JP2019180286A - 活性型組換えアクロシン - Google Patents

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Abstract

【課題】活性型のアクロシンの新規調製方法を提供し、アクロシンの利用の拡大ないし促進に貢献することを課題とする。【解決手段】トリプシンドメインを含み、且つC末端疎水領域を含まないアクロシンをコードする遺伝子を真核細胞内で発現させるステップ、及び当該ステップによって培地中に分泌発現された組換えアクロシンを、アクロシンに対して可逆的ないし一過性阻害作用を示すプロテアーゼ阻害剤の存在下で自己活性化させるステップ、を含む、活性型組換えアクロシンの調製方法が提供される。【選択図】なし

Description

本発明はセリンプロテアーゼの一種であるアクロシンに関する。詳しくは、活性型組換えアクロシンの調製方法及び用途、アクロシン遺伝子の機能評価方法及びその用途等に関する。
哺乳動物精子アクロソームに局在するセリンプロテアーゼであるアクロシンは、ヒト、ブタ、マウス、ラット等から単離され、その分子構造と遺伝子の塩基配列が決定されている(非特許文献1〜7)。また、ニワトリ等の鳥類からもアクロシンが単離、同定されている(例えば特許文献1)。
天然のアクロシンは一本鎖のプレプロアクロシンとした合成された後、プロセシングを受けて成熟し、活性型となる。アクロソーム中では前駆体(プロアクロシン)として存在し、アクロソーム反応に伴い自己活性化し、特定のペプチド結合が切断され活性型のアクロシンに変換される。活性型アクロシンは卵透明帯を分解して精子の透明帯貫通を助けるとともに、透明帯結合タンパク質として精子と透明帯との結合にも関与する。
生体においてタンパク質分解酵素として、また精子・卵相互作用因子として特徴的な機能を発揮するアクロシンには、試薬(酵素剤)や 医薬・動物医薬等への利用が期待される。実際、ニワトリのアクロシンAはトリプシンでは切断されないアルギニン−プロリン間も特異的に切断するという、極めてユニークな特性を示し、構造解析、質量分析によるタンパク質の同定等のツールとして有用である。
アクロシンは産業上の利用価値の高い酵素ではあるが、精子に局在するが故、生体から採取することは難しく、且つ現実的でもなく、その調製と利用は極めて限定的である。また、大腸菌等を用いて発現させた組換えアクロシンはそのままでは不溶性、不活性型のため、産業的に利用することが困難であった。
本発明者らの研究グループは、ニワトリのプロ型アクロシンAを、S2細胞を用いて発現させ、可溶性タンパク質として分泌させることに成功した。分泌されたプロ型アクロシンAは不活性であったが、トリプシンで限定分解することで活性化した(2015年12月1日〜4日開催の第38回日本分子生物学会年会及び第88回日本生化学会大会、2P0943 (2T17−14) 題目:精子アクロシンによる卵外被溶解現象の分子基盤で発表)(非特許文献8)。但し、実用的には、アクロシンの活性化/分解による失活、及び残存するトリプシン(夾雑プロテアーゼ活性)が問題となる。
特開2015−204795号公報
Baba, T., Kashiwabara, S., Watanabe, K., Itoh, H., Michikawa, Y., Kimura, K., Takada, M. Fukamizu, A. & Arai, Y. (1989), J. Biol. Chem., 264: 11920-11927. Adham, I. M., Klemm, U., Maier, W. M., Hoyer-Fender. S., Tsaousidou, S. & Engel, W. (1989), Eur. J. Biochem., 182: 563-568. Baba, T., Watanabe, K., Kashiwabara, S. & Arai, Y. (1989), FEBS Lett., 244: 296-3OO. Kashiwabara, S., Baba, T., Takada, M., Watanabe, K., Yano, Y. & Arai, Y. (1990), J. Biochem., 108: 785-791. Klemm, U., Maier, W., Tsaousidou. S., Adham, I. M., Willison, K. & Engel, W. (1990), Differentiation, 42: 160-166. Kremling, H., Hake, A., Adham, I. M., Radtke, J. & Engel, W. (1991), DNA Sequence, 2: 57-60. Raterman D, Springer MS.(2008), Mol Reprod Dev., 75:1196-207. 第38回日本分子生物学会年会及び第88回日本生化学会大会 要旨集 2P0943 (2T17−14)
上記背景の下で本発明は、活性型のアクロシンの新規調製方法を提供し、アクロシンの利用の拡大ないし促進に貢献することを課題とする。また、アクロシンの新たな用途を提供することも課題とする。
上記課題を解決すべく本発明者らは、特にアクロシンの構造に注目し、様々な実験を行った。まず、効率的な発現に有利と考え、ショウジョウバエS2細胞発現系を採用してニワトリアクロシンAの調製を試みたところ、全長のアクロシンを発現させると培地中に分泌されず且つ活性型アクロシンが得られなかった。そこで、アクロシンの構造を精査し、トリプシンドメインとC末端側疎水領域に注目しつつ実験を進めた結果、C末端側疎水領域を欠落させることでプロ型アクロシンとして発現・分泌が可能であることが明らかとなった。また、実質的にトリプシンドメインのみが発現するようにすると、発現後のインキュベートによって自己活性化が可能な組換え体が得られることが判明した。
更に検討を進め、哺乳動物のアクロシンの分泌発現も試みた結果、ニワトリアクロシンと同様に、実質的にトリプシンドメインのみを発現させると自己活性化可能なプロ型組換え体が得られた。また、効率的な自己活性化には、発現した組換え体を濃縮すること(高密度化による分子間相互作用の促進)が重要であることが示唆された。
また、ショウジョウバエS2細胞でアクロシンを発現させると、発現した組換えアクロシンがS2細胞由来セルピン(セリンプロテアーゼインヒビター)と共有結合複合体を形成するという、驚くべき現象が認められた。この現象について検討を加えた結果、自己活性化によって活性型となった組換えアクロシンが、培地中に存在するセルピンによる速やかな可逆的阻害(セルピンは通常、非可逆的阻害能を示すが、アクロシンに対しては可逆的/一過性に阻害すると思われる)を受け、更なる自己分解ないし失活への進行が抑制されていることが示唆された。その結果、培地中に酵素・インヒビター複合体として安定に蓄積されるものと推測された。
一方、公共のデータベースに登録されているヒトアクロシンの一塩基多型(SNP)に着目して検討した結果、SNPがアクロシンの分泌と自己活性化に大きな影響を及ぼすことが判明するとともに、高活性或いは失活をもたらすSNPを特定することに成功した。
以下の発明は上記の成果及び考察に基づく。
[1]以下のステップを含む、活性型組換えアクロシンの調製方法:
(1)トリプシンドメインを含み、且つC末端疎水領域を含まないアクロシンをコードする遺伝子を真核細胞内で発現させるステップ、
(2)ステップ(1)によって発現し培地中に分泌されたプロ型組換えアクロシンを、アクロシンに対して可逆的ないし一過性阻害作用を示すプロテアーゼ阻害剤の存在下で自己活性化させるステップ。
[2]前記アクロシンが、実質的にトリプシンドメインのみで構成される、[1]に記載の調製方法。
[3]前記真核細胞が昆虫細胞である、[1]又は[2]に記載の調製方法。
[4]前記昆虫細胞が、セルピンを発現するショウジョウバエS2細胞である、[3]に記載の調製方法。
[5]前記アクロシンがニワトリアクロシンAであり、
培地中に分泌されたプロ型アクロシンを高密度化した後にインキュベートすることによって前記自己活性化を生じさせる、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の調製方法。
[6]前記アクロシンがニワトリアクロシンB又は哺乳動物アクロシンであり、
培地中に分泌されたプロ型アクロシンをそのまま、あるいは高密度化することによって前記自己活性化を生じさせる、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の調製方法。
[7]ペプチドタグ又はポリペプチドタグをコードする配列が前記遺伝子に連結されており、
抗タグ抗体又はタグ親和性物質を用いた濃縮によって、培地中に分泌されたプロ型組換えアクロシンを高密度化させる、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の調製方法。
[8]前記抗タグ抗体又はタグ親和性物質が多孔性担体に結合している、[7]に記載の調製方法。
[9][1]〜[8]のいずれか一項に記載の調製方法で得られた活性型組換えアクロシンを含む酵素剤。
[10][1]〜[8]のいずれか一項に記載の調製方法で得られた活性型組換えアクロシンを含む、体外受精又は人工授精の補助剤。
[11]プロテアーゼ阻害剤と複合体を形成した状態の活性型組換えアクロシン。
[12]プロテアーゼ阻害剤がセルピンである、[11]に記載の活性型組換えアクロシン。
[13]I185T変異及び/又はR200P変異を含む、組換えヒトアクロシン。
[14]アクロシン遺伝子の一塩基多型(SNP)を検出することを特徴とする、アクロシン遺伝子の機能評価方法。
[15]前記アクロシン遺伝子がヒトアクロシン遺伝子であり、前記SNPがrs576896841、rs368795913、rs376638753、rs371232787、rs537612569、rs577242211、rs553367757、rs371960370及びrs139648296からなる群より選択される一又は二以上のSNPである、[14]に記載の機能評価方法。
[16]以下の判定基準(A)及び/又は(B)に基づき遺伝子機能を評価する、[15]に記載の機能評価方法、
(A) 554T>C変異及び/又は599G>C変異が検出された場合に翻訳産物の酵素活性が高い、
(B) 124C>T変異、554T>C変異、598C>T変異、599G>C変異、632C>T変異、675C>G変異、685C>G変異、799G>T変異又は811C>T変異、或いはこれらの中の二つ以上の変異が検出された場合に翻訳産物の酵素活性が低い。
ニワトリアクロシンAを用いた発現、分泌および活性化条件の検討。(A) ニワトリアクロシンAのドメイン構造および変異あるいは欠失させた部位。(B) ニワトリアクロシンAの野生型および各種欠失変異体の発現および分泌確認。抗タグ抗体を用いた免疫ブロット解析(L:細胞溶解液、M:培養上清)(C) 活性型ニワトリアクロシンAの調製。(D) 抗V5抗体-アガロースアフィニティーゲルに結合させインキュベート(活性化)したアクロシンA欠失変異体の成熟型への変換とプロテアーゼ活性。 ヒトアクロシン遺伝子SNPsの発現およびその翻訳産物の酵素活性。(A) ヒトアクロシン(トリプシンドメインまで)の野生型(WT)および各種SNP変異体のSDS-PAGE/免疫ブロット解析。上段は短時間露光によりバンドを検出した結果、下段は長時間露光の結果。中抜き及び塗り潰しの矢じりは、アクロシン及びアクロシン・セルピン複合体のバンドを示す。(B) SDS-PAGE/ザイモグラフィーの結果。(C) 蛍光基質(EGR及びVVR)に対する活性測定の結果。 ヒトアクロシン遺伝子の構造およびSNPsの部位。ヒトアクロシン遺伝子およびタンパク質の構造および今回解析したSNPsの部位。ヒトアクロシン遺伝子は5つのエキソンで構成されている。エキソンにおけるSNPsの中からアミノ酸置換を伴う変異を選択し、さらにその中から酵素活性中心及び透明帯結合領域に近いSNPsを選抜した。中抜きの丸(○)で示したSNPはセルピンとの複合体形成が起こらず、活性も見られなかった変異を示す。ただし、P229Aに関しては発現量が多い場合のみ野生型と同程度の活性を示した。塗り潰しの丸(●)で示したSNPはセルピンとの複合体形成が起こるものの、活性が見られなかった変異を示す。菱形(◇)で示したSNPはS2細胞において細胞外への分泌が見られない、あるいはザイモグラフィーで活性が見られるものの、蛍光基質に対する活性が見られなかった変異を示す。 活性を確認したヒトアクロシンSNPs。675C>G(C225W)以外のSNPsは2つ以上のヒトゲノムプロジェクトにおいてマイナーアレル頻度(MAF)が示されているものの中からMAFが0.01以下のSNPsを選抜して組換えアクロシンを作成した。 ショウジョウバエS2細胞で発現させた組換えヒトアクロシンタンパク質の解析。(A) ショウジョウバエS2細胞で発現させた組換えヒトアクロシンの非還元条件下でのSDS-PAGE/CBB染色の結果。(B) SDS-PAGE/ザイモグラフィーの結果。(C) MALDI-TOF/TOF-MS/MSによる同定。ザイモグラフィーで活性が見られたバンド1から3をCBB染色したゲルから切り出し、トリプシンによるゲル内消化を行った後、トリプシン消化物をMALDI-TOF/TOF-MS/MSに供した。バンド2からはセルピンとアクロシンが同定された。 大豆トリプシンインヒビター(SBTI)による組換えヒトアクロシン-セルピン複合体形成の抑制。(A) 活性型ヒトアクロシン単量体の調製。(B) SBTI存在下で発現させたヒトアクロシンの還元条件下(還元)および非還元条件下(非還元)でのSDS-PAGE/免疫ブロット解析の結果。(C) SDS-PAGE/ザイモグラフィーの結果。
1.活性型組換えアクロシンの調製方法
本発明の第1の局面は活性型組換えアクロシンの調製方法に関する。「活性型組換えアクロシン」とは、遺伝子組換えの手法を用いて調製され、前駆体(プロ体)がプロセシングを受けて成熟化することで活性を示すことになったアクロシンである。本発明では自己活性化によって成熟化、即ち、前駆体から活性型への変換が生じる。本発明の調製方法によれば、自己活性化により限定分解(活性化に必要な分解)させつつ、必要以上の分解を抑制でき、活性型組換えアクロシンを効率的に調製することが可能になる。従って、本発明は各種用途に利用可能な、即ち、産業上の利用価値の高い、高活性のアクロシンを得る手段として有用である。
本発明の調製方法では以下のステップ(1)及び(2)を行う。尚、以下の説明から明らかな通り、本発明の調製方法はin vitroで実施されるものであり、個体を構成していない細胞を用いて組換えタンパク質(アクロシン)が調製される。
(1)トリプシンドメインを含み、且つC末端疎水領域を含まないアクロシンをコードする遺伝子を真核細胞内で発現させるステップ
(2)ステップ(1)によって発現し培地中に分泌された組換えプロ型アクロシンを、アクロシンに対して可逆的ないし一過性阻害作用を示すプロテアーゼ阻害剤の存在下で自己活性化させるステップ
ステップ(1)は特徴的な構造のアクロシンを宿主細胞内で発現させるステップである。ステップ(1)として、典型的には、以下のステップ(i)〜(iii)が行われる。
(i)トリプシンドメインを含み、且つC末端疎水領域を含まないアクロシンをコードする遺伝子を保持する発現ベクターを用意するステップ
(ii)前記発現ベクターを宿主真核細胞に導入するステップ
(iii)前記発現ベクターが導入された形質転換体を培養し、前記アクロシンを発現させ、細胞外に分泌させるステップ
ステップ(i)では、宿主真核細胞内でのアクロシンの発現を可能にする発現ベクターを用意する。発現ベクターには、宿主真核細胞内でアクロシンの発現が可能なように、宿主真核細胞で機能するプロモーターが組み込まれる。プロモーターの例を示すと、メタロチオネインプロモーター、βアクチンプロモーター、CMV-IE(サイトメガロウイルス初期遺伝子由来プロモーター)、SV40、EF1α、RSV、SRα等である。プロモーターはアクロシン遺伝子を作動可能に連結される。ここで、「プロモーターがアクロシン遺伝子を作動可能に連結している」とは、「プロモーターの制御下にアクロシン遺伝子が配置されている」ことと同義であり、通常、プロモーターの3'末端側に直接又は他の配列を介してアクロシン遺伝子が連結されることになる。
発現ベクターは、宿主真核細胞内でのアクロシンの発現に必要な又は有利なその他の要素、例えば、ポリA付加シグナル配列、検出用遺伝子、エンハンサー配列、WRPE配列等、を含むことができる。ポリA付加シグナル配列は転写の修了に利用される。ポリA付加シグナル配列としてはSV40のポリA付加配列、ウシ由来成長ホルモン遺伝子のポリA付加配列等を用いることができる。検出用遺伝子としては、ネオマイシンに対する耐性を付与するneo遺伝子、カナマイシン等に対する耐性を付与するnpt遺伝子(Herrera Estrella、EMBO J. 2(1983)、987-995)やnptII遺伝子(Messing & Vierra.Gene 1 9:259-268(1982))、ハイグロマイシンに対する耐性を付与するhph遺伝子(Blochinger & Diggl mann,Mol Cell Bio 4:2929-2931)、メタトレキセートに対する耐性を付与するdhfr遺伝子(Bourouis et al.,EMBO J.2(7))等(以上、マーカー遺伝子)、ルシフェラーゼ遺伝子(Giacomin、P1. Sci. 116(1996)、59〜72;Scikantha、J. Bact. 178(1996)、121)、β-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子、GFP(Gerdes、FEBS Lett. 389(1996)、44-47)やその改変体(EGFPやd2EGFPなど)等の蛍光タンパク質の遺伝子(以上、レポーター遺伝子)、細胞内ドメインを欠く上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子等の遺伝子を用いることができる。検出用遺伝子は、例えば、バイシストロニック性制御配列(例えば、リボソーム内部認識配列(IRES))や自己開裂ペプチドをコードする配列を介して融合タンパク質遺伝子に連結させることができる。自己開裂ペプチドの例はThosea asigna virus由来の2Aペプチド(T2A)であるが、これに限定されるものではない。自己開裂ペプチドとして蹄疫ウイルス(FMDV)由来の2Aペプチド(F2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)由来の2Aペプチド(E2A)、porcine teschovirus(PTV-1)由来の2Aペプチド(P2A)等が知られている。検出用遺伝子は、アクロシン遺伝子の導入の成否や効率の判定、アクロシンの発現の検出又は発現効率の判定、アクロシン遺伝子が発現した細胞の選択や分取等に利用される。一方、エンハンサー配列の使用によって発現効率の向上が図られる。
後述のステップ(2)での自己活性化のために、及び/又は活性型組換えアクロシンの回収のために、タグ(ペプチドタグ又はポリペプチドタグ)をコードする配列を発現ベクターに組み込むことが好ましい。タグをコードする配列はアクロシン遺伝子に連結される。様々なタグを利用することができる。ペプチドタグの例を示すと、FLAG(登録商標)、HA、6×His、Myc、V5、T7、Strep-tag II、CBD(Chitin Binding Domain)、CBP(Calmodulin Binding Peptide)であり、ポリペプチドタグの例を示すと、MBP(maltose binding protein)、GFP、GST、TRXなどである。この態様の場合、タグが連結した組換えアクロシンが分泌発現することになる。
アクロシンの由来(動物種)は特に限定されない。例えば、ニワトリ、ヒト、ブタ、ウシ、マウス、ラット又はウサギのアクロシンが発現されることになる。以下に各動物種のアクロシンのアミノ酸配列及び遺伝子配列を示す。
<ニワトリアクロシンA>
アミノ酸配列(NCBI GenPept DEFINITION: acrosin-a [Gallus gallus]. ACCESSION: BAW27655):配列番号1(1位〜28位はシグナルペプチド。50位〜294位はトリプシンドメイン)
遺伝子配列(NCBI GenBank DEFINITION: Gallus gallus ACR mRNA for acrosin-a, complete cds. ACCESSION: AB769484):配列番号2
<ニワトリアクロシンB>
アミノ酸配列(NCBI GenPept DEFINITION: acrosin-b [Gallus gallus]. ACCESSION: BAW27656):配列番号3(1位〜19位はシグナルペプチド。41位〜284位はトリプシンドメイン)
遺伝子配列(NCBI GenBank DEFINITION: Gallus gallus ACR mRNA for acrosin-b, complete cds. ACCESSION: AB769485):配列番号4
<ヒトアクロシン>
アミノ酸配列(NCBI GenPept DEFINITION: acrosin precursor [Homo sapiens]. ACCESSION: NP_001088 XP_003403795):配列番号5(1位〜19位はシグナルペプチド。43位〜290位はトリプシンドメイン)
遺伝子配列(NCBI GenBank DEFINITION: Homo sapiens acrosin (ACR), mRNA. ACCESSION: NM_001097 XM_003403747):配列番号6
<ブタアクロシン>
アミノ酸配列(NCBI GenPept DEFINITION: acrosin precursor (EC 3.4.21.10) [Sus scrofa]. ACCESSION: AAA31131):配列番号7(1位〜15位はシグナルペプチド。40位〜288位はトリプシンドメイン)
遺伝子配列(NCBI GenBank DEFINITION: Sus scrofa acrosin (ACR), mRNA. ACCESSION: NM_214033):配列番号8
<ウシアクロシン>
アミノ酸配列(NCBI GenPept DEFINITION: acrosin precursor [Bos taurus]. ACCESSION: NP_776311 XP_001256933):配列番号9(1位〜17位はシグナルペプチド。40位〜288位はトリプシンドメイン)
遺伝子配列(NCBI GenBank DEFINITION: Bos taurus acrosin (ACR), mRNA. ACCESSION: NM_173886 XM_001256932):配列番号10
<マウスアクロシン>
アミノ酸配列(NCBI GenPept DEFINITION: acrosin isoform 1 precursor [Mus musculus]. ACCESSION: NP_038483):配列番号11(1位〜19位はシグナルペプチド。43位〜291位はトリプシンドメイン)
遺伝子配列(NCBI GenBank DEFINITION: Mus musculus acrosin prepropeptide (Acr), transcript variant 1, mRNA. ACCESSION: NM_013455):配列番号12
<ラットアクロシン>
アミノ酸配列(NCBI GenPept DEFINITION: acrosin precursor [Rattus norvegicus]. ACCESSION: NP_036622):配列番号13(1位〜19位はシグナルペプチド。43位〜291位はトリプシンドメイン)
遺伝子配列(NCBI GenBank DEFINITION: Rattus norvegicus acrosin (Acr), mRNA. ACCESSION: NM_012490):配列番号14
<ウサギアクロシン>
アミノ酸配列(NCBI GenPept DEFINITION: acrosin precursor [Oryctolagus cuniculus]. ACCESSION: NP_001075805):配列番号15(1位〜16位はシグナルペプチド。40位〜288位はトリプシンドメイン)
遺伝子配列(NCBI GenBank DEFINITION: Oryctolagus cuniculus acrosin (ACR), mRNA. ACCESSION: NM_001082336):配列番号16
特徴的な構造のアクロシンを発現させるため、発現ベクターには、トリプシンドメインを含み、且つC末端疎水領域を含まないアクロシンをコードする遺伝子が組み込まれる。アクロシンのC末端疎水領域は、ニワトリアクロシンAであればPro329(329位プロリン)〜Ala354(354位アラニン)が該当し、ニワトリアクロシンBであれば、Ser315(315位セリン)〜Ala345(345位アラニン)が該当し、ヒトアクロシンであれば、Glu380(380位グルタミン酸)〜Ser421(421位セリン)が該当し、ブタアクロシンであればGlu375(375位グルタミン酸)〜Ser415(415位セリン)が該当し、ウシアクロシンであれば、Glu373(373位グルタミン酸)〜Ser414(414位セリン)が該当し、マウスアクロシンであれば、Ser353(353位セリン)〜Ser436(436位セリン)が該当し、ラットアクロシンであれば、Ala354(354位アラニン)〜Ser437(437位セリン)が該当し、ウサギアクロシンであれば、Glu385(385位グルタミン酸)〜Ser431(431位セリン)が該当する。
好ましくは、実質的にトリプシンドメインのみで構成されるアクロシンが発現するように、トリプシンドメイン以降が欠落したアクロシンをコードする遺伝子が用いられる。「実質的にトリプシンドメインのみで構成される」とは、トリプシンドメインに続く配列を含んでいたとしても僅かであり(例えば1〜10個のアミノ酸)、トリプシンドメインのみで構成されているものと同一視できる状態をいう。実質的にトリプシンドメインのみで構成されるアクロシンは自己活性化し易く、例えば、後述のステップ(2)の操作を簡便にし得る点や活性型組換えアクロシンの収量の増大を望める点において有利である。「実質的にトリプシンドメインのみで構成されるアクロシン」の典型的な例である、トリプシンドメイン以降が欠落したアクロシンのアミノ酸配列とそれをコードする遺伝子の具体例を、動物種毎に示す。
<ニワトリアクロシンA>
アミノ酸配列(配列番号17)
遺伝子(配列番号18)
<ニワトリアクロシンB>
アミノ酸配列(配列番号19)
遺伝子(配列番号20)
<ヒトアクロシン>
アミノ酸配列(配列番号21)
遺伝子(配列番号22)
<ブタアクロシン>
アミノ酸配列(配列番号23)
遺伝子(配列番号24)
<ウシアクロシン>
アミノ酸配列(配列番号25)
遺伝子(配列番号26)
<マウスアクロシン>
アミノ酸配列(配列番号27)
遺伝子(配列番号28)
<ラットアクロシン>
アミノ酸配列(配列番号29)
遺伝子(配列番号30)
<ウサギアクロシン>
アミノ酸配列(配列番号31)
遺伝子(配列番号32)
各種真核細胞発現系に利用可能な発現ベクターが数多く開発されており、既存の発現ベクターを利用して、本発明に使用する発現ベクターを構築することができる。
ステップ(i)で用意した発現ベクターは宿主真核細胞に導入される(ステップ(ii))。導入操作は常法で行えばよい。発現ベクターの宿主真核細胞への導入には、各種遺伝子導入法を利用することができる。例えば、感染(ウイルスベクターを使用する場合)、エレクトロポレーション(Potter,H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81, 7161-7165(1984))、リポフェクション(Felgner, P.L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84,7413-7417(1987))等の方法により形質転換を行うことができる。
宿主真核細胞は特に限定されず、例えば、ショウジョウバエS2細胞、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)由来のSf9細胞、イラクサギンウワバTrichoplusia ni由来のBTI-TN-5B1-4(High Five)等の昆虫細胞、CHO細胞、BHK細胞、COS-7細胞、HeLa細胞、ナマルバ細胞、HEK293細胞、HCT116細胞、Jurkat細胞、HL-60細胞、PC-12細胞、A431細胞、U2OS細胞、K-562細胞、Expi293FTM細胞等の哺乳動物細胞、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パトリス(Pichia pastoris)等の酵母細胞を用いることができる。好ましくは、高発現を望める昆虫細胞を用いる。昆虫細胞の中でも特にS2細胞が好ましい。S2細胞を用いた発現系の場合、アクロシンが発現する際に内因性のセルピンも発現する。セルピンは発現後に自己活性化したアクロシン(活性型組換えアクロシン)と複合体を形成し、活性型組換えアクロシンの自己分解/失活を抑制する。即ち、活性型組換えアクロシンに対して可逆的ないし一過性阻害作用を示すプロテアーゼ阻害剤として機能する。従って、S2細胞を用いれば、後述のステップ(2)に要求される条件、即ち、「アクロシンに対して可逆的ないし一過性阻害作用を示すプロテアーゼ阻害剤の存在下」が自ずと形成され、プロテアーゼ阻害剤を添加する必要がなくなる。
ステップ(ii)に続くステップ(iii)では、発現ベクターが導入された宿主真核細胞(形質転換体)を培養し、アクロシンを発現させる。培養条件は、形質転換体が生育し、アクロシンの発現が可能である限り、特に限定されない。標準的な培養条件を基準として必要に応じて修正を加えればよい。また、予備実験によって適当な培養条件を設定することが可能である。
培地の組成は特に限定されず、宿主真核細胞の培養に適した基礎培地に必要な成分を添加して用いればよい。培地に添加可能な成分の例として血清又は血清代替物、抗生物質、2-メルカプトエタノール、ビタミン、アミノ酸、インスリン、トランスフェリン、セレニウム、無機塩(カリウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リン酸塩、マンガン塩、鉄塩、亜鉛塩等)を挙げることができる。
以上のステップ(1)に続くステップ(2)では、培地中に分泌発現された組換えアクロシンを、アクロシンに対して可逆的ないし一過性阻害作用を示すプロテアーゼ阻害剤の存在下で自己活性化させる。該当するプロテアーゼ阻害剤の例はSBTI(大豆トリプシンインヒビター)などのクニッツ型インヒビターや卵白オボムコイドなどのカザール型インヒビターなどである。上記の通り、宿主真核細胞としてS2細胞を用いれば、S2細胞が発現するセルピンが「アクロシンに対して可逆的ないし一過性阻害作用を示すプロテアーゼ阻害剤」として機能するため、プロテアーゼ阻害剤を培地に添加することなく自己活性化させればよい。但し、この場合においても、アクロシンに対して可逆的ないし一過性阻害作用を示すプロテアーゼ阻害剤、例えばSBTI(大豆トリプシンインヒビター)などのクニッツ型インヒビターや卵白オボムコイドなどのカザール型インヒビターなど、を添加することにしてもよい。SBTI(大豆トリプシンインヒビター)などのクニッツ型インヒビターや卵白オボムコイドなどのカザール型インヒビター等のプロテアーゼ阻害剤を添加すれば、それが自己活性化したアクロシンと複合体を形成する(自己活性化したアクロシンのセルピンとの複合体形成が抑制される)。例えば、SBTIを用いた場合には、SBTI-活性型組換えアクロシン複合体が形成される。この場合、アクロシンに付したタグやSBTIに親和性を示すカラム等を用いて当該複合体を捕捉した後、酸性緩衝液で処理すれば、SBTIと活性型組換えアクロシンが解離し、遊離状態の活性型組換えアクロシンを回収することができる。
一方、S2細胞のようにセルピンを発現する細胞を用いない場合には、アクロシンに対して可逆的ないし一過性阻害作用を示すプロテアーゼ阻害剤を培地に添加した上で自己活性化させることになる。プロテアーゼ阻害剤を培地に添加する場合の添加量は、自己活性化したアクロシンが更に自己分解/失活するのを抑制するという目的と、過度のプロテアーゼ阻害剤の存在は自己活性化の進行に影響することを考慮の上、予備実験を通して決定すればよい。尚、SBTI等を用いれば、上記の通り、遊離状態の活性型組換えアクロシンを簡便に回収することができる。
自己活性化の操作/条件は、発現させるアクロシンの種類/由来に応じて設定される。例えば、アクロシンがニワトリアクロシンAの場合、培地中に分泌されたアクロシンを高密度化した後にインキュベートし、自己活性化を生じさせる。アクロシンの高密度化は、例えば、限外濾過や硫安沈殿などによる濃縮、凍結乾燥等によって達成することができる。好ましくは、タグを利用した濃縮によって、自己活性化を進行させる。即ち、好ましい態様では、タグを組み込んだ発現ベクターを用いてステップ(1)を行うことにし(タグが連結した組換えアクロシンが発現することになる)、発現した組換えアクロシンを抗タグ抗体やタグ親和性物質で捕捉して濃縮する。不溶性担体に結合した抗タグ抗体やタグ親和性物質(即ち、固相化抗タグ抗体、固相化タグ親和性物質)を用いれば、沈降、遠心分離、磁力の印加(不溶性担体として磁性粒子を用いた場合)、カラムクロマトグラフィー等の操作によって、発現した組換えアクロシンを濃縮することが可能である。このように、固相化抗タグ抗体又は固相化タグ親和性物質を利用した場合、濃縮/高密度化(自己活性化)の後の活性型組換えアクロシンの分離ないし回収も容易である。尚、タグ親和性物質の例はマルトース(MBPに対する親和性物質)、グルタチオン(GSTに対する親和性物質)である。
抗タグ抗体やタグ親和性物質を固相化する不溶性担体の材質の例はセファロース、アガロース、磁性材料(フェライトやマグネタイトなどの酸化鉄、酸化クロム、コバルトなど)である。好ましくは、セファロース、アガロース、セファデックス、セファクリル等の多孔性材料を採用する。多孔性材料の担体を用いれば、その表面に結合した抗タグ抗体やタグ親和性物質を介してアクロシンを捕捉した際、分子間相互作用が生じ易い状態が形成され、自己活性化の効率が向上し得る。担体の形状は好ましくは粒子状(ビーズ)である。
高密度化後のインキュベートの条件は、例えば、25℃〜37℃、60分〜180分とする。最適な条件は予備実験によって決定することができる。尚、自己活性化が生じたことは、例えば、還元条件下でのSDS-PAGEによって分子量が低下(N-末端ペプチドの切断)したことによって確認することができる。
アクロシンがニワトリアクロシンB又は哺乳動物アクロシンの場合には、培地中に分泌されたアクロシンを高密度化することによって短時間で自己活性化を生じさせることができる。換言すれば、ニワトリアクロシンAの場合とは異なり、高密度化により速やかに自己活性化が進行するため高密度化後のインキュベートは自己活性化に必須ではない。但し、自己活性化の促進ためにインキュベートすること(条件はニワトリアクロシンAの場合に準ずればよい)を妨げるものではない。また、ニワトリアクロシンB又は哺乳動物アクロシンの場合、高密度化は自己活性化に必須ではなく、分泌発現されたアクロシンを高密度化することなく(即ち、そのままの状態で)自己活性化させることも可能である。尚、高密度化の操作、条件等はニワトリアクロシンAの場合に準ずる。
自己活性化後の活性型組換えアクロシンの回収は常法で行えばよい。例えば、濃縮による高密度化を行った場合には、濃縮状態にある活性型組換えアクロシンを、必要に応じて洗浄操作を行いつつ、回収(分離)すればよい。固相化抗タグ抗体又は固相化タグ親和性物質を利用した場合には、必要に応じて固相化抗タグ抗体又は固相化タグ親和性物質から活性型組換えアクロシンを解離(分離)させる。純度や比活性を高めるため、或いは溶媒を交換する等のために、以上のごとき回収操作に加え、塩析、透析、各種クロマトグラフィー等を利用した精製を行うことにしてもよい。
S2細胞を用いてアクロシンを発現した場合には、典型的には、セルピン−活性型組換えアクロシン複合体が回収されることになる(遊離状態のセルピンが除去される)。回収したセルピン−活性型組換えアクロシン複合体をインキュベートし、セルピンの分解とアクロシン複合体からの解離を促し、遊離状態の活性型アクロシンを生成させることにしてもよい。
自己活性化、即ちステップ(2)の前に、分泌発現された組換えアクロシンを保存することにしてもよい。保存中の自己分解を抑制するために、酸性緩衝液(例えばpH3前後)中で組換えアクロシンを保存するとよい。また、低温下での保存が望まれ、冷蔵又は冷凍保存するとよい。自己活性化後の組換えアクロシンを保存することも可能であり、その場合にも同様の保存条件を採用するとよい。保存後のアクロシンを使用する際には、例えば、中性(pH7〜pH8)環境下、25℃〜37℃でインキュベートすればよい。
本発明の調製方法によれば、自己活性化した組換えアクロシン(活性型組換えアクロシン)が得られる。プロテアーゼ阻害剤の存在下で自己活性化させることにより、プロテアーゼ阻害剤と複合体を形成した活性型組換えアクロシンが生じる。S2細胞を利用して本発明の活性型組換えアクロシンを調製した場合には、上記の通り、セルピンと複合体を形成した状態であるという、特徴的な構造の活性型組換えアクロシンを得ることも可能である。
2.活性型組換えアクロシンの用途
本発明の調製方法で得られた活性型組換えアクロシンは、試薬、医薬、動物医薬等として用いられる酵素剤として利用可能である。即ち、活性型組換えアクロシンは例えば酵素剤の形態で提供される。酵素剤は、有効成分(本酵素)の他、賦形剤、緩衝剤、懸濁剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水などを含有していてもよい。賦形剤としてはデンプン、デキストリン、マルトース、トレハロース、乳糖、D-グルコース、ソルビトール、D-マンニトール、白糖、グリセロール等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としてはエタノール、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。
本発明の調製方法で得られた活性型組換えアクロシンは、体外受精又は人工授精(体内受精)の補助剤としても利用することができる。即ち、本発明は、活性型組換えアクロシンを含む体外受精補助剤及び人工授精補助剤も提供する。例えば、遺伝的要因や凍結保存などにより精子の受精能が低下している場合や卵透明帯が強固で精子が貫通しにくい場合に本発明は有用である。活性型組換えアクロシンを利用した体外受精及び人工授精の詳細を以下で説明する。
活性型組換えアクロシンを体外受精に利用する場合には、例えば、活性型組換えアクロシンの存在下、精子と卵子が共存する状態を形成するか、事前に活性型組換えアクロシンの存在下で培養(インキュベート)した精子(あるいは卵子)と卵子(あるいは精子)が共存する状態を形成する。精子と卵子が共存する状態を形成させるためには、両者を同一の容器内に入れ、培養(インキュベート)すればよい。活性型組換えアクロシンは顕微授精にも利用可能であり、顕微授精に利用する場合には、活性型組換えアクロシンを精子とともに卵子に注入するか、事前に活性型組換えアクロシンの存在下で培養(インキュベート)した精子を卵子に注入すればよい。
精子及び卵子の由来となる生物種の例はヒト、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、鳥類(ニワトリ、ウズラ、カモなど)である。精子と卵子の生物種は原則として同一である。但し、受精可能な組合せであれば、精子の生物種と卵子の生物種が異なっていてもよい。体外受精に使用する卵子は、生体からの単離や細胞バンクなどから分譲などによって用意すればよい。
一方、活性型組換えアクロシンに期待される作用効果、即ち、受精率の向上が得られるのであれば、活性型組換えアクロシンの由来(生物種)と精子の生物種は特に限定されないが、通常は同一にする。
活性型組換えアクロシンを哺乳動物での人工授精に利用する場合には、活性型組換えアクロシンを精子とともに哺乳動物の子宮に注入することになる。詳細には、例えば、(a)活性型組換えアクロシンと精子を混合した後に哺乳動物の子宮に注入する、(b)活性型組換えアクロシンと精子を同時に哺乳動物の子宮に注入する、又は(c)活性型組換えアクロシンと精子を別々に哺乳動物の子宮に注入する(好ましくは活性型組換えアクロシンの注入後に精子を注入する)。
3.アクロシン遺伝子の機能評価方法
本発明の更なる局面は、アクロシンの一塩基多型(SNP)がアクロシンの活性に影響するという知見に基づき、一塩基多型を利用してアクロシン遺伝子の機能を評価する方法を提供する。本発明のアクロシン遺伝子機能評価方法は、アクロシン遺伝子における、特定のSNPの検出によって特徴付けられる。典型的には、本発明のアクロシン遺伝子機能評価方法では、対象から採取された核酸検体を用意し、アクロシン遺伝子の特定のSNPを検出するステップ(以下、「検出ステップ」と呼ぶ)と、検出結果に基づきアクロシン遺伝子の機能を評価するステップ(以下、「評価ステップ」と呼ぶ)が行われる。即ち、対象から採取された核酸検体について特定のSNPを検出し、検出結果に基づきアクロシン遺伝子の機能を評価する。対象はヒト、非ヒト動物(例えば、ブタ、ウシ、ニワトリ等の家畜、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター等のペット/コンパニオンアニマル、害獣や希少種の野生動物等である。対象がヒトの場合(即ち、ヒトアクロシン遺伝子の機能を評価する場合)、検出される特定のSNPは、以下のSNPの中から選択することができる。尚、一つのSNPのみを検出対象にしても、或いは二以上のSNPを検出対象にしてもよい。
rs576896841(124C>T、R42C)
rs368795913(554T>C、I185T)
rs376638753(598C>T、R200C)
rs371232787(599G>C、R200P)
rs537612569(632C>T、S211L)
rs577242211(675C>G、C225W)
rs553367757(685C>G、P229A)
rs371960370(799G>T、A267S)
rs139648296(811C>T、R271C)
野生型(正常型)ヒトアクロシン遺伝子のmRNAの配列を配列番号6(NCBI GenBank DEFINITION: Homo sapiens acrosin (ACR), mRNA. ACCESSION: NM_001097 XM_003403747)に示す。
本発明では、核酸検体が特定のSNP(変異)を有するか否か、即ち、特定のSNPに関して野生型であるか変異型であるかを明らかにするためにSNPが検出される。本発明のアクロシン遺伝子機能評価方法では、まず、対象から採取された核酸検体を用意する。核酸検体は対象の血液、唾液、リンパ液、尿、汗、皮膚細胞、粘膜細胞、毛髪等から公知の抽出方法、精製方法を用いて調製することができる。検出対象のSNP位置を含むものであれば任意の長さのゲノムDNAを核酸検体として用いることができる。
SNPの検出法(測定法)は特に限定されるものではなく例えばアレル特異的プライマー(及びプローブ)を用い、PCR法による増幅、及び増幅産物の変異を蛍光又は発光によって検出する方法や、PCR(polymerase chain reaction)法を利用したPCR-RFLP(restriction fragment length polymorphism:制限酵素断片長多型)法、PCR-SSCP(single strand conformation polymorphism:単鎖高次構造多型)法(Orita,M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 86, 2766-2770(1989)等)、PCR-SSO(specific sequence oligonucleotide:特異的配列オリゴヌクレオチド)法、PCR-SSO法とドットハイブリダイゼーション法を組み合わせたASO(allele specific oligonucleotide:アレル特異的オリゴヌクレオチド)ハイブリダイゼーション法(Saiki, Nature, 324, 163-166(1986)等)、TaqMan(登録商標、Roche Molecular Systems社)-PCR法(Livak, KJ, Genet Anal,14,143(1999),Morris, T. et al., J. Clin. Microbiol.,34,2933(1996))に代表されるリアルタイムPCR法、Invader(登録商標、Third Wave Technologies社)法(Lyamichev V et al., Nat Biotechnol,17,292(1999))、FRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)を利用した方法(Heller, Academic Press Inc, pp. 245-256(1985)、Cardullo et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8790-8794(1988)、国際公開第99/28500号パンフレット、特開2004-121232号公報など)、ASP-PCR(Allele Specific Primer-PCR)法(国際公開第01/042498号公報など)、プライマー伸長法を用いたMALDI-TOF/MS(matrix)法(Haff LA, Smirnov IP, Genome Res 7,378(1997))、RCA(rolling cycle amplification)法(Lizardi PM et al., Nat Genet 19,225(1998))、DNAチップ又はマイクロアレイを用いた方法(Wang DG et al., Science 280,1077(1998)等)、プライマー伸長法、サザンブロットハイブリダイゼーション法、ドットハイブリダイゼーション法(Southern,E., J. Mol. Biol. 98, 503-517(1975))等、公知の方法を採用できる。さらに、検出対象のSNP位置を直接シークエンスすることにしてもよい。尚、これらの方法を任意に組み合わせてSNPを検出してもよい。また、PCR法又はPCR法を応用した方法などの核酸増幅法により核酸試料を予め増幅(核酸試料の一部領域の増幅を含む)した後、上記いずれかの検出法を適用することもできる。
多数の核酸検体を検出する場合にはアレル特異的PCR法、アレル特異的ハイブリダイゼーション法、TaqMan(登録商標)-PCR法、Invader法、FRETを利用した方法、ASP-PCR法、プライマー伸長法を用いたMALDI-TOF/MS(matrix)法、RCA(rolling cycle amplification)法、又はDNAチップ又はマイクロアレイを用いた方法等、多数の検体を比較的短時間で処理可能な検出法を用いることが特に好ましい。
以上の方法では、各方法に応じたプローブやプライマー等の核酸(本発明において「SNP検出用核酸」ともいう)が使用される。プローブとして利用されるSNP検出用核酸の例としては、検出対象のSNP位置を含む染色体領域(部分染色体領域)に特異的にハイブリダイズする核酸を挙げることができる。検出対象のSNPの位置を含む染色体領域を標的としてプローブを設計すればよい。ここでの「部分染色体領域」の長さは、例えば16〜500塩基長、好ましくは18〜200塩基長、さらに好ましくは20〜50塩基長である。また、当該核酸は好ましくは部分染色体領域に相補的な配列を有するが、特異的なハイブリダイゼーションに支障のない限り、多少のミスマッチがあってもよい。ミスマッチの程度としては、1〜数個、好ましくは1〜3個、更に好ましくは1〜2個である。ここでの「特異的なハイブリダイゼーション」とは、核酸プローブによる検出の際に通常採用されるハイブリダイゼーション条件(好ましくはストリンジェントな条件)の下、標的の核酸(部分染色体領域)に対してハイブリダイズする一方で、他の核酸との間にクロスハイブリダイゼーションを有意に生じないことを意味する。尚、当業者であれば例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)を参考にしてハイブリダイゼーション条件を容易に設定可能である。
プライマーとして利用されるSNP検出用核酸の例としては、検出対象のSNP位置を含む染色体領域(部分染色体領域)に相補的な配列を有し、当該SNP部分を含むDNAフラグメントを特異的に増幅できるように設計された核酸を挙げることができる。プライマーとして利用されるSNP検出用核酸の他の例として、検出対象のSNP位置がいずれかの塩基である場合にのみ当該SNP位置を含むDNAフラグメントを特異的に増幅するように設計されたプライマーペアを挙げることができる。より具体的には、検出対象のSNP位置を含むDNAフラグメントを特異的に増幅するように設計されたプライマーペアであって、SNP位置がいずれかの塩基であるアンチセンス鎖の当該SNP位置を含む染色体領域(部分染色体領域)に対して特異的にハイブリダイズするセンスプライマーと、センス鎖の一部領域(SNP位置の近傍領域)に対して特異的にハイブリダイズするアンチセンスプライマーとからなるプライマーペアを例示することができる。ここで、増幅されるDNAフラグメントの長さはその検出に適した範囲で適宜設定され例えば15〜1000塩基長、好ましくは20〜500塩基長、更に好ましくは30〜200塩基長である。尚、プローブの場合と同様、プライマーとして利用されるSNP検出用核酸についても、増幅対象(鋳型)に特異的にハイブリダイズし、目的のDNAフラグメントを増幅することができる限り、鋳型となる配列に対して多少のミスマッチがあってもよい。ミスマッチの程度としては、1〜数個、好ましくは1〜3個、更に好ましくは1〜2個である。
SNP検出用核酸(プローブ、プライマー)には、検出法に応じて適宜DNA、RNA、ペプチド核酸(PNA:Peptide nucleic acid:)等が用いられる。SNP検出用核酸の塩基長はその機能が発揮される長さであればよく、プローブとして用いられる場合の塩基長の例としては16〜500塩基長、好ましくは18〜200塩基長、さらに好ましくは20〜50塩基長である。他方、プライマーとして用いられる場合の塩基長の例としては10〜50塩基長、好ましくは15〜40塩基長、更に好ましくは15〜30塩基長である。
SNP検出用核酸(プローブ、プライマー)はホスホジエステル法など公知の方法によって合成することができる。尚、SNP検出用核酸の設計、合成等に関しては成書(例えばMolecular Cloning,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New YorkやCurrent protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987))を参考にすることができる。
本発明におけるSNP検出用核酸を予め標識物質で標識しておくことができる。このような標識化核酸を用いることにより、例えば、増幅産物の標識量を指標として変異を検出することができる。また、変異型(マイナーアレル)の遺伝子における部分DNA領域に特異的なプローブと、野生型の遺伝子における部分DNA領域に特異的なプローブを異なる標識物質で標識しておけば、増幅産物から検出される標識物質及び標識量によって、SNPの有無を判別できる。
SNP検出用核酸の標識に用いられる標識物質としてはFAMTM(6-carboxyfluorescein)、VICTM、TETTM(tetrachlorofluorescein)、NEDTM、HEXTM、CAL Fluor Gold 540、CAL Fluor Orange 560(CFO)、CAL Fluor Red 590、CAL Fluor Red 610、CAL Fluor Red 635、Quasar 570、Quasar 670、Quasar 705、T(JOETM)、7-AAD、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)647、CyTM 2、DsRED、EGFP、EYFP、FITC、PerCPTM、R-Phycoerythrin、Propidium Iodide、AMCA、DAPI、ECFP、MethylCoumarin、Allophycocyanin(APC)、CyTM 3、CyTM 5、Rhodamine-123、Tetramethylrhodamine、テキサスレッド(Texas Red(登録商標))、PE、PE-CyTM5、PE-CyTM5.5、PE-CyTM7、APC-CyTM7、オレゴングリーン(Oregon Green)、カルボキシフルオレセイン、カルボキシフルオレセインジアセテート、量子ドットなどの蛍光色素、32P、131I、125Iなどの放射性同位元素、ビオチンを例示でき、標識方法としてはアルカリフォスファターゼ及びT4ポリヌクレオチドキナーゼを用いた5'末端標識法、T4 DNAポリメラーゼやKlenow断片を用いた3'末端標識法、ニックトランスレーション法、ランダムプライマー法(Molecular Cloning,Third Edition,Chapter 9,Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)などを例示できる。
SNP検出用核酸を不溶性支持体に固定化した状態で用いることもできる。固定化に使用する不溶性支持体をチップ状、ビーズ状などに加工しておけば、これら固定化核酸を用いてSNPの検出をより簡便に行うことができる。
本発明では、アクロシン遺伝子の特定のSNPの検出結果を基にアクロシン遺伝子の機能を評価する。換言すれば、本発明は、検出結果、即ち変異情報からアクロシン遺伝子の機能を評価するステップ(評価ステップ)を含む。評価ステップにおける判定基準の例として、対象がヒトの場合(即ち、ヒトアクロシン遺伝子の機能を評価する場合)の判定基準(A)及び(B)を以下に示す。尚、判定基準(A)及び(B)はいずれかのみを採用することもできるが、好ましくは両方を併用し、より有益な評価結果を得る。
(A) 554T>C変異及び/又は599G>C変異が検出された場合に翻訳産物(即ち、アクロシンタンパク質)の酵素活性が高い
(B) 124C>T変異、554T>C変異、598C>T変異、599G>C変異、632C>T変異、675C>G変異、685C>G変異、799G>T変異又は811C>T変異、或いはこれらの中の二つ以上の変異が検出された場合に翻訳産物(即ち、アクロシンタンパク質)の酵素活性が低い
尚、上掲のSNP以外のSNPを検出対象にする場合には、実施例の欄に示した実験手法によって当該SNPとアクロシンの活性との関係性を評価し、評価結果に対応した判定基準を作成すればよい。
評価結果は、検査対象のアクロシン遺伝子の有用性を示す。例えば、翻訳産物の酵素活性が高いと評価されたアクロシン遺伝子は有用性に優れる。従って、その翻訳産物(アクロシン)は試薬(典型的には酵素剤の有効成分)としての価値が高い。一方、ヒト(男性)や家畜(オス)、ペット動物(オス)等のアクロシンを検査対象にした場合には、受精能力の評価ないし推定に評価結果を利用することができる。具体的には例えば、雄性不妊の診断及びその後の対処(不妊対策の検討、治療等)に利用できる他、家畜やペットの繁殖(人工授精の成功率や効率の向上)、育種・種の維持(例えば絶滅危惧種の維持、ペットの系統の維持又は交雑)等への利用も図られる。
以上の説明からも明らかな通り、ヒトアクロシン遺伝子における、554T>C及び599G>CのSNPは活性の高いアクロシンを特徴付けるものであり、これらのSNPに関して変異体(即ち、マイナーアレルがコードするタンパク質)であるアクロシンは活性が高く、各種用途で有用である。そこで本発明は、554T>Cに対応するI185T変異、及び/又は599G>Cに対応するR200P変異を含み、野生型(変異を有しないもの)と比較して活性が高いという特徴を有する組換えヒトアクロシンを提供する。I185T変異を含むヒトアクロシンのアミノ酸配列を配列番号33に、R200P変異を含むヒトアクロシンのアミノ酸配列を配列番号34にそれぞれ示す。尚、これらの組換えヒトアクロシンの活性型については、本発明の第1の局面の方法を利用して調製することができる。
活性型組換えアクロシンの調製方法の確立及びアクロシンの新規用途を見出すことを目指し、以下の検討を行った。
1.方法
(1)ニワトリアクロシン発現コンストラクトの構築
昆虫細胞発現用ベクターであるpMT/BiP/V5-His A(Invitrogen)を制限酵素SpeI(TaKaRa)およびEcoRV(TaKaRa)で処理し、同様の制限酵素で処理したAcrosin-a cDNA(アミノ酸残基29-354(シグナル配列以外の部分)をコードする)を挿入した(pMT/BiP/ACRA WT/V5-His)。さらに、PCR法によってカルボキシ末端側を欠損あるいは1アミノ酸変異を導入した複数のコンストラクトも構築した(pMT/BiP/ACRA C328A/V5-His、pMT/BiP/ACRAΔ329-354/V5-His、pMT/BiP/ACRAΔ327-354/V5-His、pMT/BiP/ACRAΔ295-354/V5-HisおよびpMT/BiP/ACRAΔ295-354, S244A/V5-His)。
(2)ヒトアクロシン発現コンストラクトの構築
昆虫細胞発現用ベクターであるpMT/BiP/V5-His A(Invitrogen)を制限酵素SpeI(TaKaRa)およびApaI(TaKaRa)で処理し、ヒトAcrosin遺伝子のトリプシンドメイン領域を含むcDNA(アミノ酸残基20-290をコードする)をSLiCE法[Motohashi, 2015 BMC Biotechnology]によって挿入した(pMT/BiP/hACRT WT/V5-His)。
(3)ヒトアクロシンSNPsの探索および発現コンストラクトの構築
NCBI(National Center for Biotechnology Information)データベースに登録されているヒトアクロシンのSNPs(Single Nucleotide polymorphisms)のうち、アミノ酸置換を伴うものを選択した(図4)。これらのSNPsをPCR法によってpMT/BiP/hACRT WT/V5-Hisに導入した。
(4)タンパク質の発現、分泌の確認
2日前に継代したショウジョウバエS2細胞を回収し、無血清培地(Sf 900IISFM(GIBCO)、penicillin G(明治製菓)、streptomycin(明治製菓))で懸濁した。6ウェルプレートに2.7x 106 cellsとなるように播種し、培地の量は2 mlとした。DDAB(dimethyl dioctadecyl ammonium bromide、250μg/ml in EtOH、Sigma-Aldrich) 48μlと無血清培地96μlを混合し、室温で5分間静置した。このDDAB/無血清培地に、それぞれの発現プラスミドを1μg加え、室温で15分間静置した。プラスミド溶液を全量添加し5時間、25℃で培養した。5時間後培地を交換し、それぞれのフラスコに100 mM CuSO4を14μl添加(終濃度0.7 mM)し、発現誘導を行った。発現誘導から4日後に、培養上清を回収した。遠心分離(3,000xg, 5 min, 4℃)により細胞の残渣を除いた上清1 mlから、10μlの抗V5抗体-アガロースアフィニティーゲル(Sigma-Aldrich)を用いて組換えアクロシンタンパク質を精製した。ビーズに結合した組換えタンパク質は2x SDS-PAGEサンプルバッファー(40 mM Tris-HCl; pH 6.8, 2% SDS, 12% glycerol, 0.024% BPB, ±2% β-Me)を用いて溶出させた。
それぞれのサンプルを、10%アクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEで分画後、免疫ブロット解析を行った。使用した抗体を以下に示す。
一次抗体:ウサギ抗V5抗体(MBL)(1:5,000)
二次抗体:POD-抗ウサギIgG抗体(Cell Signaling)(1:10,000)
(5)ニワトリアクロシンタンパク質の活性化
組み換えニワトリアクロシンタンパク質が結合した抗V5抗体-アガロースアフィニティーゲルを、0.1 M Tris-HCl(pH8.5)で懸濁し(50%スラリー)、37℃で2時間静置した。活性化の確認は、免疫ブロット解析およびザイモグラフィーによって行った。
(6)活性の測定(蛍光合成基質)
Nuncフルオロヌンクプレート(Nunc)の各ウェルに、0.1 M Tris-HCl(pH8.5) 193μlと蛍光合成基質(Boc-Glu(Obzl)-Gly-Arg-MCA(EGR)およびZ-Val-Val-Arg-MCA(VVR); 10 mMになるようにDMSOで溶解したもの) 2μlを加えた(溶液を加えた段階で終濃度100μM)。それぞれのウェルにビーズ懸濁液(50%スラリー)を5μl加えた。蛍光/マイクロプレートリーダーFluoroskan Ascent(Thermo)を用いて励起波長355 nm、吸収波長460 nmの蛍光を5分おきに60分間測定した。
(7)活性の測定(ザイモグラフィー)
β-Meを含まない2x SDS-PAGEサンプルバッファーで溶出させたサンプルの一部を用いて、0.1%ゼラチンを含む10%アクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEを行った。泳動終了後、2.5% Triton X-100溶液中でゲルを40分間振盪しSDSを置き換えた。0.1 M glycine-NaOH(pH8.3)中で37℃、1時間(ニワトリアクロシン)あるいは一晩(ヒトアクロシン)静置したのち、CBB染色を行い、白抜けしたバンドを検出した。
(8)質量分析
培養上清2.4 mlから抗V5抗体-アガロースアフィニティーゲルに結合させた組換えタンパク質を、β-Meを含まない2x SDS-PAGEサンプルバッファーを用いて溶出させた。溶出させたサンプルを、10%アクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEで分画後、CBB染色を行った。
適度な染色図が得られるまで脱色したゲルからライトボックス上で目的のバンドをスパーテルで切り出した。切り出したゲル片を1 mm角に刻んで1.5 mlチューブ(マイクロレシコチューブ、リッチェル)に移した。30% acetonitril/0.1 M NH4HCO3を1 ml加え、室温で15分間攪拌した。攪拌後、ゲルを吸い込まないように溶液を取り除いた。この操作を計3回繰り返して、ゲル片を完全に脱色した。溶液を捨て、遠心濃縮機を用いて20分間真空にしてゲル片を乾燥させた。乾燥後、10 mM DTT(dithiothreitol、Wako)をゲル片が完全に浸るように加え(100μl)、37℃で30分間静置した。溶液を捨て、1% アクリルアミド溶液を100μl加え、室温で30分間振盪した。溶液を捨て、30% acetonitril/0.1 M NH4HCO3を1 ml加え、室温で15分間攪拌した。ゲルを吸い込まないように溶液を取り除き、100% acetonitrilを100μl加え、室温で5分間振盪した。溶液を捨て、遠心濃縮機を用いて20分間真空にしてゲル片を乾燥させた。
氷上で、乾燥させたゲル片にトリプシン/Lys-C溶液(10 ng/μl Trypsin/Lys-C Mix(Promega)、0.01% ProteaseMAX surfactant(Promega)、50 mM NH4HCO3)をゲル片の体積に応じて加えた。ゲル全体が膨潤、透明になったことを確認したのち、0.01% ProteaseMAX surfactant/50 mM NH4HCO3を50μl加えた。37℃で3時間静置し、ゲルの周りの溶液を回収した。回収した溶液が35μl(加えた量の70%)より少なかった場合は、15μlの0.01% ProteaseMAX surfactant/50 mM NH4HCO3を加え、さらに50℃で10分間静置し溶液を回収した。回収した溶液に2% TFA(Trifluoroacetic acid)を約10μl加え、pH試験紙で酸性になったことを確認した。遠心分離(20,000xg, 10 min, RT)を行い、分解したProteaseMAX surfactantを除去した。上清をフィルター(0.1μm、Millipore)に通し、沈殿物を除去した。
フィルターを通した溶液をDiNa逆相クロマトグラフィー(DiNa-MaP(ダイレクトナノLC/MALDIフラクションシステム)、ケーワイエーテクノロジーズ)に供し、マトリクス(CHCA(α-cyano-4-hydroxycinnamic acid)、島津GLC)を混ぜながら、プレート上に1サンプルあたり96スポットした。測定はAB SCIEX TOF/TOFTM 5800(AB SCIEX)を用いて行った。測定後、各スポットの情報をMascot Daemon(Matrix Science)を用いてサンプルごとにまとめたのち、Mascot(http://www.matrixscience.com/あるいはhttp://dh4pznbx/mascot/、Matrix Science)を用いてデータベース検索を行い、分解断片の同定を行った。検索条件は以下のようにした。
MS/MS Ion Search; Database: NCBInr、Taxonomy: All、Enzyme: Trypsin、Max missed cleavages: 3、Fixed modifications: Propionamide(C)、Variable modifications: Oxidation(M)、Peptide tol.: ±0.1 Da、Mass values: MH+、MS/MS tol.: ±0.3 Da、Protein Mass: Unrestricted、Peptide charge: 1+、Instrument: MALDI-TOF-TOF
(9)SBTI存在下でのS2細胞の培養
2日前に継代したショウジョウバエS2細胞を回収し、無血清培地(Sf 900IISFM(GIBCO)、penicillin G(明治製菓)、streptomycin(明治製菓))で懸濁した。6 well plateに2.7x 106 cellsとなるように播種し、培地の量は2 mlとした。DDAB(dimethyl dioctadecyl ammonium bromide、250μg/ml in EtOH、Sigma-Aldrich) 48μlと無血清培地96μlを混合し、室温で5分間静置した。このDDAB/無血清培地に、それぞれの発現プラスミドを1μg加え、室温で15分間静置した。プラスミド溶液を全量添加し5時間、25℃で培養した。5時間後培地を新しい無血清培地1.8 mlと0.45μmのフィルターを用いて滅菌したSBTI溶液(10-1000μg/ml Soybean trypsin inhibitor(Sigma-Aldrich)/1x PBS) 200μl(SBTIの終濃度; 1-100μg/ml)に交換した。それぞれのフラスコに100 mM CuSO4を14μl添加(終濃度0.7 mM)し、発現誘導を行った。発現誘導から4日後に、培養上清を回収した。遠心分離(3,000xg, 5 min, 4℃)により細胞の残渣を除いた上清1 mlから、10μlの抗V5抗体-アガロースアフィニティーゲル(Sigma-Aldrich)を用いて組換えアクロシンタンパク質を精製した。ビーズに結合した組換えタンパク質は2x SDS-PAGEサンプルバッファー(40 mM Tris-HCl; pH 6.8, 2% SDS, 12% glycerol, 0.024% BPB, ±2% β-Me)を用いて溶出させた。
2.結果
(1)ニワトリアクロシンAを用いた、アクロシンの発現及び活性化条件の検討
ニワトリアクロシンAのドメイン構造に注目し、C末端側領域を欠失させた各種欠失変異体を設計し(図1A)、野生型とともに発現させた。詳しくは、ショウジョウバエS2細胞にそれぞれの野生型および欠失変異体を発現するコンストラクトをトランスフェクションし、3日間発現誘導した。細胞溶解液(L)および培養上清(M)を回収し、還元条件下でSDS-PAGEを行い、V5タグに対する抗体を用いた免疫ブロット解析でバンドを検出した(図1B)。培養上清は全体の1/5量、細胞溶解液は全体の1/20量アプライした。Δ295-354変異体で良好な発現及び分泌が認められた。尚、「Δ295-354,S244A」は活性中心のSerをAlaに置換した(S244A変異を有する)不活性型のΔ295-354変異体である。
一方、ショウジョウバエS2細胞にそれぞれのコンストラクトをトランスフェクションし、4日後に培養上清を回収した。抗V5抗体-アガロースアフィニティーゲルを用いて、培養上清からニワトリアクロシンAタンパク質を回収した。ビーズにアクロシンAを結合させた状態で、37℃で2時間静置し自己活性化させた(図1C)。発現誘導4日後の培養上清を回収し、抗V5抗体が結合したセファロースビーズを用いて免疫沈降を行った。ビーズに結合したヒトアクロシンをSDS-PAGEサンプルバッファーで溶出させ、SDS-PAGE/免疫ブロット解析を行った。還元条件下(還元)および非還元条件下(非還元)で泳動後、転写した(図1D上)。また、非還元条件下でSDS-PAGE/ザイモグラフィーを行った(図1D下)。ザイモグラフィーは基質としてゼラチンを用いて、37℃で1時間反応させた。Δ295-354変異体に活性が認められ、自己活性化が生じたことがわかる。
(2)ヒトアクロシンSNPsの発現およびその活性
ヒトアクロシン(トリプシンドメインまで)の野生型(WT)およびSNP変異体発現コンストラクトを、ショウジョウバエS2細胞にトランスフェクションした。CuSO4で発現誘導を行い、4日後の培養上清を回収し、抗V5抗体-アガロースアフィニティーゲルを用いて免疫沈降を行った。ビーズに結合したヒトアクロシンをSDS-PAGEサンプルバッファーで溶出させ、SDS-PAGE/免疫ブロット解析を行った。還元条件下(還元)および非還元条件下(非還元)で泳動後、転写した。図2A上段に短時間露光によりバンドを検出した結果を、同下段に長時間露光の結果を示す。R42C変異体、R200C変異体、C225W変異体、P229A変異体及びR271C変異体の泳動パターンは野生型(WT)と顕著に異なり、発現又は発現後のプロセシングに異常が生じていることが示唆される。
ビーズに結合したヒトアクロシンをSDS-PAGEサンプルバッファーで溶出させ、SDS-PAGE/ザイモグラフィーを行った。ザイモグラフィーは基質としてゼラチンを用いて、37℃で一晩反応させた。一方、ビーズに結合したヒトアクロシンを用いて、蛍光基質に対する活性を測定した。蛍光ペプチド基質として、EGR(Boc-Glu(OBzl)-Gly-Arg-MCA)およびVVR(Z-Val-Val-Arg-MCA)を用いた。図2B(ザイモグラフィー)及び図2C(蛍光合成基質)に示すように、I185T変異体とR200P変異体に高い活性が認められた。対照的に、R42C変異体、R200C変異体、C225W変異体、P229A変異体、A267S変異体及びR271C変異体の活性は極めて低い(C225W変異体は分泌発現されない。図2A参照)。図3に各SNPの位置(A:遺伝子における位置、B:推定立体構造における位置)を示す。尚、本検討で活性を確認したヒトアクロシンSNPsの一覧を図4に示す。
(3)ショウジョウバエS2細胞で発現させた組換えヒトアクロシンタンパク質の解析
ヒトアクロシン(トリプシンドメインまで)の野生型(WT)発現コンストラクトを、ショウジョウバエS2細胞にトランスフェクションした。CuSO4で発現誘導を行い、4日後の培養上清を回収し、抗V5抗体-アガロースアフィニティーゲルを用いて免疫沈降を行った。ビーズに結合したヒトアクロシンをSDS-PAGEサンプルバッファーで溶出させ、非還元条件下でSDS-PAGE/CBB染色を行った(図5A)。また、ゼラチンを基質としたSDS-PAGE/ザイモグラフィーを行った(図5B)。ザイモグラフィーで活性が見られたバンド1から3をCBB染色したゲルから切り出し、トリプシンによるゲル内消化を行った。トリプシン消化物をMALDI-TOF/TOF-MS/MSに供した。MALDI-TOF/TOF-MS/MSによる質量分析の結果(図5C)、バンド2および3からヒトアクロシンが同定された。また、バンド2からショウジョウバエSerpin 88Eaが同定された。一方、バンド1からはヒトアクロシンは検出されず、ショウジョウバエtiggrinが同定された。タンパク質の同定にはMascot(Matrix Science)を使用し、データベースとしてNCBIを用いた。以上の結果から、ショウジョウバエS2細胞で組換えヒトアクロシンタンパク質を発現させるとセルピンと複合体を形成することが判明した。ザイモグラフィーでのバンド1は図2の抗V5抗体ブロットでも検出されており、アクロシンが重合したものと推定されるが、アクロシンもセルピンも質量分析での検出には量が少なすぎて検出/同定されなかったものと考えられる。還元下でのSDS-PAGEにおいてもアクロシンとセルピンは複合体を形成していることから、ジスルフィド結合以外の共有結合により架橋されていると考えられるが、セリンプロテアーゼとセルピンとの間で一過性に形成される共有結合酵素インヒビター複合体(加水分解前の安定中間体)が想定される。
(4)大豆トリプシンインヒビター(SBTI)による組換えヒトアクロシン-セルピン複合体形成の抑制
ショウジョウバエS2細胞にヒトアクロシン野生型発現コンストラクトをトランスフェクションし、培地に大豆トリプシンインヒビター(SBTI)を0から100μg/ml添加し4日間培養した。4日後に培養上清を回収し、抗V5抗体-アガロースアフィニティーゲルを用いて、培養上清からヒトアクロシンタンパク質を回収した(図6A)。
SBTI存在下で発現誘導させた培養上清から、ビーズに結合させたヒトアクロシンをSDS-PAGEサンプルバッファーで溶出させ、SDS-PAGE/免疫ブロット解析を行った。還元条件下(還元)および非還元条件下(非還元)で泳動後、転写した(図6B)。還元条件下で検出される2本のヒトアクロシン単量体のバンドは、軽鎖(Light chain)の切断状況による違いであると考えられる。灰色の矢じりで示すバンドが軽鎖-重鎖間のプロセシングが起こっていないもの、黒色の矢じりで示すバンドがプロセシングされたものであると考えられる。
一方、ビーズに結合したヒトアクロシンをSDS-PAGEサンプルバッファーで溶出させ、SDS-PAGE/ザイモグラフィーを行った。ザイモグラフィーは基質としてゼラチンを用いて、37℃で一晩反応させた。過剰量(100μg/ml)のSBTIの存在下では、アクロシン-セルピン複合体のバンドが消失し、アクロシン単量体のみが検出されており、自己活性化したアクロシンが大過剰のSBTIと結合したことが示された。アクロシン-SBTI複合体は未変性状態では安定であるが、SDSや酸などで一過性に変性させると解離するため、SDS-PAGEにおいてはアクロシン単量体として分離される(図6C)。
本発明の調製方法によれば、活性型組換えアクロシンが得られる。活性型組換えアクロシンは試薬、医薬、動物医薬等として用いられる酵素剤として利用される他、体外受精補助剤、人工授精補助剤としても利用が図られる。即ち、活性型組換えアクロシンは生殖医療(生殖補助医療)の分野でもその利用価値の高いものであり、家畜やペットの繁殖、育種・種の維持(例えば絶滅危惧種の維持、ペットの系統の維持又は交雑)等への利用も期待される。
一方、本発明のアクロシン遺伝子機能評価方法は、活性の高い又は低いアクロシンの選別ないし選定に利用できることはもとより、雄性不妊の診断及びその後の対処(不妊対策の検討、治療等)等に利用され得る。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

Claims (16)

  1. 以下のステップを含む、活性型組換えアクロシンの調製方法:
    (1)トリプシンドメインを含み、且つC末端疎水領域を含まないアクロシンをコードする遺伝子を真核細胞内で発現させるステップ、
    (2)ステップ(1)によって発現し培地中に分泌発現された組換えアクロシンを、アクロシンに対して可逆的ないし一過性阻害作用を示すプロテアーゼ阻害剤の存在下で自己活性化させるステップ。
  2. 前記アクロシンが、実質的にトリプシンドメインのみで構成される、請求項1に記載の調製方法。
  3. 前記真核細胞が昆虫細胞である、請求項1又は2に記載の調製方法。
  4. 前記昆虫細胞が、セルピンを発現するショウジョウバエS2細胞である、請求項3に記載の調製方法。
  5. 前記アクロシンがニワトリアクロシンAであり、
    培地中に分泌されたアクロシンを高密度化した後にインキュベートすることによって前記自己活性化を生じさせる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の調製方法。
  6. 前記アクロシンがニワトリアクロシンB又は哺乳動物アクロシンであり、
    培地中に分泌されたプロ型アクロシンをそのまま、あるいは高密度化することによって前記自己活性化を生じさせる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の調製方法。
  7. ペプチドタグ又はポリペプチドタグをコードする配列が前記遺伝子に連結されており、
    抗タグ抗体又はタグ親和性物質を用いた濃縮によって、培地中に分泌されたプロ型組換えアクロシンを高密度化させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の調製方法。
  8. 前記抗タグ抗体又はタグ親和性物質が多孔性担体に結合している、請求項7に記載の調製方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の調製方法で得られた活性型組換えアクロシンを含む酵素剤。
  10. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の調製方法で得られた活性型組換えアクロシンを含む、体外受精又は人工授精の補助剤。
  11. プロテアーゼ阻害剤と複合体を形成した状態の活性型組換えアクロシン。
  12. プロテアーゼ阻害剤がセルピンである、請求項11に記載の活性型組換えアクロシン。
  13. I185T変異及び/又はR200P変異を含む、組換えヒトアクロシン。
  14. アクロシン遺伝子の一塩基多型(SNP)を検出することを特徴とする、アクロシン遺伝子の機能評価方法。
  15. 前記アクロシン遺伝子がヒトアクロシン遺伝子であり、前記SNPがrs576896841、rs368795913、rs376638753、rs371232787、rs537612569、rs577242211、rs553367757、rs371960370及びrs139648296からなる群より選択される一又は二以上のSNPである、請求項14に記載の機能評価方法。
  16. 以下の判定基準(A)及び/又は(B)に基づき遺伝子機能を評価する、請求項15に記載の機能評価方法、
    (A) 554T>C変異及び/又は599G>C変異が検出された場合に翻訳産物の酵素活性が高い、
    (B) 124C>T変異、554T>C変異、598C>T変異、599G>C変異、632C>T変異、675C>G変異、685C>G変異、799G>T変異又は811C>T変異、或いはこれらの中の二つ以上の変異が検出された場合に翻訳産物の酵素活性が低い。
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