JP7140362B2 - 活性型組換えアクロシン - Google Patents
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Description
[1]以下のステップを含む、活性型組換えアクロシンの調製方法:
(1)トリプシンドメインを含み、且つC末端疎水領域を含まないアクロシンをコードする遺伝子を真核細胞内で発現させるステップ、
(2)ステップ(1)によって発現し培地中に分泌されたプロ型組換えアクロシンを、アクロシンに対して可逆的ないし一過性阻害作用を示すプロテアーゼ阻害剤の存在下で自己活性化させるステップ。
[2]前記アクロシンが、実質的にトリプシンドメインのみで構成される、[1]に記載の調製方法。
[3]前記真核細胞が昆虫細胞である、[1]又は[2]に記載の調製方法。
[4]前記昆虫細胞が、セルピンを発現するショウジョウバエS2細胞である、[3]に記載の調製方法。
[5]前記アクロシンがニワトリアクロシンAであり、
培地中に分泌されたプロ型アクロシンを高密度化した後にインキュベートすることによって前記自己活性化を生じさせる、[1]~[4]のいずれか一項に記載の調製方法。
[6]前記アクロシンがニワトリアクロシンB又は哺乳動物アクロシンであり、
培地中に分泌されたプロ型アクロシンをそのまま、あるいは高密度化することによって前記自己活性化を生じさせる、[1]~[4]のいずれか一項に記載の調製方法。
[7]ペプチドタグ又はポリペプチドタグをコードする配列が前記遺伝子に連結されており、
抗タグ抗体又はタグ親和性物質を用いた濃縮によって、培地中に分泌されたプロ型組換えアクロシンを高密度化させる、[1]~[6]のいずれか一項に記載の調製方法。
[8]前記抗タグ抗体又はタグ親和性物質が多孔性担体に結合している、[7]に記載の調製方法。
[9][1]~[8]のいずれか一項に記載の調製方法で得られた活性型組換えアクロシンを含む酵素剤。
[10][1]~[8]のいずれか一項に記載の調製方法で得られた活性型組換えアクロシンを含む、体外受精又は人工授精の補助剤。
[11]プロテアーゼ阻害剤と複合体を形成した状態の活性型組換えアクロシン。
[12]プロテアーゼ阻害剤がセルピンである、[11]に記載の活性型組換えアクロシン。
[13]I185T変異及び/又はR200P変異を含む、組換えヒトアクロシン。
[14]アクロシン遺伝子の一塩基多型(SNP)を検出することを特徴とする、アクロシン遺伝子の機能評価方法。
[15]前記アクロシン遺伝子がヒトアクロシン遺伝子であり、前記SNPがrs576896841、rs368795913、rs376638753、rs371232787、rs537612569、rs577242211、rs553367757、rs371960370及びrs139648296からなる群より選択される一又は二以上のSNPである、[14]に記載の機能評価方法。
[16]以下の判定基準(A)及び/又は(B)に基づき遺伝子機能を評価する、[15]に記載の機能評価方法、
(A) 554T>C変異及び/又は599G>C変異が検出された場合に翻訳産物の酵素活性が高い、
(B) 124C>T変異、554T>C変異、598C>T変異、599G>C変異、632C>T変異、675C>G変異、685C>G変異、799G>T変異又は811C>T変異、或いはこれらの中の二つ以上の変異が検出された場合に翻訳産物の酵素活性が低い。
本発明の第1の局面は活性型組換えアクロシンの調製方法に関する。「活性型組換えアクロシン」とは、遺伝子組換えの手法を用いて調製され、前駆体(プロ体)がプロセシングを受けて成熟化することで活性を示すことになったアクロシンである。本発明では自己活性化によって成熟化、即ち、前駆体から活性型への変換が生じる。本発明の調製方法によれば、自己活性化により限定分解(活性化に必要な分解)させつつ、必要以上の分解を抑制でき、活性型組換えアクロシンを効率的に調製することが可能になる。従って、本発明は各種用途に利用可能な、即ち、産業上の利用価値の高い、高活性のアクロシンを得る手段として有用である。
(1)トリプシンドメインを含み、且つC末端疎水領域を含まないアクロシンをコードする遺伝子を真核細胞内で発現させるステップ
(2)ステップ(1)によって発現し培地中に分泌された組換えプロ型アクロシンを、アクロシンに対して可逆的ないし一過性阻害作用を示すプロテアーゼ阻害剤の存在下で自己活性化させるステップ
(i)トリプシンドメインを含み、且つC末端疎水領域を含まないアクロシンをコードする遺伝子を保持する発現ベクターを用意するステップ
(ii)前記発現ベクターを宿主真核細胞に導入するステップ
(iii)前記発現ベクターが導入された形質転換体を培養し、前記アクロシンを発現させ、細胞外に分泌させるステップ
アミノ酸配列(NCBI GenPept DEFINITION: acrosin-a [Gallus gallus]. ACCESSION: BAW27655):配列番号1(1位~28位はシグナルペプチド。50位~294位はトリプシンドメイン)
遺伝子配列(NCBI GenBank DEFINITION: Gallus gallus ACR mRNA for acrosin-a, complete cds. ACCESSION: AB769484):配列番号2
アミノ酸配列(NCBI GenPept DEFINITION: acrosin-b [Gallus gallus]. ACCESSION: BAW27656):配列番号3(1位~19位はシグナルペプチド。41位~284位はトリプシンドメイン)
遺伝子配列(NCBI GenBank DEFINITION: Gallus gallus ACR mRNA for acrosin-b, complete cds. ACCESSION: AB769485):配列番号4
アミノ酸配列(NCBI GenPept DEFINITION: acrosin precursor [Homo sapiens]. ACCESSION: NP_001088 XP_003403795):配列番号5(1位~19位はシグナルペプチド。43位~290位はトリプシンドメイン)
遺伝子配列(NCBI GenBank DEFINITION: Homo sapiens acrosin (ACR), mRNA. ACCESSION: NM_001097 XM_003403747):配列番号6
アミノ酸配列(NCBI GenPept DEFINITION: acrosin precursor (EC 3.4.21.10) [Sus scrofa]. ACCESSION: AAA31131):配列番号7(1位~15位はシグナルペプチド。40位~288位はトリプシンドメイン)
遺伝子配列(NCBI GenBank DEFINITION: Sus scrofa acrosin (ACR), mRNA. ACCESSION: NM_214033):配列番号8
アミノ酸配列(NCBI GenPept DEFINITION: acrosin precursor [Bos taurus]. ACCESSION: NP_776311 XP_001256933):配列番号9(1位~17位はシグナルペプチド。40位~288位はトリプシンドメイン)
遺伝子配列(NCBI GenBank DEFINITION: Bos taurus acrosin (ACR), mRNA. ACCESSION: NM_173886 XM_001256932):配列番号10
アミノ酸配列(NCBI GenPept DEFINITION: acrosin isoform 1 precursor [Mus musculus]. ACCESSION: NP_038483):配列番号11(1位~19位はシグナルペプチド。43位~291位はトリプシンドメイン)
遺伝子配列(NCBI GenBank DEFINITION: Mus musculus acrosin prepropeptide (Acr), transcript variant 1, mRNA. ACCESSION: NM_013455):配列番号12
アミノ酸配列(NCBI GenPept DEFINITION: acrosin precursor [Rattus norvegicus]. ACCESSION: NP_036622):配列番号13(1位~19位はシグナルペプチド。43位~291位はトリプシンドメイン)
遺伝子配列(NCBI GenBank DEFINITION: Rattus norvegicus acrosin (Acr), mRNA. ACCESSION: NM_012490):配列番号14
アミノ酸配列(NCBI GenPept DEFINITION: acrosin precursor [Oryctolagus cuniculus]. ACCESSION: NP_001075805):配列番号15(1位~16位はシグナルペプチド。40位~288位はトリプシンドメイン)
遺伝子配列(NCBI GenBank DEFINITION: Oryctolagus cuniculus acrosin (ACR), mRNA. ACCESSION: NM_001082336):配列番号16
アミノ酸配列(配列番号17)
遺伝子(配列番号18)
アミノ酸配列(配列番号19)
遺伝子(配列番号20)
アミノ酸配列(配列番号21)
遺伝子(配列番号22)
アミノ酸配列(配列番号23)
遺伝子(配列番号24)
アミノ酸配列(配列番号25)
遺伝子(配列番号26)
アミノ酸配列(配列番号27)
遺伝子(配列番号28)
アミノ酸配列(配列番号29)
遺伝子(配列番号30)
アミノ酸配列(配列番号31)
遺伝子(配列番号32)
本発明の調製方法で得られた活性型組換えアクロシンは、試薬、医薬、動物医薬等として用いられる酵素剤として利用可能である。即ち、活性型組換えアクロシンは例えば酵素剤の形態で提供される。酵素剤は、有効成分(本酵素)の他、賦形剤、緩衝剤、懸濁剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水などを含有していてもよい。賦形剤としてはデンプン、デキストリン、マルトース、トレハロース、乳糖、D-グルコース、ソルビトール、D-マンニトール、白糖、グリセロール等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としてはエタノール、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。
本発明の更なる局面は、アクロシンの一塩基多型(SNP)がアクロシンの活性に影響するという知見に基づき、一塩基多型を利用してアクロシン遺伝子の機能を評価する方法を提供する。本発明のアクロシン遺伝子機能評価方法は、アクロシン遺伝子における、特定のSNPの検出によって特徴付けられる。典型的には、本発明のアクロシン遺伝子機能評価方法では、対象から採取された核酸検体を用意し、アクロシン遺伝子の特定のSNPを検出するステップ(以下、「検出ステップ」と呼ぶ)と、検出結果に基づきアクロシン遺伝子の機能を評価するステップ(以下、「評価ステップ」と呼ぶ)が行われる。即ち、対象から採取された核酸検体について特定のSNPを検出し、検出結果に基づきアクロシン遺伝子の機能を評価する。対象はヒト、非ヒト動物(例えば、ブタ、ウシ、ニワトリ等の家畜、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター等のペット/コンパニオンアニマル、害獣や希少種の野生動物等である。対象がヒトの場合(即ち、ヒトアクロシン遺伝子の機能を評価する場合)、検出される特定のSNPは、以下のSNPの中から選択することができる。尚、一つのSNPのみを検出対象にしても、或いは二以上のSNPを検出対象にしてもよい。
rs576896841(124C>T、R42C)
rs368795913(554T>C、I185T)
rs376638753(598C>T、R200C)
rs371232787(599G>C、R200P)
rs537612569(632C>T、S211L)
rs577242211(675C>G、C225W)
rs553367757(685C>G、P229A)
rs371960370(799G>T、A267S)
rs139648296(811C>T、R271C)
(A) 554T>C変異及び/又は599G>C変異が検出された場合に翻訳産物(即ち、アクロシンタンパク質)の酵素活性が高い
(B) 124C>T変異、554T>C変異、598C>T変異、599G>C変異、632C>T変異、675C>G変異、685C>G変異、799G>T変異又は811C>T変異、或いはこれらの中の二つ以上の変異が検出された場合に翻訳産物(即ち、アクロシンタンパク質)の酵素活性が低い
(1)ニワトリアクロシン発現コンストラクトの構築
昆虫細胞発現用ベクターであるpMT/BiP/V5-His A(Invitrogen)を制限酵素SpeI(TaKaRa)およびEcoRV(TaKaRa)で処理し、同様の制限酵素で処理したAcrosin-a cDNA(アミノ酸残基29-354(シグナル配列以外の部分)をコードする)を挿入した(pMT/BiP/ACRA WT/V5-His)。さらに、PCR法によってカルボキシ末端側を欠損あるいは1アミノ酸変異を導入した複数のコンストラクトも構築した(pMT/BiP/ACRA C328A/V5-His、pMT/BiP/ACRAΔ329-354/V5-His、pMT/BiP/ACRAΔ327-354/V5-His、pMT/BiP/ACRAΔ295-354/V5-HisおよびpMT/BiP/ACRAΔ295-354, S244A/V5-His)。
昆虫細胞発現用ベクターであるpMT/BiP/V5-His A(Invitrogen)を制限酵素SpeI(TaKaRa)およびApaI(TaKaRa)で処理し、ヒトAcrosin遺伝子のトリプシンドメイン領域を含むcDNA(アミノ酸残基20-290をコードする)をSLiCE法[Motohashi, 2015 BMC Biotechnology]によって挿入した(pMT/BiP/hACRT WT/V5-His)。
NCBI(National Center for Biotechnology Information)データベースに登録されているヒトアクロシンのSNPs(Single Nucleotide polymorphisms)のうち、アミノ酸置換を伴うものを選択した(図4)。これらのSNPsをPCR法によってpMT/BiP/hACRT WT/V5-Hisに導入した。
2日前に継代したショウジョウバエS2細胞を回収し、無血清培地(Sf 900IISFM(GIBCO)、penicillin G(明治製菓)、streptomycin(明治製菓))で懸濁した。6ウェルプレートに2.7x 106 cellsとなるように播種し、培地の量は2 mlとした。DDAB(dimethyl dioctadecyl ammonium bromide、250μg/ml in EtOH、Sigma-Aldrich) 48μlと無血清培地96μlを混合し、室温で5分間静置した。このDDAB/無血清培地に、それぞれの発現プラスミドを1μg加え、室温で15分間静置した。プラスミド溶液を全量添加し5時間、25℃で培養した。5時間後培地を交換し、それぞれのフラスコに100 mM CuSO4を14μl添加(終濃度0.7 mM)し、発現誘導を行った。発現誘導から4日後に、培養上清を回収した。遠心分離(3,000xg, 5 min, 4℃)により細胞の残渣を除いた上清1 mlから、10μlの抗V5抗体-アガロースアフィニティーゲル(Sigma-Aldrich)を用いて組換えアクロシンタンパク質を精製した。ビーズに結合した組換えタンパク質は2x SDS-PAGEサンプルバッファー(40 mM Tris-HCl; pH 6.8, 2% SDS, 12% glycerol, 0.024% BPB, ±2% β-Me)を用いて溶出させた。
一次抗体:ウサギ抗V5抗体(MBL)(1:5,000)
二次抗体:POD-抗ウサギIgG抗体(Cell Signaling)(1:10,000)
組み換えニワトリアクロシンタンパク質が結合した抗V5抗体-アガロースアフィニティーゲルを、0.1 M Tris-HCl(pH8.5)で懸濁し(50%スラリー)、37℃で2時間静置した。活性化の確認は、免疫ブロット解析およびザイモグラフィーによって行った。
Nuncフルオロヌンクプレート(Nunc)の各ウェルに、0.1 M Tris-HCl(pH8.5) 193μlと蛍光合成基質(Boc-Glu(Obzl)-Gly-Arg-MCA(EGR)およびZ-Val-Val-Arg-MCA(VVR); 10 mMになるようにDMSOで溶解したもの) 2μlを加えた(溶液を加えた段階で終濃度100μM)。それぞれのウェルにビーズ懸濁液(50%スラリー)を5μl加えた。蛍光/マイクロプレートリーダーFluoroskan Ascent(Thermo)を用いて励起波長355 nm、吸収波長460 nmの蛍光を5分おきに60分間測定した。
β-Meを含まない2x SDS-PAGEサンプルバッファーで溶出させたサンプルの一部を用いて、0.1%ゼラチンを含む10%アクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEを行った。泳動終了後、2.5% Triton X-100溶液中でゲルを40分間振盪しSDSを置き換えた。0.1 M glycine-NaOH(pH8.3)中で37℃、1時間(ニワトリアクロシン)あるいは一晩(ヒトアクロシン)静置したのち、CBB染色を行い、白抜けしたバンドを検出した。
培養上清2.4 mlから抗V5抗体-アガロースアフィニティーゲルに結合させた組換えタンパク質を、β-Meを含まない2x SDS-PAGEサンプルバッファーを用いて溶出させた。溶出させたサンプルを、10%アクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEで分画後、CBB染色を行った。
MS/MS Ion Search; Database: NCBInr、Taxonomy: All、Enzyme: Trypsin、Max missed cleavages: 3、Fixed modifications: Propionamide(C)、Variable modifications: Oxidation(M)、Peptide tol.: ±0.1 Da、Mass values: MH+、MS/MS tol.: ±0.3 Da、Protein Mass: Unrestricted、Peptide charge: 1+、Instrument: MALDI-TOF-TOF
2日前に継代したショウジョウバエS2細胞を回収し、無血清培地(Sf 900IISFM(GIBCO)、penicillin G(明治製菓)、streptomycin(明治製菓))で懸濁した。6 well plateに2.7x 106 cellsとなるように播種し、培地の量は2 mlとした。DDAB(dimethyl dioctadecyl ammonium bromide、250μg/ml in EtOH、Sigma-Aldrich) 48μlと無血清培地96μlを混合し、室温で5分間静置した。このDDAB/無血清培地に、それぞれの発現プラスミドを1μg加え、室温で15分間静置した。プラスミド溶液を全量添加し5時間、25℃で培養した。5時間後培地を新しい無血清培地1.8 mlと0.45μmのフィルターを用いて滅菌したSBTI溶液(10-1000μg/ml Soybean trypsin inhibitor(Sigma-Aldrich)/1x PBS) 200μl(SBTIの終濃度; 1-100μg/ml)に交換した。それぞれのフラスコに100 mM CuSO4を14μl添加(終濃度0.7 mM)し、発現誘導を行った。発現誘導から4日後に、培養上清を回収した。遠心分離(3,000xg, 5 min, 4℃)により細胞の残渣を除いた上清1 mlから、10μlの抗V5抗体-アガロースアフィニティーゲル(Sigma-Aldrich)を用いて組換えアクロシンタンパク質を精製した。ビーズに結合した組換えタンパク質は2x SDS-PAGEサンプルバッファー(40 mM Tris-HCl; pH 6.8, 2% SDS, 12% glycerol, 0.024% BPB, ±2% β-Me)を用いて溶出させた。
(1)ニワトリアクロシンAを用いた、アクロシンの発現及び活性化条件の検討
ニワトリアクロシンAのドメイン構造に注目し、C末端側領域を欠失させた各種欠失変異体を設計し(図1A)、野生型とともに発現させた。詳しくは、ショウジョウバエS2細胞にそれぞれの野生型および欠失変異体を発現するコンストラクトをトランスフェクションし、3日間発現誘導した。細胞溶解液(L)および培養上清(M)を回収し、還元条件下でSDS-PAGEを行い、V5タグに対する抗体を用いた免疫ブロット解析でバンドを検出した(図1B)。培養上清は全体の1/5量、細胞溶解液は全体の1/20量アプライした。Δ295-354変異体で良好な発現及び分泌が認められた。尚、「Δ295-354,S244A」は活性中心のSerをAlaに置換した(S244A変異を有する)不活性型のΔ295-354変異体である。
ヒトアクロシン(トリプシンドメインまで)の野生型(WT)およびSNP変異体発現コンストラクトを、ショウジョウバエS2細胞にトランスフェクションした。CuSO4で発現誘導を行い、4日後の培養上清を回収し、抗V5抗体-アガロースアフィニティーゲルを用いて免疫沈降を行った。ビーズに結合したヒトアクロシンをSDS-PAGEサンプルバッファーで溶出させ、SDS-PAGE/免疫ブロット解析を行った。還元条件下(還元)および非還元条件下(非還元)で泳動後、転写した。図2A上段に短時間露光によりバンドを検出した結果を、同下段に長時間露光の結果を示す。R42C変異体、R200C変異体、C225W変異体、P229A変異体及びR271C変異体の泳動パターンは野生型(WT)と顕著に異なり、発現又は発現後のプロセシングに異常が生じていることが示唆される。
ヒトアクロシン(トリプシンドメインまで)の野生型(WT)発現コンストラクトを、ショウジョウバエS2細胞にトランスフェクションした。CuSO4で発現誘導を行い、4日後の培養上清を回収し、抗V5抗体-アガロースアフィニティーゲルを用いて免疫沈降を行った。ビーズに結合したヒトアクロシンをSDS-PAGEサンプルバッファーで溶出させ、非還元条件下でSDS-PAGE/CBB染色を行った(図5A)。また、ゼラチンを基質としたSDS-PAGE/ザイモグラフィーを行った(図5B)。ザイモグラフィーで活性が見られたバンド1から3をCBB染色したゲルから切り出し、トリプシンによるゲル内消化を行った。トリプシン消化物をMALDI-TOF/TOF-MS/MSに供した。MALDI-TOF/TOF-MS/MSによる質量分析の結果(図5C)、バンド2および3からヒトアクロシンが同定された。また、バンド2からショウジョウバエSerpin 88Eaが同定された。一方、バンド1からはヒトアクロシンは検出されず、ショウジョウバエtiggrinが同定された。タンパク質の同定にはMascot(Matrix Science)を使用し、データベースとしてNCBIを用いた。以上の結果から、ショウジョウバエS2細胞で組換えヒトアクロシンタンパク質を発現させるとセルピンと複合体を形成することが判明した。ザイモグラフィーでのバンド1は図2の抗V5抗体ブロットでも検出されており、アクロシンが重合したものと推定されるが、アクロシンもセルピンも質量分析での検出には量が少なすぎて検出/同定されなかったものと考えられる。還元下でのSDS-PAGEにおいてもアクロシンとセルピンは複合体を形成していることから、ジスルフィド結合以外の共有結合により架橋されていると考えられるが、セリンプロテアーゼとセルピンとの間で一過性に形成される共有結合酵素インヒビター複合体(加水分解前の安定中間体)が想定される。
ショウジョウバエS2細胞にヒトアクロシン野生型発現コンストラクトをトランスフェクションし、培地に大豆トリプシンインヒビター(SBTI)を0から100μg/ml添加し4日間培養した。4日後に培養上清を回収し、抗V5抗体-アガロースアフィニティーゲルを用いて、培養上清からヒトアクロシンタンパク質を回収した(図6A)。
Claims (14)
- 以下のステップを含む、活性型組換えアクロシンの調製方法:
(1)実質的にトリプシンドメインのみで構成されるアクロシンをコードする遺伝子を真核細胞内で発現させるステップ、
(2)ステップ(1)によって発現し培地中に分泌発現された組換えアクロシンを、アクロシンに対して可逆的ないし一過性阻害作用を示すプロテアーゼ阻害剤の存在下で自己活性化させるステップ。 - 前記真核細胞が昆虫細胞である、請求項1に記載の調製方法。
- 前記昆虫細胞が、セルピンを発現するショウジョウバエS2細胞である、請求項2に記載の調製方法。
- 前記アクロシンがニワトリアクロシンAであり、
培地中に分泌されたアクロシンを高密度化した後にインキュベートすることによって前記自己活性化を生じさせる、請求項1~3のいずれか一項に記載の調製方法。 - 前記アクロシンがニワトリアクロシンB又は哺乳動物アクロシンであり、
培地中に分泌されたプロ型アクロシンをそのまま、あるいは高密度化することによって前記自己活性化を生じさせる、請求項1~3のいずれか一項に記載の調製方法。 - ペプチドタグ又はポリペプチドタグをコードする配列が前記遺伝子に連結されており、
抗タグ抗体又はタグ親和性物質を用いた濃縮によって、培地中に分泌されたプロ型組換えアクロシンを高密度化させる、請求項1~5のいずれか一項に記載の調製方法。 - 前記抗タグ抗体又はタグ親和性物質が多孔性担体に結合している、請求項6に記載の調製方法。
- 請求項1~7のいずれか一項に記載の調製方法で得られた活性型組換えアクロシンを含む酵素剤。
- 請求項1~7のいずれか一項に記載の調製方法で得られた活性型組換えアクロシンを含む、体外受精又は人工授精の補助剤。
- プロテアーゼ阻害剤と複合体を形成した状態の、請求項1~7のいずれか一項に記載の調製方法で得られた活性型組換えアクロシン。
- プロテアーゼ阻害剤がセルピンである、請求項10に記載の活性型組換えアクロシン。
- I185T変異及び/又はR200P変異を含む、組換えヒトアクロシン。
- アクロシン遺伝子の一塩基多型(SNP)を検出することを特徴とする、アクロシン遺伝子の機能評価方法であって、
前記アクロシン遺伝子がヒトアクロシン遺伝子であり、前記SNPがrs576896841、rs368795913、rs376638753、rs371232787、rs537612569、rs577242211、rs553367757、rs371960370及びrs139648296からなる群より選択される一又は二以上のSNPである、機能評価方法。 - 以下の判定基準(A)及び/又は(B)に基づき遺伝子機能を評価する、請求項13に記載の機能評価方法、
(A) 554T>C変異及び/又は599G>C変異が検出された場合に翻訳産物の酵素活性が高い、
(B) 124C>T変異、598C>T変異、632C>T変異、675C>G変異、685C>G変異、799G>T変異又は811C>T変異、或いはこれらの中の二つ以上の変異が検出された場合に翻訳産物の酵素活性が低い。
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