JP2013158342A - 翻訳促進配列およびそれを用いた無細胞タンパク質合成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】無細胞タンパク質合成における翻訳効率を向上し得るDNA断片およびそれを含むタンパク質発現ベクターを提供する。
【解決手段】46塩基からなるMnNPVポワヘドリン遺伝子5’UTRのDNA断片をもとに、5’末端、あるいは3’末端、コザック配列相当部分4塩基を保存した3’末端より2塩基ずつ削除したさまざまなDNA断片を作製し、その解析結果から翻訳反応促進活性を発揮する重要な16塩基を特定した。そして、この配列を2回順方向で繰り返すことにより、そのDNA断片を含む鋳型DNAおよび発現ベクターが、無細胞系タンパク質合成において、特に有用な翻訳反応促進活性を発揮することを見出した。その塩基配列を有するDNA断片、およびそれを含むタンパク質発現ベクターを用いることで、効率的な無細胞タンパク質合成が実現できる。
【選択図】図4
【解決手段】46塩基からなるMnNPVポワヘドリン遺伝子5’UTRのDNA断片をもとに、5’末端、あるいは3’末端、コザック配列相当部分4塩基を保存した3’末端より2塩基ずつ削除したさまざまなDNA断片を作製し、その解析結果から翻訳反応促進活性を発揮する重要な16塩基を特定した。そして、この配列を2回順方向で繰り返すことにより、そのDNA断片を含む鋳型DNAおよび発現ベクターが、無細胞系タンパク質合成において、特に有用な翻訳反応促進活性を発揮することを見出した。その塩基配列を有するDNA断片、およびそれを含むタンパク質発現ベクターを用いることで、効率的な無細胞タンパク質合成が実現できる。
【選択図】図4
Description
本発明は、翻訳反応を促進させる機能を有するDNA断片、それを用いた鋳型DNA、および発現ベクター、それらを鋳型DNAとし転写反応により得られるmRNA、ならびにこれらを用いた無細胞タンパク質合成方法に関する。
近年、ヒトゲノムをはじめとし多くの生物の遺伝情報が解読されてきている。このような中、ポストゲノム研究として、これらの遺伝情報に対応するタンパク質の機能解析やゲノム創薬が注目を集めている。これらの遺伝情報に対応するタンパク質を医薬品開発研究などに利用するには、莫大な種類のタンパク質を短時間で簡単に合成することが必要となってくる。
現在、タンパク質の生産方法には、遺伝子組換え技術によって大腸菌、酵母、昆虫培養細胞、哺乳動物培養細胞などの生細胞を用いる発現系(以下、「細胞系」ということがある)が広く利用されている。しかし、生細胞は自己機能を維持するために外来タンパク質を排除する傾向があり、また生細胞で細胞毒タンパク質を発現すると細胞が生育しないなど発現が困難なタンパク質も多い。
一方、細胞系を使用しないタンパク質の生産方法として、細胞破砕液や抽出液に基質や酵素などを加えるなどして生物の遺伝情報翻訳系または遺伝情報転写/翻訳系を試験管内に取り揃え、反応鋳型として目的タンパク質をコードする構造遺伝子を有するDNA(転写鋳型)またはmRNA(翻訳鋳型)を用いて、アミノ酸を望みの順番に必要な残基数結合させることのできる合成系を再構築する、無細胞系のタンパク質合成が知られている。このような無細胞タンパク質合成では、上記細胞系のタンパク質合成のような制約を受けにくく、生物の命を断つことなくタンパク質の合成を行うことができ、またタンパク質の生産に培養などの操作を伴わないため細胞系と比較して短時間にタンパク質の合成を行うことができる。さらに無細胞系タンパク質合成では、生命体が利用していないアミノ酸配列からなるタンパク質の大量生産も可能となることから、有望な発現方法であると期待されている。このような無細胞系のタンパク質合成に供する抽出液(無細胞系タンパク質合成用抽出液)として、種々の生物由来のものを使用することが検討され、研究が進められている。
ところで真核生物のmRNAは、DNAより転写された後、スプライシングやポリAテールの付加、5’キャップ構造の付加などの様々な修飾が行われていることが知られている。ポリAテールおよび5’キャップ構造の付加により、真核生物mRNAは、リボソームの40sサブユニットへの結合が促進される。したがって従来、真核生物由来の無細胞系タンパク質合成用抽出液を用いる場合、効率的な翻訳反応を行うために、転写反応系に市販のキャップアナログを添加してmRNAのキャッピングを行ってきた。しかし、キャップアナログは高価であり、転写効率を著しく減少させmRNAも少量しか得られないという問題があった。さらに、未反応のキャップアナログは翻訳反応も阻害するため、転写反応終了後にはこの未反応のキャップアナログをスピンカラムなどを用いて完全に除去する必要があり、ハイスループットにサンプルを処理していく上で大きな問題となっていた。
そこで、河原崎らはタバコモザイクウィルス由来の5’非翻訳領域(5’ un translated region、以下「5’UTR」と略す)がキャップ非依存性の(キャップ構造をとることなく)翻訳促進活性を持つことを明らかとした(たとえば、非特許文献1を参照)。非特許文献1では、小麦胚芽抽出液を用いた無細胞系タンパク質合成において、タバコモザイクウィルス由来の5’UTRを、所望のタンパク質をコードする構造遺伝子の5’上流側に付加させたDNAより転写して得られたmRNAを翻訳鋳型として用いたところ、キャップ構造を付加させたmRNAと同様の翻訳効率が得られたことが報告されている。また、ウサギ網状赤血球由来の抽出液を用いた無細胞系タンパク質合成において、ラビットβ−グロビンの5’UTRが同様の作用を持つことも報告されている(たとえば、非特許文献2を参照)。
無細胞系タンパク質合成用抽出液としては、上記小麦胚芽、ウサギ網状赤血球の他、大腸菌、昆虫培養細胞など由来のものが、従来から知られている。我々は、これまで昆虫培養細胞由来の抽出液(昆虫培養細胞抽出液)やカイコ組織由来の抽出液(カイコ抽出液)を使用した無細胞系タンパク質合成方法を提案してきている(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4を参照)。我々が提案する昆虫培養細胞抽出液やカイコ抽出液を用いた無細胞タンパク質合成方法では、従来の方法と比較して、抽出液の調製が格段に容易であり、真核生物由来であるため糖タンパク質の合成も可能であるという利点があり、非常に有用である。したがってこのような抽出液を用いた無細胞系タンパク質合成においても、より迅速かつ高収量に無細胞系タンパク質合成を行い得るべく、キャップ構造に依存しない翻訳促進配列を見出すことは非常に重要な課題であった。
このような背景のもと、特に昆虫由来の無細胞タンパク質合成系においてキャップ構造に依存しない翻訳促進能を有するMnNPV(Malacosma neustria nucleopolyhedrovirus)のポリヘドリン遺伝子の5’UTRの塩基配列が見出され、そのDNA配列を用いることでタンパク質合成能の改善が認められている(たとえば、特許文献5、特許文献6、特許文献7)。しかしながら、タンパク質合成量が依然低く、さらなる合成量の向上が重要な課題となっていた。また、所望の遺伝子を簡便かつ迅速にクローニングできる合成量の向上が達成できる発現ベクターを構築することに関しても重要な課題となっていた。
河原崎et al,「Biotechol.Prog」Vol.3,p517−521(2000).
Annweiler et al,「Nucleic acids Res」Vol.3,p3750(1991).
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、昆虫培養細胞抽出液またはカイコ抽出液といった節足動物由来の抽出物を含む無細胞タンパク質合成用抽出液を用いた無細胞タンパク質合成において、キャップ構造に依存することなく翻訳効率を向上し得るDNA断片を提供することである。さらに、翻訳効率を向上し得るDNA断片を含むタンパク質発現ベクターを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕無細胞タンパク質合成系において翻訳反応促進のために使用される、以下の(a)〜(b)のいずれかのDNA断片。
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、かつ翻訳反応促進活性を有するDNA断片。
〔2〕無細胞タンパク質合成系において翻訳反応促進のために使用される、以下の(a)〜(b)のいずれかのDNA断片が順方向に2個組み合わされたDNA断片。
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、かつ翻訳反応促進活性を有するDNA断片。
〔3〕無細胞タンパク質合成系において翻訳反応促進のために使用される、以下の(a)〜(b)のいずれかのDNA断片が順方向にn個組み合わされたDNA断片。
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、かつ翻訳反応促進活性を有するDNA断片。
〔4〕無細胞タンパク質合成系において翻訳反応促進のために使用される、以下の(a)〜(b)のいずれかのDNA断片が逆方向にn個組み合わされたDNA断片。
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、かつ翻訳反応促進活性を有するDNA断片。
〔5〕無細胞タンパク質合成系において翻訳反応促進のために使用される、以下の(a)〜(b)のいずれかのDNA断片が順方向および逆方向を問わずn個組み合わされたDNA断片。
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、かつ翻訳反応促進活性を有するDNA断片。
〔6〕無細胞タンパク質合成系における転写鋳型として使用される、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のDNA断片を含む鋳型DNA。
〔7〕無細胞タンパク質合成における転写鋳型として使用される、上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のDNA断片を含む発現ベクター。
〔8〕上記〔6〕〜〔7〕に記載された鋳型DNAまたは発現ベクターより転写して得られるmRNAであって、無細胞タンパク質合成における翻訳鋳型として使用されるmRNA。
〔9〕上記〔6〕〜〔7〕に記載された鋳型DNAまたは発現ベクターを用いた無細胞タンパク質合成方法。
〔10〕動物由来の抽出物を含有する無細胞系タンパク質合成反応液を用いた、上記〔9〕に記載の無細胞タンパク質合成方法。
〔11〕動物由来の抽出物が節足動物から抽出されたものである、上記〔10〕に記載の無細胞タンパク質合成方法。
〔12〕節足動物が昆虫培養細胞である、上記〔11〕に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
〔13〕昆虫培養細胞がTrichoplusia niの卵細胞由来及び/又はSpodoptera frugiperda卵巣細胞由来の細胞である、上記〔12〕に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
〔14〕節足動物が昆虫組織である、上記〔11〕に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
〔15〕昆虫組織がカイコ組織である、上記〔14〕に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
〔16〕動物由来の抽出物が哺乳動物細胞から抽出されたものである、上記〔10〕に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
〔17〕哺乳動物細胞が哺乳動物培養細胞である、上記〔16〕に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
〔18〕哺乳動物培養細胞が、Chinese hamster ovary細胞である上記〔17〕に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
〔19〕哺乳動物細胞がウサギ網状赤血球である、上記〔17〕に記載の無細胞タンパク質合成方法。
〔20〕コムギ胚芽由来の抽出物を含有する無細胞系タンパク質合成反応液を用いた、上記〔9〕に記載の無細胞タンパク質合成方法。
〔21〕上記〔7〕〜〔20〕のいずれかに記載の発現ベクターを含む無細胞系タンパク質合成用キット。
〔1〕無細胞タンパク質合成系において翻訳反応促進のために使用される、以下の(a)〜(b)のいずれかのDNA断片。
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、かつ翻訳反応促進活性を有するDNA断片。
〔2〕無細胞タンパク質合成系において翻訳反応促進のために使用される、以下の(a)〜(b)のいずれかのDNA断片が順方向に2個組み合わされたDNA断片。
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、かつ翻訳反応促進活性を有するDNA断片。
〔3〕無細胞タンパク質合成系において翻訳反応促進のために使用される、以下の(a)〜(b)のいずれかのDNA断片が順方向にn個組み合わされたDNA断片。
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、かつ翻訳反応促進活性を有するDNA断片。
〔4〕無細胞タンパク質合成系において翻訳反応促進のために使用される、以下の(a)〜(b)のいずれかのDNA断片が逆方向にn個組み合わされたDNA断片。
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、かつ翻訳反応促進活性を有するDNA断片。
〔5〕無細胞タンパク質合成系において翻訳反応促進のために使用される、以下の(a)〜(b)のいずれかのDNA断片が順方向および逆方向を問わずn個組み合わされたDNA断片。
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、かつ翻訳反応促進活性を有するDNA断片。
〔6〕無細胞タンパク質合成系における転写鋳型として使用される、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のDNA断片を含む鋳型DNA。
〔7〕無細胞タンパク質合成における転写鋳型として使用される、上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のDNA断片を含む発現ベクター。
〔8〕上記〔6〕〜〔7〕に記載された鋳型DNAまたは発現ベクターより転写して得られるmRNAであって、無細胞タンパク質合成における翻訳鋳型として使用されるmRNA。
〔9〕上記〔6〕〜〔7〕に記載された鋳型DNAまたは発現ベクターを用いた無細胞タンパク質合成方法。
〔10〕動物由来の抽出物を含有する無細胞系タンパク質合成反応液を用いた、上記〔9〕に記載の無細胞タンパク質合成方法。
〔11〕動物由来の抽出物が節足動物から抽出されたものである、上記〔10〕に記載の無細胞タンパク質合成方法。
〔12〕節足動物が昆虫培養細胞である、上記〔11〕に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
〔13〕昆虫培養細胞がTrichoplusia niの卵細胞由来及び/又はSpodoptera frugiperda卵巣細胞由来の細胞である、上記〔12〕に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
〔14〕節足動物が昆虫組織である、上記〔11〕に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
〔15〕昆虫組織がカイコ組織である、上記〔14〕に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
〔16〕動物由来の抽出物が哺乳動物細胞から抽出されたものである、上記〔10〕に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
〔17〕哺乳動物細胞が哺乳動物培養細胞である、上記〔16〕に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
〔18〕哺乳動物培養細胞が、Chinese hamster ovary細胞である上記〔17〕に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
〔19〕哺乳動物細胞がウサギ網状赤血球である、上記〔17〕に記載の無細胞タンパク質合成方法。
〔20〕コムギ胚芽由来の抽出物を含有する無細胞系タンパク質合成反応液を用いた、上記〔9〕に記載の無細胞タンパク質合成方法。
〔21〕上記〔7〕〜〔20〕のいずれかに記載の発現ベクターを含む無細胞系タンパク質合成用キット。
本発明によれば、節足動物由来の抽出物を含む無細胞系タンパク質合成用抽出液を用いた無細胞系タンパク質合成において、キャップ構造に依存することなく翻訳効率を向上し得るDNA断片を提供することができる。さらに、本発明は、このDNA断片を利用した鋳型DNA、発現ベクター、mRNA、無細胞系タンパク質合成用反応液、これらの一部あるいはすべてを含有する無細胞タンパク質合成キットをも提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のDNA断片は、キャップ構造に依存することなく、無細胞系タンパク質合成において翻訳反応を促進する機能を有するものである。ここで「翻訳反応を促進」とは、本発明のDNA断片を含む鋳型DNAあるいはタンパク質発現ベクターを使用して無細胞系タンパク質合成反応を行うことで、このDNA断片を使用しなかった場合と比較して、タンパク質合成量が向上されることを指す。
本発明のキャップ非依存性の翻訳反応促進活性を有するDNA断片としては、具体的には、配列表の配列番号1に示される塩基配列を順方向に2回繰り返した二本鎖DNA断片が挙げられる。この配列番号1の塩基配列は、バキュロウイルスMnNPV(Malacosmaneustria nucleopolyhedrovirus)のポリヘドリン遺伝子の5’非翻訳領域(5’UTR)の3’末端から16塩基までの配列として公知の塩基配列である。本発明は、46塩基からなるMnNPVポリヘドリン遺伝子5’UTRのDNA断片をもとに、5’末端、あるいは3’末端、コザック配列相当部分4塩基を保存した3’末端より2塩基ずつ削除したさまざまなDNA断片を作製し、その解析結果から翻訳反応促進活性を発揮する重要な16塩基を見出し、その配列を2回順方向で繰り返すことにより、そのDNA断片を含む鋳型DNAおよび発現ベクターが、無細胞系タンパク質合成において、特に有用な翻訳反応促進活性を発揮することを見出したものである。なお、本発明におけるDNA断片は、バキュロウイルスMnNPVのポリヘドリン遺伝子の5’UTR)の3’末端から16塩基までの配列に由来するものであれば、上記塩基配列を必ずしも有してなくともよい。また、本発明のDNA断片は従来公知のいかなる方法により得られてもよい。たとえば、公知のDNA合成機を用いて合成することができる。
本発明のDNA断片は、タンパク質をコードする構造遺伝子の5’上流側に1または複数個組み込まれ、鋳型DNAとして構築されるのが好ましい。かかる鋳型DNAも、本発明に包含される。本発明の鋳型DNAは、環状でも直鎖状であってもよい。本発明の鋳型DNAにおいて、上記DNA断片は、構造遺伝子の5’上流側において、順方向(5’→3’)に組み込まれてもよいし、逆方向(3’→5’)に組み込まれてもよい。また、本発明の鋳型DNAにおいては、2個以上のDNA断片が組み込まれたものであってもよく、その場合、組み込まれたDNA断片は同じものであっても互いに異なるものであってもよい。また、2個以上のDNA断片が組み込まれた場合、全てのDNA断片が同じ方向に組み込まれていなくともよい。DNA断片は、構造遺伝子の5’上流側において、構造遺伝子に隣り合うように組み込まれてもよいし、構造遺伝子との間に1塩基以上の塩基配列を介在させた状態で組み込まれてもよい。かかる鋳型DNAは、公知の遺伝子操作技術を適用することで適宜構築することができる。
本発明の鋳型DNAにおける構造遺伝子は、無細胞系にて合成させる目的タンパク質をコードする領域である。構造遺伝子がコードするタンパク質(ペプチドを含む)に特に制限はなく、生細胞で細胞毒となるタンパク質をコードする塩基配列を有するものであってもよいし、また糖タンパク質をコードする塩基配列を有するものであってもよい。
本発明の鋳型DNAは、DNA断片の5’上流側に、通常、プロモーター配列を有する。プロモーター配列としては、たとえば、従来公知のT7プロモーター配列、SP6プロモーター配列、T3プロモーター配列などが挙げられる。
また、本発明の鋳型DNAは、上記構造遺伝子の3’下流側に転写を終結させる機能を有するターミネーター配列、および/または、合成されたmRNAの安定性などの観点からポリA配列を有しているのが好ましい。上記ターミネーター配列としては、たとえば、従来公知のT7ターミネーター配列、SP6ターミネーター配列、T3ターミネーター配列などが挙げられる。
なお、本発明の鋳型DNAのうち、顕著な翻訳反応促進活性を発揮し、特に好適なものとして以下のものが例示される。
(1)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に順方向に1個組み込まれた鋳型DNA;
(2)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に順方向に2個組み込まれた鋳型DNA;
(3)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に順方向に3個組み込まれた鋳型DNA;
(4)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に順方向に4個組み込まれた鋳型DNA;
(5)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に逆方向に1個組み込まれた鋳型DNA;
(6)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に逆方向に2個組み込まれた鋳型DNA;
(7)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に逆方向に3個組み込まれた鋳型DNA;
(8)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に逆方向に4個組み込まれた鋳型DNA;
(9)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に順方向に1個および逆方向に1個組み込まれた鋳型DNA;
(10)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に順方向に2個、逆方向に1個組み込まれた鋳型DNA;
(11)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に順方向に1個、逆方向に2個組み込まれた鋳型DNA;
(12)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に順方向に2個、逆方向に2個組み込まれた鋳型DNA。
(1)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に順方向に1個組み込まれた鋳型DNA;
(2)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に順方向に2個組み込まれた鋳型DNA;
(3)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に順方向に3個組み込まれた鋳型DNA;
(4)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に順方向に4個組み込まれた鋳型DNA;
(5)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に逆方向に1個組み込まれた鋳型DNA;
(6)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に逆方向に2個組み込まれた鋳型DNA;
(7)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に逆方向に3個組み込まれた鋳型DNA;
(8)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に逆方向に4個組み込まれた鋳型DNA;
(9)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に順方向に1個および逆方向に1個組み込まれた鋳型DNA;
(10)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に順方向に2個、逆方向に1個組み込まれた鋳型DNA;
(11)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に順方向に1個、逆方向に2個組み込まれた鋳型DNA;
(12)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、構造遺伝子の5’上流側に順方向に2個、逆方向に2個組み込まれた鋳型DNA。
上述してきた本発明の鋳型DNAは、無細胞系タンパク質合成における転写鋳型として好適に使用することができる。すなわち、無細胞系タンパク質合成は、一般に、mRNA(翻訳鋳型)の情報を読み取ってタンパク質を合成する無細胞翻訳系のみによるタンパク質合成(翻訳系)、ならびに鋳型DNA(転写鋳型)よりmRNAを転写する転写工程と、該転写工程で得られたmRNAの情報を読み取ってタンパク質を合成する翻訳工程とを含むタンパク質合成(転写/翻訳系)とに大きく分けられるが、本発明の鋳型DNA、および発現バクターは、このうち転写/翻訳系の無細胞系タンパク質合成における転写鋳型として好適に使用することができる。
また本発明の鋳型DNAを転写して得られたmRNAは、翻訳系の無細胞系タンパク質合成における翻訳鋳型として好適に使用することができる。このような上記鋳型DNAを転写して得られたmRNAも、本発明の範囲に包含される。本発明のmRNAは、従来公知の適宜の方法にて上記鋳型DNAを転写して調製することができるが、自体公知のインビトロ転写によって上記鋳型DNAを転写し、調製するのが好ましい。インビトロ転写は、たとえば、RiboMax Large Scale RNA production System−T7(プロメガ社製)などを利用して行うことができる。mRNAは、転写後、自体公知の方法にて精製して単離し、後述するように無細胞系タンパク質合成用の翻訳鋳型として、翻訳系用反応液に適用することができる。
また、上記鋳型DNAまたはそれを転写して得られたmRNAを反応鋳型として用いる無細胞系タンパク質合成用反応液も、本発明に包含される。本発明の無細胞系タンパク質合成用反応液は、上記翻訳系の合成反応を行うための反応液(以下、「翻訳系用反応液」と呼ぶ。)、上記転写/翻訳系の合成反応を行うための反応液(以下、「転写/翻訳系用反応液」と呼ぶ。)のいずれの形態であってもよい。すなわち、上記鋳型DNAを転写鋳型として含有する転写/翻訳系用反応液であってもよいし、上記鋳型DNAより転写して得られるmRNAを翻訳鋳型として含有する翻訳系用反応液であってもよい。
本発明の発現ベクターは、タンパク質発現系において、翻訳反応促進活性を有するDNA断片を含むものである。ここで「翻訳反応促進活性を有する」とは、本発明の発現ベクターを使用して無細胞系タンパク質合成反応を行うことで、この翻訳反応を促進するDNA断片を使用しなかった場合と比較して、タンパク質合成量が向上されることを指す。
上記翻訳反応を促進するDNA断片の効果を簡便に検出する手段として無細胞タンパク質合成系を用いているが、本発明の発現ベクターは無細胞系に限定されることはなく、従来公知の細胞系においても使用できる。本発明の発現ベクターに含まれるDNA断片は従来公知のいかなる方法により得られてもよい。たとえば、公知のDNA合成機を用いて合成することができる。
上記翻訳反応を促進するDNA断片の効果を簡便に検出する手段として無細胞タンパク質合成系を用いているが、本発明の発現ベクターは無細胞系に限定されることはなく、従来公知の細胞系においても使用できる。本発明の発現ベクターに含まれるDNA断片は従来公知のいかなる方法により得られてもよい。たとえば、公知のDNA合成機を用いて合成することができる。
なお、本発明の発現ベクターに含まれる翻訳反応促進活性を有するDNA断片のうち、顕著な翻訳反応促進活性を発揮し、特に好適なものとして以下のものが例示される。
(1)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に1個組み込まれた発現ベクター;
(2)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に2個組み込まれた発現ベクター;
(3)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に3個組み込まれた発現ベクター;
(4)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に4個組み込まれた発現ベクター;
(5)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に逆方向に1個組み込まれた発現ベクター;
(6)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に逆方向に2個組み込まれた発現ベクター;
(7)配列番号7に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に逆方向に3個組み込まれた発現ベクター;
(8)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に逆方向に4個組み込まれた発現ベクター;
(9)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に1個、逆方向に1個組み込まれた発現ベクター;
(10)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に2個、逆方向に1個組み込まれた発現ベクター;
(11)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に1個、逆方向に2個組み込まれた発現ベクター;
(12)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に2個、逆方向に2個組み込まれた発現ベクター。
(1)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に1個組み込まれた発現ベクター;
(2)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に2個組み込まれた発現ベクター;
(3)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に3個組み込まれた発現ベクター;
(4)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に4個組み込まれた発現ベクター;
(5)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に逆方向に1個組み込まれた発現ベクター;
(6)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に逆方向に2個組み込まれた発現ベクター;
(7)配列番号7に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に逆方向に3個組み込まれた発現ベクター;
(8)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に逆方向に4個組み込まれた発現ベクター;
(9)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に1個、逆方向に1個組み込まれた発現ベクター;
(10)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に2個、逆方向に1個組み込まれた発現ベクター;
(11)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に1個、逆方向に2個組み込まれた発現ベクター;
(12)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、またはそれと均等な塩基配列を有し且つ翻訳反応促進活性を有するDNA断片が、プロモーター配列の3’下流側に順方向に2個、逆方向に2個組み込まれた発現ベクター。
本発明の発現ベクターは上記DNA断片の5’上流側に、通常プロモーター配列を少なくとも一つ有する。プロモーター配列としては、たとえば、従来公知のT7プロモーター配列、SP6プロモーター配列、T3プロモーター配列などが挙げられる。
本発明の発現ベクターは、上記DNA断片を一つまたは複数個含む。上記DNA断片は、プロモーター配列の3’下流側において、順方向(5’→3’)に組み込まれてもよいし、逆方向に組み込まれてもよい。複数個の上記DNA断片を含む場合、上記DNA断片は同じものであっても互いに異なるものであってもよい。また、2個以上のDNA断片が組み込まれた場合、全てのDNA断片が同じ方向に組み込まれていなくともよい。
また、本発明の発現ベクターは、発現させるタンパク質をコードする構造遺伝子を挿入するための配列を有する。挿入させるための配列としては、従来公知のマルチクローニングサイトや、相同性組み換え反応を起こす配列などが挙げられる。かかるタンパク質をコードする構造遺伝子を挿入させるための配列は、上記翻訳反応促進活性を有するDNA断片の3’下流側に組み込まれる。かかる構造遺伝子を挿入するための配列に、発現させたタンパク質の精製を容易にするという観点から従来公知のヒスチジンタグや、GSTタグをコードする塩基配列などを付加させてもよい。
また、本発明の発現ベクターは上記タンパク質をコードする構造遺伝子を挿入させるための配列の3’下流側に、合成されたmRNAの安定性などの観点から3’非翻訳領域(3UTR)およびポリA配列を有しているのが好ましい。
また、本発明の発現ベクターは上記ポリA配列の3’下流側に転写を終結させる機能を有するターミネーター配列を有していることが好ましい。上記ターミネーター配列としては、たとえば、従来公知のT7ターミネーター配列、SP6ターミネーター配列、T3ターミネーター配列などが挙げられる。
また、本発明の発現ベクターは、宿主内で安定に保持されるために薬剤耐性マーカーを有する。薬剤耐性マーカーとしては、たとえば従来公知のアンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子などが挙げられる。
また、本発明の発現ベクターは、宿主内で自立複製を行うために複製起点を有する。複製起点としては、たとえば従来公知のpBR322 Ori、pUC Ori、SV40Oriなどが挙げられる。また、シャトルベクターとして使用できるように、異なる宿主間で機能する複製起点を有していてもよい。上記発現ベクターは、従来公知の遺伝子組み換え技術を用いて作製することができる。
上述してきた本発明の発現ベクターに、無細胞系にて合成させる目的タンパク質(ペプチドを含む)をコードする構造遺伝子を挿入する。構造遺伝子がコードするタンパク質(ペプチドを含む)に特に制限はなく、生細胞で細胞毒となるタンパク質をコードする塩基配列を有するものであってもよいし、糖タンパク質をコードする塩基配列を有するものであってもよいし、融合タンパク質をコードする塩基配列であってもよい。また発現させたタンパク質の精製を容易にするという観点から従来公知のヒスチジンタグや、GSTタグをコードする塩基配列などを付加させてもよい。これらのタグ配列は通常目的タンパク質のN末端またはC末端に付加される。なお構造遺伝子は、その塩基数に特に制限はなく、目的とするタンパク質を合成し得るならば全てが同じ塩基数でなくともよい。また、目的とするタンパク質を合成し得る程度に相同な配列であれば、各構造遺伝子は、複数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加されたものであってよい。
上記本発明の発現ベクターに、目的タンパク質(ペプチドを含む)をコードする構造遺伝子を挿入したベクター(以下鋳型DNA)は、細胞系および無細胞系において使用することができる。本発明は、上記本発明の発現ベクターを使用したタンパク質合成方法も含まれる。細胞系において鋳型DNAを使用する場合、従来公知の方法で、宿主となる生物に鋳型DNAを導入し形質転換体を得る。この際に使用する宿主はいかなる生物種を用いてもよい。中でも本発現ベクターに含まれる翻訳促進作用を有するDNA断片は、カイコまたはバキュロウィルス由来であることから、バキュロウィルス発現系やカイコを用いた細胞系において特に好適に使用することができる。無細胞系タンパク質合成は、一般に、mRNAの情報を読み取ってタンパク質を合成する無細胞翻訳系のみによるタンパク質合成(翻訳系)、ならびにDNAよりmRNAを転写する転写工程と、該転写工程で得られたmRNAの情報を読み取ってタンパク質を合成する翻訳工程とを含むタンパク質合成(転写/翻訳系)とに大きく分けられるが、上記鋳型DNAは、いずれの系においても好適に使用することができる。
無細胞系タンパク質合成用反応液には、通常、翻訳装置としてのリボソームなどを含有する生体由来抽出物が含まれる。本発明の無細胞系タンパク質合成用反応液に含まれる抽出物は、翻訳鋳型を翻訳して該鋳型にコードされるタンパク質を生成させ得るものであれば如何なるものであってもよく、従来公知の大腸菌、・コムギ、オオムギ、イネ、コーン等のイネ科の植物、及びホウレンソウなど植物種子の胚芽、ウサギ網状赤血球などから抽出された抽出物、抽出液を特に制限なく使用することができる。これらは市販のものを用いることもできるし、それ自体既知の方法、具体的には、大腸菌抽出液の場合、Zubay G「Ann.Rev.Genet」Vol.7,p267−287(1973)などに記載の方法等に準じて調製することもできる。市販のタンパク質合成用細胞抽出液としては、大腸菌由来では、E.coli S 30 extract for linear templates(プロメガ社製)などが挙げられ、ウサギ網状赤血球由来ではrabbitreticulocyte lysate systems(プロメガ社製)など、コムギ胚芽由来ではwheat germ extract(プロメガ社製)、WEPRO(セルフリーサイエンス社製)などが挙げられる。
このように上記鋳型DNAを用いた無細胞系タンパク質合成用反応液には、上述のような公知の抽出物、抽出液が含まれていてもよいが、本発明者らが提案してきている動物由来の抽出物が含まれているものであることが好ましい。動物由来の抽出物としては節足動物由来の抽出物、哺乳動物培養細胞由来の抽出物などが挙げられる。
ここで「節足動物」とは、後生動物の一門であって、左右相称、裂体腔を有する旧口動物を指し、鋏角亜門、大顎亜門のいずれに属するものであってもよく、たとえば、昆虫綱、クモ綱などに属する動物を包含する。中でも、昆虫綱またはクモ綱(特に、クモ亜綱)に属する節足動物が好ましく、昆虫綱に属する節足動物が特に好ましい。昆虫綱に属する節足動物としては、たとえば、鱗翅目(チョウ目)、直翅目、双翅目、膜翅目、鞘翅目、甲虫目、脈翅目、半翅目などに属するものが挙げられ、特に制限されるものではないが、中でも、カイコガ科、ヤガ科などの鱗翅目に属するものが好適に使用される。本発明における翻訳反応用溶液中に含有される上記抽出物は、上記節足動物由来であるならば、成長段階のいずれを問わずいかなる組織から抽出されたものであってもよく、また、節足動物のいずれの組織由来の培養細胞より抽出されたものであってもよい。中でも、昆虫培養細胞またはカイコ組織から抽出されたものであるのが特に好ましい。
市販の昆虫培養細胞抽出液としては、Transdirect insect cell(島津製作所製)、TnT T7insect cell extract protein expression system(プロメガ社製)、EasyXpress insect IIextract(キアゲン社製)などが挙げられる。カイコ組織から抽出された抽出液としては、上述のように、特許第4243762号明細書、特許第4244625号明細書、特許第4244628号明細書に挙げられた方法で調製されたものが挙げられる。なお、節足動物由来の抽出液はこれらの技術により作製されたものに限定されない。
また上記哺乳動物培養細胞由来の抽出液として、特に制限はなく、たとえば、ヒト、ラット、マウス、サルなどの従来公知の適宜の哺乳動物由来の培養細胞を使用することができる。また、哺乳動物培養細胞としては、いかなる組織由来の細胞であってもよく、たとえば、血球細胞、生殖巣由来細胞、リンパ腫(リンホーマ)由来細胞、その他の腫瘍細胞、幹細胞などを特に制限なく使用することができる。中でも浮遊培養が可能であるため、培養および継代が容易であることから、リンパ腫由来細胞を使用するのが好ましい。また、Chinese hamster ovary(CHO) K1−SFM細胞は、浮遊培養が可能であるだけでなく、無血清培地にて培養が可能であり、より培養および継代が容易である。さらに、細胞系において広く利用され、高いタンパク質合成能を有しており、無細胞系においても同様のことが期待できることから、CHO K1−SFM細胞を使用するのが好ましい。また単一種の哺乳動物における単一の組織由来の哺乳動物培養細胞に限らず、単一種の哺乳動物における複数種の組織由来の哺乳動物培養細胞より抽出を行ってもよく、複数種の哺乳動物における単一の組織由来の哺乳動物培養細胞より抽出を行ってもよく、無論、複数種の哺乳動物における複数種の組織由来の哺乳動物培養細胞より抽出を行ってもよい。哺乳動物培養細胞から抽出された抽出液としては、特許第4389870号明細書に挙げられた方法で調製されたものが挙げられる。なお、哺乳動物由来の抽出液はこの技術により作製されたものに限定されない。
無細胞系タンパク質合成反応液においては、たとえば上述の節足動物由来または哺乳動物培養細胞抽出液を用いて調製する。上記反応液は上記抽出液を10(v/v)%〜80(v/v)%、特には30(v/v)%〜60(v/v)%含有するように調製されたものであるのが好ましい。すなわち、反応液の全体において、上記節足動物由来または哺乳動物培養細胞由来の抽出物の含有量が、タンパク質濃度で0.1mg/mL〜160mg/mLとなるように調製されるのが好ましく、3mg/mL〜60mg/mLとなるように調製されるのがより好ましい。当該抽出物の含有量がタンパク質濃度で0.1mg/mL未満または160mg/mLを越えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。尚、当該抽出物の含有量が上記範囲なら、上記節足動物由来または哺乳動物細胞由来の抽出液を単独で用いてもよいし、異なる抽出液を混合してもよい。また異なる抽出液を混合する場合はいかなる割合であってもよい。
上記節足動物由来の抽出物を含有する抽出液を用いた場合における翻訳系用反応液、転写/翻訳系用反応液において、特に制限はなく従来公知の適宜の成分を含有していてもよい。中でも短時間で大量のタンパク質が合成できるという観点から翻訳系用反応液において、培養細胞由来抽出液の場合、特許第4324730号明細書、カイコ組織由来の翻訳系用反応液の場合、特許第4244625号明細書記載の成分が含有されることが好ましい。また転写/翻訳系用反応液の場合、例えば特許第4244628号明細書記載の成分か含有される。
上記哺乳動物培養細胞由来の抽出物を含有する抽出液を用いた無細胞系タンパク質合成反応液は、特に制限はなく従来公知の適宜の成分を含有していてもよい。中でも短時間で大量のタンパク質が合成できるという観点から翻訳系用反応液において、特許第4389870号明細書記載の成分が含有されることが好ましい。
上記反応液に用いる外来mRNAとは、鋳型DNA(本発明の発現ベクターに目的タンパク質をコードする構造遺伝子が挿入されたもの)より転写したmRNAを指し、コードするタンパク質(ペプチドを含む)に特に制限はなく、毒性を有するタンパク質をコードするものであってもよいし、糖タンパク質をコードするものであってもよいし、融合タンパク質をコードする塩基配列であってもよいし、また発現させたタンパク質の精製を容易にするという観点から従来公知のヒスチジンタグや、GSTタグをコードする塩基配列などを付加させてもよい。これらのタグ配列は通常目的タンパク質のN末端またはC末端付加される。なお反応液に用いる外来mRNAは、その塩基数に特に制限はなく、目的とするタンパク質を合成し得るならばmRNA全てが同じ塩基数でなくともよい。また、目的とするタンパク質を合成し得る程度に相同な配列であれば、各mRNAは、複数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加されたものであってよい。
反応液中において、外来mRNAは、タンパク質合成の速度の観点から、1μg/mL〜1000μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜500μg/mL含有されることがより好ましい。外来mRNAが1μg/mL未満または1000μg/mLを越えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
当該反応液中におけるカリウム塩としては、抽出用液の成分として上述した各種のカリウム塩、好適には酢酸カリウム、を好ましく使用できる。カリウム塩は、上述した抽出用液におけるカリウム塩の場合と同様の観点から、当該反応液中において、10mM〜500mM含有されることが好ましく、20mM〜300mM含有されることがより好ましい。
当該反応液中におけるマグネシウム塩としては、抽出用液の成分として上述した各種のマグネシウム塩、好適には酢酸マグネシウム、を好ましく使用できる。マグネシウム塩は、上述した抽出液におけるマグネシウム塩の場合と同様の観点から、当該反応液中において、0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.5mM〜5mM含有されることがより好ましい。
当該反応液中におけるDTTは、上述した抽出用液におけるDTTの場合と同様の観点から、0.1mM〜10mM含有されることが好ましく、0.5mM〜5mM含有されることがより好ましい。
当該反応液中におけるアデノシン三リン酸(以下、「ATP」ということがある。)は、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。ATPが0.01mM未満または10mMを越えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
当該反応液中におけるグアノシン三リン酸(以下、「GTP」ということがある。)は、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において0.01mM〜10mM含有されることが好ましく、0.05mM〜5mM含有されることがより好ましい。GTPが0.01mM未満または10mMを越えると、タンパク質合成の速度が低下する傾向にあるためである。
当該反応液中におけるクレアチンリン酸は、タンパク質を継続的に合成するための成分であって、ATPとGTPを再生する目的で配合される。クレアチンリン酸は、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜100mM含有されることがより好ましい。クレアチンリン酸が1M未満であると、充分な量のATPとGTPが再生されにくく、結果としてタンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためであり、またクレアチンリン酸が200mMを越えると、阻害物質として働き、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
当該反応液中におけるクレアチンキナーゼは、タンパク質を継続的に合成するための成分であって、クレアチンリン酸と共にATPとGTPを再生する目的で配合される。クレアチンキナーゼは、タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1μg/L〜1000μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜500μg/mL含有されることがより好ましい。クレアチンキナーゼが1μg/mL未満であると、充分な量のATPとGTPが再生されにくく、結果としてタンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためであり、またクレアチンキナーゼが1000μg/mLを越えると、阻害物質として働き、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
当該反応液中におけるアミノ酸成分は、20種類のアミノ酸、すなわち、バリン、メチオニン、グルタミン酸、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、グリシン、プロリン、イソロイシン、トリプトファン、アスパラギン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、チロシン、リシン、グルタミン、シスチン、アルギニン、の20種類のアミノ酸を少なくとも含有する。このアミノ酸には、ラジオアイソトープ標識されたアミノ酸も含まれる。さらに、必要に応じて、修飾アミノ酸を含有していてもよい。当該アミノ酸成分は、通常、各種類のアミノ酸を概ね等量ずつ含有してなる。タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において上記のアミノ酸成分が1μM〜1000μM含有されることが好ましく、10μM〜200μM含有されることがより好ましい。アミノ酸成分が1μM未満または1000μMを越えると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあるためである。
反応液に含有される緩衝剤としては、上述した抽出液と同様のものが好適に使用でき、同様の理由から、HEPES−KOH(pH6〜8.5)を使用するのが好ましい。また、緩衝剤は、上述した抽出液における緩衝剤の場合と同様の観点から、5mM〜200mM含有されることが好ましく、10mM〜100mM含有されることがより好ましい。
さらに、反応液においては、RNaseインヒビターがさらに添加されたものであるのが好ましい。RNaseインヒビターは、抽出液に混在する哺乳動物培養細胞由来のRNaseによって、無細胞タンパク質合成の際に外来mRNAやtRNAが不所望に消化されて、タンパク質の合成を妨げるのを防ぐ目的で配合されるものであり、当該反応液中において0.1U/μL〜100U/μL含有されることが好ましく、0.5U/μL〜10U/μL含有されることがより好ましい。
さらに、反応液においては、tRNAがさらに添加されたものであるのが好ましい。tRNAは、上記20種類のアミノ酸に対応した種類のtRNAを概ね等量ずつ含有してなる。タンパク質合成の速度の観点から、当該反応液中において1μg/mL〜1000μg/mL含有されることが好ましく、10μg/mL〜500μg/mL含有されることがより好ましい。
さらに、反応液においては、カルシウム塩がさらに添加されたものであるのが好ましい。カルシウム塩としては、抽出用液の成分として上述した各種のカルシウム塩、好適には、塩化カルシウム、を好ましく使用できる。カルシウム塩は、上述した抽出用液におけるカルシウム塩の場合と同様の観点から、当該反応液中において、0.05mM〜10mM含有されることが好ましく、0.1mM〜5mM含有されることがより好ましい。
すなわち、哺乳動物培養細胞由来の抽出液を使用した反応液としては、当該抽出液を30(v/v)%〜60(v/v)%含有するとともに、20mM〜300mMの酢酸カリウム、0.5mM〜5mMの酢酸マグネシウム、0.5mM〜5mMのDTT、0.1mM〜5mMのATP、0.05mM〜5mMのGTP、10mM〜100mMのクレアチンリン酸、10μg/mL〜500μg/mLのクレアチンキナーゼ、10μM〜200μMのアミノ酸成分、10μg/mL〜500μg/mLの外来mRNA、10mM〜100mMのHEPES−KOH(pH6〜8.5)を含有するように実現されるのが好ましい。また、上記に加えてさらに0.5U/μL〜10U/μLのRNaseインヒビター、10μg/mL〜500μg/mLのtRNA、0.1mM〜5mMの塩化カルシウムを含有するように実現されるのがより好ましい。
上記節足動物由来の抽出液または哺乳動物培養細胞抽出液を含有する反応液を用いた無細胞タンパク質合成反応は、従来公知のたとえば低温恒温槽にて行う。反応温度は、通常、10℃〜40℃、好ましくは20℃〜30℃の範囲内である。反応温度が10℃末満であると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあり、また反応温度が40℃を越えると、必須な成分が変性する傾向にあるためである。反応の時間は、通常、1時間〜72時間、好ましくは3時間〜24時間である。
また、哺乳動物培養細胞抽出液を含有する反応液を用いた無細胞タンパク質合成の場合、合成反応を行う前に、抽出液にmRNA以外の反応液組成の成分を加えた状態において、一定時間保温を行うのが好ましい。保温は、従来公知のたとえば低温恒温槽にて行う。保温時間は、通常、0℃〜50℃、好ましくは15℃〜37℃の範囲である。保温温度が0℃未満であると保温の効果が得られにくく、また保温温度が50℃を超えると必須な成分が変性する傾向にあるためである。保温の時間は、通常、1分〜120分、好ましくは、10分〜60分である。
また上記転写/翻訳系用反応液を用いた無細胞系タンパク質合成反応(転写/翻訳系合成反応)についても、上記翻訳系合成反応の場合と同様、従来公知のたとえば低温恒温槽にて行えばよい。転写工程の反応温度は、通常、10℃〜60℃、好ましくは20℃〜50℃の範囲内である。転写工程の反応温度が10℃未満であると、転写の速度が低下する傾向にあり、また転写工程の反応温度が60℃を越えると、反応に必須な成分が変性する傾向にあるためである。また翻訳工程の温度は、通常、10℃〜40℃、好ましくは20℃〜30℃の範囲内である。翻訳工程の反応温度が10℃未満であると、タンパク質の合成速度が低下する傾向にあり、また翻訳工程の反応温度が40℃を越えると、反応に必須な成分が変性する傾向にあるためである。転写/翻訳系合成反応では、転写、翻訳工程を連続して実施し得るという観点から両工程に好適な20℃〜30℃の範囲で反応を行うことが特に好ましい。反応の時間は、全工程あわせて、通常、1時間〜72時間、好ましくは3時間〜24時間である。
上記翻訳系用反応液、転写/翻訳系用反応液を使用して合成できるタンパク質に特に制限はない。合成されたタンパク質の量は、酵素の活性の測定、SDS−PAGE、免疫検定法などによって測定できる。
また、本発明は、上述した本発明の発現ベクターを含む無細胞系合成用キットをも提供する。当該無細胞系タンパク質合成用キットには、無細胞系タンパク質合成反応液を含む。当該無細胞タンパク質合成用キットにおける好適な発現ベクター、無細胞系タンパク質合成反応液の組成、濃度、その他好適な組成については上述した通りである。かかる無細胞系タンパク質合成用キットは、発現ベクター、無細胞系タンパク質合成反応液を収容した適宜の容器と、その他の適当な要素で構成されていればよく、特に制限されるものではない。また、無細胞系タンパク質合成に用いる抽出物は、保存の点から、無細胞系タンパク質合成用反応液と分けて収容していてもよい。
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
実験例1:翻訳促進配列を短縮した鋳型DNAの調製
実験には、翻訳促進配列としてMnNPVポリヘドリン5’UTRを有する昆虫無細胞タンパク質合成用発現ベクターpTD1(DDBJ/GenBank/EMBL Accession Number:AB194742)の翻訳促進配列の直下とBamHIサイトの間に,β−ガラクトシダーゼ遺伝子が挿入されたpTD1−βgalをコントロールとして用いた(以後「コントロール」と記述する、また表中では、「サンプル0」と表記する)。このβ−ガラクトシダーゼ発現プラスミドをもとに、翻訳促進配列の短縮がタンパク質合成能に与える影響を評価するために,翻訳促進配列を2塩基ずつ、(1)5’−末端から3’−末端へ短縮したもの23種類、(2)3’−末端から5’−末端へ短縮したもの23種類、(3)3’−末端より上流5番目の塩基から5’−末端へ短縮したもの20種類からなる全66種類の翻訳促進配列が一部欠損した発現プラスミドpTD1mu−βgal_1−66(以後「サンプル1−66」と記述する)を常法にて構築した。発現プラスミドを鋳型として、配列表配列番号2に示す塩基配列を有するプライマー(pTD1_161−179)、配列表配列番号3に示す塩基配列を有するプライマー(pTD1_845−827)と、KAPA Taq Extra PCR Kit(KAPABioscience社製)を用いて,94℃で15秒間,アニーリングを50℃で15秒間,伸長を72℃で4分間の3段階の反応を30回繰り返すことでPCRを行い、直鎖状DNA断片を増幅した.反応液からHiYield Gel/PCR DNA Fragments Extraction Kit(RBC Bioscience社製)を用いて直鎖状DNAを精製し、フェノール/クロロホルム抽出処理を行った後、エタノール沈澱で濃縮し、滅菌蒸留水に再溶解することで鋳型DNAを調製した。
実験には、翻訳促進配列としてMnNPVポリヘドリン5’UTRを有する昆虫無細胞タンパク質合成用発現ベクターpTD1(DDBJ/GenBank/EMBL Accession Number:AB194742)の翻訳促進配列の直下とBamHIサイトの間に,β−ガラクトシダーゼ遺伝子が挿入されたpTD1−βgalをコントロールとして用いた(以後「コントロール」と記述する、また表中では、「サンプル0」と表記する)。このβ−ガラクトシダーゼ発現プラスミドをもとに、翻訳促進配列の短縮がタンパク質合成能に与える影響を評価するために,翻訳促進配列を2塩基ずつ、(1)5’−末端から3’−末端へ短縮したもの23種類、(2)3’−末端から5’−末端へ短縮したもの23種類、(3)3’−末端より上流5番目の塩基から5’−末端へ短縮したもの20種類からなる全66種類の翻訳促進配列が一部欠損した発現プラスミドpTD1mu−βgal_1−66(以後「サンプル1−66」と記述する)を常法にて構築した。発現プラスミドを鋳型として、配列表配列番号2に示す塩基配列を有するプライマー(pTD1_161−179)、配列表配列番号3に示す塩基配列を有するプライマー(pTD1_845−827)と、KAPA Taq Extra PCR Kit(KAPABioscience社製)を用いて,94℃で15秒間,アニーリングを50℃で15秒間,伸長を72℃で4分間の3段階の反応を30回繰り返すことでPCRを行い、直鎖状DNA断片を増幅した.反応液からHiYield Gel/PCR DNA Fragments Extraction Kit(RBC Bioscience社製)を用いて直鎖状DNAを精製し、フェノール/クロロホルム抽出処理を行った後、エタノール沈澱で濃縮し、滅菌蒸留水に再溶解することで鋳型DNAを調製した。
実験例2:リンク法によるインビトロ転写反応と無細胞タンパク質合成
実験例1で調製した直鎖状DNAを鋳型とし、T7Large Scale RNA Production System(Promega社製)を用いて、37℃、2時間インキュベートすることでin vitro転写反応を行い鋳型mRNA溶液を調製した。この鋳型mRNA溶液0.5μlを、最終濃度1mMのEDTAが添加された昆虫培養細胞無細胞タンパク質合成試薬キットTransdirect insect cell(島津製作所製)12.45μlスケールの反応液に加え、反応装置として低温アルミブロック恒温槽CTU−Mini(タイテック社製)を用い、25℃、4時間インキュベートすることで昆虫無細胞タンパク質合成系によるβ−ガラクトシダーゼの合成を行った。合成されたβ−ガラクトシダーゼは、β−Glo assay system(Promega社製)を用いて定量した。具体的な測定方法は、合成液を1000倍に希釈し,希釈液10μlとβ−Glo assay systemの基質溶液10μlに加えよく混合した。混合液を発光測定用96穴マイクロプレート(half−area 96well white plate,Greiner社製)に移し,低温アルミブロック恒温槽CTU−Miniを用い、25℃、30分間インキュベートしたのち,マイクロプレートリーダー(infinite M200,TECAN 社製)で発光強度を測定した。合成量は、精製β−ガラクトシダーゼ標準品を用いて作成した検量線をもとに、その発光強度より算出した。
実験例1で調製した直鎖状DNAを鋳型とし、T7Large Scale RNA Production System(Promega社製)を用いて、37℃、2時間インキュベートすることでin vitro転写反応を行い鋳型mRNA溶液を調製した。この鋳型mRNA溶液0.5μlを、最終濃度1mMのEDTAが添加された昆虫培養細胞無細胞タンパク質合成試薬キットTransdirect insect cell(島津製作所製)12.45μlスケールの反応液に加え、反応装置として低温アルミブロック恒温槽CTU−Mini(タイテック社製)を用い、25℃、4時間インキュベートすることで昆虫無細胞タンパク質合成系によるβ−ガラクトシダーゼの合成を行った。合成されたβ−ガラクトシダーゼは、β−Glo assay system(Promega社製)を用いて定量した。具体的な測定方法は、合成液を1000倍に希釈し,希釈液10μlとβ−Glo assay systemの基質溶液10μlに加えよく混合した。混合液を発光測定用96穴マイクロプレート(half−area 96well white plate,Greiner社製)に移し,低温アルミブロック恒温槽CTU−Miniを用い、25℃、30分間インキュベートしたのち,マイクロプレートリーダー(infinite M200,TECAN 社製)で発光強度を測定した。合成量は、精製β−ガラクトシダーゼ標準品を用いて作成した検量線をもとに、その発光強度より算出した。
図1、2、3は、実験例2の結果を示すグラフであり、pTD1−βgalコントロールをもとに作製した直鎖鋳型DNAのβ−ガラクトシダーゼ合成量を100%とした場合の相対合成量を横軸に示している。これらの結果より、配列表配列番号1に示される塩基配列を翻訳促進配列として用いた場合、16塩基というコントロールの翻訳配列と比べて塩基数が1/3程度であるにも関わらず、コントロールの71.8%の合成量を示し、翻訳促進に重要な配列であることがわかった。
実施例1:新たな翻訳促進配列を有する発現プラスミドの調製およびそれを用いた無細胞タンパク質合成
(1)pONCT1−βgal発現プラスミドの調製
配列表配列番号1の塩基配列を翻訳促進配列として有するβ−ガラクトシダーゼ発現プラスミドを調製した。以下に、その調製方法を示す。まず、配列表配列番号1およびその相補的な配列である配列表配列番号4の2種の合成オリゴヌクレオチド(FX1およびRX1)それぞれを,T4 Polynucleotide Kinase(ニッポン・ジーン社製)を用いて37℃、1時間インキュベートし、5’−末端のリン酸化を行った.リン酸化処理後の両オリゴヌクレオチドの溶液を等量ずつ混合し、95℃で15分間加熱してリン酸化酵素を失活させたのち,そのまま室温で30分間静置してアニーリングさせた。最後にエタノール沈殿を行い滅菌蒸留水に再溶解させて精製インサートを得た,次に鋳型をpTD1−βgalとし,フォワードプライマー(pTD1_305−326)を配列表配列番号5、リバースプライマー(pTD1_237−258)を配列表配列番号6とし,KOD−Plus−Ver.2(東洋紡績社製)を用いて、DNAの変性を94℃で15秒間、アニーリングを50℃で30秒間、伸長を68℃で7分間からなる3段階の反応を25回繰り返してインバースPCRを行った。反応液をHiYield Gel/PCR DNA Fragments Extraction Kit(RBC Bioscience社製)を用いて精製し,pTD1−βgalから翻訳促進配列のみを欠損させた直鎖状DNA得た。そして直鎖状DNAと先に調製したインサートを、Ligation High(東洋紡績社製)を用いて16℃で30分間インキュベートすることによりライゲーションした。ライゲーション溶液を用いて大腸菌DH5αコンピテントセル(Hit−DH5α,RBC Bioscience社製)の形質転換を行った。その大腸菌体を100μg/mlのアンピシリンが添加されたプラスグロウ寒天培地(ナカライテスク社製)に塗布し、37℃で終夜培養した。培養後に生じたコロニーを単離し、100μg/mlアンピシリンが添加されたプラスグロウ液体培地で終夜培養して、その培養菌体からHiYield Plasmid Mini Kit(RBC Bioscience社製)を用いてプラスミドDNAを精製した。鋳型を精製プラスミドDNA,プライマーを配列表配列番号1とし、DTCS Quick Start kit(Beckman Coulter社製)を用いて、変性を96℃で20秒間、アニーリングを50℃で20秒間、伸長を60℃で4分間の3段階の反応を30回繰り返すことでシーケンス反応を行った。その反応液をエタノール沈殿で精製し、DNAシーケンサ(CEQ8800,Beckman Coulter社製)で目的の配列のプラスミドであることを確認し、目的のpONCT1−βgal発現プラスミドが調製できていることを確認した。
(2)pONCT2−βgal発現プラスミドの調製
配列表配列番号1の塩基配列が2回順方向に組み込まれた配列を翻訳促進配列として有するβ−ガラクトシダーゼ発現プラスミドを調製した。調製は、配列表配列番号7およびその相補的な配列である配列表配列番号8の2種の合成オリゴヌクレオチド(FX2およびRX2)を用いた以外は、実施例1(1)の実施方法と同様に行い、pONCT2−βgal発現プラスミド調製した。
(3)pONCT3−βgal発現プラスミドの調製
配列表配列番号1の塩基配列が3回順方向に組み込まれた配列を翻訳促進配列として有するβ−ガラクトシダーゼ発現プラスミドを調製した。調製は、配列表配列番号9およびその相補的な配列である配列表配列番号10の2種の合成オリゴヌクレオチド(FX3およびRX3)を用いた以外は、実施例1(1)の実施方法と同様に行い、pONCT3−βgal発現プラスミド調製した。
(4)インビトロ転写反応と無細胞タンパク質合成
発現プラスミドを鋳型として、配列表配列番号2に示す塩基配列を有するプライマー(pTD1_161−179)、配列表配列番号3に示す塩基配列を有するプライマー(pTD1_845−827)と、KAPA Taq Extra PCR Kit(KAPA Bioscience社製)を用いて,94℃で15秒間,アニーリングを50℃で15秒間,伸長を72℃で4分間の3段階の反応を30回繰り返すことでPCRを行い、直鎖状DNA断片を増幅した.反応液からHiYield Gel/PCR DNA Fragments Extraction Kit(RBC Bioscience社製)を用いて直鎖状DNAを精製し、フェノール/クロロホルム抽出処理を行った後、エタノール沈澱で濃縮し、滅菌蒸留水に再溶解することで鋳型DNAを調製した。
次に直鎖状DNAを鋳型とし,T7Large Scale RNA Production System(Promega社製)を用いて,37℃で2時間インキュベートすることでin vitro転写反応を行った.反応液をゲル濾過カラム(illustra NICK Columnhs Sephadex G−50 DNA Grade,GE Healthcare社製)に供して未反応の核酸を取り除いたのち,エタノール沈殿を行い,滅菌蒸留水に再溶解して精製mRNA溶液を得た。最後に精製mRNA 4μgを鋳型として,昆虫培養細胞無細胞タンパク質合成試薬キットTransdirect insect cell(島津製作所製)12.5μlスケールの反応液に加え、反応装置として低温アルミブロック恒温槽CTU−Mini(タイテック社製)を用い、25℃、4時間インキュベートすることで昆虫無細胞タンパク質合成系によるβ−ガラクトシダーゼの合成を行った。合成されたβ−ガラクトシダーゼは、上述した実験例2の方法にて測定した。
図4は、実施例1の結果を示すグラフであり、pTD1−βgalコントロールのβ−ガラクトシダーゼ合成量を100%とした場合の相対合成量を横軸に示している。これらの結果より、pONCT2−βgalは、コントロールと比べて、約1.4倍の合成量を示し、従来の翻訳促進配列を含むpTD1−βgalよりも高い翻訳促進能を有していることがわかる。また、pONCT1−βgal、およびpONCT3−βgalは、コントロールと同等の翻訳促進能を有していることがわかる。これらのことから、配列表配列番号1に示される塩基配列をもととして、1回または2回、3回など複数回、順方向あるいは逆方向に繰り返した配列を翻訳促進配列として用いた発現ベクターを用いることにより、無細胞系タンパク質合成においてタンパク質の合成量が向上することは明らかである。
(1)pONCT1−βgal発現プラスミドの調製
配列表配列番号1の塩基配列を翻訳促進配列として有するβ−ガラクトシダーゼ発現プラスミドを調製した。以下に、その調製方法を示す。まず、配列表配列番号1およびその相補的な配列である配列表配列番号4の2種の合成オリゴヌクレオチド(FX1およびRX1)それぞれを,T4 Polynucleotide Kinase(ニッポン・ジーン社製)を用いて37℃、1時間インキュベートし、5’−末端のリン酸化を行った.リン酸化処理後の両オリゴヌクレオチドの溶液を等量ずつ混合し、95℃で15分間加熱してリン酸化酵素を失活させたのち,そのまま室温で30分間静置してアニーリングさせた。最後にエタノール沈殿を行い滅菌蒸留水に再溶解させて精製インサートを得た,次に鋳型をpTD1−βgalとし,フォワードプライマー(pTD1_305−326)を配列表配列番号5、リバースプライマー(pTD1_237−258)を配列表配列番号6とし,KOD−Plus−Ver.2(東洋紡績社製)を用いて、DNAの変性を94℃で15秒間、アニーリングを50℃で30秒間、伸長を68℃で7分間からなる3段階の反応を25回繰り返してインバースPCRを行った。反応液をHiYield Gel/PCR DNA Fragments Extraction Kit(RBC Bioscience社製)を用いて精製し,pTD1−βgalから翻訳促進配列のみを欠損させた直鎖状DNA得た。そして直鎖状DNAと先に調製したインサートを、Ligation High(東洋紡績社製)を用いて16℃で30分間インキュベートすることによりライゲーションした。ライゲーション溶液を用いて大腸菌DH5αコンピテントセル(Hit−DH5α,RBC Bioscience社製)の形質転換を行った。その大腸菌体を100μg/mlのアンピシリンが添加されたプラスグロウ寒天培地(ナカライテスク社製)に塗布し、37℃で終夜培養した。培養後に生じたコロニーを単離し、100μg/mlアンピシリンが添加されたプラスグロウ液体培地で終夜培養して、その培養菌体からHiYield Plasmid Mini Kit(RBC Bioscience社製)を用いてプラスミドDNAを精製した。鋳型を精製プラスミドDNA,プライマーを配列表配列番号1とし、DTCS Quick Start kit(Beckman Coulter社製)を用いて、変性を96℃で20秒間、アニーリングを50℃で20秒間、伸長を60℃で4分間の3段階の反応を30回繰り返すことでシーケンス反応を行った。その反応液をエタノール沈殿で精製し、DNAシーケンサ(CEQ8800,Beckman Coulter社製)で目的の配列のプラスミドであることを確認し、目的のpONCT1−βgal発現プラスミドが調製できていることを確認した。
(2)pONCT2−βgal発現プラスミドの調製
配列表配列番号1の塩基配列が2回順方向に組み込まれた配列を翻訳促進配列として有するβ−ガラクトシダーゼ発現プラスミドを調製した。調製は、配列表配列番号7およびその相補的な配列である配列表配列番号8の2種の合成オリゴヌクレオチド(FX2およびRX2)を用いた以外は、実施例1(1)の実施方法と同様に行い、pONCT2−βgal発現プラスミド調製した。
(3)pONCT3−βgal発現プラスミドの調製
配列表配列番号1の塩基配列が3回順方向に組み込まれた配列を翻訳促進配列として有するβ−ガラクトシダーゼ発現プラスミドを調製した。調製は、配列表配列番号9およびその相補的な配列である配列表配列番号10の2種の合成オリゴヌクレオチド(FX3およびRX3)を用いた以外は、実施例1(1)の実施方法と同様に行い、pONCT3−βgal発現プラスミド調製した。
(4)インビトロ転写反応と無細胞タンパク質合成
発現プラスミドを鋳型として、配列表配列番号2に示す塩基配列を有するプライマー(pTD1_161−179)、配列表配列番号3に示す塩基配列を有するプライマー(pTD1_845−827)と、KAPA Taq Extra PCR Kit(KAPA Bioscience社製)を用いて,94℃で15秒間,アニーリングを50℃で15秒間,伸長を72℃で4分間の3段階の反応を30回繰り返すことでPCRを行い、直鎖状DNA断片を増幅した.反応液からHiYield Gel/PCR DNA Fragments Extraction Kit(RBC Bioscience社製)を用いて直鎖状DNAを精製し、フェノール/クロロホルム抽出処理を行った後、エタノール沈澱で濃縮し、滅菌蒸留水に再溶解することで鋳型DNAを調製した。
次に直鎖状DNAを鋳型とし,T7Large Scale RNA Production System(Promega社製)を用いて,37℃で2時間インキュベートすることでin vitro転写反応を行った.反応液をゲル濾過カラム(illustra NICK Columnhs Sephadex G−50 DNA Grade,GE Healthcare社製)に供して未反応の核酸を取り除いたのち,エタノール沈殿を行い,滅菌蒸留水に再溶解して精製mRNA溶液を得た。最後に精製mRNA 4μgを鋳型として,昆虫培養細胞無細胞タンパク質合成試薬キットTransdirect insect cell(島津製作所製)12.5μlスケールの反応液に加え、反応装置として低温アルミブロック恒温槽CTU−Mini(タイテック社製)を用い、25℃、4時間インキュベートすることで昆虫無細胞タンパク質合成系によるβ−ガラクトシダーゼの合成を行った。合成されたβ−ガラクトシダーゼは、上述した実験例2の方法にて測定した。
図4は、実施例1の結果を示すグラフであり、pTD1−βgalコントロールのβ−ガラクトシダーゼ合成量を100%とした場合の相対合成量を横軸に示している。これらの結果より、pONCT2−βgalは、コントロールと比べて、約1.4倍の合成量を示し、従来の翻訳促進配列を含むpTD1−βgalよりも高い翻訳促進能を有していることがわかる。また、pONCT1−βgal、およびpONCT3−βgalは、コントロールと同等の翻訳促進能を有していることがわかる。これらのことから、配列表配列番号1に示される塩基配列をもととして、1回または2回、3回など複数回、順方向あるいは逆方向に繰り返した配列を翻訳促進配列として用いた発現ベクターを用いることにより、無細胞系タンパク質合成においてタンパク質の合成量が向上することは明らかである。
配列番号1:
MnNPVポリヘドリン遺伝子5’UTRの3’末端から16塩基までの塩基配列
MnNPVポリヘドリン遺伝子5’UTRの3’末端から16塩基までの塩基配列
Claims (21)
- 無細胞タンパク質合成系において翻訳反応促進のために使用される、以下の(a)〜(b)のいずれかのDNA断片。
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、かつ翻訳反応促進活性を有するDNA断片。 - 無細胞タンパク質合成系において翻訳反応促進のために使用される、以下の(a)〜(b)のいずれかのDNA断片が順方向に2個組み合わされたDNA断片。
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、かつ翻訳反応促進活性を有するDNA断片。 - 無細胞タンパク質合成系において翻訳反応促進のために使用される、以下の(a)〜(b)のいずれかのDNA断片が順方向にn個組み合わされたDNA断片。
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、かつ翻訳反応促進活性を有するDNA断片。 - 無細胞タンパク質合成系において翻訳反応促進のために使用される、以下の(a)〜(b)のいずれかのDNA断片が逆方向にn個組み合わされたDNA断片。
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、かつ翻訳反応促進活性を有するDNA断片。 - 無細胞タンパク質合成系において翻訳反応促進のために使用される、以下の(a)〜(b)のいずれかのDNA断片が順方向および逆方向を問わずn個組み合わされたDNA断片。
(a)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA断片、
(b)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列からなり、かつ翻訳反応促進活性を有するDNA断片。 - 無細胞タンパク質合成系における転写鋳型として使用される、請求項1〜5のいずれかに記載のDNA断片を含む鋳型DNA。
- 無細胞タンパク質合成における転写鋳型として使用される、請求項1〜6のいずれかに記載のDNA断片を含む発現ベクター。
- 請求項6〜7に記載された鋳型DNAまたは発現ベクターより転写して得られるmRNAであって、無細胞タンパク質合成における翻訳鋳型として使用されるmRNA。
- 請求項6〜7に記載された鋳型DNAまたは発現ベクターを用いた無細胞タンパク質合成方法。
- 動物由来の抽出物を含有する無細胞系タンパク質合成反応液を用いた、請求項9に記載の無細胞タンパク質合成方法。
- 動物由来の抽出物が節足動物から抽出されたものである、請求項10に記載の無細胞タンパク質合成方法。
- 節足動物が昆虫培養細胞である、請求項11に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
- 昆虫培養細胞がTrichoplusia niの卵細胞由来及び/又はSpodoptera frugiperda卵巣細胞由来の細胞である、請求項12に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
- 節足動物が昆虫組織である、請求項11に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
- 昆虫組織がカイコ組織である、請求項14に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
- 動物由来の抽出物が哺乳動物細胞から抽出されたものである、請求項10に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
- 哺乳動物細胞が哺乳動物培養細胞である、請求項16に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
- 哺乳動物培養細胞が、Chinese hamster ovary細胞である請求項17に記載の無細胞系タンパク質合成方法。
- 哺乳動物細胞がウサギ網状赤血球である、請求項17に記載の無細胞タンパク質合成方法。
- コムギ胚芽由来の抽出物を含有する無細胞系タンパク質合成反応液を用いた、請求項9に記載の無細胞タンパク質合成方法。
- 請求項7から20のいずれかに記載の発現ベクターを含む、無細胞系タンパク質合成用キット。
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WO2021070616A1 (ja) | 2019-10-10 | 2021-04-15 | NUProtein株式会社 | 翻訳促進剤、鋳型核酸、翻訳鋳型の生産方法、および、タンパク質の生産方法 |
JP6898023B1 (ja) * | 2021-03-10 | 2021-07-07 | NUProtein株式会社 | ポリヌクレオチド、翻訳鋳型mRNA、転写鋳型DNA、翻訳鋳型mRNAの生産方法およびポリペプチドの生産方法 |
WO2022185664A1 (ja) | 2021-03-03 | 2022-09-09 | NUProtein株式会社 | 翻訳促進剤、翻訳鋳型mRNA、転写鋳型DNA、翻訳鋳型mRNAの生産方法、および、タンパク質の生産方法 |
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2012
- 2012-02-07 JP JP2012038002A patent/JP2013158342A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2021070616A1 (ja) | 2019-10-10 | 2021-04-15 | NUProtein株式会社 | 翻訳促進剤、鋳型核酸、翻訳鋳型の生産方法、および、タンパク質の生産方法 |
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