JP2005005896A - 圧電振動片、圧電振動片の製造方法および圧電振動子、圧電振動子を搭載した電子機器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】圧電振動片100は、複数の棒状の腕部121と、該腕部121の一方の端部を結合する基部130と、前記腕部121の他方の端部に、前記腕部121より幅が広い錘部110が形成された振動腕120と、前記振動腕120の振動中心Bに沿って表面および裏面に溝部122とが形成されている。このことにより、小型で、振動安定性が高い圧電振動片、圧電振動片の製造方法、圧電振動子、圧電振動子を搭載した電子機器を提供できる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電振動片、圧電振動片の製造方法、圧電振動子およびこの圧電振動子を搭載する電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、圧電振動子、例えば音叉型の水晶振動子が知られている。この水晶振動子は、時計用の時刻標準や角速度センサとしての圧電ジャイロセンサーなどとして用いられるが、これらを搭載した電子機器等の小型化もめざましいものがある。これに伴い、圧電振動子(水晶振動子)も小型化が求められている。
圧電振動子の振動体である圧電振動片の振動周波数は、同じ材料で形成されている場合、振動腕の断面形状(振動方向幅と厚み)と長さで決まる。即ち、圧電振動子を小型するためには、振動腕の長さを短くすることが最も寄与率が高く、また、それに伴い、振動腕の断面形状を小さくすることが要求される。
しかし、このようにすると高次振動モードが発生するなど振動状態が不安定になりやすくなることも知られている。
【0003】
この高次振動モードの発生を押えたり、安定した振動状態を得るために、振動片の振動腕の先端部に、振動腕の腕部の幅よりも大きく形成された錘部(バランスヘッド)を形成した圧電振動片(水晶振動片)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭52−37488号公報(第2〜第3頁、図3、図4)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような特許文献1では、水晶振動片の振動腕(発振片)の先端の腕幅を広げることにより、結果として振動腕先端に錘部(バランスヘッド)が形成されたこととなり、慣性質量の増加分だけ変位量も相対的に増加し、水晶振動片を小型化した場合に発生しやすい高次振動モードのみを特に抑圧することができた。
しかし、振動腕先端に錘部を形成するだけでは、振動腕は短くできるが変位量が増加するので小型化に限界があり、更に小型化するためには不十分であった。
また、小型化を進めていくと、振動腕、錘部、基部の形状の精度がより高く求められる。特に、振動腕の左右対称性のわずかなアンバランスが振動の安定性や励振性に影響するという課題が考えられた。
【0006】
本発明の目的は、小型で安定した振動特性が得られる圧電振動片、圧電振動片の製造方法、圧電振動子およびこの圧電振動子を搭載した電子機器を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の圧電振動片は、複数の棒状の腕部と、該腕部より幅が広く、前記腕部の一方の端部に形成された錘部とを有する振動腕と、前記腕部の他方の端部を結合する基部とを備え、前記振動腕の振動中心線に沿って表面および裏面に溝部とが形成されていることを特徴とする。
ここで、圧電振動片としては、水晶振動片を採用することができる。
【0008】
この発明によれば、圧電振動片の振動腕には表面、裏面ともに溝部が形成されているので、この振動腕の幅方向断面は、例えば略H型形状に形成されている。このことにより、振動腕の電界効率は、溝部が形成されない場合にくらべ大きくなる。従って、同じ振動周波数を得る場合、圧電振動片を小型化しても振動損失が少なくCI値(クリスタルインピーダンスまたは等価直列抵抗)も低く抑えることができる。
また、腕部の端部(先端部)には錘部が形成されているので、圧電振動片を小型化した場合の振動周波数の安定性を得ることができる。振動腕は複数(例えば2本の音叉型)形成されているが、この錘部のため慣性モーメントが大きくなるので、振動腕個別のバラツキの影響を小さくできるという効果もある。
【0009】
本発明の圧電振動片は、前記錘部が、前記振動腕の振動中心に対して対称に形成され、それぞれ同じ位置、同じ大きさに形成されていることが好ましい。
このような構造によれば、例えば、音叉型の水晶振動片の場合、2本の振動腕の質量、慣性モーメントが同じになるので安定した振動が得られる。
また、2本の振動腕のバランスがとれていることから基部での振動漏れを少なくすることができる。
【0010】
また、本発明の圧電振動片は、前記振動腕と前記錘部との結合部および前記振動腕と前記基部との結合部に、前記振動腕の振動中心に対して対称なテーパ部を有することを特徴とする。
この際、テーパ部は、直線で形成されても曲線で形成されても良い。
【0011】
このようにテーパ部を設けることによって、振動腕が振動する際に、腕部と錘部との結合部に応力集中をおこすことがなく、基本振動モードに影響をあたえることがないので安定した振動を得ることができる。
また、腕部と基部との結合部においてもテーパ部が設けられているので、より一層、安定した振動が得られる。
さらに、先述の各部位にテーパ部を設けることによって、圧電振動片が衝撃力を受けた場合に破壊されたり、振動モードが劣化するなどの課題を防止できる効果もある。
【0012】
本発明の圧電振動片は、前記錘部の長さが前記腕部の有効長さと略同じであることが好ましい。
例えば、振動腕を長くすると振動周波数は低くなり、短くすると振動周波数は高くなる。この際、圧電振動片を小型化するために振動腕長さを固定したときに、錘部の長さを長くすると振動周波数は高くなる。このことから、錘部の長さを腕部の有効長さと略同じにしておくと錘部が形成される効果が最大にいかされる。
【0013】
本発明の圧電振動片は、前記溝部が、前記振動腕の振動中心に対して対称に形成され、前記錘部と前記振動腕の結合部よりも先端方向および前記振動腕と前記基部との結合部よりも前記基部方向に延長して形成されていることが好ましい。
【0014】
前述したように、振動腕には表面および裏面に溝部が形成され、振動腕の断面形状は略H型とされる。
この際、溝部は、振動腕の振動中心に対称形に形成され、錘部および基部に入り込む位置まで延長されている。このような形状の振動腕は、振動腕の基本振動モードを得るために必要な腕長さを確保できるとともに、振動腕と錘部、基部との結合部において、溝部との応力集中をなくし安定した振動を得ることができる。前述のテーパ部と組み合わせることでより一層効果がでる。
【0015】
本発明の圧電振動片は、前記錘部に前記振動腕の振動中心線の略延長上に、振動中心に対して対称に穿設された多角形または円形の孔部を有することが望ましい。
【0016】
この圧電振動片の表面には、後述するが、圧電振動片を駆動するための駆動電極と駆動状態を検出する検出電極が形成されている。この際、圧電振動片の表面、裏面は同じ電極が形成されるが、この表裏にある電極を接続するために表裏を貫通する孔部(スルーホール)が錘部に形成されている。表裏の電極を圧電振動片の側面部を電極分割する場合よりも容易に電極形成ができるとともに、圧電振動片が、例えば、水晶振動片であり、エッチング法で形成される場合、水晶は、結晶異方性があることが知られている。後述するが、場所によってエッチングスピードに差が出てくることがあり、この孔部を多角形または円形にすることでエッチングスピードの差による形状誤差を小さくすることができる。
【0017】
本発明の圧電振動片の製造方法は、前記圧電振動片の外形および前記孔部をエッチングで形成する工程と、前記溝部をエッチングで形成する工程とを有することが好ましい。
【0018】
このような製造方法では、圧電振動片の外形と孔部は、厚みを貫通するエッチング工程であり、溝部はハーフエッチング工程であるので、それぞれ選択された別の工程で形成されるのが好ましく、このことによって、外形と孔部、溝部は適切な形状、寸法で形成することができる。
【0019】
本発明の圧電振動片の製造方法は、前記圧電振動片が水晶振動片であって、前記圧電振動片の形状に対してエッチングの基点をずらして形成されるか、または前記振動腕の振動中心に対して非対称に形成されたエッチングマスクを用いて製造されることを特徴とする。
【0020】
前述したように、圧電振動片が水晶振動片である場合、結晶異方性があることが知られている。結晶異方性があることでエッチング工程においてエッチングする場所によってエッチングスピードが異なる。そこで、エッチングスピードが遅くなる場所や早くなる場所は、それぞれに対応して、予めエッチングマスクの形状を補正しておくことで、エッチング後の完成形状が所定の形状に形成することができる。このことで、安定した振動を得ることができる。
【0021】
本発明の圧電振動子は、前記圧電振動片が、パッケージ内に収容されていることを特徴とする。
圧電振動片は、例えば、セラミック等で形成されたパッケージ内に収納される。パッケージ内は真空状態にあることが好ましく、真空環境で振動片が振動されることで、より一層安定した振動を長期間にわたって維持することができる。
また、パッケージに収納されることで、扱いやすいうえ、湿度など外部環境から圧電振動子片を保護することができる。
【0022】
本発明の電子機器は、前述のような構成と製造方法で製造された圧電振動子が搭載されていることを特徴とする。
このような圧電振動子は安定した振動モードが得られ、この圧電振動子は、例えば、時計などの時間標準や圧電ジャイロセンサに使用され、通信機器の基準発信器、自動車の姿勢制御装置、カーナビゲーション装置、カメラ等の手ぶれ防止装置などの電子機器を提供することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3は本実施形態の圧電振動片100が示されている。
図1は本実施形態の圧電振動片100の平面図、図2は、圧電振動片100の錘部110の要部平面図、図3は本実施形態の圧電振動片100の斜視図を示す。
図1(a)および(b)において、本実施形態では、圧電振動片100の基部130の端部から一対の細棒状の振動腕120が形成されている。振動腕120の長手方向先端部には振動腕120の腕部121の幅よりも大きく設定された略四角形の錘部110が形成されている。
【0024】
この一対の振動腕120は相似形とされ、長さ、幅、質量とも同じとされている。錘部110は、振動腕100の振動中心Bに対して左右対称である。このことにより、一対の振動腕120は正確に同じ振動周波数、振幅で振動される。
振動腕120の腕部121には、振動中心Bに沿って、溝部122が形成されている。この溝部122は、振動中心Bに対して対称形に形成され、基部130の振動腕120側端部131より入り込んだ位置から始まり、錘部110に入り込んだ位置まで延長されている。
【0025】
図1(b)は、腕部121のA−A’断面を示す。このように、溝部122は、圧電振動片120の裏面にも同じ幅、長さ、深さで形成されて略H型の断面形状を有する。
【0026】
腕部121と基部130との結合部には、テーパ部132が形成されており、また、腕部121と錘部110との結合部は、テーパ部112が形成されている。
これらテーパ部132,112は、振動中心Bに対して対称形であり、先述のそれぞれの結合部において、振動腕121がX方向に振動された際に応力集中を小さくするように設定されている。この際、テーパ部132と112は同じ形状で設定される必要はなく、所定の振動モードに合わせて適宜に設定できる。
本実施形態では、圧電振動片は水晶振動片とされ、図1(a)で示すように、Xは機械軸、Yは電気軸、Zは光軸である。
【0027】
錘部110の幅方向中央部には、表面から裏面に貫通する略四角形の孔部113が設けられている。この孔部113は、後述するが、圧電振動片100の表裏面に形成される電極を接続するためのスルーホールである(図3)。
この孔部113は、振動腕120の振動中心Bの延長上に位置され、対称形である。図1(a)では、四角形とされるが、他の六角形などの多角形であっても円形であっても、左右の振動腕120の振動バランスがとれるように設定される。
この際、錘部長さLwと腕部の振動有効長さLaとは、ほぼ同じ長さに設定されている。即ち、振動腕120の全長に対して錘部113および腕部121の長さLw、Laは、それぞれ、ほぼ1/2の長さである。
【0028】
図2は、本実施形態の錘部110の形状についての変形例を示す。錘部110の形状以外は、図1と同じため説明は省略する。
図2(a)において、錘部110の先端の端面と外形長手方向(Y軸方向)の側面との直交部を曲線で連続した形状に形成されている。この形状は、先端部をひとつの曲線で連続した形状としてもよく、直線をいれた面取り状の形状でもよい。
【0029】
図2(b)は、錘部110と腕部121との結合部のテーパ部形状の変形例である。図2(b)において、テーパ部114は、錘部110の長手方向外形(Y軸方向)と腕部121とを直線で連続した形状に形成されている。
【0030】
図2(c)は、図2(b)の錘部110と腕部121との結合部の他の変形例を示す。図2(c)に示すように、錘部110と腕部121との結合部は、曲線で連続して形成されている(図中115で示す)。ここで、錘部110側の曲線と腕部110側の曲線との間に直線を入れた形状としてもよい。
【0031】
この際、前述した錘部110の先端部形状(例えば、図2(a))と錘部110と腕部121との結合部の形状(例えば、図2(b)、図2(c))をそれぞれ組み合わせて形成してもよい。
【0032】
図3、図4は、本実施形態の圧電振動片100の錘部110の変形例を示す斜視図である。
図3(a)において、錘部110は、基部130に向かって腕部121の幅方向両側に、腕部121とは離れた位置に、腕部121に沿って延出されたそれぞれ一対の突出部116が形成されている。この突出部116(図中4本)は、すべて同じ大きさとされる。
【0033】
図3(b)は、図3(a)の圧電振動片100の変形例を示す。図3(b)において、前述した突出部116の先端に、突出部116の幅よりも広い第2の錘部117が形成されている。この第2の錘部117もそれぞれ同じ大きさとされる。
【0034】
図4は、本実施形態の圧電振動片100の他の変形例を示す。図4において、基部130の腕部121の連結部と他方の端部の間には、基部130の幅方向両側に略コの字状の切欠き131が一対形成されている。これらの切欠き131は、基部130の幅方向中心線(図示せず)に対して対称形とされる。
【0035】
図5は、本実施形態の圧電振動片100の斜視図であり、圧電振動片100の表面に形成された電極140の構成を示したものである。
このように形成されている断面略H型の音叉型の圧電振動片100には、図5において斜線で示されている部分に電極140が形成されている。電極140は、基部130から2本の振動腕120の腕部121、錘部110にかけて形成されているとともに、腕部121や錘部110の側面や溝部122の内面にも形成されている。
また、電極140は、図5に図示されていない圧電振動片100の裏面にも表面と同様に形成されている。ここで、錘部110に設けられた孔部113の孔部側面にも形成され、表面電極と裏面電極とが接続されている。
【0036】
このように配置形成された電極140は、外部から電流が印加されると電界を発生させ、圧電体である圧電振動片100の振動腕120を振動させるようになっている。
【0037】
このように形成された圧電振動片100は、例えば、時計などの時間標準として用いられる振動周波数が32,768kzの場合、従来の溝がない同じ振動周波数の圧電振動片と比べ小型に形成される。
一方、この断面略H型の圧電振動片100の厚みは、例えば約0,1mm程度とされ、従来の溝部がない圧電振動片の厚みと同等に形成されている。
つまり、この圧電振動片100には溝部122が形成されており、この溝部122内に電極140が形成されているため、発生する電界が振動腕120の内部に広く分布されるので、振動腕120の振動損失が小さくCI値を押えることができるのである。
従って、上述のように溝部がない圧電振動片と比べ小型でも低CI値の圧電振動片が構成される。
【0038】
次に、この錘部110を有する断面略H型圧電振動片100の製造方法について図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態の圧電振動片100の腕部121のA−A’断面(図1に示す)を模式的に示したものである。
本実施形態の圧電振動片100が水晶振動片である場合、図示しないが、水晶の単結晶から切り出され音叉型に加工されている。図1で示すように、X軸が電気軸、Y軸が機械軸、Z軸が光軸となるように切り出された水晶基板をエッチング法などで音叉型かつ断面H型の圧電振動片100が形成される。
【0039】
図6において、上述したように切り出された水晶基板150の表裏両面に蒸着法などによって耐蝕膜151が形成され、この耐蝕膜151の上面にレジスト膜152が塗布される(図6(a))。
続いて、圧電振動片100の外形および錘部110の孔部113の形状に合わせたマスク(図示しない)を用いて外形パターン露光、および外形パターン現像が行われる(図6(b))。
次に、耐蝕膜151の現像された露出部分がエッチング液により剥離され(図6(c))、レジスト152が剥離される(図6(d))。この際、圧電振動片100の外形に近い形状の耐蝕膜151のみが残されている。
【0040】
次に、残った耐蝕膜151表面を含めて、水晶基板150表面にレジスト膜152を全面塗布し(図6(e))、溝部122のパターン露光、現像を行い(図6(f))、続いて、圧電振動片100の外形エッチングを行う(図6(g))。この際、図示しないが、錘部110に設けられる孔部113も同時に形成される。
レジスト膜152は、溝部122の外形に合わせて残されている。
【0041】
次に、耐蝕膜151を剥離し、溝部122のみが水晶基板150表面に露出され、続いて、溝部122をエッチングする。このエッチング工程は、ハーフエッチングとされ、エッチング時間等を管理して所定の深さまで掘り下げられて、溝部が所定の形状、深さに形成される(図6(i))。
その後、レジスト膜152、耐蝕膜151が剥離されて溝付きの圧電振動片が形成されるのである(図6(j))。
【0042】
このような工程で圧電振動片100の外形、孔部113、溝部122が形成された後、図5で示すような電極140が形成され圧電振動片100の形状が完成される。
電極140は、圧電振動片100の表面に金などの電気伝導度のよい金属膜を蒸着やスパッタリングなどの方法で形成され、エッチング法で所定の形状に電極分割がなされる。
【0043】
圧電振動片100が水晶で形成される場合、水晶には結晶異方性があることが知られている。このことによって、水晶基板150のエッチングを行う際にエッチング異方性が存在し、同じ条件でエッチングをしても基板の部位によってエッチングされるスピードが異なってくる。このエッチングされるスピードがエッチングレートと呼ばれている。
【0044】
図7は、水晶基板150のX−Y平面内のエッチングレートを示す極座標図である。
図7において、円の中心がエッチングレート0であり、外側にいくほどエッチングレートが速くなるように表示されている。
特に、+X方向、X軸に対して+120°方向、および−120°方向の面内エッチングスピードが速く、逆に−X方向、X軸に対して+30°方向および−30°方向の内面エッチングスピードが遅くなる。
これに対して、Z方向のエッチングスピードは、−30°方向および−30°方向が速くなり、+X方向、X軸に対して+120°方向および−120°方向が遅くなる。
【0045】
このようにエッチング加工性に異方性があることから、圧電振動片100の形状を正確に形成するために最適なマスク形状を焼きつけフォトリソ加工がなされている。例えば、錘部110の先端部、錘部110と腕部121との結合部、錘部腕部121と基部130との結合部、錘部110に設けられた孔部113などに対しては、エッチングレートに対応してマスクの形状が補正されて形成されている。
【0046】
図8〜図11において、このマスク形状と圧電震動片100の形状の関係について説明する。
図8は、エッチングレートを配慮しない場合の錘部110の要部平面図、図9は、エッチングレートを配慮した場合の錘部110の要部平面図、図10は、エッチングレートを配慮しない場合の孔部113の平面図、図11は、エッチングレートを配慮した孔部113の平面図である。
【0047】
図8において、エッチング用のマスク150は、圧電振動片110の所定の形状に合わせて(形状補正せずに)形成されている。即ち、振動腕120の振動中心B’に対して対称形に形成されている(図中、実線で示す)。このマスクを使用してエッチング工程を行うと、前述のエッチングレートの違いから図中二点鎖線で示される錘部110のように、錘部110と腕部121の重心を結んだ直線Bが本来の振動中心(図中B’)からずれて形成される。
また、錘部110の先端コーナーの図中左側コーナー110Aは、面取りがされたような形状となり、もう一方のコーナー110Bも同様な形状となる。
また、錘部110と腕部121の間に形成されたテーパ部112の−X方向側テーパ部112Aは、小さめに、+X側テーパ部112Bは、大きめに形成される。
【0048】
図9は、エッチング用マスク150を前述のエッチングレートに合わせて形状を予め補正をして形成された場合の錘部110の形状を示す。
図9において、実線で表示される形状はマスク150であり、二点鎖線で示される形状がエッチング工程で形成された錘部110の形状である。マスク150のX方向中心線B’は、振動腕120の振動中心Bに対して+X軸方向に補正された形状とされ、錘部110の先端−X方向(図中左側)コーナー150Aは、+Y方向に突起が形成され、また、−Y方向(図中左下側)にも同様な突起150Bが−Y方向に形成されている。
マスク150のテーパ部も−X方向側のテーパ部112Aは、+X側テーパ部112B側より大きく形成されている。
このように、予めエッチングレートに従ってエッチング基点と形状が補正されたマスク150を用いてエッチング工程を行なった場合、当初狙いの振動中心に対して錘部110の中心線Bが一致し、中心線Bに対して対称な振動腕部120が形成される。
この際、図8、図9において、錘部110に形成された孔部113は省略されている。
【0049】
図10および図11は、錘部110に形成された孔部113を拡大して模式的に示した平面図である。
図10において、マスク150は、孔部113の形状に対応して光が透過される開口部151が形成されている。この開口部151は、振動腕120の振動中心に対して対称に四角形に形成されている。この場合、振動中心とマスク開口部151の中心線B’と一致している。
このようなマスクを用いてエッチング工程が行われると、図中二点鎖線で示すように(113A)、−X方向に大きく形成され、エッチングレートの小さい113B,113C部は、コーナーがきちんと形成されないエッチング残りが生じている。
従って、エッチングされた振動腕120は、孔部113中心線Bが振動中心に対してずれた位置に移動し、且つ、中心線Bに対して非対称な形状に形成されている。
この際、この孔部113と圧電振動片100の外形とが、同じエッチング工程で形成することができる。
【0050】
図11は、所定の孔部113に対して予め形状補正したマスク150を用いた場合の錘部110の孔部113を示したものである。
図11において、マスク150は、孔部113の形状に対応して光が透過される開口部151が形成されている。この開口部151の中心線は、振動腕120の振動中心に対してB’までずらされており、マスク150の開口部151の図中上方−X側コーナー部は、−X方向に凹部151Aが形成され、凹部151Aの−Y側コーナーには、凹部151Aと同様な凹部151Bが形成されている。
このように形成されたマスク150を用いてエッチング工程がなされた孔部113は、図中二点鎖線で示されるように振動腕120の振動中心に対して孔部中心線Bが一致し、且つ、中心線Bに対して対称に形成されている。
【0051】
図9および図10で示したように、エッチングレートを配慮して形成されたマスク150を用いてエッチング工程を行っているので、圧電振動片100は、二本の振動腕120の左右バランスがとれているとともに、錘部110も振動中心に対して中心線Bが一致し、外形、孔部113共に、振動中心(中心線B)に対して対称に形成されている。
このようにして製造された圧電振動片100は、パッケージ内に収納されて使用される。
【0052】
図12および図13は、本実施形態の圧電振動片100がパッケージ内に収納された状態を示している。
図12は、セラミックパッケージ型振動子200の構成を示す概略断面図である。図12に示すように、セラミックパッケージ210は、内側に空間を有する箱状のパッケージ210である。このパッケージ210には、その底部にベース部211を備えている。このベース部211は、例えばアルミナ等のセラミック等で形成されている。
【0053】
ベース部211の上には、封止部212が設けられており、封止部212はベース部211と同様な材料から形成されている。また、この封止部212の上部には蓋体213が載置され、これらベース部211、封止部212、蓋体213によって中空の箱体が形成されている。
【0054】
このように形成されたパッケージ210のベース211上にはパッケージ側電極214が設けられている。このパッケージ側電極214の上に導電接着剤等を介して電極140が形成された圧電振動片100の端部が固定されている。このパッケージ210内は、真空状態にされていることが安定した屈曲振動を維持するためには好ましい。
この圧電振動子片100は、パッケージ側電極214から一定の駆動電圧が印加されると正確に振動されるようになっている。
また、図示しないが、このパッケージ210の底部211と圧電振動片100との断面方向隙間に振動制御用などの半導体チップを載置して圧電振動片100の電極140と接続して発信器等に使用することもできる構成とされている。
【0055】
図13は、シリンダー型圧電振動子500の構成を示す概略断面図である。
図13において、シリンダー型圧電振動子500は、その内部に圧電振動片100を収納するための金属製のキャップ530を有している。このキャップ530は、ステム520に対して圧入され、その内部は真空状態に保持されている。
ステム520を貫通してリード510が2本設けられている。このリード520に圧電振動片100の端部の電極140が導電接着剤等で固定され保持される。
このように構成された圧電振動片100にリード510から一定の駆動電圧が印加されると振動腕120が正確に振動し、圧電振動子500として機能されることになる。
【0056】
このように構成され、また、前述した製造法で製造された圧電振動子200,500は、時計や電子機器の時間標準などとして使用される。
また、このような圧電振動片100は、Z軸を回転軸にして回転させ、コリオリの力を発生させ、それを検出することで角速度センサとして圧電ジャイロセンサに使用され、自動車の姿勢制御装置、カーナビゲーション装置、カメラ等の手ぶれ防止装置などの電子機器に搭載されている。
【0057】
従って、本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
【0058】
(効果1)
本実施形態によれば、圧電振動片100の腕部121には表面、裏面ともに溝部122が形成されているので、この腕部121の幅方向断面は、例えば断面略H型形状に形成されている。このことにより、腕部121の断面係数は、溝部122が形成されない場合にくらべ大きくなる。従って、同じ振動周波数を得る場合、圧電振動片100を小型化しても振動損失が少なくCI値(クリスタルインピーダンスまたは等価直列抵抗)も低く抑えることができる。
また、振動腕120の端部(先端部)には錘部110が形成されているので、圧電振動片100を小型化した場合の振動周波数の安定性を得ることができる。振動腕120は複数(本実施形態では、2本の音叉型)形成されているが、この錘部110のため慣性モーメントが大きくなるので、振動腕個別のバラツキの影響を小さくできるという効果もある。
【0059】
(効果2)
本発明の圧電振動片100は、前記錘部110が、前記振動腕120の振動中心Bに対して対称に形成され、それぞれ同じ位置、同じ大きさに形成されているので、このような構造によれば、例えば、音叉型の水晶振動片の場合、2本の振動腕120の質量、慣性モーメントが同じになるので安定した振動が得られる。
また、2本の振動腕120のバランスがとれていることから基部での振動漏れを少なくすることができる。
【0060】
(効果3)
本実施形態のようにテーパ部112を設けることによって、振動腕120が振動する際に、腕部121と錘部110との結合部に応力集中をおこすことがなく、基本振動モードに影響をあたえることがないので安定した振動を得ることができる。
また、腕部121と基部130との結合部においてもテーパ部132が設けられているので、より一層、安定した振動が得られる。このようにテーパ部132を設けることにより、錘部110と腕部121の形状が多少対称性が崩れを生じても相対的なバランスの差による影響を小さくすることもできる。
さらに、先述の各部位にテーパ部を設けることによって、圧電振動片100が衝撃力を受けた場合に破壊されたり、振動モードが劣化するなどの課題を防止できる効果もある。
【0061】
(効果4)
前述したように、腕部121には表面および裏面に溝部122が形成され、腕部の断面形状は略H型とされる。
この際、溝部122は、振動腕120の振動中心Bに対して対称形に形成され、錘部110および基部130に入り込む位置まで延長されている。このような形状の振動腕120は、溝部122の基点位置の影響を受けずに、振動腕120の基本振動モードを得るために必要な腕長さを確保できるとともに、腕部121と錘部110、基部130との結合部において、溝部122との応力集中をなくし安定した振動を得ることができる。前述のテーパ部と組み合わせることでより一層効果がある。
【0062】
(効果5)
また、本実施形態では、錘部110の長さが前記振動腕の有効長さの約1/2とされる。例えば、振動腕120を長くすると振動周波数は低くなり、短くすると振動周波数は高くなる。この際、圧電振動片100を小型化するために振動腕120の長さを固定したときに、錘部110の長さを長くすると振動周波数は高くなる。このことから、錘部110の長さを振動腕120の有効長さの1/2にしておくと(つまり、錘部110の長さと腕部121の長さを略同じ)、錘部110が形成される効果が最大に生かされる。
【0063】
(効果6)
本実施形態では、圧電振動片100の表裏に形成された電極140を接続するために表裏を貫通する孔部(スルーホール)113が錘部110に形成されている。表裏の電極140を圧電振動片100の側面部で行う場合よりも、広い面積がある錘部110にスルーホールによって電極接続する方が容易にできるという効果がある。
また、この孔部(スルーホール)113は、前述したように場所によってエッチングレートに差があるので、四角形は勿論、六角形や八角形あるいは円形にすることで、マスクの補正量を少なくしたり、設定が容易になるという効果もある。
【0064】
(効果7)
本実施形態の製造方法では、圧電振動片100の外形と孔部113は、厚み方向に貫通するエッチング工程で形成され、溝部122はハーフエッチング工程で形成され、それぞれ選択された別の工程で形成される。このことによって、圧電振動片100の外形と孔部113および溝部122は適切な形状、寸法で形成することができる。
【0065】
(効果8)
また、本実施形態では、前述したように、圧電振動片100が水晶振動片である場合、結晶異方性があることが知られている。結晶異方性があることでエッチング工程においてエッチングする場所によってエッチングスピード(エッチングレート)が異なる。そこで、エッチングスピードが遅くなる場所や早くなる場所は、それぞれに対応して、予めエッチングマスクの形状をエッチングの基点をずらしたり、形状を補正しておくことで、エッチング後の振動中心に対する対称性が確保されるので、より安定した振動モード、振動周波数を得ることができる。
【0066】
(効果9)
また、本実施形態の変形例(図3に示す)においては、錘部110の基部130側に突出部116が設けられているので、錘部110の質量を変えずに振動腕120の振動二次モーメントの腕長を短くできるため、エッチングレートの差による振動の安定性を高めることができ、CI値を低くすることができる。
また、突出部116の先端に第2の錘部117を設けることにより、一層これらの効果を高めることができる。
更に、図4に示すように、基部130に切欠き部131を設けることにより、振動腕120の屈曲振動を基部130からの振動漏れを減ずることができ、CI値を低く抑えることができる。
【0067】
(効果10)
本実施形態の圧電振動片100は、セラミック等で形成されたパッケージ内210に収納されている。パッケージ210内は真空状態で保持されているので、より一層安定した振動を長期間にわたって維持することができる。
また、パッケージ210に収納されていることで、扱いやすいうえ、湿度など外部環境から圧電振動子片100を保護することができる。
【0068】
(効果11)
本実施形態の電子機器は、前述のような構成と製造方法で製造された圧電振動子200、500が搭載されている。
このような圧電振動子200および500は安定した振動モード、振動周波数が得られ、例えば、時計などの時間標準や圧電ジャイロセンサに使用され、通信機器の基準発信器、自動車の姿勢制御装置、カーナビゲーション装置、カメラ等の手ぶれ防止装置などの電子機器を提供することができる。
【0069】
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、音叉型の圧電振動片100を例にあげ説明したが、音叉型圧電振動子以外にも、例えば、駆動腕と検出腕とが別に構成される平面H型圧電振動子やダブルT型振動子と呼ばれる圧電振動子にも適用できる。
【0070】
このような本発明によれば、小型で安定した振動特性が得られる圧電振動片、圧電振動片の製造方法、この圧電振動片を有する圧電振動子および圧電振動子を搭載した電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる圧電振動片を示す平面図。
【図2】圧電振動片の錘部の要部平面図。
【図3】本発明の圧電振動片の変形例を示す斜視図。
【図4】本発明の圧電振動片の他の変形例を示す斜視図。
【図5】圧電振動片の電極構成を示す斜視図。
【図6】圧電振動片製造工程を示す部分断面。
【図7】水晶基板X−Y平面内のエッチングレートを示す極座標図。
【図8】エッチングレートを配慮しない場合の錘部の要部平面図。
【図9】エッチングレートを配慮した場合の錘部の要部平面図。
【図10】エッチングレートを配慮しない場合の錘部の孔部平面図。
【図11】エッチングレートを配慮した場合の錘部の孔部平面図。
【図12】セラミックパッケージ型振動子の構成を示す概略断面図。
【図13】シリンダー型圧電振動子の構成を示す概略断面図。
【符号の説明】
100…圧電振動片
110…錘部
120…振動腕
121…腕部
122…腕部
130…基部
Claims (10)
- 複数の棒状の腕部と、該腕部より幅が広く、前記腕部の一方の端部に形成された錘部とを有する振動腕と、
前記腕部の他方の端部を結合する基部と、
を備え、 前記振動腕の振動中心に沿って表面および裏面に溝部とが形成されていることを特徴とする圧電振動片。 - 請求項1に記載の圧電振動片において、
前記錘部が、前記振動腕の振動中心に対して対称に形成され、それぞれ同じ位置、同じ大きさに形成されていることを特徴とする圧電振動片。 - 請求項1または請求項2に記載の圧電振動片において、
前記腕部と前記錘部との結合部および前記腕部と前記基部との結合部に、前記振動腕の振動中心に対して対称なテーパ部を有することを特徴とする圧電振動片。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の圧電振動片において、
前記錘部の長さが前記腕部の有効長さと略同じであることを特徴とする圧電振動片。 - 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の圧電振動片において、
前記溝部が、前記振動腕の振動中心に対して対称に形成され、前記錘部と前記振動腕の結合部よりも先端方向および前記振動腕と前記基部との結合部よりも前記基部方向に延長して形成されていることを特徴とする圧電振動片。 - 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の圧電振動片において、
前記振動腕の振動中心線の略延長上に、振動中心に対して対称に穿設された多角形または円形の孔部を前記錘部に有することを特徴とする圧電振動片。 - 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の前記圧電振動片の外形および前記孔部をエッチングで形成する工程と、
前記溝部をエッチングで形成する工程とを有することを特徴とする前記圧電振動片の製造方法。 - 請求項7に記載の圧電振動片の製造方法において、
前記圧電振動片が水晶振動片であって、
前記圧電振動片の形状に対してエッチングの基点をずらして形成されるか、または前記振動腕の振動中心に対して非対称に形成されたエッチングマスクを用いて製造されることを特徴とする圧電振動片の製造方法。 - 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の圧電振動片が、パッケージ内に収容されていることを特徴とする圧電振動子。
- 請求項9に記載の圧電振動子が搭載されていることを特徴とする電子機器。
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