JP2004519810A - 記録のためのシフトされた記録開始及び停止位置を備える多層記録担体 - Google Patents

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Abstract

本発明は、下位層への記録又は下位層からの読み込みが、上位層の記憶領域とヘッダ部との間における透過率の変化により影響を受けないように、ヘッダ部の記録領域の開始及び停止位置が、下位の記録層において所定の距離だけシフトされる、多層記録担体、記録装置、該多層記録担体への記録の方法、及び製造方法に関する。前記シフトはギャップ部の伸長又はヘッダ部へのミラー領域の追加によって得られても良い。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射ビームによる照射により記録されるのに適した少なくとも2つの略平行かつ略整合された情報層を有する多層記録担体に関する。このような記録担体の例は記録可能な光ディスクである。本発明はこのような多層記録担体の製造にも関する。
【0002】
本発明はこのような多層記録担体に記録する記録装置及び方法にも関する。
【0003】
【従来の技術】
光ディスクドライブのような光データ記録(optical data storage)システムは光記録担体(optical record carrier)上への大量のデータの記録を可能にする。データは記録担体の記録層上へ放射ビーム(例えばレーザビーム)をフォーカスし、反射されたビームを検出することによってアクセスされる。可逆的な又は再書き込み可能な相変化型システムにおいては、2つの安定した相を備える光記録担体が利用される。データビットは、小さな局所領域を1つの安定した相に変換することにより媒体に記録される。前記データビットは書き込まれた領域を最初の相に戻すことにより消去されることができる。前記最初の相は典型的には結晶質相であり、レーザビームがデータ層における物質を安定した非晶質相へと局所的に変換することによりデータを書き込む。このことは、結晶質領域を融解点以上に熱し、不規則な構造が適切に固定され結果非晶質構造となるように急速に冷却することにより達成される。データビットは後に非晶質相を最初の結晶質相へ変換し直すことによって消去されることができる。このことは、非晶質領域が熱せられ結晶化温度以上に維持されているときに、又は代わりに融解され前記領域が結晶化するまでゆっくりと冷却されるときに行われる。この型の相変化型記録担体に記録されたデータは、前記記録担体の結晶質領域と非晶質領域との間の反射率の変化を検出することによって読み取られる。
【0004】
光ディスクの記録容量を増加するために、多記録層ディスクが提案されている。2以上の記録層を持つ光ディスクは、レンズの焦点位置を変化させることによって空間的に分離された異なる記録層においてアクセスされる。レーザビームは、最も離れた又は下位の記録層のデータを読み込み及び書き込みするために、より近い又は上位の記録層を通過させられる。多記録層ディスクのためには、レーザ光が入射するディスク面と、その面から最後の又は最も遠い記録層との間の中間の記録層が、光を透過するものである必要がある。
【0005】
ランダムアクセスによる(再書き込み可能な)光学記録においては、データは通常ECCブロックの単位で(例えばヘッダのないCLVシステムにおいて)か、例えば2キロバイト若しくは4キロバイトのユーザデータのようなECCブロックの固定された断片という固定された記録単位ブロックで(例えば2つのヘッダの間の距離が記録単位ブロックの整数倍であるヘッダを持つZoned Constant Angular Velocity(ZCAV)システムにおいて)か、又はECCブロックの可変長の断片で(例えばECCブロックサイズが2つのヘッダの間の距離の整数倍ではなく、書き込みがヘッダの前で「単純に」止まり、回路の適切な振る舞いを保証するために幾つかのランインセグメント(segment run−in)及びランアウトセグメント(segment run−out)を包含するヘッダの後で再開する、デジタルビデオレコーディングシステムにおいて)書き込まれる。このようなECCブロックの断片はDVRシステムにおいては「記録フレーム」と呼ばれ、DVDシステムにおいては「SYNCフレーム」と呼ばれる。ヘッダを備える光学記録担体においては、記録担体はセクタに細分化され、それぞれのセクタは、前記セクタを固有に識別するアドレスを含むヘッダと、好ましくはエラー検出及び訂正コード(ECC)によって保護されたユーザデータが記録されている記録単位ブロックとを有する。
【0006】
DVRシステムにおいては、ZCAVシステムが利用される。このようなシステムにおいてはセクタの容量はディスクに渡って一定ではない。線密度は凡そ一定であり、ゾーンあたりのトラックの数は一定であるが、一周あたりのヘッダの数は一定でトラックの長さがディスクの内側から外側の半径範囲へと2.4の係数で増加する。DVRシステム及び形式は、T.Narahara他による「Optical Disc system for Digital Video Recording」(Techn. Digest ISOM/ODS(MD1) 、1999年7月11日〜15日、Kauai Hawaii、SPIE Vol.3864(1999)、50頁〜52頁)、「Jpn. J. Appl. Phys.」誌 39 Pt1 No.2B(2000年)の912頁〜919頁、及びK.Schep他による「Format description and evaluation of the 22.5 GB DVR disc」(Tech. Digest ISOM 2000(2000年9月))において説明されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このようなシステムにおいてデータが書き込まれるとき、ヘッダ領域にギャップが設けられる。前記ヘッダ領域の直後(ランインセグメント)及び直前(ランアウトセグメント)において、相変化データを伴う溝(groove)はまだ書き込まれていない。DVRシステムにおいては、該ランインセグメントはデータが実際に書き込まれる個所の前のギャップから始まり、該ランアウトセグメントはヘッダの直前のギャップで終わる。DVRシステムにおいては、前記ギャップは、下位層に書き込む際の上位層におけるビームの直径がおよそ40μmであるとき、典型的には凡そ150μmの長さである。かくして上位層におけるギャップは下位層への書き込みを妨げる。ギャップの影響は、例えばCLV又はZCAVシステムにおいて整数個のECCブロックが殆ど正確に1つ又は整数個の円周に一致する場合のように、ギャップが近接するトラックにおける同一の角度位置にある場合に増大する。
【0008】
ヘッダ領域と(結晶質の)書き込みされない溝領域又はギャップとの間の透過率(transmittivity or transmission)の差は、上位層の一方の面上の被覆層(又は基板)の屈折率と他方の面上のスペーサとの屈折率がほんの小さい(典型的には0.1以下;例えばn=1.6の被覆及びn=1.5のスペーサ)という事実のため、一般にほんの僅かである。しかしながら、より重要な問題は、書き込みされる領域と書き込みされない領域との差であり、ここでヘッダ領域が問題を起こす。該ヘッダ領域はその透過率に対してギャップとして振舞う。この故に、例えばDVRシステムにおいては円周につき8回、及びヘッダを備えるDVD−RAMシステムにおいてはより頻繁にといった、該ヘッダ領域の頻繁な出現により、該ヘッダ領域が問題を構成する。
【0009】
前記ヘッダ領域及びギャップは、書き込みされる記録セクションと比較すると低減された透過率を持つ。上位の情報層のランダム的な向きにより、上位の情報層のヘッダ領域は下位の情報層の記録又は書き込みセクタの上に位置される可能性があり、その結果上位の情報層の透過特性がヘッダ領域及びギャップの中で異なる。更に、下位の情報層に対する上位の情報層の変位は、非円形性、離心率(中央の穴に対する螺旋のトラックの中心の偏心)及び角度の差異に起因する。このような中心の穴に対する螺旋のトラックの偏心は主にディスクのマスタリング及び複製過程の成型ステップにおいて発生させられる。
【0010】
二層又は多層システムにおいては、下位層は、レーザビームのかなりの領域が上位層のギャップ又はヘッダ領域を通過して書き込まれ又は記録される。かくして、上位の情報層に情報又はデータが書き込まれたとき、上位層の透過特性(transmission properties or transmission characteristics)は、レーザビームが書き込まれたエリア、ギャップ又はヘッダ領域を通過するか否かに依存して異なる。K.Kurokawaらによる「Techn. Digest ISOM/ODS’99(SPIE Vol.3864)」の197頁から199頁において、上位層について以下のパラメータを持つ二層ディスクが提案されている。
【0011】
書き込まれていない状態における透過率: T(non−written) = 45%
【0012】
書き込まれた状態における透過率: T(written) = 55%
このように、書き込まれていない状態の透過率Tは、書き込まれた状態の透過率より低い。下位の情報層に書き込む際の、上位の情報層における書き込みされないエリア(例えば、ギャップ又はヘッダ部分)の通過は、下位の情報層への同じ記録パワーPrecを実現するために、書き込まれた領域の通過よりも高いディスク上への入射パワーPincを要求する。これは以下の式により表される:
rec = Pinc ・ T(upper layer)
例えば、書き込まれた上位層を通して記録する際にPinc=14mWの入射パワーが必要な場合、記録されない上位層を通して記録する際の入射パワーは、Kurokawa他により見出されたパラメータ値を利用して上記の式より導き出されるように、Pinc=17.1mWに達する。
rec = Pinc,written・T(written) = Pinc,non−written・T(non−written) Pinc,non−written = Pinc,written・T(written)/T(non−written)
=14mW・(0.55/0.45)
inc,non−written = 17.1mW
上述の例においては、書き込みされた上位層を通した記録の際に要求される記録パワーは、書き込みされない上位層を通した記録に要求される記録パワーの82%にしか達しない。かくして、14mWの記録パワーの利用は、書き込みされない領域を通した記録の際には18%のパワー低下に帰着し、17.1mWの記録パワーは書き込みされたエリアを通した記録の際には18%のパワー過剰に帰着する。しかしながらこれは一般に、光記録システムのために明示された許容されるパワーのマージンの範囲内ではない。典型的に、前記許容されるパワーのマージンは−10%から+15%の範囲内である。より高いマージンは、書き込みされない部分又はヘッダ部分の下に書き込む際の透過率の相違を修正するために、レーザダイオードの駆動ユニットにおける高バンド幅パワー制御を要求する。
【0013】
それ故、上位層のリンクするギャップ及びヘッダ部分が下位層への書き込み及び読み込みに影響を与えないように、ヘッダ部分の間で接線方向の又は角度的な整合を備えることが好ましい。それでも、そのような整合の場合でも、下位の情報層への記録又は下位の情報層からの読み込みの際に、特定の位置において均一でない透過率が得られる。これは図4を参照して説明される。
【0014】
図4は記録又は読み込みトラックに沿った二層ディスク構造の断面図を示す。図4Bは図4Aにおいて破線の長方形によって示された領域の拡大された図である。二層構造は、ともにヘッダ部分Hと記録セクタRとを含む、上位の情報層6と下位の情報層8とを有する。図4Aから推測されるように、上位の情報層6及び下位の情報層8は、角度方向に又は接線方向に整合される又は略整合される。即ち、ヘッダ部分Hの対応するものは、上位の情報層6及び下位の情報層8において、同じ角度方向又は接線方向の位置で配置される。実際には、例えばディスク製造の接合ステップにおける光学的整合(optical alignment)によって、このような位置合わせは±10μmの範囲で可能である。
【0015】
図4Bにおいて、下位の情報層8上にフォーカスされるレーザビームが2つの角度位置A及びBにおいて示される。更に、上位の情報層6において得られるビームの直径BDが示される。角度位置Aにおいて、上位の情報層6におけるビームの直径BDは、均一な透過率を持つ均一に記録された又は書き込まれた領域をカバーする。しかしながら、角度位置Bにおいては、ビームの直径で覆われる領域は書き込まれた部分とヘッダ部分(特に通常それぞれのヘッダ部分Hの最初に設けられるギャップ部分)とを含む。かくして、前記覆われた領域において透過率は均一ではなく、その結果角度位置Bにおいては読み込み又は書き込みのために不適当なレーザのパワーが利用される。
【0016】
本発明の目的は、記録又は読み込みにおける透過特性の相違の余剰効果が減ぜられることが可能な多層記録担体、該担体を製造する方法並びに該多層記録担体に記録する方法及び装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本目的は、請求項1及び請求項3に記載の記録担体、請求項13に記載の製造方法、請求項8に記載の記録方法、及び請求項16に記載の記録装置によって実現される。
【0018】
従って、上位層におけるヘッダ部分と書き込みされる部分との間の遷移が下位層の書き込み及び読み込みに影響を与えないように、ヘッダ部分の前後の位置に記録する又は書き込むための開始及び終了位置がシフトされる。該シフトは、伸長されたギャップ部分が下位層のヘッダ部分において設けられるように、記録動作の間の対応する制御によって実現されても良い。その代替として、例えばディスク製造の間、ヘッダ部分が下位層において伸長されても良く、これも記録セクタのための開始及び停止位置のシフトに帰着する。該ヘッダ部分の伸長は該ヘッダ部分における付加的なミラー領域又はダミーピット構造の提供により得られる。
【0019】
下位層における伸長されたヘッダ又はギャップ部分により、下位層の開始及び停止位置にフォーカスされた場合にレーザビームにより覆われる上位層の領域は、均一な透過率の領域にシフトされることができ、その結果記録セクタを通して正しいレーザパワーが利用されることになる。
【0020】
本発明による方法及び装置の実施例において、前記ヘッダ部分(H)の末端部と前記開始位置との間、及び上位層における前記ヘッダ部分(H)の先端部と前記停止位置との間に配置されたギャップ部分も、所定の距離だけ伸長され、その結果下位の情報層への記録の間の付加的なシフトによって下位層の対応するギャップ部分が前記所定の距離の2倍伸長される。かくしてヘッダの読み込みも変化する読み込みパワーから保護される。上位の情報層におけるギャップ長が下位の情報層における相対的なシフトと同じ距離だけ付加的に伸長された場合には、下位層におけるデータの書き込み及び読み込みは共にヘッダ部分の存在に影響されない。常に書き込まれない領域を通して読み込まれるため、下位層におけるヘッダの読み込みは上位層の状態によって影響を受けない。
【0021】
好ましくは、前記所定の距離は、下位層にフォーカスされる場合の上位層における前記放射ビームの直径の半分と、上位層と下位層との間の許容される整合のずれの最大との和に略等しいかそれ以上に設定される。かくして、情報層が許容される整合ずれの最大に準じて整合がずれている場合においても、上位層におけるレーザビームのビーム直径が下位層の全ての記録又は読み込み動作の間均一な透過率の領域を覆うため、適正な読み込み又は書き込みパワーが依然として利用されることが保証される。前記所定の距離は記録フレーム全体の半分または1つ分の長さ、即ち、DVR形式においては3つ又は6つのウォブルの周期に対応して選択される。これは、製造過程に関して尤もらしい値である最大約60μmという整合のずれを許容する。更に、3つ又は6つのウォブルの周期の選択は、6つのウォブル単位(1つの記録フレームの長さ)に基づいているDVRの形式に良く合致する。これは、チャネル回路が上位層と下位層との間のスイッチングの際に修正される必要がないことを意味する。開始及び停止位置のみが、ヘッダ部分の末端部及び先端部に対して調節される必要がある。
【0022】
本発明は、本発明の好適な実施例に基づいて、添付する図面を参照しながら以下により詳細に説明される。
【0023】
【発明の実施の形態】
好適な実施例が二層光ディスクシステムに基づいて以下に説明され、ここで二層ディスクの形式は、T.Narahara他による「Optical Disc system for Digital Video Recording」(Techn. Digest ISOM/ODS(MD1) 、1999年7月11日〜15日、Kauai Hawaii、SPIE Vol.3864(1999)、50頁〜52頁)及び「Jpn. J. Appl. Phys.」誌 39 Pt.1 No.2B(2000年)の912頁〜919頁における一層ディスク形式に基づいている。
【0024】
図1は二層記録担体1の断面図、及び記録担体1に情報又はデータを書き込むため走査動作を実行する記録ユニット10を示す。記録担体1は、略平行にかつ整合して配置され透明なスペーサ層7によって分離された第1の情報層6及び第2の情報層8を備える、透明な基盤5を持つ。前記記録担体1の本実施例においては2つの情報層のみが示されているが、情報層の数は2より多くても良い。記録ユニット10は、所定の記録又は書き込みパワーの放射ビーム12を生成する例えばダイオードレーザのような放射源11を有する。前記放射ビームは例えば半透明なプレートのようなビームスプリッタ13、及び例えば対物レンズのようなレンズ系14を介して焦点スポット15に形づくられる。矢印16に示したように対物レンズ14をその光学軸に沿って移動することにより、焦点スポット15は所望の情報層6、8のいずれにも位置させることができる。第1の情報層6は部分的に透過的であるため、前記放射ビームはこの層を通して第2の情報層8上にフォーカスされることができる。記録担体1をその中心について回転させることにより、及び情報層の面におけるトラックに対して垂直方向に焦点スポットを移動させることにより、情報層の全ての情報領域が書き込み又は読み込み動作の間焦点スポットによって走査されることができる。情報層によって反射された放射光は記録された情報によって、例えば強度又は偏光方向が変調される。反射された放射光は対物レンズ14及びビームスプリッタ13によって、入射放射光を1つ以上の電気信号へ変換する検出システム17へ導かれる。前記信号の1つ、情報信号は、反射された放射光の変調に関連する変調を持ち、そのため前記信号が読み込まれた情報を表す。他の電気信号は、読み込まれるべきトラックに対する焦点スポット15の位置、及び前記記録担体上の焦点スポット15の位置(即ち、角度及び半径方向の位置)を示す。後者の信号は、焦点スポット15が走査されるべき情報層の面における所望のトラックを追従するように、対物レンズ14の位置、従って情報層の面内及び当該面に垂直方向の焦点スポット15の位置を制御するサーボシステム18に供給される。検出システム17によって検出された反射光の信号レベルに基づいてサーボシステム18を制御する制御ユニット36が具備される。書き込みパワーの制御は検出システム17から、駆動ユニット19を介し、放射源11へのフィードバックによって実行されても良い。更に、記録制御ユニット20が、データ入力に基づき情報層6及び8上への適切な記録を実現するために、記録ユニット10を制御する制御プログラムに従って動作する。特に、書き込みパワーのための最適な初期値を設定する初期OPC手順(initial OPC procedure)のような書き込みパワーの補正手順、及び例えばディスク面上の指紋及び傷によるパワー損失を修正するランニングOPC手順(running−OPC procedure)のような書き込みパワー修正手順が具備されても良い。記録は、例えば記録担体1上に供給されたウォブル信号から記録位置を得るためのウォブル計数器(図示していない)を利用して、記録制御ユニット20によって制御される。
【0025】
本発明は他のディスク構造、例えば読み出しが薄い被覆層を通して実行される間、浮き出しの情報を担持する剛性の担体(rigid career)として基盤が働く構造にも適用できることに留意されたい。更に、図1に示すような単一の対物レンズ14の代わりに2つのレンズを持つ対物レンズが利用されても良い。
【0026】
図2はトラックに沿って見た光ディスク1の二層構造の断面図を示す。図4におけるように、破線の長方形で示した遷移セクションが図2の下部に拡大されて示される。このような相変化型の記録担体(即ち、非晶質のマークが結晶質の周囲に記録される記録担体)においては、予め記録されたヘッダ領域Hは、前記記録担体の書き込みされない位置のかなりの部分を構成する、浮き出しのピットを有する。ヘッダ領域Hの最初におけるミラーマークは、サーボ信号のオフセット制御及び修正のために利用されることができる。特に、ヘッダ領域Hの直前及び直後に位置する溝部分の一部は書き込みされない。これらの部分はそれぞれ、ランインセグメント又はリードインセグメント領域及びリードアウトセグメント又はランアウトセグメント領域と呼ばれる。
【0027】
上位層及び下位層6、8の記録セクタRに記録する又は該記録セクタRから読み込むための開始及び停止位置は、記録制御ユニット20によりウォブル計数部から得られる。ヘッダ領域Hのランインセグメント及びランアウトセグメントにおいては、相変化データによって溝は書き込みされない。DVRシステムにおいては、ランイン(又はランアウト)セグメントは、データが実際に書き込まれる位置の前でギャップ部分によって始まる(又は終わる)。前記ギャップは例えば、例えば記録担体1における上書きのサイクルの数を増やすために用いられる(ランインセグメントにおける)ランダム的な開始位置のシフトのために、及び例えば記録制御ユニット20がウォブル信号から書き込みクロックを得るとき若しくは書き込みが固定されていない結晶のクロックを用いて実行されるときに発生する誤りによって、用いられるビット長が公称の長さよりわずかに長い場合には(ランアウトセグメントにおける)予約されたスペースとして用いられる。前記ギャップ部分の後(又は前)において、ヘッダ領域Hにガードが書き込まれ、該ガードは前の記録からの同期パターンを上書きし回路を安定させる。
【0028】
図2から推測されるように、下位層8におけるヘッダ領域Hにおける記録又は書き込みのための開始及び停止位置は所定の距離Δだけ上位層6に対してシフトされる。従って、第1の層におけるビームが通過する領域は、下位層8にフォーカスされるときのビームの直径BDの範囲内で均一の透過率のものである。このことは、下位層8における斜線で示した部分で示すように下位層8におけるギャップ部分の長さを増やすことにより実現される。
【0029】
図3は、下位層8と上位層6との間の許容される最大の角度又は接線方向の整合のずれMAが、所定の距離Δの決定において考慮されるように示された、同様の断面図を示す。前記許容される最大の位置合わせのずれが考慮されるとき、下位層8におけるヘッダ領域Hにおけるギャップ部分の最小の長さ(MG)は、(1)下位層8(又は2つより多い層を持つ構造の場合には最深の層)にフォーカスされるときの上位層6におけるビームの直径BDの半分と、及び(2)2つの層の間の許容される最大の整合ずれ(ピーク間の位置合わせ誤差T(PP))との和以上である。これは以下の式によって表される。
【0030】
MG ≧ BD/2 + T(PP)
BD = 2 ・ SP ・ tan(asin(NA/n))
ここでNAはレーザビームの開口数(NA)を示し、SPはスペーサ層7の厚さを示す。
【0031】
青色レーザ光を利用し開口数がNA=0.85であるDVR―blueシステムにおいては、30μmのスペーサの厚さSPが利用された場合、最深の層にフォーカスされるときの上位層6におけるビームの直径は約BD=40μmである。これは2つの層が完全に整合されている(T(PP)=0)とき、下位層8において上位層における開始位置と比較してBD/2=20μmだけの開始位置の遅れ(及び同じ距離の停止位置の繰り上げ)を必要とする。この値は、86.7nmのチャネルビット長及び322チャネルビットのウォブル周期の場合は、ウォブル周期の凡そ0.7個分の距離に相当する。ウォブルの周期3個分の距離が選択された場合(即ち付加的なギャップ長)、これは製造過程のために尤もらしい値である、T(PP)=60μmの2つの層6及び8の間のピーク間の整合誤差を残す。更に、DVR形式は6つのウォブル単位又は周期(記録フレーム長)に基づいているため、ランインセグメントにおいて3つのウォブル及びランアウトセグメントにおいて3つのウォブルを利用する選択はDVR形式に良く適している。これは、記録制御ユニット20のチャネル回路がある層から他の層へとスイッチするときに修正される必要がないということを示している。開始及び停止位置のみが、ヘッダ領域Hの末端部及び先端部に対して調節される必要がある。その代わりとして、6つのウォブルの距離も選択されることができる。一般に、所定の距離Δは、利用される記録担体の形式の記録フレーム長の1つ又は半分に対応するように選択されることができる。
【0032】
代替として、ギャップ長を伸長する代わりに、例えば上述したような付加的な(ミラー)領域によって、下位層8におけるヘッダ領域Hを伸長しても良い。後者の場合、物理的な溝構造は上述したものと同じ距離だけ遅れて始まる又は終了する。また他の選択肢として、ヘッダ領域Hは、例えばVFOシーケンス(ヘッダとして用いられるもの)又は例えばランダム的なデータ若しくは交替的な規則的パターンといった他のダミーデータシーケンスのような、ダミーピット構造又はシーケンスによって伸長されることができる。これは、相変化部分(記録セクタR)からヘッダ領域Hへの変化の際に、自動ゲイン制御、AC−カップリング及びPLL(スライサー)回路を正しい値に調節することを助けることができるので、チャネル回路に対して有利になり得る。更に、ミラー領域からは利用されない半径方向の追跡のためのエラー信号(制御信号)を供給するので、追跡サーボシステムに対して有利になり得る。これらの場合においては、図2及び図3の下位層8における斜線で示した部分は、続くヘッダ領域Hの一部である。下位層8のヘッダ領域Hのこの伸長は、記録担体1の製造過程の間の対応するヘッダ領域の形成によって得られる。上述した解決策においては、(浮き出しの)ヘッダ領域Hの読み込みは、上位層8の非均一な透過率のために不正確な読み込みパワーを利用してしまうことから未だ防御されていない。下位層におけるヘッダを読み込むとき、検出されたHF信号は、上位層6のヘッダ領域Hにおける記録セクタRにおける書き込みされたトラックの終了又は開始を通した読み込みによって、レベルの変動を見せる。記録セクション10におけるヘッダのPLLに対するスライサー制御及び駆動ユニット19のAGC(Automatic Gain Control)のバンド幅が十分高く選択されているときには、このことは問題を起こさない。しかしながら、好ましくは、上述したものと同じ距離Δだけ上位層6におけるギャップ長を伸長し、同時に距離Δの2倍だけの全体のシフトが下位層8においてえられ得るような他の距離Δだけ下位層8におけるギャップ長を伸長することにより、上述のレベル変化からヘッダの読み込みを保護するよう選択することができる。この任意のシフトは記録制御ユニット20によって制御される又は起動されることができ、図3において破線の矢印及びギャップ伸長GEで示される。
【0033】
DVRシステムにおいては、好適な選択は、上位層6における3つのウォブル分のギャップ長の伸長GE及び下位層8における総計3+3=6つのウォブル分のギャップ長の伸長を利用するものとなる。これらの選択によれば、下位層8におけるデータ書き込み(及び読み込み)は、上位層6における書き込みされる領域又は書き込みされない領域間の遷移による対応する透過率の相違及びヘッダ領域Hの存在によって影響を受けず(ビームは上位層6の均一な記録状態を通過するため)、下位層8におけるヘッダ読み込みもまた上位層6の記録状態に影響を受けない(常に書き込みされない領域を通して読み込まれるため)。この付加的なギャップの伸長は勿論、代わりに上位層6及び下位層8において、ギャップの伸長が同じであるように、ディスク製造の間に、下位層8におけるヘッダ領域Hを増やすという選択と結合されても良い。
【0034】
本発明は上述の好適な実施例に制限されるものではなく、情報層の1つへの記録動作が他の情報層の透過特性の相違によって影響を受ける、多層の記録担体に記録するあらゆる記録方法において利用されても良いことに留意されたい。特に、情報層の光学設計に関しては多数の代替がある。通常情報層は、高い初期反射を持ち、書き込まれた状態では低い反射を持つように作成される。しかしながら、相反するコントラスト、即ち「ホワイトライティング」と呼ばれる層によって情報層を利用することも可能である。同様に、代替の情報層の設計によって、書き込まれた状態の透過率が書き込みされない状態の透過率よりも低くなっても良い。かくして好適な実施例は添付した請求項の範囲内で変更しても良い。更に、「有する」という語とその語形変化は、請求項に列挙されたステップ又は要素以外のステップ又は要素の存在を除外しない。請求項における括弧で囲まれたどの参照記号も請求を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】好適な実施例による二層記録担体の断面図及び記録ユニットのブロック図である。
【図2】好適な実施例による二層記録担体の、層構造を示す断面図である。
【図3】層の整合ずれを伴った二層記録担体及び好適な実施例による上位層における任意の付加的なギャップの伸長の断面図である。
【図4】二層光ディスクにおける層構造の断面図である。

Claims (14)

  1. 放射ビームの照射により記録されるのに適した少なくとも2つの略平行かつ略整合された情報層を有する多層記録担体であって、前記多層記録担体は前記少なくとも2つの情報層に配置された所定の記録セグメントを有し、前記セグメントはヘッダ部によって分離されており、記録領域がヘッダ部の先端部の所定の停止位置で終わり、ヘッダ部の末端部の所定の開始位置で始まる多層記録担体であって、
    下位層においては前記開始位置及び前記停止位置は、上位層に対してそれぞれより後ろの位置に及びより前の位置に所定の距離だけシフトされており、
    前記所定の距離は、前記放射ビームが前記下位層の前記開始又は前記停止位置にフォーカスされるときのビームの直径の範囲で均一な透過率を持つように、前記上位層において前記放射ビームが通過する領域が選択されることを特徴とする多層記録担体。
  2. 前記上位層においてギャップ部が前記ヘッダ部の末端部と前記開始位置との間、又は前記ヘッダ部の先端部と前記停止位置との間に配置され、前記下位層における対応するギャップ部が前記所定の距離の2倍だけ伸長されるように、前記所定の距離だけ前記ギャップ部が伸長される、請求項1に記載の記録担体。
  3. 放射ビームの照射により記録されるのに適した少なくとも2つの略平行かつ略整合された情報層を有する多層記録担体であって、前記多層記録担体は前記少なくとも2つの情報層に配置された所定の記録セグメントを有し、前記セグメントはヘッダ部によって分離されており、記録領域がヘッダ部の先端部の所定の停止位置で終わり、ヘッダ部の末端部の所定の開始位置で始まる多層記録担体であって、下位層においては前記ヘッダ部の前記先端部及び末端部は、上位層に対してそれぞれより前の位置に及びより後ろの位置に所定の距離だけシフトされており、
    前記所定の距離は、前記放射ビームが前記下位層の前記開始又は前記停止位置にフォーカスされるときのビームの直径の範囲で均一な透過率を持つように、前記上位層において前記放射ビームが通過する領域が選択されることを特徴とする多層記録担体。
  4. 前記ヘッダ部の先端部及び末端部の前記シフトは、前記ヘッダ部におけるダミーのピット構造の具備又はミラー領域の具備により得られる、請求項3に記載の記録担体。
  5. 前記所定の距離は、前記下位層にフォーカスされるときの前記上位層における前記放射ビームの直径の半分と、前記上位層と前記下位層との間の許容される最大の整合ずれとの和に略等しいかそれ以上に設定される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の記録担体。
  6. 前記所定の距離は記録フレームの1つ又は半分に対応する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の記録担体。
  7. 放射ビームによって記録担体を照射することによる多層記録担体への情報の記録の方法であって、前記多層記録担体が少なくとも2つの略平行かつ略整合された情報層を有し、
    前記少なくとも2つの情報層のヘッダ部によって分離されている所定のセグメントに前記情報を記録するステップ、前記ヘッダ部の先端部の所定の停止位置において前記情報の記録を停止するステップ、及び前記ヘッダ部の末端部の所定の開始位置において前記記録を開始するステップとを有する方法であって、
    前記下位層において、前記上位層に対して前記開始位置をより後ろの位置に、及び前記停止位置をより前の位置に所定の距離だけシフトするステップと、
    前記上位層において前記放射ビームが通過する領域が、前記放射ビームが前記下位層の前記開始又は前記停止位置にフォーカスされるときのビームの直径の範囲内で均一な透過性となるように前記所定の距離を設定するステップとをも有することを特徴とする方法。
  8. 前記下位層において対応するギャップ部が前記所定の距離の2倍だけ伸長されるように、前記ヘッダ部の末端部と前記開始位置との間又は前記ヘッダ部の先端部と前記停止位置との間に配置されたギャップ部を前記上位層に対して前記所定の距離だけ伸長するステップをも有する、請求項7に記載の方法。
  9. 前記所定の距離は、前記下位層にフォーカスされるときの前記上位層における前記放射ビームの直径の半分と、前記上位層と前記下位層との間の許容される最大の整合ずれとの和に等しいかそれ以上に設定される、請求項7又は8に記載の方法。
  10. 前記所定の距離は記録フレームの1つ又は半分に対応する、請求項7ないし9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 少なくとも2つの略平行かつ略整合された情報層を有する多層記録担体を製造する方法であって、
    前記少なくとも2つの情報層に記録セグメントを分離する所定のヘッダ部を形成するステップを有する方法において、
    前記少なくとも2つの情報層の下位層において、前記ヘッダ部の末端部が前記少なくとも2つの情報層の上位層に対してより後ろの位置に、及び前記ヘッダ部の先端部が前記少なくとも2つの情報層の上位層に対してより前の位置に、所定の距離だけシフトされるように、前記ヘッダ部を形成するステップと、
    前記上位層において前記記録担体に記録又は読み込みするために用いられる前記放射ビームが通過する領域が、前記放射ビームが前記下位層の前記記録セグメントの開始又は停止位置にフォーカスされるときのビームの直径の範囲内で均一な透過性となるように前記所定の距離を設定するステップとを有することを特徴とする方法。
  12. 前記ヘッダ部の先端部及び末端部の前記シフトは、前記ヘッダ部におけるダミーのピット構造の具備又はミラー領域の具備により得られる、請求項11に記載の方法。
  13. 多層記録担体に情報を記録する記録装置であって、前記記録担体は少なくとも2つの略平行かつ略整合された情報層を有し、
    前記装置は放射ビームを供給する放射源と、
    放射ビームにより前記記録担体を照射することにより前記少なくとも2つの情報層のヘッダ部によって分離されている所定のセグメントに前記情報を記録する記録手段と、
    前記ヘッダ部の先端部の所定の停止位置において前記情報の前記記録を停止し、前記ヘッダ部の末端部の所定の開始位置において前記記録を開始する制御手段とを有する記録装置であって、
    前記制御手段は下位層において前記開始位置をより後ろの位置に、及び前記停止位置をより前の位置に、上位層に対して所定の距離だけシフトし、
    前記上位層において前記放射ビームが通過する領域が、前記放射ビームが前記下位層の前記開始又は前記停止位置にフォーカスされるときのビームの直径の範囲内で均一な透過性となるように前記所定の距離が設定されることを特徴とする記録装置。
  14. 前記制御手段は、前記下位層において対応するギャップ部が前記所定の距離の2倍だけ伸長されるように、前記ヘッダ部の末端部と前記開始位置との間又は前記ヘッダ部の先端部と前記停止位置との間に配置されたギャップ部を前記上位層において前記所定の距離だけ伸長するように構成される、請求項13に記載の装置。
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