JP2012232961A - 温度応答性複合ポリマー - Google Patents

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Abstract

【課題】生体に適用可能であって、エラスチンと同様の親水性/疎水性相転移(温度応答性)を示し、かつ薬物を坦持することができる温度応答性複合ポリマーを提供することを課題とする。
【解決手段】式:(X1PGX2G)n[式中、X1はバリンおよびイソロイシンから選択され、X2はプロリンを除くアミノ酸から選択され、Pはプロリンであり、Gはグリシンであり、nは1以上の整数である]で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと、樹状ポリマーとを結合させてなり、加熱により疎水性に相転移することを特徴とする複合ポリマーにより、上記の課題を解決する。
【選択図】図3

Description

本発明は、エラスチン様ペプチドと樹状ポリマーとを結合させてなり、加熱により疎水性へと相転移する温度応答性複合ポリマーに関する。
薬物送達システム(DDS)の分野においては、生体に適合性のあるポリマーが薬物送達用担体として有用である。例えば、該ポリマーに薬物を結合させるか又は該ポリマーが樹状構造を有している場合はその内部空間に薬物を保持させることにより、担体としてのポリマーと薬物とを複合化させてDDSに利用することができる。
近年、このようなポリマーを用いたDDSにおいては、担体としての該ポリマーに外部からの物理的刺激に応答する機能を付加することにより、薬物送達の精度を高める試みがなされている。そのような物理的刺激の中でも、生体への適用の簡便さと安全性の観点から、加熱による温度刺激が注目されている。
従来は、ポリマーに温度応答性を付与するために、N-イソプロピルアクリルアミドのような温度応答性を示す合成高分子を該ポリマーに結合させていた。しかし、そのようにして得られる複合ポリマーは、合成高分子のみから構成されるので、生体への安全性の観点から懸念がある。
そこで、ポリマーの表面を温度応答性の生体材料によって修飾することが試みられている。そのような生体材料の一つとして、エラスチンが挙げられる。エラスチンは、ヒトにおいては靭帯、皮膚、動脈などに含まれており、「バリン-プロリン-グリシン-バリン-グリシン」からなるペンタペプチドの繰り返し配列を有することが知られている。この繰り返し配列により、エラスチンは温度応答性を示すことが知れられている。すなわち、エラスチンは、加熱によりその高次構造が変化され、親水性から疎水性へと相転移するという温度応答性を有する。
これまでに、上記のエラスチンのペンタペプチドの繰り返し配列を有するポリペプチド(エラスチン様ペプチド)を側鎖とするブロックコポリマーが開発されている(非特許文献1および2)。
L. Ayresら、Macromolecules, vol. 38, p.1699-1704 (2005) F. Fernandez-Trilloら、Macromolecules, vol. 40, p.6094-6099 (2007)
しかしながら、これまでに開発され、報告されているエラスチン様ペプチドにより修飾された複合ポリマーにおいては、その温度応答性が酸性領域のpHでなければ認められなかった。他方、生体内環境、特に血液のpHは中性領域であるので、このような従来の複合ポリマーを生体に適用しても温度応答性を利用することは困難である。また、これまでの人工エラスチン材料をDDSへ応用する場合、薬物への付与が必要であった。
上記の事情に鑑みて、本発明は、生体に適用可能であって、エラスチンと同様の親水性/疎水性相転移(温度応答性)を示す温度応答性複合ポリマーを提供することを目的とする。また、薬物保持能を有する人工エラスチン材料の提供も目的とする。
本発明によれば、以下の式(I):
(X1PGX2G)n 式(I)
[式中、X1はバリンおよびイソロイシンから選択され、X2はプロリンを除くアミノ酸から選択され、Pはプロリンであり、Gはグリシンであり、nは1以上の整数である]
で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと、樹状ポリマーとを結合させてなり、加熱により疎水性に相転移することを特徴とする温度応答性複合ポリマーが提供される。
本発明の温度応答性複合ポリマーは、その構成要素である樹状ポリマーの内部空間に薬物を保持することができ、該樹状ポリマーに結合したエラスチン様ペプチドにより生体に高い適合性を示すので、生体に安全に投与可能な薬物送達用担体として利用できる。
また、本発明の温度応答性複合ポリマーは、加熱により、その特性が親水性から疎水性へ相転移するので、疎水性表面を有する細胞との相互作用が増強される。
したがって、薬物を保持させた本発明の温度応答性複合ポリマーを生体に投与した場合、外部からの局所的な加熱により、加熱した部位に特異的な薬物送達を可能にする。これにより、投与した薬物について、局所的な薬効の発現と副作用の低減が期待できる。
液相合成法によるエラスチン様ペプチドの合成のスキームを表すフローチャートである。 本発明の温度応答性複合ポリマーの製造のスキームを表す図である。 本発明の温度応答性複合ポリマーの水溶液の加熱前後の写真である。 本発明の温度応答性複合ポリマーの各温度におけるCDスペクトルを示す。 本発明の温度応答性複合ポリマーの197 nmと218 nmの波長におけるCDスペクトルの温度依存性を示す。 本発明の温度応答性複合ポリマーの相転移に対する塩濃度の影響を示すグラフである。 本発明の温度応答性複合ポリマーの相転移における塩濃度と温度の関係を示すグラフである。 本発明の温度応答性複合ポリマーの相転移に対するpHの影響を示すグラフである。
本明細書においては、本発明の温度応答性複合ポリマーを、「温度応答性ポリマー」または単に「ポリマー」とも呼ぶ。
本明細書においては、上記の式(I)で表されるアミノ酸配列を含むペプチド、すなわち、ペンタペプチドおよび該ペンタペプチドの繰り返し配列を含むポリペプチドを「エラスチン様ペプチド」とも呼ぶ。
本発明の温度応答性複合ポリマーは、以下の式(I):
(X1PGX2G)n 式(I)
[式中、X1はバリンおよびイソロイシンから選択され、X2はプロリンを除くアミノ酸から選択され、Pはプロリンであり、Gはグリシンであり、nは1以上の整数である]
で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと、樹状ポリマーとを結合させてなり、加熱により疎水性に相転移することを特徴とする。
本発明の実施形態において、温度応答性ポリマーは、加熱によってその特性が親水性から疎水性へと相転移する。特に、本発明のポリマーは、50℃以下の温度で、好ましくは中性領域のpH(例えばpH6〜8、好ましくはpH6.5〜7.5)において35〜50℃の範囲内、より好ましくは37〜45℃の範囲内の温度で相転移する。
ここで、本発明のポリマーにおける相転移のメカニズムは、天然のエラスチンにおいて認められるものと同様である。当該技術において、エラスチンの温度応答性は「バリン-プロリン-グリシン-バリン-グリシン」からなるペンタペプチドの繰り返し配列に由来し、加熱により、その構造が親水性のランダムコイル構造から、疎水性のβ−ターン構造となることが知られている。他方、「バリン-プロリン-グリシン-バリン-グリシン」からなるペンタペプチド自体は高次構造を形成することが困難であるため、温度応答性を示さないことが知られている。
これに対し、本発明の温度応答性ポリマーは、後述するように、その構成要素であるポリペプチドが5残基のアミノ酸からなるエラスチン様ペプチドであっても、加熱により疎水性に相転移することができる。
本発明の実施形態において、疎水性に相転移した温度応答性ポリマーは、冷却により、疎水性から親水性へと相転移することが好ましい。すなわち、本発明のポリマーの親水性/疎水性相転移は可逆的であることが好ましい。
本発明の実施形態において、温度応答性ポリマーの疎水性から親水性への相転移は、好ましくは30℃以上50℃以下、より好ましくは35℃以上45℃以下、さらに好ましくは37℃以上42℃以下で生じる。このような親水性/疎水性相転移特性を示す本発明のポリマーをDDSに利用した場合、生体への適用部位において薬物送達の程度を調節し得る。
本発明のポリマーの親水性から疎水性への相転移は、肉眼で観察することができる。本発明の温度応答性ポリマーを適当な水性溶媒に溶解させると、その溶液は低温では透明であるが、該溶液を加熱すると白濁を生じる。したがって、本発明の実施形態において、温度応答性ポリマーの相転移の程度は、その水性溶液の白濁の度合を光学的に測定することにより調べることができる。
また、本発明の実施形態においては、親水性から疎水性への相転移の条件(相転移温度)は、本発明のポリマーの水性溶液を加熱しながら500〜600 nmの波長の光を照射し、その光の透過率を経時的に測定することにより決定できる。例えば、そのような光学的測定により得られた透過率が、加熱前の透明な水性溶液の透過率の50%となったときの温度を、本発明のポリマーの相転移温度と規定することができる。
本発明のポリマーを生体内の目的の部位への適用後に、該部位にて外部から加熱して上記の範囲の温度とすることにより、加熱した部位において該ポリマーを疎水性に相転移させることができる。ここで、当該技術において、細胞の表面は疎水性であることが知られている。それゆえ、疎水性になった本発明の温度応答性ポリマーは、細胞との相互作用が増強された結果、該細胞に取り込まれ易くなることが期待される。
本発明の温度応答性ポリマーは、医薬化合物(薬物)と複合することにより、DDSを利用した医薬組成物とすることができる。ここで「複合する」とは、本発明のポリマーと薬物とが1つの物質のように挙動する状態であることを意味する。より具体的には、薬物と本発明のポリマーの構成要素である樹状ポリマーが、共有結合などの化学結合または静電相互作用、疎水性相互作用などによる物理結合により結合している状態である。
上記の化学結合は、薬物が有する官能基と、樹状ポリマーが有する官能基との直接または間接的な結合である。また、上記の物理結合は、例えば、樹状ポリマー内部の間隙への薬物の包接(encapsulation)である。
上記の薬物は、樹状ポリマーと複合するための官能基を有する薬物が好ましい。そのような薬物としては、抗癌剤を用いることが好ましい。抗癌剤としては、例えば、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ブレオマイシン、マイトマイシンCのような抗生物質、シスプラチン、オキサリプラチンのような白金化合物、5−フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビンのような代謝拮抗剤、ビンクリスチン、タキソール(パクリタキセル)、ビンブラスチン、ドセタキセルのような天然物由来抗癌剤などが挙げられる。
[樹状ポリマー]
本発明の実施形態において、温度応答性ポリマーの構成要素である樹状ポリマーは、生体適合性であって、樹状または分岐状構造を有するポリマーであれば特に限定されない。そのような樹状ポリマーは、薬物と複合可能な官能基を1種以上有するものが好ましい。該官能基としては、例えばアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基などが挙げられる。
なお、樹状ポリマーと薬物とを、該ポリマー中の官能基と薬物中の官能基との結合により複合させる場合、該ポリマー中の官能基と薬物中の官能基との間で直接又は適切なリンカーを介在させて、両者を結合させることができる。そのようなリンカーは、薬物が、好ましくは特定の条件下で、高分子化合物から切り離されることを可能にする結合を含むものが好ましく、例えば特定のpH条件下で切断されるヒドラゾン結合を含むもの、特定の酵素により切断される一連のペプチド、加水分解可能なエステル結合を含むものなどが挙げられる。
また、樹状ポリマーが後述するデンドリマーである場合、薬物を該デンドリマーの内部の間隙に包接させる方法は当該技術において公知であり、例えばKojima C.ら、Bioconjuge Chem 11: 910〜7 (2000)などに記載されている。
本発明の実施形態において、樹状ポリマーとしては、樹状構造を有するデンドリマー、ポリエチレンイミン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドなどが好ましい。本発明の実施形態においては、これらのポリマーを1種または複数種を用いることができる。
また、本発明の実施形態においては、上記の樹状ポリマーのうち、樹状構造における分岐の規則性が比較的低い「ハイパーブランチポリマー」(または「ランダム樹状ポリマー」ともいう)を用いてもよい。
上記のデンドリマーは、当該技術において、樹状構造を有する3次元的に高度に分枝した化合物であり、ほぼ球状の形状を有することが知られている。なお、本明細書において「デンドリマー」とは、デンドリマーを構成する部分構造であって、コアの部分の少なくとも1つの官能基が分岐していない構造を有するデンドロンも含む。
デンドリマーは一般に、コアと、いくつかの世代の分岐部分と、末端基とからなる。
デンドリマーのコアは、1つ以上の官能基を有する化合物から誘導されるものである。官能基としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基、ヒドロキシ基、カルボン酸基、チオール基、エステル基、アミド基、ケトン基、アルデヒド基などが挙げられ、好ましくは、第1級アミノ基及び第2級アミノ基である。
上記のコアを構成する化合物としては、例えばアンモニア、エチレンジアミンなどが挙げられる。
デンドリマーの分岐部分は、3以上の原子価を有する原子を含む分岐構造単位の繰り返しからなる。3以上の原子価を有する原子としては、炭素、窒素、ケイ素、リンなどが挙げられる。なお、当該技術においては、デンドリマーの分岐部分として、以下の構造が知られている。
(式中、nは1以上の整数であり、好ましくは60〜300の整数である)
上記の分岐構造を有する各デンドリマーについては、以下の文献に記載されている。
(A)D.A. Tomaliaら、Polym. J. 17, 117 (1985);D.A. Tomaliaら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 29, 138 (1990)
(B)E.M.M. de Brabander-van den Bergら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 32, 1308 (1993);E.M.M. de Brabander-van den Bergら、Macromol. Symp. 77, 51 (1994);J.C. Hummelenら、Chem. Eng. J. 3, 1489 (1997);C. Wanerら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 32, 1300 (1993)
(C)Henrik R. Ihreら、Bioconjugate Chem. 13, 443-452 (2002);Andrew P. Goodwinら、J.Am.Chem.Soc., 129, 6994 (2007)
デンドリマーの分岐部分は、上記のような繰り返し単位を2種以上含むものであってもよい。
デンドリマーの末端基の構造は、所望により適宜選択できる。例えば、末端基は、分岐部分の最後の繰り返し単位の構造を有してもよいし、末端基は、分岐部分とは別の構造を有してもよい。
デンドリマーの末端基としては、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基などが挙げられ、好ましくはアミノ基である。
上記のハイパーブランチポリマーは、一般にAB2型モノマーを重合させることにより、分岐を展開させたものである。ここで、AおよびBはそれぞれ重合反応可能な官能基の組み合わせを示すものであり、例えば、水酸基とカルボキシル基、アミノ基とカルボキシル基などの組み合わせが挙げられる。さらに場合によっては、分岐のコアとして機能する物質を併用することもある。また、グリシドールやエチレンイミンなどの開環重合によってハイパーブランチポリマーを作製することもできる。
ハイパーブランチポリマーは上記のデンドリマーと同じように分岐部分を有するが、コアは必須ではなく、また分岐部分に一部欠損して不規則または不連続な箇所があってもよい。
ランダム樹状ポリマーの分岐ユニットは、ポリリシン骨格、ポリグリセリン骨格、種々の糖類の骨格でもあり得る。
分岐ユニットが、リシン(-NH-CH(C4H2NH-)CO-)であるランダム樹状ポリマーの具体例としてはPolyLysine-Dendri-graft(PLD:COLCOM社)が挙げられる。また、分岐ユニットが、下記の式で表されるポリグリセリンであるランダム樹状ポリマーの具体例としてはPGL XおよびPGL 10(ダイセル化学)が挙げられる。
(式中、nは10以上、好ましくは20以上の整数である)
本発明の実施形態において、デンドリマーは、薬物と結合するか又は薬物をその内部の間隙に収容できる、すなわち包接できるものであれば、特に限定されない。
デンドリマーの世代数は、用いるデンドリマーのコアおよび分岐部分の構造に応じて適宜選択できる。当該技術においては、第0〜第10世代のデンドリマーが一般に入手可能である。
デンドリマーの製造方法は当該技術において公知であり、例えば上記の文献に記載されている。例えば、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーは、ジアミンを原料として用い、これにアクリル酸エステルを反応させるマイケル付加反応と、ジアミノアルカンを用いるエステルアミド交換反応とにより第1世代のアミド化合物を得て、さらにマイケル付加反応及びエステルアミド交換反応を繰り返すことにより製造できる(Tomalia, D.ら、Polym. J. 17、117〜132 (1985);Frechet, J. M. J., Tomalia, D. A.編、(2001) Dendrimers and other dendritic polymers, J. Wiley & Sons, West Sussexを参照)。上記のジアミンは、一般に入手可能である。
なお、ポリアミドアミンデンドリマーは、Starburst(登録商標)の商品名で市販されており、一般に入手可能である。
[エラスチン様ペプチド]
本発明の温度応答性ポリマーの構成要素であるポリペプチドは、式:(X1PGX2G)n[式中、X1はバリンおよびイソロイシンから選択され、X2はプロリンを除くアミノ酸から選択され、Pはプロリンであり、Gはグリシンであり、nは1以上の整数である]で表されるアミノ酸配列を含む。
本明細書において「プロリンを除くアミノ酸」とは、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リシン、ヒスチジン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニンおよびチロシンを意味する。
上記の式(I)において、nの上限は特に制限されないが、合成の難易性及び/又はコストの観点から、例えば20、10または6であり得る。
また、上記の式(I)において、nが2以上の整数である場合、X1およびX2は、ペンタペプチドの繰り返し単位ごとに、上記で規定したアミノ酸からなる群より選択することができる。すなわち、エラスチン様ペプチドのアミノ酸配列は、繰り返し単位間で同一であってもよいし、異なっていてもよい。
本発明の好ましい実施形態において、ポリペプチドは、上記の式(I)中、X1およびX2がバリンであるエラスチン様ペプチドである。すなわち、式 (VPGVG)n[式中、nは1以上の整数である]で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドが好ましい。なお、このアミノ酸配列は、天然のエラスチンに特徴的な繰り返し配列である。
エラスチン様ペプチドは、動物の組織などにあるエラスチンから得られる天然由来のポリペプチドであってもよいし、当該技術において公知の合成法により得られるポリペプチドであってもよい。
そのような合成法は当該技術において公知であり、固相合成法、液相合成法などが挙げられる。また、エラスチン様ペプチドは、そのアミノ酸配列をコードする核酸を用いて遺伝子組み換えした哺乳動物細胞又は大腸菌などに合成させることもできる。
本発明の実施形態において、エラスチン様ペプチドは、その一方の末端を、樹状ポリマーの末端基と反応性を有する基で誘導体化されていてもよい。結合させようとする樹状ポリマーの末端基がアミノ基である場合、ポリペプチドは、その一方の末端(例えば、本来アミノ末端である末端)が、アミノ基とアミド結合又はウレタン結合を形成できる基、例えば4-ニトロフェニルカーボネート基またはカルボキシル基で誘導体化された形態であってもよく、樹状ポリマーの末端がヒドロキシ基である場合には、ポリペプチドは、一方の末端(例えば、本来アミノ末端である末端)が、ヒドロキシ基とエステル結合を形成できる基、例えばカルボキシル基で誘導体化された形態であってもよい。
また、ポリペプチドの一方の末端にアミノ酸以外の化合物が結合されたものでもよい。そのような化合物としては、例えば、標識化することができる蛍光色素、リガンド機能を持つ生理活性物質があり得る。
エラスチン様ペプチドと樹状ポリマーとの結合は、該ポリペプチドと樹状ポリマーの末端基とを反応させることにより行われる。なお、そのような反応は当該技術において公知である。例えば、樹状ポリマーの末端基がアミノ基又はヒドロキシル基である場合、エラスチン様ペプチドのカルボキシル基と反応させることにより、末端基がカルボキシル基である場合、エラスチン様ペプチドのアミノ基と反応させることにより、エラスチン様ペプチドを樹状ポリマーの末端基に直接結合させることができる。
本発明の実施形態において、ポリペプチドのN末端またはC末端のうち、樹状ポリマーの末端基との結合に関与しなかった方の末端を修飾してもよい。例えば、樹状ポリマーの末端基との結合に関与しなかった末端がN末端である場合、該末端をアセチル化することができる。また、樹状ポリマーの末端基との結合に関与しなかった末端がC末端である場合、該末端をエステル化してもよい。このようなポリペプチドの末端の修飾により、本発明の温度応答性ポリマーは生体内でより安定に存在することができる。
本発明の実施形態において、エラスチン様ペプチドは、樹状ポリマーの全ての末端基に結合していてもよいし、樹状ポリマーの一部の末端基に結合していてもよい。
樹状ポリマーに結合しているエラスチン様ペプチドの数は、樹状ポリマーの末端基の数に依存するが、該樹状ポリマーの全末端基の数の少なくとも50%以上、好ましくは75%以上、さらに好ましくは90%以上である。例えば、樹状ポリマーが第4世代のデンドリマー(末端基の数:64)である場合、結合するポリペプチドの数は好ましくは少なくとも32、より好ましくは少なくとも48、さらに好ましくは少なくとも58である。
以下に、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 温度応答性複合ポリマーの製造
(1)エラスチン様ペプチドの合成
液相合成法により、バリン-プロリン-グリシン-バリン-グリシン(Val-Pro-Gly-Val-Gly)のアミノ酸配列からなるエラスチン様ペプチドを合成した。合成のスキームを図1に示す。
(1-1)試薬
o-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェート(HBTU)、o-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェート(HATU)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAT)、および第4世代(G4)のPAMAMデンドリマーはAldrich Chemical社から購入した。
Boc-Pro、Boc-ValおよびGly-OBzl・Tosは株式会社ペプチド研究所から購入した。
フルオレスカミンは東京化成工業株式会社から購入した。
トリエチルアミン、無水酢酸、トリフルオロ酢酸、酢酸エチル、ジエチルエーテル、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム二水和物、クエン酸一水和物、塩化ナトリウム、1,4-シクロヘキサジエン、高速液体クロマトグラフ用アセトニトリル、硫酸マグネシウム(無水)、炭酸水素ナトリウム、カラムクロマトグラフ用シリカゲル60およびセライト-545RVSはナカライテスク株式会社から購入した。
4-(4,6-Dimethoxy-1,3,5-triazin-2-yl)-4-methylmorpholinium Chloride (DMT-MM)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド (DMSO)、リン酸、パラジウム黒、特級エタノールは和光純薬工業株式会社から購入した。
透析膜はSpectra/Por(登録商標)Membrane (分画分子量 1000)はSPECTRUM社から購入した。
(1-2)Boc-Pro-Gly-OBzlの合成
Boc-Pro 0.648 g (3.01 mmol)、Gly-OBzl・Tos 1.03 g (3.04 mmol)、TEA 1.0 ml (7.20 mmol)を、蒸留したアセトニトリル24 mlに溶かし、HBTU 1.15 g (3.02 mmol)を加えて室温で3時間半撹拌させた。その後、TEAを300μl添加し、さらに1時間半撹拌した。その後、飽和食塩水70 mlを加えて反応を止め、目的のペプチドを酢酸エチル50 mlで3回抽出した。酢酸エチル相を各10 mlの10%クエン酸水溶液、蒸留水、4%炭酸水素ナトリウム水溶液および蒸留水で順に分液し、洗浄した。酢酸エチル相を回収して硫酸マグネシウムで脱水した。シリカゲルカラムによって精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/1)し、減圧留去して油状物質(Boc-Pro-Gly-OBzl)を得た。収量0.82g、収率75.1%であった。
(1-3)CF3COO- +NH-Pro-Gly-OBzlの合成
上記のBoc-Pro-Gly-OBzl 0.80g (13.2mmol)をTFA 1.0 mlに溶かし、4℃で3時間静置した。さらにTFAを1.0 ml加えて2時間撹拌させた。その後、TFAを減圧留去し、さらに蒸留水を加えてTFAの減圧留去を6回繰り返してBoc基の除去を行った。次に、得られた油状の化合物を酢酸エチルに溶かし、ジエチルエーテルを加え、再結晶による精製を行った。桐山ロートで減圧濾過後、真空乾燥させることにより白色固体(CF3COO- +NH-Pro-Gly-OBzl)を得た。収量0.61g、収率86.1%であった。
(1-4)Boc-Val-Pro-Gly-OBzlの合成
上記のCF3COO- +NH-Pro-Gly-OBzl 0.613 g (1.63 mmol)にアセトニトリル20 ml、TEA 1.0 ml (7.20 mmol)、Boc-Val 0.385 g (1.77 mmol)、HBTU 0.598 g (1.72 mmol)を加えて6時間撹拌させた。飽和食塩水60mlを加えて反応を止め、目的ペプチドを酢酸エチル40 mlで3回抽出した。各8 mlの10%クエン酸水溶液、蒸留水、4%炭酸水素ナトリウム水溶液、蒸留水をで順に分液、洗浄した。酢酸エチル相を回収し、酢酸エチル相を回収して硫酸マグネシウムで脱水した。その後、シリカゲルカラムによって精製(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/1)し、減圧留去した。真空乾燥後、油状物質(Boc-Val-Pro-Gly-OBzl)を得た。収量0.45g、収率59.8%であった。
(1-5)Boc-Val-Pro-Gly-OHの合成
上記のBoc-Val-Pro-Gly-OBzl 429.7 mg (0.93 mmol)を特級エタノール15 mlに溶かし、これにPd黒0.34 mg (0.32 mmol)と1,4-シクロヘキサジエン881μl (9.3 mmol)を加えた。フラスコ内を水素ガスで置換してから撹拌を開始し、22時間撹拌した。その後、セライトを詰めた桐山ロートで減圧ろ過後、ろ液を減圧留去し、さらにエタノールで減圧濃縮を5回繰り返し、真空乾燥させ、白色固体(Boc-Val-Pro-Gly-OH)を得た。収量 376.5mg、収率108%であった。
(1-6)CF3COO- +NH2-Val-Gly-OBzlの合成
上記のBoc-Val-Gly-OBzl 0.70 g (1.92 mmol)をTFA 2.0 mlに溶かし、4℃で3時間静置した。その後、TFAを減圧留去し、さらに蒸留水を加えてTFAの減圧留去を4回繰り返してBoc基の除去を行った。次に、得られた白色固体を酢酸エチルに溶かし、ヘキサンを加え、再沈殿させた。減圧濾過し、真空乾燥させて白色固体(CF3COO- +NH2-Val-Gly-OBzl)を得た。収量0.62g、収率92.6%であった。
(1-7)Boc-Val-Pro-Gly-Val-Gly-OBzlの合成
上記のBoc-Val-Pro-Gly 0.32 g (0.86 mmol)、CF3COO- +NH2-Val-Gly-OBzl 0.33 g (0.86 mmol)、TEA 0.30 ml (2.16 mmol)、HBTU 0.29 g (0.86 mmol)を、蒸留したアセトニトリル20 mlに溶かし、室温で2日撹拌させた。これに飽和食塩水70 mlを加えて反応を止め、目的ペプチドを酢酸エチル50 mlで3回抽出した。10%クエン酸水溶液、蒸留水、4%炭酸水素ナトリウム水溶液、蒸留水各10 mlで順に分液、洗浄した。酢酸エチル相を回収して硫酸マグネシウムで脱水した。その後、Sephadex LH-20カラム(展開溶媒:メタノール)によって精製し、減圧留去して真空乾燥し、白色固体(Boc-Val-Pro-Gly-Val-Gly-OBzl)を得た。収量 0.29g、収率 65.4%であった。
(1-8)Boc-Val-Pro-Gly-Val-Gly-OHの合成
上記のBoc-Val-Pro-Gly-Val-Gly-OBzl 0.29 g (0.48 mmol) を特級エタノール8 mlに溶かし、Pd黒0.17 mg (0.16 mmol) と 1,4-シクロヘキサジエン 451μl (9.30 mmol)を加えて水素ガスでフラスコ内を置換してから24時間撹拌した。その後、セライトを詰めた桐山ロートで減圧ろ過後、ろ液を減圧留去した。さらにエタノールで減圧濃縮を5回繰り返し、凍結乾燥させ白色固体を得た。収量 0.25g、収率 99.8%であった。化合物の構造を以下に示す。
また、NMRによって同定した結果を以下に示す。なお、下記の結果において「C」の直後の数字は、下記の構造式の各炭素に付した番号を意味する。
1H NMR (400 MHz, DMSO)δ0.81 (m, Hc, Hd, Hm, Hn), 1.37 (s, Ha), 1.82(br, Hb, Hg, Hh, Hl), 3.57- 4.18 (m,He, Hf, Hj, Hk, Ho), 4.30 (t, Hi). 13C NMR(400 MHz, DMSO) : δ18.1 (s, C6, C7, C18, C19), 24.6 (s, C10), 28.2 (s, C1), 29.1 (s, C5), 29.7 (s, C11), 30.6 (s, C17), 40.7 (s, C14), 42.1 (s, C21), 47.1 (s, C9), 57.7 (s, C4, C12, C16), (78.0, C2), 168.6-172.0 (s, C8, C13, C15, C20, C22).
(2)温度応答性複合ポリマーの製造
上記で合成したBoc-Val-Pro-Gly-Val-Gly-OHを樹状ポリマーに結合させて、温度応答性複合ポリマーを製造した。製造のスキームを図2に示す。
(2-1)(Boc-Val-Pro-Gly-Val-Gly)-PAMAMデンドリマーの製造
樹状ポリマーとして、PAMAMデンドリマーG4を用いた。PAMAMデンドリマーG4 17.9 mg (0.0013 mmol)、Boc-Val-Pro-Gly-Val-Gly 63.7 mg (0.12 mmol)、HOAT 9.9 mg (0.071 mmol)を、DMSO/DMF/CH3Cl=3/3/2の混合溶媒320μlに溶かし、HATU 55.8 mg (0.15 mmol)、TEA 85μl (0.62 mmol)を加えて、室温、窒素ガス雰囲気下で3日半撹拌させた。TLCプレート上で反応溶液1滴にニンヒドリン水溶液を吹き付け、ドライヤーで加熱し、紫に呈色しないことを確かめた(ニンヒドリンテスト)。純水1.0 mlを加えて反応を停止させ、メタノール10 mlに溶かし、Sephadex LH-20カラムにより精製を行い、凍結乾燥させて白色固体を得た。収量47.5mg、収率80.6%であった
(2-2)Bocの除去
上記の(Boc-Val-Pro-Gly-Val-Gly)-PAMAMデンドリマーG4 43.8 mg (0.00094 mmol)を、
TFA 1.0mlに溶かし、4℃で4時間静置してBoc基の除去を行った。その後、TFAを減圧留去し、蒸留水を加えて減圧留去を4回繰り返し、凍結乾燥させることにより白色固体((CF3COO- +NH2-Val-Pro-Gly-Val-Gly)-PAMAMデンドリマー)を得た。収量48.2mg、収率94.3%であった。
(2-3)温度応答性複合ポリマーの製造
上記の(CF3COO- +NH2-Val-Pro-Gly-Val-Gly)-PAMAMデンドリマーG4 48.6 mg (0.001 mmol)を無水酢酸4.0 mlに溶かし、オイルバスを用いて40℃で2時間撹拌させた。その後、無水酢酸を減圧留去し、水酸化ナトリウム水溶液と塩酸でpHを7.7に調整してから透析 (分画分子量1000)を行い、凍結乾燥させて白色固体の本発明の温度応答性複合ポリマーを得た(このポリマーを、以下、ロットNo.1のポリマーとも言う)。収量27.7mg、収率63.0%であった。また、NMRによって同定した結果を以下に示す.
1H NMR (400 MHz, D2O): δ0.77-0.82 (m, Hc, Hd, Hl, Hm), 1.35 (s, Ha), 1.70-2.13 (m, Ha, Hb, Hk, Hg, Hh), 2.27 (s, HB, HB'), 2.51 (s, HD'), 2.70 (s, HA, HA'), 3.14 (s, HC, HC', HD), 3.54-4.22 (m, He, Hf, Hi, Hj, Hn, Ho)
上記の複合ポリマーにおいて、フルオレスカミンを用いる第一級アミノ基定量により求めた第1級アミノ基の残存量から、PAMAMデンドリマーG4に結合しているエラスチン様ペプチドの数は62.6と見積もられる。すなわち、上記の複合ポリマーにおいては、PAMAMデンドリマーG4のほぼ全ての末端基にエラスチン様ペプチドが結合している。
なお、合成のスケールを3倍とし、撹拌をオイルバスを用いて30℃で4日間行ったこと以外は、上記の(1-1)〜(2-1)の手順と同様にして(Boc-Val-Pro-Gly-Val-Gly)-PAMAMデンドリマーを製造し、上記(2-2)および(2-3)と同様にして温度応答性複合ポリマーを得た。このポリマーを以下、ロットNo.2のポリマーともいう。
実施例2 温度応答性複合ポリマーの特性
(1)肉眼による観察
実施例1で製造したロットNo.1のポリマーを、水に溶解させて水溶液(1.0 mg/ml)を調製した。この水溶液は、室温では透明であったが、加熱すると白濁した(図3参照)。このことから、上記のポリマーは温度応答性を有することが示された。
(2)円二色性(CD)スペクトル測定
実施例1で製造したロットNo.1のポリマーを10 mMリン酸緩衝溶液 (pH7.4)に溶解させて水性溶液(0.05 mg/ml)を調製した。該溶液を、円二色性分散計(J-820, JASCO社製)を用いて5℃から65℃まで10℃毎に昇温し、円二色性スペクトル測定を行った。なお、各温度では10分間保持した後に測定を行った。温度の調整にはペルチェホルダ (PTC-432L , JASCO)を用いた。なお、詳細な条件を以下に示す。
窒素ガス:4l/min、セル長:0.1 cm、データ取り込み間隔:0.2 nm、走査速度:50 nm/min、レスポンス:1sec、バンド幅:2nm、波長:260 nm〜190 nm、積算回数:10回。
上記の測定で得られたCDスペクトルを、図4に示す。また、196 nmと218 nmにおけるモル楕円率の温度依存性を示すグラフを、図5に示す。
エラスチンは、加熱によりランダムコイル構造からβターン構造へと変化するが、それぞれの構造由来のピークは197 nmと218 nmの負の極大のスペクトルとして現れることが知られている。図4から、197 nmと218 nmに近い波長でそれぞれランダムコイル構造由来のスペクトルとβターン構造由来のスペクトルが得られた。また、図5から、デンドリマーに結合したエラスチン様ペプチドは、加熱によりランダムコイル構造由来のシグナルが減少し、βターン構造由来のシグナルが増加したことが分かる。
これらの結果から、アミノ酸5残基からなるエラスチン様ペプチドを結合させたデンドリマーにおいて、該ペプチドは、加熱によりランダムコイル構造からβターン構造へ変化していることが分かった。すなわち、エラスチン様ペプチドをデンドリマー表面に結合させたことにより、高次構造の形成性が誘起されたと考えられる。
(3)透過率変化の測定
実施例1で製造したロットNo.1のポリマーを、NaClを0、0.15、0.5、1.0または2.0 Mの濃度で含む10 mMリン酸緩衝水溶液(pH 7.4)に溶解させ、水性溶液(1.0 mg/ml)を調製した。
この水性溶液について、紫外・可視分光光度計(V-630, JASCO)を用いて測定波長500 nmの透過率を測定した(昇温速度:1.0℃/min、データ取り込み間隔:0.5℃)。この結果を図6に示す。
図6より、実施例1で得た温度応答性ポリマーは、加熱により、その水性溶液の光の透過率は急激に減少することがわかる。また、水性溶液のNaCl濃度を増加させると、相転移温度が減少した。
また、実施例1で製造したロットNo. 2のポリマーについても、上記と同様にして光の透過率を測定した。そして、相転移温度を透過率が50%となる値として、実施例1で製造したロットNo.1およびNo. 2のポリマーについて、相転移温度と塩濃度との関係を示すグラフを図7に示した。これらの結果から、NaCl濃度と相転移温度には相関があることがわかる。
また、実施例1で製造したロットNo. 2のポリマーを、NaCl 0.15 Mを含む10 mMクエン酸-リン酸水素二ナトリウム緩衝水溶液(pH3.0、4.0、5.0または6.0)に溶解して水性溶液(1.0 mg/ml)を調製し、これを上記と同様に透過率の測定を行った。結果を図8に示す。
図8より、中性付近のpHであるpH6.0またはpH7.4においては、温度応答性ポリマーの相転移温度は35〜42℃の範囲内にあることがわかる。

Claims (6)

  1. 以下の式(I):
    (X1PGX2G)n 式(I)
    [式中、X1はバリンおよびイソロイシンから選択され、X2はプロリンを除くアミノ酸から選択され、Pはプロリンであり、Gはグリシンであり、nは1以上の整数である]
    で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと、樹状ポリマーとを結合させてなり、加熱により疎水性に相転移することを特徴とする温度応答性複合ポリマー。
  2. 前記式(I)中、X1およびX2がバリンである請求項1に記載の温度応答性複合ポリマー。
  3. 加温によって、50℃以下の温度で疎水性に相転移する請求項1又は2に記載の温度応答性複合ポリマー。
  4. 中性領域のpHにおいて37〜45℃の範囲内の温度で疎水性に相転移する請求項1〜3のいずれか1項に記載の温度応答性複合ポリマー。
  5. 前記樹状ポリマーがデンドリマーである請求項1〜4のいずれか1項に記載の温度応答性複合ポリマー。
  6. 前記デンドリマーがポリアミドアミンデンドリマーである請求項1〜5のいずれか1項に記載の温度応答性複合ポリマー。
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