JP4492048B2 - 振動片の製造方法、振動子、ジャイロセンサおよび電子機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動片の振動アームに溝部を有し、圧電単結晶材からなる振動片の製造方法、振動子、ジャイロセンサおよび電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、HDD(ハード・ディスク・ドライブ)、モバイルコンピュータ、あるいはICカード等の小型の情報機器や、携帯型電話装置、自動車電話、あるいはページングシステム等の移動体通信機器において装置の小型薄型化がめざましく、それらに用いられる圧電デバイスも小型薄型化が要求されている。圧電デバイスの小型薄型化を図るためには、内蔵する圧電振動片の小型化が要求されている。この要求に応えるため、従来、振動アームを小型化するための溝部形成は、特許文献1に記載されているように、圧電単結晶材上の溝部を形成する部分の耐食膜を除去した後、エッチングによって溝部を形成していた。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−76806(第13図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、例えば水晶のような異方性を有する圧電単結晶材は、エッチングを行う方向によりエッチング速さが異なる性質をもっているため、溝部が均一にエッチングされず、断面形状のバランスが崩れた溝部が形成され、振動アームが安定して振動しないという課題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するため、本発明の振動片の製造方法は、圧電単結晶材から形成された棒状の振動アームに、振動アームの長手方向に垂直な断面が略H型形状となるように溝部をエッチングで形成する工程を有する振動片の製造方法であって、溝部をエッチングで形成する工程の前に、溝部のエッチングの速さが他の部分と比べて遅い部分に凹部を形成する工程、を有することを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、圧電単結晶材はエッチングを行う方向によりエッチングの速さが異なる性質を有しており、従って、振動アームに溝部を形成する際、溝部のエッチングの速さが遅い部分に予め凹部を形成しておくことによって、エッチング速さの速い部分との差異を排除できるため、バランスのとれた形状の溝部が得られる。これにより振動アームは安定した振動をすることができる。
【0007】
この場合、凹部を形成する工程において、断面形状が略V字状の凹部が複数穿設されていることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、略V字状の凹部を溝部の形状に合せて複数配置することにより、溝部断面形状のバランスを制御できる。
【0009】
また、凹部を形成する工程において、凹部がスリット形状であることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、溝部形状のバランスを、設定の容易なスリット形状によっても制御でき、略V字状の場合と同様の効果が得られる。
【0013】
本発明の振動片は、圧電単結晶材から形成された棒状の振動アームを含み、振動アームの長手方向に垂直な断面が略H型形状となるように溝部が振動アームに形成された振動片であって、溝部に電極が配置され、溝部は、振動アームの長手方向に延びる一対の側面を有し、一対の側面の一方は、波型の形状を有することを特徴とする。また、本発明の振動片は、圧電単結晶材から形成された棒状の振動アームを含み、振動アームの長手方向に垂直な断面が略H型形状となるように溝部が振動アームに形成された振動片であって、溝部に電極が配置され、溝部は、振動アームの長手方向に延びる一対の側面を有し、一対の側面の一方に、複数の曲面が振動アームの長手方向に並んで形成されていることを特徴とする。
これらの構成によれば、溝部の電極面積が増加するので、振動片に電圧をかけた時の電界の発生が高められ、いわゆる電界効率の向上が図られ、振動アームの振動が安定したものになる。
また、本発明の振動子は、振動片をパッケージに収容したことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、振動アームに溝部を形成し、性能を維持して小型化が図れた振動片をパッケージに収容することにより、小型パッケージ化が可能な振動子ができる。
【0015】
本発明のジャイロセンサは、本発明の振動子が物理量を検出するジャイロ機能を有することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、本発明の小型の振動子により、角速度などの物理量を検出する小型のジャイロセンサができる。
【0017】
本発明の電子機器は、本発明の振動子あるいはジャイロセンサを搭載したことを特徴とする。
【0018】
これらの構成によれば、設置スペースを省ける小型の振動子およびジャイロセンサを搭載した電子機器を提供できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の振動片の製造方法について説明する。図1に示すように、従来知られた音叉型形状をした振動片1は、水晶などの圧電単結晶材からエッチングによって形成されている。水晶は、圧電単結晶材の中でも特にその振動が正確で、周波数の変化もほとんどないという性質を有するが、エッチングを行う方向によってエッチング速さが異なり、均一なエッチングが難しいというエッチング異方性を有する。本発明は、従来の水晶の均一なエッチングが難しいという性質を克服するエッチング方法を用いた振動片の製造方法を提供する。
【0020】
音叉型形状の振動片1は、図1(a)に示すように、基部4と、基部4から突起している2本の振動アーム3、3と、振動アーム3の断面A−A’が図1(b)のような略H型になるように形成した溝部2と、図示していない振動片1の表面に形成した電極層とから成っている。
【0021】
この振動片1は、図2(a)に示す水晶柱5から切り出される。水晶柱5は、六角柱であって、柱の長手方向に光軸であるZ軸と、Z軸に垂直な六角形面のX−Y平面において、六角形の辺に平行な電気軸であるX軸と、X軸に垂直な機械軸であるY軸とを有している。六角形の辺に平行なX軸は、図2(b)に示すように3本あり、それぞれ120度の等角度で存している。これら120度間隔のX軸によってX−Y平面に形成される3つの面H1、H2、H3は、エッチング方向によるエッチング速さの違い等がそれぞれの面で同一である、という性質(三方晶)をもっている。
【0022】
また、水晶は、X軸(電気軸)方向に電圧を加えると、加えた電圧の方向に対応してY軸(機械軸)方向に伸びあるいは縮みの現象が生じ、逆に、Y軸(機械軸)方向に引っ張りあるいは圧縮を与えると、X軸(電気軸)方向に電圧が生じる性質を有している。それぞれが電気軸、機械軸と呼ばれる所以である。
【0023】
これらの性質を有効に利用した振動片1を得るため、振動片1を切り出す面は、図2(a)のように、X−Y平面を、X軸とY軸との交点(座標原点)からみてX軸回りに時計方向へ角度θ傾けた平面であり、さらに振動アーム3の長手方向は、Y軸方向となるように設定する。平面の設定角度θは、常温で使用される振動片の場合、1度ないし5度が最適であり、この平面は水晶Z板と呼ばれる。
【0024】
水晶Z板から切り出され図1(a)を基に説明した構成の振動片1に、振動片1の表面に配置された電極層を通してX軸方向の電圧が加えられると、電圧の向きに応じた電界が発生し、振動アーム3の電極面が、Y軸方向に伸びたりあるいは縮むことによって、振動アーム3がX軸の一方の方向へ屈曲する。屈曲した振動アーム3が元に戻ろうとする時に、電圧の方向を逆にすると電極面の伸縮が逆になり、振動アーム3も逆方向へ屈曲する。振動片1が一秒間に屈曲できる回数、いわゆる振動片1の固有の周波数と電圧の向きの切り替えタイミングが一致すれば、振動アーム3は屈曲しつづけることになる。すなわち規則正しい振動を持続する。
【0025】
振動片1の周波数は、主に振動アーム3のX軸方向の幅とY軸方向の長さによって決まり、幅に比例し長さに反比例する。所定寸法で切り出された振動片1の周波数をさらに微調節するには、振動アーム3の基部4と対極側の先端部質量を変える方法がある。振動片1の周波数を低くするには、先端部の質量を多くすれば良く、先端部に銀などの蒸着を行う。また、周波数を高くするには、先端部の質量を少なくすれば良く、レーザーで先端部の電極層の一部を除去している。こうして所定の正確な周波数を有する振動片1を得ることができる。
【0026】
振動片に水晶を用いると、溝部2の無い振動片であっても正確な周波数を得ることができる。しかし近年、振動片が搭載される携帯電話やハンディタイプビデオカメラなどの小型軽量化が顕著になってきており、搭載する振動片の小型化も必須となってきている。溝部2の無い振動片の寸法を単純に小さくして小型にすると、電極面も小さくなって、電圧をかけても振動アーム3の電極面を伸縮させる電界が十分に発生せず、振動アーム3は安定した振動を行わなくなる。すなわち振動片の効率を表すいわゆるCI値(Crystal Impedance)が高くなり、性能の劣った振動片となる。
【0027】
CI値の上昇を抑えて効率の良い振動片を得るためには、溝部2を有する振動片1が有効である。溝部2を有して断面が略H型の振動片1は、溝部2内に電極を配置することにより電極面を広く設定できる。従って、電圧をかけると発生する電界効率が向上するため、振動アーム3が安定して振動する。すなわちCI値が低く効率の良い小型の振動片1となる。
【0028】
このように効果的な図1(b)に示す略H型の溝部2を形成するにあたって、エッチングにより溝を形成すると、図4(a)の溝部拡大断面図のような対称性の悪い形状の溝部2となる。これは、水晶がエッチングの方向によってエッチングの早さが異なる性質を持っていることによる。溝部2の断面は水晶のX−Z面にあたり、水晶のX−Z面のエッチング方向によるエッチング速さは、図3の水晶のX−Z面でのエッチング方向によるエッチング速さを表す極座標表示図で示されているように、エッチングを行う方向によって大きく異なる。図3に表してある曲線が、X軸とY軸との座標原点から離れているほど、その方向のエッチングの速さが速いことを示している。すなわち、Z軸方向のエッチング速さは早く、X軸方向のエッチングは遅い傾向にある。このため、図4(a)のように底面21は、X軸方向のエッチング速さの差により両側面の一方側にずれて形成され、両側面も大きく異なった形状のものとなる。
【0029】
この傾向を補正して対称性の良い溝部2を形成するため、図4(b)に示す凹部20を予め形成して、エッチングの早さを調節する方法がある。この方法によれば、底面21が両側面の中央に形成され、両側面の形状の差異も極小に抑えられ、バランスのとれた溝部2が形成できる。すなわち振動アーム3が安定した振動を維持出来る振動片1を提供することができる。なお、凹部20の平面形状は、円形、スリット状、多角形等が考えられる。
【0030】
そこで、凹部20を予め形成した振動片1の製造方法について、図5および図6を参照して説明する。この場合、略V字状の凹部20の形状は略円錐であり、断面は図1(a)のB−B’のように2本の振動アーム3、3をX軸に沿って切断した面である。まず、図5(a)に示すように、水晶Z板に沿って所定厚みで水晶柱5から切り出された板状の水晶10の表面に、スパッタ装置にて例えばクロム(Cr)と金(Au)の二層の金属膜31を形成する。そして金属膜31の上にレジスト膜32を形成する。レジスト膜32は形成後、光を照射(露光)後現像すると照射しない部分が残り、照射されている部分は簡単に除去することができる。
【0031】
次に、図5(b)に示すように、レジスト膜32を振動片1のレジスト円形部33以外の平面形状が残るように露光し、露光しない面を残してレジスト膜32を現像により除去する。この状態で、レジスト膜32による振動片1の平面形状が浮かび上がる。
【0032】
この後、図5(c)に示すようにレジスト膜32が形成されていない部分の金属膜31をエッチング液によって除去する。この時、レジスト円形部33には水晶10の面が現れている。さらに図5(d)のようにレジスト膜32を除去し、続いて、残っている金属膜31と水晶10の表面全体にレジスト膜32を図5(e)のように形成する。
【0033】
次に、図6(f)に示すように、振動片1の溝部2以外の平面形状が残るようにレジスト膜32を露光し、露光後、現像により露光された部分のレジスト膜32を除去する。この状態で水晶10のエッチングを行い、図6(g)に示すように振動片1の外形形状と凹部20に該当する直径寸法Wの水晶略円錐部34とが形成される。
【0034】
ここで、同じ時間エッチングを行って、外形部は水晶の厚みTすべてを切り取るようにエッチングが進行し、水晶略円錐部34は厚みTより少ない深さDしかエッチングされない理由を、図8に基づいて簡単に述べる。
【0035】
図8は、表面に金属膜31を形成した厚さTの水晶10に、WおよびW’の寸法幅で金属膜31を除去したスリットを設けてエッチングを行った時の断面状態を表している。図8(a)は水晶10の厚さTが0.1mm、スリット幅の寸法W’が0.05mmの場合であって、エッチングを開始しておよそ2時間で、スリット部は貫通する。また、図8(b)は、同寸法の水晶10にスリット幅の寸法Wが0.01mmの場合であって、エッチングを開始して同じ2時間で0.025mm程度の深さDにエッチングされている。このようにスリット幅が狭くなるとエッチングの進行が極端に遅くなり、この傾向を利用することにより、図6(g)のように振動子片1の外形の形成と、水晶略円錐部34の形成とが同時に行える。さらに、外形形成のエッチング時間が長くなっても、水晶略円錐部34の形状には影響が極めて少ないという特徴を有する。
【0036】
次の工程は、図6(h)に示すように、振動片1の溝部2に該当する部分の金属膜31をエッチング液で除去する工程で、金属膜31が除去されると溝部2が形成される水晶10の面が現れる。この状態で水晶10のエッチングを行うと、図4(b)を基に説明したエッチング後の断面形状のように、凹部20である水晶略円錐部34の効果により、図6(i)(j)に示すように対称性の良い溝部2が形成される。また、水晶部略円錐部34の直径の寸法Wを、設置する場所によって変えることにより、水晶略円錐部34の効果をより高めることが可能で、より緻密なエッチングの制御ができる。
【0037】
以上、凹部20が水晶略円錐部34である場合について述べてきたが、図7に示すように凹部20が寸法Wのスリット形状であっても良い。図7に示すスリット35の形成工程は、図5(b)の略円錐形状の形成工程に相当するもので、スリット35を形成した場合も、略円錐形状を形成した場合と同一の製造工程で振動片1を作ることができる。スリット35は、振動片1のように溝部2がY軸に平行な直線状であるものに対して、設定が簡単で有効な方法である。
【0038】
また、凹部20が略円錐形状である場合の溝部2の形状は、拡大すると図9のようになっている。略円錐形状を設けた側の側面は、略円錐形状の位置に対応した波形の形状をしている。この波型の形状により溝部2の電極面積が増加するので、振動片1に電圧をかけた時の電界の発生が高められ、いわゆる電界効率の向上が図られる。すなわち振動アーム3の振動が安定したものになる。
【0039】
また、溝部2の側面と振動片1の外形面との壁厚Sは、底面21の部分でも薄くなり電界効率の向上につながる。さらに、溝部2の断面形状の対称性が向上したことにより、振動アーム3が安定した振動をするようになるため、外乱の振動の影響を受けにくくなる。凹部20がスリット形状である場合も、溝部2の底面21が溝に対して中央部に形成でき、対称性の良い断面形状となるため、略円錐形状の場合と同じ効果を得ることができる。
【0040】
このように振動片1の溝部2を形成する時に、凹部20を予め形成することにより対称性の良い溝部2が得られ、振動片1としてのCI特性を維持して小型化が可能である。具体的に、小型化された溝部2を有する振動片1の外形寸法は、同一性能の溝部2の無い振動片と比べて、Y軸方向が3.6mmから2.2mmに、X軸方向の寸法が0.69mmから0.56mmになり、振動アーム3の寸法はY軸方向が2.4mmから1.6mmに、X軸方向が0.23mmから0.1mmになって著しく小さくなっている。なお、Z軸方向の厚みは、0.1mmでほぼ同じある。また、溝部2の寸法は、X軸方向が0.07mm、Y軸方向が1.3mm、Z軸方向の深さが0.04mmである。この寸法の場合、レジスト円形部33の径およびスリット35の幅Wは0.01mmでの設定となる。
【0041】
なお、これまで振動アーム3が2本の音叉型の振動片1を例に説明してきたが、振動アーム3が1本の棒型の振動片や、2本以上複数本の振動アーム3を有するH型やT型組み合わせ型の振動片など、種々のタイプに適用ができる。これらの振動片を利用したものに、セラミックパッケージに振動片を実装した圧電振動子やジャイロセンサなどがあり、以下にこれらについて簡単に説明する。
【0042】
図10は、本発明の振動片の製造方法による振動片1を搭載したセラミックパッケージを用いた圧電振動子50の断面図である。圧電振動子50は、その底部にベース部51を備え、このベース部51は、例えばアルミナ等のセラミックス等で形成されている。ベース部51の上には、封止部53が設けられており、封止部53の上には蓋体52が載置され、これらベース部51、封止部53および蓋体52で、中空の箱体を形成している。
【0043】
このように形成されている圧電振動子50のベース部51内にはパッケージ側電極54が設けられている。このパッケージ側電極54には導電性接着剤等を介して振動片1の端部が固定されている。この振動片1は、パッケージ側電極54から一定の電圧が与えられると振動するようになっている。振動片は音叉型の振動片1の他、棒型やH型などでも良い。この圧電振動子50は、デジタル携帯電話、パーソナルコンピュータ、時計、ビデオレコーダ、テレビなどに広く用いられ、これら電子機器の小型化に貢献している。
【0044】
また、本発明の振動片の製造方法によって高性能の小型ジャイロセンサが可能となる。このジャイロ機能を有するジャイロセンサ60は、図11に示すように、振動片40をパッケージに収容したものである。振動片40は、中央の固定部41と、固定部41から両側に延びる一対の支持アーム42、42と、支持アーム42、42の端に形成された振動アーム43、43と、固定部41から支持アーム42と直交方向に延びる一対の検出アーム44,44と、振動アーム43と検出アーム44に形成された溝部49と、図示していない接点部とから成っている。
【0045】
振動片40を収容する筐体46は、一面が開放されている略直方体形状のセラミック材で構成されており、検出する物理量の方向等の基準となる検出軸48と垂直な基準面61と、基準面61に設けられた外部との導通用の複数の端子47と、基準面61に対向する開放部を封する蓋62と、略直方体を構成するその他の面とから成っている。蓋62は、筐体46の開放されている面から筐体46内に、振動片40やICなどを組込んだ後、開放面を封止する。そして筐体46に形成されている図示していない貫通孔より内部の空気を抜いて真空状態にしたのち、貫通孔を封止する。
【0046】
これら固定部41、支持アーム42、振動アーム43および検出アーム44は、同一平面に一体で形成された単結晶水晶であって、筐体46から張り出された複数のボンディングワイヤ45によって、筐体46に接しないように支持されている。また、ボンディングワイヤ45を介してICと電気的導通をとり、水晶の発振制御、検出信号送出などが行なわれる。
【0047】
振動片40にボンディングワイヤ45を介して電圧を印加すると、振動アーム43、43が屈曲振動Qを始める。この振動中に検出軸48回りに回転角速度Pが働くと、駆動アーム43、43の振動方向と直交方向にコリオリの力Rが生じる。コリオリの力Rが生じるとこの力により支持アーム42、42が変位を起こして振動(励振)するため、検出アーム44、44も振動(共振)する。この時の検出アーム44、44のそれぞれの振れを差動電圧として検出し、信号処理をすることにより検出軸48回りの角速度(物理量)が求められる。求められた角速度により、振動片40の検出軸48回りに加えられた回転角速度Pを特定でき、例えばビデオカメラやデジタルカメラの手振れの程度などを把握することができる。
【0048】
このジャイロセンサ60は、カメラの手振れ検出装置の外に、ロボットの姿勢検出装置、カーナビゲーションの方向検出装置、GPS機器などの電子機器に広く適用できる。
【0049】
以上のように、本発明の振動片の製造方法によれば、振動アームの溝部となる部分に予め凹部を形成しておくことにより、圧電単結晶材内のエッチング速さの相違を補正でき、形状のバランスが良い溝部を備えた振動片が得られる。この振動片は、小型化しても溝部の設置によって振動アームの電界効率が減少せず、安定した振動を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る溝部を有する振動片の外観斜視図である。
【図2】 振動片を切り出す水晶結晶体の斜視図である。
【図3】 水晶のX−Z面でのエッチング方向によるエッチング速さを表す極座標表示図である。
【図4】 凹部の有無による溝部形状の差異を示す拡大断面図である。
(a)は、予め凹部を形成しなかった場合の溝部の拡大断面図で、(b)は、予め凹部を形成した場合の溝部の拡大断面図である。
【図5】 溝部形成のための凹部が略円錐である振動片のエッチングの前半工程図である。
【図6】 溝部形成のための凹部が略円錐である振動片のエッチングの後半工程図である。
【図7】 溝部形成のための凹部がスリットである振動片のレジスト膜形成を示す斜視図である。
【図8】 凹部の幅によるエッチングの差異を示す断面図である。
【図9】 凹部が略円錐である溝部のエッチング後の拡大図である。
【図10】 振動片を搭載したセラミックパッケージ振動子の断面図である。
【図11】 ジャイロセンサの斜視図である。
【符号の説明】
1 振動片
2 溝部
3 振動アーム
10 水晶
20 凹部
21 底面
31 金属膜
32 レジスト膜
33 レジスト円形部
34 水晶略円錐部
35 スリット
50 圧電振動子
60 ジャイロセンサ
Claims (9)
- 圧電単結晶材から形成された棒状の振動アームに、前記振動アームの長手方向に垂直な断面が略H型形状となるように溝部をエッチングで形成する工程を有する振動片の製造方法であって、
前記溝部をエッチングで形成する工程の前に、前記溝部のエッチングの速さが他の部分と比べて遅い部分に凹部を形成する工程、を有することを特徴とする振動片の製造方法。 - 前記凹部を形成する工程において、断面形状が略V字状の凹部が複数穿設されていることを特徴とする請求項1に記載の振動片の製造方法。
- 前記凹部を形成する工程において、前記凹部がスリット形状であることを特徴とする請求項1に記載の振動片の製造方法。
- 圧電単結晶材から形成された棒状の振動アームを含み、前記振動アームの長手方向に垂直な断面が略H型形状となるように溝部が前記振動アームに形成された振動片であって、
前記溝部に電極が配置され、
前記溝部は、前記振動アームの前記長手方向に延びる一対の側面を有し、
前記一対の側面の一方は、波型の形状を有することを特徴とする振動片。 - 圧電単結晶材から形成された棒状の振動アームを含み、前記振動アームの長手方向に垂直な断面が略H型形状となるように溝部が前記振動アームに形成された振動片であって、
前記溝部に電極が配置され、
前記溝部は、前記振動アームの前記長手方向に延びる一対の側面を有し、
前記一対の側面の一方に、複数の曲面が前記振動アームの長手方向に並んで形成されていることを特徴とする振動片。 - 請求項4または5に記載の振動片をパッケージに収容したことを特徴とする振動子。
- 請求項6に記載の振動子が物理量を検出するジャイロ機能を有することを特徴とするジャイロセンサ。
- 請求項6に記載の振動子を搭載したことを特徴とする電子機器。
- 請求項7に記載のジャイロセンサを搭載したことを特徴とする電子機器。
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