JP2004534147A - 香りまたは芳香物質として役立つ8−テトラデセナール - Google Patents
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Abstract
本発明は、(Z)−8−テトラデセナール、(E)−8−テトラデセナールそして(Z)−8−テトラデセナールと(E)−8−テトラデセナールから成る混合物を香りまたは芳香物質として用いることに関する。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は(Z)−8−テトラデセナール、(E)−8−テトラデセナールまたは(Z)−8−と(E)−8−テトラデセナールの混合物を芳香(香り)または風味剤(風味)として用いることに関する。
【0002】
本発明は、更に、基礎組成物に柑橘芳香または柑橘風味を与えるか或はそれを強くする相当する方法、芳香および風味組成物を改変する方法、およびまた相当する芳香または風味組成物自身にも関する。
【背景技術】
【0003】
芳香および風味を付ける実施では、一般に、安価かつ一定の品質で調製可能で長期貯蔵時にも(可能ならばまた他の物質と接触した時にも)安定なままでありかつ所望の嗅覚もしくは味覚特徴を有する合成の芳香および風味剤が継続して求められている。香料はできるだけ自然で化粧品または産業用消費者用製品の芳香に有利な効果を与え得るに充分な強度を有する心地よい芳香特徴を有するべきである。風味剤は容易に消化可能で一般に普及している食品の典型的な風味成分を思い起こさせるか或はそのような食品のそれと同じでさえありかつ食品、経口投与される薬剤などの風味に積極的に貢献する能力を有するべきである。そのような要求に従う芳香および風味剤を見つけだすことはかなり骨の折れることであることは認められておりかつ秩序正しい高価な研究を必要とし、特にその目的が興味の持たれる新規な芳香特徴または風味傾向を見つけだすことにある場合にそのような研究を必要とする。
【0004】
適切な芳香もしくは風味剤の研究は、特に下記の実際問題が理由で本分野の技術者にとってより困難なことである:
− 芳香および風味知覚の機構が未知であること、
− 芳香または風味の客観的定量特徴付けが不可能なこと、
− 一方の芳香および/または風味知覚と他方の芳香および/または風味剤の化学構造の間の関係が充分には研究されていないこと、
− 公知芳香もしくは風味剤の構造的組成の変化が僅かであっても頻繁に起こることから嗅覚または風味特徴が実質的に変化しかつヒト有機体に対する適合性が悪化すること。
【0005】
従って、適切な芳香または風味剤を研究する時の成功度はしばしば研究者の直感に依存している。
【0006】
本発明の基になる目的は、この上に記述した一般的枠組みの条件を考慮に入れて、特に、通常の芳香または風味基礎組成物に新鮮な柑橘芳香を与えるか或はそのような組成物が有する現存の柑橘芳香を有利な様式で改変する、即ち特にそれを新鮮にし、それをよりジューシーで本物に近くしかつその組成物全体にコク(body)および豊かさを与える能力を有する芳香および風味剤を示すことにある。
【0007】
この示すべき物質は、特に、柑橘果実組成物、即ち消費者に例えばビターオレンジ(bitter orange)、ライム、グレープフルーツ、みかん、クレメンタイン(clementine)、レモン、セドラルレモン(cedral lemon)、オレンジ、きんかんなどを思い起こさせそして/または柑橘油が入っている組成物の感覚特性に有利な影響を与える能力を有するべきである。
【0008】
この示すべき物質は、香料製造者または風味専門家が香料または風味剤を構成する時に幅広く使用可能な代替品(今まで使用または記述されて来た柑橘芳香または風味剤の代替品)になるべきである。具体的には、そのような組成物を作り出す過程、即ち骨の折れる過程(これは一般に専門家によってのみ行われている)で想像の中に既に存在する芳香または風味像を得ようとする時、型にはめた様式で自由裁量による芳香または風味剤(文献によって具体的な芳香または風味面が特定されている)を使用することが行われているが、そのような使用は充分ではない。具体的には、ある組成物の芳香または風味特徴を添加の意味で正確に予測するのは、分かっているのが前記組成物の成分のみである時には不可能である、と言うのは、そのような成分はその混合物の中で予測不能な相互作用を起こすからである。従って、また、ある組成物に入っているある芳香または風味剤が他の成分に対して示す適合性、そして感覚によって検出可能でありかつまた完成組成物の全体的特徴に影響を与える付随する面(これらは恐らくは高純度物質が有する芳香を記述する時に特には認識されていない)が存在するか否かも重要である。
【0009】
本発明は、特に(Z)−8−テトラデセナール[いくらか弱い度合ではあるがまた(E)−8−テトラデセナールも]ばかりでなく(Z)−8−と(E)−8−テトラデセナールの混合物が芳香および風味剤として用いるに卓越して適切でありかつこの上に示した目的の達成で用いるに卓越して適切であることを驚くべきことに見いだしたことが基になっている。
【0010】
(Z)−8−テトラデセナールはほんの0.009ppbの特に低い匂い閾値(水に入れた時の匂い閾値)を有することから、この物質は少量でも芳香または風味(基礎)組成物に感覚で検出可能な改変をもたらす。このことは、我々自身の研究に従い、(E)−8−テトラデセナールの匂い閾値はほんの1.24ppbであるが、それでも、芳香および風味剤組成物で用いるに卓越して適し、特に(活性がより高い)(Z)−8−テトラデセナールとの混合物として用いるに適することに当てはまる。
【0011】
化学構造の点で本発明に従う(Z)−8−テトラデセナールに密に関係している物質である(Z)−7−テトラデセナールおよび(Z)−9−テトラデセナール(これらはそれとは対照的に商業的に入手可能である)は、(Z)−8−テトラデセナールに比べて使用可能な感覚的特性を全く持たない。特に、それらの匂い閾値は驚くべきことに(Z)−8−テトラデセナールのそれよりもほぼ2桁の大きさで高く、これに関しては以下の実施例を更に参照のこと。
【0012】
(Z)−8−および(E)−8−テトラデセナールは既に公知の物質であり、これに関しては特に非特許文献1、2および3が参考になる:
しかしながら、(Z)−8−および(E)−8−テトラデセナールが有する感覚特性は今日まで研究されておらず、上述した資料はフェロモンの研究に関連して構造を解明する時の問題に関係している。
【0013】
また、本発明に従う物質が属する脂肪族アルデヒドが有する感覚刺激または感覚特性に関する出版物は、結局、(Z)−8−テトラデセナールおよび(E)−8−テトラデセナールが有する特殊な特性の指摘を全く与えるものでもない。
【0014】
コエンドロ植物の揮発性成分(これにはまたいろいろな脂肪族アルデヒドも含まれる)が非特許文献4の論文に記述されている。試験された化合物は表1に記述する香りを与えることが示されている。しかしながら、柑橘のような香りが割り当てられたのは試験されたアルカナールの中の1種類の化合物のみ、特に鎖が比較的短い化合物である(E)−4−デセナールが「柑橘の感じ」の香りを有すると割り当てられたが、しかしながら、その香りは強さの意味で青草の香り(green odour)に隠れている背景の香りである。他方、(E)−2−テトラデセナール[これは本発明に従う化合物が有する鎖長と同じ鎖長を有するが、しかしながら、カルボニル基と共役している二重結合を含有し、その度合で、化学的には本発明に従う化合物に匹敵しない]の香りは、単に「脂肪、蝋、チーズ」のようであるとして示されており、かつ試験された他のアルカナールもまた柑橘の香りの香(citrus odour aspect)を含まない。
【0015】
主観的に定量されたアルデヒド類の感覚刺激特性が非特許文献5の論文に要約されている。その試験でもまた試験されたアルデヒドが主観的に柑橘性質に関して評価され、そしてその試験を実施した香料製造者および風味専門家の観点でこの上に考察した文献から既に公知の化合物である(E)−2−テトラデセナールは弱い柑橘香を含むと認めることはできるが、しかしながら、それは明らかに強い脂肪香に隠れている背景の香である。このような状況は試験されたさらなる一不飽和アルデヒドの場合に極めて類似しており、具体的には特に非共役二重結合を有するアルデヒドの場合に極めて類似している。それらがいやしくも柑橘香を含む(多くの場合当てはまらない)場合、その香の上に青草、脂肪および/または花のような香りの香が重なっている。注目すべき柑橘香が割り当てられた物質はトランス−2−オクテナール、トランス−2−デセナールおよびトランス−2−ウンデセナール(特に希釈形態)のみであり、これらは各々共役二重結合を含有する。しかしながら、それらが有する鎖長は本発明に従う化合物のそれとは異なりかつそれらは二重結合の共役を有することから、そのような物質は特に化学的には本発明に従う化合物とは全く類似しておらず、その結果として、本分野の技術者はそれらが有する感覚的特性から本発明に従う物質のそれを引き出すことは全くできなかったであろう。その上、我々自身が行った性能比較試験において、本発明に従う物質(共役二重結合を全く持たない)の方が前記トランス−2−アルケナールよりも明らかに優れていた。その上、本発明に従う物質は、前記トランス−2−アルケナールとは対照的に、芳香および風味組成物にコクおよび豊かさを与える。従って、本発明に従う物質を用いて達成した改変を前記トランス−2−アルケナールを用いて達成することは不可能であった。
【非特許文献1】
Kovats Retention Indexes of Manounsaturated C12,C14 and C16 Alcohols、Acetates and Aldehydes Commonly Found in Lepidopteran Pheromone Blends(Francisco de A.Marques、J.S.McElfresh、Jocelyn G.Millar;J.Braz.Chem.Soc.(2000)、11(6)、592−599)。
【非特許文献2】
Gas chromatographic determination of vapour pressures of pheromonne like compounds III。Aldehydes(Bohumir Koutek、Michal Hoskovec、Pavlina Vrkocova、Karel Knecny、Ladislav Feltl、Jan Vrkoc;J.Chromatogr.、A(1996)、719(2)、391−400)。
【非特許文献3】
Mammalian Exocrine Secretions:IX。Constituents of Preorbital Secretion of Oribi、Ourebia,Ourebi(W.−P.Mo、B.V.Burger、M.LeRoux、H.S.C.Spies;Chem.Ecol.(1995)、21(8)、1191−215)。
【非特許文献4】
「Character−impact aroma components of coriander(Coriandrum sativum I.)herb」、Cadwallader,K.R.;Surakarnkul,R.;Yang,S.−P.;Webb,T.E.Flavor Chem.Ethn.Foods、[Proc.Meet.5th Chem.Cong.North Am.](1999)、Meeting DAte 1997、77−84.編集者:Shahidi、Fereidoon;Ho,Chi−Tang。出版社:Kluwer Academic/Plenum Publishers、ニューヨーク、N.Y.
【非特許文献5】
「Organoleptic properties of aliphatic aldehydes」、Boelens,Mans H.;Van Gemert,Leo J.;Perfum.Flovor.(1987)、12(5)、31−7、40、43
【0016】
角度を若干変えて見ると、本発明は、ある基礎組成物に柑橘芳香または柑橘風味を与えるか或はそれの柑橘芳香または柑橘風味を強める方法を利用できるようにすることにあり、この方法は、
(a)感覚の観点で有効な量の(Z)−8−テトラデセナール、(E)−8−テトラデセナールまたは(Z)−8−と(E)−8−テトラデセナールの混合物、および
(b)前記基礎組成物の成分、
を混合することを特徴とする。
【0017】
本方法を用いる場合、前記基礎組成物の全部を最初に導入するか、或は(a)の下に挙げた本発明に従う物質を前記基礎組成物の成分(任意の所望順で最初に導入しておいた)と混合してもよい。
【0018】
本発明は、また、芳香または風味組成物(即ち、物理的または組成の意味で前以て指定されている)を改変する方法にも関し、ここでは、(Z)−8−テトラデセナール、(E)−8−テトラデセナールまたは(Z)−8−と(E)−8−テトラデセナールの混合物を前記芳香または風味組成物に芳香または風味を改変する量で添加する。
【0019】
本方法を用いる場合、改変を受けさせるべき芳香または風味組成物を最初に全部導入してもよいか、或は本発明に従う物質を前記芳香または風味組成物の指定成分と一緒に所望の任意順で混合してもよい。この上に示したことを行った後に一般に柑橘香に関する改変を実施することは明らかであるが、しかしながら、また、本発明に従う物質を特定の柑橘芳香または風味組成物に添加することで、主要な柑橘香に注目すべき度合の影響を与えることなく、より新鮮、よりジューシー、より豊かそして/またはより代表的であると思われるようにすることも可能である。
【0020】
本発明は、また、(Z)−8−テトラデセナール、(E)−8−テトラデセナールまたは(Z)−8−と(E)−8−テトラデセナールの混合物を感覚の観点で活性のある量で含有させた芳香または風味組成物にも関する。そのような芳香または風味組成物は好適には柑橘組成物であり、ここで、用語「柑橘」は、特に、ビターオレンジ、ライム、グレープフルーツ、みかん、クレメンタイン、レモン、セドラルレモン、オレンジおよびきんかんを包含する。
【0021】
特に、(Z)−8−テトラデセナールを組成物の総質量を基準にして0.001から1%(質量/質量)、好適には0.001から0.1%(質量/質量)の割合で含有させた本発明に従う組成物が好適である。驚くべきことに、具体的には、(Z)−8−テトラデセナールを用いて通常のオレンジの風味をより新鮮、よりジューシー、より典型的およびより調和の取れたようにするには、それをほんの0.001%(質量/質量)の割合で用いることで既に充分である。従って、本発明に従う使用および本発明に従う方法では、有利に、(Z)−8−テトラデセナールの割合を前記割合に設定する。
【0022】
最後に、本発明は、本発明に従う芳香または風味組成物を製品の総質量を基準にして0.0001から1%(質量/質量)、好適には0.01から0.1%(質量/質量)の割合で含有させた製品、例えば(a)個人用衛生製品、洗浄剤または消費を意図しない他の製品、または(b)食料(消費に適した飲料を包含)にも関する。
【0023】
そのような製品に含有させる(Z)−8−テトラデセナールの割合を好適には製品の総質量を基準にして1ppbから100ppmにする。
【0024】
以下の実施例を基にして本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
(Z)−8−および(E)−8−テトラデセナールおよび比較物質の匂い閾値の測定
(Z)−8−および(E)−8−テトラデセナールおよび2種類の比較物質が水中で示す匂い閾値を通常様式で測定した。その結果を表1に要約する:
表1
物質 匂い閾値[ppb]
7−(Z)−テトラデセナール 2.60ppb
8−(Z)−テトラデセナール 0.009ppb
8−(E)−テトラデセナール 1.24ppb
9−(Z)−テトラデセナール 1.44ppb
(Z)−8−テトラデセナールが示す匂い閾値は構造的に関連した物質である(Z)−7−テトラデセナールおよび(Z)−9−テトラデセナールのそれよりもほぼ2桁の大きさで低いことが分かるであろう。
【実施例2】
【0026】
(Z)−8−および(E)−8−テトラデセナールの匂いの記述
本発明に従う物質である(Z)−8−および(E)−8−テトラデセナールに一団の熟練した風味専門家による試験を通常様式で受けさせた。その熟練者は既に引用した表題が「Organoleptic properties of aliphatic aldehydes」、Boelens、Mans H.;Van Gemert,Leo J.;Perfum.Flavor.(1987)、12(5)、31−7、40、43の論文に示されている手順を基にして関連した匂いの評価を行った、即ち彼らは0−4の等級の評価等級を基にして個々の物質の匂いを量化した。この等級は下記の意味を有する:
0:なし
1:弱い
2:中程度
3:強い
4:非常に強い
調査の結果を表2に要約する。
【0027】
【実施例3】
【0028】
通常の風味組成物(オレンジ風味)の改変
通常の風味組成物(組成物A)を本発明に従う風味組成物(組成物B)と比較した。以下の表4から分かるであろうように、組成物Bは実質的に組成物Aに相当しているが、組成物Aとは対照的に、組成物Bには(Z)−8−テトラデセナールを0.005%(質量/質量)(組成物の総質量を基準)の割合で含有させ、それを補う目的でオレンジ油の割合を低くした。
表4:組成物AおよびBの組成
オレンジ風味の組成物 A B
オクタナール 0.3% 0.3%
リナロール 0.7% 0.7%
デカナール 0.4% 0.4%
シトラール 0.1% 0.1%
ドデカナール 0.07% 0.07%
シトロネラール 0.06% 0.06%
テルピネオール 0.07% 0.07%
酪酸エチル 0.15% 0.15%
オクタノール 0.05% 0.05%
アセトアルデヒド 0.08% 0.08%
みかん油 0.15% 0.15%
レモン油 0.8% 0.8%
オレンジ油 97.07 97.065
8−(Z)−テトラデセナール 0.005%
本発明に従う組成物Bの風味は、通常の組成物Aの風味に比較して、顕著に新鮮であり、ジューシーであり、豊かでありかつ代表的であった。
【実施例4】
【0029】
(Z)−8−テトラデセナールの合成
合成を図1に図式的に示す。
【0030】
(Z)−8−テトラデセナール(6)の調製をシクロオクテン(1)から下記の4段階で行った:シクロオクテン(1)にオゾン分解を受けさせそして処理をS.L.Schreiber他(以下を参照)の方法に従って受けさせることで8−オキソカプリル酸メチル(2)を生じさせ、これをn−ヘキシルトリフェニルホスホニウムブロマイド(3)との(Z)選択的Wittig反応で(Z)−テトラデセンメチルエステル(原文のまま)(4)に変化させた。(4)にリチウムアラナートを用いた還元を受けさせてアルコール(5)を生じさせそしてPDCを用いた酸化を受けさせることで、(Z)−8−テトラデセナール(6)を得た:
8−オキソカプリル酸メチル(2)
8−オキソカプリル酸メチル(2)の調製をS.L.Schreiber、R.E.Claus、J.Regan、Tetrahedron Letters 1982、38、3867−3870の方法に類似した様式で行った:48gのシクロオクテン(1)と8.4gの重炭酸ナトリウムを48gのメタノールと1 lのジクロロメタンに入れてそれにオゾン分解を−78℃で5.5時間受けさせた。304gのトリエチルアミンを−60[脱文]Cでゆっくり滴下した後、この反応混合物を1時間かけて室温にまで温めた。この反応混合物をチオ硫酸ナトリウム溶液(10%、200ml)、2NのHCl(150ml)、NaOH(5%、150ml)そしてNaCl溶液(飽和、200ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を留出させた。蒸留で8−オキソカプリル酸メチル(2)を得た。
(Z)−8−テトラデセン酸メチル(4)
(Z)−8−テトラデセン酸メチル(4)の合成をJ.Bestmann、W.Stransky、O.Vostrowsky、Chem.Ber.1976、109、1694−1700およびL.F.Tietze、Th.Eicher、Reaktionen und Synthesen、(Reactions and Syntheses)Georg Thieme Verlag Stuttgart、ニューヨーク 1991、192の方法に類似した様式で行った:82.5gの臭化n−ヘキシルと131.2gのトリフェニルホスフィンを500mlのトルエンに入れて還流下で35時間沸騰させた。溶媒を留出させ、その残留物をジクロロメタンで取り上げた後、ジエチルエーテルを1 l加えた。結晶化を−15℃で起こさせることでn−ヘキシルトリフェニルホスホニウムブロマイド(3)を生じさせた。120mlのTHF(無水)に3を29.35gおよびカリウムビス−(トリメチルシリル)−アミドを150ml入れてブランケット用ガス(blanketing gas)下で1.5時間沸騰させた。−78℃で12.91gの8−オキソカプリル酸メチル(2)を20mlのTHFに入れて滴下した後、この反応混合物を−78℃で2.5時間撹拌した。この反応混合物を室温に温め、150mlの硫酸(10%)/75gの氷の上に注ぎ込んだ後、150mlのペンタンで2回抽出した。その有機相を重炭酸ナトリウム溶液そしてNaCl溶液(飽和)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、結晶化を−20℃で起こさせることでトリフェニルホスフィンオキサイドを分離した。蒸留を高真空下で行うことで(Z)−8−テトラデセン酸メチル(4)(GCに従うZ/E比>97/3)を得た。
(Z)−8−テトラデセン−1−オール(5)
(Z)−8−テトラデセン−1−オール(5)の調製をK.Schwetlick他、Organikum、(Organic Chemistry)、17版、VEB Verlag、ベルリン 1988、494−495頁の方法に類似した様式で行った:0.95gの水素化リチウムアルミニウムをブランケット用ガス下で150mlのジエチルエーテルに入れて懸濁させた後、0℃で10gの(Z)−8−テトラデセン酸メチル(4)を滴下した。この反応混合物を0℃で0.5時間そして室温で5時間撹拌した。水を1mlおよびNaOH溶液(15%)を1ml加えた後、その混合物をシリカゲルに通して濾過した。そのシリカゲルをエーテルで洗浄し、その有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を留出させた。(Z)−8−テトラデセン−1−オール(5)を得た。
(Z)−8−テトラデセナール(6)
(Z)−8−テトラデセナール(6)の調製をE.J.Corey、G.Schmidt、Tetrahedron Letters 1979、399−402の方法に類似した様式で行った:最初にブランケット用ガス下で15.8gの重クロム酸ピリジニウムを300mlのジクロロメタンに入れて導入した後、撹拌を行いながら5.93gの(Z)−8−テトラデセン−1−オール(5)を50mlのジクロロメタンに入れて加えた。この反応混合物を室温で15時間撹拌した後、シリカゲルに通して濾過した。蒸留を高真空下で行うことで(Z)−8−テトラデセナール(6)を得た。
1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ=0.89(t、J=7.0Hz、3H)、1.23−1.40(m、12H)、1.63(五重線、J=7.5Hz、2H)、1.95−2.05(m、4H)、2.42(dt、J=1.8、7.5Hz、2H)、5.35(mc、2H)、9.77(t、J=1.38Hz、1H)。
13C−NMR(75MHz、CDCl3):δ=14.09、22.08、22.61、27.11、27.21、29.00、29.09、29.46、29.53、31.55、43.90、129.6、130.1、202.8。
【実施例5】
【0031】
(E)−8−テトラデセナールの合成
合成を図2に図式的に示す。
【0032】
(E)−8−テトラデセナール(10)は(Z)−8−テトラデセナール(6)の二重結合の配置を逆転させることを通して4段階で入手可能であった:アルデヒド官能基をジオキソラン(7)として保護し、m−クロロ過安息香酸によるエポキシ化でオキシラン(8)を生じさせ、Vedejsの方法に従って元々の二重結合の幾何を逆転させることを伴わせたエポキシドの求核性開環で(E)−アルケン(9)を生じさせ、そしてそのアセタールに脱保護を酸触媒を用いて受けさせることで目標の化合物である(E)−8−テトラデセナール(10)を生じさせた。
2−[(Z)−トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(7)
2−[(Z)−トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(7)の調製をK.Schwetlick他、Organikum、(Organic Chemistry)17版、VEB Verlag、ベルリン 1988、398の方法に類似した様式で行った:5.6gの(Z)−8−テトラデセナール(6)と2.0gのエチレングリコールと20mgのp−トルエンスルホン酸を150mlのトルエンに入れて水分離装置の中で3時間沸騰させた。その反応混合物を重硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を留出させた。シリカゲルを用いたクロマトグラフィーで2−[(Z)−トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(7)を得た。
2−[(7R,8S/7S,8R)−エポキシ−トリデカニル]−1,3−ジオキソラン(8)
一般にMCPBAを用いたエポキシ化:D.Swern、Organic Peroxides、2巻、Wiley−Interscience、ニューヨーク 1971、355−533。
【0033】
最初に50mlのジクロロメタンに2−[(Z)−トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(7)を3.75g導入した後、0℃で5.44gのm−クロロ過安息香酸(70%)を分割して加えた。この反応混合物を0℃で3時間撹拌し、50mlのジクロロメタンで希釈した後、炭酸ナトリウム溶液(10%、2x30ml)そしてNaCl溶液(飽和、30ml)で洗浄した。この反応混合物を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を留出させた。2−[(7R,8S/7S,8R)−エポキシ−トリデカニル]−1,3−ジオキソラン(8)を得た。
2−[(E)トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(9)
2−[(E)トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(9)の調製をE.Vedejs、P.L.Fuchs、J.Am.Chem.Soc 1973、95、822−825の方法に類似した様式で行った:
リチウムジフェニルホスフィド(THF中〜0.9M):0.76gのリチウム線を50mlの乾燥THFに入れてこれにブランケット用ガス下で11.0gのクロルジフェニルホスフィンを滴下した。この反応混合物を室温で1日撹拌した。
【0034】
2−[(E)トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(9):最初に30mlのTHF(無水)にリチウムジフェニルホスフィド(THF中〜0.9M)を13.3ml導入した後、室温で2.70gの2−[(7R,8S/7S,8R)−エポキシ−トリデカニル]−1,3−ジオキソラン(8)を10mlのTHFに入れて滴下した。この反応混合物を2.5時間撹拌し、ヨウ化メチルを0.94ml加えた後、この反応混合物を1時間撹拌した。この反応混合物に20mlの水を用いたクエンチ(quenched)を30分間受けさせた後、500mlのジエチルエーテルを用いた抽出を受けさせた。その抽出液をNaCl溶液(飽和)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を留出させた。ペンタンを用いた結晶化を行って−18℃でトリフェニルホスフィンオキサイドを分離した。蒸留を高真空下で行うことで2−[(E)トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(9)を得た。
(E)−8−テトラデセナール(10)
J.Kocienski、Protecting Groups、Georg Thieme Verlag Stuttgart、ニューヨーク 1994、157−163の方法に従ってエチレン(原文のまま)グリコールアセタールに酸による加水分解を受けさせることで脱保護を行う:ブランケット用ガス下で75mlのメタノールに2−[(E)トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(9)を0.89g、p−トルエンスルホン酸を30mgおよび水を25ml入れて還流下で72時間沸騰させた(86%の変換率)。その反応混合物を200mlのジエチルエーテルで2回抽出し、30mlの重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を真空下で留出させた。シリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィーで(E)−8−テトラデセナール(10)(GCに従うE/Z比>97/3)を得た。
1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ=0.88(t、J=6.9Hz、3H)、1.23−1.40(m、12H)、1.63(五重線、J=7.2Hz、2H)、1.93−2.03(m、4H)、2.42(dt、J=1.8、7.3Hz、2H)、5.35(mc、2H)、9.76(t、J=1.8Hz、1H)。
13C−NMR(75MHz、CDCl3):δ=14.09、22.07、22.57、28.83、29.04、29.35、29.39、31.42、32.49、32.59、43.91、130.0、130.6、202.8。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(Z)−8−テトラデセナールの合成スキームを表す工程図である。
【図2】(E)−8−テトラデセナールの合成スキームを表す工程図である。
【0001】
本発明は(Z)−8−テトラデセナール、(E)−8−テトラデセナールまたは(Z)−8−と(E)−8−テトラデセナールの混合物を芳香(香り)または風味剤(風味)として用いることに関する。
【0002】
本発明は、更に、基礎組成物に柑橘芳香または柑橘風味を与えるか或はそれを強くする相当する方法、芳香および風味組成物を改変する方法、およびまた相当する芳香または風味組成物自身にも関する。
【背景技術】
【0003】
芳香および風味を付ける実施では、一般に、安価かつ一定の品質で調製可能で長期貯蔵時にも(可能ならばまた他の物質と接触した時にも)安定なままでありかつ所望の嗅覚もしくは味覚特徴を有する合成の芳香および風味剤が継続して求められている。香料はできるだけ自然で化粧品または産業用消費者用製品の芳香に有利な効果を与え得るに充分な強度を有する心地よい芳香特徴を有するべきである。風味剤は容易に消化可能で一般に普及している食品の典型的な風味成分を思い起こさせるか或はそのような食品のそれと同じでさえありかつ食品、経口投与される薬剤などの風味に積極的に貢献する能力を有するべきである。そのような要求に従う芳香および風味剤を見つけだすことはかなり骨の折れることであることは認められておりかつ秩序正しい高価な研究を必要とし、特にその目的が興味の持たれる新規な芳香特徴または風味傾向を見つけだすことにある場合にそのような研究を必要とする。
【0004】
適切な芳香もしくは風味剤の研究は、特に下記の実際問題が理由で本分野の技術者にとってより困難なことである:
− 芳香および風味知覚の機構が未知であること、
− 芳香または風味の客観的定量特徴付けが不可能なこと、
− 一方の芳香および/または風味知覚と他方の芳香および/または風味剤の化学構造の間の関係が充分には研究されていないこと、
− 公知芳香もしくは風味剤の構造的組成の変化が僅かであっても頻繁に起こることから嗅覚または風味特徴が実質的に変化しかつヒト有機体に対する適合性が悪化すること。
【0005】
従って、適切な芳香または風味剤を研究する時の成功度はしばしば研究者の直感に依存している。
【0006】
本発明の基になる目的は、この上に記述した一般的枠組みの条件を考慮に入れて、特に、通常の芳香または風味基礎組成物に新鮮な柑橘芳香を与えるか或はそのような組成物が有する現存の柑橘芳香を有利な様式で改変する、即ち特にそれを新鮮にし、それをよりジューシーで本物に近くしかつその組成物全体にコク(body)および豊かさを与える能力を有する芳香および風味剤を示すことにある。
【0007】
この示すべき物質は、特に、柑橘果実組成物、即ち消費者に例えばビターオレンジ(bitter orange)、ライム、グレープフルーツ、みかん、クレメンタイン(clementine)、レモン、セドラルレモン(cedral lemon)、オレンジ、きんかんなどを思い起こさせそして/または柑橘油が入っている組成物の感覚特性に有利な影響を与える能力を有するべきである。
【0008】
この示すべき物質は、香料製造者または風味専門家が香料または風味剤を構成する時に幅広く使用可能な代替品(今まで使用または記述されて来た柑橘芳香または風味剤の代替品)になるべきである。具体的には、そのような組成物を作り出す過程、即ち骨の折れる過程(これは一般に専門家によってのみ行われている)で想像の中に既に存在する芳香または風味像を得ようとする時、型にはめた様式で自由裁量による芳香または風味剤(文献によって具体的な芳香または風味面が特定されている)を使用することが行われているが、そのような使用は充分ではない。具体的には、ある組成物の芳香または風味特徴を添加の意味で正確に予測するのは、分かっているのが前記組成物の成分のみである時には不可能である、と言うのは、そのような成分はその混合物の中で予測不能な相互作用を起こすからである。従って、また、ある組成物に入っているある芳香または風味剤が他の成分に対して示す適合性、そして感覚によって検出可能でありかつまた完成組成物の全体的特徴に影響を与える付随する面(これらは恐らくは高純度物質が有する芳香を記述する時に特には認識されていない)が存在するか否かも重要である。
【0009】
本発明は、特に(Z)−8−テトラデセナール[いくらか弱い度合ではあるがまた(E)−8−テトラデセナールも]ばかりでなく(Z)−8−と(E)−8−テトラデセナールの混合物が芳香および風味剤として用いるに卓越して適切でありかつこの上に示した目的の達成で用いるに卓越して適切であることを驚くべきことに見いだしたことが基になっている。
【0010】
(Z)−8−テトラデセナールはほんの0.009ppbの特に低い匂い閾値(水に入れた時の匂い閾値)を有することから、この物質は少量でも芳香または風味(基礎)組成物に感覚で検出可能な改変をもたらす。このことは、我々自身の研究に従い、(E)−8−テトラデセナールの匂い閾値はほんの1.24ppbであるが、それでも、芳香および風味剤組成物で用いるに卓越して適し、特に(活性がより高い)(Z)−8−テトラデセナールとの混合物として用いるに適することに当てはまる。
【0011】
化学構造の点で本発明に従う(Z)−8−テトラデセナールに密に関係している物質である(Z)−7−テトラデセナールおよび(Z)−9−テトラデセナール(これらはそれとは対照的に商業的に入手可能である)は、(Z)−8−テトラデセナールに比べて使用可能な感覚的特性を全く持たない。特に、それらの匂い閾値は驚くべきことに(Z)−8−テトラデセナールのそれよりもほぼ2桁の大きさで高く、これに関しては以下の実施例を更に参照のこと。
【0012】
(Z)−8−および(E)−8−テトラデセナールは既に公知の物質であり、これに関しては特に非特許文献1、2および3が参考になる:
しかしながら、(Z)−8−および(E)−8−テトラデセナールが有する感覚特性は今日まで研究されておらず、上述した資料はフェロモンの研究に関連して構造を解明する時の問題に関係している。
【0013】
また、本発明に従う物質が属する脂肪族アルデヒドが有する感覚刺激または感覚特性に関する出版物は、結局、(Z)−8−テトラデセナールおよび(E)−8−テトラデセナールが有する特殊な特性の指摘を全く与えるものでもない。
【0014】
コエンドロ植物の揮発性成分(これにはまたいろいろな脂肪族アルデヒドも含まれる)が非特許文献4の論文に記述されている。試験された化合物は表1に記述する香りを与えることが示されている。しかしながら、柑橘のような香りが割り当てられたのは試験されたアルカナールの中の1種類の化合物のみ、特に鎖が比較的短い化合物である(E)−4−デセナールが「柑橘の感じ」の香りを有すると割り当てられたが、しかしながら、その香りは強さの意味で青草の香り(green odour)に隠れている背景の香りである。他方、(E)−2−テトラデセナール[これは本発明に従う化合物が有する鎖長と同じ鎖長を有するが、しかしながら、カルボニル基と共役している二重結合を含有し、その度合で、化学的には本発明に従う化合物に匹敵しない]の香りは、単に「脂肪、蝋、チーズ」のようであるとして示されており、かつ試験された他のアルカナールもまた柑橘の香りの香(citrus odour aspect)を含まない。
【0015】
主観的に定量されたアルデヒド類の感覚刺激特性が非特許文献5の論文に要約されている。その試験でもまた試験されたアルデヒドが主観的に柑橘性質に関して評価され、そしてその試験を実施した香料製造者および風味専門家の観点でこの上に考察した文献から既に公知の化合物である(E)−2−テトラデセナールは弱い柑橘香を含むと認めることはできるが、しかしながら、それは明らかに強い脂肪香に隠れている背景の香である。このような状況は試験されたさらなる一不飽和アルデヒドの場合に極めて類似しており、具体的には特に非共役二重結合を有するアルデヒドの場合に極めて類似している。それらがいやしくも柑橘香を含む(多くの場合当てはまらない)場合、その香の上に青草、脂肪および/または花のような香りの香が重なっている。注目すべき柑橘香が割り当てられた物質はトランス−2−オクテナール、トランス−2−デセナールおよびトランス−2−ウンデセナール(特に希釈形態)のみであり、これらは各々共役二重結合を含有する。しかしながら、それらが有する鎖長は本発明に従う化合物のそれとは異なりかつそれらは二重結合の共役を有することから、そのような物質は特に化学的には本発明に従う化合物とは全く類似しておらず、その結果として、本分野の技術者はそれらが有する感覚的特性から本発明に従う物質のそれを引き出すことは全くできなかったであろう。その上、我々自身が行った性能比較試験において、本発明に従う物質(共役二重結合を全く持たない)の方が前記トランス−2−アルケナールよりも明らかに優れていた。その上、本発明に従う物質は、前記トランス−2−アルケナールとは対照的に、芳香および風味組成物にコクおよび豊かさを与える。従って、本発明に従う物質を用いて達成した改変を前記トランス−2−アルケナールを用いて達成することは不可能であった。
【非特許文献1】
Kovats Retention Indexes of Manounsaturated C12,C14 and C16 Alcohols、Acetates and Aldehydes Commonly Found in Lepidopteran Pheromone Blends(Francisco de A.Marques、J.S.McElfresh、Jocelyn G.Millar;J.Braz.Chem.Soc.(2000)、11(6)、592−599)。
【非特許文献2】
Gas chromatographic determination of vapour pressures of pheromonne like compounds III。Aldehydes(Bohumir Koutek、Michal Hoskovec、Pavlina Vrkocova、Karel Knecny、Ladislav Feltl、Jan Vrkoc;J.Chromatogr.、A(1996)、719(2)、391−400)。
【非特許文献3】
Mammalian Exocrine Secretions:IX。Constituents of Preorbital Secretion of Oribi、Ourebia,Ourebi(W.−P.Mo、B.V.Burger、M.LeRoux、H.S.C.Spies;Chem.Ecol.(1995)、21(8)、1191−215)。
【非特許文献4】
「Character−impact aroma components of coriander(Coriandrum sativum I.)herb」、Cadwallader,K.R.;Surakarnkul,R.;Yang,S.−P.;Webb,T.E.Flavor Chem.Ethn.Foods、[Proc.Meet.5th Chem.Cong.North Am.](1999)、Meeting DAte 1997、77−84.編集者:Shahidi、Fereidoon;Ho,Chi−Tang。出版社:Kluwer Academic/Plenum Publishers、ニューヨーク、N.Y.
【非特許文献5】
「Organoleptic properties of aliphatic aldehydes」、Boelens,Mans H.;Van Gemert,Leo J.;Perfum.Flovor.(1987)、12(5)、31−7、40、43
【0016】
角度を若干変えて見ると、本発明は、ある基礎組成物に柑橘芳香または柑橘風味を与えるか或はそれの柑橘芳香または柑橘風味を強める方法を利用できるようにすることにあり、この方法は、
(a)感覚の観点で有効な量の(Z)−8−テトラデセナール、(E)−8−テトラデセナールまたは(Z)−8−と(E)−8−テトラデセナールの混合物、および
(b)前記基礎組成物の成分、
を混合することを特徴とする。
【0017】
本方法を用いる場合、前記基礎組成物の全部を最初に導入するか、或は(a)の下に挙げた本発明に従う物質を前記基礎組成物の成分(任意の所望順で最初に導入しておいた)と混合してもよい。
【0018】
本発明は、また、芳香または風味組成物(即ち、物理的または組成の意味で前以て指定されている)を改変する方法にも関し、ここでは、(Z)−8−テトラデセナール、(E)−8−テトラデセナールまたは(Z)−8−と(E)−8−テトラデセナールの混合物を前記芳香または風味組成物に芳香または風味を改変する量で添加する。
【0019】
本方法を用いる場合、改変を受けさせるべき芳香または風味組成物を最初に全部導入してもよいか、或は本発明に従う物質を前記芳香または風味組成物の指定成分と一緒に所望の任意順で混合してもよい。この上に示したことを行った後に一般に柑橘香に関する改変を実施することは明らかであるが、しかしながら、また、本発明に従う物質を特定の柑橘芳香または風味組成物に添加することで、主要な柑橘香に注目すべき度合の影響を与えることなく、より新鮮、よりジューシー、より豊かそして/またはより代表的であると思われるようにすることも可能である。
【0020】
本発明は、また、(Z)−8−テトラデセナール、(E)−8−テトラデセナールまたは(Z)−8−と(E)−8−テトラデセナールの混合物を感覚の観点で活性のある量で含有させた芳香または風味組成物にも関する。そのような芳香または風味組成物は好適には柑橘組成物であり、ここで、用語「柑橘」は、特に、ビターオレンジ、ライム、グレープフルーツ、みかん、クレメンタイン、レモン、セドラルレモン、オレンジおよびきんかんを包含する。
【0021】
特に、(Z)−8−テトラデセナールを組成物の総質量を基準にして0.001から1%(質量/質量)、好適には0.001から0.1%(質量/質量)の割合で含有させた本発明に従う組成物が好適である。驚くべきことに、具体的には、(Z)−8−テトラデセナールを用いて通常のオレンジの風味をより新鮮、よりジューシー、より典型的およびより調和の取れたようにするには、それをほんの0.001%(質量/質量)の割合で用いることで既に充分である。従って、本発明に従う使用および本発明に従う方法では、有利に、(Z)−8−テトラデセナールの割合を前記割合に設定する。
【0022】
最後に、本発明は、本発明に従う芳香または風味組成物を製品の総質量を基準にして0.0001から1%(質量/質量)、好適には0.01から0.1%(質量/質量)の割合で含有させた製品、例えば(a)個人用衛生製品、洗浄剤または消費を意図しない他の製品、または(b)食料(消費に適した飲料を包含)にも関する。
【0023】
そのような製品に含有させる(Z)−8−テトラデセナールの割合を好適には製品の総質量を基準にして1ppbから100ppmにする。
【0024】
以下の実施例を基にして本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
(Z)−8−および(E)−8−テトラデセナールおよび比較物質の匂い閾値の測定
(Z)−8−および(E)−8−テトラデセナールおよび2種類の比較物質が水中で示す匂い閾値を通常様式で測定した。その結果を表1に要約する:
表1
物質 匂い閾値[ppb]
7−(Z)−テトラデセナール 2.60ppb
8−(Z)−テトラデセナール 0.009ppb
8−(E)−テトラデセナール 1.24ppb
9−(Z)−テトラデセナール 1.44ppb
(Z)−8−テトラデセナールが示す匂い閾値は構造的に関連した物質である(Z)−7−テトラデセナールおよび(Z)−9−テトラデセナールのそれよりもほぼ2桁の大きさで低いことが分かるであろう。
【実施例2】
【0026】
(Z)−8−および(E)−8−テトラデセナールの匂いの記述
本発明に従う物質である(Z)−8−および(E)−8−テトラデセナールに一団の熟練した風味専門家による試験を通常様式で受けさせた。その熟練者は既に引用した表題が「Organoleptic properties of aliphatic aldehydes」、Boelens、Mans H.;Van Gemert,Leo J.;Perfum.Flavor.(1987)、12(5)、31−7、40、43の論文に示されている手順を基にして関連した匂いの評価を行った、即ち彼らは0−4の等級の評価等級を基にして個々の物質の匂いを量化した。この等級は下記の意味を有する:
0:なし
1:弱い
2:中程度
3:強い
4:非常に強い
調査の結果を表2に要約する。
【0027】
【実施例3】
【0028】
通常の風味組成物(オレンジ風味)の改変
通常の風味組成物(組成物A)を本発明に従う風味組成物(組成物B)と比較した。以下の表4から分かるであろうように、組成物Bは実質的に組成物Aに相当しているが、組成物Aとは対照的に、組成物Bには(Z)−8−テトラデセナールを0.005%(質量/質量)(組成物の総質量を基準)の割合で含有させ、それを補う目的でオレンジ油の割合を低くした。
表4:組成物AおよびBの組成
オレンジ風味の組成物 A B
オクタナール 0.3% 0.3%
リナロール 0.7% 0.7%
デカナール 0.4% 0.4%
シトラール 0.1% 0.1%
ドデカナール 0.07% 0.07%
シトロネラール 0.06% 0.06%
テルピネオール 0.07% 0.07%
酪酸エチル 0.15% 0.15%
オクタノール 0.05% 0.05%
アセトアルデヒド 0.08% 0.08%
みかん油 0.15% 0.15%
レモン油 0.8% 0.8%
オレンジ油 97.07 97.065
8−(Z)−テトラデセナール 0.005%
本発明に従う組成物Bの風味は、通常の組成物Aの風味に比較して、顕著に新鮮であり、ジューシーであり、豊かでありかつ代表的であった。
【実施例4】
【0029】
(Z)−8−テトラデセナールの合成
合成を図1に図式的に示す。
【0030】
(Z)−8−テトラデセナール(6)の調製をシクロオクテン(1)から下記の4段階で行った:シクロオクテン(1)にオゾン分解を受けさせそして処理をS.L.Schreiber他(以下を参照)の方法に従って受けさせることで8−オキソカプリル酸メチル(2)を生じさせ、これをn−ヘキシルトリフェニルホスホニウムブロマイド(3)との(Z)選択的Wittig反応で(Z)−テトラデセンメチルエステル(原文のまま)(4)に変化させた。(4)にリチウムアラナートを用いた還元を受けさせてアルコール(5)を生じさせそしてPDCを用いた酸化を受けさせることで、(Z)−8−テトラデセナール(6)を得た:
8−オキソカプリル酸メチル(2)
8−オキソカプリル酸メチル(2)の調製をS.L.Schreiber、R.E.Claus、J.Regan、Tetrahedron Letters 1982、38、3867−3870の方法に類似した様式で行った:48gのシクロオクテン(1)と8.4gの重炭酸ナトリウムを48gのメタノールと1 lのジクロロメタンに入れてそれにオゾン分解を−78℃で5.5時間受けさせた。304gのトリエチルアミンを−60[脱文]Cでゆっくり滴下した後、この反応混合物を1時間かけて室温にまで温めた。この反応混合物をチオ硫酸ナトリウム溶液(10%、200ml)、2NのHCl(150ml)、NaOH(5%、150ml)そしてNaCl溶液(飽和、200ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を留出させた。蒸留で8−オキソカプリル酸メチル(2)を得た。
(Z)−8−テトラデセン酸メチル(4)
(Z)−8−テトラデセン酸メチル(4)の合成をJ.Bestmann、W.Stransky、O.Vostrowsky、Chem.Ber.1976、109、1694−1700およびL.F.Tietze、Th.Eicher、Reaktionen und Synthesen、(Reactions and Syntheses)Georg Thieme Verlag Stuttgart、ニューヨーク 1991、192の方法に類似した様式で行った:82.5gの臭化n−ヘキシルと131.2gのトリフェニルホスフィンを500mlのトルエンに入れて還流下で35時間沸騰させた。溶媒を留出させ、その残留物をジクロロメタンで取り上げた後、ジエチルエーテルを1 l加えた。結晶化を−15℃で起こさせることでn−ヘキシルトリフェニルホスホニウムブロマイド(3)を生じさせた。120mlのTHF(無水)に3を29.35gおよびカリウムビス−(トリメチルシリル)−アミドを150ml入れてブランケット用ガス(blanketing gas)下で1.5時間沸騰させた。−78℃で12.91gの8−オキソカプリル酸メチル(2)を20mlのTHFに入れて滴下した後、この反応混合物を−78℃で2.5時間撹拌した。この反応混合物を室温に温め、150mlの硫酸(10%)/75gの氷の上に注ぎ込んだ後、150mlのペンタンで2回抽出した。その有機相を重炭酸ナトリウム溶液そしてNaCl溶液(飽和)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、結晶化を−20℃で起こさせることでトリフェニルホスフィンオキサイドを分離した。蒸留を高真空下で行うことで(Z)−8−テトラデセン酸メチル(4)(GCに従うZ/E比>97/3)を得た。
(Z)−8−テトラデセン−1−オール(5)
(Z)−8−テトラデセン−1−オール(5)の調製をK.Schwetlick他、Organikum、(Organic Chemistry)、17版、VEB Verlag、ベルリン 1988、494−495頁の方法に類似した様式で行った:0.95gの水素化リチウムアルミニウムをブランケット用ガス下で150mlのジエチルエーテルに入れて懸濁させた後、0℃で10gの(Z)−8−テトラデセン酸メチル(4)を滴下した。この反応混合物を0℃で0.5時間そして室温で5時間撹拌した。水を1mlおよびNaOH溶液(15%)を1ml加えた後、その混合物をシリカゲルに通して濾過した。そのシリカゲルをエーテルで洗浄し、その有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を留出させた。(Z)−8−テトラデセン−1−オール(5)を得た。
(Z)−8−テトラデセナール(6)
(Z)−8−テトラデセナール(6)の調製をE.J.Corey、G.Schmidt、Tetrahedron Letters 1979、399−402の方法に類似した様式で行った:最初にブランケット用ガス下で15.8gの重クロム酸ピリジニウムを300mlのジクロロメタンに入れて導入した後、撹拌を行いながら5.93gの(Z)−8−テトラデセン−1−オール(5)を50mlのジクロロメタンに入れて加えた。この反応混合物を室温で15時間撹拌した後、シリカゲルに通して濾過した。蒸留を高真空下で行うことで(Z)−8−テトラデセナール(6)を得た。
1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ=0.89(t、J=7.0Hz、3H)、1.23−1.40(m、12H)、1.63(五重線、J=7.5Hz、2H)、1.95−2.05(m、4H)、2.42(dt、J=1.8、7.5Hz、2H)、5.35(mc、2H)、9.77(t、J=1.38Hz、1H)。
13C−NMR(75MHz、CDCl3):δ=14.09、22.08、22.61、27.11、27.21、29.00、29.09、29.46、29.53、31.55、43.90、129.6、130.1、202.8。
【実施例5】
【0031】
(E)−8−テトラデセナールの合成
合成を図2に図式的に示す。
【0032】
(E)−8−テトラデセナール(10)は(Z)−8−テトラデセナール(6)の二重結合の配置を逆転させることを通して4段階で入手可能であった:アルデヒド官能基をジオキソラン(7)として保護し、m−クロロ過安息香酸によるエポキシ化でオキシラン(8)を生じさせ、Vedejsの方法に従って元々の二重結合の幾何を逆転させることを伴わせたエポキシドの求核性開環で(E)−アルケン(9)を生じさせ、そしてそのアセタールに脱保護を酸触媒を用いて受けさせることで目標の化合物である(E)−8−テトラデセナール(10)を生じさせた。
2−[(Z)−トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(7)
2−[(Z)−トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(7)の調製をK.Schwetlick他、Organikum、(Organic Chemistry)17版、VEB Verlag、ベルリン 1988、398の方法に類似した様式で行った:5.6gの(Z)−8−テトラデセナール(6)と2.0gのエチレングリコールと20mgのp−トルエンスルホン酸を150mlのトルエンに入れて水分離装置の中で3時間沸騰させた。その反応混合物を重硫酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を留出させた。シリカゲルを用いたクロマトグラフィーで2−[(Z)−トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(7)を得た。
2−[(7R,8S/7S,8R)−エポキシ−トリデカニル]−1,3−ジオキソラン(8)
一般にMCPBAを用いたエポキシ化:D.Swern、Organic Peroxides、2巻、Wiley−Interscience、ニューヨーク 1971、355−533。
【0033】
最初に50mlのジクロロメタンに2−[(Z)−トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(7)を3.75g導入した後、0℃で5.44gのm−クロロ過安息香酸(70%)を分割して加えた。この反応混合物を0℃で3時間撹拌し、50mlのジクロロメタンで希釈した後、炭酸ナトリウム溶液(10%、2x30ml)そしてNaCl溶液(飽和、30ml)で洗浄した。この反応混合物を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を留出させた。2−[(7R,8S/7S,8R)−エポキシ−トリデカニル]−1,3−ジオキソラン(8)を得た。
2−[(E)トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(9)
2−[(E)トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(9)の調製をE.Vedejs、P.L.Fuchs、J.Am.Chem.Soc 1973、95、822−825の方法に類似した様式で行った:
リチウムジフェニルホスフィド(THF中〜0.9M):0.76gのリチウム線を50mlの乾燥THFに入れてこれにブランケット用ガス下で11.0gのクロルジフェニルホスフィンを滴下した。この反応混合物を室温で1日撹拌した。
【0034】
2−[(E)トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(9):最初に30mlのTHF(無水)にリチウムジフェニルホスフィド(THF中〜0.9M)を13.3ml導入した後、室温で2.70gの2−[(7R,8S/7S,8R)−エポキシ−トリデカニル]−1,3−ジオキソラン(8)を10mlのTHFに入れて滴下した。この反応混合物を2.5時間撹拌し、ヨウ化メチルを0.94ml加えた後、この反応混合物を1時間撹拌した。この反応混合物に20mlの水を用いたクエンチ(quenched)を30分間受けさせた後、500mlのジエチルエーテルを用いた抽出を受けさせた。その抽出液をNaCl溶液(飽和)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を留出させた。ペンタンを用いた結晶化を行って−18℃でトリフェニルホスフィンオキサイドを分離した。蒸留を高真空下で行うことで2−[(E)トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(9)を得た。
(E)−8−テトラデセナール(10)
J.Kocienski、Protecting Groups、Georg Thieme Verlag Stuttgart、ニューヨーク 1994、157−163の方法に従ってエチレン(原文のまま)グリコールアセタールに酸による加水分解を受けさせることで脱保護を行う:ブランケット用ガス下で75mlのメタノールに2−[(E)トリデセ−7−エニル]−1,3−ジオキソラン(9)を0.89g、p−トルエンスルホン酸を30mgおよび水を25ml入れて還流下で72時間沸騰させた(86%の変換率)。その反応混合物を200mlのジエチルエーテルで2回抽出し、30mlの重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を真空下で留出させた。シリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィーで(E)−8−テトラデセナール(10)(GCに従うE/Z比>97/3)を得た。
1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ=0.88(t、J=6.9Hz、3H)、1.23−1.40(m、12H)、1.63(五重線、J=7.2Hz、2H)、1.93−2.03(m、4H)、2.42(dt、J=1.8、7.3Hz、2H)、5.35(mc、2H)、9.76(t、J=1.8Hz、1H)。
13C−NMR(75MHz、CDCl3):δ=14.09、22.07、22.57、28.83、29.04、29.35、29.39、31.42、32.49、32.59、43.91、130.0、130.6、202.8。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(Z)−8−テトラデセナールの合成スキームを表す工程図である。
【図2】(E)−8−テトラデセナールの合成スキームを表す工程図である。
Claims (9)
- 芳香または風味剤としての(Z)−8−テトラデセナール、(E)−8−テトラデセナールまたは(Z)−8−と(E)−8−テトラデセナールの混合物の使用。
- ある基礎組成物に柑橘芳香または柑橘風味を与えるか或はそれの柑橘芳香または柑橘風味を強める方法であって、
(a)感覚の観点で有効な量の(Z)−8−テトラデセナール、(E)−8−テトラデセナールまたは(Z)−8−と(E)−8−テトラデセナールの混合物、および
(b)前記基礎組成物の成分、
を混合することを特徴とする方法。 - 芳香または風味組成物を改変する方法であって、前記芳香または風味組成物に(Z)−8−テトラデセナール、(E)−8−テトラデセナールまたは(Z)−8−と(E)−8−テトラデセナールの混合物を芳香または風味を改変する量で添加する方法。
- (Z)−8−テトラデセナール、(E)−8−テトラデセナールまたは(Z)−8−と(E)−8−テトラデセナールの混合物を感覚の観点で活性のある量で含んで成る芳香または風味組成物。
- (Z)−8−テトラデセナールをこの組成物の総質量を基準にして0.001から1%(質量/質量)の割合で含有することを特徴とする請求項4記載の芳香または風味組成物。
- (Z)−8−テトラデセナールをこの組成物の総質量を基準にして0.001から0.1%(質量/質量)の割合で含有することを特徴とする請求項4または5記載の芳香または風味組成物。
- この組成物が柑橘果実組成物であることを特徴とする請求項4−6の1項記載の芳香または風味組成物。
- 請求項4から7の1項記載の芳香または風味組成物を製品の総質量を基準にして0.0001から1%(質量/質量)、好適には0.001から0.1%(質量/質量)の割合で含有する製品。
- (Z)−8−テトラデセナールを製品の総質量を基準にして1ppbから100ppmの割合で含有する製品。
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