JP2004359787A - 水系接着剤組成物および接着構造体 - Google Patents
水系接着剤組成物および接着構造体 Download PDFInfo
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Abstract
【目的】接着強度、初期接着強度、耐水性及び耐溶剤性に優れ、なおかつポットライフの長い2液型の水系接着剤組成物、それを用いた接着構造体を提供する
。
【構成】クロロプレン及びエチレン性不飽和カルボン酸を含む単量体100質量部を特定構造を有するノニオン系乳化剤1.1〜12質量部の存在下に重合してなるポリクロロプレンラテックスを主成分に含む主剤と、硬化剤を組み合わせることを特徴とした2液型の水系接着剤組成物およびそれを用いた接着構造体である。
。
【構成】クロロプレン及びエチレン性不飽和カルボン酸を含む単量体100質量部を特定構造を有するノニオン系乳化剤1.1〜12質量部の存在下に重合してなるポリクロロプレンラテックスを主成分に含む主剤と、硬化剤を組み合わせることを特徴とした2液型の水系接着剤組成物およびそれを用いた接着構造体である。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着力に優れ、なおかつ主剤と硬化剤を混合した後の粘度上昇が抑制された、つまりポットライフの改善された2液型の水系接着剤組成物及びこれを使用してなる接着構造体に関するものであり、特にマリンスポーツ用のウェットスーツやドライスーツ、釣り用のウェーダー、靴、手袋及びバックを構成する発泡ゴム材と布類を強固に接着した接着構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ウェットスーツは、発泡ゴム材にポリクロロプレン(以下CRと称す)溶剤系接着剤を使用していたが、CR溶剤系接着剤には、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の有機溶剤が用いられているため、接着剤塗工時に有機溶剤が作業場で揮発し、作業員の安全衛生面、環境面で好ましくなく、有機溶剤の低減が望まれていた。
そこで脱溶剤化の手法として、CR溶剤系接着剤をポリクロロプレンラテックス系接着剤に代替する方法が有効と考えられた。
【0003】
しかしながら従来、クロロプレンとカルボキシル基含有ビニル単量体を共重合して得られたクロロプレンラテックスにイソシアネート等の硬化剤を混合した水系接着剤(例えば特許文献1参照)では、接着力が不十分であるばかりでなく、貯蔵中に反応が進行し、ラテックスの安定性に問題が生じていた。
またクロロプレンとカルボキシル基含有ビニル単量体を共重合して得られるポリクロロプレンラテックスを主剤に、イソシアネート等を硬化剤に含む2液型水系接着剤は(例えば特許文献2参照)、主剤と硬化剤を混合したときの反応のため、ポットライフが短く作業性が良くないという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2000−104028(第2頁:請求項1〜3、第5〜9頁:重合例1〜6、実施例1〜12)
【特許文献2】特開2002−69406(第2頁:請求項1〜9、第11〜15頁:実験例1、実施例1〜9)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決し、接着強度、初期接着強度、耐水性及び耐溶剤性に優れ、なおかつポットライフの長い2液型の水系接着剤組成物、それを用いた接着構造体を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、クロロプレン及びエチレン性不飽和カルボン酸を含む単量体100質量部を、特定構造を有するノニオン系乳化剤1.1〜12質量部の存在下に重合してなるポリクロロプレンラテックスを主成分に含む主剤と、硬化剤を組み合わせることを特徴とした2液型の水系接着剤組成物が、接着力、耐水性及び耐溶剤性に優れ、なおかつ長いポットライフを有することを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、クロロプレン及びエチレン性不飽和カルボン酸を含む単量体100質量部を特定構造を有するノニオン系乳化剤1.1〜12質量部の存在下に重合してなるポリクロロプレンラテックスを主成分に含む主剤と、硬化剤を組み合わせることを特徴とした2液型の水系接着剤組成物およびそれを用いた接着構造体に関するものである。
【0008】
以下本発明を詳細に説明する。本発明におけるクロロプレン重合体は、2−クロロ−1,3−ブタジエン(以下クロロプレンと称す)とエチレン性不飽和カルボン酸単量体との共重合体、またはクロロプレンと共重合可能な単量体の1種以上を更に共重合して得られる共重合体である。
【0009】
本発明におけるクロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸のエステル類、メタクリル酸のエステル類等が挙げられ、必要に応じて2種以上用いてもかまわない。
【0010】
本発明におけるエチレン性不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、グルタコン酸などを挙げることが出来、これらを単独もしくは2種類以上併用して使用することもできる。なお本発明においてはアクリル酸、メタクリル酸を使用することが好ましく、特にメタクリル酸を使用することが好ましい。
【0011】
また本発明におけるエチレン性不飽和カルボン酸の添加量は特に限定するものではないが、単量体100質量部中に0.3〜10質量%含まれることが好ましい。より好ましくは1〜5質量%である。エチレン性不飽和カルボン酸の添加量が、0.3質量%未満の場合は、ラテックスの機械的安定性が悪くなるばかりでなく水系接着剤の接着力も劣る。10質量%を越える場合には、水系接着剤組成物の接着耐水性が悪くなる。
【0012】
本発明におけるノニオン系乳化剤とは下記の構造を有するものである。
ここに R:ベンゼン環及び/またはナフタレン環を1個以
上含む置換基
n=1〜200
R1 :水素または炭素数1〜5のアルキル基
置換基Rの具体例としては例えば下記の構造が挙げられる。また、これらの構造は混合物であっても構わない。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0013】
本発明のノニオン系乳化剤は例えばポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルクレジルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルクレジルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルクレジルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルヒドロキシフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルヒドロキシフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルヒドロキシフェニルエーテル、ポリオキシエチレンナフトールエーテル、ポリオキシエチレンヒドロキシナフチルエーテル、ポリオキシエチレンクレジルナフチルエーテル等を挙げることができる。又これらは混合物であっても構わない。
【0014】
本発明のノニオン系乳化剤のHLB値とは、米国ICI社のグリフィン氏により考案された親水性、疎水性のバランスを示す指標であり、下記の式に従って算出される1〜20の数値である。HLB値が高いほど親水性が高く、HLB値が低いほど親油性が高い。
HLB=(親水基部分の分子量)/(界面活性剤の分子量)×(100/5)
本発明のノニオン系乳化剤のHLB値は9〜19の範囲であることが好ましい。この範囲を外れるとクロロプレン系単量体の安定な重合が困難になる。
本発明のノニオン系乳化剤は更にHLB値が9以上17未満の範囲のものと17〜19の範囲のものを2種類使用することが好ましい。前者のノニオン系乳化剤は安定な重合反応を行うため、重合乳化剤として用いられる。後者のノニオン系乳化剤は、ポリクロロプレンラテックス組成物の機械的安定性を付与する目的で使用される。更にこれら2種類のノニオン系乳化剤のHLB値差は2以上であることが好ましい。
【0015】
本発明のノニオン系乳化剤の添加量は単量体100質量部に対して、1.1〜12質量部である。
更に好ましくは1〜7質量部である。
なお、HLB値が9以上17未満の範囲のものと17〜19の範囲のものを2種類使用する場合は、前者の添加量は1〜10質量部、後者の添加量は0.1〜2質量部である。
【0016】
また本発明におけるポリクロロプレンラテックスは、トルエン不溶のゲル分含有率に関して規定されるものではないが、70質量%以下の範囲にあることが好ましく、さらに2〜60質量%の範囲であることが好ましい。ゲル分含有率が2質量%未満の場合には、接着強度が低下する。またゲル分含有率が70質量%を越えると、初期接着強度や耐水性が低下する。
【0017】
ポリクロロプレンラテックス組成物のゲル分含有率の制御は、▲1▼連鎖移動剤の使用方法とその使用量、▲2▼重合温度、または▲3▼重合率の制御によって可能となる。
【0018】
まず連鎖移動剤としては、クロロプレン重合体の製造に一般的に用いられるものであれば特に制限はなく、例えばn−ドデシルメルカプタンやtert−ドデシルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類、ヨードホルム、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン等の公知の連鎖移動剤を使用することができる。
【0019】
次に重合温度については、0〜55℃の範囲であることが重合制御上好ましい。なお重合反応をより円滑にかつ安全に行うには、重合温度を30〜50℃とすることが好ましい。
【0020】
また最終重合率については、80質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上とすることがより好ましい。重合率が80質量%未満では接着強度が低くなる。
【0021】
本発明のポリクロロプレンラテックスの重合を停止する目的でチオジフェニルアミン、ジエチルハイドロキシルアミン、ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ハイドロキノンメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2−メチレンビス(6−t−4−メチルフェノール)、4,4−ブチレンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等の重合禁止剤を使用することができる。
【0022】
本発明のポリクロロプレンラテックスの重合に使用される触媒としては過硫酸カリウム等の無機過酸化物、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類等の有機過酸化物等を挙げることができる。触媒としては過硫酸カリウムの使用が安定した重合を行う上で好ましい。また、過硫酸カリウムは0.1〜5質量%の水溶液で使用することが好ましい。
【0023】
本発明のポリクロロプレンラテックスの重合に使用される触媒の活性を高める上で、亜硫酸ソーダ、亜硫酸カリウム、酸化鉄(II)、アントラキノンβスルフォン酸ソーダ、フォルムアミジンスルフォン酸、L−アスコルビン酸等を添加することができる。
【0024】
本発明において、ポリクロロプレンラテックス組成物の固形分濃度は40〜65質量%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは45〜60質量%の範囲である。より高い固形分濃度とすることにより、乾燥速度が速く、初期接着性がより優れたラテックスとなる。なお固形分濃度については、重合時のモノマーと水の比率によっても調整できるが、重合後に濃縮を行い調整することが出来る。
【0025】
本発明におけるクロロプレン重合体は重合直後は酸性であり不安定な状態であるため、PHを5〜10に調整することが好ましい。更に好ましくはPHが6〜9である。PHが5未満では長期貯蔵をすると、凝固や分離等変質し易い。またPHが10を越えるアルカリ性溶液は、取り扱いの安全を考えた場合好ましくない。
使用するPH調整剤は例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の強塩基性物質、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、りん酸3ナトリウム、りん酸水素2ナトリウム、りん酸3カリウム、りん酸水素2カリウム、クエン酸3カリウム、クエン酸水素2カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、4硼酸ナトリウム等の塩基性を示す塩類の中から一種類以上を、任意に併用することができる。
【0026】
本発明におけるPH調整剤の添加方法は特に制限を受けるものではなく、PH調整剤粉末を直接添加または水で任意の割合に希釈して添加することができる。
【0027】
本発明における硬化剤は、主に水系接着剤の耐溶剤接着力や耐水接着力を向上させる目的で添加される。例えばエポキシ系化合物、オキサゾリン系化合物、イソシアネート系化合物等を挙げることができる。硬化剤としては特にイソシアネート系化合物が好ましい。
【0028】
本発明における水分散型イソシアネート化合物とは、脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネートから得られる、分子内にビウレット、イソシアヌレート、ウレタン、ウレトジオン、アロファネート等の構造を有するポリイソシアネートポリマーに親水基を導入したものである。
つまり、水中に添加・撹拌すると、微粒子として分散することが可能な自己乳化型イソシアネート化合物である。
【0029】
本発明における金属酸化物としては酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ及び酸化ジルコニウム、酸化硼素、酸化すず、酸化マグネシウム及び酸化バナジウム等を挙げることができる。金属酸化物としては酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ及び酸化ジルコニウムが好ましい。
【0030】
金属酸化物の添加量は、ポリクロロプレンラテックス(固形分換算)100質量部に対して10質量部以下が好ましく、特に7.0質量部以下が好ましい。10.0質量部を越えて添加すると、初期接着力が低下してしまう。
【0031】
本発明の加硫促進剤としては、例えばイソプロピルキサントゲン酸亜鉛やブチルキサントゲン酸亜鉛等のキサントゲン酸塩系化合物、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア等のチオウレア系化合物、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム系化合物が挙げられる。
【0032】
本発明の加硫促進剤を使用する場合の添加量は、ポリクロロプレンラテックス(固形分換算)100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲であることが好ましい。
【0033】
本発明の水系接着剤組成物は初期接着力や耐水性をより高める上で粘着付与樹脂が使用されることがある。例えば、ロジン酸エステル樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族樹脂等を挙げることができる。粘着付与樹脂としてはテルペンフェノール樹脂やロジン酸エステル樹脂のエマルジョンが好ましい。
【0034】
粘着付与樹脂を使用する場合の添加量(固形分換算)は、ポリクロロプレンラテックス(固形分)100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、20質量部以下が特に好ましい。50質量部を越えると耐溶剤性が悪化してしまう。
【0035】
本発明の接着剤組成物は炭酸カルシウム、シリカ、タルク、クレー等の無機充填剤、ジブチルフタレートやプロセスオイルなどの可塑剤・軟化剤、ポリアクリル酸ナトリウム、水溶性ポリウレタン、メチルセルロース等の増粘剤、補助乳化剤としては例えばポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸ソーダ、ラウリル硫酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルフォン酸ソーダ等のアニオン系乳化剤や脂肪族アルカノールアミド等の前記以外のノニオン系乳化剤、各種老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を必要に応じて任意に配合することができる。
【0036】
本発明の接着剤組成物は主剤及び硬化剤等を混合して作られるが、混合装置は特に限定されるものではなく、スリーワンモーター、ホモジナイザーメディアミル、コロイドミル等の公知の装置を使用できる。
【0037】
本発明の接着剤組成物の主剤及び硬化剤の混合比は、主剤中のポリクロロプレンラテックス(固形分)100質量部に対して、硬化剤が固形分で0.5〜15質量部となるように混合することが好ましい。0.5質量部未満では、耐溶剤性が不足し、また15質量部よりも多く添加すれば、接着層の硬度が高くなり、ウェットスーツに仕立てた際の伸縮性が阻害される場合がある。
水系接着剤の粘度は、主剤と硬化剤を混合した後、24時間の間10000[mPas](B型粘度計、25℃、30rpm)以下を保持できることが好ましい。粘度が10000[mPas]より高くなると均一な塗布が難しくなる。
【0038】
本発明における発泡ゴム材としては、天然または合成の発泡されたゴム材料が使用され、具体的には、ポリクロロプレンあるいはクロロスルフォン化ポリエチレン等の独立気泡を有し、しかも伸縮性を有するゴム材料を好適に使用することができる。しかし、ウェットスーツに仕立てた際の、身体へのフィット感、伸縮性、軽量性、断熱・保温効果を考慮すると、発泡ポリクロロプレンが好ましい。
また、例えば特開平11−7908号公報(出願人:株式会社イナポリトレイディング)で提案・使用されているような、硬度あるいは発泡倍率が異なる発泡ゴム材が積層されたものであっても構わない。
【0039】
本発明における布類とは、織物、編物または不織布であるが、伸縮性を有する織物または編物が好ましく、ツーウェイトリコット(縦、横の両方にストレッチ性を有する)の織編物であることがより好ましい。具体的には、ナイロンジャージまたはポリエステルジャージ等が挙げられる。特にウェットスーツ用途には、ストレッチ性、通気性を考慮すればナイロンジャージが最も好ましい。
【0040】
本発明の水系接着剤を発泡ゴム材に塗布する方法及び装置は特に限定されない。刷毛塗り、コテ塗り、スプレー塗布、ロールコーター塗布、バーコーダー塗布及びカーテンフローコーター塗布等が可能である。
塗布量は特に限定されるものではないが、20〜200g/m2(ウェット)が好ましい。
【0041】
本発明の接着構造体は、発泡ゴム材に水系接着剤を塗布した後、直ちに布類を重ねる必要がある。つまり接着剤が完全に乾燥する前に、布類を重ねなければならない。接着剤の水分が全くなくなってから布を重ねると、接着力が悪くなる。布類を重ねるときの圧着装置や圧着条件は、特に限定されるものではない。圧着操作は加熱プレスまたは常温プレスのいずれであっても構わない。しかし、十分な初期接着力を得たい場合には、プレス操作と同時または後に、60℃〜150℃で10〜
600秒の乾燥を行うことが好ましい。
【0042】
以下、実験例、実施例及び比較例により本発明の効果を説明する。なお、以下の説明において特に断りのない限り、部及び%は質量基準を示す。
[実験例1]
内容積3リットルの反応器を用い、窒素気流下で、純水100部及びノニオン系乳化剤A(Newcol714:日本乳化剤社製、HLB値15.0)5.0部、ノニオン系乳化剤B(Newcol740:日本乳化剤社製、HLB値17.9)0.5部を仕込み溶解後、攪拌しながらクロロプレン単量体97部、メタクリル酸3部、及びオクチルメルカプタン0.2部を加えた。これを40℃に保持しながら亜硫酸ナトリウムと過硫酸カリウムを開始剤として用い、最終重合率が90%に達したところでチオジフェニルアミンの乳濁液を加えて、重合を停止した。
【0043】
次に、このポリクロロプレンラテックスに、20%ジエタノールアミンを12部添加してPHを7.0になるように調整した後、更に減圧下で水分を蒸発させ濃縮を行い、固形分濃度が50%となるように調整し、ポリクロロプレンラテックスAを得た。
【0044】
[実施例1]
次にラテックスA(固形分換算)100質量部、酸化亜鉛(堺化学社製の亜鉛華2種)5質量部(固形分換算)及び水溶性ポリウレタン系増粘剤(UH−450/アデカ株式会社製)0.06質量部(固形分換算)を配合して、主剤とした。
硬化剤は、水分散型イソシアネート化合物(武田薬品工業社製タケネートWD−730)を単独でラテックスA100質量部に対して3質量部(固形分換算)となるように混合して使用した。
【0045】
次に、硬化剤と混合後の水系接着剤について、粘度測定を実施した。
[粘度測定]
主剤と硬化剤の混合直後及び混合してから24時間後に、B型粘度計(トキメック社製)で25℃、30rpmの粘度を測定した。結果を表1に示す。24時間後の粘度が10000mPas以下である接着剤について、ポットライフ良好と判断した。
【0046】
主剤と硬化剤を混合した水系接着剤を、発泡ポリクロロプレン(厚さ3mm)に80g/m2塗布した後、直ちにナイロンジャージ布を重ね、110℃に加熱されたプレス装置で1分間圧着し、接着構造体を得た(糊代部のサイズは幅2cm×長さ7cm)。これについて、以下の接着力評価試験をおこなった。結果を表1に示す。
[初期接着力評価試験]
圧着してから10分後に、引張試験機により引張速度200mm/minとして180°剥離強度を測定した。
[常態接着力評価試験]
圧着してから7日後に、引張試験機により引張速度200mm/minとして180°剥離強度を測定した。
[耐水接着力評価試験]
圧着してから1日後に、水に7日間漬けた後、引張試験により引張速度200mm/minとして180°剥離強度を測定した。
[耐溶剤接着力評価試験]
圧着してから14日後に、トルエンに2秒間漬けた後、引張試験により引張速度200mm/minとして180°剥離強度を測定した。
【0047】
[実施例2]
実施例1の主剤に更に、加硫促進剤(ノクセラーZIX:大内新興社製イソプロピルキサントゲン酸亜鉛)を1.0質量部を配合して、実施例1と同様に水系接着剤を作製した。
この水系接着剤について、実施例1と同様の評価試験を行った。
【0048】
[実験例2]
実験例1のノニオン系乳化剤Bをノニオン系乳化剤C(Newcol780:日本乳化剤、HLB値18.9)を0.5部、オクチルメルカプタンを0.3部使用した以外は同様の重合と、PH調整及び固形分濃度調整を行い、ポリクロロプレンラテックスBを得た。
【0049】
[実施例3]
実施例1においてポリクロロプレンラテックスAをBに変えて水系接着剤を作製した。この水系接着剤について、実施例と同様の評価試験を行った。
【0050】
[比較例1]
実験例1で作成した主剤のみを水系接着剤として実施例1と同様の評価試験を実施した。
【0051】
[実験例3]
内容量3Lの反応器を用いて窒素雰囲気中で、水96質量部にけん化度88モル%、重合度550のポリビニルアルコール(デンカポバールB−05/電気化学工業(株)製)3.5質量部を添加、60℃で溶解させた。このポリビニルアルコール水溶液を室温近くまで冷却した後、この石鹸液中にクロロプレン単量体99質量部、メタクリル酸3質量部、オクチルメルカプタン0.3質量部を加えた。これを45℃に保持しながら亜硫酸ナトリウムと過硫酸カリウムを開始剤として重合し、ポリクロロプレンラテックスを得た。次に、このポリクロロプレンラテックスに20質量%ジエタノールアミン水溶液を添加してpHを7.0に調整し、減圧加温により濃縮し、固形分を55質量%になるように調整した。
【0052】
[比較例2]
ポリクロロプレンラテックスAをCに変えて実施例1と同様に水系接着剤を作製し、実施例1と同様の評価試験を実施した。
【0053】
実施例1〜3及び比較例1、2で得られた評価結果を、表1に示した。
【0054】
【表1】
【0055】
【発明の効果】
表1より明らかな如く、本発明の接着剤(実施例1、2、3)は、高い接着力を示し、なおかつ他の接着剤(比較例2)よりもポットライフが長い。
【図面の簡単な説明】
【図1】接着方法及び接着構造体を示す図
【符号の説明】
1:発泡ゴム材
2:接着剤
3:布類
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着力に優れ、なおかつ主剤と硬化剤を混合した後の粘度上昇が抑制された、つまりポットライフの改善された2液型の水系接着剤組成物及びこれを使用してなる接着構造体に関するものであり、特にマリンスポーツ用のウェットスーツやドライスーツ、釣り用のウェーダー、靴、手袋及びバックを構成する発泡ゴム材と布類を強固に接着した接着構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ウェットスーツは、発泡ゴム材にポリクロロプレン(以下CRと称す)溶剤系接着剤を使用していたが、CR溶剤系接着剤には、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の有機溶剤が用いられているため、接着剤塗工時に有機溶剤が作業場で揮発し、作業員の安全衛生面、環境面で好ましくなく、有機溶剤の低減が望まれていた。
そこで脱溶剤化の手法として、CR溶剤系接着剤をポリクロロプレンラテックス系接着剤に代替する方法が有効と考えられた。
【0003】
しかしながら従来、クロロプレンとカルボキシル基含有ビニル単量体を共重合して得られたクロロプレンラテックスにイソシアネート等の硬化剤を混合した水系接着剤(例えば特許文献1参照)では、接着力が不十分であるばかりでなく、貯蔵中に反応が進行し、ラテックスの安定性に問題が生じていた。
またクロロプレンとカルボキシル基含有ビニル単量体を共重合して得られるポリクロロプレンラテックスを主剤に、イソシアネート等を硬化剤に含む2液型水系接着剤は(例えば特許文献2参照)、主剤と硬化剤を混合したときの反応のため、ポットライフが短く作業性が良くないという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2000−104028(第2頁:請求項1〜3、第5〜9頁:重合例1〜6、実施例1〜12)
【特許文献2】特開2002−69406(第2頁:請求項1〜9、第11〜15頁:実験例1、実施例1〜9)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決し、接着強度、初期接着強度、耐水性及び耐溶剤性に優れ、なおかつポットライフの長い2液型の水系接着剤組成物、それを用いた接着構造体を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、クロロプレン及びエチレン性不飽和カルボン酸を含む単量体100質量部を、特定構造を有するノニオン系乳化剤1.1〜12質量部の存在下に重合してなるポリクロロプレンラテックスを主成分に含む主剤と、硬化剤を組み合わせることを特徴とした2液型の水系接着剤組成物が、接着力、耐水性及び耐溶剤性に優れ、なおかつ長いポットライフを有することを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、クロロプレン及びエチレン性不飽和カルボン酸を含む単量体100質量部を特定構造を有するノニオン系乳化剤1.1〜12質量部の存在下に重合してなるポリクロロプレンラテックスを主成分に含む主剤と、硬化剤を組み合わせることを特徴とした2液型の水系接着剤組成物およびそれを用いた接着構造体に関するものである。
【0008】
以下本発明を詳細に説明する。本発明におけるクロロプレン重合体は、2−クロロ−1,3−ブタジエン(以下クロロプレンと称す)とエチレン性不飽和カルボン酸単量体との共重合体、またはクロロプレンと共重合可能な単量体の1種以上を更に共重合して得られる共重合体である。
【0009】
本発明におけるクロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸のエステル類、メタクリル酸のエステル類等が挙げられ、必要に応じて2種以上用いてもかまわない。
【0010】
本発明におけるエチレン性不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、グルタコン酸などを挙げることが出来、これらを単独もしくは2種類以上併用して使用することもできる。なお本発明においてはアクリル酸、メタクリル酸を使用することが好ましく、特にメタクリル酸を使用することが好ましい。
【0011】
また本発明におけるエチレン性不飽和カルボン酸の添加量は特に限定するものではないが、単量体100質量部中に0.3〜10質量%含まれることが好ましい。より好ましくは1〜5質量%である。エチレン性不飽和カルボン酸の添加量が、0.3質量%未満の場合は、ラテックスの機械的安定性が悪くなるばかりでなく水系接着剤の接着力も劣る。10質量%を越える場合には、水系接着剤組成物の接着耐水性が悪くなる。
【0012】
本発明におけるノニオン系乳化剤とは下記の構造を有するものである。
ここに R:ベンゼン環及び/またはナフタレン環を1個以
上含む置換基
n=1〜200
R1 :水素または炭素数1〜5のアルキル基
置換基Rの具体例としては例えば下記の構造が挙げられる。また、これらの構造は混合物であっても構わない。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0013】
本発明のノニオン系乳化剤は例えばポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルクレジルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルクレジルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルクレジルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルヒドロキシフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルヒドロキシフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルヒドロキシフェニルエーテル、ポリオキシエチレンナフトールエーテル、ポリオキシエチレンヒドロキシナフチルエーテル、ポリオキシエチレンクレジルナフチルエーテル等を挙げることができる。又これらは混合物であっても構わない。
【0014】
本発明のノニオン系乳化剤のHLB値とは、米国ICI社のグリフィン氏により考案された親水性、疎水性のバランスを示す指標であり、下記の式に従って算出される1〜20の数値である。HLB値が高いほど親水性が高く、HLB値が低いほど親油性が高い。
HLB=(親水基部分の分子量)/(界面活性剤の分子量)×(100/5)
本発明のノニオン系乳化剤のHLB値は9〜19の範囲であることが好ましい。この範囲を外れるとクロロプレン系単量体の安定な重合が困難になる。
本発明のノニオン系乳化剤は更にHLB値が9以上17未満の範囲のものと17〜19の範囲のものを2種類使用することが好ましい。前者のノニオン系乳化剤は安定な重合反応を行うため、重合乳化剤として用いられる。後者のノニオン系乳化剤は、ポリクロロプレンラテックス組成物の機械的安定性を付与する目的で使用される。更にこれら2種類のノニオン系乳化剤のHLB値差は2以上であることが好ましい。
【0015】
本発明のノニオン系乳化剤の添加量は単量体100質量部に対して、1.1〜12質量部である。
更に好ましくは1〜7質量部である。
なお、HLB値が9以上17未満の範囲のものと17〜19の範囲のものを2種類使用する場合は、前者の添加量は1〜10質量部、後者の添加量は0.1〜2質量部である。
【0016】
また本発明におけるポリクロロプレンラテックスは、トルエン不溶のゲル分含有率に関して規定されるものではないが、70質量%以下の範囲にあることが好ましく、さらに2〜60質量%の範囲であることが好ましい。ゲル分含有率が2質量%未満の場合には、接着強度が低下する。またゲル分含有率が70質量%を越えると、初期接着強度や耐水性が低下する。
【0017】
ポリクロロプレンラテックス組成物のゲル分含有率の制御は、▲1▼連鎖移動剤の使用方法とその使用量、▲2▼重合温度、または▲3▼重合率の制御によって可能となる。
【0018】
まず連鎖移動剤としては、クロロプレン重合体の製造に一般的に用いられるものであれば特に制限はなく、例えばn−ドデシルメルカプタンやtert−ドデシルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類、ヨードホルム、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン等の公知の連鎖移動剤を使用することができる。
【0019】
次に重合温度については、0〜55℃の範囲であることが重合制御上好ましい。なお重合反応をより円滑にかつ安全に行うには、重合温度を30〜50℃とすることが好ましい。
【0020】
また最終重合率については、80質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上とすることがより好ましい。重合率が80質量%未満では接着強度が低くなる。
【0021】
本発明のポリクロロプレンラテックスの重合を停止する目的でチオジフェニルアミン、ジエチルハイドロキシルアミン、ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ハイドロキノンメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2−メチレンビス(6−t−4−メチルフェノール)、4,4−ブチレンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等の重合禁止剤を使用することができる。
【0022】
本発明のポリクロロプレンラテックスの重合に使用される触媒としては過硫酸カリウム等の無機過酸化物、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類等の有機過酸化物等を挙げることができる。触媒としては過硫酸カリウムの使用が安定した重合を行う上で好ましい。また、過硫酸カリウムは0.1〜5質量%の水溶液で使用することが好ましい。
【0023】
本発明のポリクロロプレンラテックスの重合に使用される触媒の活性を高める上で、亜硫酸ソーダ、亜硫酸カリウム、酸化鉄(II)、アントラキノンβスルフォン酸ソーダ、フォルムアミジンスルフォン酸、L−アスコルビン酸等を添加することができる。
【0024】
本発明において、ポリクロロプレンラテックス組成物の固形分濃度は40〜65質量%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは45〜60質量%の範囲である。より高い固形分濃度とすることにより、乾燥速度が速く、初期接着性がより優れたラテックスとなる。なお固形分濃度については、重合時のモノマーと水の比率によっても調整できるが、重合後に濃縮を行い調整することが出来る。
【0025】
本発明におけるクロロプレン重合体は重合直後は酸性であり不安定な状態であるため、PHを5〜10に調整することが好ましい。更に好ましくはPHが6〜9である。PHが5未満では長期貯蔵をすると、凝固や分離等変質し易い。またPHが10を越えるアルカリ性溶液は、取り扱いの安全を考えた場合好ましくない。
使用するPH調整剤は例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の強塩基性物質、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、りん酸3ナトリウム、りん酸水素2ナトリウム、りん酸3カリウム、りん酸水素2カリウム、クエン酸3カリウム、クエン酸水素2カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、4硼酸ナトリウム等の塩基性を示す塩類の中から一種類以上を、任意に併用することができる。
【0026】
本発明におけるPH調整剤の添加方法は特に制限を受けるものではなく、PH調整剤粉末を直接添加または水で任意の割合に希釈して添加することができる。
【0027】
本発明における硬化剤は、主に水系接着剤の耐溶剤接着力や耐水接着力を向上させる目的で添加される。例えばエポキシ系化合物、オキサゾリン系化合物、イソシアネート系化合物等を挙げることができる。硬化剤としては特にイソシアネート系化合物が好ましい。
【0028】
本発明における水分散型イソシアネート化合物とは、脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネートから得られる、分子内にビウレット、イソシアヌレート、ウレタン、ウレトジオン、アロファネート等の構造を有するポリイソシアネートポリマーに親水基を導入したものである。
つまり、水中に添加・撹拌すると、微粒子として分散することが可能な自己乳化型イソシアネート化合物である。
【0029】
本発明における金属酸化物としては酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ及び酸化ジルコニウム、酸化硼素、酸化すず、酸化マグネシウム及び酸化バナジウム等を挙げることができる。金属酸化物としては酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ及び酸化ジルコニウムが好ましい。
【0030】
金属酸化物の添加量は、ポリクロロプレンラテックス(固形分換算)100質量部に対して10質量部以下が好ましく、特に7.0質量部以下が好ましい。10.0質量部を越えて添加すると、初期接着力が低下してしまう。
【0031】
本発明の加硫促進剤としては、例えばイソプロピルキサントゲン酸亜鉛やブチルキサントゲン酸亜鉛等のキサントゲン酸塩系化合物、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア等のチオウレア系化合物、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム系化合物が挙げられる。
【0032】
本発明の加硫促進剤を使用する場合の添加量は、ポリクロロプレンラテックス(固形分換算)100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲であることが好ましい。
【0033】
本発明の水系接着剤組成物は初期接着力や耐水性をより高める上で粘着付与樹脂が使用されることがある。例えば、ロジン酸エステル樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族樹脂等を挙げることができる。粘着付与樹脂としてはテルペンフェノール樹脂やロジン酸エステル樹脂のエマルジョンが好ましい。
【0034】
粘着付与樹脂を使用する場合の添加量(固形分換算)は、ポリクロロプレンラテックス(固形分)100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、20質量部以下が特に好ましい。50質量部を越えると耐溶剤性が悪化してしまう。
【0035】
本発明の接着剤組成物は炭酸カルシウム、シリカ、タルク、クレー等の無機充填剤、ジブチルフタレートやプロセスオイルなどの可塑剤・軟化剤、ポリアクリル酸ナトリウム、水溶性ポリウレタン、メチルセルロース等の増粘剤、補助乳化剤としては例えばポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸ソーダ、ラウリル硫酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルフォン酸ソーダ等のアニオン系乳化剤や脂肪族アルカノールアミド等の前記以外のノニオン系乳化剤、各種老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を必要に応じて任意に配合することができる。
【0036】
本発明の接着剤組成物は主剤及び硬化剤等を混合して作られるが、混合装置は特に限定されるものではなく、スリーワンモーター、ホモジナイザーメディアミル、コロイドミル等の公知の装置を使用できる。
【0037】
本発明の接着剤組成物の主剤及び硬化剤の混合比は、主剤中のポリクロロプレンラテックス(固形分)100質量部に対して、硬化剤が固形分で0.5〜15質量部となるように混合することが好ましい。0.5質量部未満では、耐溶剤性が不足し、また15質量部よりも多く添加すれば、接着層の硬度が高くなり、ウェットスーツに仕立てた際の伸縮性が阻害される場合がある。
水系接着剤の粘度は、主剤と硬化剤を混合した後、24時間の間10000[mPas](B型粘度計、25℃、30rpm)以下を保持できることが好ましい。粘度が10000[mPas]より高くなると均一な塗布が難しくなる。
【0038】
本発明における発泡ゴム材としては、天然または合成の発泡されたゴム材料が使用され、具体的には、ポリクロロプレンあるいはクロロスルフォン化ポリエチレン等の独立気泡を有し、しかも伸縮性を有するゴム材料を好適に使用することができる。しかし、ウェットスーツに仕立てた際の、身体へのフィット感、伸縮性、軽量性、断熱・保温効果を考慮すると、発泡ポリクロロプレンが好ましい。
また、例えば特開平11−7908号公報(出願人:株式会社イナポリトレイディング)で提案・使用されているような、硬度あるいは発泡倍率が異なる発泡ゴム材が積層されたものであっても構わない。
【0039】
本発明における布類とは、織物、編物または不織布であるが、伸縮性を有する織物または編物が好ましく、ツーウェイトリコット(縦、横の両方にストレッチ性を有する)の織編物であることがより好ましい。具体的には、ナイロンジャージまたはポリエステルジャージ等が挙げられる。特にウェットスーツ用途には、ストレッチ性、通気性を考慮すればナイロンジャージが最も好ましい。
【0040】
本発明の水系接着剤を発泡ゴム材に塗布する方法及び装置は特に限定されない。刷毛塗り、コテ塗り、スプレー塗布、ロールコーター塗布、バーコーダー塗布及びカーテンフローコーター塗布等が可能である。
塗布量は特に限定されるものではないが、20〜200g/m2(ウェット)が好ましい。
【0041】
本発明の接着構造体は、発泡ゴム材に水系接着剤を塗布した後、直ちに布類を重ねる必要がある。つまり接着剤が完全に乾燥する前に、布類を重ねなければならない。接着剤の水分が全くなくなってから布を重ねると、接着力が悪くなる。布類を重ねるときの圧着装置や圧着条件は、特に限定されるものではない。圧着操作は加熱プレスまたは常温プレスのいずれであっても構わない。しかし、十分な初期接着力を得たい場合には、プレス操作と同時または後に、60℃〜150℃で10〜
600秒の乾燥を行うことが好ましい。
【0042】
以下、実験例、実施例及び比較例により本発明の効果を説明する。なお、以下の説明において特に断りのない限り、部及び%は質量基準を示す。
[実験例1]
内容積3リットルの反応器を用い、窒素気流下で、純水100部及びノニオン系乳化剤A(Newcol714:日本乳化剤社製、HLB値15.0)5.0部、ノニオン系乳化剤B(Newcol740:日本乳化剤社製、HLB値17.9)0.5部を仕込み溶解後、攪拌しながらクロロプレン単量体97部、メタクリル酸3部、及びオクチルメルカプタン0.2部を加えた。これを40℃に保持しながら亜硫酸ナトリウムと過硫酸カリウムを開始剤として用い、最終重合率が90%に達したところでチオジフェニルアミンの乳濁液を加えて、重合を停止した。
【0043】
次に、このポリクロロプレンラテックスに、20%ジエタノールアミンを12部添加してPHを7.0になるように調整した後、更に減圧下で水分を蒸発させ濃縮を行い、固形分濃度が50%となるように調整し、ポリクロロプレンラテックスAを得た。
【0044】
[実施例1]
次にラテックスA(固形分換算)100質量部、酸化亜鉛(堺化学社製の亜鉛華2種)5質量部(固形分換算)及び水溶性ポリウレタン系増粘剤(UH−450/アデカ株式会社製)0.06質量部(固形分換算)を配合して、主剤とした。
硬化剤は、水分散型イソシアネート化合物(武田薬品工業社製タケネートWD−730)を単独でラテックスA100質量部に対して3質量部(固形分換算)となるように混合して使用した。
【0045】
次に、硬化剤と混合後の水系接着剤について、粘度測定を実施した。
[粘度測定]
主剤と硬化剤の混合直後及び混合してから24時間後に、B型粘度計(トキメック社製)で25℃、30rpmの粘度を測定した。結果を表1に示す。24時間後の粘度が10000mPas以下である接着剤について、ポットライフ良好と判断した。
【0046】
主剤と硬化剤を混合した水系接着剤を、発泡ポリクロロプレン(厚さ3mm)に80g/m2塗布した後、直ちにナイロンジャージ布を重ね、110℃に加熱されたプレス装置で1分間圧着し、接着構造体を得た(糊代部のサイズは幅2cm×長さ7cm)。これについて、以下の接着力評価試験をおこなった。結果を表1に示す。
[初期接着力評価試験]
圧着してから10分後に、引張試験機により引張速度200mm/minとして180°剥離強度を測定した。
[常態接着力評価試験]
圧着してから7日後に、引張試験機により引張速度200mm/minとして180°剥離強度を測定した。
[耐水接着力評価試験]
圧着してから1日後に、水に7日間漬けた後、引張試験により引張速度200mm/minとして180°剥離強度を測定した。
[耐溶剤接着力評価試験]
圧着してから14日後に、トルエンに2秒間漬けた後、引張試験により引張速度200mm/minとして180°剥離強度を測定した。
【0047】
[実施例2]
実施例1の主剤に更に、加硫促進剤(ノクセラーZIX:大内新興社製イソプロピルキサントゲン酸亜鉛)を1.0質量部を配合して、実施例1と同様に水系接着剤を作製した。
この水系接着剤について、実施例1と同様の評価試験を行った。
【0048】
[実験例2]
実験例1のノニオン系乳化剤Bをノニオン系乳化剤C(Newcol780:日本乳化剤、HLB値18.9)を0.5部、オクチルメルカプタンを0.3部使用した以外は同様の重合と、PH調整及び固形分濃度調整を行い、ポリクロロプレンラテックスBを得た。
【0049】
[実施例3]
実施例1においてポリクロロプレンラテックスAをBに変えて水系接着剤を作製した。この水系接着剤について、実施例と同様の評価試験を行った。
【0050】
[比較例1]
実験例1で作成した主剤のみを水系接着剤として実施例1と同様の評価試験を実施した。
【0051】
[実験例3]
内容量3Lの反応器を用いて窒素雰囲気中で、水96質量部にけん化度88モル%、重合度550のポリビニルアルコール(デンカポバールB−05/電気化学工業(株)製)3.5質量部を添加、60℃で溶解させた。このポリビニルアルコール水溶液を室温近くまで冷却した後、この石鹸液中にクロロプレン単量体99質量部、メタクリル酸3質量部、オクチルメルカプタン0.3質量部を加えた。これを45℃に保持しながら亜硫酸ナトリウムと過硫酸カリウムを開始剤として重合し、ポリクロロプレンラテックスを得た。次に、このポリクロロプレンラテックスに20質量%ジエタノールアミン水溶液を添加してpHを7.0に調整し、減圧加温により濃縮し、固形分を55質量%になるように調整した。
【0052】
[比較例2]
ポリクロロプレンラテックスAをCに変えて実施例1と同様に水系接着剤を作製し、実施例1と同様の評価試験を実施した。
【0053】
実施例1〜3及び比較例1、2で得られた評価結果を、表1に示した。
【0054】
【表1】
【0055】
【発明の効果】
表1より明らかな如く、本発明の接着剤(実施例1、2、3)は、高い接着力を示し、なおかつ他の接着剤(比較例2)よりもポットライフが長い。
【図面の簡単な説明】
【図1】接着方法及び接着構造体を示す図
【符号の説明】
1:発泡ゴム材
2:接着剤
3:布類
Claims (8)
- エチレン性不飽和カルボン酸の量が0.3〜10質量%含まれることを特徴とする請求項1に記載された水系接着剤組成物。
- ▲1▼HLB値が9以上17未満の範囲にあるノニオン系乳化剤1〜10質量部と、▲2▼HLB値が17〜19の範囲にあるノニオン系乳化剤0.1〜2質量部とを併用することを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載した水系接着剤組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載した主剤中に金属酸化物を含むことを特徴とする水系接着剤組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載した主剤中に、キサントゲン酸塩系及び/またはチオウレア系及び/またはチウラム系の加硫促進剤を含むことを特徴とする水系接着剤組成物。
- 硬化剤が水分散型イソシアネート系化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載した水系接着剤組成物。
- 請求項1〜6いずれか1項に記載した水系接着剤組成物を発泡ゴム剤に塗布した後、直ちに布類を重ねて圧着することにより得られることを特徴とする接着構造体。
- 請求項1〜6いずれか1項に記載した水系接着剤組成物を請求項7に記載した接着方法により接着してなることを特徴とするウェットスーツ。
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