JP2004532642A - 動物細胞の培養方法と動物細胞でのポリペプチド産生 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
発明の分野
本発明は、哺乳動物細胞の培養系においてポリペプチドの発現を改善する方法に関する。特に、プロセスの堅牢性が改善されるとともに所望の質、例えば生物学的活性を有するポリペプチドの優れた発現が促進されるように環境的及び栄養的条件を制御及び調整した条件下で、哺乳動物細胞を培養する方法に関する。また本発明は、該方法によって産生されたポリペプチド、特に抗体又はその断片、そのような抗体の使用方法、及びポリペプチドを含有する製薬組成物に関する。本発明はまた、流加細胞培養系(fed batch cell culture)で動物細胞を培養して、産生能、細胞培養の生存率、及びこのような培養を用いての収率の全体的な向上を、最大にする方法に関する。
【0002】
発明の背景
組換えDNA技術の出現により、組換え細胞培養で産生させることのできる抗体等のポリペプチドの利用性は非常に高まった。組換えDNA技術の中にはポリペプチドの産生をバクテリアや酵母細胞に頼るものもあるが、特にポリペプチドの完全な生物学的活性を確保するのに必要な翻訳後の修飾を有するポリペプチドを産生することが望ましいという観点から、動物細胞(特に哺乳動物細胞)におけるポリペプチドの産生がより有意であるとされている。同様に、ハイブリドーマを作成して培養し、モノクローナル抗体(MAbs)を作るための細胞融合技術も広く利用されている。
【0003】
従って、このような遺伝的に修飾さして動物細胞の細胞増殖及び/又はポリペプチド産生を向上させるために、技術が開発されてきた。いくつかのグループでは、細胞増殖及びポリペプチド産生への重量モル浸透圧濃度の影響を観察している。例えば、Stubblefield等, Cancer Research, 20:1646-1655 (Decemeber 1960); Garcia-Perez等, Journal of Biological Chemistry, 264(28):16815-16821 (1989); Miner等, Invasion Metastasis, 1:158-174 (1981); 独国特許第2,251,249号; 欧州特許第481,791号; 米国特許第5,151,359号; 米国特許第4,724,206号; 米国特許第5,122,469号; 及び国際公開WO 89/04867参照。細胞増殖又はポリペプチド産生のための様々な重量モル浸透圧濃度の範囲が推奨され、一般に、細胞培地の重量モル浸透圧濃度はNaCl又はアミノ酸の添加によって上げられる。
【0004】
他に、組換え細胞培養における細胞増殖及び/又はポリペプチド産生へのグルコース濃度の影響が検討されている。例えば、Park等, Biotechnology and Bioengineering, 40: 686-696 (1992); Huang等, Journal of Biotechnology, 18: 161-162 (1991); 欧州特許第387,840号; Reuveny等, Journal of Immunological Methods, 86: 53-59 (1986); Fine等, In Vitro, 12(10):693-701 (1976); Dircks等, Exp. Eve Res., 44: 951-958 (1987); Mizutani等, Biochemical and Biophysical Research Communications, 187(2):664-669 (September 1992); Sugiura Biotechnology and Bioengineering, 39:953-959 (1992); 国際公開WO 88/01643 Graf等, DECHEMA Biotechnol. Conf., 3:615-618 (1989); 日本国特許出願番号JP1-101882号; 米国特許第3,926,723号; 国際公開WO 87/00195; 及びFleischaker, Jr., Ph.D. Thesis, Massachusetts Institute of Technology, pp. 196-229 (June 1982)参照。またGlacken等, Biothechnol. Bioeng., 28:1376-1389 (1986)も、グルタミンが細胞培養に及ぼす影響を研究している。
【0005】
米国特許第5,856,179号及び6,180,401号は、プロセスの間グルコース及びグルタミンの濃度制御を介して重量モル浸透圧濃度を制御することによる、動物細胞培養での抗体を含むポリペプチドの改善された産生方法に関する。これらの特許は、高い細胞生存率を維持する又は高速の細胞増殖の期間を延長するように、動物細胞の増殖の流加細胞培養条件を制御する方法を提供する。この方法は、哺乳動物細胞の培養中に、乳酸等の潜在的に有害な代謝老廃物の産生を制御することができる。またこの方法は、老廃物の蓄積及び中和と、それに続く消費したグルコースの交換によって、重量モル浸透圧濃度の上昇を抑えることができる。従って、哺乳動物細胞の培養中に重量モル浸透圧濃度及び乳酸等の老廃物の産生を制御することにより、細胞の生存率を改善することが可能である。これらの特許は培地において比較的少ない量、例えば約1g/L未満のグルコースの使用を記載している。
【0006】
最近の抗体産生方法は、適応制御法の使用に注目し、副産物の蓄積を制限するために置換グルコース及びグルタミンを利用する傾向にある。適応制御は、活性培養環境における実施と維持が困難なアルゴリズムの制御に依存する。グルコース及びグルタミンの置換により、生産費用は大幅に増加し得る。
よって、所望の翻訳後の修飾が組込まれた生物学的に活性なポリペプチドを産生できる動物細胞の、改善された且つ費用効果的な増殖方法を提供する必要が引き続きある。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
上述した必要性に応じて、本発明の実施態様によりポリペプチドを産生するための細胞の培養方法を改善する。このような方法により、細胞培養の生存率を改善し、高収率で所望の産生物を産生し、副産物の蓄積を低減し、及び/又はより効率的で生産的なシステムにより特に大規模生産の場合に費用削減を達成することができる。
本発明によると、
(a)所望のポリペプチドをエンコードする単離核酸を含有する動物細胞を細胞培地で増殖することと
(b)培地のグルコース濃度が培養の少なくともどこかの時点で10g/Lを超えるように培養開始時又は培養中に細胞培地にグルコースを添加し、ポリペプチドを発現するように動物細胞を該細胞培地で培養することと
を含む細胞培養でのポリペプチド産生方法が提供される。
本発明によると、当該方法により産生されるモノクローナル抗体も提供される。
【0008】
治療的に有効量の抗体を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の疾患の治療方法も提供される。
本発明の方法により産生されるモノクローナル抗体と、例えば動物の疾病又は疾患の治療で使用するための、モノクローナル抗体を含む製薬組成物も提供される。こういったモノクローナル抗体としては例えば、抗HER2(例えばWO 0115730参照)、抗体2C4(例えばWO 0115730及びWO 0100245参照)、抗VEGF(例えばWO 0119987参照)、抗CD11a(例えばWO 9949856及びその引用文献参照)、抗組織因子(例えばWO 0891263参照)、IgG4b(同時継続出願PCT/US01/07501参照)、抗CD40(例えばWO 0075348参照)、抗CD20(例えばUS5,736,137及びUS6,171,586に記載の抗体C2B8)、及び抗IgE(例えばWO 9901556、US6,172,213及びUS5,994,511に記載の抗体E25及びE26)が挙げられる。これらの参照文献の全体を、モノクローナル抗体、該抗体の製薬調製、及び該抗体の投与により治療可能な疾患の例に関する記述について、出典明示により本明細書に取り込む。
【0009】
所望のポリペプチドをエンコードする核酸を含有する動物細胞を細胞培地で増殖することと、培地のグルコース濃度が培養の少なくともどこかの時点で10g/Lを超えるように、培養開始時又は培養中に細胞培地にグルコースを添加し、動物細胞を該細胞培地で培養することとを含む、流加細胞培養系での動物細胞の増殖方法も提供される。あるいは本発明によると、グルコースの添加は、培地に添加される総量が10g/Lを超えるように1回又は複数回に分けて培養開始時又は培養中に行われる。
【0010】
本発明の第一の側面では、所望のポリペプチドをエンコードする単離核酸を含有する動物細胞を細胞培地で増殖することと、ポリペプチドを発現するように産生段階で動物細胞を細胞培地で培養することとを含む細胞培養でのポリペプチド産生方法が提供される。培地のグルコース濃度が培養の少なくともどこかの時点で10g/Lを超えるように、培養開始時又は培養中に該培地にグルコースが添加される。当該方法は、培養の接種原を提供するために動物細胞が拡大される接種原増殖段階を含み得る。
【0011】
本発明の該側面の実施態様で、培養のどこかの時点におけるグルコース濃度は少なくとも約12ないし40g/L、例えば約12、13、14、15、16、17、18、19又は20g/Lである。培養開始時及び培養中に添加されるグルコースの総量は、約10ないし40g/Lの範囲であってよく、例えば約15ないし30g/Lである。グルコースは、単独で又はバッチ添加物の一部として培養中の複数段階で添加されてよい。グルコース濃度は培養の間中約2g/Lに維持されるのが好ましい。特定の実施態様では、培地は約1ないし12g/Lのグルコースを含有し、培養開始時又は培養中に総量で10g/Lを超えるグルコースが培地に添加される。
【0012】
本発明の別の実施態様で、細胞培地は、培養開始時に約280ないし380mOsm、好ましくは約300ないし350mOsmの重量モル浸透圧濃度を有し、培養のどこかの時点で約400ないし600mOsm、好ましくは約420ないし500mOsmの重量モル浸透圧濃度を有する。
本発明の他の実施態様で、産生段階での培養は、増殖段階の開始から少なくとも3時間、好ましくは少なくとも12時間、より好ましくは少なくとも24時間、なお好ましくは少なくとも48時間、さらに好ましくは約72ないし192時間後に開始する。
【0013】
他の実施態様において、培養中の培地のグルタミン濃度は約5mM未満で、好適には培養中、培地にグルタミンは添加されない。グルタミンの替わりに又はそれに加えて、任意でグルタミン酸を、グルタミン酸の濃度が培養中の少なくともある時点で約1ないし10mMとなるように培養中培地に添加してもよい。細胞培地におけるグルタミン酸濃度対グルタミン濃度の比率は、好ましくは少なくとも2:0.5である。
本発明の他の実施態様において、培養中に酪酸塩は添加されず、培地は培養中、約6.5ないし7.5のpHで維持される。
【0014】
他の実施態様では、限定するものではないがグルコースを含む細胞培養栄養素を含むバッチ添加物が、培養中1回又は複数回に分けて細胞培地に添加される。バッチ添加物は唯一のグルコース源であってよく、又は他の方法で添加されたグルコースを補うために、つまり単独で使用されてもよい。バッチ添加物は培養中に1回、2回又はさらなる複数回、細胞培地に添加され得る。バッチ添加物は、産生段階の培養開始時に、該開始から約12時間まで、又はより好適には該開始後12ないし120時間、又は24ないし72時間、さらには約80ないし120時間に添加されるのが好ましい。
【0015】
他の実施態様で、培養中の培地温度は、培養開始時の温度より少なくとも2℃低下される。例えば培養開始時に約35ないし39℃である温度は、その後の培養中に31ないし35℃に低下されることができる。温度は、産生段階の培養開始から約12ないし72時間後に低下されてよい。例えば温度は、培養開始から約12、24、36、48又は56時間後に、約2、3、4又は5℃低下されてよい。
【0016】
他の実施態様で、培養開始時の播種密度は約0.1ないし0.5%PCVである。例えば約0.2%PCVの播種密度を使用でき、温度シフトは培養開始から少なくとも約24ないし72時間後に起こり、このとき温度は約37℃から約34℃に低下される。また、培養開始時の播種密度が約0.4%PCVである場合、温度シフトは培養開始から少なくとも約3ないし72時間後に起こり、このとき温度は約37℃から約33℃に低下される。
【0017】
さらなる実施態様では、本発明の方法は培養開始時に培地に細胞の接種原を添加することを含む。本発明によると、接種原容積は培地容積の5分の1で、接種原は約0.5ないし2.5濃縮細胞容積、好適には約1PCVないし2PCVの密度で動物細胞を含有する。
好適な実施態様では、増殖及び培養段階の双方において細胞培地は無血清で、好ましくは動物性タンパク質を含まない。
好適な実施態様では、細胞は哺乳動物細胞で、好ましくはチャイニーズハムスター卵巣細胞である。
好適な実施態様では、ポリペプチドはモノクローナル抗体で、例えば抗HER2、抗体2C4、抗VEGF、抗体C2B8、抗CD11a、抗組織因子、抗CD40、抗CD20、抗IgE、抗体E25又は抗体E26である。
【0018】
本発明の第二の側面は、上述した方法により産生されるモノクローナル抗体を提供する。好適には抗体は少なくとも1のグリカン残基を含み、抗体中の、ゼロ末端ガラクトース残基を有するグリカンの総量は約80%未満、好適には70%未満、より好適には60%未満、最も好適には55%未満である。
本発明の第三の側面は、治療的に有効量の上述した抗体を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の疾患の治療方法を提供する。
【0019】
本発明の第四の側面は、上述のモノクローナル抗体、例えば抗HER2、抗体2C4、抗VEGF、抗体C2B8、抗CD11a、抗組織因子、IgG4b、抗CD40、抗CD20、抗IgE、E25、又はE26を含む製薬組成物を提供する。
本発明の第五の側面は、動物細胞を細胞培地で増殖することと、培養中のグルコース濃度が10g/Lを超えるように培養開始時又は培養中に細胞培地にグルコースを添加し、ポリペプチド産生段階において動物細胞を該細胞培地で培養することとを含む、流加細胞培養系での動物細胞の増殖方法を提供する。
【0020】
本発明の該第五の側面の実施態様で、培養のどこかの時点におけるグルコース濃度は約12ないし40g/L、例えば約12、13、14、15、16、17、18、19又は20g/Lである。培養開始時及び培養中に添加されるグルコースの総量は、約10ないし40g/Lの範囲であってよく、例えば約15ないし30g/Lである。グルコースは、単独で又はバッチ添加物の一部として培養中の複数段階で添加されてよい。グルコース濃度は培養の間中少なくとも約2g/Lに維持されるのが好ましい。特定の実施態様では、培地は約1ないし12g/Lのグルコースを含有し、培養開始時又は培養中に総量で10g/Lを超えるグルコースが培地に添加される。
【0021】
本発明の他の実施態様で、細胞培地は、培養開始時に約280ないし380mOsm、好適には約300ないし350mOsmの重量モル浸透圧濃度を有し、培養のどこかの時点において約400ないし600mOsm、好適には約420ないし500mOsmの重量モル浸透圧濃度を有する。
本発明の他の実施態様で、産生段階での培養は、増殖段階の開始から少なくとも3時間、好ましくは少なくとも12時間、より好ましくは少なくとも24時間、なお好ましくは少なくとも48時間、さらに好ましくは約72ないし192時間後に開始する。
【0022】
他の実施態様で、培養中の培地のグルタミン濃度は約5mM未満で、好適には培養中、培地にグルタミンは添加されない。グルタミンの代わりに又はそれに加えて、グルタミン酸を、グルタミン酸の濃度が培養中の少なくともある時点で約1ないし10mMとなるように培養中培地に添加してもよい。細胞培地におけるグルタミン酸濃度対グルタミン濃度の比率は、好ましくは少なくとも2:0.5である。
本発明の他の実施態様において、培養中に酪酸塩は添加されず、培地は培養中、約6.5ないし7.5のpHで維持される。
【0023】
本発明の他の実施態様では、バッチ添加物が、培養中1回又は複数回に分けて細胞培地に添加される。バッチ添加物は唯一のグルコース源であってよく、又は他の方法で添加されたグルコースを補うために、つまり単独で使用されてもよい。バッチ添加物は培養中に1回、2回又はさらなる複数回、細胞培地に添加され得る。バッチ添加物は、培養開始から3ないし120時間、又は約24ないし72時間、又は24ないし72時間と、再び約80ないし120時間後に添加されるのが好ましい。
【0024】
他の実施態様で、培養中の培地温度は、培養開始時の温度より少なくとも2℃低下される。例えば培養開始時に約35ないし39℃である温度は、その後の培養中に約31ないし35℃に低下される。温度は、培養開始から約12ないし72時間後に低下されてよい。例えば温度は、培養開始から約12、24、36、48又は56時間後に、約2、3、4又は5℃低下されてよい。
【0025】
他の実施態様で、培養開始時の播種密度は約0.1ないし0.5%PCVである。例えば約0.2%PCVの播種密度を使用でき、温度シフトは培養開始から少なくとも約24時間後に起こり、このとき温度は約37℃から約34℃に低下される。また例えば、培養開始時の播種密度が約0.4%PCVである場合、温度シフトは培養開始から少なくとも約24時間後に起こり、このとき温度は約37℃から約33℃に低下される。
【0026】
さらなる実施態様では、本発明の方法は培養開始時に培地に細胞の接種原を添加することを含む。本発明によると、接種原容積は培地容積の5分の1で、接種原は約0.5ないし2.5濃縮細胞容積、好適には約1PCVないし2PCVの密度で動物細胞を含有する。
好適な実施態様では、増殖及び培養段階の双方において細胞培地は無血清で、好ましくは動物性タンパク質を含まない。
好適な実施態様では、細胞は哺乳動物細胞で、好ましくはチャイニーズハムスター卵巣細胞である。
好適な実施態様では、ポリペプチドはモノクローナル抗体で、例えば抗HER2に、抗体2C4、抗VEGF、抗体C2B8、抗CD11a、抗組織因子、IgG4b、抗CD40、抗CD20、抗IgE、E25又はE26である。
本明細書で引用した各参考文献の全体を、出典明示によりここに取り込む。
【実施例】
【0027】
好適な実施態様の説明
定義
本発明のプロセスは流加培養系での産生として当該分野で知られている。ここで使用される「流加細胞培養系」なる用語は、最初に動物細胞及び培地が培養容器(vessel)に供給され、追加的な培養栄養素が培養プロセスの間に、培養の終了まで定期的な細胞及び/又は産生物採取を伴って又は伴わずに連続的又は回分して該培地に投入される、流加培養を意味する。流加培養は、細胞培養のための全成分(動物細胞と全培養栄養素を含む)が培養プロセス開始時に培養容器に供給される単なる「回分培養(batch culture)」とは区別される。流加培養はさらに、上清がプロセス中培養容器から除去されない限りにおいて潅流培養とも区別される(潅流培養では、細胞は例えばマイクロキャリアへの固着化、被包、濾過等によって培地で抑制され、培地は連続的又は断続的に培養容器に導入され、除去される)。しかし、流加細胞培養中の、検査目的の試料の除去は考慮される。
【0028】
本発明のプロセスは、任意の種類の動物細胞における特に抗体を含むポリペプチドの産生に使用できる。「動物細胞」なる用語は、無脊椎動物、非哺乳類脊椎動物(例えば鳥類、爬虫類、両生類)及び哺乳動物の細胞を包含する。無脊椎動物細胞の例としては、次の昆虫:例えばスポドプテラ・フルギペルダ(毛虫)、ネッタイシマカ(蚊)、ヒトスジシマカ(蚊)、ドロソフィラ・メラノガスター(ショウジョウバエ)、及びカイコ(ボンビクス・モリ)(例えば、Luckow等, Bio/Technology, 6:47-55 (1988); Miller等, Genetic Engineering, Setlow, J. K.等, eds., Vol. 8 (Plenum Publishing, 1986), pp.277-279; 及びMaeda等, Nature, 315:592-594 (1985)参照)の細胞が挙げられる。
【0029】
好適な実施態様で、細胞は哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞の例としては、ヒト網膜芽細胞(PER. C6(CruCell, Leiden, オランダ));SV40(COS-7, ATCC CRL 1651)で形質転換させたサル腎CV1細胞株;ヒト胚腎細胞株(293又は懸濁培養で増殖するようにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol. 36:59 (1977));ベビーハムスター腎細胞(BHK, ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub及びChasin等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980));サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト子宮頚癌細胞(HeLa, ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK, ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A, ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138, ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2, HB 8065);マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562, ATCC CCL 51);TRI細胞(Mather等, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982));MRC5細胞; FS4細胞;及びヒトヘパトーマ細胞株(Hep G2)が挙げられる。本発明の実施に好適な細胞株はCHO細胞である。
【0030】
本発明はハイブリドーマ細胞にも適用可能である。「ハイブリドーマ」なる用語は、免疫由来の不死細胞株と抗体産生細胞との融合により産生されるハイブリッド細胞株を意味する。該用語は、一般的にトリオーマ(trioma)細胞株として知られるヒト細胞とマウス骨髄腫細胞株との融合と、それに続くプラズマ細胞との融合の結果生じるヘテロハイブリッド骨髄腫融合の子孫を包含する。さらに該用語は、クオドローマ(quadromas:例えばMilstein等, Nature, 537:3053 (1983)参照)等の抗体を産生する任意の不死化ハイブリッド細胞株を含むものとする。ハイブリッド細胞株は、ヒト及びマウスを含む任意の種のものであってよい。
【0031】
最も好ましい実施態様で、哺乳動物細胞は、対象のポリペプチドをエンコードする外因性の単離核酸で形質転換させた非ハイブリドーマ哺乳動物細胞であり、該核酸は特に好適な実施態様では抗体、リガンド結合断片等の抗体断片、及びキメラ抗体をエンコードする核酸を含む。「外因性核酸」又は「異種核酸」とは、細胞と異種の核酸配列、又は該細胞と同種であるがその核酸が通常見られない宿主細胞核酸内の位置にある核酸配列を意味する。
【0032】
単離核酸は、ポリペプチド核酸の自然源においては通常関与している少なくとも1の夾雑核酸分子から識別され単離された核酸分子である。単離核酸分子は天然で見られる以外の形状又は設定である。単離核酸は好適には非染色体性核酸である、つまり本来それが存在する染色体性環境から単離されている。よって、単離核酸分子は天然細胞に存在している核酸分子とは区別される。しかし、単離核酸分子は、例えば核酸分子が天然細胞の核酸分子とは染色体上の位置が異なる場合、通常ポリペプチドを発現する細胞に含まれる核酸分子を含む。
【0033】
「重量モル浸透圧濃度」なる表現は、水溶液中に溶解した溶質粒子の浸透圧の基準単位である。溶質粒子はイオン及び非イオン化分子を含む。重量モル浸透圧濃度は、1kgの水に溶解した浸透圧活性粒子の濃度(つまりオスモル)として表される(38℃でH2Oの1mOsm/kgは19mmHgの浸透圧に相当する)。「重量モル浸透圧濃度」は1リットルの水溶液中に溶解した溶質粒子の数を意味する。培地の重量モル浸透圧濃度を増加するために該培地に添加できる溶質としては、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、非代謝性ポリマー、ビタミン類、イオン、塩類、糖類、代謝産物、有機酸、脂質等が挙げられる。本発明で用いる場合、略語「mOsm」は「H2O1kgあたりのミリオスモル」を意味する。本発明によると、産生段階中に重量モル浸透圧濃度を増加させるためにグルコースが細胞培地に添加される。増殖段階中、重量モル浸透圧濃度は、好ましくは約280ないし380mOsm、より好ましくは約300ないし350mOsmである。産生段階における培地の重量モル浸透圧濃度を約400ないし600mOsm、より好ましくは約420ないし500mOsmとするために、産生段階開始時又は産生段階中にグルコースが添加される。
【0034】
「グルコース」なる語は、別個の又は結合したα-D-グルコースもしくはβ-D-グルコースを意味する。α-及びβ-グルコース形態は溶液中で相互転換可能である。
用語「グルタミン」は、タンパク質合成のためのアミノ酸ビルディングブロックとして、及び細胞培地のエネルギー源として認識されるアミノ酸L-グルタミン(3文字表記で「Gln」及び1文字表記で「Q」としても知られる)を意味する。
グルタミン酸はL-グルタミン酸(3文字表記で「Glu」及び1文字表記で「E」としても知られる)を意味する。
酪酸塩は直鎖アルカン酸又はその塩、例えば酪酸ナトリウムであり、タンパク質の産生を促進するのに使用できる。
【0035】
「アミノ酸(類)」なる用語は、天然発生する全てのD及びL立体異性形態のαアミノ酸類と、その類似体及び誘導体を意味する。類似体は、アミノ酸の原子が、通常同様の特性を有する異なる原子で置換されたものとして定義される。誘導体は、別の分子又は原子が結び付くアミノ酸として定義される。誘導体は例えば、アミノ基のアセチル化されたもの、カルボキシル基のアミノ化されたもの、又はシステインを形成する2つのシステイン分子の硫黄残基の酸化されたものを含む。
【0036】
ここで使用される「ポリペプチド」は、通常約10個を超えるのアミノ酸を有するペプチド及びタンパク質を意味する。ポリペプチドは宿主細胞と相同であってよい、又は好ましくはチャイニーズハムスター卵巣細胞で産生されたヒトタンパク質、又は哺乳動物細胞で産生された酵母ポリペプチド等、使用されている宿主細胞に異種すなわち異質である外因性であってよい。好適には哺乳動物ポリペプチド(哺乳動物生体由来のポリペプチド)が使用され、より好適にはこれらは培地に直接分泌される。
【0037】
本発明では様々なポリペプチドが産生され得る。細菌ポリペプチドの例としてはアルカリホスファターゼ及びβ-ラクタマーゼが挙げられる。哺乳動物ポリペプチドの例としては、レニン;成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン;ウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝固因子、例えばVIIIC因子、IX因子、組織因子及びフォン・ウィルブランド因子;抗凝固因子、例えばプロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;プラスミノーゲン活性化因子、例えばウロキナーゼ又はヒト尿又はヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA);ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子-α及び-β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α);血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン;ミュラー阻害物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;微生物タンパク質、例えばβ-ラクタマーゼ;DNase;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモン又は増殖因子のレセプター;インテグリン;プロテインA又はD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば骨由来神経栄養因子(BDNF)、神経栄養因子-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5又はNT-6)、又はNGF-β等の神経成長因子;血小板由来成長因子(PDGF);線維芽細胞成長因子、例えばaFGF又はbFGF;上皮成長因子(EGF);形質転換成長因子(TGF)、例えばTGF-α及びTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4又はTGF-β5等のTGF-β;インスリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I);インスリン様成長因子結合タンパク質;CDタンパク質、例えばCD-3、CD-4、CD-8及びCD-19;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);
インターフェロン、例えばインターフェロン-α、-β及び-γ;コロニー刺激因子(CSFs)、例えばM-CSF、GM-CSF及びG-CSF;インターロイキン(ILs)、例えばIL-1ないしIL-10;スーパーオキシド・ジスムターゼ;T-細胞レセプター;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウィルス抗原、例えばAIDSエンベロープの一部;輸送タンパク質;ホーミングレセプター;アドレシン;調節タンパク質;抗体;及び上に列挙したいずれかのポリペプチドの断片等の分子が挙げられる。
【0038】
本発明により産生される哺乳動物ポリペプチドの他の例としては抗体が挙げられる。抗体は、特定の抗原に結合特異性を表す好ましいクラスのポリペプチドである。天然の抗体は通常、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は1の共有ジスルフィド結合により重鎖と連鎖するが、ジスルフィド連鎖数は種々の免疫グロブリンアイソタイプ間で異なる。各重鎖及び軽鎖はまた等間隔の内鎖ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は一端に、複数の定常ドメインを伴った可変ドメイン(VH)を有する。各軽鎖は一端に可変ドメイン(VL)と他端に定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基が、軽鎖と重鎖の可変ドメインの界面を形成すると考えられている。
【0039】
用語「抗体」は最も広義で使用され、特にモノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び所望の生物学的活性を示す限りにおいて抗体断片を包含する。典型的な抗体は下に列挙する抗原に対する抗体である。
「抗体断片」は無傷抗体の一部であり、通常、抗原結合領域か、無傷抗体の可変領域か、FcR結合能を保持する抗体のFc領域かを有する部分である。抗体断片の例としては線状抗体;一本鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。抗体断片はヒンジ領域の少なくとも一部と、任意でIgG重鎖のCH1領域を保持するのが好ましい。より好適には、抗体断片はIgG重鎖の全定常領域を保持し、IgG軽鎖を含む。
【0040】
ここで用いられる「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団、即ち少量存在し得る自然発生的に生じ得る変異を除いて個々の抗体が同一である集団から得られる抗体を意味する。モノクローナル抗体は非常に特異性が高く、単一の抗原部位に対する抗体である。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含む従来の(ポリクローナル)抗体製剤とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対する抗体である。「モノクローナル」という形容詞は、その抗体が実質的に均一な抗体集団から得られるものであるという性質を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler等, Nature, 256:495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法によって調製することができ、又は組換えDNA法によって調製することができる(例えば米国特許第4,816,567号参照)。また「モノクローナル抗体」は、例えばClackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks等, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)に記載の技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0041】
ここでのモノクローナル抗体は特に「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体又は特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残りの部分は他の種由来の抗体又は他の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体、並びに所望の生物学的活性を示す限りにおいてこういった抗体の断片の対応する配列と同一又は相同である(米国特許第4,816,567号;及びMorrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984))。
【0042】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有するキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、そのレシピエントの超可変領域由来の残基は、所望の特異性、親和性及び容量を持つマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類等、ヒト以外の種の超可変領域(ドナー抗体)由来の残基で置換される。ある場合は、ヒト免疫グロブリンFvのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、ドナー抗体にも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに精密化するために施される。一般にヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変領域を実質上全て含有するであろう。ここで、超可変ループの全て又は実質上全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質上全てがヒト免疫グロブリン配列のものである。また、ヒト化抗体は任意で、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含有するであろう。さらなる詳細については、Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
【0043】
抗体は対象の抗原に対するものである。好適には、抗原は生物学的に重要なポリペプチドであり、疾患又は疾病を患う哺乳動物に抗体を投与することは、該哺乳動物の治療に役立つ。しかし、非ポリペプチド抗原に対する抗体(例えば腫瘍関連糖脂質抗原;米国特許第5,091,178号参照)も使用できる。
【0044】
抗原がポリペプチドである場合、それは膜貫通分子(例えばレセプター)あるいはリガンド、例えば成長因子であり得る。抗原の例としては、レニン;成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝固因子、例えばVIIIC因子、IX因子、組織因子(TF)及びフォン・ウィルブランド因子;抗凝固因子、例えばプロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;プラスミノーゲン活性化因子、例えばウロキナーゼ又はヒト尿又はヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA);ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子-α及び-β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α);血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン;ミュラー阻害物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;微生物タンパク質、例えばβ-ラクタマーゼ;DNase;IgE;細胞毒性Tリンパ球関連抗原(CTLA)、例えばCTLA-4;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモン又は増殖因子のレセプター;プロテインA又はD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば骨由来神経栄養因子(BDNF)、神経栄養因子-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5又はNT-6)、又はNGF-β等の神経成長因子;血小板由来成長因子(PDGF);線維芽細胞成長因子、例えばaFGF又はbFGF;上皮成長因子(EGF);形質転換成長因子(TGF)、例えばTGF-α及びTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4又はTGF-β5等のTGF-β;インスリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I);インスリン様成長因子結合タンパク質;CDタンパク質、例えばCD3、CD4、CD8、CD18、CD19、CD20及びCD40;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えばインターフェロン-α、-β及び-γ;コロニー刺激因子(CSFs)、例えばM-CSF、GM-CSF及びG-CSF;インターロイキン(ILs)、例えばIL-1ないしIL-10;スーパーオキシド・ジスムターゼ;T-細胞レセプター;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウィルス抗原、例えばAIDSエンベロープの一部;輸送タンパク質;ホーミングレセプター;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン、例えばCD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4及びVCAM;腫瘍関連抗原、例えばHER2、HER3又はHER4レセプター;及び上に列挙したいずれかのポリペプチドの断片等の分子が挙げられる。
【0045】
本発明に包含される抗体に対する好適な分子標的としては、CDタンパク質、例えばCD3、CD4、CD8、CD18、CD19、CD20、CD34及びCD40;ErbBレセプターファミリーのメンバー、例えばEGFレセプター、HER2、HER3又はHER4レセプター;細胞接着分子、例えばLFA-1、Mac1、p150.95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、α4/β7インテグリン、及びそのα又はβサブユニットのいずれかを含むαv/β3インテグリン(例えば抗CD11a、抗CD18又は抗CD11b抗体);成長因子、例えばVEGF;組織因子(TF);αインターフェロン("-IFN);インターロイキン、例えばIL-8;IgE;血液型抗原;flk2/flt3レセプター;肥満(OB)レセプター;mplレセプター;CTLA-4;プロテインC等々が挙げられる。
【0046】
任意で他の分子と結合されていてもよい可溶性抗原又はその断片を、抗体を産生するための免疫原として使用することができる。レセプターのような膜貫通分子の場合、これらの分子の断片(例えば、レセプターの細胞外領域)を免疫原として使用することができる。あるいは、膜貫通分子を発現する細胞を免疫原として使用することもできる。そのような細胞は天然源(例えば癌細胞株)由来であってよく、又は膜貫通分子を発現するために組換え技術により形質転換された細胞であってよい。抗体の調製に有用な他の抗原とその形態は当業者には明らかであろう。
【0047】
多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を持つ。こういった分子は通常2つの抗原にのみ結合する(つまり二重特異性抗原、BsAbs)が、この表現をここで用いる場合は、三重特異性抗原等のさらなる特異性を持つ抗体も包含する。BsAbsの例としては、主要細胞抗原に対する1つのアームと細胞毒性誘発分子に対するもう1つのアームを持つもの、例えば抗FcγRI/抗CD15、抗p185HER2/FcγRIII(CD16)、抗CD3/抗悪性B-細胞(1D10)、抗CD3/抗p185HER2、抗CD3/抗p97、抗CD3/抗腎細胞癌、抗CD3/抗OVCAR-3、抗CD3/L-D1(抗結腸癌)、抗CD3/抗メラニン細胞刺激ホルモン類似体、抗EGFレセプター/抗CD3、抗CD3/抗CAMA1、抗CD3/抗CD19、抗CD3/MoV18、抗神経細胞接着分子(NCAM)/抗CD3、抗葉酸結合タンパク質(FBP)/抗CD3、抗pan癌関連抗原(AMOC-31)/抗CD3;癌抗原に特異的に結合する1つのアームと毒素に結合する1つのアームを持つBsAbs、例えば抗サポリン/抗Id-1、抗CD22/抗サポリン、抗CD7/抗サポリン、抗CD38/抗サポリン、抗CEA/抗リシンA鎖、抗インターフェロン-α(IFN-α)/抗ハイブリドーマイディオタイプ、抗CEA/抗ビンカアルカロイド;酵素活性プロドラッグを転換するBsAbs、例えば抗CD30/抗アルカリホスファターゼ(マイトマイシンホスファターゼプロドラッグの、マイトマイシンアルコールへの転換を触媒する);繊維素溶解剤として使用可能なBsAbs、例えば抗繊維素/抗組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、抗繊維素/抗ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA);免疫複合体を細胞表面レセプターに標的化するためのBsAbs、例えば抗低密度リポタンパク質(LDL)/抗Fcレセプター(例えばFcγRI、FcγRII又はFcγRIII);伝染性疾患の治療で使用するためのBsAbs、例えば抗CD3/抗単純ヘルペスウィルス(HSV)、抗T-細胞レセプター:CD3複合体/抗インフルエンザ、抗FcγR/抗HIV;インビトロ又はインビボでの腫瘍の発見のためのBsAbs、例えば抗CEA/抗EOTUBE、抗CEA/抗DPTA、抗p185HER2/抗ハプテン;ワクチンアジュバントとしてのBsAbs;及び診断ツールとしてのBsAbs、例えば抗ウサギIgG/抗フェリチン、抗ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)/抗ホルモン、抗ソマトスタチン/拮抗物質P、抗HRP/抗FITC、抗CEA/抗β-ガラクトシダーゼが挙げられる。三重特異性抗体の例としては、抗CD3/抗CD4/抗CD37、抗CD3/抗CD5/抗CD37、及び抗CD3/抗CD8/抗CD37が挙げられる。二重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab’)2二重特異性抗体として調製できる。
【0048】
二重特異性抗体作製方法は当該技術分野で知られている。全長二重特異性抗体の従来の産生は、二組の免疫グロブリン重鎖-軽鎖の共発現に基づき、ここで2つの鎖は異なる特異性を持つ(Millstein等, Nature, 305:537-539 (1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな組合せが理由で、これらのハイブリドーマ(クオドローマ)は10の異なる抗体分子の潜在的混合物を産生し、これら分子のうち1つだけが正確な二重特異性構造を有する。正確な分子の精製は通常アフィニティークロマトグラフィーにより行われるが、これはかなり面倒で収率が低い。同様の手順がWO 93/08829及びTraunecker等, EMBO J., 10:3655-3659 (1991)に開示されている。
【0049】
別の方法によると、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)を免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させる。融合は好適には、ヒンジ領域の少なくとも一部を包含する免疫グロブリン重鎖定常ドメインCH2及びCH3領域との融合である。軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)を、少なくとも1つの融合体に存在させるのが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合と、必要であれば免疫グロブリン軽鎖とをエンコードするDNAを、別個の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に同時形質移入する。これにより、該構造で使用される3つのポリペプチド鎖が非均一な比率であると最適な収率がもたらされる実施態様において、3つのポリペプチド断片の相互比率を調整するのに高い柔軟性が付与される。しかし、少なくとも2つのポリペプチド鎖の均一な比率での発現によって高い収率がもたらされる場合、又は比率が特に重要でない場合は、2又は3つ全てのポリペプチド鎖のコード化配列を1つの発現ベクターに挿入することも可能である。
【0050】
当該方法の好ましい実施態様で、二重特異性抗体は、第一の結合特異性を持つハイブリッド免疫グロブリン重鎖を1つのアームに、ハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖の対(第二の結合特異性を示す)をもう1つのアームに有してなる。この非対称的な構造は、所望の二重特異性化合物の、不要な免疫グロブリン鎖結合からの分離を容易にすることがわかっているが、これは免疫グロブリン軽鎖が二重特異性分子の半分しか存在しないことで分離が容易になるためである(WO 94/04690参照)。二重特異性抗体の作製についてのさらなる詳細は、例えばSuresh等, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照のこと。別の方法によると、一組の抗体分子間の界面は、組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体の割合を最大化するように設計できる(WO 96/27011参照)。好ましい界面は、抗体定常領域のCH3領域の少なくとも一部を含む。当該方法では、第一の抗体分子の界面からの1又は複数の小さなアミノ酸測鎖が、より大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)で置換される。大きなアミノ酸側鎖をより小さな側鎖(例えばアラニン又はトレオニン)で置換することにより、大きな側鎖と同様又は同一のサイズの補完的な「キャビティ」が第二抗体分子の界面上に作られる。これにより、ホモ二量体等の他の不要な最終産生物よりもヘテロ二量体の収率を増加させるメカニズムが提供される。
【0051】
二重特異性抗体は架橋又は「ヘテロ結合」抗体を含む。例えば、該ヘテロ結合抗体の一方はアビジンに結合でき、他方はビオチンに結合できる。こういった抗体は例えば、免疫系細胞を不要な細胞に標的化するために(US4,676,980参照)、及びHIV感染の治療のために(WO 91/00360, WO 92/00373及びEP03089参照)提案されている。ヘテロ結合抗体は、任意の適した架橋法を用いて作製してよい。適切な架橋剤は当該技術分野でよく知られており、多数の架橋技術と併せてUS4,676,980に開示されている。
2つ以上の結合価を有する抗体が検討される。例えば三重特異性抗体が調製され得る(Tutt等, J. Immunol. 147:60 (1991)参照)。
本発明の方法で産生される好適な抗体としては、以下に限定されないが、抗HER2、抗体2C4、抗VEGF、抗体C2B8、抗CD11a、抗組織因子、IgG4b、抗CD40、抗CD20、抗IgE、E25、又はE26が挙げられる。
【0052】
用語「細胞培地」及び「培地」は、1又は複数の以下の分類:
1)通常は炭水化物の形態のエネルギー源、例えばグルコース;
2)全ての必須アミノ酸、好適には及び最も一般的には、基本的な組である20種のアミノ酸とシステイン;
3)低濃度で必要とされるビタミン類及び/又は他の有機化合物;
4)遊離脂肪酸;及び
5)微量元素(ここで微量元素は、通常非常に低濃度で必要とされる無機化合物又は天然発生要素として定義される)
からの成分を少なくとも1つ典型的に提供する、哺乳動物細胞を増殖するために使用される栄養溶液を意味する。
栄養溶液は、以下の分類のいずれか:
1)ホルモン及び他の成長因子、例えばインスリン、トランスフェリン及び上皮成長因子;
2)塩類及びバッファー、例えばカルシウム、マグネシウム及びリン酸塩;
3)ヌクレオシド及び塩基、例えばアデノシン及びチミジン、ヒポキサンチン;及び
4)タンパク質及び組織加水分解物
からの成分が1又は複数任意で補充されてよい。
【0053】
増殖段階は、細胞が概して急激に分裂、つまり「増殖」している指数関数的な増殖期を意味する。この段階の間、一時期、通常1ないし4日間、例えば1、2、3又は4日間、細胞増殖が最適な状態で細胞が培養される。宿主細胞の増殖周期は、当業者に周知の方法で個々の宿主細胞について決定される。
【0054】
ここで使用される用語「接種原」は、産生段階の開始時に培地に添加するために培地での増殖から回収されるある容量の動物細胞を意味する。好適には動物細胞は増殖中「拡大」し、よって細胞は、分裂し細胞数(つまり細胞密度)が増加するので、さらなる増殖のためにより大きな容積の増殖培地に移される。好ましくは接種原は、約0.5ないし2.5濃縮細胞容積(PCV)、より好適には約1PCVないし2PCVの細胞密度を有する。接種原容積は、産生段階で使用される培地容積の5分の1であるのが好ましい。本発明によると、動物細胞は好適には哺乳動物細胞、より好適にはCHO細胞である。
【0055】
ここで用いられる用語「播種」は、産生段階の開始時に増殖細胞を培地に添加又は接種することを意味する。さらに、ここで用いられる用語「種系列(seed train)」は、細胞株を維持するための、約20L以下の容積の培地における細胞の連続的な継代を意味する。
【0056】
発明の実施方法
本発明は、様々なプロセスのパラメーターの主要な影響と該パラメーター間の相互作用のよりよい理解に基づき培養プロセス中に個々の要因を操作することで、細胞培養の生存率を向上し、及び培養細胞内の異種核酸から発現した抗体等、所望のポリペプチドの産生収率を高めるという利点を提供する。特に、ここで開示されるように、温度操作、特に既定の時間間隔での温度シフトに関する操作、培地選択、特定間隔でのpHシフト、バッチ添加物の添加、グルタミン/グルタミン酸の比率、及びグルコース濃度の全てが、細胞培養プロセスに重要な影響を及ぼす。さらに、細胞培養生存率とポリペプチド産生収率を最大化するために、最終温度と温度シフトタイミング間、培地選択と温度間、pH変化に関しての播種密度と温度間、特にグルコース濃度に関してのグルタミン存在の濃度とグルタミン酸濃度に対する比率間を含む、要因間の相互作用を用いて、細胞の培養及び産生を制御するための多様な最適化された一連のパラメーターが精緻化及び開発された。
【0057】
段階的なプロセスを用いて、本発明は、グリコシル化ポリペプチド、例えばモノクローナル抗体又はその断片、例えばリガンド結合断片を産生するための改善された細胞培養手順を開発した。好適には、細胞培養の細胞は動物細胞、より好ましくは哺乳動物細胞、最も好ましくはチャイニーズハムスター卵巣細胞である。より高い産生物力価、より高い産生物の質、細胞培養生存率の向上、及び細胞培養環境での不要な副産物の低減を通して、改善が認められた。本発明において産生物力価と産生物の質は、本発明に従って培養された細胞内の単離異種核酸から発現されるポリペプチド又はタンパク質(例えば抗体又はその断片、例えばそのリガンド結合断片)の力価と質を意味する。
【0058】
通常、様々な環境的及び栄養的条件下での多数の実験が、バイオプロセスの開発及び最適化のために行われなければならない。従来のプロセス開発方法は、他のパラメーターを一定に保ちつつ1つのパラメーターを変更する傾向がある。このプロセス開発方法は高価で、時間がかかり、大方の場合培養パラメーターの相互作用についての情報があまり得られない。相互作用がある場合、こういった従来の方法ではプロセスを最適化するのが困難であることがある。要因間の相互作用とそういった要因の変化をよりよく理解することは、最適なプロセス設定を得るために、要因の変更から発生し得る、産生環境に関する含意を理解するのにも重要である。
【0059】
統計的実験計画により、効率的及び効果的なプロセス開発が提供される(例えばStatistics for Experimenters, Box, G.E.P., Hunter, J.S., 1978, Wiley and Sons, New York; 及びA Guide to Statistics and Data Analysis Using JMP and JMP In(登録商標)Software, Sall, J. 及びLehman, A., SAS Institute, 1996, Duxbury Press参照)。このアプローチでは、標準的な実験変動内で培地内の何らかの要因を体系的に変化させ、他の要因を一定に保ちながら、対象の応答(つまり産生物力価、産生物の質、生存率及び副産物の蓄積)が測定される。
【0060】
産生環境においてどの要因を変化させるかを決定するため、及びこのような変化の可能性として考えられる範囲を定義するためには、多数の科学的判断が必要とされる。検討される値の範囲にわたる変化が、平均応答での変化をもたらす(又は重要な効果を持つ)産生要因に対する変更を同定し、その効果を測定し、それを確認するために、上述した統計的方法が使用された。産生環境に対する変化の効果の度合いが、このプロセスを通じて推定され、続いて確認された。
【0061】
標準誤差及びP値はそれぞれ、推定における統計的不確定性と、変数が平均応答での変化をもたらさなかったという想定のもとで、同様の度合いの個々の重要な効果が観察されるであろう見込みとを表す。このような個々の効果に加えて、いくつかの統計的計画では、選択されたパラメーターの相互作用の結果生じる効果の推定も可能であり、よって応答への影響における2又は複数の変数間の相乗効果を定量化できる。
【0062】
本発明の改善されたプロセスを開発するために、段階的な完全要因計画と分析アプローチが採用された。動物細胞産生系、特にチャイニーズハムスター卵巣細胞(「CHO」細胞)培養といった哺乳動物細胞株に関して細胞培養産生に影響する11の要因が分析された。段階的実験を用いて、上述のような改善をもたらすために調整され得る要因を同定した。本発明の改善されたプロセスの設計に使用されたアプローチは、細胞培養要因の変化による抗体産生への効果と、その範囲とに関して達した結論を裏付ける大量のデータをもたらした。こういったデータは複数の小人数のグループで実験を行って得られ、1つの実験で集められた情報を後続する実験の設計に役立つように使うことで得られる。単一の大規模な実験では、こういったアプローチによって変数の相互作用的効果が予想されない又は測定されないので、行程を効率よく配分すること、又は検討される要因の容認可能な変数について達した結論を補強するのに十分なデータをもたらすことができないだろう。
【0063】
多数の科学的判断を用いて、変数と、こういった変数の適切な範囲とが決定された。使用される範囲が狭すぎる場合、要因の変化による効果を検知できないことがある。範囲が広すぎる又は多種多様である場合、こういった要因のプロセスへの効果に関する検証可能な裏付けを実施できる範囲を外れてしまうことがある。さらに、個々の要因に関する変数の範囲は、大規模製造の設定で採用できる範囲よりも精密でない設定に限定される。最終的に、段階的アプローチは、細胞培養プロセスの初期の段階でより広い変化を用いた範囲の設定を可能にし、その段階で主効果を有する変数を同定するのに役立った。これにより、細胞培養プロセスの後の段階における、鍵となる変数の容認可能な範囲に関するさらなる詳細を得るための調査が可能となった。
【0064】
細胞培養手順
本発明の実施に役立つ哺乳動物細胞培養手順をここに述べる。
1.細胞培養増殖段階
本発明のプロセスの最初の段階は増殖段階であり、ここでバッチ細胞培養条件は、組換え動物細胞の増殖を促進し、種系列を産生するために修正される。増殖段階は、細胞が概して急激に分裂、つまり増殖している指数関数的な増殖期を意味する。この段階の間、一時期、通常1ないし4日間、例えば1、2、3又は4日間、細胞増殖が最適な状態で細胞が培養される。宿主細胞の増殖周期は、当業者に周知の方法で個々の宿主細胞について決定される。
【0065】
増殖段階で、基礎培地と動物細胞が、バッチ内の培養容器に供給される。培地は無血清、例えば約5%未満、好適には1%未満、より好適には0ないし0.1%血清であり、他の動物由来タンパク質を含まないのが好ましい。しかし、これらは必要に応じて使うことができる。本発明の好適な実施態様で、細胞培地は過剰なアミノ酸を含む。過剰に供給されるアミノ酸は、例えばAsn、Asp、Gly、Ile、Leu、Lys、Met、Ser、Thr、Trp、Tyr及びValから選択されてよい。好適には、Asn、Asp、Lys、Met、Ser及びTrpが過剰に供給される。例えば、欧州特許EP307,247又はUS特許第6,180,401に記載の範囲の1又は2倍のアミノ酸類、ビタミン類、微量元素及び他の培地成分を使用してよく、これら文献の全体を、出典明示によりここに取り込む。
【0066】
あるいは、市販培地、例えばハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM)、シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM)、シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、Ham及びWallace, Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes及びSato, Anal. Biochem. 102:255 (1980), 米国特許第4,767,704号; 同4,657,866号; 同4,927,762号又は同4,560,655号; WO 90/03430; WO 87/00195; 米国特許再発行第30,985号; 又は米国特許第5,122,469号に記載された任意の培地も宿主細胞に対する培地として使用でき、これら文献の全体を、出典明示によりここに取り込む。
【0067】
これら培地はいずれにも、必要に応じてホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン又は上皮成長因子)、イオン(例えばナトリウム、塩化物、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)、及びグルコース又は同等のエネルギー源が補充されてよい。他の任意の必要な補充物質も、当業者であれば周知の適切な濃度で含まれてよい。
【0068】
最初の培地は、増殖段階開始時において約1ないし12g/L、最も好適には6ないし10g/Lのグルコース濃度を有するのが好ましい。後述するように、少なくとも約10g/L、好適には少なくとも約12g/L、より好適には少なくとも約15ないし30g/Lの濃度が培養中に存在するように、産生段階の培養中に少なくとも1回、好ましくは1回、2回又は3回に分けて追加的にグルコースが添加される。
増殖の特定の時点で、細胞は、産生段階の培養開始時に培地を接種する接種原を形成し得る。あるいは、産生段階は増殖段階と連続していてよい。
【0069】
細胞増殖段階の適切な最初の細胞播種密度は、例えば3×105ないし1.5×106細胞/mlの範囲である。細胞増殖の適切な培養容器はpH制御型バイオリアクターである。オートクレーブ可能ガラス発酵槽(Applikon、フォスターシティ、カリフォルニアから販売)又はステンレス鋼発酵槽(Biolafitte、プリンストン、ニュージャージーから販売)が使用できる。本発明の実施に適した他の培養容器は当該技術分野でよく知られている。
増殖段階の細胞が外因性核酸で形質転換される必要はないが、本発明の適切な実施態様において、細胞増殖段階の後には別個のポリペプチド、つまり抗体の産生段階が続き、該段階で細胞は対象のポリペプチドをエンコードする外因性核酸で形質転換されている。動物細胞の形質転換の適切な方法は後述する。
【0070】
2.動物細胞の形質転換
組換え脊椎動物細胞培養での対象のポリペプチドの合成に適応化するのに適した方法、ベクター及び宿主細胞は、Gething等, Nature, 293:620-625 (1981); Mantei等, Nature, 281:40-46 (1979); Levinson等; EP117,060; 及びEP117,058に記載されている。ポリペプチドの哺乳動物細胞培養発現のための特に有用なプラスミドはpRK5(EP 公報307, 247)又はpSVI6B(1991年6月13日発行のWO 91/08291)である。
【0071】
宿主細胞は、発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換細胞の選択、又は所望の配列をエンコードする遺伝子の増幅に適するように修飾された栄養培地で培養される。哺乳動物細胞の場合、Graham及びvan der Erb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈殿法か、Hawley-Nelson, Focus 15:73 (1193)のリポフェクタミンTM(Gibco BRL)法が好ましい。哺乳動物細胞宿主系形質転換の一般的な様態は、Axelの1983年8月16日発行のUS特許第4,399,216号に記載されている。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown等, Methods in Enzymology (1989), Keown等, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及びMansour等, Nature, 336:348-352 (1988)参照のこと。
【0072】
本発明は、細胞培養でモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマも包含する。モノクローナル抗体は、免疫化された動物から免疫細胞(典型的には脾臓細胞又はリンパ節組織からのリンパ球)を回収し、及び従来の方法、例えば骨髄腫細胞との融合又はエプスタイン-バー(EB)ウィルス形質転換により細胞を不死化し、及び所望の抗体を発現するクローンについてスクリーニングすることにより調製される。Kohler及びMilstein, Eur. J. Immunol., 6:511 (1976)及びHammerling等, In:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, Elsevier, N.Y., pp. 563-681 (1981)に元来記載されているハイブリドーマ技術が、多くの特異抗原に対して高レベルのモノクローナル抗体を分泌するハイブリッド細胞株の産生に広く適用されている。
【0073】
3.ポリペプチド産生及び細胞培養段階
細胞増殖段階の後には通常、別個にポリペプチド産生段階が続く。該段階は、細胞培養段階とも称される。培養とは、細胞が所望のポリペプチドを発現するように産生段階で操作されることを意味する。この段階は通常、増殖段階開始から少なくとも3時間、好適には約12ないし224時間、より好適には120ないし192時間後に始まる。産生段階は、例えば7ないし14日間続き得る。通常この段階の間に細胞増殖は横ばい状態に達する、例えば細胞の対数増殖が終了し、タンパク質産生が主となる。この期間、後述するように、培地にはグルコースと任意の他の成分が補充される。好適な実施態様で、産生段階は細胞増殖段階とは異なる培養容器内で実施されてよい。しかし、各段階に同一の容器を用いることもできる。
【0074】
産生段階は、通常少なくとも約0.5×105細胞/mL、好適には1.0ないし3.0×106細胞/mLの範囲の細胞播種密度で増殖段階の培養された動物細胞を接種することを伴う。最初の増殖段階で使用されるのと同一の培地を用いることができる。しかし、グルコースと任意の他の成分がバッチ添加される。
所望のグルコース濃度を有する培地を得るために、グルコースを供給する細胞培地が使用できる。また培地は、追加的な細胞栄養素を供給するように過剰なアミノ酸を含むのが好ましい。任意で、培地の他の構成要素の濃度を、所望の重量モル浸透圧濃度に達するように調整することができる。増殖段階で、重量モル浸透圧濃度は、好ましくは約280ないし380mOsm、より好ましくは約300ないし350mOsmである。産生段階における培地の重量モル浸透圧濃度を約400ないし600mOsm、より好ましくは約420ないし500mOsmとするために、産生段階開始時又は産生段階中にグルコースが添加される。
【0075】
本発明の様々な実施態様は、動物細胞培養中に培地又は培養環境を変更することを伴う。本発明の開示は、特定の培養要因の個々の変化が統計的に有意な利点をもたらしたことを独自に示す。本発明の開示はさらに、これら個々の変数の組合せを用いて培養段階のポリペプチド産生の1又は複数の特性を改善できることを独自に示す。
【0076】
本発明につながった最初の発見は、培養段階における高濃度のグルコースの使用が産生に有意なプラス効果を及ぼすことを実証した。高濃度のグルコースは細胞培養の産生物収率と生存率を向上できる。本発明によると、用語「産生物」は例えば、細胞の単離核酸から発現したポリペプチド又はタンパク質(例えば抗体又はリガンド結合するその断片)を意味する。好適には、単離核酸は、導入される細胞と異種、及び/又は非染色体性である。後述するように、特に驚くべきことは、培養プロセス中におけるグルコース濃度の増加、又は産生段階の培養中における多量(例えば約10g/Lを超える量)のグルコースの添加(特に当該技術分野で周知のものよりも高い濃度と量でのグルコース添加)が産生収率の向上の重要な要因であることを発見したことである。高レベルのグルコースは、細胞培養を高い重量モル浸透圧濃度の培地で維持できることから、これらの利益をもたらす。高い重量モル浸透圧濃度を維持することにより、このプロセスの使用を通じて、不要な副産物の蓄積といった悪影響を引き起こすことなく、前述したようなより高い重量モル浸透圧濃度の維持に通常使用される他の作用物質(例えば塩化ナトリウム)の使用を低減又は排除することができる。本発明によると、培地の重量モル浸透圧濃度を増加するために培養段階中にグルコースが添加される。増殖段階で、重量モル浸透圧濃度は、好ましくは約280ないし380mOsm、より好ましくは約300ないし350mOsmである。産生段階における培地の重量モル浸透圧濃度を約400ないし600mOsm、より好ましくは約420ないし500mOsmと高くするために、産生段階開始時又は産生段階中にグルコースが添加される。
【0077】
第二の有意な培養についての発見は、培地におけるグルタミンに対するグルタミン酸の比率を高めることに関する。この第二の発見により、より高い濃度のグルコースを利用して所望の重量モル浸透圧濃度を維持することが可能になる。グルタミン含有量を単独で又はグルタミン酸濃度との関係で低減することは特に、不要な副産物の生成を低減するのに役立つ。
有意な培養要因についての第三の発見は、生存細胞培養を開発する培養プロセス中に利用される温度シフトに関し、ここで温度シフトは、高レベルのグルコースと、高いグルタミン対グルタミン酸比率と相まって、ポリペプチド産生を向上する。
【0078】
第四の発見は、産生培養段階の初期及び中期において、濃縮された栄養混合物(バッチ添加物)を、存在する生存細胞培養へ1又は複数添加することに関連していた。特に、1又は2のバッチ添加混合物の、細胞含有産生容器への添加は、細胞の生存率と産生率を維持した。本発明によると、好適なバッチ添加物は、濃縮(例えば4倍濃縮)された状態で最初の培地成分を有し、これを産生容器に添加すると、培地成分は元の基礎量の30ないし40%(例えばペプトンは元の30%、グルコースは100%超、及び微量元素は100%)が復元された。特定の実施態様では、選択された成分(例えばグルタミン)は、生産容器での該成分の最終濃度が所望の範囲に収まるように、バッチ添加物から省かれる、又はその濃度が低下される。
【0079】
産生段階は好ましくは、培養の間中グルコース濃度が約2ないし40g/Lの範囲内に制御された状態で実施される。産生段階中、総量で10ないし40g/L、好適には12ないし30、より好適には15ないし25g/Lのグルコースが添加されるのが好ましい。この量は、1回又は複数回、例えば1回、2回又は3回に回分できる。グルコースは純粋なグルコースとして、又は例えばバッチ添加物の一部として添加されてよい。グルコースは、グルコース濃度が培養の少なくともどこかの時点で約10g/L、より好適には約12、最も好適には約15を超えて約40g/L以内となるように添加される。例えばこの段階中に測定されるグルコース量は、少なくとも約12、13、14、15、16、17、18、19g/L又はそれ以上であってよい。このグルコース濃度は細胞に消費されるにつれ低下するであろう。好適にはグルコース量は、約2g/Lを下回るべきではない。産生段階の開始時、例えばグルコースが培養の増殖段階を妨げないほど細胞集団が十分に増殖した後に、又は産生段階のどこかの時点、例えば産生段階の培養開始から約12ないし96時間後に、少なくとも1の10ないし40g/Lのグルコース投入が添加される。例えば、約10ないし20g/Lのグルコースが培養段階開始時に添加されてよく、及び任意で少なくとも約2ないし10g/Lが1回又は複数回に分けて培養段階開始から約24時間後に添加されてよい。
【0080】
産生段階(培養段階に相当する)中の細胞培養に関する高濃度のグルコースにより、塩化ナトリウム又はグルタミン等の他の作用物質を使用した高重量モル浸透圧濃度の誘導に関する問題を生じることなく、細胞培地の重量モル浸透圧濃度を増加するという主要な利点がもたらされる。高浸透圧培地での培養により、細胞培養の高レベルな特異的産生率という望ましい結果が得られる。
【0081】
培地の断続的なオフラインサンプリングを行うことができる。その後、必要に応じてグルコース添加溶液を調節して手動又は自動で培地のグルコース濃度を修正することができる。
好適には、グルタミン濃度も培養の間中0ないし15mM、より好ましくは0.5ないし5mMの範囲に制御される。これは、培養中に0ないし15mMのグルタミンを添加することにより行える。本プロセスは低量のグルタミンを使用するので、産生物の質に悪影響を及ぼすこと、又は不利に副産物の蓄積を増加させることなく、グルコース量を、従来可能と考えられていた量(例えばUS特許第5,856,179号参照)よりも多い量に増加することができる。多くの場合好ましくは、培養中、グルタミン酸は添加されない。
【0082】
グルタミンの替わりに又はそれに加えて、任意でグルタミン酸を添加してよい。例えば0.5ないし約15mM、例えば約1ないし10mMのグルタミン酸が培養中に添加され得る。0:2ないし2:0、好適には約0.5:2未満のグルタミン対グルタミン酸の比率が使用されてよい。
本発明の少なくとも1つの実施態様で、培地のグルタミンはグルタミン酸よりも少ない、又はグルタミン酸に替わられる。グルタミンは、細胞増殖及び/又は産生に直接悪影響を及ぼし得るアンモニウム及び乳酸等の老廃物の産生を引き起こすため、細胞培地では低濃度(例えば7.5mM以下)のグルタミンが望ましい。老廃物の低減は、培養の重量モル浸透圧濃度の上昇を制限する傾向がある。低い重量モル浸透圧濃度は特異的産生率に不利であるが、この悪影響は、従来よりも大幅に多量のグルコースを使用することによって本プロセスでは部分的に克服される。
【0083】
培地は任意で酪酸塩を含有してよい。酪酸塩は、タンパク質産生を向上することで知られている(WO 87/05626参照)が、培養生存率にマイナス影響を与え、細胞増殖を低減する。約5mM、好適には約2mM未満の酪酸塩が培地に添加されてよい。しかし、酪酸塩の添加による有利な結果は見られなかったため、酪酸塩は培地に添加されないのが好ましい。他の発見とは逆に、本発明の高レベルのグルコースを含む細胞培養環境において酪酸塩は必要なかった。
【0084】
培地のpHは段階中、一定、例えば約6.5ないし7.5に保たれてよく、又は培養中低下されてよい。例えばpHは、培養の例えば約24ないし96時間後、約0.05ないし0.3pHに低下されてよい。このように培地のpHを変化させることで通常、最適化されていない条件で副産物の蓄積が低減される結果となる。しかしながら、上述の高グルコース培養環境では、有意な利点がpHシフトに関連するとは確定されなかった。実際pHシフトは、増殖に悪影響を及ぼすことにより細胞培養産生率にマイナスの影響を与えた。培養pHは、当該技術分野で知られるように、CO2(酸)及び/又はNa2CO3又はNaOH(塩基)の添加により自動的に維持されてよい。溶存酸素濃度は、該技術分野で知られるように、5ないし100%の空気及び/又は酸素の直接散布により30%の空気飽和度に自動的に維持されてよい。
【0085】
産生培養に関する播種密度範囲は、約0.2ないし0.4%PCV又は(1.0×106−3.0×106の総細胞/ml)であった。より低い最終培養温度(33℃)ではより高い播種密度(0.4%PCV)が有利であり、より高い最終培養温度(34℃)ではより低い播種密度(0.2%PCV)が有意であることがわかった。従って、播種密度と最終温度間に相互作用があることがわかった。
増殖段階及び任意の接種原増殖段階における温度は通常、35℃ないし39℃の範囲内、好適には37℃に維持される。産生培養の最初の温度も好適には前段階と同じ温度、例えば37℃に維持されるべきである。産生の特定の時点の後、温度は低下されるのが好ましい。グルコース及び乳酸代謝はより低い温度で低減されるので、温度シフトでは温度が低下されるのが有利であり、その結果アポトーシスの開始を遅らせることにより培養生存率を高められる。
【0086】
温度シフトが培養方法に含まれる場合、温度は約37ないし39℃から約2ないし8℃、より好適には約3、4、5又は6℃だけ低下され、産生段階中の最終温度が約37℃ないし29℃となるのが好ましい。温度シフトは産生段階開始後のどこかの時点で発生してよく、培養段階開始から早ければ3時間後、遅ければ96時間後に発生してよく、好適には産生開始から12ないし72時間、最も好適には約24ないし56時間後に発生する。好ましいタイミングは、産生段階開始から約12、24、36、48及び56時間後である。
【0087】
細胞の生存率と産生率を維持するために、追加的な量の何らかの産生培地成分が「バッチ添加物」なる濃縮された栄養混合物の形態で培養中、特定の回数、産生容器に投入されてよい。バッチ添加物は好適には産生段階中の追加的なグルコース源である。バッチ添加物は、グルコース添加がプラス効果を持つであろう時期に、及び通常培養段階開始から少なくとも12時間後に添加されるべきである。例えばバッチ添加物は培養開始から12ないし120時間後に添加されるのが好ましい。好適には、バッチ添加物は培養段階中少なくとも2回に分けて添加されることとなる。これらの回分投入はそれぞれ、産生段階開始から24ないし72時間後と80ないし120時間後に添加されるのが最も好ましい。バッチ添加物の添加は、最初の培養で使用された形態、又は成分が省かれるように修正された形態の濃縮されたバッチ添加物の添加によって達成されてよい。添加量は、培地で使用された元の量の1.5倍ないし約2.5倍の範囲であるべきである。さらに、グルタミンを含有しない、又はグルタミン含有量が低減されたバッチ添加物が添加されてよい。
【0088】
4.ポリペプチド精製
対象とするポリペプチドは好ましくは分泌ポリペプチドとして培地から回収されるが、分泌シグナルなしで直接発現された場合、宿主細胞溶解液から回収されてもよい。本発明の方法で産生される好適なポリペプチドは抗体、より好適にはモノクローナル抗体である。
第一段階として、培地又は溶解液は粒子状細胞片を除去するために遠心分離される。ポリペプチドはその後、適切な精製手順の典型である以下の手順:イムノアフィニティー又はイオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ、又はカチオン交換樹脂例えばDEAEでのクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS-PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばSephadex G-75を用いたゲル濾過;及びIgG等の汚染物質を除去するためのプロテインAセファロースカラムを用いて汚染可溶性タンパク質及びポリペプチドから精製される。また、フェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)のようなプロテアーゼインヒビターも、精製中のタンパク分解を阻害するのに有用である。当業者であれば、対象とするポリペプチドに適した精製方法が、組換え細胞培養において発現される際のポリペプチドの特性変化を考慮した修正を必要とする場合があることがわかるであろう。好適な実施例において、抗体は通常、クロマトグラフィー技術(例えば、プロテインA、低pH溶出段階を伴うアフィニティークロマトグラフィー、及びプロセス不純物を除去するためのイオン交換クロマトグラフィー)を用いて生成可能である。
【0089】
実施例
以下の本発明の実施例は、例として示されるものであって、限定するものではない。
物質及び方法
ジヒドロ葉酸還元酵素マイナス(dhfr-)DUKX CHO宿主由来のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株を全実施例で使用した(Urlaub G., Chasin L. A. Isolation of Chinese Hamster Cell Mutants Deficient in Dihydrofolate Reductase Activity, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:41216-4220参照)。本実施例でCHO細胞は、Kaufman及びSharpe(Kaufman R. J., Sharpe P. A. Amplification and Expression of Sequences Cotransfected with a Modular Dihydrofolate Reductase Complementary DNA Gene. J. Mol. Biol. 1982, 159, 601-651参照)により使用されたものと同様のdhfr/methoxrexate選択方法を用いて、組換え抗組織因子抗体を分泌するように遺伝子操作された。
【0090】
上述したように、細胞培養プロセスは2又は3段階を含んでいた。種系列が導入される最初の増殖段階、細胞が接種原のために拡大される任意の接種原列、及びポリペプチド(例えば抗体)産生が発生する培養段階である。HAM’S F12/DMEMの混合に基づく無血清の低タンパク質(組換えヒトインスリン)細胞培養増殖培地を、これら実施例の全手順で用いた。2つの基本的な培地形成(培地A対培地B)は下の表1に示したように同様の組成物を有し、それらをここで開示する実験で使用した。いくつかの成分、特にグルタミンとグルタミン酸のレベルは、これら実施例に記載のように実験中変化した。
【0091】
【0092】
増殖段階中、対数期の細胞を、種系列での選択的な圧力下で連続的に継代培養した。産生培養のための接種原を提供するために、非選択的な培地を用いて種系列からの細胞をバイオリアクター内で拡大した。1.5ないし2.0Lの作業量の産生培養と接種原の双方のために、3Lリッターガラス攪拌バイオリアクター(Applikon、フォスターシティ、カリフォルニア)を用いた。温度、pH、攪拌及び溶存酸素量は、デジタル制御装置(B. Braun Biotech International、アレンタウン、ペンシルベニア)を用いて制御した。種細胞及び接種原培養物の温度は原理実験において37℃に維持した。産生培養の最初の温度も37℃に維持した。
接種に続く特定の期間の後、温度を実験計画で特定した水準に低下させ、培養の間、その設定値を維持した。
【0093】
培養pHは、当該技術分野で知られるように、CO2(酸)及び/又はNa2CO3又はNaOH(塩基)の添加により自動的に維持した。溶存酸素濃度は、該技術分野で知られるように、空気及び/又は酸素の直接散布により30%の空気飽和度に自動的に維持した。細胞の生存率と産生率を維持するために、追加的な量のいくつかの産生培地成分を、濃縮された栄養混合物(バッチ添加物)の形態で特定の回数、産生容器に投入した。バッチ添加物は濃縮(4倍濃縮)された状態で最初の培地成分をいくつか有するものであった。バッチ添加物を産生段階培地に添加すると、最初の培地成分は、最初のペプトン濃度の30%の増加、グルコース濃度の100%を超える増加、及び微量元素の100%の増加を含み、30ないし40%増加した。
【0094】
細胞増殖、生存率及び産生物力価を観察するために試料を毎日採取した。細胞培養は、細胞計数と濃縮細胞容積(PCV)により決定した。PCVは、830gの細胞懸濁液を10分間回転させた後、目盛付き遠心分離管(Kimble Science Products、フラートン、カリフォルニア)を用いて測定した。PCVは細胞総量のパーセンテージとして表した。細胞生存率は、標準的なトリパンブルー色素排除法により決定した。培養のpH、上清中のNa+、K+、乳酸塩及びグルコース濃度は、Nova-Bioprofile(登録商標)(Nova Biomedical、ウォルサム、マサチューセッツ)を製造者の指示に従い用いて測定した。産生物力価は、プロテインAカラム(POROS(登録商標)20A, Perkin Elmer)を用いてHPLCで定量化し、細胞培養上清中のFc含有抗組織因子抗体を計量した。選択した試料の産生物の質は、MALDI-TOF質量分析法(例えばPapac, D.I.等, Analysis of acidic oligosaccharides and glycopeptides by matrix-assisted laser-desorption ionization time-of-flight mass spectrometry. Anal. Chem. 68:3215-3223 (1996)参照)を用いてグリカンあたりの末端ガラクトース残基数を測定することで決定した。あるいは、CE-LIF(キャピラリー電気泳動及びレーザー蛍光検出器)を用いてグリカン末端ガラクトシル化を分析してもよい。
【0095】
実験計画
当該研究では11の細胞培養パラメーター:温度シフト後の最終温度、温度シフトのタイミンング、酪酸塩濃度、培地タイプ(A又はB)、pHシフト、バッチ添加物(1又は複数のバッチ添加物)、グルタミン濃度、グルタミン酸濃度、実験中に培地に添加されるグルコースの総量、グルコース投与法(例えば回分投入の回数、量、及びグルコース添加のタイミング)、及び播種密度を考察した。全要因の計画は、JMP(登録商標)ソフトウェア(SAS Institute, 1996, 上掲)を用いて作成した。これら要因の好適な水準と範囲を表1に示す。
【0096】
第一設定の実験では、4つの要因(最終温度、温度シフトのタイミング、酪酸塩及び培地)を2水準で研究した。重複した全要因の計画は、n=4因子の場合2×2n=32回の実行を必要とした。実験はブロックで行われた。サイズ4の8ブロックの計画で、(実験を一度に全てではなく順次行う)ブロックの効果は、温度シフトのタイミングと酪酸塩間の二方向相互作用と交絡された。
第二設定の実験は、第一設定の実験結果を分析した後に実施した。温度、温度シフトのタイミング、酪酸塩及び培地をそれぞれ、34℃、24時間、0mMの酪酸塩及び培地Aに設定して、pHシフト、グルタミン水準及びバッチ添加物の添加の効果を調べた。pHシフトとバッチ添加物については2水準を特定した。pHをシフトするケースの場合にのみ、発酵の3日目にpH設定値を7.15から7.0に低下した。この設定の実験では細胞培養の全てに、2日目に、追加的な量の同一の産生培地成分(グルタミンを除く)を、濃縮された混合物(バッチ添加物)の形態で付与した。グルタミンは、別の要因としてその影響を調べるためにバッチ添加物から省いた。バッチ添加物が2回ある培養には、4又は5日目に同一成分を含む2回目のバッチ添加物を付与した。全ケースにおいて最初のグルタミン水準は5mMとした。10mMのグルタミン培養の場合、2日目に、追加的に5mMのグルタミンを濃縮グルタミンストックから添加した。15mMのグルタミンを含有する培養には2及び5日目にグルタミンを添加した。この設定の実験の場合、nを2水準要因の数、kを3水準要因の数として、水準混合全要因計画は2n×3k=12回の実行を必要とした。
【0097】
第三設定の実験では、追加的なグルコース(前設定の実験との比較)、複数のバッチ添加物の添加(これらの実験では2回のバッチ添加物の添加)及びグルタミンによる影響、並びにそれらの重量モル浸透圧濃度と最終産生物力価への影響を調査した。この設定の実験では合計12回行われた。
第四設定の実験では、播種密度、グルタミンのグルタミン酸での置換、グルコース投与法、及び温度範囲の拡大による影響を考察した。上掲したように、第三設定の実験の結果は、最初の培地内の、第一のバッチ添加物内の、及び4日目の添加により提供されるグルコースは好適な影響を持つことを示した。よって第四設定の実験では、グルコース投与法の影響を考察した:「グルコース添加なし」の投与法では最初の培地に提供されたグルコース以外は実験細胞培養に添加されず(「添加なし」;「高グルコース」の投与法では4日目に10g/Lのグルコースが培養に添加され(「高」);「複数グルコース」投与法では4日目に6g/L、そして7日目に4g/Lが培養に添加された(「複数」)。この設定の実験では合計24回行われた。
【0098】
【0099】
実験は表1に従って実施した。タンパク質又は抗体産生物力価、濃縮細胞容積の観点からみた細胞増殖、細胞生存率、及び副産物の蓄積(乳酸塩及びアンモニウム)について実験結果を報告する。算出された結果(統合的生存可能PCV、生存可能PCVに基づく特異的産生率)をJMP(登録商標)ソフトウェアを用いて分析した。モデルは選択された二方向及び三方向相互作用を含んだ。図1は、第一設定ないし第四設定の実験による細胞培養最適化の結果向上された産生物力価の全体的な傾向をまとめたものである。産生物力価(例えば抗体力価)はHPLCアッセイにより測定した。力価の増加は:
力価増加%=((向上した力価−最初の力価)/最初の力価)×100
により計算した。
【0100】
実施例1:第一設定の実験の結果
第一設定の実験の分析は、温度及び培地を有意な影響を持つものとして同定した。最終温度と温度シフトのタイミング間、及び最終温度と培地間には相互作用が見られた。表2及び3は、力価と最終培養生存率%応答についての、推定パラメーター(モデルの各要因に関する推定値)、標準誤差(SE)、T比率(推定パラメーター対標準誤差の比率)及びP値をそれぞれ示す。低いP値は、関連する変数が変化されると平均応答が変化することを示す。慣例により0.05未満のP値は統計的に有意であると考えられる。F値は、平均二乗モデル誤差を平均二乗誤差分散で割って計算する。F値が1より高ければ高いほど、データ中の変数をその平均値について説明する要因の確実性が増す。
【0101】
本発明で、最終温度と温度シフトのタイミング間、及び最終温度と培地間の応答の双方についてのF値(表3及び4)は、ここで説明するような特定の時間における温度変化が有意であることを示す。表3は、温度シフトについて非常に低いP値を示し、これは、それが産生物抗体力価に非常に有意な主効果を持つことを示唆する。特に、最初の温度37℃から31ないし34℃の範囲への温度シフトは、該シフトが培養から12ないし36時間後、及び好適には約24時間後に起こった場合、有意であった。プラスの推定パラメーターは、シフト前温度の温度範囲の上限に比例して力価が増加することを示す。タイミングと温度の相互作用(「タイミング*温度」と示す」)が非常に有意であった。温度*タイミング間の相互作用が大きなマイナス値であることは、低温度のシフトタイミング(24時間)と、上限の高いシフト前温度の範囲(つまり33ないし34℃)を用いると、最高の力価が得られることを示唆する。また特定のタイミング*温度の関係は、播種密度に依存した。特に、24時間で37℃から34℃へのシフトが起こった場合は0.2%の播種密度で最高の力価が観察され、一方、24時間で37℃から33℃へのシフトが起こった場合は0.4%の播種密度で最高の力価が発生した。(ブロックで実験を行う)ブロック効果は僅かであった。
【0102】
このような設定で使用した培地は、力価には影響しなかったようであるが、細胞培地の生存率には影響した(表4)。特に、グルタミンを含有するバッチ添加物で添加した分を含み、より高いグルタミン濃度を持つ培地は、より低い生存率を有した。グルタミン濃度が高いほど、より高いアンモニアレベルが培養内に蓄積した。これは、他者(例えばMcQueen, A., Bailey, J. E., Mathematical Modeling of the Effects of Ammonia ion on the Intracellular pH of hybridoma Cells., 1990, Biotechnology and Bioengineering, 35:897-906; Wu, P., Ray, N. G., 及びShuler, M. L., A Computer model for intracellular pH Regulation in Chinese Hamster Ovary Cells, 1993, Biotechnol. Prog., 9:374-384; 及びWu, P., N. G., 及びShuler, M. L., A Single-Cell Model for CHO Cells. 1992, Ann. N. Y. Acad. Sci. (Biochem. Eng. VII), 152-187参照)から報告された、アンモニウムが増殖、生存率及び産生物の質に及ぼす悪影響と一致する。よって、培地の生存率の低さは、その培地へのグルタミンの添加に起因するものである。
【0103】
【0104】
【0105】
実施例2:第二設定の実験の結果
第二設定の実験では、pH及びバッチ添加物に加えて、様々なグルタミンレベルの影響を調査した。バッチ添加物とグルタミンの影響を分けるために、グルタミンはバッチ添加物組成物から省いた。第一設定の実験から推論される最適な温度(34℃)、温度シフトのタイミング(24時間)、酪酸塩濃度(0mM)及び培地(A)の組合せを、第二設定のスクリーニング実験の基準として用いた。表5の結果は、バッチ添加物とpHの双方が力価に最も有意な主効果を及ぼしたことを示す。
【0106】
【0107】
要因pHシフトは力価に悪影響を及ぼし、一方、バッチ添加物はプラス効果を及ぼした。従って、培養又は産生段階の間、pHは低減させないほうが好ましい。グルタミンが力価に主効果を持つという証拠は強いものではなかった;しかし、グルタミンはpHと相互作用するようであった。図2は、最も高いアンモニウムレベルが、グルタミンの最も高いケース(15mM)と相関することを示す。全ケースにおいてアンモニウムレベルは、培養が進むにつれ低下する。高アンモニウムレベルは細胞内pHを低減するという文献による報告がある。例えばCHO細胞の1つのモデルは、内因性及び外因性双方のアンモニウムの存在下で、たとえ数ミリモルという低レベルのアンモニウムであっても、激しいpH低下を予測した(Wu等, 1993及び1992, 上掲)。
【0108】
図3は、グルタミンレベルの増加が及ぼす生存率への悪影響を示す。高アンモニウムレベルに関連するCHO培養生存率の大幅な低下は、他の研究者によって文献報告されている(Yang, M. 及びButler, M. Effect of Ammonia on the Glycosylation of Human recombinant Erythropoietin in Culture, Biotechnol. Prog., 2000, 16(5):751-759)。今回の結果はこれと一致する。
高グルタミン及び第二バッチ添加物の添加で、より高い重量モル浸透圧濃度が培養中で測定された。バッチ添加物のグルコース成分は、高重量モル浸透圧濃度の一因である。より高いグルタミンレベルと、pHを制御するためのこれらのケースへのより高い基礎添加により、乳酸塩産生がより高くなるため、グルタミンもまた重量モル浸透圧濃度に影響する。培養の重量モル浸透圧濃度が高いほど、容積力価が高かった。図1参照。この発見は、重量モル浸透圧濃度の増加に伴う特異的産生率の増加を示す文献報告と一致する(例えばChen, M. 及びForman, L. W., Polypeptide Production in Animal Cell Culture. 1999, 及びUS特許第5,856,179号参照)。
【0109】
実施例3:第三設定の実験の結果
ここで示すように、重量モル浸透圧濃度は細胞培養プロセスにおける有意な変数の1つである。それは種々のパラメーターにより影響され得る。例えば培地成分、特にグルタミン及びグルコースは、その濃度レベルにより、又は副産物である乳酸塩及びアンモニアの蓄積に影響することにより、重量モル浸透圧濃度に影響する。
第三設定の実験では、グルコースバッチ添加物とグルタミン濃度が重量モル浸透圧濃度と産生物力価に及ぼす影響について、より詳細に調査した。全ての細胞培養を、細胞生存率を向上するために少なくとも約3g/Lのグルコース濃度で維持した。検査培養で、まず4又は5日目に、重量モル浸透圧濃度を増加するためにグルコース添加を行った。これらの実験では、グルコースを第二のバッチ添加物からのみ省き、グルタミンを両方のバッチ添加物から省いた。全ての培養が、最初5mMのグルタミンレベルを有し、後のグルタミン及びグルコースの添加は、濃縮されたグルタミン及びグルコースの溶液を用いて行った。
【0110】
表6は、第三設定の実験の、力価応答に関するデータ分析の結果を示す。グルコースについて算出された非常に低いP値は、それが力価応答の有意な要因であることを表す。プラスの推定パラメーターは、グルコース添加が応答にプラス影響を持つことを示す。バッチ添加物数の増加もまた力価にプラス影響を及ぼした。これらの実験で、バッチ添加物は1回(2日目)又は2回(2日目と4又は5日目)添加され、2回のバッチ添加物の添加は統計的に有意な有益な効果を持つことが観察された。これらの実験で、グルタミンは力価に有意な影響を及ぼさなかった。
【0111】
【0112】
第三設定の実験の結果はまた、細胞培養生存率とグルタミンレベル間の、非常に有意な負の線形相関を示した。バッチ添加物は、生存率に有意なプラス効果を持つようであった。グルコースとバッチ添加物は最大特異性産生率にプラス効果を及ぼした(表7)。他の要因は、検討された要因;つまりpH制御と溶解二酸化炭素レベルに加えて、培養の重量モル浸透圧濃度に影響する。バッチ添加物は、グルコース成分が省かれた場合それほど重量モル浸透圧濃度に影響しない。重量モル浸透圧濃度はグルコースを添加すると増加するが、グルコースが代謝されると低下する。
【0113】
【0114】
実施例4:第四設定の実験の結果
第四設定の実験では、細胞培地でのグルタミンの代替物としてのグルタミン酸の使用を考察して、副産物の蓄積を調査した。播種密度、最終温度(第一の実験とは異なる温度範囲を使用)及びグルコース投与法を他の要因として調査した。播種密度、グルタミン対グルタミン酸、温度及びグルコース投与法に関する有意な個々の影響を力価応答について決定した。播種密度はまた温度と相互作用することがわかった。より高い播種密度でより低い温度であるのが、より高い産生物力価に好ましい。しかし播種密度が低いと、温度は殆ど影響を持たない。図4は、この第四設定の全実験における、副産物である乳酸塩及びアンモニアの蓄積をまとめたものである。最大アンモニウムレベルをy軸上に示した。z軸(縦棒)上では、Na+濃度が、乳酸塩の中和に必要な、培地のpHを制御するための手段として添加されたNa2CO3の濃度を表し、よってNa+濃度は産生段階中に産生された乳酸塩の量を反映することができる。グルタミン濃度はx軸上に示す。産生段階における最終グルタミン濃度は、x軸の右から左へ、0mMグルタミンから5mMグルタミンへ、10mMグルタミンへ(最初5mM濃度で、バッチ添加物としてのグルタミン添加により10mMへ)、15mMグルタミンへ(最初10mM濃度で、バッチ添加物としてのグルタミン添加により15mMへ)変化する。グルタミン0mMの実験では、グルタミン酸は5mMの濃度で培地中に存在する。温度は縦棒先端の影付き円のグレーの濃さで示し、濃いグレーは「高温」として35℃を表し、最も明るいグレーは31℃の「低温」を表す。中間の濃さは、より濃いグレーが34℃、より明るいグレーが33℃をそれぞれ表す。各縦棒は、この第四設定の実験の各実験の結果を表す。従って図4は、培養温度に関わらず、5mMのグルタミン酸(0mMのグルタミンで)が最も低いレベルの副産物の蓄積(NH4 +濃度が低く、縦棒が最も低い)をもたらすことを示す。他の研究者は、グルタミン酸をグルタミンの替わりとした時の、最小量の乳酸塩及びアンモニアの生成を報告している(Altamirano, C., Paredes, C., Cairo, J. J., 及びGodia, F., Improvement of CHO Cell Culture Medium Formulation: Simultaneous Substitution of Glucose and Glutamine. Biotechnol. Prog. 2000, 16:69-75参照)。
【0115】
実施例5:産生物の質
ゼロ、1又は2末端ガラクトース残基を有する抗体グリカンのパーセンテージを分析することにより、本発明の方法で産生した、選択した抗体について産生物の質を評価した。抗体グリカン分布、及び特に末端ガラクトシル化は、補体認識、ADCC(antigen-dependent cytotoxic cellular:抗原依存性細胞障害)応答による免疫変調、抗体の集合に対し重大な影響を持つ。好適には、ゼロガラクトース残基(G0)を持つグリカンのパーセンテージは約80%未満、より好ましくは約70%未満、さらに好ましくは約60%未満、最も好ましくは約55%未満である。
【0116】
副産物の蓄積は、産生物である抗体の質に悪影響を及ぼす。1つの副産物、アンモニウムイオンは末端ガラクトシル化に悪影響を持ち、その結果抗体の質に悪影響を及ぼした。複数の細胞培養は、産生段階の最後に様々なレベルのアンモニウム蓄積を有することが示された。表8は、産生段階の培地中のアンモニウムイオン蓄積の、これら培養から分離された抗体に対する関数として、グリカン分布としての質データを示す。アンモニアレベルは、増加するグルタミン濃度、及び産生段階の培地に添加されたグルコースの総量と相関した。表8に示した各アンモニウムイオンレベルは、細胞培養プロセス中に測定された最大レベルである。データは、増加するアンモニアレベルがグリカン分布に悪影響を及ぼすことを示す。最大アンモニウム濃度が4から13mMに増加すると、同時にG0グリカンのパーセンテージの増加が観察され、これは末端ガラクトシル化の減少を示唆する。他の研究者も、培地中のアンモニウムが解糖に影響することを示した(Chen, 1999, 上掲参照)。彼等は、20mMのNH4Clでのグリコフォームの不均一性の著しい増加と、シアリル化の減少を報告した。他のグループの報告によると、CHO細胞での増殖段階前にアンモニウムが1mMから15mMに増加すると、末端ガラクトシル化の40%の減少が観察された(Gawlitzek, M., Ryll, T., Lofgren, J., Sliwkowski, M. B., Ammonium Alters N-Glycan Structures of Recombinant TNFR-IgG: Degradative Versus Biosynthetic Mechanisms, Biotechnology and Bioengineering, 2000, 68:637-646参照)。
【0117】
【0118】
本発明は、低レベル、例えば5mMのグルタミンの、細胞培地での使用を可能にし、それにより酪酸塩及びアンモニウムイオンの蓄積を低減する。驚くべきことに本発明は、副産物の蓄積を増加させることなく、グルコースレベルを高めることができる。グルコースレベルの高上の結果、重量モル浸透圧濃度が増加し、ポリペプチド(例えば抗体)産生率と抗体の質が向上する。
【0119】
本発明を特定の実施態様に関連して説明したが、さらなる変更が可能であることが理解されるであろう。本出願は、本開示から離れていても、本発明が属する技術分野で周知又は慣例のもの、及び請求項の範囲に記載の本質的な特徴に当てはまるものを含み、一般的に本発明の原理に従う本発明のいかなる変形、使用又は適応をも網羅するものである。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明によって向上された培養条件での抗体力価の段階的な増加を表す。
【図2】培地でのグルタミンの存在に起因するアンモニウムイオンレベルの増加を表す。
【図3】培地でのグルタミンレベルの増加が及ぼす細胞生存率への悪影響を表す。
【図4】副産物の蓄積の影響を、培地の温度、グルタミン濃度及びグルタミン酸濃度の関数としてグラフで示す。
Claims (77)
- (a)所望のポリペプチドをエンコードする単離核酸を含有する動物細胞を細胞培地で増殖することと
(b)培地のグルコース濃度が10g/Lを超えるように培養開始時又は培養中に細胞培地にグルコースを添加し、細胞がポリペプチドを発現するように産生段階において動物細胞を該細胞培地で培養することと
を含む細胞培養でのポリペプチド産生方法。 - 増殖と培養の間に、接種原を供給するために動物細胞を拡大することと、培養開始時に細胞培地に接種原を添加することとを含む、請求項1に記載の方法。
- 培養のある時点において培地のグルコース濃度が少なくとも約12ないし40g/Lである、請求項1に記載の方法。
- 培養のどこかの時点において培地のグルコース濃度が、約12、13、14、15、16、17、18、19又は20g/Lからなる群から選択される濃度以上である、請求項1に記載の方法。
- 培養開始時又は培養中に添加されるグルコースの総量が約10ないし40g/Lである、請求項1に記載の方法。
- 培養開始時又は培養中に添加されるグルコースの総量が約15ないし30g/Lである、請求項1に記載の方法。
- グルコースが、単独で又はバッチ添加物の一部として培養中に2回又はそれ以上の回数に分けて添加される、請求項5に記載の方法。
- 培養開始時に、細胞培地が約280ないし380mOsmの重量モル浸透圧濃度を有し、及び培養のどこかの時点で約400ないし600mOsmの重量モル浸透圧濃度を有する、請求項1に記載の方法。
- 培養開始時に、細胞培地が約300ないし350mOsmの重量モル浸透圧濃度を有し、及び培養のある時点で約420ないし500mOsmの重量モル浸透圧濃度を有する、請求項1に記載の方法。
- 培養が、増殖の開始から少なくとも3時間後に開始する、請求項1に記載の方法。
- 培養が、増殖の開始から少なくとも24時間後に開始する、請求項1に記載の方法。
- 培養が、増殖の開始から約48ないし192時間後に開始する、請求項1に記載の方法。
- グルコース濃度が、培地のグルコース濃度が約10g/Lを超えるように、グルコースが添加されるまでは、培養中少なくとも約2g/Lを超えるように維持される、請求項1に記載の方法。
- 培養中、培地のグルタミン濃度が約5mM未満である、請求項1に記載の方法。
- 培養中、培地にグルタミンが添加されない、請求項1に記載の方法。
- グルタミン酸が、グルタミン酸の濃度が約1ないし10mMとなるように、培養中培地に添加される、請求項1に記載の方法。
- 細胞培地におけるグルタミン酸濃度対グルタミン濃度の比率が、少なくとも2:0.5である、請求項1に記載の方法。
- グルコースを含むバッチ添加物が、培養中に1回又は複数回に分けて細胞培地に添加される、請求項1に記載の方法。
- グルコースを含むバッチ添加物が、培養中に少なくとも2回、細胞培地に添加される、請求項1に記載の方法。
- グルコースを含むバッチ添加物が、培養開始から約3ないし120時間後に細胞培地に添加される、請求項1に記載の方法。
- グルコースを含むバッチ添加物が、培養開始から約24ないし72時間、さらには約80ないし120時間後に細胞培地に添加される、請求項19に記載の方法。
- 培養中、培地温度が、培養開始時の温度より少なくとも2℃低下される、請求項1に記載の方法。
- 培養開始時に約35ないし39℃である温度が、その後の培養中に31ないし35℃に低下される、請求項22に記載の方法。
- 温度が、培養開始から約12ないし72時間後に低下される、請求項22に記載の方法。
- 温度が、培養開始から少なくとも約12、24、36、48及び56時間後からなる群から選択された時間後に、少なくとも約2、3、4又は5℃低下される、請求項22に記載の方法。
- 培養開始時、約0.2%PCVの播種密度を持つ接種原が培地に添加され、及び、培地の温度が培養開始から約24時間後に低下され、このとき温度は約37℃から約34℃に低下される、請求項1に記載の方法。
- 培養開始時、約0.4%PCVの播種密度を持つ接種原が培地に添加され、及び、培地の温度が培養開始から約24時間後に低下され、このとき温度は約37℃から約33℃に低下される、請求項1に記載の方法。
- 培養開始時、培地の細胞が、約0.1ないし0.5%PCVの播種密度を有する、請求項1に記載の方法。
- 増殖及び培養において、細胞培地が無血清である、請求項1に記載の方法。
- 増殖及び培養の双方において、細胞培地が動物性タンパク質を含まない、請求項1に記載の方法。
- 細胞が哺乳動物細胞である、請求項1に記載の方法。
- 細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である、請求項1に記載の方法。
- ポリペプチドがモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
- モノクローナル抗体が、抗HER2、抗体2C4、抗VEGF、抗体C2B8、抗CD11a、抗組織因子、IgG4b、抗CD40、抗CD20、抗IgE、抗体E25及び抗体E26からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
- 培養中、酪酸塩が添加されず、培地は培養中、約6.5ないし7.5のpHで維持される、請求項1に記載の方法。
- 増殖中、培地が約1ないし12g/Lのグルコースを含み、培養中又は培養開始時、総量で10g/Lを超えるグルコースが培地に添加される、請求項1に記載の方法。
- 請求項1に記載の方法で産生されるモノクローナル抗体。
- 抗体が少なくとも1のグリカン残基を含み、抗体集団におけるゼロ末端ガラクトース残基を有するグリカンのパーセンテージが約80%未満である、請求項37に記載のモノクローナル抗体。
- 抗体が少なくとも1のグリカン残基を含み、抗体集団におけるゼロ末端ガラクトース残基を有するグリカンの割合が約70%未満である、請求項37に記載のモノクローナル抗体。
- 抗体が少なくとも1のグリカン残基を含み、抗体集団におけるゼロ末端ガラクトース残基を有するグリカンの割合が約60%未満である、請求項37に記載のモノクローナル抗体。
- 治療的に有効量の請求項37に記載の抗体を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物の疾患の治療方法。
- 請求項37に記載のモノクローナル抗体を含む製薬組成物。
- モノクローナル抗体が、抗HER2、抗体2C4、抗VEGF、抗体C2B8、抗CD11a、抗組織因子、IgG4b、抗CD40、抗CD20、抗IgE、抗体E25及び抗体E26からなる群から選択される、請求項42に記載の製薬組成物。
- (a)動物細胞を細胞培地で増殖することと
(b)培養中のグルコース濃度が10g/Lを超えるように培養開始時又は培養中に細胞培地にグルコースを添加し、動物細胞を該細胞培地で培養することと
を含む、流加細胞培養系での動物細胞の増殖方法。 - 増殖と培養の間に、接種原を提供するために動物細胞を拡大することと、培養開始時に細胞培地に接種原を添加することとを含む、請求項44に記載の方法。
- 培養のある時点において培地のグルコース濃度が少なくとも約12ないし40g/Lである、請求項44に記載の方法。
- 培養のある時点において培地のグルコース濃度が、約12、13、14、15、16、17、18、19又は20g/Lからなる群から選択される濃度である、請求項44に記載の方法。
- 培養開始時又は培養中に添加されるグルコースの総量が約10ないし40g/Lである、請求項44に記載の方法。
- 培養開始時又は培養中に添加されるグルコースの総量が約15ないし30g/Lである、請求項44に記載の方法。
- グルコースが、培養中に少なくとも1回、細胞培地に添加される、請求項48に記載の方法。
- グルコースがバッチ添加物に含まれる、請求項50に記載の方法。
- バッチ添加物が、培養中に少なくとも2回添加される、請求項51に記載の方法。
- 培養開始時に、細胞培地が約280ないし380mOsmの重量モル浸透圧濃度を有し、及び培養のどこかの時点で約400ないし600mOsmの重量モル浸透圧濃度を有する、請求項44に記載の方法。
- 培養開始時に、細胞培地が約300ないし350mOsmの重量モル浸透圧濃度を有し、及び培養のどこかの時点で約420ないし500mOsmの重量モル浸透圧濃度を有する、請求項44に記載の方法。
- 培養が、増殖の開始から少なくとも3時間後に開始する、請求項44に記載の方法。
- 培養が、増殖の開始から少なくとも12時間後に開始する、請求項44に記載の方法。
- 培養が、増殖の開始から約3ないし192時間後に開始する、請求項44に記載の方法。
- グルコース濃度が培養中少なくとも約2g/Lに維持される、請求項44に記載の方法。
- 培養中、培地のグルタミン濃度が最大で約5mMである、請求項44に記載の方法。
- 培養中、培地にグルタミンが添加されない、請求項44に記載の方法。
- グルタミン酸が、グルタミン酸の濃度が約1ないし10mMとなるように、培養中培地に添加される、請求項44に記載の方法。
- 細胞培地におけるグルタミン酸濃度対グルタミン濃度の比率が、少なくとも2:0.5である、請求項44に記載の方法。
- グルコースを含むバッチ添加物が、培養開始から3ないし120時間後に細胞培地に添加される、請求項44に記載の方法。
- グルコースを含むバッチ添加物が、培養開始から約24ないし72時間、さらには約80ないし120時間後に細胞培地に添加される、請求項63に記載の方法。
- 培養中、培地温度が、培養開始時の温度より少なくとも2℃低下される、請求項44に記載の方法。
- 培養開始時に約35ないし39℃である温度が、その後の培養中に31ないし35℃に低下される、請求項65に記載の方法。
- 温度が、培養開始から約12ないし72時間後に低下される、請求項65に記載の方法。
- 温度が、培養開始から少なくとも約12、24、36、48及び56時間後からなる群から選択された時間後に、約2、3、4又は5℃低下される、請求項65に記載の方法。
- 増殖と培養の間に、約0.2%PCVの播種密度の接種原を細胞培地に添加することと、培養開始から約24時間後に温度をシフトし、このとき温度を約37℃から約34℃に低下することを含む、請求項44に記載の方法。
- 増殖と培養の間に、約0.4%PCVの播種密度の接種原を細胞培地に添加することと、培養開始から約24時間後に温度をシフトし、このとき温度を約37℃から約33℃に低下することを含む、請求項44に記載の方法。
- 増殖と培養の間に、約0.1ないし0.5%PCVの播種密度を有する接種原を添加することを含む、請求項44に記載の方法。
- 増殖及び培養中、細胞培地が無血清である、請求項44に記載の方法。
- 増殖及び培養中、細胞培地が動物性タンパク質を含まない、請求項44に記載の方法。
- 細胞が哺乳動物細胞である、請求項44に記載の方法。
- 細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である、請求項44に記載の方法。
- 培養中、酪酸塩が添加されず、培地は培養中、約6.5ないし7.5のpHで維持される、請求項44に記載の方法。
- 増殖中、培地が約1ないし12g/Lのグルコースを含み、培養中又は培養開始時、総量で10g/Lを超えるグルコースが培地に添加される、請求項44に記載の方法。
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