JP3427155B2 - 精子の生存性・運動性保持剤 - Google Patents

精子の生存性・運動性保持剤

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JP3427155B2 JP35328192A JP35328192A JP3427155B2 JP 3427155 B2 JP3427155 B2 JP 3427155B2 JP 35328192 A JP35328192 A JP 35328192A JP 35328192 A JP35328192 A JP 35328192A JP 3427155 B2 JP3427155 B2 JP 3427155B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は精子の生存性・運動性保
持剤に関する。より詳細は、ウシ精子の生存性及び運動
性を保持する活性を有する糖蛋白質性物質を有効成分と
するウシ精子の生存性・運動性保持剤及び当該糖蛋白質
性物質を含有する培地を用いることからなるウシ精子の
生存性及び運動性の保持方法に関する。
【0002】
【従来の技術】哺乳類の卵管は、精子や卵子の輸送と成
熟、受精、初期胚の発生など、多くの重要な生殖機能に
関与する器官である。これまでに卵管で合成され、卵管
液中に分泌される糖蛋白質の存在が、マウス(Kapur and
Johnson; Dev. Biol. 112, 89-93, 1985)、ハムスター
(Oikawa et al; Gamete Res. 19, 113-122, 1988)、ウ
サギ(Oliphant and Ross; Biol, Reprod. 26, 537-544,
1982)、羊(Sutton et al; J. Reprod. Fertil. 72, 41
5-422, 1984)、ヒヒ(Fazleabas and Verhage; Biol. Re
prod. 35, 455-462, 1986)、ブタ(Buhi et al; J. Exp,
Zool, 252, 79-88, 1989)、ヒト(Verhage et al; Endo
crinology, 122, 1639-1645, 1988)など、種々の哺乳類
動物で判明している。しかし、これらの糖蛋白質の主要
な生殖機能に及ぼす生理的意義について、現在なお、あ
まりわかっていない。これらの糖蛋白質を抗原として作
製した抗体を用いて調べてみると、この物質は排卵直後
や発情期の卵管に特異的にみられ、卵管内卵子や受精卵
の透明帯や囲卵腔物質に結合することがわかっている(K
apur and Johnson; Anat. Rec. 221, 720-729, 1988、
Kan et al; J. Histochem. Cytochem. 36, 1441-1447,
1988)。他方、これらの糖蛋白質は、卵巣内卵子や血清
中には存在しないことがわかっている。
【0003】ごく最近、ウシ卵管由来糖蛋白質の生化学
的、免疫学的性状については、いくつかの報告がなされ
ている。Boiceら(Biol. Reprod. 43, 457-465, 1990)
は、発情期にウシ卵管で合成、分泌される糖蛋白質は分
子量97,000で、糖鎖構造の違いにより、等電点が
5.5から8.1までのいくつかのクラスのものがある
ことを見出した。この物質に対するポリクローナル抗体
を作成し、ウェスタンブロット法により分子量97,0
00の抗原と免疫交差することもわかった。この糖蛋白
質は、発情期のウシの卵管液中に存在し、血清中や卵
巣、子宮細胞の培養上清液中には存在しなかった。ま
た、Boiceらは(J. Exp. Zool. 263, 225-229,1992)、こ
の糖蛋白質とウシ受精卵との相互作用を調べた。この糖
蛋白質は、過排卵されたウシ受精卵の透明帯に存在し、
卵巣内卵子には存在しないことを示した。WegnerとKill
ian(Mol. Reprod. Dev. 29, 77-84, 1991)は、発情期の
卵管より分泌される分子量97,000の糖蛋白質と卵
透明帯の相互作用について調べた。この糖蛋白質に対す
るポリクローナル抗体は、発情期の卵管液を処理した透
明帯に強く結合することがわかった。
【0004】卵管は受精の場であり、生体内で受精前精
子が卵管内でしばらくの間留まっていることが知られて
いる(Hunter and Wilmut, Reprod. Nut. Dev. 24, 597-
608,1984)。最近、卵管と精子の生理的相互作用を体外
培養系で調べた報告がある。Pollardら(Biol. Reprod.
44, 102-107, 1991)は、卵管上皮細胞の存在下では、精
子の運動性と受精能が長時間にわたって保持されること
を報告した。しかし、精子と卵管上皮細胞との共培養で
あるため、精子の運動性や受精能を改善する作用は、精
子が直接卵管上皮細胞との接触が必要なのか、また卵管
上皮細胞の合成・分泌する生理活性物質によるものか判
定できなかった。卵管由来の糖蛋白質と精子との生理作
用については、ほとんどその詳細はわかっていない。数
少ない報告の中に、この糖蛋白質は精子と結合すること
が示されている(Suttonら; In Reproduction of Sheep,
Eds D.R. Lindsay and D.T. Pearce. Australian Acad
emy of Science, Canberra, pp140-143, 1984); Lippes
and Wagh; Fert. and Steril. 51, 89-94, 1989)。し
かし、この糖蛋白質が精子と結合することによって、精
子の生物学的役割に対していかなる影響を与えるのかわ
かっていない。
【0005】卵管より分泌・合成される糖蛋白質の遺伝
子解析された結果が、まだ部分的なものではあるが、最
近報告されている(Donnellyら; Mol. Endo, 5, 356-36
4, 1991)。エストロジェン処理した、ヒヒ卵管より分子
量120,000の糖蛋白質が分泌され、主に等電点が
8.0と4.5の2種類であることが二次元電気泳動で
判明した。等電点4.5の酸性の糖蛋白質に対するポリ
クローナル抗体を用いてヒヒ卵管cDNAライブラリー
より約1.2Kbの遺伝子をとり、塩基配列を決定した
ところ、新規の糖蛋白質であることがわかった。また、
ノーザンブロット解析により、この糖蛋白質のmRNA
の長さは2.8Kbであること、卵管のポリ(A)RN
Aの試験管内転写により、この糖蛋白質のコアータンパ
ク質部分の分子量は66,000であることもわかっ
た。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように卵管で合成
・分泌される特異的糖蛋白質が、種々の哺乳類動物で発
見された。これまでに免疫的手法により、性周期依存
性、分子量の同定、卵管内や受精卵の特定の存在様式、
精子との結合などが報告されている。また、最近遺伝子
クローニング、遺伝子塩基配列も一部ではあるが、報告
されている。しかしながら、その物質の主要な生理的役
割についてはほとんどわかっていない。かかる観点か
ら、本発明者等は、卵管で合成・分泌される蛋白質につ
いて鋭意研究を重ねたところ、(1)ウシ卵管組織抽出物
より小麦胚芽レクチン−アガロースアフィニティークロ
マトカラムとMono−Qイオン交換高速液体クロマト
カラムの2段階で、分子量約90,000の糖蛋白質を
分離・精製できること、(2)この糖蛋白質のコア−蛋白
質部分のN末端のアミノ酸配列の決定により、これまで
に報告された蛋白質のデータベースを検索の結果、この
物質は新規の糖蛋白質であると考えられること、(3)こ
の物質は、体外培養系でウシ精子の生存性と運動性を促
進する重要な生理活性物質であることを見出して本発明
を完成した。即ち、本発明は、ウシ精子の生存及び運動
性を保持する活性を有する新規な糖蛋白質性物質を有効
成分とするウシ精子の生存性・運動性保持剤及び当該糖
蛋白質性物質を含有する培地を用いるウシ精子の生存性
及び運動性の保持方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めになされた本発明は、ウシ卵管から得られえる、下記
の理化学的性質及び生理活性を有する糖蛋白質性物質を
有効成分として含有するウシ精子の生存性・運動性保持
剤である。 (1)分子量約90,000(10%ポリアクリルアミド
を支持体としたSDS−電気泳動法による)。 (2)小麦胚芽レクチン−アフィニティークロマトカラム
に親和性を有する。 (3)N末端が、配列表の配列番号1のアミノ酸配列を有
する。 (4)ウシ精子の生存及び運動性を保持する活性を有す
る。 また、本発明の方法は、上記の糖蛋白質性物質を含有す
る培地を用いることからなるウシ精子の生存性及び運動
性の保持方法である。
【0008】本発明の糖蛋白質性物質は、例えば次ぎの
ようにして製造することができる。原料としては、本発
明の糖蛋白質性物質を含有する材料であれば特に限定は
されないが、好適には哺乳類の卵管が用いられる。かか
る生体材料からの本発明糖蛋白質性物質の製造は、基本
的には生体物質から蛋白質類を単離・精製するための一
般的な方法、例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー、イ
オン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマト
グラフィー、吸着クロマトグラフィー、塩析、透析、遠
心分離、限外濾過、凍結乾燥、電気泳動などの方法を適
宜組み合わせて実施することができ、好適にはアフィニ
ティークロマトグラフィーと陰イオン交換クロマトグラ
フィーを用いることにより実施される。
【0009】特に好ましい操作法の一例を具体的に説明
すると、まず原料、例えば哺乳類卵管を用意し、それに
付着している夾雑物(血管、脂肪など)を除去し、適当
な緩衝液(例えば、リン酸緩衝液など)で洗浄した後、
卵管を切開する。切り開かれた卵管を、適当な大きさ
(例えば、0.5〜1cm程度)に切断し、抽出用の緩
衝液(例えば、ベンザミジン及び塩化ナトリウムを含有
するトリス−HCl緩衝液など)に浸し、凍結−融解−
振盪などの方法により組織を破壊させた後、遠心分離し
て上清を分離することにより粗糖蛋白質液を得る。得ら
れた粗糖蛋白質液を、小麦胚芽レクチン−アガロースア
フィニティークロマトグラフィーに付し、洗浄用緩衝液
(例えば、塩化ナトリウムを含有するトリス−HCl緩
衝液など)で洗浄して非吸着物質を溶出させた後、N−
アセチル−D−グルコサミンを含有する洗浄用緩衝液を
用いてカラムに吸着している糖蛋白質を溶出させる。な
お、小麦胚芽レクチンは、N−アセチル−D−グルコサ
ミンとシアル酸残基に対して強い親和性を有することが
知られている。目的糖蛋白質を含有する溶出画分は、M
ono−Qなどの陰イオン交換体を用いた陰イオン交換
クロマトグラフィーに付して更に精製することにより、
目的糖蛋白質が得られる。上記の方法により、本発明の
糖蛋白質性物質が得られ、当該物質は上記の特性により
特定される。
【0010】かくして得られた本発明の糖蛋白質性物質
は、その生理活性を保持する限り、そのアミノ酸配列の
一部が欠失又は他のアミノ酸により置換されていたり、
他のアミノ酸配列が一部挿入されていたり、N末端及び
/又はC末端に1又は2以上のアミノ酸が結合していた
り、あるいは糖鎖が同様に欠失又は置換していてもよ
く、これらの物質も本発明の範囲に包含されるものとす
る。
【0011】
【発明の効果】本発明のウシ精子の生存性・運動性保持
剤の有効成分である糖蛋白質性物質は、ウシ精子の生存
性と運動性を体外培養系において保持する作用を有す
る。従って、本発明の保持剤を精子保存液や体外受精培
地に添加することにより、また本発明の保持方法によれ
ば、精子の生存性と運動性が改善される結果、効率のよ
い正常受精の確保、ひいては胚発生率の改善に対して格
別な効果を奏する。
【0012】
【実施例】以下、本発明を実施例及び試験例に基づいて
より詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定され
るものではない。 実施例1ウシ卵管由来糖蛋白質(以下、BOGPという)の分離
・精製 本発明の目的糖蛋白質を下記の方法で、ウシ卵管から分
離・精製した。即ち、屠殺された牝成牛の卵管(湿重量
約30g、25頭分)を用意した。卵管の回りについて
いる血管、脂肪、結合織をはさみで切除した。卵管をリ
ン酸緩衝液(PBS)で洗浄した後、卵管をはさみで切
開し、開いた状態にした。開かれた卵管は0.5〜1c
m間隔に切り刻み、150ml抽出用緩衝液(20mM
トリス−HCl、10mMベンザミジン−HCl、
0.5M NaCl、pH7.4)に浸した。次に、凍
結(−80℃)し、続いて室温にて融解した。凍結融解
後、卵管組織片を激しく20〜30回シェイクし、遠心
管に分注し、3,500回転/分(r=150mm)で
15分間遠心操作を行い、上清液を回収した。この上清
液を、15,000回転/分(r=80mm)、4℃、
60分間遠心操作を行い、この上清液(可溶性画分蛋白
質量;約2.4g)を粗蛋白質サンプルとした。この粗
蛋白質サンプル(蛋白質濃度;約16mg/ml、15
0ml)を小麦胚芽レクチン(以下、WGAという)−
アガロースアフィニティークロマトカラム(15×55
mm、HONEN)にのせた。その後、200ml洗浄
用緩衝液(20mM トリス−HCl、0.5M Na
Cl、pH7.4)で洗浄し、WGA−アガロースアフ
ィニティークロマトカラムに親和性のない物質をまず溶
出させた。カラムに結合している糖蛋白質は、100m
M N−アセチル−D−グルコサミンを含有した洗浄用
緩衝液(20ml)で溶出させた。かくして溶出され
た、WGA−アガロースアフィニティークロマトカラム
に親和性のある分画(蛋白質量;約22mg)は、Mo
no−Qイオン交換高速液体クロマトカラムにかけ、最
終精製を行った。即ち、このWGA−アガロースアフィ
ニティークロマトカラムに結合した分画を、0.1M
NaClを含む20mM トリス−HCl緩衝液で透析
後、同じ緩衝液で平衡化したMono−Qイオン交換カ
ラムに注入し、同緩衝液でカラムを5分間洗浄後、0.
1〜0.3M NaClの直線的濃度勾配で溶出した。
その結果を図1に示す。図1に示されるように、溶出画
分は、フラクション(Fr)1〜4の分画に分取した。
BOGPはフラクション1〜3(主にフラクション2)
に含有されており、BOGPは糖鎖の異なるいくつかの
分子があると考えられ、フラクション2に示すように溶
出のピークが幅広い糖蛋白質として溶出される。
【0013】実施例2SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動による分析 BOGPの分子量を、SDS−ポリアクリルアミドゲル
電気泳動法により調べた。電気泳動は、常法に準じて、
10%ポリアクリルアミドを支持体としたSDS−電気
泳動法により行い、電気泳動された蛋白質は、クマーシ
ーブルー染色により分子量の同定を行った。その結果を
図2−Aに示す。図2−Aにおいて、1は実施例1にお
ける粗蛋白質サンプル(即ち、ウシ卵管抽出液を15,
000回転/分(r=80mm)遠心後の上清液)であ
り、多くの蛋白質が含まれていることが判る。総蛋白質
量:33μg また、2は、実施例1におけるWGA−アガロースアフ
ィニティークロマトカラムの結合分画であり、ほとんど
が分子量約90,000の糖蛋白質で、他にわずかでは
あるが分子量約66,000及び約55,000の物質
も認められる。総蛋白質量:3.2μg 更に、3は、実施例1におけるMono−Qイオン交換
高速液体クロマトグラフィーにより精製されたフラクシ
ョン2(図1のFr.2)の分画であり、分子量約9
0,000のほぼ単一の糖蛋白質であることが判る。総
蛋白質量:1.4μg
【0014】実施例3イムノブロット法による分析 精製されたBOGPの免疫的同定法として、イムノブロ
ット実験を行った。用いた抗体は、ウシ卵管組織抽出物
をラットに免疫して作成されたポリクローナル抗体を用
いた。このポリクローナル抗体は、ウシ卵胞期卵管灌流
液や卵管上皮組織に特異的に反応し、イムノブロット法
により分子量約90,000の糖蛋白質に反応すること
が既に判明している。実施例1で精製した各試料をSD
S−ポリアクリルアミドゲル電気泳動した後、ニトロセ
ルロースメンブレンにブロットした。メンブレンを3%
ウシ血清アルブミン/リン酸緩衝液で1時間ブロッキン
グを行い、1,000倍に希釈した抗血清を4℃で一晩
反応させた。その後メンブレンを0.05% Twee
n20/トリス−HCl緩衝液で洗浄し、ペルオキシダ
ーゼ結合抗ラットIgG抗体(1,000倍希釈)で室
温にて1時間反応させ、コニカイムノステイニングHR
Pキットで発色させた。その結果を図2−Bに示す。図
2−Bにおいて、1は実施例1における粗蛋白質サンプ
ル(即ち、図2−Aの1に対応)であり、当該サンプル
の主体は分子量約90,000の糖蛋白質であり、他に
わずかに分子量約60,000の物質が免疫的交差を示
した。総蛋白質量:33μg また、2は、実施例1におけるWGA−アガロースアフ
ィニティークロマトカラムの結合分画(図2−Aの2に
対応)であり、分子量約90,000の糖蛋白質のみが
免疫的交差を示した。総蛋白質量:1.6μg 更に、3は、実施例1におけるMono−Qイオン交換
高速液体クロマトグラフィーにより精製されたフラクシ
ョン2の分画(図2−Aの3に対応)であり、分子量約
90,000の糖蛋白質のみが免疫的交差を示した。総
蛋白質量:0.7μg
【0015】実施例4糖鎖分解酵素処理したBOGPのSDS−ポリアクリル
アミドゲル電気泳動による分析 BOGPが糖蛋白質であるかどうかの証明として3種類
の糖鎖分解酵素を処理した後、SDS−ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動法により分子量の移動パターンを調べ
た。電気泳動は、常法に準じて、10%ポリアクリルア
ミドを支持体としてSDS−電気泳動法により行い、電
気泳動された蛋白質は、クマーシーブルー染色により分
子量の同定を行った。その結果を図3に示す。図3の1
〜4はそれぞれ以下の試料を示す。 1:精製された未処理のBOGP(図1のFr.2と同
じサンプル;2.5μg)であり、分子量は約90,0
00であった。 2:100μgのBOGPは0.1%SDSと50mM
2−メルカプトエタノールを含む70μlの20mM
カコジル酸緩衝液(pH7.5)に溶かした。その後、
この糖蛋白質を変性させるため5分間煮沸した。サンプ
ルを室温まで冷却し、25μlの7.5%トリトンX−
100、7.5μlの100mM酢酸カルシウム、0.
08ユニットのノイラミニダーゼを混合し、37℃で1
時間処理した。このノイラミニダーゼ処理でN−アセチ
ルノイラミン酸の糖鎖構造が、特異的に切断された。さ
らにN−結合型の糖鎖を特異的に切断するN−グリカナ
ーゼ(0.3ユニット)を37℃で18時間処理後、電
気泳動を行った。分子量は、約68,000に減少し
た。電気泳動に用いた蛋白質量:2.5μg 3:上記2で得られたノイラミニダーゼ処理されたサン
プルをO−結合型の糖鎖を特異的に切断するO−グリカ
ナーゼ(1ミリユニット)を37℃で18時間処理後電
気泳動を行った。分子量は、約58,000に減少し
た。電気泳動に用いた蛋白質量:2.5μg 4:上記2で得られたノイラミニダーゼ処理されたサン
プルをN−グリカナーゼとO−グリカナーゼを一緒に3
7℃で18時間処理後、電気泳動を行った。分子量は約
53,000に減少した。電気泳動に用いた蛋白質量:
2.5μg 以上の結果より、BOGPはN型結合及びO型結合して
いる糖鎖を、その分子内に含む糖蛋白質であることがわ
かった。それぞれの酵素処理による分子量の差から、少
なくとも1個のN結合型糖鎖と、10個以上のO結合型
糖鎖を保有すると推定できた。
【0016】実施例5精製されたBOGPのN末端のアミノ酸配列の構造決定 実施例1において、Mono−Qイオン交換高速液体ク
ロマトグラフィーにより精製された糖蛋白質(300p
M)を、気相プロティンシークエンサー(島津製作所、
タイプPSQ−1)にかけ、N末端のアミノ酸配列を決
定した。Mono−Qイオン交換高速液体クロマトグラ
フィーによる図1のフラクション2(Fr.2)の分画
を気相プロティンシークエンサーにかけ、N末端より2
9番目までのアミノ酸配列を決定した。その結果を配列
表の配列番号1に示す。この29個のアミノ酸配列をEu
ropean Molecular Biology Laboratory (Swiss PROT)の
データベースで解析したところ、これまでに報告されて
いる蛋白質との相同性は確認できず、新規物質と考えら
れる。なお、配列番号1のアミノ酸配列において、N末
端から5番目のアミノ酸(Xaa)は、同定できなかっ
たことを示す。即ち、気相プロティンシークエンサーで
は、システイン残基と糖の付加されたアミノ酸は解読で
きないので、システイン又は糖鎖の結合したアミノ酸の
可能性がある。
【0017】試験例 精子の生存性及び運動性に対する本発明の糖蛋白質性物
質の効果を以下の方法で試験した。なお、精子生存率及
び運動性の確認は下記の方法により行った。精子生存率及び運動性 まず、生存精子と死滅精子の識別はトリパンブルーによ
る生体染色によって行った。精子は死ぬと細胞膜の透過
性が増し、トリパンブルー色素によって染色される。従
って色素によって染色されたものは死滅精子であり、染
色されないかほとんど染色されないのは生存精子であ
る。精子懸濁液を、同量の0.4%トリパンブルー溶液
[ウシ血清アルブミン(BSA)を添加しないmodified
Tyrode' solution(TALP; Parrishら、Biol.of Re
prod. 38: 1171-1180, 1988)に溶解]と混合し、39℃
の温水中又は炭酸ガス培養装置内で5〜10分間保温し
た。予め39℃に保温しておいたスライドガラス上にト
リパンブルー染色した精子懸濁液を少量滴下し、カバー
ガラスで封入後、ノマルスキー微分干渉顕微鏡で観察し
た。判定の基準は、トリパンブルーで精子の頭部が青色
に染色されたものを死滅精子、一方、頭部がほとんど染
色されない精子を生存精子とした。またトリパンブルー
で染色されず且つべん毛運動が認められる精子を運動精
子とした。精子生存率及び運動精子の比率は、数えた全
精子に対する生存精子及び運動精子の比率で表した。ス
トロー精液管1本あたり少なくとも200個から500
個の精子を数え、そして各ポイントの数値は、3本以上
の異なるストロー精液管における平均及び標準誤差とし
て表した。
【0018】試験例1ウシ精子の生存性及び運動性に対するBOGPの効果 試験に用いた精子は、黒毛和種たね雄ウシから得られた
市販の人工受精用凍結精液を用いた。液体窒素中で保存
したストロー精液管(0.5ml)を、37℃の温水に
1分間浸し解凍した。解凍後、耐凍剤等を除去するため
に、精液0.5mlに2mlのBSA無添加TALPを
加え、2,000回転、5分間遠心分離し、精子を沈殿
させた。遠心分離後、上清を捨て新しいTALPを加え
懸濁し、再び遠心分離し洗浄した。洗浄後、精子を実験
群と対照群に分け、実験群の精子はWGA−アガロース
アフィニティークロマトカラムにより精製したウシ卵管
糖蛋白質(BOGP)を添加したTALPに懸濁した。
対照群の精子は、BOGPを含まないTALPに懸濁し
た。精子懸濁液は0.5mlのマイクロチューブに分注
し、パラフィンオイルでおおい、炭酸ガス培養装置内
(5%CO2、95%空気、39℃)で培養した。懸濁
液中の精子濃度は、約1〜3×107/mlに調整し
た。上記の系における精子の生存率及び運動性を経時的
に測定した。その結果を以下に示す。
【0019】a)精子の生存率に対するBOGPの効果 精子の生存率の経時的変化を図4に示す。図4に示され
るように、凍結精子は、解凍直後精子の生存率は約60
%であった。対照群では、精子生存率は培養1時間目で
すでに20%と激減し、その後も継時的に低下した。培
養12時間目には、死滅精子の比率は約96%にもなっ
た。一方、BOGP(500μg/ml)添加した培養
では、対照群でみられた急激な生存率の低下は起こら
ず、培養12時間目でもまだ30%の精子の生存が確認
された。
【0020】b)精子の運動性に対するBOGPの効果 精子の運動性の経時的変化を図5に示す。図5に示され
るように、解凍直後の運動精子の比率は50.1%であ
った。対照群では、培養1時間目ですでにほとんどの精
子は運動性を失っていた(運動精子;1.5%)。一
方、BOGP(500μg/ml)添加した培養では、
対照群に比べて運動精子数の減少率は小さく、培養6時
間目でも、まだ23.1%の精子が運動機能を保持して
いた。また、BOGP添加の培養系では、運動精子は対
照群の運動精子に比べ、活発なべん毛運動しているのが
観察された。これらの結果から、BOGPはウシ精子の
運動能を長時間維持する効果があることがわかった。
【0021】試験例2異なる種雄ウシ由来精子生存率に対するBOGPの効果 3頭の異なる種雄ウシ由来の精子に対して、BOGPの
精子生存率に対する効果を調べた。3頭の異なる種雄ウ
シ精子(それぞれA、B、Cと表す)は、BOGP(5
00μg/ml)を添加又は無添加のTALPで6時間
培養後、精子生存率を調べた。その結果を図6に示す。
図6に示されるように、精子生存率は、BOGP無添加
(A 6.9%;B 19.3%;C 14.0%)に
対し、BOGP添加では、(A 44.9%;B 4
6.6%;C 42.8%)と3頭の雄ウシの精子のい
ずれもBOGP添加で高い精子生存率が得られることが
わかった。
【0022】試験例3異なる種雄ウシ由来精子の運動性に対するBOGPの効
試験例2と同じ3頭の異なる種雄ウシ由来の精子に対し
て、BOGPの精子運動性に対する効果を調べた。精子
はBOGP(500μg/ml)を添加又は無添加のT
ALPで6時間培養後、精子の運動性を調べた。その結
果を図7に示す。図7に示されるように、運動精子の比
率は、BOGP無添加では(A 0.3%;B 6.3
%;C 1.6%)とほとんどの精子は、運動性を失っ
ていた。他方、BOGP添加では、(A 23.1%;
B 25.8%;C 24.8%)と3種類とも20%
〜30%と高い精子運動性を保持していた。
【0023】試験例4ウシ精子の生存率及び運動性に対するBOGP濃度依存
BOGPをそれぞれ0μg、1μg、10μg、100
μg、500μg/mlの濃度で添加したTALPで6
時間培養し、精子生存率と運動精子率を調べた。その結
果を表1に示す。表1に示されるように、精子生存率は
BOGP無添加の対照群で9.3%であるが、BOGP
の濃度に依存して精子生存率の増加がみられ、500μ
g/mlでは44.9%になった。また、運動精子の比
率もBOGP濃度に依存して増加し、0μg/mlで
1.1%であったが、500μg/ml添加では23.
1%にも上昇した。
【0024】
【0025】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:29 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:ペプチド フラグメント:N末端フラグメント 配列の特徴: 他の情報:配列中、第5番目のアミノ酸は、システイン
又は糖鎖が結合したアミノ酸を示す。 配列 His-Lys-Leu-Val-Xaa-Tyr-Phe-Thr-Asn-Trp-Ala-Phe-Ser-Arg-Pro- 1 5 10 15 Gly-Pro-Ala-Ser-Ile-Leu-Pro-Arg-Asp-Leu-Asp-Pro-Phe-Leu- 20 25
【図面の簡単な説明】
【図1】Mono−Qイオン交換高速液体クロマトグラ
フィーによるBOGPの溶出を示す図である。
【図2】実施例1における各精製段階の生成物のSDS
−ポリアクリルアミドゲル電気泳動パターン(A)とラ
ット抗BOGP抗血清を用いたイムノブロッティング
(B)を示す写真である。
【図3】糖鎖分解酵素で処理したBOGPのSDS−ポ
リアクリルアミドゲル電気泳動パターンを示す写真であ
る。
【図4】ウシ精子生存率に対するBOGPの効果を示す
図である。
【図5】ウシ精子運動性に対するBOGPの効果を示す
図である。
【図6】異なる種雄ウシ由来精子生存率に対するBOG
Pの効果を示す図である。
【図7】異なる種雄ウシ由来精子の運動性に対するBO
GPの効果を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 Mol.Endocrinol.,V ol.5,No.3(1991)p.356− 364 Biol.Reprod.,Vol. 43,No.3(1990)p.457−465 J.Reprod.Fertil., Vol.85,No.3(1992.Au g.)p.841−854 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) CA(STN) REGISTRY(STN) SwissProt/PIR/GeneS eq BIOSIS/WPI(DIALOG) PubMed

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ウシ卵管から得られえる、下記の理
    化学的性質及び生理活性を有する糖蛋白質性物質を有効
    成分として含有するウシ精子の生存性・運動性保持剤。 (1)分子量約90,000(10%ポリアクリルアミド
    を支持体としたSDS−電気泳動法による)。 (2)小麦胚芽レクチン−アフィニティークロマトカラム
    に親和性を有する。 (3)N末端が、配列表の配列番号1のアミノ酸配列を有
    する。 (4)ウシ精子の生存性及び運動性を保持する活性を有す
    る。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の糖蛋白質性物質を含
    有する培地を用いることを特徴とするウシ精子の生存性
    及び運動性の保持方法。
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J.Reprod.Fertil.,Vol.85,No.3(1992.Aug.)p.841−854
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