JP2009037705A - 情報記録媒体及び情報記録再生装置並びに情報記録再生方法 - Google Patents

情報記録媒体及び情報記録再生装置並びに情報記録再生方法 Download PDF

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Abstract

【課題】記録再生装置側における球面収差補正を考慮し、3以上の記録層を持つ情報記録媒体の光透過層の厚みを最適化する。
【解決手段】 この発明は、基板(101)上に、複数の情報記録層を相互に光透過性を有する中間層を挟んで積層し、更にその上に光透過層を積層する光ディスク(100)において、ディスク表面と情報記録層のディスク表面からの厚みの標準値から最も離れた情報記録層(106)または(102)との間の厚みと屈折率が、情報記録層のディスク表面からの厚みの標準値から最も離れた情報記録層までの全ての光透過層と中間層とに許容される収差が上限となる標準値に対して±37μmの範囲、前記屈折率が1.5〜1.7の範囲に、それぞれに設定され、前記光透過層に入射するレーザ光を照射するレンズの開口数が0.65であり、前記レーザの波長が395〜415nmであることを特徴とする光ディスク(100)である。
【選択図】 図1

Description

この発明は、高密度記録が可能な光ディスク及び光ディスク装置に関する。
情報の記録、再生ならびに消去(繰り返し記録)に適した記録媒体として、光ディスクが広く利用されている。既に、様々な規格の光ディスクが実用化されており、記録容量で区別すると、CD(Compact Disc)規格やDVD(Digital Versatile Disc)規格に分類される。また、用途(データ記録形式)から見た場合、既に情報が記録されている(ROMと呼称される)再生専用タイプ、1回限りの情報記録が可能な(−Rと呼称される)ライトワンスタイプ(追記型)、あるいは記録と消去が繰り返し可能な(RAMまたはRWと呼称される)リライタブルタイプ(録再型または書換可能型)等に区分される。
近年、DVD規格の光ディスクよりも情報の高密度記録が可能な次世代光ディスクとして、片面1層で15 GB以上の容量を有するHD(High Definition) DVD規格が実用化されている。HD DVD 規格の単層ディスクでは、0.6mm厚の透明基板上に情報記録層を形成し、レーザ光を透明基板を透過し情報記録面上に集光させることにより、情報の記録や再生を行う構成となっている。
また、市場における更なる記録容量の大容量化の要求に伴い、記録層を3層以上とした多層ディスクも提案されている。多層ディスクでは、基板上に複数の情報記録層が相互間に光透過性を有する中間層を挟んで積層されており、更にその上が透明基板で覆われている。そのため、多層ディスクにおいて、対物レンズから見て奥の情報記録層を再生する際には、透明基板、情報記録層、中間層を透過することになる。なお、単層のHD DVD規格やDVD規格の光ディスクにおいても、光透過層の厚みは0.6mmを基準としているが、実際には、ディスクに製造上厚みのばらつきが生じることは避けられない。
HD DVD規格やDVD規格の光ディスクを再生する光学系は、光透過層の厚みを0.6mmとして設計しているため、光透過層の厚みが0.6mmからずれると収差が発生する。収差が発生した結果、集光スポット径が大きくなり信号の再生品位が低下することはいうまでもない。
記録層が2層以上の多層ディスクにおいては、情報記録層と情報記録層の間に中間層が必要であるため、必然的に、何れかのの情報記録層における光透過層の厚みが0.6mmと異なる。つまり、多層ディスクを再生する際には、何れかの情報記録層において、必ず収差が発生するが、光ディスクから再生される信号の再生品位を確保するためには、全ての情報記録層において、光透過層に起因する収差量をある一定値以下にすることが必要となる。また、光透過層に起因する光学系の収差は、光透過層の厚みの標準値からのずれと、光透過層の屈折率の標準値からのずれの、両者によって決まる。従って、光透過層に起因する光学系の収差を一定値以下にするためには、光透過層の厚みと光透過層の屈折率の、2次元の範囲を規定する必要がある。
特許文献1には、多層の情報記録層を有する光ディスクにおいて、光透過層の厚みとして、標準厚みから±22μm以内に設定することを規定している。つまり、標準厚みを0.6mmとすると、光透過層の厚みは、0.578mm〜0.622mmの厚みに設定される。
特許文献2には、3層以上の多層ディスクにおいては、それぞれの情報記録層と情報記録層の間の中間層厚の厚みは、標準偏差が1.0μmである際、5μm以上異なることが必要である、ことが記載されている。
一方、光ディスクからの戻り光を光検出器で受光する際、光を集光している情報再生層(以後、再生層と記載する)以外の層(以後、非再生層と記載する)からの戻り光により再生信号が劣化する問題(以後、層間クロストークと記載する)が発生する。ここで、光検出器の受光面上での非再生層のスポットの半径は中間層厚に比例するため、中間層厚が狭くなるほど、非再生層からの影響が大きくなり、再生信号が劣化する。そのため、中間層厚は最低でも15μm以上の厚みが必要となることが報告されている(特許文献3)。
特開2005−267849 特開2007−80303 特開2006−313585
上述特許文献1では、光透過層の厚みは標準厚みに対して±22μmの範囲とすることを規定している。反面、特許文献3の記載を参照すれば、3層以上の多層ディスクにおいて、文献1と文献3の記載を両立することは、製造誤差等を考慮すると、事実上、困難である。
この発明の目的は、記録再生装置側における球面収差補正を考慮し、光透過層の厚みを規定することで光透過層の厚みを従来よりも広くすることが可能な情報記録媒体及び情報記録再生装置並びに情報記録再生方法を提供することである。
この発明は、上記問題点に基づきなされたもので、基板上に、複数の情報記録層を相互に光透過性を有する中間層を挟んで積層し、更にその上に光透過層を積層する光ディスクにおいて、ディスク表面と情報記録層のディスク表面からの厚みの標準値から最も離れた情報記録層との間の厚みと屈折率が、情報記録層のディスク表面からの厚みの標準値から最も離れた情報記録層までの全ての光透過層と中間層とに許容される収差が上限となる標準値に対して±37μmの範囲に、前記屈折率が1.5〜1.7の範囲に、それぞれ設定され、前記光透過層に入射するレーザ光を照射するレンズの開口数が0.65であり、前記レーザの波長が395〜415nmであることを特徴とする光ディスクを提供するものである。
本提案によれば、液晶素子による球面収差補正機構を搭載した光ヘッド装置を想定し、記録媒体すなわち光ディスクの光透過層の厚さと光透過層の屈折率を規定することで、記録層の数が3以上の多層光ディスクに適用可能な光透過層の厚さの範囲を、光ディスクが容易に製造可能な範囲とすることが可能となる。
すなわち、記録層の数が3以上の多層光ディスクにおいて、情報記録層相互の間に規定される中間層の厚さとトレードオフの関係にある層間クロストークの大きさを、再生信号の劣化の程度が許容可能な程度に維持しながら、球面収差の発生により再生信号の劣化を抑えることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態が適用可能な片面3層光ディスクの構成を示す。
光ディスク100は、外径120mm、内径15mm、総厚1.2mm±0.03mmの円盤状に形成され、CD(Compact Disc)規格の光ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)規格またはHD(High Definition) DVD規格の光ディスク、もしくはBlu−ray Disc(登録商標)と同じ寸法である。なお、図1に示す光ディスク100は、好ましくは、ピット列(マーク列)の間隔が0.34〜0.44μmで、最小記録マーク長(minimum mark length)が0.187〜0.208μmに規定されたHD DVD規格の光ディスクである。また、光ディスクとしては、CD規格、DVD規格、Blu−ray Diskであっても良く、記録密度(ピット列の間隔)も、より高密度、または低密度のパターンでもよい。もちろん、外径が80mm程度に抑えられた小径ディスクでもよい。
図1に示す光ディスク100は、図2を用いて後段に説明する光ピックアップ(PUH=pick up head)10の対物レンズ(OL)16から照射されるレーザ光LBの入射面IF側にポリカーボネートから成る第1の成形板101を有する。
第1の成形板101の入射面IFと反対側の面には、0.40μmのピッチで、ピット(記録マーク)列がスパイラル状に形成されている。なお、ピット列は、予め情報として用意された凹凸パターン(ピット)である。また、ピット列(情報)は、最短長(最小記録マーク長)が0.204μmのピットを、少なくとも含む。なお、第1の成形板101は、レーザ光LBの波長に対して透光性を有する。
入射面IFと反対側の第1の成形板101の表面には、第1の半透過膜102が設けられている。すなわち、ピット列及び第1の半透過膜102によって、第1の情報記録層L0が構成されている(定義される)。
第1の半透過膜102には、第1の中間層103が設けられている。入射面IFと反対側の第1の中間層103には、第1の情報記録層L0と同様、情報を示すピット列(凹凸パターン)が、スパイラル状に設けられている。
第1の中間層103のピット列が形成された面には、金属で構成された第2の半透過膜104が設けられている。すなわち、ピット列および第2の半透過膜104によって第2の情報記録層L1が構成されている(定義される)。
第2の半透過膜104には、第2の中間層105が設けられている。入射面IFと反対側の第2の中間層105(第2の中間層105のピット列が形成された面)には、金属で構成された反射膜106が設けられている。
反射膜106上(入射面IFと反対側)には、ポリカーボネートから成る第2の成形板(カバー層)107が設けられている。
入射面IF側の第2の成形板107の表面には、第1の情報記録層L0、第2の情報記録層L1と同様、ピット列(凹凸パターン)により、情報が記録されている。すなわち、ピット列および反射膜106によって、第3の情報記録層L2が構成されている(定義される)。
なお、第1の情報記録層L0には、情報(ピット列)が、内周側から外周側に向かって記録されている。また、第2の情報記録層L1には、情報(ピット列)が、外周側から内周側に向かって記録されている。第3の情報記録層L2には、情報(ピット列)が、内周側から外周側に向かって記録されている。
このように、情報記録層毎に、光ディスク100の半径方向の情報の記録方向を変えることによって、再生(記録)時、光ディスクを同じ方向に回転させたまま、第1の情報記録層L0−第2の情報記録層L1−第3の情報記録層L2を、連続的に再生(記録)することができる。なお、情報(ピット列)は、全ての情報記録層において、内周側から外周側に向かって記録されていても良いことはいうまでもない。
上述した光ディスク100の各情報記録層L0〜L2に記録された情報は、波長λが、例えば405nmの再生光(レーザ光LB)、およびNA(numerical aperture)と呼ばれる開口数が、NA=0.65の対物レンズ(OL)16を用いて再生される。
すなわち、光ディスク100の光入射面IFに照射されたレーザ光LBを、対物レンズ(OL)16を介して任意の情報記録層L0〜L2に集光させることで、集光された情報記録層に記録されている情報を再生することができる。
なお、光ディスク100は、上述した形態に限られるわけではなく、4層以上の情報記録層を持ってもよい。また、有機色素を用いた追記型光ディスクや、無機記録膜(相変化膜)を用いた書換可能型の光ディスクでもよい。追記型光ディスクや無機記録膜の場合、第1の成形板101、第1の中間層103、第2の成形板107には、螺旋状のグルーブ(案内溝)が設けられることによって、凹凸パターンが形成されている。
グルーブは、一定の周期で、半径方向に正弦波状に蛇行している(ウォブリング)。ウォブリングを再生して得られる信号(ウォブル信号)に基づいて、データ書き込み時のタイミングクロックが生成される。なお、グルーブとグルーブとの間の凸の部分は、ランドと呼ばれる。
なお、光ディスク100が、Ge−Sb−Te系の相変化膜を用いた書換可能型である場合、グルーブ上およびランド上の相変化膜に、それぞれ、情報が記録可能である。
また、本提案では、所望の情報記録層に集光する前に、対物レンズ(OL)からの光が透過する層を光透過層と呼ぶことにする。すなわち、多層ディスクにおいて、対物レンズから見て最も奥の情報記録層については、透明基板、情報記録層及び中間層が光透過層となり、対物レンズから見て最も手前の層については、透明基板のみが光透過層となる。従って、単層ディスクについては、光透過層は、透明基板のみとなる。
ところで、光透過層の標準厚みからのずれにより発生する球面収差を補正する方法としては、エキスパンダレンズを挿入する方法、コリメートレンズを駆動する方法、あるいは液晶素子を用いて補正する方法が一般的である。ここで、エキスパンダレンズを挿入する方法及びコリメートレンズを駆動する方法は、光透過層の標準厚みからのずれにより発生した収差をほぼ全て補正することが可能であるが、レンズ駆動機構が必要であるため、光ヘッドが大きくなることはいうまでもない。
一方、液晶素子を用いて収差を補正する場合には、レンズ駆動装置が不要であるから、特にスリムドライブ用の光ヘッド装置に適している。しかし、光透過層の標準厚みにより発生する収差を全て補正することは難しく、しかも、液晶素子の収差補正パターンの中心位置と対物レンズの中心位置のずれにより、収差の程度が悪化することを考慮しなければならない。
上述のように、液晶素子を用いて収差補正した際の残留収差は、エキスパンダレンズやコリメートレンズを用いる場合に比較して、大きい。このことは、液晶素子を用いて収差補正した際にも、収差の大きさが一定値以下であるような光透過層の厚みと屈折率を規定することにより、エキスパンダレンズやコリメートレンズを駆動する方法においても、光透過層に起因する収差の程度を一定の大きさに抑えることができることを示している。
図2は、図1に示した光ディスクから情報を再生する光ディスク装置の一例を示す。
図2に示す光ディスク装置においては、光ヘッド装置(ピックアップヘッド=PUH)10の光源である半導体レーザ(LD)11からの波長395〜415nm、好ましくは405nmの出射光すなわちレーザ光LBは、コリメートレンズ(CL)12により、平行光となる。
平行光となったレーザ光LBは、偏光ビームスプリッタ(PBS)13、収差補正用の液晶素子(LCD=Liquid Crystal Device)14、λ/4板(QWP(Quarter wave plate)15を透過し、NAが0.6〜0.7の対物レンズ(OL)16に入射し、対物レンズ16により収束され、光ディスク100の任意の情報記録層L0,L1,L2のいずれかに集光する。
光ディスク100の所定の情報記録層(L0,L1,L2のいずれか)により反射した反射光(反射レーザ光)は、前に説明(定義)した光透過層、対物レンズ16、QWP15、液晶素子14を透過し、偏光ビームスプリッタ13により反射する。
偏光ビームスプリッタ13で反射した反射レーザ光は、集光レンズ(FL)18により収束光となり、光検出器19に入射する。
光検出器19の受光部は、詳述しないが、複数の領域に分割されており、それぞれの受光部から光強度に応じた電流を出力する。
光検出器19から出力された電流は、図示しないI/Vアンプにより、電流−電圧変換され、演算部(信号処理部)20により、フォーカス誤差信号やトラッキング誤差信号といったサーボ誤差信号及びRF信号に、演算処理される。
これらのサーボ誤差信号に基づき、レンズ駆動コイル(アクチュエータ)17に、対物レンズ16のフォーカス制御(レンズの光軸方向すなわちレンズと光ディスクとの間の距離の制御)及びトラッキング制御(光ディスクの半径方向に対するレンズの制御)を行うための駆動電流が供給される。
このフォーカス制御及びトラッキング制御により、光ディスク100の所望の情報記録層の目標トラック(もしくはピット列)に、対物レンズ16からの出射光(レーザ光)が集光される。
ところで、光ディスク装置に用いられるコリメートレンズ(CL)12及び対物レンズ(OL)16は、光透過層101(図1の例)の厚みが標準値(例えば0.600mm)の際にもっとも収差が少なくなるよう設計されている。
そのため、光透過層101の厚みが標準値からずれている場合、光透過層の厚み誤差に起因する球面収差が生じる。球面収差により、情報記録層上での集光スポットが広がり、結果的に、サーボ信号及びRF信号の品位が落ちるため、安定かつ正確な記録再生が困難となる。
ところで、光透過層の厚み若しくは屈折率あるいはその両者が標準値からずれた場合に発生する収差は、主に3次の球面収差である。
そのため、液晶素子14(図2)を用いて、3次の球面収差の補正を行う。
3次の球面収差SAは、半径をρとすると、
SA = 6ρ−6ρ+1
と表現される。
図4は、半径(ρ)と球面収差の関係を示す。
図4から明らかなように、球面収差は、半径を「1」として規格化した(−1〜0〜1を考える)場合、位相量(位相値)は、最大値を「1」として正規化すると「−0.5〜0〜1(符号を逆向きとした場合、−1〜0〜0.5)」で表すことができる。
図4において、位相値が「−0.5〜0」の範囲を[A]、同「0.5〜1」の範囲を[B]、同「0〜0.5」の範囲を[C]とすると、液晶素子14には、図5に示すように、一般的な球面収差補正パターンとして、領域[C]に対して、領域[A]の位相を進め(遅らせ)、領域[A]の位相を遅らせる(進める)ことで、3次の球面収差を補正することができる。
ところが、対物レンズ(OL)16のシフト(レンズシフト)により、光透過層101に起因する収差と液晶のパターンがずれ、コマ収差及び非点収差が発生する。そのため、許容できる光透過層の厚み誤差を求めるためには、対物レンズ16のレンズシフト量を求める必要がある。
光ディスク100の偏心(内径と回転中心のずれ)は、HD DVD規格で最大0.070mmと規定されている。レンズシフトの最大値は、ディスクの偏心、ディスクモータの回転中心とディスクの回転中心とのずれ、及びフィードの遅れにより決まる。
偏心の最大値を70μm、チャッキングずれ(ディスクモータの回転中心とディスクの回転中心とのずれ)の最大値を50μm、フィードの遅れの最大値を60μmとして、二乗平均を計算すると、
√(4900+2500+3600)≒105μm
となる。
従って、対物レンズ16のレンズシフトの最大値として、105μmを、見込む必要がある。
以上の条件を踏まえて、光透過層の厚みを標準値から増加させた際の計算機による収差のシミュレーションを行った結果を、図6に示す。なお、光源(LD)11の出力レーザ光の波長は405nm、対物レンズ(OL)16のNAは0.65、対物レンズ16の入射面でのビーム径はφ2.4<<μm>>である。また、対物レンズ16は、光透過層101の厚みが0.6mm、同101の屈折率が1.62で、収差が最良になるよう設計されているものとする。
ディスク100の基板101の屈折率は、1.62としている。ディスクの中間層の屈折率は、基板の屈折率+0.0−0.15の範囲と規格で規定されており、基板の屈折率と同じとしている(中間層の厚みは基板厚みに対して薄いため、基板の屈折率より小さくなったとしても、収差に対する寄与は小さい)。また、情報記録層は数十nmと非常に薄く収差への寄与は小さいため、無視している。
収差補正が無い場合、ディスク(光透過層)の厚みに対する収差は、曲線[D]に示すように『2.3mλ/μm(y=2.3x)』となる。
これに対し、液晶素子14により収差補正を行い、対物レンズ16のレンズシフト量が105μmである場合の収差は、曲線[E]に示すように『1.35mλ/μm(y=1.35x)』である。
以上から、収差の基準値を50mλ(標準値)とすると、『50mλ/(1.35mλ/μm)=37μm』が、許容厚み誤差(多層光ディスクの中間層の厚みの誤差として許容される値)となる。
同様に、光透過層の厚みを標準値から減少させた際の計算機による収差のシミュレーションを行った結果を、図7に示す。
収差補正が無い場合、ディスク(光透過層)の厚みに対する収差は、曲線[F]に示すように『2.28mλ/μm(y=−2.28x)』となる。
これに対し、液晶素子14により収差補正を行い、対物レンズ16のレンズシフト量が105μmである場合の収差は、曲線[G]に示すように『1.36mλ/μm(y=−1.36x)』である。
以上から、収差の基準値を50mλ(標準値)とすると、『50mλ/(1.36mλ/μm)=37μm』が、許容厚み誤差(多層光ディスクの中間層の厚みの誤差として許容される値)となる。
なお、光ディスク100の光透過層101の屈折率nを「1.50」〜「1.70」の範囲で変化させ、上記同様のシミュレーションを行い収差が50mλ以下となる光透過層の厚みを計算した結果が図3に示した範囲となる。
従って、残留収差量を一定とするためには、屈折率がレンズの設計時の想定値よりも大きくなる方向及び小さくなる方向のいずれの場合においても、光透過層の厚みを、標準値よりも増加させた方が良いことが分かる。結論として、光透過層の厚みが図3の範囲内であれば、十分な再生信号品位が得られる。なお、図3において、許容される厚みの範囲としては、図6に示したシミュレーション結果に基づき、±37μmとしていることはいうまでもない。
図8は、図3で示した光ディスクの光透過層の厚みと屈折率について、光透過層の厚みを一定値とした例を示す。
図8に示す範囲について、製品(完成した光ディスク)の検査の容易さ(検査工程)を考えるとき、屈折率及び厚みのそれぞれについて上限値と下限値の間に入っているかどうかの判断のみで、検査を行うことができる。これに対し、図3の範囲を用いて光ディスクの検査をするためには、光透過層の屈折率及び厚みを共に検査し、図3と屈折率及び厚みを参照する必要がある。従って、図8に示す範囲を製品管理領域とする場合、検査工程は大幅に簡略化できる。
図9は、図3に示した光透過層の屈折率nを「1.57」〜「1.70」の範囲に変更する例を示している。すなわち、図9に示すように、屈折率の下限が実用上支障のない光ディスクに制限することにより、図8により説明したと同様に、検査工程を大幅に簡素化できる。
図10は、図9に示したと同様に、光透過層の屈折率nを「1.57」〜「1.70」に制限し、光透過層の厚みの範囲を、標準値である0.6mm(600μm)に対して、−37μm〜37μmとする例を示している。すなわち、図10に示す範囲を製品管理領域とすることにより、検査工程はより大幅に簡略化できる。
図11は、図10に示したと同様に、光透過層の厚みを、標準値である0.6mm(600μm)に対して、−37μm〜37μmで管理するとともに、屈折率nを「1.53」〜「1.64」に制限する例を示す。すなわち、図11に示す範囲を製品管理領域とすることにより、検査工程はより一層大幅に簡略化できる。より詳細には、屈折率及び厚みのそれぞれについて上限値と下限値の間に入っているかどうかの判断のみで、検査を行うことができる。
なお、本提案の多層光ディスクにおいては、図12〜図25を用いて以下に説明する通り、個々の情報記録層L0(レイヤ0),L1(レイヤ1),L2(レイヤ2)におけるデータセグメント内の各物理セクタ内のデータIDに、レイヤ番号の他に拡張レイヤ番号を含ませることにより、簡単な処理で信頼性高くレイヤ判別をすることができ、さらに管理情報ビットの削減により、相対的にユーザデータ容量を増加することができる。
図12は、光ディスク100の各レイヤ(情報記録層L0,L1,L2)のレイアウト例を説明する図である。
ここで、読み取り用の光の入射側からみて最も奥の層であるレイヤ2の最内周側にBCA(Burst cutting area)が形成されている。BCA(領域)には、ディスク100の基板の溝や、反射膜の剥離、記録媒体の変化等によってBCAマークがあらかじめ記録されている。BCAマークは、光ディスク100の円周方向に変調されており、半径方向には同一の情報が並ぶ櫛型のマークである。BCAコードは、RZ変調方法により変調されて記録される。パルス幅が狭い(=反射率の低い)パルスは、この変調されたBCAコードのチャネルクロック幅の半分よりも狭い必要がある。また、BCAマークは、半径方向に同一の形状を持っているため、トラッキングをかける必要がなく、フォーカスをかけただけで情報の再生が可能となる。最も奥のレイヤ2のみにBCA領域が配置され、そのほかのレイヤに配置されていないのは、他のレイヤに記録したBCAマークがその他のレイヤのBCAマークに影響を与えるのを避けるためである。BCA領域は、レイヤ間の光学的干渉が強いため、一つ以上の層にBCAマークを記録すると、互いの干渉が大きくなりBCA領域の再生が困難になる。BCAマークにはディスクの識別情報が記録されているため、光ディスク装置は、まずBCAの情報を再生する必要がある。このように、レイヤ2(L2)のみにBCAマークを配置したことで、ディスクの認識が高速、高信頼性になるという特徴がある。
光入射側に最も近いレイヤ0(L0)は、内周側からシステムリードイン領域、コネクション領域、データリードイン領域、データ領域、外周ミドル領域で構成されている。次に、レイヤ1(L1)は、ディスクの内周側から、システムミドル領域、コネクション領域、内周ミドル領域、データ領域、外周ミドル領域で構成されている。最後に、レイヤ1は、内周側からBCA領域、システムミドル領域、コネクション領域、内周ミドル領域、データ領域、データリードアウト領域で構成されている。
システムリードイン領域には、エンボスピットで情報が記録されている。この情報は、ディスクの識別情報やデータ領域の容量といった、光ディスク100の管理情報である。また、この領域のエンボスピットの最短マーク長は、データ領域の最短マーク長よりも長くなっている。この結果、データ領域に記録されたデータは、PRML方式を用いて再生されるが、システムリードイン領域においては、スライス方式を用いても情報の復調が可能となる。その結果、管理情報の読み出しに関しては、従来の記録密度の低い他フォーマットとの互換が取れるため、ディスク100の識別等が高速化されるという特徴がある。また、システムミドル領域も、システムリードイン領域と同様の密度で情報が記録されている。
コネクション領域は、ピットもグルーブも形成されていない領域である。この領域は、記録密度の異なる領域、すなわち、システムリードイン領域やシステムミドル領域とデータリードイン領域や内周ミドル領域の接続のための領域である。マスタリング装置や、光ディスク装置は、この領域で再生速度等、再生のためのパラメータを切り替える。
データリードイン領域、内周ミドル領域、外周ミドル領域は、データ領域と同じ密度の信号が記録され、トラッキングサーボ等のオーバーラン領域として使用されるほか、追記型、書換え型の光ディスクでは、それぞれ、追記、書換えが可能な管理情報記録領域として使用される。また、コネクション領域には、ピット等が配置されておらず光学的な特徴がその他の領域と異なるため、コネクション領域と重なった他の層のピットは、再生安定性が低いという問題がある。そこで、データリードイン領域、内周ミドル領域、外周ミドル領域をバッファー領域として用いることで、他の層のコネクション領域からのクロストークにより、データ領域の読み取り安定性が低下すること防ぐことを目的として配置されている。従って、内周のミドル領域は最低でも800ブロック以上のデータセグメントを割り当てる必要がある。
データ領域には、映像データやユーザデータといったデータが保存される。
本実施の形態の光ディスクでは、BCA領域とコネクション領域を除くすべての領域でピットもしくは案内溝で形成された連続したスパイラル状のトラックを有している。レイヤ0ではデータリードイン領域から外周ミドル領域まで途切れることのないトラックが形成されており、スパイラル形状を有している。ここで、ディスクを光入射方向から見て反時計回りに回転させて読み出しを行った場合、内周から外周に向かって、読み取り用の集光スポットは走査されるようにスパイラルが形成されている。
同様に、レイヤ1(L1)では、外周ミドル領域から内周ミドル領域まで途切れることのないトラックが形成されており、レイヤ0(L0)とは、逆の方向のスパイラル形状を有している。すなわち、ディスクを光入射方向から見て反時計回りに回転させて読み出しを行った場合、外周から内周に向かって、読み取り用の集光スポットは走査される。
同様に、レイヤ2(L2)では、内周ミドル領域からデータリードアウト領域まで途切れることのないトラックが形成されており、レイヤ0(L0)と同じ方向のスパイラル形状を有している。すなわち、ディスクを光入射方向から見て反時計回りに回転させて読み出しを行った場合、内周から外周に向かって、読み取り用の集光スポットは走査される。
光ディスク100の中心からみて、レイヤ0(L0)のデータ領域の最外周位置とレイヤ1のデータ領域の最外周位置のずれは0.5mm以内である。同様に、レイヤ1(L1)のデータ領域の最内周位置とレイヤ2(L2)のデータ領域の最内周位置のずれも0.5mm以内である。
このように本実施形態のディスクではトラックのスパイラルの方向を各層で交互に配置し、データ領域の切り替わり位置を制限することにより、層をまたいで連続したデータを高速に読み出すことが可能となっている。
本実施形態の光ディスク100には、再生のみが可能な再生専用型(ROMタイプ)、情報の記録が一回だけ可能な追記型(±Rタイプ)、情報の書き換えが可能な書き換え型(±RWタイプあるいはRAMタイプ)の3つのタイプが存在する。いずれも、回転制御方式はCLV方式である。CLV方式とは、Constant liner velocityの略で、線方向の速度を一定に保った回転制御方法を意味している。また、記録されるデータは、ETM(Eight to Twelve Modulation)方式で変調されている。これは、情報ビット8ビットごとに、冗長性を持たせた12ビットのチャネルビットに変換して、信号を記録する方式である。この冗長性を持たせた事により、直接情報ビットを光ディスクに記録する場合に比べ情報の記録再生の信頼度が飛躍的に向上している。
図13に本実施形態の光ディスクの物理的な特徴を示す。本実施形態の光ディスクのデータ領域に保存可能なユーザデータの容量は、1レイヤあたり約17GB、ディスクあたり約51GBである。また、405nmの波長で観測した場合、各レイヤ(L0,L1,L2)の反射率はそれぞれ8%から18%の範囲に収まっている。連続したピット、もしくは案内溝で形成されたトラックのピッチは0.40μmである。また、データ領域、データリードイン領域、データリードアウト領域、外周及び内周ミドル領域に記録されるデータのチャネルビット長は、0.090μmである。システムリードイン及びシステムミドル領域では、前述のようにチャネルビット長が長くなっており、0.204μmとなっている。データ領域、データリードイン領域、データリードアウト領域、外周及び内周ミドル領域における標準記録再生線速度は5.83m/sである。一方、システムリードイン及びシステムミドル領域では、6.61m/sとしている。
この結果、前者の記録再生チャネルビットレートは64.8Mbps、後者の記録再生チャネルビットレートは32.4Mbpsとなる。ここで、2つのチャネルビットレートはちょうど倍数の関係となっている。このように、本実施形態の光ディスクでは、標準の再生線速度を2つ持つことで、チャネルビット長の異なる二つの領域のチャネルビットレートを倍数の関係に保っている。この結果、光ディスク装置の図示しないRF信号処理回路やコントローラにおける処理が簡便になり、処理の高速化や消費電力の削減が可能になる。
図14は、バーストカッティングエリア(BCA)に記録される情報の構成を例示する図である。図14に例示されるBCAデータは、2個のBCAプリアンブルBCA−Preambleと2個のポストアンブルBCA−Postamble及び2個のBCAデータ領域Informationを持つ。各BCAデータ領域Informationには各BCAエラー検出コードEDCBCAとBCAエラー訂正コードECCBCAが付加され、その間にはBCA連結領域BCA−Concatenationが配置されている。
更に、各4バイト毎に1バイトずつのシンクバイトSBBCAまたはリシンクRSBCAが挿入されている。BCAプリアンブルBCA−Preambleは、4バイトで構成され、全て“00h”が記録される。各BCAプリアンブルBCA−Preambleの直前には、シンクバイトSBBCAが配置される。BCAデータ領域Information内には、76バイトが設定されている。BCAポストアンブルBCA−Postambleは4バイトで構成され、全て“55h”の繰り返しパターンが記録されている。BCA連結領域BCA−Concatenationは4バイトで構成され、全て“AAh”が繰り返し記録される。
図15は、バーストカッティングエリア(BCA)に記録される情報内容の一例を説明する図である。図14のBCAデータ領域Informationには、8バイトのBCAレコードを1つの単位として、1つもしくは複数の情報が記録される。このレコードは、例えば、ディスクの識別情報やコピー制御の為の情報を含むことができる。図15の(a)に例示されるのは、ディスクの識別情報を表すBCAレコードの例である。始めの2バイト(バイト位置BP0−1)には、そのBCAレコードがどの種類(識別情報、コピー制御情報等)のレコードかを表すBCAレコード識別子(ID)が記録される。バイト位置2には、BCAレコードの形式を示すBCAレコードのバージョン番号が記録される。バイト位置3には、BCAレコードのサイズを決めるデータ長が記録される。この長さには、BCAレコードのヘッダであるBCAレコード識別子からデータ長までの4バイトは含まれないように構成できる。バイト位置4には、1バイトのブックタイプとディスクタイプが記録される。ブックタイプは、ディスクのフォーマット及び再生専用、追記型、書き換え型等を示す識別子である。バイト位置5には本光ディスクが準拠する規格書の拡張パート番号が記録され、バイト位置6−7は予備とされる。
図15の(b)は、バーストカッティングエリア(BCA)に記録される情報の一部(バイト位置4のブックタイプ・ディスクタイプ)の具体例を説明する図である。図15の(b)に示すように、ブックタイプ・ディスクタイプの情報バイトのうちディスクタイプの4ビットには、1ビットごとに情報が割り振られている。その最上位ビットb3はマーク極性を示している。これは記録マーク(ピット)の反射率が非マーク(ピット)部よりも高いか低いかをあらわす極性識別子である。次のビットb2にはツインフォーマットフラグが割り当てられている。これは、そのディスクがツインフォーマットディスクであるか否かを示す識別子である。このツインフォーマットフラグがバイナリで“0”の場合、そのディスクはツインフォーマットディスクではないことを示し、“1”の場合、ツインフォーマットディスクであることを示す。ツインフォーマットとは1枚のディスクでCD、DVD等の複数のフォーマットに対応できるものである。その拡張例として、次の予備を併用して2〜3ビットの多ビット識別子を設けることにより、3レイヤ以上のマルチフォーマット光ディスクを識別することも可能である。このようなツインフォーマットフラグをBCAレコードとして持つことにより、個々の多層ディスクにおいて、そのディスクが単一フォーマットだけのディスクなのかマルチフォーマットのディスクなのかを容易に判別できる。
図16に光ディスクに情報を記録する単位であるデータセグメントの構成を示す。光ディスクのBCA領域とコネクション領域を除く領域には、すべてこのデータセグメント単位で情報が記録されている。データセグメントは、VFOフィールド、データフィールド、ポストアンブルフィールド、予備フィールド、バッファーフィールドとで構成されている。VFOフィールドは71バイトが割り当てられており、一定の周波数の信号が記録されている。光ディスク装置は、このVFOフィールドから一定周波数の信号を利用して、再生時のクロック周波数を調整することが出来る。本実施の形態の光ディスクではVFOフィールドにはすべて4Tのデータが保存されている。データフィールドは77376バイトが割り当てられている。このフィールドはユーザデータを保存するものであり、32の物理セクタに分割して管理されている。ポストアンブルフィールドは2バイトで構成されており、データフィールドの終了を表す固定のパターンが保存される。予備フィールドは、データセグメントの管理情報や、ディスクの管理情報を保存する領域として用いることが出来る。バッファーフィールドはデータセグメントを追記する際に、記録位置ズレが発生してもデータ領域を破壊しないためのバッファーとして機能する。
前述のように、データフィールドは#0番から#31番までの32個の物理セクタで構成されている。物理セクタは図示するように、データID、IED(ID Error Detection code)、予備データ、メインデータ、EDC(Error Detection Code)で構成されている。データIDには後述の物理セクタを管理する情報が保存されている。IEDはデータIDの読み取りエラーを検出するためのエラー検出用のデータである。予備データには、コピー制御用のデータ等が保存される。メインデータには、ユーザデータが保存される。ここで、物理セクタ当り2048バイトのユーザデータの保存が可能である。EDCは物理セクタ全体の読み取りエラーを検出するためのエラー検出用のデータである。
図17にデータIDの内容を示す。データIDは4バイトで構成されており、先頭の1バイトがデータフレーム情報、残り3バイトがデータフレーム番号となっている。ここで、データフレーム番号は物理セクタに順番に振られた番号であり、物理セクタのエラーに伴う交替処理が発生しない限り、後述の物理セクタ番号と一致する。本実施形態では交替処理は発生しないので、データフレーム番号と物理セクタ番号とは一致する。そのため、以下、データフレーム番号を物理セクタ番号とも称する。
データフレーム情報は、レイヤ番号ビット、データタイプビット、領域タイプビット、記録タイプビット、拡張レイヤ番号ビット、予備ビットで構成されている。レイヤ番号ビットは、そのデータIDを有する物理セクタがどのレイヤに存在するかを表すビットである。例えばこの値が0bであった場合には、レイヤ0、1bであった場合には、レイヤ1にそれぞれ存在する物理セクタであることがわかる。データタイプビットには物理セクタのデータが再生専用データであるか、書き換え可能データであるか、パディング用のダミーデータであるかといったことを表すデータが保存される。領域タイプには、その物理セクタが存在する領域を示すデータが保存される。
本実施形態では領域タイプが00bの場合、その物理セクタはデータ領域に存在することを意味する。同様に、01bの場合にはシステムリードイン領域またはデータリードイン領域、10bの場合には、データリードアウト領域または図示されていないシステムリードアウト領域、11bの場合にはシステムミドル領域、内周ミドル領域または、外周ミドル領域にそれぞれ物理セクタが存在することを意味する。
このように、リードイン、ミドル、リードアウトという形でまとめて区分した情報を保存することで、光ディスク装置は再生した物理セクタがディスクの情報の先頭部分に存在するのか、中間点に存在するのか、終端部分に存在するのかを把握することが可能であり、次のデータを再生するためのシークの方向や各種調整パラメータを適切に調整することが可能となると同時に、すべての領域に別々にビットを割り当てる場合よりもビット数を削減し、フォーマット効率を高めることが可能となる。記録タイプにはその物理セクタに保存されたユーザデータが一般的なデータであるか、再生時にリアルタイム性を要求されるデータであるかといったことを判別するためのデータが保存される。ここで、データフレーム番号及び、レイヤ番号、データタイプ、領域タイプ、記録タイプのビットポジション及びサイズは既存のDVDやHD DVDと同様の構成になっている。
次に、本実施形態の特徴である拡張レイヤ番号ビットについて説明を行う。まず、前述のように、データフレーム番号は3バイト、即ち24ビットであるため、最大で2の24乗個、即ち16777216個の物理セクタの番号を表現することが可能である。
ここで、図16に示すように1つの物理セクタには2048バイトのユーザデータが記録される。したがって、データフレーム番号が3バイトの場合、34359738368バイトすなわち約34ギガバイト分の容量までしか、物理セクタに固有の番号を割り当てることができないことになる。この場合、本実施形態の光ディスクのように51ギガバイトを越える容量の情報の管理ができないことになる。さらに、前述のように既存のDVDやHD DVDはレイヤ番号も1ビットとなっている。この場合、0bはレイヤ0に配置された物理セクタ、1bはレイヤ1に配置された物理セクタに設定されるが、値が0bと1bのみであるため、2層の情報記録層までしか管理できない。
そこで、本実施形態の光ディスクは、これらのビットと独立した拡張レイヤ番号ビットを有している。この拡張レイヤ番号ビットは、レイヤ0及びレイヤ1に配置された物理セクタに対しては0bを設定し、レイヤ2に配置された物理セクタに対しては1bを設定する。この結果、レイヤ番号ビットと拡張レイヤ番号ビットを用いることで、その物理セクタがレイヤ0、レイヤ1、レイヤ2のどのレイヤに存在する物理セクタであるかを判別することが可能になる。さらに、本実施形態の光ディスクでは拡張レイヤ番号ビットをデータフレーム番号用のビットの上位のビットとして仮想的に取り扱うことにより、約34ギガバイトを超えた容量のデータの管理を可能とする。
このように、本実施形態の光ディスクではデータIDに独立した拡張レイヤビットを1ビット配置することにより、従来の単層もしくは2層のDVD、HD DVDとほぼ同じデータ構造を保ったまま、3層といった従来よりも多い総数、かつ約34ギガバイトを超える大容量の情報の管理を可能としている。さらに、拡張レイヤ番号情報をデータフレーム番号とレイヤ番号の両方の拡張情報とすることで、それぞれの割り当てをそのまま増加させるよりも管理情報のビット数を削減し、フォーマット効率を高めることが可能となる。
図18は、拡張レイヤ番号ビットの値を説明する図である。レイヤL0のみからなる単層ディスクSLの場合は、レイヤ番号ビット、拡張レイヤ番号ビットはともに0bである。2層ディスクDLのレイヤ0は、レイヤ番号ビット、拡張レイヤ番号ビットはともに0bである。2層ディスクDLのレイヤ1は、レイヤ番号ビットは1b、拡張レイヤ番号ビットは0bである。3層ディスクTLのレイヤ0は、レイヤ番号ビット、拡張レイヤ番号ビットはともに0bである。3層ディスクTLのレイヤ1は、レイヤ番号ビットは1b、拡張レイヤ番号ビットは0bである。3層ディスクTLのレイヤ2は、レイヤ番号ビットは0b、拡張レイヤ番号ビットは1bである。
前述のように、光ディスクのBCA領域とコネクション領域を除く領域には、すべてデータセグメント単位で情報が記録されており、データセグメントは32個の物理セクタを有している。さらに、物理セクタには、それぞれ物理セクタ番号という番号が振られている。図19に各レイヤの物理セクタの配置を示す。
図19の(c)に示すレイヤ0(L0)の場合、最内周のシステムリードイン領域の物理セクタから順に外周側に向かって番号が大きくなるように、物理セクタ番号が割り当てられている。また、システムリードイン領域の最後の物理セクタの物理セクタ番号は、01FFFFh、データリードイン領域の先頭物理セクタ番号は026BFFh、データ領域の先頭物理セクタ番号は030000hである。各領域で物理セクタ番号は外周側に向かってインクリメントしていく。
図19の(b)に示すレイヤ1(L1)の場合、物理セクタには最外周のデータリードアウト領域から内周に向かって、番号が大きくなるように物理セクタ番号が割り当てられている。図のXで示されたレイヤ0のデータ領域の最後の物理セクタの物理セクタ番号をビット反転した値が、レイヤ1のデータ領域の開始セクタの物理セクタ番号となっている。同様に、システムリードイン領域の最終の物理セクタの物理セクタ番号(01FFFFh)をビット反転した値(FE0000h)が、レイヤ1の内周ミドル領域の開始物理セクタの物理セクタ番号となっている。
図19の(c)に示すレイヤ2の場合、レイヤ0と同様、物理セクタには最内周のシステムミドル領域から、順に外周側に向かって、番号が大きくなるように物理セクタ番号が割り当てられている。また、図のYで示されたレイヤ1のデータ領域の最後の物理セクタの物理セクタ番号をビット反転した値が、レイヤ2のデータ領域の開始物理セクタの物理セクタ番号となる。同様に、レイヤ1の内周ミドル領域の開始物理セクタの物理セクタ番号(FE0000h)をビット反転した値(01FFFFh)が、レイヤ2の内周ミドル領域の最終の物理セクタの物理セクタ番号となる。
ここで、物理セクタ番号をデータフレーム番号と一致した3バイトであるとすると、2度の反転を実施するため、レイヤ0とレイヤ2には必ず同じ値の物理セクタ番号を持つ物理セクタが存在することになる。これらを識別するため、本実施形態の光ディスク装置では拡張レイヤ番号ビットを有している。拡張レイヤ番号はレイヤ0では0b、レイヤ2では1bとなっているため、拡張レイヤ番号ビットをデータフレーム番号ビットの上位ビットとしてこれをメタ物理セクタ番号として取り扱うことで、レイヤ0とレイヤ2の物理セクタを識別することが可能となる。
図20に、システムリードイン領域及びデータリードイン領域の構成を示す。システムリードイン領域はイニシャルゾーン、バッファーゾーン、コントロールデータゾーンから構成されている。バッファーゾーンは、データリードイン領域にデータの記録を行った際の誤動作によりコントロールデータが破壊されるのを防ぐことや、他の層のコネクション領域からのクロストークにより、コントロールデータの読み取り安定性が低下すること防ぐことを目的として配置されている。ここで、コネクション領域にはピット等が配置されておらず光学的な特徴がその他の領域と異なるため、コネクション領域と重なった他の層のピットは再生安定性が低いという問題がある。
コントロールデータゾーンは2つのコントロールデータセクションと2つのコピーライトデータセクション、ひとつのコピーライト保護システム使用領域で構成されている。2つのコントロールデータセクションとコピーライトデータセクションにはそれぞれ同じ内容のデータが記録されており、多重記録による信頼性の向上を目的としている。
コントロールデータセクションは、物理フォーマット情報、ディスク製造メーカ情報、コピーライト保護情報を含んでいる。ディスク製造メーカ情報にはディスク製造メーカの社名や本社所在地、識別データやディスク製造メーカ独自の製造情報が保存されており、光ディスクの管理や、光ディスク装置が光ディスクの特性を識別するのに用いている。コピーライト保護情報には、コピーライト保護用の鍵情報などが記録される。物理フォーマット情報の内容の詳細は後で述べる。
データリードイン領域はリファレンスコードゾーンを含んでいる。リファレンスコードゾーンには特定の繰り返しパターンが記録されており、光ディスク装置が光ディスクに対して調整パラメータを最適化することなどに用いられる。
システムリードイン領域とデータリードイン領域との間にはコネクション領域が配置される。
図21に物理フォーマット情報の内容を示す。
図21の(a)に示すように、先頭であるバイト位置0にはブックタイプ及びパートバージョンの情報が格納されている。ブックタイプはディスク100のフォーマット及び再生専用(ROMタイプ)、追記型(±Rタイプ)、書き換え型(±RWタイプ、RAMタイプ)等を示す識別子である。パートバージョンは、そのフォーマットのバージョン管理情報である。バイト位置1にはディスクサイズと最大転送レートが格納されている。ディスクサイズにはそのディスク100の直径を示す情報が記録される。たとえば、12cmのディスクであれば0000b、8cmのディスクであれば0001bが記録される。最大転送レートには、必要に応じて、ディスクに記録されたデータを正常に再生するのに必要となる最大の転送レートが記録される。
バイト位置2のディスク構造には、そのフォーマットのレイヤの数、各レイヤでトラックが内周側から外周側に向かっているか、内周側に向かっているかの極性を示す情報、そのレイヤが再生専用であるか、追記型か、書き換え型であるかといった情報が記録される。ここでのレイヤの数は、ディスク100が物理的に持つレイヤ数ではなく、ブックタイプに格納したフォーマットのレイヤ数である。
バイト位置3の記録密度には、ディスク接線方向の密度とトラックピッチを現す情報が記録される。バイト位置4−15のデータエリア構造にはレイヤ0及びレイヤ1のデータ領域の開始アドレスと終了アドレスが記録される。バイト位置16のBCA識別子には、BCAがあるか無いかを示す情報を記録する。バイト位置27の拡張パートバージョンにはパートバージョンの拡張情報を記録する。バイト位置32の保証再生スピードには、ディスクに記録されたデータを正常に再生することが保証された線速度が記録される。バイト位置33−34のアブソリュートレイヤフォーマットテーブルには光ディスクの物理的な情報記録層それぞれにどのようなフォーマットで情報が記録されているのかを示す情報が格納されている。バイト位置35の互換可能パートバージョンには、互換が保証される最も古いパートバージョンが格納されている。バイト位置36−43の拡張データエリア構造にはレイヤ2以降のデータ領域の終了アドレスが格納されている。
図21の(b)にデータエリア構造(BP4−BP15)の詳細な内容を示す。バイト位置4は00hのデータが記録されている。バイト位置5−7にはディスク全体のデータ領域の開始物理セクタ番号(PSN)が記録されている。通常、この物理セクタはレイヤ0に存在する。この値は例えば図19によれば030000hとなる。同様に、バイト位置8と12には00hが記録される。バイト位置9−11にはレイヤ1のデータ領域の最終物理セクタ番号が格納されている。これは図19のYに相当する。また、バイト位置13−15にはレイヤ0のデータ領域の最終物理セクタ番号が格納されている。これは図19のXに相当する。
図21の(c)に拡張データエリア構造(BP36−43)の一例の詳細な内容を示す。バイト位置36にはレイヤ識別子が格納される。バイト位置37−39には3層光ディスク全体のデータ領域の最後の物理セクタ番号、すなわちレイヤ2の最終物理セクタ番号が格納される。
図22に、レイヤ識別子(BP36)の構成を示す。レイヤ識別子は、最下位ビットにレイヤフラグが割り当てられている。このレイヤフラグはバイト位置37−39にレイヤ2の最終物理セクタ番号が格納された場合は1bを、そうでなければ0bを保存する。したがって、バイト位置36のレイヤ識別子は3層光ディスクである場合、01hが記録されることになる。
ここで、拡張データエリア構造及びデータエリア構造に格納される物理セクタ番号は3バイトであるが、この3バイトの番号はそれぞれ同じ値になる可能性がある。従って、例えば、BP4−BP7、BP8−BP11、BP12−BP15、BP36−BP39というように、4バイトの値を物理セクタ番号の上位の概念としてメタ物理セクタ番号をして扱えば、それぞれは、必ず独立した値になる。
図21の(d)に拡張データエリア構造(BP36−43)の他の例の詳細な内容を示す。この例ではバイト位置36には00hを格納する。バイト位置37−39にはレイヤ2の最終物理セクタ番号を格納する。この例では、レイヤ識別子が定義されていないが、バイト位置37−39にはレイヤ2の物理セクタ番号をあらかじめ格納することが明らかになっているため、ドライブはその情報を元に値を判別する。
さらに、BP40−43が予備となっているが、情報記録層がさらに1層増加し、4層光ディスクとなった場合には、BP41−43にレイヤ3のデータ領域の最終物理セクタの物理セクタ番号を格納するようにする。こうすることでさらに大容量の情報を管理することが可能となる。また後述のレイヤ数ビットを参照することで、どのレイヤまでが有効な値であるか、光ディスク100のデータ領域全体の最終物理セクタ番号が何番であるかを判定することが出来る。
図23を用いて物理フォーマット情報のその他のバイト位置の詳しい設定について説明を行う。バイト位置2のディスク構造には、図23の(a)に示すように、最上位ビット側から、そのフォーマットのレイヤ数、各レイヤでトラックが内周側から外周側に向かっているか、内周側に向かっているかの極性を示すトラックパス情報、そのレイヤが再生専用であるか、追記型か、書き換え型であるかといった情報であるレイヤタイプが記録される。例えば、本実施の形態のように、すべてのレイヤが同じフォーマットで形成された3層光ディスクの場合、レイヤ数には3層をあらわす10bが保存される。ここで、2層であれば01b、1層であれば00b、4層以上であれば11bが保存される。トラックパスには、各レイヤの記録再生の進行方向を示す情報が記録される。すべてのレイヤが内周側から外周側に向かって記録再生を行う、即ち物理セクタ番号が内周側から外周側に向かって増加していくような光ディスクの場合、ここには0bが保存される。これをパラレルトラックパスと呼ぶ。
一方、図19に示したように、各層ごとに記録再生の進行方向が逆転するような光ディスクの場合、ここには1bが保存される。これをオポジットトラックパス、またはコンスタントトラックパス、オルタネイトトラックパスと呼ぶ。レイヤタイプには光ディスクの情報記録層に存在するデータの種類を指定する情報を記録する。ビット位置b2が1bであれば光ディスクは書き換え型のユーザデータを含むことを示す。ビット位置b1が1bであれば、光ディスクは一回記録型のユーザデータを含むことを示す。ビット位置b0が1bであれば、光ディスクはエンボスピットで記録されたユーザデータを含むことを表す。逆に各ビットが0bであれば、それぞれの種類のデータを含んでいないことを示す。
バイト位置3の記録密度には、図23の(b)に示すように、上位4ビットには線密度が、下位4ビットにはトラック密度が保存される。ここで、線密度のビットが0000bであれば1ビットの長さは0.267μm/bitであることを意味する。同様に0001bであれば0.293μm/bit、0010bであれば0.409から0.435μm/bitの可変長、0100bであれば0.280から0.295μm/bitの可変長、0101bであれば0.15μm/bit、0110bであれば0.130から0.140μm/bitの可変長、0111bであれば0.135μm/bitであることを意味する。一方、トラック密度のビットが000bの場合0.74μm/track、0001bの場合0.80μm/track、0010bの場合0.615μm/track、0011bの場合0.40μm/track、0100bの場合0.34μm/trackを意味する。
バイト位置33−34のアブソリュートレイヤフォーマットテーブルには、図23の(c)に示すように、各アブソリュートレイヤのフォーマットの種類を示す情報が保存される。ここで、アブソリュートレイヤとは、フォーマットに関わらず光ディスクに実際に形成されている情報記録層のことを指す。アブソリュートレイヤは光入射面側から順番に番号付けされている。本実施形態の光ディスクの場合、3層の情報記録層を有しているのでアブソリュートレイヤは3つ存在することになる。テーブルは3ビットを各アブソリュートレイヤに割り当てている。ここで、各アブソリュートレイヤの情報記録フォーマットが物理フォーマット情報のBP0のブックタイプに一致する場合、000bが保存される。一方、物理フォーマット情報のBP0のブックタイプと異なるフォーマットで記録されたアブソリュートレイヤが存在した場合、そのビットには000b以外の値が保存される。図1に示した光ディスクは、3層ともが全て同一のフォーマットで記録されているため、テーブルはすべて0bのデータで埋められる。一方、例えばブックタイプが0100bでHD DVD−ROMのディスクであって、アブソリュートレイヤ0のみが既存のDVD−ROMであるといった場合には、アブソリュートレイヤ0のビットには100bが保存される。または、アブソリュートレイヤ0のみが高密度DVD−Rであるといった場合には001bが保存される。
既存のDVDやHD DVDと言った光ディスクではデータエリア構造の構成はバイト位置4−15に配置されており、バイト位置5−7にはディスク全体のデータ領域の開始物理セクタ番号(PSN)が記録されている。さらに、バイト位置9−11にはディスクのデータ領域全体の最終物理セクタ番号が格納されている。これは、単層のディスクであればレイヤ0、2層のディスクであればレイヤ2のデータ領域の値が記録される。また、バイト位置13−15には2層ディスクの場合にはレイヤ0のデータ領域の最終物理セクタ番号が格納される。
したがって、本実施形態の光ディスク100を既存の2層以下のDVDやHD DVDに対応した記録再生装置に挿入した場合、バイト位置4−15の情報は2層のDVDやHD DVDと同じ意味のデータであり、かつデータIDに関しても、データフレーム番号とレイヤ番号の部分は既存の2層のDVDやHD DVDと同じ意味のデータであるため、ディスクは2層のディスクとして認識され、2層目までの情報は再生できることになる。
一方で、本実施形態の光ディスク装置では拡張データエリア構造及び拡張レイヤ番号を認識できるため、3層以上のレイヤの再生が可能となる。この時、例えば3層のディスクに独立した拡張データエリア構造を設けず、既存のDVDやHD DVDのようにバイト位置9−11にディスクのデータ領域全体の最終物理セクタ番号を格納した場合には、既存のDVDやHD DVDに対応した記録再生装置に挿入した場合、3層目の情報が解釈できないため、ディスク認識の段階でエラーとなる問題がある。このように本実施形態の光ディスクは3層以上の層に独立した拡張レイヤ番号や拡張データエリア構造を設定することで、既存のDVDやHD DVDに対応した装置との互換性を向上している。
図24に本実施形態の光ディスク装置に光ディスク100が装着された際に光ディスクを認識するための初期動作のフローを示す。
光ディスク装置に光ディスクが挿入されると、光ディスク装置は、光ディスクをチャッキングした図示しないスピンドルモータの回転を開始し、情報の記録再生を行うため、レーザダイオード(半導体レーザ素子)11を点灯する(#2)。
光ディスクの内周に、PUH10を移動し、PUH10をフォーカス方向に駆動し、フォーカスサーチする(#4)。この際、各レイヤからの反射光が光検出器19に入射し、電気信号として各処理回路に伝達される。この信号から光ディスク装置の図示しないコントローラにより、光ディスク100の大まかなレイヤ数、各レイヤの記録データの有無などが判別される。
次に、コントローラにより、この判別の結果に基づいて装置の各サーボの調整パラメータ、例えば再生パワーやフォーカス、トラッキングのゲイン、初期オフセット量や球面収差調整系の初期設定値などを設定する(#6)。
光ディスク装置は最も奥のレイヤ(3層の場合はレイヤ2)にフォーカスをオンする(#8)。
BCA領域のBCA情報の再生を実施する(#10)。ここでは、BCAの情報からディスクのタイプやマークの極性、再生中のディスクが複数のフォーマットを有するツインフォーマットディスクであるか、単一のフォーマットのディスクであるか等が判明する。また、判明した結果に従って、再度サーボパラメータの微調整を行う。
フォーカスジャンプ動作によって最も手前のレイヤ0(L0)にフォーカスを移動する(#12)。
トラッキング制御をオンし、トラックの再生を開始する(#14)。トラックの情報を再生したらまず、はじめにコントローラは、データIDの情報を処理する(#16)。
データIDのレイヤ番号及び拡張レイヤ番号から現在フォーカスがオンしているレイヤを判定する(#18)。ここで、本実施形態の光ディスクの場合、レイヤ番号が0bであり、かつ拡張レイヤ番号も0bであれば、現在フォーカスがオンしているレイヤはレイヤ0であると判定される。一方、もしいずれか一方、もしくは両方のビットが1bである場合、フォーカスはレイヤ0以外のレイヤにフォーカスがオンしていることになる。
ここで、フォーカスしているレイヤが所望のレイヤであるレイヤ0でない場合には、フォーカスジャンプを実施する処理(#12)を再度実行する。一方で、レイヤ0にある場合には、システムリードイン領域の再生処理(#20)に移行する。この再生処理では、光ディスク装置はシーク動作を行い、物理セクタ番号が01FFFFhより小さく、データIDの領域タイプが01bの領域に移動し、データの再生を開始する。
上述したように、物理セクタ番号がデータフレーム番号と一致した3バイトであるので、レイヤ0とレイヤ2には必ず同じ値の物理セクタ番号を持つ物理セクタが存在することになるが、物理セクタ番号に加えて拡張レイヤ番号ビットを用いたメタ物理セクタ番号を用いれば、光ディスク内でセクタ番号の重複が無いため、より正確に所望のアドレスにアクセスすることが可能となる。
最終的に光ディスク装置はシステムリードインのコントロールデータセクションを再生し、ディスクの製造メーカ情報や、コピーライト保護情報を得る。さらに、物理フォーマット情報から、正確なディスクタイプ、レイヤの数、トラック密度や線密度、各アブソリュートレイヤのフォーマット等を判別できる。光ディスク装置はこの結果を上位のホストに送信し、光ディスクの認識のための初期動作を完了する。
図25に、本実施形態の光ディスク装置において、光ディスクから情報を再生し、あるいは光ディスクに情報を記録する場合のフローを示す。
光ディスク装置は、光ディスク100の認識が終了したら、上位のホストの指示にしたがって、光ディスクに対して再生を実施する。ホストは再生すべき物理セクタのアドレス情報を光ディスク装置に与える。
ホストから再生すべき物理セクタ番号の要求を受け取った場合、その物理セクタ番号がその時点でフォーカスしているレイヤに存在しない物理セクタ番号である場合、フォーカスジャンプを実施して、要求の物理セクタ番号が存在するレイヤに移動する。さらに、レイヤ内でシーク動作を実施する(#32)。
シーク動作を実行したらレーザ光が現在照射されている物理セクタのデータIDの再生を実施する(#34)。データIDからデータフレーム番号、レイヤ番号、拡張レイヤ番号等を判定し、再生を実施している物理セクタが要求された物理セクタであるか否かを確認する(#36)。ここで、再生している物理セクタの物理セクタ番号が要求された番号と一致した場合には、データの再生処理(#38)に移行する。一方、要求された番号と一致しない場合には、最初の処理(#32)に戻り、フォーカスジャンプ・シーク動作を継続する。
データの記録再生の処理(#38)では光ディスク装置はホストからの要求に従って、光ディスクにユーザデータを記録し、あるいは光ディスクからユーザデータを読み出す。ここで、ユーザデータを記録する際には、光ディスク装置のコントローラ250はユーザデータ(メインデータ)に対して物理セクタ単位でデータID、IED、予備、DECを付与し、さらにこれを32個ごとにまとめて、図16に示すデータフィールド、データセグメントを生成する。そして、生成したデータセグメントを光ディスクに記録する。ここで、光ディスク装置は各物理セクタに対して、データフレーム番号、拡張レイヤ番号、レイヤ番号を算出し、記録するデータIDに格納する。
以上説明したように、本提案によれば、液晶素子による球面収差補正機構を搭載した光ヘッド装置を想定し、記録媒体すなわち光ディスクの光透過層の厚さと光透過層の屈折率を規定することで、記録層の数が3以上の多層光ディスクに適用可能な光透過層の厚さの範囲を、光ディスクが容易に製造可能な範囲とすることが可能となる。
すなわち、記録層の数が3以上の多層光ディスクにおいて、情報記録層相互の間に規定される中間層の厚さとトレードオフの関係にある層間クロストークの大きさを、再生信号の劣化の程度が許容可能な程度に維持しながら、球面収差の発生により再生信号の劣化を抑えることができる。
なお、本発明は、上述のいずれかの実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記のいずれかの実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
本発明の一実施形態に係わる片面3層光ディスクの構成を示す概略図。 図1に示した光ディスクから情報を再生する光ディスク装置の一例を示す概略図。 図1及び図2に示した記録媒体のプリグルーブ寸法及びランドプリピット寸法と記録光の波長との関係について説明する概略図。 半径(ρ)と球面収差の関係を示す概略図。 図4に示した球面収差の補正に利用される一般的な球面収差補正パターンを示す概略図。 計算機による収差のシミュレーションを行った結果を示すグラフ。 計算機による収差のシミュレーションを行った結果を示すグラフ。 図3で示した光ディスクの光透過層の厚みと屈折率について、光透過層の厚みを一定値とした例を示す概略図。 図9は、図3に示した光透過層の屈折率nを「1.57」〜「1.70」の範囲に変更する例を示す概略図。 図9に示したと同様に、光透過層の屈折率nを「1.57」〜「1.70」に制限し、光透過層の厚みの範囲を、さらに制限する例を示す概略図。 図10に示したと同様に、光透過層の厚みを、標準値に対して、−37μm〜37μmで管理するとともに、屈折率nを「1.53」〜「1.64」に制限する例を示す概略図。 光ディスクの情報記録領域のレイアウトを示す図。 光ディスクの物理的特長を示す図。 光ディスクのBCAの構造を示す図。 光ディスクのBCAの内容を示す図。 データセグメントと物理セクタの構造を示す図。 物理セクタ内のデータIDの内容を示す図。 データID内のレイヤ番号と拡張レイヤ番号を示す図。 3層記録媒体における物理セクタ番号の配置を示す図。 システムリードイン領域とデータリードイン領域の構造を示す図。 システムリードイン領域内の物理フォーマット情報の内容を示す図。 物理フォーマット情報内のレイヤ識別子の内容を示す図。 物理フォーマット情報の詳細な内容を示す図。 イニシャルフローを示す図。 記録再生フローを示す図。
符号の説明
10…光ピックアップ、11…半導体レーザ素子(LD)、12…コリメートレンズ(CL)、13…偏光ビームスプリッタ(PBS)、14…液晶素子(LCD)、15…λ/4板(QWP)、16…対物レンズ(OL)、17…駆動コイル、18…結像レンズ(FL)、19…光検出器、20…演算部(信号処理部)、21…サーボ回路、100…光ディスク、101…光透過層(基板)、102…第1の情報記録層(レイヤ0(L0)光透過層)、103…中間層(光透過層)、104…第2の情報記録層(レイヤ1(L1)光透過層)、105…中間層(光透過層)、106…第3の情報記録層(レイヤ2(L2)光反射層)、107…基板(カバー層)。

Claims (9)

  1. 基板上に、複数の情報記録層を相互に光透過性を有する中間層を挟んで積層し、更にその上に光透過層を積層する光ディスクにおいて、
    ディスク表面と情報記録層のディスク表面からの厚みの標準値から最も離れた情報記録層との間の厚みと屈折率が、情報記録層のディスク表面からの厚みの標準値から最も離れた情報記録層までの全ての光透過層と中間層とに許容される収差が上限となる標準値に対して±37μmの範囲に、前記屈折率が1.5〜1.7の範囲に、それぞれ設定され、前記光透過層に入射するレーザ光を照射するレンズの開口数が0.65であり、前記レーザの波長が395〜415nmであることを特徴とする光ディスク。
  2. 前記ディスク表面から情報記録層までの厚みと屈折率は、情報の再生または記録に用いる光ヘッド装置が球面収差補正装置を含む場合に利用可能であることを特徴とする請求項1記載の光ディスク。
  3. 光反射層と、
    この光反射層を保持する第1基板と、
    前記光反射層に積層された第1の中間層と、
    この第1の中間層に積層された第1の光透過層と、
    この第1の光透過層に積層された第2の中間層と、
    この第2の中間層に積層された第2の光透過層と、
    この第2の光透過層を覆うとともに、第2の光透過層と反対の側から提供される所定の波長の光の透過を許容する第2基板と、
    を有することを特徴とする光ディスク。
  4. 前記情報記録層のディスク表面からの厚みの標準値が、0.6mmであることを特徴とする請求項3記載の光ディスク。
  5. 前記光反射層と前記第2の光透過層との間の距離は、前記第2基板の波長395〜415nmの光に対する屈折率が1.5〜1.7であるとき、74μmの範囲内であることを特徴とする請求項3または4記載の光ディスク。
  6. 前記光反射層と前記第2基板の前記第2の光透過層と反対の側の表面との間の距離は、前記第2基板の波長395〜415nmの光に対する屈折率が1.5〜1.7であるときの標準値に対して、±37μmの範囲内であることを特徴とする請求項3または4記載の光ディスク。
  7. 前記屈折率が前記波長の光を前記光反射層または前記第1の光透過層または前記第2の光透過層に集光するためのレンズの設計時の標準値に比較して大きいか、あるいは小さいいずれの場合においても、前記第2基板、前記第2の光透過層、前記第2の中間層、前記第1の光透過層及び前記第1の中間層の厚みの合計を、標準値よりも増加させることが可能であることを特徴とする請求項5または6記載の光ディスク。
  8. 所定の波長の光を出力する光源と、
    前記光源からの光を記録媒体の任意の情報記録層に集光するレンズと、
    前記光源と前記レンズとの間に配置され、記録媒体の光入射面と光入射面から最も離れた情報記録層との間で生じる収差成分を低減する収差補正素子と、
    を有し、
    記録媒体の光入射面と光入射面から最も離れた情報記録層との間の前記光源からの光の波長に対する屈折率が1.5〜1.7で、記録媒体の任意の情報記録層は、記録媒体の光入射面から最も離れた情報記録層から記録媒体の光入射面側に74(37×2)μmの範囲内に規定された記録媒体に対して情報を書き込み、あるいは同記録媒体から情報を再生する情報記録再生装置。
  9. 所定の波長の光を出力する光源と、
    前記光源からの光を記録媒体の任意の情報記録層に集光するレンズと、
    前記光源と前記レンズとの間に配置され、記録媒体の光入射面と光入射面から最も離れた情報記録層との間で生じる収差成分を低減する収差補正素子と、
    を有する情報記録再生装置において、
    記録媒体の光入射面と光入射面から最も離れた情報記録層との間の前記光源からの光の波長に対する屈折率が1.5〜1.7で、記録媒体の任意の情報記録層は、記録媒体の光入射面から最も離れた情報記録層から記録媒体の光入射面側に74(37×2)μmの範囲内に規定された記録媒体に対して情報を書き込み、あるいは同記録媒体から情報を再生する情報記録再生方法。
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