JP2004352891A - ポリエステルポリオールの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリカルボン酸成分とポリオール成分とを反応させてポリエステルポリオールを製造するにあたり、ポリオール成分の一部としてポリプロピレングリコールを使用することを特徴とし、好ましくは残余のポリオール成分としてエチレングリコール類を使用する。
【効果】上記課題が解決される。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステルポリオールの製造方法に関する。さらに詳しくは、硬質ポリウレタンフォームの製造する際に好適に使用される、ポリエステルポリオールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
硬質ポリウレタンフォームは、一般に優れた断熱特性を有することから、冷蔵室、冷蔵庫、冷凍室、冷凍庫、各種建造物などの断熱壁構築用部材として、広く使用されている。硬質ポリウレタンフォームは、一般に、ポリイソシアネート成分からなる液(以下、A液という)と、ポリエーテルポリオール成分、ポリエステルポリオール成分および発泡剤、さらに必要に応じて、触媒や整泡剤などを混合した混合液(以下、B液という)を用意し、A液とB液とを混合して、短時間で発泡、硬化させる方法によって製造される。このため硬質ポリウレタンフォームの製造に使用されるポリエステルポリオールには、低粘度であること、および発泡剤との相溶性に優れていることが必要である。
【0003】
近年オゾン層の破壊が問題となり、従来硬質ポリウレタンフォームの発泡剤として使用されていたフロン系発泡剤の一部が使用禁止され、現在使用できるフロン系発泡剤としては、オゾン層破壊係数の小さいHCFC−141bが主として使用されている。しかしこのHCFC−141bも、オゾン層破壊係数がゼロではないので、将来、使用が制限される可能性もある。その代替品としては、HFC−245fa、HFC―365mfc、ペンタン、シクロペンタンなどが想定されている。
【0004】
ところで、HFC−245fa、HFC―365mfc、ペンタン、シクロペンタンなどの、将来使用が想定される発泡剤に共通の問題点として、B液の主成分であるポリエーテルポリオール成分、およびポリエステルポリオール成分との相溶性が悪いことが挙げられるが、特にポリエステルポリオール成分との相溶性の悪さが大きな問題である。この相溶性が改良されれば、均一安定性の良いB液が得られ、また、ポリエーテルポリオール成分、ポリエステルポリオール成分などの種類、およびその混合比率など、B液処方の自由度の向上につながる。B液の均一安定化を図るために、一般に整泡剤として、界面活性剤、特にノニオン系界面活性剤を添加することが広く行われているが、上記の場合、その効果は充分とは言い得ない。
【0005】
【特許文献1】
特開平11―60918号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、上記の発泡剤とポリエステルポリオール成分との相溶性の悪さの問題を解決し、発泡剤との相溶性に優れ、かつ、低粘度のポリエステルポリオールの製造方法を提供することを目的として、鋭意検討を重ねた結果、反応成分として特定のグリコールを用いることで、発泡剤との相溶性が高く、かつ低粘度のポリエステルポリオールが得られることを見出して、本発明に到達した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、ポリカルボン酸成分と、ポリオール成分を反応させてポリエステルポリオールを製造するにあたり、ポリオール成分の一部としてポリプロピレングリコールを使用することを特徴とするポリエステルポリオールの製造方法及び当該製造方法によって製造されたポリエステルポリオールを提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明する。
本発明によって製造されるポリエステルポリオールは、ポリカルボン酸成分とポリオール成分との反応によって得られるポリエステルポリオールであり、好適には、硬質ポリウレタンフォームを製造する際に使用されるポリエステルポリオールである。
【0009】
上記ポリエステルポリオールの製造原料であるポリカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸または芳香族トリカルボン酸が挙げられ、好ましいのは、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの芳香族ポリカルボン酸、およびこれらの酸無水物などである。さらに、これら芳香族ポリカルボン酸に、若干量のコハク酸、マレイン酸、アジピン酸などの脂肪族ポリカルボン酸を混合して使用することもできる。これらポリカルボン酸成分のうち、特に好ましいのは、フタル酸、無水フタル酸またはテレフタル酸などである。
【0010】
上記ポリエステルポリオールの製造原料であるポリオール成分としては、通常、ポリエステルポリオールの製造に使用される各種のポリオールが使用されるが、好ましくはエチレングリコールやジエチレングリコール等のエチレングリコール類を使用する。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールが挙げられ、より好ましいのは、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールである。これらエチレングリコール類は、単独でも2種以上の混合物であってもよい。原料ポリオール成分として、これらエチレングリコール類以外のポリオールを使用することもできる。使用できるポリオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのジオールおよびトリオールが挙げられる。
【0011】
本発明においては、ポリオール成分の一部としてポリプロピレングリコールを使用することが必須条件である。ポリプロピレングリコールとして好ましいのは、入手のしやすさ、反応時の取り扱い及び得られるポリエステルポリオールの性状から、数平均分子量200〜3,000のポリプロピレングリコールであり、最も好ましくは数平均分子量250〜1,000のポリプロピレングリコールである。なお、ポリプロピレングリコールは、工業的にはプロピレンオキサイドの開環重合により様々な分子量分布のものが得られるが、その分子量分布や製造方法により、モノマーであるプロピレングリコールあるいはジプロピレングリコールやトリプロピレングリコール等の低重合度のものが含まれていてもよい。
【0012】
ポリプロピレングリコールの使用量は、ポリオール成分の10〜60重量%とするのが好ましい。これらポリプロピレングリコールの使用量が、ポリオール成分の10重量%未満では、発泡剤との相溶性向上、および粘度を低下させる効果が小さく、60重量%を越えると、硬質ポリウレタンフォームを製造した際に、フォームの強度などに悪影響が表れる傾向があり、いずれも好ましくない。上記範囲で特に好ましいのは、20〜40重量%である。
【0013】
目的とするポリエステルポリオールは、上記ポリカルボン酸成分とポリオール成分とを、触媒の存在下に、通常、150〜230℃で反応させることによって製造される。上記二成分を反応させる際の圧力は、常圧でもよいが、副生する水を系外に除去し反応を速やかに完結させるために、反応の進行に伴って徐々に減圧するのが好ましい。また、特に反応開始時には、生成するポリエステルポリオールの着色を防ぐために、反応容器の空間部を窒素ガスで置換し、さらに反応液中の溶存酸素も除去することが好ましい。触媒としては、一般に酸触媒が使用される。例えば、ルイス酸であるテトライソプロピルチタネートが好適であるが、パラトルエンスルホン酸などのブレンステッド酸であってもよい。
【0014】
本発明に係る製造方法によって得られるポリエステルポリオールは、硬質ポリウレタンフォーム製造用として好適である。硬質ポリウレタンフォームは、ポリイソシアネート成分、ポリエーテルポリオール成分、ポリエステルポリオール成分および発泡剤、さらに必要に応じて、触媒や整泡剤などを混合して、短時間で発泡、硬化させる方法によって製造することができる。
【0015】
上記ポリイソシアネート成分としては、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する有機化合物であればよく、特に限定されない。例えば、脂肪族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネートおよび芳香族系ポリイソシアネート、またはこれらの変性物が挙げられる。好ましくは、芳香族系ポリイソシアネート、またはこれらの変性物が挙げられ、その例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、およびこれらのカルボジイミド変性などが挙げられる。
【0016】
上記ポリエーテルポリオール成分としては、アルキレンオキシド重合物、糖重合物、および、これらのアミン変性物、ポリアミンとアルキレンオキシドの反応物などが挙げられる。ポリエーテルポリオール成分は、多品種市販されているので入手が容易であり、これら市販品を単独で、または混合して使用することができる。
【0017】
上記ポリエステルポリオール成分としては、上記方法によって製造されるポリエステルポリオールを用いる。この場合、発泡剤との相溶性が向上しているので、発泡剤としてHFC−245fa、HFC−365mfcなどのフロン系発泡剤、または、ペンタン、シクロペンタンなどの炭化水素系発泡剤などの環境的に好適な発泡剤を使用することができる。これらの発泡剤は、単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
【0018】
硬質ポリウレタンフォーム製造時に使用できる触媒としては、通常のウレタンフォームの製造に使用される公知の触媒が制限なく使用できる。例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミンなどのアミン系触媒が挙げられる。硬質ポリウレタンフォーム製造時に使用できる整泡剤しては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、およびカチオン系界面活性剤などを挙げることができる。中でもノニオン系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤が好適である。
【0019】
【実施例】
以下、本発明に係る製造方法の具体的例を、実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。
【0020】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却機、加熱装置、温度計、圧力計などを装備した容積が1リットルのガラス製反応器に、無水フタル酸412g、ジエチレングリコール515g、ポリプロピレングリコール(数平均分子量400)123gを仕込み、反応器の空間部を窒素ガスで置換した後、反応器内容物の加熱を開始した。反応器内温が180℃に達した時点で、触媒としてテトライソプロピルチタネート0.3gを仕込み、反応を開始した。その後、2時間かけて内温を200℃に昇温し、反応終了までこの温度に保持した。一方、反応器内の圧力は、内温が180℃の時点から200℃に達するまでは、常圧に対する減圧度で−13.3kPaに維持した。その後4時間かけて徐々に減圧して常圧に対する減圧度で−88.0kPaとし、反応が終了するまでこの圧力を保持した。
【0021】
反応の進行に伴い、反応混合物は均一な溶液になることが目視観察された。反応進行中に、反応混合物の一部を反応器から抜き出して、抜き出した試料につき酸価を測定して反応進行状況確認の指標とした。酸価はJIS K15571970に準拠して測定した。反応の終了は、酸価が3以下となり、かつ、反応内容物が均一な溶液となった時点とし、触媒の仕込みから反応終了までの反応時間は8時間であった。反応終了後、加熱を停止して100℃付近まで冷却し、反応生成物を抜き出し、抜き出した試料につき粘度を測定した。粘度は、回転粘度計(B型粘度計)を使用し、25℃の温度で測定した。また、得られたポリエステルポリオールに対する発泡剤(HFC−245faおよびHFC−365mfc)の溶解度を測定した。これらの結果を、「表1」に示した。なお、発泡剤の溶解度は、室温・大気圧下の解放系において、所定量のポリエステルポリオールに発泡剤を徐々に添加し、目視で透明な均一相を形成しうる最大添加量を測定して溶解度とした。
【0022】
[実施例2]
実施例1に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸376g、ジエチレングリコール466g、ポリプロピレングリコール(数平均分子量400)203gを用いた外は、同例におけると同様の手順で反応させた。得られたポリエステルポリオールにつき、実施例1におけると同様に、粘度と発泡剤の溶解度を測定し、結果を「表1」に示した。
【0023】
[実施例3]
実施例1に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸302g、ジエチレングリコール420g、ポリプロピレングリコール(数平均分子量700)314gを用いた外は、同例におけると同様の手順で反応させた。得られたポリエステルポリオールにつき、実施例1におけると同様に、粘度と発泡剤の溶解度を測定し、結果を「表1」に示した。
【0024】
「実施例4」
実施例1に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸306g、ジエチレングリコール377g、ポリプロピレングリコール(数平均分子量400)355gを用いた外は、同例におけると同様の手順で反応させた。得られたポリエステルポリオールにつき、実施例1におけると同様に、粘度と発泡剤の溶解度を測定し、結果を「表1」に示した。
【0025】
「比較例1」
実施例1に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸469g、ジエチレングリコール588gを用いた外は、同例におけると同様の手順で反応させた。得られたポリエステルポリオールにつき、実施例1におけると同様に、粘度と発泡剤の溶解度を測定し、結果を「表1」に示した。
【0026】
「実施例5」
実施例1に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸85g、テレフタル酸383g、ジエチレングリコール462g、エチレングリコール36g、ポリプロピレングリコール(数平均分子量400)127gを用いた外は、同例におけると同様の手順で反応させた。得られたポリエステルポリオールにつき、実施例1におけると同様に、粘度と発泡剤の溶解度を測定し、結果を「表1」に示した。
【0027】
「実施例6」
実施例1に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸78g、テレフタル酸348g、ジエチレングリコール417g、エチレングリコール33g、ポリプロピレングリコール(数平均分子量400)210gを用いた外は、同例におけると同様の手順で反応させた。得られたポリエステルポリオールにつき、実施例1におけると同様に、粘度と発泡剤の溶解度を測定し、結果を「表1」に示した。
【0028】
「実施例7」
実施例1に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸61g、テレフタル酸273g、ジエチレングリコール376g、エチレングリコール26g、ポリプロピレングリコール(数平均分子量700)331gを用いた外は、同例におけると同様の手順で反応させた。得られたポリエステルポリオールにつき、実施例1におけると同様に、粘度と発泡剤の溶解度を測定し、結果を「表1」に示した。
【0029】
「実施例8」
実施例1に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸49g、テレフタル酸221g、ジエチレングリコール348g、エチレングリコール21g、ポリプロピレングリコール(数平均分子量1,000)416gを用いた外は、同例におけると同様の手順で反応させた。得られたポリエステルポリオールにつき、実施例1におけると同様に、粘度と発泡剤の溶解度を測定し、結果を「表1」に示した。
【0030】
「比較例2」
実施例1に記載の例において、仕込み成分を、無水フタル酸98g、テレフタル酸437g、ジエチレングリコール531g、エチレングリコール41gを用いた外は、同例におけると同様の手順で反応させた。得られたポリエステルポリオールにつき、実施例1におけると同様に、粘度と発泡剤の溶解度を測定し、結果を「表1」に示した。
【0031】
【表1】
【0032】
「表1」より、次のことが明らかである。
(1)ポリカルボン酸成分とポリオール成分とを反応させてポリエステルポリオールを製造するに際し、ポリプロピレングリコールを併用した実施例1〜実施例8においては、いずれもポリエステルポリオールの粘度が低く、かつ発泡剤の溶解度が大きい。
(2)これに対し、ポリプロピレングリコールを併用しなかった比較例1〜比較例2においては、それぞれ対応する実施例1〜実施例8と比較して、ポリエステルポリオールの粘度が高く、かつ発泡剤の溶解度が小さい。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明した通りであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大きい。
(1)本発明に係るポリエステルポリオールの製造方法によれば、ポリカルボン酸成分とポリオール成分とを反応させてポリエステルポリオールを製造するに際し、ポリオール成分の一部として、ポリプロピレングリコールを使用することにより、HFC−245fa、HFC―365mfc、ペンタン、シクロペンタンなどの環境的に好適な発泡剤と、B液の主成分、特にポリエステルポリオール成分との相溶性の悪さの問題が解決され、硬質ポリウレタンフォームの製造に好適に使用されるポリエステルポリオールが提供される。
(2)本発明に係るポリエステルポリオールの製造方法によれば、発泡剤との相溶性の良好なポリエステルポリオールが提供されるので、硬質ポリウレタンフォームの製造に好適に使用される均一安定性の良いB液が得られ、また、ポリエーテルポリオール成分、ポリエステルポリオール成分などの種類、およびその混合比率などのB液処方の自由度の向上にもつながる。
Claims (7)
- ポリカルボン酸成分と、ポリオール成分とを反応させてポリエステルポリオールを製造するにあたり、ポリオール成分の一部としてポリプロピレングリコールを使用することを特徴とするポリエステルポリオールの製造方法。
- ポリプロピレングリコール以外のポリオール成分として、エチレングリコール類を使用することを特徴とする請求項1に記載のポリエステルポリオールの製造方法。
- ポリプロピレングリコールの数平均分子量が200〜3,000である、請求項1または請求項2に記載のポリエステルポリオールの製造方法。
- ポリプロピレングリコールの使用量が、ポリオール成分の10〜60重量%である請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のポリエステルポリオールの製造方法。
- ポリエステルポリオールが、硬質ポリウレタンフォームの製造に使用されるものである、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のポリエステルポリオールの製造方法。
- 硬質ポリウレタンフォームを製造する際に、発泡剤として、HFC−245fa、HFC−365mfc、ペンタンおよびシクロペンタンからなる群から選ばれた少なくとも1種の発泡剤を使用するものである、請求項5に記載のポリエステルポリオールの製造方法。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法で製造されたポリエステルポリオール。
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