を用いて行うことを特徴とする、アミド化合物の合成方法。【選択図】なし

Description

本発明は、アミド化合物の合成方法、および該方法で得られるアミド化合物に関する。
エラスチンは、Gly−Val−Gly−Val−Proの繰り返し配列を主要ペプチド配列とする弾性繊維状のタンパク質であり、水等に溶解させ約40℃付近まで加熱すると相分離して白濁する温度感受性を示す。
また、エラスチンなどのポリペプチドは、化粧品テクスチャーの改善や保湿作用の向上を目的として化粧料に配合するなどされており、細胞培養、ドラッグデリバリーシステム、生体適合性材料等の種々の分野での応用も期待されている。
また、エラスチンは、豚や牛の大動脈血管、魚皮等に存在する。従来、エラスチンは、豚の大動脈血管等の抽出物を精製して得ていたが、このような精製によってポリペプチドを高純度及び高収率で得るのは容易ではなかった。
そのため、ポリペプチドなどのアミド化合物の化学的合成法の開発が望まれているが、例えば、Gly−X1−Gly−X2−Pro(X1及びX2は、それぞれ独立して、プロリン以外のアミノ酸残基を示す)を含むペンタポリペプチドを重縮合させた場合、反応が途中で止まってしまい、高分子量かつ高収率で目的物を得ることができず、従って、エラスチンと同様の温度感受性を示す高分子量エラスチン様ポリペプチドの合成には至らないなどという問題があった。
本発明が解決しようとする課題は、高分子量エラスチン様ポリペプチドなどのアミド化合物を、高収率かつ高純度で簡便に合成する方法、および該方法で得られるアミド化合物を提供することにある。
そこで、本発明者らは、カルボキシ基を少なくとも有する化合物とアミノ基を少なくとも有する化合物とを、水系媒体中、特定の硫酸塩を用いて反応させることによって、アミド化合物を簡便に合成できることを見出した。
また、本発明者らは、カルボキシ基を少なくとも有する化合物とアミノ基を少なくとも有する化合物とを、マイクロ波照射下で反応させることによって、アミド化合物を簡便に合成できることを見出した。
すなわち、本発明は、<1>カルボキシ基を少なくとも有する化合物とアミノ基を少なくとも有する化合物とを反応させる工程を含むアミド化合物の合成方法であって、上記反応を、水系媒体中、アルカリ金属の硫酸塩及びアルカリ土類金属の硫酸塩から選ばれる1種以上の硫酸塩を用いて行うことを特徴とする、アミド化合物の合成方法(以下、この合成方法を第1の合成方法とも称する)を提供するものである。
また、本発明は、<2>カルボキシ基を少なくとも有する化合物とアミノ基を少なくとも有する化合物とを反応させる工程を含むアミド化合物の合成方法であって、上記反応を、マイクロ波照射下で行うことを特徴とする、アミド化合物の合成方法(以下、この合成方法を第2の合成方法とも称し、また、該第2の合成方法と上記第1の合成方法とをあわせて、本発明の合成方法と総称する)を提供するものである。
更に、本発明は、<3>上記<1>または<2>の合成方法で得られるアミド化合物を提供するものである。
本発明の合成方法によれば、高分子量エラスチン様ポリペプチドなどのアミド化合物を、高収率かつ高純度で簡便に合成できる。
以下、本発明について説明する。なお、本明細書において、a〜b等は、a以上、b以下を意味し、a、bをその範囲内に含む。
本発明の合成方法は、カルボキシ基を少なくとも有する化合物とアミノ基を少なくとも有する化合物とを反応させるものであるが、この合成方法は、カルボン酸とアミンとを反応させるアミド化合物の合成方法、ジカルボン酸とジアミンを反応させるポリアミドの合成方法、アミノ酸またはペプチドを重縮合させるポリアミノ酸またはポリペプチドの合成方法などを包含する概念である。
本発明の合成方法の原料化合物であるカルボキシ基を少なくとも有する化合物とアミノ基を少なくとも有する化合物は、反応してアミド化合物を生成させるものであれば特に限定されないが、ポリアミノ酸またはポリペプチドを得る観点からは、両者がともにアミノ酸またはペプチドであるのが好ましい。特に、カルボキシ基を少なくとも有する化合物とアミノ基を少なくとも有する化合物の両者として、下記式(1)〜(5)のいずれか1つで表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを用いた場合、エラスチン様ポリペプチドが得られる。なお、本明細書において、エラスチン様ポリペプチドとは、Gly−X1−Gly−X2−Proの繰り返し配列を主要ペプチド配列とする温度感受性をもつポリペプチドをいう。好ましくは、水等に溶解させ約4〜70℃、より好ましくは約30〜40℃付近まで加熱すると相分離するポリペプチドのことをいう。
GX1GX2P・・・(1)
1GX2PG・・・(2)
GX2PGX1・・・(3)
2PGX1G・・・(4)
PGX1GX2・・・(5)
〔式(1)〜(5)中、X1及びX2は、それぞれ独立して、プロリン以外のアミノ酸残基を示す。〕
上記式(1)〜(5)中のアルファベット文字は、アミノ酸の一文字表記を意味し、配列はN末からC末方向の順に記載している。ここで、Gはグリシンを、Pはプロリンをそれぞれ示す。
また、上記X1及びX2はプロリン以外のアミノ酸残基を示す。エラスチンは、GVGVPの繰り返し配列を主要ペプチド配列とするタンパク質であり、上記GVGVP中の2つのVがプロリン以外のアミノ酸残基であればその特性等は保存され、有意な影響や変化はない。
1及びX2としては、脂肪族アミノ酸の残基が挙げられ、中性アミノ酸(モノアミノモノカルボン酸)の残基が好ましい。
具体的には、V(バリン)、G、A(アラニン)、L(ロイシン)、I(イソロイシン)、S(セリン)、T(トレオニン)、C(システイン)、D(アスパラギン酸)、E(グルタミン酸)、K(リジン)、R(アルギニン)が挙げられ、これらの中でも、V、L、Iが好ましく、Vが特に好ましい。
また、上記ポリペプチド(1)〜(5)は、以下の式に示すように、いずれも重縮合反応が進行した場合にGX1GX2Pの繰り返しを主要とする配列を誘導する。
Figure 2015007034
また、本発明の合成方法で得られるアミド化合物がポリマーである場合、得られるポリマーの重量平均分子量としては、1,000〜2,000,000が好ましく、10,000〜500,000がより好ましく、15,000〜50,000が更に好ましい。また、分散度としては、好ましくは2以上、より好ましくは35以上であり、また、好ましくは200以下である。なお、これらはGPCやTof−MSなどにより測定可能である。
以下、本発明の第1の合成方法と第2の合成方法についてより具体的に説明する。
(第1の合成方法)
本発明の第1の合成方法は、上記カルボキシ基を少なくとも有する化合物とアミノ基を少なくとも有する化合物とを反応させる工程を含むアミド化合物の合成方法であって、上記反応を、水系媒体中、アルカリ金属の硫酸塩及びアルカリ土類金属の硫酸塩から選ばれる1種以上の硫酸塩を用いて行うことを特徴とするものである。
本発明の第1の合成方法は、水系媒体中で反応を行うため、脱水反応により生じる水以外にも水分子が反応系中に存在するものであるが、これら水分子の存在によって平衡反応の均衡が崩れて反応効率が低下するということがみられない。斯かる作用や機構は必ずしも明らかではないが、アルカリ金属の硫酸塩及びアルカリ土類金属の硫酸塩から選ばれる1種以上の硫酸塩が、アミド生成反応の反応場を制御するためであると、本発明者らは推察する。そして、本発明の第1の合成方法は、アミド生成反応により大量に水分子が発生しても反応効率が低下しにくく、アミド化合物の工業的な大量合成に好適に使用される。また、有機溶媒を使用しなくてもアミド化合物を合成することができ、環境負荷が少ない。
本発明の第1の合成方法は、アルカリ金属の硫酸塩及びアルカリ土類金属の硫酸塩から選ばれる1種以上の硫酸塩を用いるものである。
ここで、本明細書において、アルカリ金属とは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム及びフランシウムの総称を意味し、アルカリ土類金属とは、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムの総称を意味する。
本発明の第1の合成方法において、アルカリ金属の硫酸塩としては、反応効率の観点から、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムが好ましい。また、アルカリ土類金属の硫酸塩としては、反応効率の観点から、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムが好ましい。
これらの中でも、第1の合成方法で用いる硫酸塩としては、反応効率の観点から、アルカリ金属の硫酸塩が好ましく、硫酸ナトリウムが特に好ましい。
なお、第1の合成方法で用いる硫酸塩は通常、水系媒体中では、硫酸イオンとアルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオンとにわかれるが、本発明の第1の合成方法においては、反応系中に上記硫酸塩を添加するなどすればよい。硫酸塩は、反応系中で上記のようなイオンとして存在していてもよい。
第1の合成方法で用いる硫酸塩の合計使用量は、原料化合物の合計1モルに対し、通常、1〜100モル当量であり、好ましくは5〜75モル当量であり、より好ましくは5〜25モル当量である。
また、本発明の第1の合成方法は、水系媒体中でアミド化反応を行うものである。
上記水系媒体としては、水を30体積%以上含む水系媒体が好ましく、水を40体積%以上含む水系媒体がより好ましく、水を50体積%以上含む水系媒体が更に好ましく、水を80体積%以上含む水系媒体が更に好ましく、水を95体積%以上含む水系媒体が特に好ましい。斯様な多量の水を含む水系媒体を用いた場合であっても、本発明の第1の合成方法によればアミド化合物を効率よく得ることができる。なお、上記水系媒体に含まれる水以外の媒体としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
水系媒体としては、例えば、水、リン酸緩衝液等の各種緩衝液などが挙げられるが、反応効率の観点から、水が好ましい。
上記水系媒体の合計使用量は、原料化合物の合計100質量部に対し、通常、100〜20000質量部であり、好ましくは500〜10000質量部であり、より好ましくは750〜7500質量部であり、さらに好ましくは1000〜6000質量部であり、特に好ましくは2500〜5000質量部である。このような多量の水系媒体を使用した場合でも、本発明の第1の合成方法によればアミド化合物を効率よく得ることができる。
また、本発明の第1の合成方法においては、反応効率の観点から、縮合剤存在下で上記反応を行うのが好ましい。
縮合剤はペプチド合成に使用される縮合剤であればよいが、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等のカルボジイミド誘導体;O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HCTU)、(1−[ビス−(ジメチルアミノ)メチリウミル]−1H−1,2,3−トリアゾール[4,5−b]ピリジン−3−オキサイドヘキサフルオロホスファート(HATU)等のベンゾトリアゾール誘導体の他、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、カルボジイミド誘導体が好ましく、WSCがより好ましい。
上記縮合剤の合計使用量は、原料化合物の合計1モルに対し、通常、1〜10モル当量であり、好ましくは1〜5モル当量である。
また、本発明の第1の合成方法においては、上記縮合剤とともに、縮合安定剤を用いるのが好ましい。
縮合安定剤としてはヒドロキシルアミン化合物が挙げられる。具体的には、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、HOBtが好ましい。
上記縮合安定剤の合計使用量は、原料化合物の合計1モルに対し、通常、0.25〜10モル当量であり、好ましくは0.75〜5モル当量である。
また、本発明の第1の合成方法においては、マイクロ波照射下で上記反応を行ってもよい。マイクロ波を照射することにより速やかに反応が進行し、短時間で収率よく目的とするアミド化合物を得ることができる。
上記マイクロ波の周波数は、好ましくは1〜5GHzの範囲であり、より好ましくは2〜3GHzの範囲である。
また、マイクロ波の波長は、通常、1m〜100μmの範囲である。
また、マイクロ波の出力は、好ましくは5〜2000Wの範囲であり、より好ましくは150〜1500Wの範囲であり、更に好ましくは175〜1000Wの範囲である。
上記のようなマイクロ波照射は、μ−reactor EX(四国計測工業社製)等の市販のマイクロ波反応装置を用いて行うことができる。
また、反応時間は、マイクロ波照射を行わない場合は、通常、5分間〜24時間程度であり、好ましくは10分間〜10時間であり、より好ましくは20分間〜8時間であり、更に好ましくは30分間〜6時間である。一方、マイクロ波照射を行う場合は、通常、10〜1000秒間程度であり、好ましくは10〜300秒間であり、より好ましくは10〜120秒間である。
また、反応温度は、マイクロ波照射を行わない場合は、通常、0〜200℃であるが、好ましくは4〜150℃であり、より好ましくは10〜100℃であり、更に好ましくは更に好ましくは20〜50℃であり、更に好ましくは20〜40℃である。マイクロ波照射を行わない場合、低温領域(4〜50℃)での反応の後、追加で高温領域(70〜100℃)での多段階の加熱を施してもよい。
一方、反応温度は、マイクロ波照射を行う場合は、通常、40〜150℃であるが、好ましくは40〜100℃であり、より好ましくは60〜100℃である。
なお、上記反応で得られた反応生成物の単離は、必要に応じて、ろ過、洗浄、乾燥、再結晶、再沈殿、透析、遠心分離、各種溶媒による抽出、中和、クロマトグラフィー等の通常の手段を適宜組み合わせて行えばよい。
そして、本発明の第1の合成方法によれば、水系媒体中であるにも拘わらず、アミド化合物を、高収率かつ高純度で簡便に合成できる。特に、エラスチンと同様の温度感受性を示すエラスチン様ポリペプチドの合成に有用である。
(第2の合成方法)
本発明の第2の合成方法は、上記カルボキシ基を少なくとも有する化合物とアミノ基を少なくとも有する化合物とを反応させる工程を含むアミド化合物の合成方法であって、上記反応を、マイクロ波照射下で行うことを特徴とするものである。
上記マイクロ波の周波数は、好ましくは1〜5GHzの範囲であり、より好ましくは2〜3GHzの範囲である。
また、マイクロ波の波長は、通常、1m〜100μmの範囲である。
また、マイクロ波の出力は、好ましくは5〜2000Wの範囲であり、より好ましくは150〜1500Wの範囲であり、更に好ましくは175〜1000Wの範囲である。
上記のようなマイクロ波照射は、μ−reactor EX(四国計測工業社製)等の市販のマイクロ波反応装置を用いて行うことができる。
また、マイクロ波の照射時間は、通常、10〜1000秒間程度であり、好ましくは10〜300秒間であり、より好ましくは10〜120秒間である。本発明の第2の合成方法によれば、斯様な短い時間でアミド化合物を得ることができる。
また、反応温度は、通常、40〜150℃であるが、好ましくは40〜100℃であり、より好ましくは60〜100℃である。
また、本発明の第2の合成方法においては、反応効率の観点から、縮合剤存在下で上記反応を行うのが好ましい。
縮合剤はペプチド合成に使用される縮合剤であればよいが、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等のカルボジイミド誘導体;O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HCTU)、(1−[ビス−(ジメチルアミノ)メチリウミル]−1H−1,2,3−トリアゾール[4,5−b]ピリジン−3−オキサイドヘキサフルオロホスファート(HATU)等のベンゾトリアゾール誘導体の他、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、カルボジイミド誘導体が好ましく、WSCがより好ましい。
上記縮合剤の合計使用量は、原料化合物の合計1モルに対し、通常、1〜10モル当量であり、好ましくは1〜5モル当量である。
また、本発明の第2の合成方法においては、上記縮合剤とともに、縮合安定剤を用いるのが好ましい。
縮合安定剤としてはヒドロキシルアミン化合物が挙げられる。具体的には、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、HOBtが好ましい。
上記縮合安定剤の合計使用量は、原料化合物の合計1モルに対し、通常、0.25〜10モル当量であり、好ましくは0.75〜5モル当量である。
また、本発明の第2の合成方法においては、反応効率の観点から、塩類を用いて反応を行うのが好ましい。塩類としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
上記アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましく、上記アルカリ土類金属塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩が好ましい。また、斯様な塩類の中でも、反応効率の観点から、アルカリ金属塩の無機酸塩、アルカリ土類金属塩の無機酸塩が好ましい。
具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム等が挙げられる。
これらの中でも、反応効率の観点から、アルカリ金属塩の硫酸塩、アルカリ土類金属塩の硫酸塩が好ましい。当該硫酸塩を用いた場合、水分子の存在により平衡反応の均衡が崩れることによる反応効率の低下を抑制することができる。すなわち、アミド生成反応により大量に水分子が発生しても反応効率が低下しにくく、アミド化合物の工業的な大量合成に好適に使用される。また、有機溶媒を使用しなくてもアミド化合物を合成することができ、環境負荷が少ない。
この中でも、上記硫酸塩としては、反応効率の観点から、アルカリ金属の硫酸塩が好ましく、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムがより好ましく、硫酸ナトリウムが特に好ましい。
なお、上記塩類を用いて溶媒中で反応を行う場合には、反応系中に上記塩類を添加するなどすればよい。反応系中で塩類は、塩として存在していてもよく、上記のようなイオンとして存在していてもよい。
本発明の第2の合成方法において、上記塩類の合計使用量は、原料化合物の合計1モルに対し、通常、1〜100モル当量であり、好ましくは5〜75モル当量であり、より好ましくは5〜25モル当量である。
また、本発明の第2の合成方法は、溶媒中で反応を行うのが好ましい。該溶媒としては、水、リン酸緩衝液等の水系媒体;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
上記水系媒体としては、水を30体積%以上含む水系媒体が好ましく、水を40体積%以上含む水系媒体がより好ましく、水を50体積%以上含む水系媒体が更に好ましく、水を80体積%以上含む水系媒体が更に好ましく、水を95体積%以上含む水系媒体が特に好ましい。なお、上記水系媒体に含まれる水以外の媒体としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
水系媒体としては、例えば、水、リン酸緩衝液等の各種緩衝液などが挙げられるが、反応効率の観点から、水が好ましい。
本発明の第2の合成方法によれば、上記水系媒体中で反応を行った場合であっても、短時間で収率よく目的とするアミド化合物を得ることができる。
上記溶媒の合計使用量は、原料化合物の合計100質量部に対し、通常、100〜20000質量部であり、好ましくは500〜10000質量部であり、より好ましくは750〜7500質量部であり、さらに好ましくは1000〜6000質量部であり、特に好ましくは2500〜5000質量部である。
なお、上記反応で得られた反応生成物の単離は、必要に応じて、ろ過、洗浄、乾燥、再結晶、再沈殿、透析、遠心分離、各種溶媒による抽出、中和、クロマトグラフィー等の通常の手段を適宜組み合わせて行えばよい。
そして、本発明の第2の合成方法によれば、高収率かつ高純度で簡便に、しかも短時間で、目的とするアミド化合物を得ることができる。特に、エラスチンと同様の温度感受性を示すエラスチン様ポリペプチドの合成に有用である。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1−1
GVGVP5g(11.7mmol)を超純水250mLに溶解させ、これに、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)11g(58mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)1.7g(11mmol)を加え、更に、Na2SO4 35.5g(250mmol)を添加し撹拌し十分に溶解させた。
次いで、上記で得られた溶液を室温(25℃)で1時間、静置した。この反応溶液を撹拌し、分子量カットオフが14000のセルロース透析膜に入れ、水15Lに対して透析を行った。その後、凍結乾燥して、GVGVPの重合体を得た(収率:72質量%)。
実施例1−2
室温(25℃)で1時間、静置したところを、室温(25℃)で30分間静置、その後、100℃で1時間加熱に変更した以外は実施例1−1と同様にしてGVGVPの重合体を得た(収率:72.8質量%)。
実施例1−3
室温(25℃)で1時間、静置したところを、100℃で30分間加熱に変更した以外は実施例1−1と同様にしてGVGVPの重合体を得た(収率:67.8質量%)。
比較例1−1
GVGVP500mg(1.17mmol)を超純水25mLに溶解させ、これに、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)1.1g(5.8mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)0.17g(1.1mmol)を加え、撹拌し十分に溶解させた。
次いで、上記で得られた溶液を100℃で2時間加熱した。この反応溶液を撹拌し、分子量カットオフが14000のセルロース透析膜に入れ、水15Lに対して透析を行った。その後、凍結乾燥して、GVGVPの重合体を得た(収率:16質量%)。
比較例1−2
GVGVP500mg(1.17mmol)を超純水25mLに溶解させ、これに、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)1.1g(5.8mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)0.17g(1.1mmol)を加え、更に、NaCl 2.5gを添加し撹拌し十分に溶解させた。
次いで、上記で得られた溶液を100℃で30分間加熱した。この反応溶液を撹拌し、分子量カットオフが14000のセルロース透析膜に入れ、水15Lに対して透析を行った。その後、凍結乾燥して、GVGVPの重合体を得た(収率:28.4質量%)。
実施例1−4
NaClをMgSO4 3g(25mmol)に変更した以外は、比較例1−2と同様にしてGVGVPの重合体を得た(収率:46質量%)。
実施例1−5
NaClをK2SO4 3g(17mmol)に変更した以外は、比較例1−2と同様にしてGVGVPの重合体を得た(収率:70質量%)。
試験例1 温度感受性試験(1)
実施例1−1〜1−5及び比較例1−1〜1−2で得られたGVGVPの重合体10mgを常温(25℃)で水1mLに溶解させたところ、その溶液は無色透明であった。
次いで、この溶液を40℃に加熱して重合体の温度感受性を試験したところ、実施例1−1〜1−5及び比較例1−1〜1−2で得られたGVGVPの重合体は30〜35℃で白濁した。
この結果から、実施例1−1〜1−5及び比較例1−1〜1−2で得られたGVGVPの重合体はエラスチンと同様の温度感受性(濁点)をもつことがわかった。
以下の表1に、実施例1−1〜1−5及び比較例1−1〜1−2の結果を示す。
Figure 2015007034
実施例2−1
GVGVP5g(11.7mmol)を超純水150mLに溶解させ、これに、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)11g(58mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)1.7g(11mmol)を加え、更に、NaCl 8.58g(147mmol)を添加し撹拌し十分に溶解させた。
次いで、μ−reactor EX(四国計測工業社製)を用いて、上記で得られた溶液を2分間マイクロ波照射した後(周波数:2.45GHz、出力:1,000W、反応温度:70〜100℃)、反応溶液を4℃まで冷却した。この反応溶液を撹拌し、分子量カットオフが14000のセルロース透析膜に入れ、水15Lに対して透析を行った。その後、凍結乾燥して、GVGVPの重合体を得た(収率:35質量%)。
実施例2−2
NaClの使用量を25.8g(735mmol)に変更した以外は実施例2−1と同様にしてGVGVPの重合体を得た(収率:57.6質量%)。
実施例2−3
GVGVPの使用量を500mg(1.17mmol)に、超純水を200mMのリン酸緩衝溶液(pH4.5)25mLに、WSCの使用量を1.1g(5.8mmol)に、HOBtの使用量を0.17g(1.1mmol)に、NaClの使用量を1.4g(25mmol)に、それぞれ変更した以外は実施例2−1と同様にしてGVGVPの重合体を得た(収率:9質量%)。
実施例2−4
NaClの使用量を4.38g(75mmol)に変更した以外は実施例2−3と同様にしてGVGVPの重合体を得た(収率21.8質量%)。
実施例2−5
NaClをKCl 1.8g(25mmol)に変更し、リン酸緩衝液を超純水に変更した以外は実施例2−3と同様にしてGVGVPの重合体を得た(収率:38質量%)。
実施例2−6
NaClをMgSO4 3g(25mmol)に変更し、リン酸緩衝液を超純水に変更した以外は実施例2−3と同様にしてGVGVPの重合体を得た(収率:46質量%)。
実施例2−7
NaClをNa2SO4 3.55g(25mmol)に変更し、リン酸緩衝液を超純水に変更した以外は実施例2−3と同様にしてGVGVPの重合体を得た(収率:71質量%)。
比較例2−1
マイクロ波を照射しない以外は実施例2−1と同様にして操作したが、重合体の合成は確認されず、GVGVPの二量体または三量体が確認された。斯かる二量体および三量体は、濁点をもたないものだった。
試験例2 温度感受性試験(2)
実施例2−1〜2−7で得られたGVGVPの重合体10mgを常温(25℃)で水1mLに溶解させたところ、その溶液は無色透明であった。
次いで、この溶液を40℃に加熱して重合体の温度感受性を試験したところ、実施例2−1〜2−7で得られたGVGVPの重合体は30〜35℃で白濁した。
この結果から、実施例2−1〜2−7で得られたGVGVPの重合体はエラスチンと同様の温度感受性(濁点)をもつことがわかった。
以下の表2に、実施例2−1〜実施例2−7及び比較例2−1の結果を示す。
Figure 2015007034

Claims (13)

  1. カルボキシ基を少なくとも有する化合物とアミノ基を少なくとも有する化合物とを反応させる工程を含むアミド化合物の合成方法であって、
    前記反応を、水系媒体中、アルカリ金属の硫酸塩及びアルカリ土類金属の硫酸塩から選ばれる1種以上の硫酸塩を用いて行うことを特徴とする、
    アミド化合物の合成方法。
  2. 前記硫酸塩が、アルカリ金属の硫酸塩である、
    請求項1に記載の合成方法。
  3. 前記カルボキシ基を少なくとも有する化合物と前記アミノ基を少なくとも有する化合物が、ともに、アミノ酸またはペプチドである、
    請求項1または2に記載の合成方法。
  4. 前記カルボキシ基を少なくとも有する化合物と前記アミノ基を少なくとも有する化合物が、ともに、下記式(1)〜(5)のいずれか1つで表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドである、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の合成方法。
    GX1GX2P・・・(1)
    1GX2PG・・・(2)
    GX2PGX1・・・(3)
    2PGX1G・・・(4)
    PGX1GX2・・・(5)
    〔式(1)〜(5)中、X1及びX2は、それぞれ独立して、プロリン以外のアミノ酸残基を示す。〕
  5. 前記アミド化合物が、エラスチン様ポリペプチドである、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の合成方法。
  6. 前記反応を、マイクロ波照射下で行う、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の合成方法。
  7. カルボキシ基を少なくとも有する化合物とアミノ基を少なくとも有する化合物とを反応させる工程を含むアミド化合物の合成方法であって、
    前記反応を、マイクロ波照射下で行うことを特徴とする、
    アミド化合物の合成方法。
  8. 前記カルボキシ基を少なくとも有する化合物と前記アミノ基を少なくとも有する化合物が、ともに、アミノ酸またはペプチドである、
    請求項7に記載の合成方法。
  9. 前記カルボキシ基を少なくとも有する化合物と前記アミノ基を少なくとも有する化合物が、ともに、下記式(1)〜(5)のいずれか1つで表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドである、
    請求項7または8に記載の合成方法。
    GX1GX2P・・・(1)
    1GX2PG・・・(2)
    GX2PGX1・・・(3)
    2PGX1G・・・(4)
    PGX1GX2・・・(5)
    〔式(1)〜(5)中、X1及びX2は、それぞれ独立して、プロリン以外のアミノ酸残基を示す。〕
  10. 式(1)〜(5)中のX1及びX2がVである、
    請求項9に記載の合成方法。
  11. 前記反応を、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩から選ばれる1種以上を用いて行う、
    請求項7〜10のいずれか1項に記載の合成方法。
  12. 前記アミド化合物が、エラスチン様ポリペプチドである、
    請求項7〜11のいずれか1項に記載の合成方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の合成方法で得られるアミド化合物。
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