JP2004347530A - 静電容量式センサ - Google Patents
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Abstract
【課題】変位の検出値のダイナミックレンジを広げて検出感度を向上させ、錘による可動部の鉛直方向への変位を補正せずに、固定電極,可動電極間の静電容量の変化量により、錘に作用する力を検出できる静電容量式センサを提供する。
【解決手段】本発明の静電容量式センサは、固定基板に形成された固定電極と、該固定基板に所定の間隔にて対向配置され、揺動動作可能に支持された可動部に設けられた可動電極とを有し、可動部の変位による、可動電極と固定電極とで構成される容量素子の静電容量の変化により、可動部の揺動動作を検出するものであり、固定電極の電極面におけるX−Y座標面の第1から第4象限に各々対応して、容量素子が1つずつ設けられ、相反的に容量が変化する容量素子の対を構成し、一対毎に容量素子間の静電容量の容量差を減算により求め、求められた各対の容量差を加算して、加算結果により、X軸方向及びY軸方向の揺動動作の変位を検出する。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の静電容量式センサは、固定基板に形成された固定電極と、該固定基板に所定の間隔にて対向配置され、揺動動作可能に支持された可動部に設けられた可動電極とを有し、可動部の変位による、可動電極と固定電極とで構成される容量素子の静電容量の変化により、可動部の揺動動作を検出するものであり、固定電極の電極面におけるX−Y座標面の第1から第4象限に各々対応して、容量素子が1つずつ設けられ、相反的に容量が変化する容量素子の対を構成し、一対毎に容量素子間の静電容量の容量差を減算により求め、求められた各対の容量差を加算して、加算結果により、X軸方向及びY軸方向の揺動動作の変位を検出する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電容量式センサに関し、特に、固定電極と可動電極との間の静電容量により、傾斜状態、加速度、衝撃などを検知するセンサ構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
静電容量の変化を利用した静電容量式センサとしては、例えば、図8に示される構成のセンサ(特許文献1)が知られている。
このセンサは、図8に示すように、X−Y座標面に対して平行に対向配置された基板1000,1003上にそれぞれ電極1001a,1001b(及び1001c,1001d)と可動電極1004とが形成されている。この可動電極1004は可撓性を有する可動基板1003上に設けられ、X−Y座標面に対して変位面を有する、揺動可能な可動電極として機能している。ここで、上記センサは、固定電極1001の電極が、図9に示すように、X−Y座標面の第1,第2,第3及び第4象限に各々対応して分離され、例えば、電極1001として、1001a,1001b,1001c,1001dにより4つの容量素子が形成されているが、可動電極1004を各象限に対応させて分割して、各象限に対応する容量素子を形成しても良い。
【0003】
また、この可動基板1003には錘1005が取り付けられており、センサが傾斜したりセンサに外部応力が作用したりした際に、この錘1005が可動基板1003を歪ませ、上記固定電極と可動電極とで形成された1001a,b,c,dの4つの容量素子の静電容量を変化させるようになっている。そして、図10に示す検出回路により、上記4つの容量素子の静電容量を測定し、所定の演算を行うことで傾斜や外力等が検出される。すなわち、図10に示す検出回路においては、静電容量から変位量を検出する演算の処理を、以下に示すa,b,c,dの順序にて行っている。
【0004】
a.第1,第2,第3,第4の容量素子において、X軸に平行な容量素子の対、例えば第1及び第2の容量素子の対と第3及び第4の容量素子の対とを形成し、また、Y軸に平行な容量素子の対、例えば第1及び第4の容量素子の対と第2及び第3の容量素子の対とを形成する。
b.各々の容量素子の静電容量をCV変換回路により電圧値に変換し、各対毎に容量素子に対応させて上記電圧値の加算処理を行う。第1,第2,第3,第4の容量素子の静電容量の変換後の電圧値を、それぞれV1,V2,V3,V4とすると、X軸に平行な容量素子の各対の電圧値の加算値は「V1+V2」及び「V3+V4」となり、Y軸に平行な容量素子の各対の電圧値の加算値は「V1+V4」及び「V2+V3」となる。
c.X軸に平行な容量素子の各対の加算値の差電圧VY、すなわち「(V1+V2)−(V3+V4)」を求め、Y軸に平行な容量素子の各対の加算値の差電圧VX、すなわち「(V1+V4)−(V2+V3)」を求める。そして、差電圧VYによりY軸方向の変位を検出し、差電圧VXによりX軸方向の変位を検出する。
【0005】
【特許文献1】
特許第3027457号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記センサにおいては、X軸に平行な容量素子の対毎の加算値を求め、これらの対の加算値の差電圧VY、同様な方法で差電圧VXを求めているが、始めに上記対毎に加算値を求める場合、変位のない平行時の初期容量を含めて加算することにより加算結果の電圧値が大きくなり、かつ、加算結果の電圧値全体における、変位に基づく静電容量の変化量の割合が、初期容量の加算値に比較して小さいため、静電容量の変化量の検出に対するダイナミックレンジが低下することにより、変位の検出感度を向上させることができない。
【0007】
また、静電容量式センサにおいて、固定電極1001と可動電極1004との電極間の距離によりセンサの感度を調整することができるが、感度を向上させようとすると、電極間の距離を短くする必要があり、変位に対する静電容量の変化量が増加するとともに、平衡状態における静電容量も増加することとなり、結局、加算値において、電圧値全体に占める変位に基づく静電容量の変化量の割合を、効果的に増加させることができないため、変位の検出感度を向上させることができない。
【0008】
さらに、従来例のセンサ構成においては、錘1005の重さによって可動基板1003は可撓性のある材料を使用するため、若干撓んで変位した状態となっており、可動基板1003と固定基板1000とのギャップが定まりにくく、バラツキも生じ、かつ可動基板1003が撓み易い材質で形成されるため、経時変化により静電容量が変化することが考えられ、ギャップが変化することにより、変位の検出結果がずれていく虞がある。
【0009】
加えて、検出される静電容量に基づく信号には、上記可動基板1003の歪みによる静電容量の変化(実際に測定したい変位に基づく静電容量の変化量)の他に、この可動電極1004のZ軸方向の変位による静電容量の増分がオフセットとして含まれる。このオフセットは、センサの傾斜角θが小さい場合には重力の方向と可動基板1003の変位の方向とが一致するため大きくなり、センサの傾きが垂直に近い場合には重力の方向と変位の方向とが直交するため殆どゼロとなる。すなわち、センサの傾斜の角度により、可動電極1004全体のZ軸方向の変化量が異なるため、オフセット量が角度ごとに変化してしまうこととなる。
【0010】
このため、センサの構成にもよるが、傾斜を検出する際に、その検出範囲が狭い角度範囲に限定されてしまい、センサを外部機器に取り付ける場合、傾斜等の検出範囲が狭いことから、その取り付けの自由度が小さくなってしまうという不都合もある。そして、静電容量は錘1005に作用する力に対して極大値をもって変化するため、容量変化から傾斜角を求める場合、前記変位による可動電極1003の鉛直方向の変化分を補正する演算が必要となり、計算が複雑になる。このため、処理回路が高価となるとともに、補正演算により検出精度が落ちてしまう。
【0011】
本発明は、上述の課題に鑑みなされたものであり、変位の検出値のダイナミックレンジを広げて検出感度を向上させるとともに、錘による可動部のZ軸方向への変位を補正することなく、固定電極と可動電極との間の静電容量の変化量に基づいて、錘に作用する力を検出できる静電容量式センサを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願発明の静電容量式センサは、固定基板に形成された固定電極と、該固定基板に所定の間隔にて対向配置され、揺動動作可能に支持された可動部に設けられた可動電極とを有し、前記可動部の変位による、前記可動電極と前記固定電極とにて構成される容量素子の静電容量の変化に基づき、前記可動部の揺動動作を検出する静電容量式センサであり、前記固定電極の電極面におけるX−Y座標面の第1から第4象限に各々対応して、前記容量素子が1つずつ設けられており、相反的に容量が変化する前記容量素子の対を構成し、一対毎に容量素子間の静電容量の容量差を減算により求め、求められた各対の容量差を加算して、該加算結果に基づき、X軸方向及びY軸方向における揺動動作の変位を検出することを特徴としている。
本構成によれば、相反的に静電容量が変化する容量素子の対において、対を構成する容量素子間の容量差を減算して求め、この容量差を加算することにより、容量の変化量を実質的に増加させ、可動部における変位の検出感度を向上させるとともに、減算を行うことで、平衡状態における初期オフセット及びZ軸方向の変位の影響による静電容量の変化分をキャンセルすることにより、X軸及びY軸方向各々の変位に基づく変化量のみを抽出することができ、これにより、変化量のみに対する演算を行え、変位量検出の演算のダイナミックレンジを広くとることが可能となり、演算による検出感度及び検出精度を向上させることができる。また、固定電極と可動電極との間隔を縮めて、変位による単位当たりの静電容量の変化(変化率)を大きくすることで、変位の検出感度を向上させる場合、間隔が狭まるために、初期オフセットとしての静電容量が増加したとしても、演算の始めに、相反的に静電容量が変化する容量素子の対において、対を構成する容量素子間の容量差を減算して求めるため、既にのべたように、初期オフセットの静電容量が増加したとしても、最初の減算処理によりキャンセルされるため、ダイナミックレンジを狭めることなく、変位量の演算のみにダイナミックレンジを使用することができるため、初期オフセットの静電容量が増加によって検出精度を低下させることなく、容易に検出感度を向上させることができる。
【0013】
本願発明の静電容量式センサは、前記第1及び第2象限に各々対応する第1,第2の容量素子の静電容量の第1の容量差を求める第1の減算手段と、前記第4及び第3象限に各々対応する第4,第3の容量素子の静電容量の第2の容量差を求める第2の減算手段と、前記第1及び第2の容量差を加算する第1の加算手段と、前記第2及び第3象限に各々対応する第2,第3の容量素子の静電容量の第3の容量差を求める第3の減算手段と、前記第1及び第4象限に各々対応する第1,第4の容量素子の静電容量の第4の容量差を求める第4の減算手段と、前記第3及び第4の容量差を加算する第2の加算手段とを有し、第1の加算手段の加算結果によりX軸方向の変位、また第2の加算手段の加算結果によりY軸方向の変位を検出することを特徴としている。
本構成によれば、相反的に静電容量が変化する容量素子対における容量差、すなわち、第1,第2の容量素子の第1の容量差と、第4,第3の容量素子の第2の容量差とを減算して求め、この第1及び第2の容量差を加算することにより、容量の変化量を実質的に増加させることができ、可動部における変位の検出感度を実質的に向上させるとともに、減算を行うことで、平衡状態における初期オフセット及びZ軸方向の変位の影響による静電容量の変化分をキャンセルすることにより、X軸方向の変位に基づく変化量のみを抽出することができ、変化量に対する演算のみを行えばよく、演算のダイナミックレンジを広くとることが可能となり、X軸方向の変位量の検出感度及び検出精度を向上させることができる。
また、相反的に静電容量が変化する容量素子対における容量差、すなわち、第2,第3の容量素子の第3の容量差と、第1,第4の容量素子の第4の容量差とを減算してもとめ、この第3及び第4の容量差を加算することにより、上述したX軸方向の変位の検出と同様に、Y軸方向の変位量の検出感度及び検出精度も向上させることができる。
【0014】
本願発明の静電容量式センサは、前記第1及び第3象限に各々対応する第1,第3の容量素子の静電容量の第1の容量差を求める第1の減算手段と、前記第4及び第2象限に各々対応する第4,第2の容量素子の静電容量の第2の容量差を求める第2の減算手段と、前記第1及び第2の容量差を加算する第1の加算手段と、前記第1及び第3象限に各々対応する第1,第3の容量素子の静電容量の第3の容量差を求める第3の減算手段と、前記第2及び第4象限に各々対応する第2,第4の容量素子の静電容量の第4の容量差を求める第4の減算手段と、前記第3及び第4の容量差を加算する第2の加算手段とを有し、第1の加算手段の加算結果によりX軸方向の変位、また第2の加算手段の加算結果によりY軸方向の変位を検出することを特徴としている。
本構成によれば、相反的に静電容量が変化する容量素子対における容量差、すなわち、第1,第3の容量素子の第1の容量差と、第4,第2の容量素子の第2の容量差とを減算して求め、この第1及び第2の容量差を加算することにより、容量の変化量を実質的に増加させることができ、可動部における変位の検出感度を実質的に向上させるとともに、減算を行うことで、平衡状態における初期オフセット及びZ軸方向の変位の影響による静電容量の変化分をキャンセルすることにより、X軸方向の変位に基づく変化量のみを抽出することができ、変化量に対する演算のみを行えばよく、演算のダイナミックレンジを広くとることが可能となり、X軸方向の変位量の検出感度及び検出精度を向上させることができる。
また、相反的に静電容量が変化する容量素子対における容量差、すなわち、第1,第3の容量素子の第3の容量差と、第2,第4の容量素子の第4の容量差とを減算してもとめ、この第3及び第4の容量差を加算することにより、上述したX軸方向の変位の検出と同様に、Y軸方向の変位量の検出感度及び検出精度も向上させることができる。
【0015】
本願発明の静電容量式センサは、前記固定基板と前記可動部に設けられた錘との間に配置され、前記可動部を揺動自在に支持する支持体を有することを特徴としている。
本構成によれば、前記支持体により、前記固定基板に対して前記可動部のZ軸方向への変位を抑制することで、平衡状態において固定基板と可動部とのギャップを一定にすることができ、かつ、センサが傾斜、またはセンサに外力が加わることにより可動部が揺動する際、可動部がX軸方向及びY軸方向のみに変位するように制御することができ、X軸及びY軸方向の変位に対するZ軸方向の変位の影響を防止し、演算によるZ軸方向の変位の補正を行う必要が無くなることにより、X軸及びY軸方向における変位量の検出感度及び検出精度を向上させることができる。
【0016】
本願発明の静電容量式センサは、前記支持体の高さにより、前記固定基板と可動部との間隔を制御し、該可動部の変位の検出感度を調整することを特徴としている。
本構成によれば、支持体により前記固定基板と可動部との間隔を一定に制御しているため、センサ間におけるギャップのばらつきがなく、間隔の経時変化もないことにより、センサ間および時間経過による検出のばらつきを防止し、演算によるZ軸方向の変位の補正を行う必要が無くなることにより、検出精度を低下させることなく、X軸及びY軸方向における変位量の検出感度を、前記ギャップを調整することにより、容易に向上させることができる。
【0017】
本願発明の静電容量式センサは、前記可動部が前記固定基板に対向して配設された他の基板に中間部とともに形成されており、該中間部が該他の基板を固定する支持部に第1の軸回りに揺動可能に支持され、前記可動部が前記第1の軸と直交する第2の軸回りに揺動可能に、前記中間部に支持されていることを特徴としている。
本構成によれば、可動部は支持部と中間部とにより、第1及び第2の軸回りに独立して揺動可能となり、可動部がX軸及びY軸方向に揺動し易くなり、揺動の際における固定電極と可動電極との変位量を大きくすることができ、X軸及びY軸方向の2軸方向の変位の検出を感度良く行うことができる。
【0018】
本願発明の静電容量式センサは、前記支持部と前記中間部とが前記第1の軸に平行な第1の連結部により連結され、前記中間部と前記可動部とが前記第2の軸に平行な第2の連結部により連結され、前記支持部,前記中間部,前記可動部,前記第1及び第2の連結部とが前記他の基板に溝孔を設けて一体に形成されていることを特徴としている。
本構成によれば、例えば、単一の板材に切り込み(溝孔)を設けることにより、容易に支持部,中間部,可動部,第1及び第2の連結部を形成することができるため、製造精度を高めた製造が容易となり、かつ、センサにおける揺動部分の強度を向上させることが可能である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態に係る静電容量センサの構造を、図4から図7を参照して説明する。図4は、本発明の実施形態に係る静電容量センサの全体構成を示す概略断面図、図5は本発明の実施形態に係る静電容量センサの全体構成を示す分解斜視図、図6は基板の平面図、図7は基板に対向して設けられている金属板(可動電極)の平面図である。
【0020】
本発明の実施形態に係る静電容量式センサ100は、図4に示すように、基板10の上面11S側に、静電容量の変化量に対応して、揺動の変位量を検出するための容量素子が設けられた検出部200を備え、基板10の下面13R側に検出部200から検出された静電容量を処理する回路素子300を備えて構成されている。本実施形態では、検出部200は静電容量式の傾斜センサとして構成され、回路素子300としてはIC(集積回路)のベアチップが用いられている。
【0021】
検出部200は、静電容量式センサ100の傾斜を容量変化として検出する静電容量式の傾斜センサであり、図5に示すように、基板(固定基板)10の上面11S上に形成された四つの固定電極11aと、これらの固定電極11aに対向する金属板(可動電極)30と、この金属板30にひねり変形を加えるための錘40とを備えて構成されている。
図6に示すように、基板10の上面11Sの中央部には四つの固定電極11aが碁盤目状に形成され、すなわち、第1の固定電極(信号検出用コンデンサC2に対応)が第1象限に形成され、第2の固定電極(信号検出用コンデンサC1に対応)が第2象限に形成され、第3の固定電極(信号検出用コンデンサC3に対応)が第3象限に形成され、第4の固定電極(信号検出用コンデンサC4に対応)が第4象限に形成されている。上面11Sの外周部には上記四つの固定電極11aを囲むように四角枠状の電極11bが形成されている。この電極11bは、基板10に設けられた図示してないスルーホール電極や配線パターン等を介して基板10の裏面側に実装された回路素子300の駆動信号用の端子(図示せず)に接続されている。
【0022】
また、基板10の上面11Sに形成された四つの固定電極11aの中心部には金属板30を支持し、Z軸方向の変位を抑制する支持用突起12(支持体)が形成されている。この構成によれば、支持用突起12により、固定基板10に対して可動部30dのZ軸方向への変位を抑制することで、平衡状態において固定基板10と可動部30dとのギャップを一定にすることができ、かつ、センサが傾斜、またはセンサに外力が加わることにより可動部30dが揺動する際、可動部30dがX軸方向及びY軸方向のみに変位するように制御することができ、X軸及びY軸方向の変位に対するZ軸方向の変位の影響を防止し、演算によるZ軸方向の変位の補正を行う必要が無くなることにより、X軸及びY軸方向における変位量の検出感度及び検出精度を向上させることができる。
【0023】
そして、電極11b上には矩形枠状をなした金属製の導電性スペーサ20が配され、このスペーサ20上に可動電極を構成する薄い金属板30が積重されている。この金属板30と固定電極11aとの間隔は支持用突起12及びスペーサ20の厚みによって一定に保持され、金属板30と四つの固定電極11aとにより四つの容量可変式の信号検出用コンデンサが形成されている。したがって、金属板(可動電極)30は、センサの外周に沿った枠状の導電性のスペーサ20、電極11b、基板10のスルーホール電極、配線パターン等を介して回路素子300の駆動信号用の端子に導通接続されている。
【0024】
金属板30は、図7に示すように、この金属板30の外周部として構成される枠状の支持部30aと、この支持部30aにより第1の連結部30c回りに揺動可能に支持された中間部30bと、この中間部30bにより上記の第1の連結部30cと直交する第2の連結部30e回りに揺動可能に支持された導電性の可動部30dとからなり、可動部30dは連結部30c,30eのひねり変形により二軸回りに揺動可能に構成されている。
【0025】
具体的には、支持部30aは、固定基板及び金属板の間隔(キャップ)を保持するスペーサ20と重なるように配置され、その対向する一対の辺の内周中央に、内側に向かう第1の軸線(X軸)に平行な一対の第1の連結部30cが設けられている。この一対の第1の連結部30cの他端は、支持部30aの内周に沿うように設けられた枠状の中間部30bにつながっており、中間部30bは傾斜により一対の第1の連結部30cがひねり変形することにより、第1の軸線回りに揺動できるように形成されている。
【0026】
また、中間部30bの内周には、第1の軸線に直交する第2の軸線に平行に、互いに対向する一対の第2の連結部30eが設けられている。この一対の第2の連結部30eの他端は、その外周が中間部30bの内周に沿うように設けられた矩形の可動部30dにつながっており、この可動部30dは第2の連結部30eがひねり変形することにより、第2の軸線回りに揺動できるように形成されている。なお、連結部30c,30eの軸方向はそれぞれ碁盤目状に配置された固定電極11aの行方向又は列方向に一致するように構成されており、可動部30dの揺動を感度良く検出できるようになっている。
【0027】
ここで、他の基板としての金属板30は、支持部30a,中間部30b,第1の連結部30c,可動部30d,第2の連結部30eは全て一枚の金属板に溝孔(スリット)を設ける事で形成している。そのため、加工も容易で、又精度も出しやすい。すなわち、支持部30aと中間部30bとは第1の連結部30cを除く位置に設けられた平面視「コ」字形の第1のスリット31により分離され、中間部30bと可動部30dとは第2の連結部30eを除く位置に設けられた平面視「コ」字形の第2のスリット32により分離されている。また、可動部30dは金属の板材として(すなわち金属板30を加工して)構成されるため、揺動可能な可動部30dは本発明の可動電極としても機能する。
【0028】
また、金属板30では、ひねりによって第1の連結部30c,第2の連結部30eが塑性変形しないように、第1のスリット31の両端部及び第2のスリット32の両端部に、それぞれ支持部30a側及び可動部30d側に突出するような食込み部31a,32aを形成し、第1の連結部30c,第2の連結部30eが塑性変形防止に必要な一定以上の長さとなるようにしている。このような食込み部31a,32aは中間部3b側には形成されておらず、第1の連結部30c,第2の連結部30eがそれぞれ支持部30a側,可動部30d側にのみ食い込むように構成されている。
【0029】
これは、例えば食込み部31a,32aを中間部30b側に形成した場合、中間部30bがこのような食込み部によって一部細くなり、この細くなった部分にひねりによる応力が集中して中間部30bが塑性変形する虞があるためである。このような応力集中は、中間部30bの枠の太さが局所的に細くなる部位に生じ易い。そのため、ひねり力が中間部30b全体に分散されるように、中間部30b側に食込み部を設けずに中間部30bの枠の太さを略一定とした。
【0030】
可動部30dの基板10と反対側の面の中央部には、接着,電気溶接,レーザースポット溶接,カシメ等の方法によって取り付けられた錘40が搭載されている。錘40の重心は前記第1の連結部30c、第2の連結部30eの軸線のいずれからも鉛直方向に偏心している(即ち、錘40の重心位置は金属板30の重心位置より高い部分に調整されている)。そのため、センサを傾けると、錘40は傾斜センサ100の傾斜に応じて金属板30と支持用突起12との当接位置を中心として揺動し、その揺動方向によって第1の連結部30c(X軸),第2の連結部30e(Y軸)のどちらか又は両方の軸回りに所定の大きさのモーメントを発生させるようになっている。それにより、第1の連結部30c、第2の連結部30eがひねり変形され、可動電極である可動部30dと、4つの電極11a各々との間隔が変化するようになっている。
【0031】
このようなモーメントは第1の連結部30c,第2の連結部30eのどちらか一方又は両方の軸をひねり変形し、可動部30dはこのモーメントと第1の連結部30c,第2の連結部30eのひねりに対する弾性力とが釣り合う角度で停止する。なお、この錘40はその底部(下部)40aが本体部である頭部(上部)40bよりも細く形成され、錘40の重心位置が高くなるように構成されている。このため、錘40の大きさが同じ場合に、錘40の質量と重心位置との積で表されるモーメントが大きくなり、センサ100の僅かな傾斜に対しても上記軸線方向に大きなモーメントを作用させることができ、センサ100を軽量化しながら傾斜感度を高めることができるようになっている。
また、支持用突起12により可動部30dを固定基板10とは反対側へ付勢して、固定基板10と可動部30dとの間隔を一定に制御しているため、センサ間におけるギャップのばらつきがなく、間隔の経時変化もないことから、センサ間および時間経過による検出のばらつきを防止し、演算によるZ軸方向の変位の補正を行う必要が無くなることにより、検出精度を低下させることなく、X軸及びY軸方向における変位量の検出感度を、上記ギャップ(付勢量)を調整することにより容易に向上させることができる。
【0032】
ここで、図7に示すように、可動電極、すなわち金属板30に対して、第1の連結部30c、30cをX軸とし、第2の連結部30e,30eをY軸とするように、X−Y直交座標系をとるものとする。ここで、金属板30(可動部30d)と四つの固定電極11aとにより形成される四つの容量可変式の容量素子(信号検出用コンデンサC1〜C4)は、上記X−Y直交座標系における第1象限〜第4象限の各象限に1つずつ形成され、これらのうち、第2、第1象限に形成される信号検出用コンデンサ(容量素子)の静電容量に対応して検出される電圧(以下、単に検出電圧という)を、それぞれ、検出電圧A,Bとし、第3、第4象限に形成される信号検出用コンデンサの検出電圧を、それぞれ、検出電圧C,Dとする。
【0033】
金属板30がX軸回りに揺動する際に、金属板30と四つの固定電極11aにより形成される四つの信号検出用コンデンサにおいて、第1、第2象限に形成される信号検出用コンデンサと、第3、第4象限に形成される信号検出用コンデンサとは、互いに静電容量が反対方向に増減するように変化する。すなわち、金属板30がX軸回りに揺動する際に固定電極11aと金属板30との間隔が、第1、第2象限に形成される信号検出用コンデンサC2,C1と第3、第4象限に形成される信号検出用コンデンサC3,C4とで反対方向に増減するように変化するので、静電容量が反対方向に増減するように(相反的に)変化する。
【0034】
このとき、第1、第2象限に形成される信号検出用コンデンサにおける金属板30と固定電極11aとの間隔は、同方向に増加、または減少するように変化するので、第1、第2象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量はそれぞれ、同方向に減少又は増加する。同時に、第3、第4象限に形成される信号検出用コンデンサにおける金属板30と固定電極11aとの間隔は、同方向に減少、または増加するように変化するので、第3、第4象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量はそれぞれ、同方向に増加、又は減少する。
ここで、Y軸方向の変位を検出するための信号検出用コンデンサ対として、第1及び第4象限に形成される信号検出用コンデンサの組と、第2及び第3象限に形成される信号検出用コンデンサの組とを、計算上において、相反的に変化する信号検出用コンデンサの対として形成する。
【0035】
したがって、金属板30がX軸回りに揺動した際の四つの信号検出用コンデンサの静電容量に対応した電圧の変化量Yは、第1及び第4象限に形成される信号検出用コンデンサC2,C4の静電容量の電圧換算値の差(C2,4の静電容量の差、すなわち静電容量の変化量)と、第2及び第3象限に形成される信号検出用コンデンサC1,C3の静電容量の電圧換算値の差(C1,3の静電容量の差、すなわち静電容量の変化量)との和で求められるから、
Y=(D−B)+(C−A) …(1)
となる。
なお、金属板30がX軸回りに揺動するということは、X軸は変位せず、Y軸がX軸回りに揺動する(換言すれば、錘40がY軸方向に揺動する)ということであるので、X軸回りの揺動をY軸方向の変化(変位)と捉えることができる。
そして、(1)式により、静電容量が相反的に変化する信号検出用コンデンサの対において、初期オフセット値をキャンセルすることができ、純粋に、第1及び第4象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量、及び第2及び第3象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量の変化量を測定することができ、変位量の検出のダイナミックレンジを広げることができ、X軸回りのY軸方向の変位の検出において、測定感度及び測定精度を向上させることとなる。
【0036】
また、金属板30がY軸回りに揺動する際に、金属板30と四つの固定電極11aにより形成される四つの信号検出用コンデンサにおいて、第2、第3象限に形成される信号検出用コンデンサと、第4、第1象限に形成される信号検出用コンデンサとは、互いに静電容量が反対方向に増減するように変化する。すなわち、金属板30がY軸回りに揺動する際に固定電極11aと金属板30との間隔が、第2、第3象限に形成される信号検出用コンデンサと第4、第1象限に形成される信号検出用コンデンサとで反対方向に増減するように変化するので、静電容量が反対方向に増減するように変化する。
【0037】
このとき、第2、第3象限に形成される信号検出用コンデンサにおける金属板30と固定電極11aとの間隔は、同方向に増加、または減少するように変化するので、第2、第3象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量はそれぞれ、同方向に減少又は増加する。同時に、第4、第1象限に形成される信号検出用コンデンサにおける金属板30と固定電極11aとの間隔は、同方向に減少、または増加するように変化するので、第4、第1象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量はそれぞれ、同方向に増加、又は減少する。
ここで、X軸方向の変位を検出するための信号検出用コンデンサ対として、第1及び第2象限に形成される信号検出用コンデンサの組と、第4及び第3象限に形成される信号検出用コンデンサの組とを、計算上において、相反的に変化する信号検出用コンデンサの対として形成する。
【0038】
したがって、金属板30がY軸回りに揺動した際の四つの信号検出用コンデンサの静電容量に対応した電圧の変化量Xは、第1及び第2象限に形成される信号検出用コンデンサC2,C1の静電容量の電圧換算値の差(C2,1の静電容量の差、すなわち静電容量の変化量)と、第4及び第3象限に形成される信号検出用コンデンサC4,C3の静電容量の電圧換算値の差(C4,C3の静電容量の差、すなわち静電容量の変化量)との和で求められるから、
X=(A−B)+(C−D) …(2)
となる。
なお、金属板30がY軸回りに揺動するということは、X軸がY軸回りに揺動する(換言すれば、錘40がX軸方向に揺動する)ということであり、Y軸回りの揺動をX軸方向の変化と捉えることができる。
そして、(2)式により、静電容量が相反的に変化する信号検出用コンデンサの対において、初期オフセット値をキャンセルすることができ、純粋に、第1及び第2象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量、及び第4及び第3象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量の変化量を測定することができ、変位量の検出のダイナミックレンジを広げることができ、Y軸回りのX軸方向の変位の検出において、測定感度及び測定精度を向上させることとなる。
上述したように、静電容量式センサ100を傾斜センサとして使用する際に上式(1)、(2)の演算を行なうことによりセンサ100の傾斜に応じた静電容量に対応した電圧の変化量Y,Xを求め、この変化量Y,Xの値からセンサ100の傾斜(変位)を求めることができる。
【0039】
また、上述した信号検出用コンデンサ対を用いるのではなく、Y軸方向の変位を検出するための信号検出用コンデンサ対として、第1及び第3象限に形成される信号検出用コンデンサの組と、第2及び第4象限に形成される信号検出用コンデンサの組とを、計算上において、相反的に変化する信号検出用コンデンサの対として形成しても良い。同様に、X軸方向の変位を検出するための信号検出用コンデンサ対として、第1及び第3象限に形成される信号検出用コンデンサの組と、第4及び第2象限に形成される信号検出用コンデンサの組とを、計算上において、相反的に変化する信号検出用コンデンサの対として形成する。
この場合、上記(1)及び(2)式に対応する式は、各々、以下に示す(3)式,(4)式である。
Y=(C−B)+(D−A) …(3)
X=(A−D)+(C−B) …(4)
となり、上述した(1),(2)式により変位量を求める場合と同様の効果を有し、静電容量式センサ100を傾斜センサとして使用する際に上式(3)、(4)の演算を行なうことによりセンサ100の傾斜に応じた静電容量に対応した電圧の変化量Y,Xを求め、これらの値からセンサ100の傾斜(変位)を求めることができる。
なお、信号検出用コンデンサ対の組合せは、上述したものに限られず、例えば、Y軸方向の変位を検出する際に、上記(3)式を用い、X軸方向の変位の検出では、上記(2)式を用いるようにしてもよく、(1)式と(4)式により変位を検出することもできる。
【0040】
又、可動部30dの下面には、可動部30dを上方へ付勢するように前記支持用突起12が突き当てられており、電極11aと可動部30dとの間隔(ギャップ)gを一定に保持するとともに、下向きの並進加速度(重力など)の影響をキャンセルできるようになっている。つまり、支持用突起12を設けない場合、可動部30dは錘40の重さによって基板10側に若干撓み、可動電極としての可動部30dと電極11aとの間の静電容量にはこの撓み(変位)による静電容量の増分がオフセットとして含まれてしまう。このオフセットはセンサの傾きが小さい場合には大きく、逆にセンサが垂直に近い場合には、このような撓みが少なくなるため小さくなる。
【0041】
その結果、静電容量は錘40のモーメントに対して極大値を持って変化してしまい、このような静電容量からセンサの傾斜角を求める場合には撓みによる可動部30dの鉛直方向の変位を補正する演算が必要となる。このため、可動部30dを支持用突起12によって下面側から支持してこのような撓みを防止することで、静電容量をモーメントに対して広範囲(可動部30dを支持用突起12で付勢している場合には最大±90°)に亘って1対1の関係で直線的に変化させ、Z軸方向の変位の影響を考慮する必要を無くし、傾斜を求めるための演算を単純化している。
【0042】
さらに、センサを極端に傾ける事が無い限り、錘40の重さが第1の連結部30c、第2の連結部30eに直接掛からない。よって、錘40の重さの割に第1の連結部30c、第2の連結部30eを細くしても永久変形しにくいため、耐衝撃性を維持したまま、第1の連結部30c、第2の連結部30eを細くできる。当然、2つの軸部は細い程、剛性が低いため、傾斜によるモーメントに対して敏感に変形し、高精度な検出が出来る様になる。
【0043】
また、支持用突起12の高さは支持部30aを載置するスペーサ20及び電極11dの厚みよりも若干高く(或いは、スペーサ20及び電極11dの厚みが支持用突起12の高さよりも若干薄く)なっており、可動部30dは支持部30aよりも基板10から離され、センサがひっくり返され錘40が下側になった状態においても可動部30dは支持用突起12により基板10と反対側に付勢されるようになっている。この付勢力の大きさは、支持用突起12の高さとスペーサ20の厚みの差で決まるため、例えば、支持用突起12によってギャップgが定められた場合には、スペーサ20の厚みを調節することで付勢力が最適に設定される。
【0044】
また、図4、図5に示すように、金属板30の支持部30a上には、矩形枠状の導電性スペーサ42、可動部30dの必要以上の動きを規制する金属製のストッパ44及び絶縁性のスペーサ52が積層されており、スペーサ52の複数の突起52aが、各部材の位置決め孔45、43、31、21、13に挿通されている。
さらに、基板10の上面11S上には、スペーサ20ないしストッパ44の各部材の周囲に位置し、上面11Sの外周部に沿うように配された矩形枠状の絶縁性のパッキン50を介して金属製のカバー60が設けられている。このカバー60は円筒型の頭部60bとその周辺部に広がるフランジ部60aとフランジ部60aの側面に形成された平板状の複数の突部60cとからなり、そのフランジ部60aでスペーサ52、ストッパ44、スペーサ42を介して支持部30aを電極11b側へ押し付けて固定するとともに、突部60cを基板10の下面13Rに形成されたグランドパターン70上にかしめ付けることにより、カバー60は接地されており、防塵,防滴,センサ100周辺の帯電物による容量ドリフト,ノイズ及び取り扱い上の不注意等からセンサ100を保護するようになっている。なお、絶縁性のスペーサ52とパッキン50を設けることにより金属製のカバー60と金属板30とが導通しないようになっている。
【0045】
ところで、基板10はセラミックス又はエポキシ樹脂等からなる絶縁性の板材の積層体として構成された多層配線基板であり、その中間層として金属面からなるグランド層12Sが形成されている。
基板10の上面としての固定電極層11Sには、図4に示すように、その中央部に四つの固定電極11aが例えば、Ag(銀)のパターン印刷により碁盤目状に形成されている。また、固定電極層11Sの外周部には、金属板30と導通される電極11bが矩形枠状に形成されている。
【0046】
グランド層12Sは、金属板30からの駆動信号が固定電極11aを介さずに、回路素子300へ入力することを防止するとともに、基板10の外部(検出部200においては基板10の下面側、回路素子300においては基板10の上面側)から入るノイズをカットするノイズシールドとして機能し、電極11bと接続された図示しないスルーホール電極や固定電極11aと導通するスルーホール電極H1,H2等のスルーホール電極部分と外周縁部とを除く略全面がAg等の金属面(導電面)として構成されている。
【0047】
また、この金属面、すなわちグランド層12Sは、基板10の下面としてのチップ実装面13Rまで貫通する図示してない複数のスルーホール電極(スルーホール電極H1,H2と異なる)によってチップ実装面13R上の金属面(導電面)からなるグランドパターン70と導通して、接地用端子(図示せず)と接続されるとともに、基板10の側面に形成された取り出し電極(図示せず)を介して接地されるようになっている。
【0048】
回路素子300は、基板10裏面側のチップ実装面13Rに搭載されており、チップ実装面13R内の図示しない駆動信号用の端子、信号検出用の端子、電源用の端子、グランド用の端子及び信号出力用の端子と回路素子300の複数のアルミニウム製の端子とがそれぞれ金バンプ310で接続されている。そして、駆動信号用の端子、配線パターン、スルーホール電極(いずれも図示なし)、電極11b、スペーサ20等を介して可動電極を構成する金属板30に回路素子300から駆動信号(矩形波状の電圧)が加えられ、この金属板30と対向配置された固定電極11aに誘導された電流等の電気信号がスルーホール電極H1,H2や信号検出用の端子等を介して回路素子300に入力され、該電気信号により信号検出用コンデンサの各容量変化を求めている。
【0049】
この金属板30と固定電極11aとで構成される信号検出用コンデンサは既に述べたように、C1,C2,C3,C4の4つあり、これら4つの信号検出用コンデンサC1〜C4各々の容量変化に基づいて、回路素子300において、傾斜センサ100の傾斜方向及び傾斜量を、上記で説明した(1)〜(4)式の演算により算出されるようになっている。また、この算出結果はチップ実装面13R上に形成された信号出力用の端子及び外部接続電極(図示せず)を介して外部装置に出力されるようになっている。
【0050】
半導体からなるベアチップのサブストレート300bは金バンプ、スルーホール電極(スルーホール電極H1,H2と異なる)等を介して基板10のグランド層12Sと導通状態となっている。したがって、ベアチップの回路部300cは、下面と周囲が接地されるサブストレート300bによって囲まれ、上面側にはグランド層12Sが存在するため、ほぼ完全にシールドされた構造をとることとなり、外部からのノイズの影響をほとんど受けることはない。
【0051】
また、固定電極11aは、グランド電位と電源電圧とが交互に印加される可動電極である、固定電極11aより大きい金属板30と、基板10内に形成されたグランド層12Sとで挟まれた構造、すなわち、金属板30とグランド層12Sとの中間に位置するように構成されているので、固定電極11aはシールドされた状態となり、外来ノイズの影響を受けにくく、信号検出用コンデンサの静電容量が小さくても、精度良く検出することが可能である。
【0052】
また、補強のために、回路素子(ベアチップ)300とチップ実装面13Rとをエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂320により接着し一体化させている。
上記構成において、センサ100を傾けると、錘40が支持用突起12と搭載部30dとの当接位置を中心として揺動し、その傾斜方向及び傾斜量に応じて、可動部30dに対し第1の連結部30c又は第2の連結部30e回りのモーメントを作用させる。そして、第1の連結部30c,第2の連結部30eのひねり変形に対する弾性力とこのモーメントとが釣り合う角度で可動部30dが停止する。
【0053】
これにより、可動電極としての可動部30dと各固定電極11aとにより構成される信号検出用コンデンサの静電容量が変化し、その容量変化が、スルーホール電極H1,H2や信号検出用端子等を介して固定電極11aの略真下に実装された回路素子300に電気信号として入力される。そして、回路素子300による処理結果は、基板10の底面たる接続電極面14Rの外部接続電極等を介して外部装置へ出力される。
【0054】
次に、本発明の実施形態に係る静電容量式センサの電気的構成(回路素子300の構成)を図1及び図2に示す。これらの図において、本発明の実施形態に係る静電容量式センサ100は、パルス発生回路500と、分周器として機能するD(遅延)フリップフロップ502、504と、Dフリップフロップ502、504のQ出力を入力とするANDゲート506と、固定電極11aと可動電極30とで形成される4つの信号検出用コンデンサC1(第2象限)、C2(第1象限)、C3(第3象限)、C4(第4象限)とを有している(図6参照)。
【0055】
パルス発生回路500は、所定周波数(本実施形態では、例えば、400KHz)のパルス信号を生成し、出力する。
Dフリップフロップ502は、パルス発生回路500の出力するパルス信号の周波数を1/2分周し、Dフリップフロップ504は、Dフリップフロップ502のQBAR出力から出力されるパルス信号を1/2分周するようになっている。Dフリップフロップ504のQ出力は4つの信号検出用コンデンサC1、C2、C3、C4に、保護抵抗R10を介して供給する駆動信号VDRIVEとなる。この駆動信号VDRIVEはロウレベルとハイレベルとに交互に変化するパルス信号であるが、本実施形態においては、ロウレベルの電位はグランド電位であり、ハイレベルは電源電圧Vccである。
【0056】
4つの信号検出用コンデンサC1、C2、C3、C4における可動電極30側の端子は共通接続され、保護抵抗R10を介してDフリップフロップ504のQ端子に接続されている。パルス発生回路500及びDフリップフロップ502、504は、駆動信号供給手段に相当する。
また、信号検出用コンデンサC1、C2、C3、C4における固定電極11a側の端子は、それぞれ保護抵抗R11を介して、それぞれ、オペアンプ900、901、902、903の反転入力端子(入力端)に接続されている。オペアンプ900、901、902、903の非反転入力端子は、それぞれ、固定電位(Vcc/2、このVccは電源電圧)に設定されている。
【0057】
また、オペアンプ900、901、902、903の反転入力端子と出力端子との間には、積分コンデンサC11が、それぞれ接続されている。そして、オペアンプ900、901、902、903の反転入力端子と出力端子との間には、各上記積分コンデンサC11に蓄積された電荷を放電させ、充電前の初期状態にリセットするためのアナログスイッチ910、911、912、913が、これらの各積分コンデンサC11と並列に各々接続されている。
【0058】
本実施形態では、アナログスイッチ910〜913は、Dフリップフロップ504のQBAR出力からの出力信号により、その動作タイミングが制御され、該QBAR出力がハイレベルの時にオン状態となり、積分コンデンサC11の電荷を放電し、ロウレベルの時にオフ状態となり、この積分コンデンサC11が充電状態とされる。オペアンプ900、積分コンデンサC11、及びアナログスイッチ910は、積分回路920を構成している。
オペアンプ901、902、903についても同様に、積分コンデンサC11、アナログスイッチ911、912、913とで積分回路921、922、923を構成している。
【0059】
アナログスイッチ910〜913は、本実施形態では、駆動信号VDRIVEが一方のレベルであるロウレベル時に、すなわちDフリップフロップ504のQBAR出力がハイレベルのとき、積分コンデンサC11の両端を短絡し、リセットするように動作して、駆動信号VDRIVEがハイレベル時の積分回路出力を容量素子の検出信号として取り出しているが、駆動信号VDRIVEがハイレベル時に、すなわちDフリップフロップ504のQBAR出力がロウレベルのとき、積分コンデンサC11をリセットするようにしてもよい。このときには、信号検出用コンデンサC1、C2、C3、C4に印加される駆動信号VDRIVEがロウレベル時の積分回路出力を容量素子の検出信号として取り出す必要がある。
なお、アナログスイッチ910〜913は、スイッチ手段に相当する。
【0060】
また、オペアンプ900、901、902、903の出力端子は、それぞれ、アナログスイッチ530、531、532、533を介して各々オペアンプ540、541、542、543の非反転入力端子に接続されている。
アナログスイッチ530、531、532、533は、ANDゲート506の出力する出力信号VSAMPLEにより、その動作タイミングが制御されるようになっており、積分回路920,921,922,923の出力電圧である積分電圧をサンプリングし、このサンプリングされた積分電圧を、サンプルホールド用コンデンサC12に保持させる機能を有している。なお、本実施形態では、アナログスイッチ530〜533は、ANDゲート506の出力がハイレベルの信号でオン状態となり、ロウレベルの信号でオフ状態になるように制御される。
【0061】
また、オペアンプ540、541、542、543の非反転入力端子は、上述したように、アナログスイッチ530、531、532、533と接続されるとともに、それぞれサンプルホールド用コンデンサC12を介して接地されている。オペアンプ540、541、542、543は、それぞれ反転入力端子が出力端子と短絡され、バッファを構成している。
さらに、抵抗R12〜R15とオペアンプ550により減算器600が、抵抗R12〜R15とオペアンプ551により減算器601が、抵抗R12〜R15とオペアンプ552により減算器602が、抵抗R12〜R15とオペアンプ553により減算器603が、それぞれ構成されている。
【0062】
ここで、抵抗R12〜R15の抵抗値は、例えば、R12=R13、R14=R15になるように選択されている。また、抵抗R13の一端は、Vcc/2(Vccは電源電圧)の電圧が印加されている。
また、オペアンプ550、551の出力端子間に直列接続される抵抗R16、R17、及びオペアンプ560、このオペアンプ560の反転入力端子と出力端子との間に並列接続される抵抗R18、フィルタとしてのコンデンサC13により加算器700が、オペアンプ552、553の出力端間に直列接続される抵抗R16、R17、及びオペアンプ561、このオペアンプ561の反転入力端子と出力端子との間に並列接続される抵抗R18、コンデンサC13により加算器701が、それぞれ構成されている。オペアンプ560、561の非反転入力端子の電位は、Vcc/2に設定されている。
【0063】
減算器600は、入力されるオペアンプ540の出力と、オペアンプ541の出力との差分の演算、すなわち、検出電圧Aと検出電圧Bとの差分値「A−B」を演算して出力する。また、減算器601は、入力されるオペアンプ542の出力と、オペアンプ543の出力との差分を演算、すなわち、検出電圧Cと検出電圧Dとの差分値「C−D」を演算して出力する。さらに、減算器602は、入力されるオペアンプ542の出力とオペアンプ540の出力との差分、すなわち、検出電圧Cと検出電圧Aとの差分値「C−A」を演算して出力する。加えて、減算器603は、入力されるオペアンプ543の出力と、オペアンプ541の出力との差分を演算、すなわち、検出電圧Dと検出電圧Bとの差分値「D−B」を演算して出力する。また、加算器700は、入力される減算器600の出力と、減算器601の出力とを加算、すなわち差分値「A−B」と「C−D」との加算値「(A−B)+(C−D)」を演算して出力する。さらに、加算器701は、入力される減算器602の出力と、減算器603の出力とを加算、すなわち、ち差分値「C−A」と「D−B」との加算値「(C−A)+(D−B)」を演算して出力する。
【0064】
加算器700、701の出力はそれぞれ端子710、711を介してA/D変換器800、801によりディジタル値に変換されるようになっている。A/D変換器800、801においてA/D変換に使用する基準電圧は、それぞれ電源電圧Vccを分圧した電圧、または電源電圧Vccに比例した電圧に設定される。また、減算器600〜603、加算器700、701における設定電圧(基準電圧)も既述したように、電源電圧Vccを分圧した電圧、または電源電圧Vccに比例した電圧に設定される(本実施形態ではVcc/2に設定される)。減算器600〜603、加算器700,701及びA/D変換器800、801は本発明の演算手段に相当する。
【0065】
次に、上記構成からなる、本発明の実施形態に係る静電容量式センサ100の動作例を図3のタイミングチャートを参照して説明する。パルス発生回路500は400KHzのパルス信号を出力する。そして、分周器であるDフリップフロップ502は、このパルス信号を1/2分周し、分周された200KHzのパルス信号をQ端子からANDゲート506の一方の入力端子に出力する。また、Dフリップフロップ504は、入力される上記分周された200KHzのパルス信号の周波数を、さらに1/2分周し、分周された100KHzの周波数のパルス信号を、QBAR出力から出力する。
【0066】
そして、Dフリップフロップ504は、100KHzのパルス信号を、信号検出用コンデンサC1〜C4の駆動信号VDRIVE(図3(B))としてQ出力から、保護抵抗R10を介して信号検出用コンデンサC1〜C4の可動電極30側の端子に対して出力するとともに、上記駆動信号VDRIVEをANDゲート506の他方の入力端子に入力される。
他方、Dフリップフロップ504は、QBAR出力から、駆動信号VDRIVEと逆相の電圧レベルの信号を、アナログスイッチ910〜913のオン/オフの制御端子に出力する。すなわち、Dフリップフロップ504は、アナログスイッチ910〜913の上記制御端子に対して、信号検出用コンデンサC1〜C4に印加される駆動信号VDRIVEを位相反転したパルス信号、すなわち、駆動信号VDRIVEと電圧レベルが相反するパルス信号を印加することとなる。
【0067】
これにより、アナログスイッチ910〜913は、Dフリップフロップ504のQBAR出力がハイレベルになるタイミングにおいて、オン状態となり、各積分回路を構成するオペアンプ900〜903の反転入力端子と出力端子との間に接続されている積分コンデンサC11の両端間が短絡し、各積分コンデンサC11の充電電荷を零に、すなわち積分コンデンサC11に蓄積された電荷をリセットする。
さらに、ANDゲート506は、入力されるDフリップフロップ502のQ出力(200KHzのパルス信号)と、Dフリップフロップ504のQ出力、すなわち駆動信号VDRIVEとの論理積の演算を行い、演算結果の出力信号VSAMPL(図3(C))を、アナログスイッチ530〜533に対して、積分回路920〜923の積分出力のサンプリング信号として出力する。
【0068】
一方、オペアンプ900〜903では、非反転入力端子と反転入力端子とがイマジナリショートにより同電位となり、Vcc/2となっているので、積分コンデンサC11がリセットされた時点では、オペアンプ900〜903の出力端子の電位は、Vcc/2となる。
その後、時刻t0において、Dフリップフロップ504は、D端子にハイレベルのQBAR出力らハイレベルの信号が入力され、CLK端子に入力されるパルス信号の立ち上がりエッジにより、QBAR出力の信号をロウレベルに遷移させ、アナログスイッチ910〜913をオフ状態とする。この時点において、Dフリップフロップ504は、信号検出用コンデンサC1〜C4の各々に対して、Q出力から保護抵抗R10を介してハイレベル(Vcc)の駆動信号VDRIVEを供給している。
【0069】
一方、信号検出用コンデンサC1〜C4の各々は、静電容量式センサ100の傾斜状態に応じて、固定電極11aと可動電極30との間隔が変化し、それぞれ、静電容量が変化している。
ここで、時刻t0から時刻t1までの期間において、信号検出用コンデンサC1についての動作を考えると、前述したように、信号検出用コンデンサC1には保護抵抗R10を介して駆動信号VDRIVE(ハイレベル)が印加されることにより、積分コンデンサC11に充電電流が流れ、この電流が積分回路920によって積分される。すなわち、信号検出用コンデンサC1と積分回路920の積分コンデンサC11との容量比に応じた電荷が積分コンデンサC11に、オペアンプ900により充電される。これにより、信号検出用コンデンサC1の静電容量の変化量が、電圧換算値の出力電圧Aとして積分回路920から出力されることとなる。
【0070】
具体的には、積分回路920の出力であるオペアンプ900の出力Vout1は、駆動信号VDRIVEが立ち上がり、ハイレベル(Vcc)となる時刻t0で、電位Vcc/2を基準にして保護抵抗R10及びR11の大きさに応じた傾斜で立下り、上記容量比に応じた充電電荷により時刻t1以降の時点で所定の電位に遷移する。
以上の動作は、他の信号検出用コンデンサC2〜C4及び積分回路921〜923についても同様に出力電圧B,C,Dとして出力され、説明が重複するために省略する。
【0071】
このようにして、信号検出用コンデンサC1〜C4の固定電極11aから入力される、信号検出用コンデンサC1〜C4の検出信号は、それぞれ、積分回路920、921、922、923により積分され、オペアンプ900、901、902、903の出力端子よりそれぞれ、積分出力(出力電圧)A,B,C,Dとして出力される(図3(A))。
次いで、時刻t2において、フリップフロップ502がCLK端子に入力されるパルス信号の立ち上がりエッジにより、Q出力をハイレベルに遷移させることにより、ANDゲート506は2入力共にハイレベルとなるため、出力VSAMPLが立ち上がり、アナログスイッチ530、531、532、533を各々オン状態とする。
ここで、時刻t2は、時刻t0から積分出力である出力電圧A,B,C,Dが十分に安定領域に達する時間間隔となるように、予め設定されている。
【0072】
この結果、各積分回路(920,921,922,923)から、アナログスイッチ(530、531、532、533)を介して、対応するサンプルホールド用コンデンサC12にそれぞれ、オペアンプ900、901、902、903の出力電圧A,B,C,D、すなわち対応する信号検出用コンデンサC1〜C4より検出されたこれらの静電容量に応じた信号電荷が蓄積される。すなわち、駆動信号VDRIVEがロウレベルからハイレベルに切り替わった直後の過渡期間(t0≦t≦t1)経過後(積分コンデンサC11への充電が完了するまでの時間経過後)における積分回路920〜923の出力電圧A,B,C,Dが、時刻t2〜t3各のサンプリング時間(サンプリングパルスである出力VSAMPLがハイレベル時)において、サンプルホールド用コンデンサC12に保持される。
【0073】
なお、積分回路920〜923の各積分コンデンサC11の電荷を放電させるタイミング、換言すれば充電を開始するタイミングは駆動信号VDRIVEと同期しているので、積分コンデンサC11の電荷放電用の抵抗を積分コンデンサC11と並列に設ける必要は無く、代わりにアナログスイッチ910〜913を設けるようにしている。このため、積分回路920〜923の出力電圧A,B,C,Dが、該電荷放電用の抵抗により変化することはないので、時刻t1以降(積分コンデンサC11への充電完了後)で、次にアナログスイッチ910〜913がオンする前であれば、常に安定した出力電圧A,B,C,Dを検出することができる。
【0074】
次いで、時刻t3において、ANDゲート506の出力VSAMPLが立ち下がり、アナログスイッチ530、531、532、533がオフ状態となり、各サンプルホールド用コンデンサC12に、蓄積された電荷に応じた出力電圧A,B,C,Dが保持される。各サンプルホールド用コンデンサC12に保持された信号電圧A,B,C,Dは、バッファとして機能するオペアンプ540、541、542、543よりそれぞれ、出力される。また、このとき、Dフリップフロップ504のQBAR出力がハイレベルとなり、積分コンデンサC11の電荷が放電される。
以上の動作が100KHzの周期で繰り返し、行なわれることとなる。また、出力電圧を検出するタイミング(時刻t2)、積分コンデンサC11の電荷を放電するタイミング(時刻t3)も駆動信号VDRIVEに同期していることから、駆動信号の周波数に精度は要求されず、その周波数は温度によって幾分変動するものであってもよい。
【0075】
上述した100KHzの周期毎に、減算器600にはオペアンプ540及び541の出力(A,B)が、減算器601にはオペアンプ542及び543の出力(C,D)が、減算器602にはオペアンプ542及び540の出力(C,A)が、減算器603にはオペアンプ543及び541の出力(D,B)が、それぞれ入力される。この結果、減算器600より演算出力(A−B)が、減算器601より演算出力(C−D)が、減算器602より演算出力(C−A)が、さらに、減算器603より演算出力(D−B)が、それぞれ、出力される。
【0076】
次に、減算された周期と同様の周期において、加算器700では、減算器600の演算出力と、減算器601の演算出力とが加算され、出力端子710より図7に示したY軸回りの揺動に伴うX軸方向の容量変化を示す演算出力{(A−B)+(C−D)}が出力される。また、加算器701では、減算器602の演算出力と、減算器603の演算出力とが加算され、出力端子711より図7に示したX軸回りの揺動に伴うY軸方向の揺動に基づく変位、すなわち容量変化を示す演算出力{(C−A)+(D−B)}が出力される。
【0077】
A/D変換器800、801では、電源電圧Vccを分圧した電圧、または電源電圧Vccに比例した電圧を基準電圧として出力端子710、711を介して入力される演算出力をディジタル値に変換して出力する。
【0078】
以上に説明したように、本実施形態に係る静電容量式センサによれば、相反的に静電容量が変化する信号検出用コンデンサC1〜C4の所定の対において、この対を構成する信号検出用コンデンサ間の静電容量の容量差を、積分回路(920〜923)により、対応する電圧換算値(検出電圧A,B,C,D)を求め、減算器(600〜603)による減算で、上記対ごとの差分を求め、同一軸方向の変位毎に加算することで、容量の変化量を実質的に増加させ、可動部30dにおける変位の検出感度を向上させるとともに、減算を行うことで、平衡状態における初期オフセット及びZ軸方向の変位の影響による静電容量の変化分をキャンセルすることにより、X軸及びY軸方向各々の変位に基づく変化量のみを抽出することができ、変化量に対する演算のみを行えばよく、演算のダイナミックレンジを広くとることが可能となり、演算による検出感度及び検出精度を向上させることができる。
また、本実施形態に係る静電容量式センサによれば、固定電極11aと可動電極30との間隔を縮めて、変位による単位当たりの静電容量の変化を大きくすることで検出感度を向上させる場合、初期オフセットとしての静電容量が増加したとしても、演算の始めに、相反的に静電容量が変化する容量素子の対において、対を構成する容量素子間の容量差を減算して求めるため、初期オフセットの静電容量が減算によりキャンセルされるため、ダイナミックレンジを狭めることなく、変位量のみでダイナミックレンジを使用することができるため、検出精度を低下させることなく、容易に検出感度を向上させることができる。
【0079】
また、本実施形態に係る静電容量式センサによれば、相反的に静電容量が変化する容量素子対における容量差、すなわち、第1,第2象限に形成された信号検出用コンデンサC2,C1各々の静電容量の電圧換算値B及びAの差分値(差分電圧)と、第4,第3象限に形成された信号検出コンデンサC4,C3各々の静電容量の電圧換算値D及びCの差分値とを、それぞれ減算器600,601により減算して求め、これらの差分値を加算器700で加算することにより、静電容量の変化量を実質的に増加させることができ、可動部30dにおける変位の検出感度を実質的に向上させるとともに、減算を行うことで、平衡状態における初期オフセット及びZ軸方向の変位の影響による静電容量の変化分をキャンセルすることにより、X軸方向の変位に基づく変化量のみを抽出することができ、変化量に対する演算のみを行えばよく、演算のダイナミックレンジを広くとることが可能となり、X軸方向の変位量の検出感度及び検出精度を向上させることができる。
また、相反的に静電容量が変化する容量素子対における容量差、すなわち、第2,第3象限に形成された信号検出用コンデンサC1,C3各々の静電容量の電圧換算値A及びCの差分値と、第1,第4の象限に形成された信号検出用コンデンサC2,C4各々の静電容量の電圧換算値B及びDの差分値とを減算器602,603により減算して求め、これらの差分値を加算器701で加算することにより、上述したX軸方向の変位の検出と同様に、Y軸方向の変位量の検出感度及び検出精度も向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態に係る静電容量式センサによれば、前記演算手段は、さらに前記加算器の出力をA/D変換するA/D変換器を有するとともに、前記駆動信号供給手段は、電源電圧に比例する前記ハイレベルの信号を出力し、前記演算手段は、基準電圧として前記電源電圧を分圧した電圧、または該電圧に比例した電圧を使用するようにしたので、電源電圧が変動しても、正確に傾斜状態や加速度等を検出することができる。
なお、上述した本実施形態においては、可動電極30が支持用突起12を揺動支点として2軸回りに揺動するもので説明したが、本発明はこれに限られず、揺動支点を有さずに、可動電極と固定電極との距離が変化するようなものであってもよい。
また、検出対象が傾斜や加速度に限られないことは言うまでもない。
また、本実施形態においては、可動電極として、駆動信号を配線を用いることなく容易に供給できる金属板で構成したもので説明したが、可動電極はこれに限られず、例えば、絶縁性のポリイミド樹脂からなる薄い板材(フィルム)に銅箔をエッチングにて形成し、この銅箔を可動電極としてもよい。
【0081】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
積分回路,減算器及び加算器を各々1つずつ用い、演算回路列を一系統作成して、制御回路により、これら回路の演算順序及び演算処理の制御を制御回路により行い、パルスが入力される毎に、信号検出用コンデンサC1,C2、C3,C4と積分回路との接続を順次切換、各信号検出用コンデンサの静電容量を積分回路により順次電圧値換算し、換算により得られた出力電圧を用いて、減算器及び加算器を時分割に使用して(1)式及び(2)式の演算を行い、変位の検出を行う構成としても良い。ここで、検出のパルスである駆動信号VDRIVEを、一定周期毎に信号検出用コンデンサC1〜C4に一括して与えても良いし、積分回路により電圧換算(静電容量値を電圧値へ変換する)し、検出電圧を測定する信号検出用コンデンサ毎に、順次与える構成としてもよい。
【0082】
Y軸方向の変位を検出する場合を例に取り、演算列を一系統とし、静電容量を時分割で演算する構成の動作例を説明する。
a.信号検出用コンデンサC3と積分回路とを接続し、この信号検出用コンデンサC3の静電容量に対応した出力電圧を積分回路により求め、求めた結果をサンプリングし、出力電圧Cとして一旦保持し、信号検出用コンデンサC3と積分回路とを切り離す。
b.信号検出用コンデンサC1と積分回路とを接続し、この信号検出用コンデンサC1の静電容量に対応した出力電圧を積分回路により求め、求めた結果をサンプリングし、出力電圧Aとして一旦保持し、信号検出用コンデンサC1と積分回路とを切り離す。次に、減算器により上記出力電圧Cと出力電圧Aとの第1の差分値「C−A」を演算して求め、この求めた結果をサンプリングして一旦保持する。
【0083】
c.信号検出用コンデンサC4と積分回路とを接続し、この信号検出用コンデンサC4の静電容量に対応した出力電圧を積分回路により求め、求めた結果をサンプリングし、出力電圧Dとして一旦保持し、信号検出用コンデンサC4と積分回路とを切り離す。
d.信号検出用コンデンサC2と積分回路とを接続し、この信号検出用コンデンサC2の静電容量に対応した出力電圧を積分回路により求め、求めた結果をサンプリングし、出力電圧Bとして一旦保持し、信号検出用コンデンサC2と積分回路とを切り離す。次に、減算器により上記出力電圧Dと該出力電圧Bとの第2の差分値「D−B」を演算して求め、この求めた結果をサンプリングして一旦保持する。
e.加算回路により、上記第1及び第2の差分値を加算し、Y軸方向の揺動に基づく変位の検出値として、演算出力{(C−A)+(D−B)}を出力する。
【0084】
X軸方向の変位の検出においても、上述したY軸方向の変位の検出と同様に、計算に用いる順に信号検出用コンデンサの静電容量の測定を行い、測定された静電容量に基づいて得られる出力電圧により、(2)式の演算を、減算を行った結果に対して加算を行うという順に行い、演算出力{(A−B)+(C−D)}を出力する。この構成を用いることにより、積分回路,減算回路及び加算回路を1つずつ接続して、1系統の演算回路を構成すれば良く、全体の回路規模を小さくすることができ、製造コストを減少させることができる。
また、上記一系統の演算回路における積分回路,減算回路及び加算回路の詳細な構成は限定しないが、各回路をオペアンプ,コンデンサ及びスイッチによるスイッチトキャパシタ(SC)回路を用いて構成することにより、演算回路全体の構成を簡略化し、かつ演算結果の信頼性を向上させることもできる。
【0085】
すなわち、SC回路を用いることにより、所定の制御に従い、SC回路を構成する各スイッチの切換動作をさせることで、上記一系統の演算回路における積分,減算,加算の演算を、時系列に容易に行うことができる。また、集積回路により上記演算回路を実現しようとする場合、オペアンプにより積分,減算及び加算回路を構成する目的であれば、コンデンサの方が抵抗に比較してより小さな面積で、抵抗による抵抗比に対応した、各演算に対応するコンデンサの容量比を得ることができ、かつ、温度特性についても、コンデンサの方が抵抗に比較して安定しており、さらに、回路規模を小さく構成できるとともに、演算結果がばらつく等の温度に電気特性の変動を低下させることができる。
【0086】
【発明の効果】
以上述べたように、本願発明の静電容量式センサによれば、固定基板に形成された固定電極と、該固定基板に所定の間隔にて対向配置され、揺動動作可能に支持された可動部に設けられた可動電極とを有し、該可動電極と前記固定電極とより構成される容量素子における前記可動部の変位に基づく静電容量の変化により、前記可動部の揺動動作を検出する静電容量式センサであり、前記固定電極の電極面に平行なX−Y座標面の第1から第4象限に各々対応して、前記容量素子が1つずつ設けられており、所定の象限を対応させて相反的に静電容量が変化する前記容量素子の対を形成し、一対毎に容量素子間の静電容量の容量差を減算により求め、求められた各対の容量差を加算して、該加算結果に基づき揺動動作の変位を検出しているため、相反的に静電容量が変化する容量素子の対において、対を構成する容量素子間の容量差を減算して求め、この容量差を加算することにより、容量の変化量を実質的に増加させ、可動部における変位の検出感度を向上させるとともに、減算を行うことで、平衡状態における初期オフセット及びZ軸方向の変位の影響による静電容量の変化分をキャンセルすることにより、X軸及びY軸方向各々の変位に基づく変化量のみを抽出することができ、変化量に対する演算のみを行えばよく、演算のダイナミックレンジを広くとることが可能となり、演算による検出感度及び検出精度を向上させることができる。
【0087】
また、固定電極と可動電極との間隔を縮めて、変位による単位当たりの静電容量の変化を大きくすることで検出感度を向上させる場合、初期オフセットとしての静電容量が増加したとしても、演算の始めに、相反的に静電容量が変化する容量素子の対において、対を構成する容量素子間の容量差を減算して求めるため、初期オフセットの静電容量が減算によりキャンセルされるため、ダイナミックレンジを狭めることなく、変位量のみでダイナミックレンジを使用することができるため、検出精度を低下させることなく、容易に検出感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による静電容量式センサの電気的構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態による静電容量式センサの電気的構成例を示すブロック図である。
【図3】図1及び2に示した静電容量式センサの動作例を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の実施形態による静電容量式センサの全体構成例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の実施形態による静電容量式センサの全体構成例を示す分解斜視図である。
【図6】図4に示した本発明の実施形態による静電容量式センサにおける基板10の構造例を示す平面図である。
【図7】図4に示した本発明の実施形態による静電容量式センサにおける基板10に対向して設けられている金属板(可動電極)30の構造例を示す平面図である。
【図8】従来例による静電容量式センサの全体構成を示す概略断面図である。
【図9】図8における固定電極の構造を示す平面図である。
【図10】従来の静電容量式センサの処理回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
10…基板(固定基板) 11a…固定電極
12…支持用突起(支持体) 12S…グランド層
20…スペーサ 30…可動電極(他の基板)
30a…支持部 30b…中間部
30c…第1の連結部 30d…可動部
30e…第2の連結カバー 31…第1のスリット(溝孔)
32…第2のスリット(溝孔)
40…錘 50…パッキン
60…カバー 100…静電容量式センサ
200…検出部 300…回路素子
300C…回路部(拡散部) 500…パルス発生回路
502、504…Dフリップフロップ
C1〜C4…信号検出用コンデンサ(容量素子)
C11…積分コンデンサ C12…サンプルホールド用コンデンサ
530〜533、910〜913…アナログスイッチ
540〜543、550〜553…オペアンプ
560、561、900〜903…オペアンプ
600〜603…減算器 700、701…加算器
800、801…A/D変換器 920〜923…積分回路
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電容量式センサに関し、特に、固定電極と可動電極との間の静電容量により、傾斜状態、加速度、衝撃などを検知するセンサ構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
静電容量の変化を利用した静電容量式センサとしては、例えば、図8に示される構成のセンサ(特許文献1)が知られている。
このセンサは、図8に示すように、X−Y座標面に対して平行に対向配置された基板1000,1003上にそれぞれ電極1001a,1001b(及び1001c,1001d)と可動電極1004とが形成されている。この可動電極1004は可撓性を有する可動基板1003上に設けられ、X−Y座標面に対して変位面を有する、揺動可能な可動電極として機能している。ここで、上記センサは、固定電極1001の電極が、図9に示すように、X−Y座標面の第1,第2,第3及び第4象限に各々対応して分離され、例えば、電極1001として、1001a,1001b,1001c,1001dにより4つの容量素子が形成されているが、可動電極1004を各象限に対応させて分割して、各象限に対応する容量素子を形成しても良い。
【0003】
また、この可動基板1003には錘1005が取り付けられており、センサが傾斜したりセンサに外部応力が作用したりした際に、この錘1005が可動基板1003を歪ませ、上記固定電極と可動電極とで形成された1001a,b,c,dの4つの容量素子の静電容量を変化させるようになっている。そして、図10に示す検出回路により、上記4つの容量素子の静電容量を測定し、所定の演算を行うことで傾斜や外力等が検出される。すなわち、図10に示す検出回路においては、静電容量から変位量を検出する演算の処理を、以下に示すa,b,c,dの順序にて行っている。
【0004】
a.第1,第2,第3,第4の容量素子において、X軸に平行な容量素子の対、例えば第1及び第2の容量素子の対と第3及び第4の容量素子の対とを形成し、また、Y軸に平行な容量素子の対、例えば第1及び第4の容量素子の対と第2及び第3の容量素子の対とを形成する。
b.各々の容量素子の静電容量をCV変換回路により電圧値に変換し、各対毎に容量素子に対応させて上記電圧値の加算処理を行う。第1,第2,第3,第4の容量素子の静電容量の変換後の電圧値を、それぞれV1,V2,V3,V4とすると、X軸に平行な容量素子の各対の電圧値の加算値は「V1+V2」及び「V3+V4」となり、Y軸に平行な容量素子の各対の電圧値の加算値は「V1+V4」及び「V2+V3」となる。
c.X軸に平行な容量素子の各対の加算値の差電圧VY、すなわち「(V1+V2)−(V3+V4)」を求め、Y軸に平行な容量素子の各対の加算値の差電圧VX、すなわち「(V1+V4)−(V2+V3)」を求める。そして、差電圧VYによりY軸方向の変位を検出し、差電圧VXによりX軸方向の変位を検出する。
【0005】
【特許文献1】
特許第3027457号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記センサにおいては、X軸に平行な容量素子の対毎の加算値を求め、これらの対の加算値の差電圧VY、同様な方法で差電圧VXを求めているが、始めに上記対毎に加算値を求める場合、変位のない平行時の初期容量を含めて加算することにより加算結果の電圧値が大きくなり、かつ、加算結果の電圧値全体における、変位に基づく静電容量の変化量の割合が、初期容量の加算値に比較して小さいため、静電容量の変化量の検出に対するダイナミックレンジが低下することにより、変位の検出感度を向上させることができない。
【0007】
また、静電容量式センサにおいて、固定電極1001と可動電極1004との電極間の距離によりセンサの感度を調整することができるが、感度を向上させようとすると、電極間の距離を短くする必要があり、変位に対する静電容量の変化量が増加するとともに、平衡状態における静電容量も増加することとなり、結局、加算値において、電圧値全体に占める変位に基づく静電容量の変化量の割合を、効果的に増加させることができないため、変位の検出感度を向上させることができない。
【0008】
さらに、従来例のセンサ構成においては、錘1005の重さによって可動基板1003は可撓性のある材料を使用するため、若干撓んで変位した状態となっており、可動基板1003と固定基板1000とのギャップが定まりにくく、バラツキも生じ、かつ可動基板1003が撓み易い材質で形成されるため、経時変化により静電容量が変化することが考えられ、ギャップが変化することにより、変位の検出結果がずれていく虞がある。
【0009】
加えて、検出される静電容量に基づく信号には、上記可動基板1003の歪みによる静電容量の変化(実際に測定したい変位に基づく静電容量の変化量)の他に、この可動電極1004のZ軸方向の変位による静電容量の増分がオフセットとして含まれる。このオフセットは、センサの傾斜角θが小さい場合には重力の方向と可動基板1003の変位の方向とが一致するため大きくなり、センサの傾きが垂直に近い場合には重力の方向と変位の方向とが直交するため殆どゼロとなる。すなわち、センサの傾斜の角度により、可動電極1004全体のZ軸方向の変化量が異なるため、オフセット量が角度ごとに変化してしまうこととなる。
【0010】
このため、センサの構成にもよるが、傾斜を検出する際に、その検出範囲が狭い角度範囲に限定されてしまい、センサを外部機器に取り付ける場合、傾斜等の検出範囲が狭いことから、その取り付けの自由度が小さくなってしまうという不都合もある。そして、静電容量は錘1005に作用する力に対して極大値をもって変化するため、容量変化から傾斜角を求める場合、前記変位による可動電極1003の鉛直方向の変化分を補正する演算が必要となり、計算が複雑になる。このため、処理回路が高価となるとともに、補正演算により検出精度が落ちてしまう。
【0011】
本発明は、上述の課題に鑑みなされたものであり、変位の検出値のダイナミックレンジを広げて検出感度を向上させるとともに、錘による可動部のZ軸方向への変位を補正することなく、固定電極と可動電極との間の静電容量の変化量に基づいて、錘に作用する力を検出できる静電容量式センサを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願発明の静電容量式センサは、固定基板に形成された固定電極と、該固定基板に所定の間隔にて対向配置され、揺動動作可能に支持された可動部に設けられた可動電極とを有し、前記可動部の変位による、前記可動電極と前記固定電極とにて構成される容量素子の静電容量の変化に基づき、前記可動部の揺動動作を検出する静電容量式センサであり、前記固定電極の電極面におけるX−Y座標面の第1から第4象限に各々対応して、前記容量素子が1つずつ設けられており、相反的に容量が変化する前記容量素子の対を構成し、一対毎に容量素子間の静電容量の容量差を減算により求め、求められた各対の容量差を加算して、該加算結果に基づき、X軸方向及びY軸方向における揺動動作の変位を検出することを特徴としている。
本構成によれば、相反的に静電容量が変化する容量素子の対において、対を構成する容量素子間の容量差を減算して求め、この容量差を加算することにより、容量の変化量を実質的に増加させ、可動部における変位の検出感度を向上させるとともに、減算を行うことで、平衡状態における初期オフセット及びZ軸方向の変位の影響による静電容量の変化分をキャンセルすることにより、X軸及びY軸方向各々の変位に基づく変化量のみを抽出することができ、これにより、変化量のみに対する演算を行え、変位量検出の演算のダイナミックレンジを広くとることが可能となり、演算による検出感度及び検出精度を向上させることができる。また、固定電極と可動電極との間隔を縮めて、変位による単位当たりの静電容量の変化(変化率)を大きくすることで、変位の検出感度を向上させる場合、間隔が狭まるために、初期オフセットとしての静電容量が増加したとしても、演算の始めに、相反的に静電容量が変化する容量素子の対において、対を構成する容量素子間の容量差を減算して求めるため、既にのべたように、初期オフセットの静電容量が増加したとしても、最初の減算処理によりキャンセルされるため、ダイナミックレンジを狭めることなく、変位量の演算のみにダイナミックレンジを使用することができるため、初期オフセットの静電容量が増加によって検出精度を低下させることなく、容易に検出感度を向上させることができる。
【0013】
本願発明の静電容量式センサは、前記第1及び第2象限に各々対応する第1,第2の容量素子の静電容量の第1の容量差を求める第1の減算手段と、前記第4及び第3象限に各々対応する第4,第3の容量素子の静電容量の第2の容量差を求める第2の減算手段と、前記第1及び第2の容量差を加算する第1の加算手段と、前記第2及び第3象限に各々対応する第2,第3の容量素子の静電容量の第3の容量差を求める第3の減算手段と、前記第1及び第4象限に各々対応する第1,第4の容量素子の静電容量の第4の容量差を求める第4の減算手段と、前記第3及び第4の容量差を加算する第2の加算手段とを有し、第1の加算手段の加算結果によりX軸方向の変位、また第2の加算手段の加算結果によりY軸方向の変位を検出することを特徴としている。
本構成によれば、相反的に静電容量が変化する容量素子対における容量差、すなわち、第1,第2の容量素子の第1の容量差と、第4,第3の容量素子の第2の容量差とを減算して求め、この第1及び第2の容量差を加算することにより、容量の変化量を実質的に増加させることができ、可動部における変位の検出感度を実質的に向上させるとともに、減算を行うことで、平衡状態における初期オフセット及びZ軸方向の変位の影響による静電容量の変化分をキャンセルすることにより、X軸方向の変位に基づく変化量のみを抽出することができ、変化量に対する演算のみを行えばよく、演算のダイナミックレンジを広くとることが可能となり、X軸方向の変位量の検出感度及び検出精度を向上させることができる。
また、相反的に静電容量が変化する容量素子対における容量差、すなわち、第2,第3の容量素子の第3の容量差と、第1,第4の容量素子の第4の容量差とを減算してもとめ、この第3及び第4の容量差を加算することにより、上述したX軸方向の変位の検出と同様に、Y軸方向の変位量の検出感度及び検出精度も向上させることができる。
【0014】
本願発明の静電容量式センサは、前記第1及び第3象限に各々対応する第1,第3の容量素子の静電容量の第1の容量差を求める第1の減算手段と、前記第4及び第2象限に各々対応する第4,第2の容量素子の静電容量の第2の容量差を求める第2の減算手段と、前記第1及び第2の容量差を加算する第1の加算手段と、前記第1及び第3象限に各々対応する第1,第3の容量素子の静電容量の第3の容量差を求める第3の減算手段と、前記第2及び第4象限に各々対応する第2,第4の容量素子の静電容量の第4の容量差を求める第4の減算手段と、前記第3及び第4の容量差を加算する第2の加算手段とを有し、第1の加算手段の加算結果によりX軸方向の変位、また第2の加算手段の加算結果によりY軸方向の変位を検出することを特徴としている。
本構成によれば、相反的に静電容量が変化する容量素子対における容量差、すなわち、第1,第3の容量素子の第1の容量差と、第4,第2の容量素子の第2の容量差とを減算して求め、この第1及び第2の容量差を加算することにより、容量の変化量を実質的に増加させることができ、可動部における変位の検出感度を実質的に向上させるとともに、減算を行うことで、平衡状態における初期オフセット及びZ軸方向の変位の影響による静電容量の変化分をキャンセルすることにより、X軸方向の変位に基づく変化量のみを抽出することができ、変化量に対する演算のみを行えばよく、演算のダイナミックレンジを広くとることが可能となり、X軸方向の変位量の検出感度及び検出精度を向上させることができる。
また、相反的に静電容量が変化する容量素子対における容量差、すなわち、第1,第3の容量素子の第3の容量差と、第2,第4の容量素子の第4の容量差とを減算してもとめ、この第3及び第4の容量差を加算することにより、上述したX軸方向の変位の検出と同様に、Y軸方向の変位量の検出感度及び検出精度も向上させることができる。
【0015】
本願発明の静電容量式センサは、前記固定基板と前記可動部に設けられた錘との間に配置され、前記可動部を揺動自在に支持する支持体を有することを特徴としている。
本構成によれば、前記支持体により、前記固定基板に対して前記可動部のZ軸方向への変位を抑制することで、平衡状態において固定基板と可動部とのギャップを一定にすることができ、かつ、センサが傾斜、またはセンサに外力が加わることにより可動部が揺動する際、可動部がX軸方向及びY軸方向のみに変位するように制御することができ、X軸及びY軸方向の変位に対するZ軸方向の変位の影響を防止し、演算によるZ軸方向の変位の補正を行う必要が無くなることにより、X軸及びY軸方向における変位量の検出感度及び検出精度を向上させることができる。
【0016】
本願発明の静電容量式センサは、前記支持体の高さにより、前記固定基板と可動部との間隔を制御し、該可動部の変位の検出感度を調整することを特徴としている。
本構成によれば、支持体により前記固定基板と可動部との間隔を一定に制御しているため、センサ間におけるギャップのばらつきがなく、間隔の経時変化もないことにより、センサ間および時間経過による検出のばらつきを防止し、演算によるZ軸方向の変位の補正を行う必要が無くなることにより、検出精度を低下させることなく、X軸及びY軸方向における変位量の検出感度を、前記ギャップを調整することにより、容易に向上させることができる。
【0017】
本願発明の静電容量式センサは、前記可動部が前記固定基板に対向して配設された他の基板に中間部とともに形成されており、該中間部が該他の基板を固定する支持部に第1の軸回りに揺動可能に支持され、前記可動部が前記第1の軸と直交する第2の軸回りに揺動可能に、前記中間部に支持されていることを特徴としている。
本構成によれば、可動部は支持部と中間部とにより、第1及び第2の軸回りに独立して揺動可能となり、可動部がX軸及びY軸方向に揺動し易くなり、揺動の際における固定電極と可動電極との変位量を大きくすることができ、X軸及びY軸方向の2軸方向の変位の検出を感度良く行うことができる。
【0018】
本願発明の静電容量式センサは、前記支持部と前記中間部とが前記第1の軸に平行な第1の連結部により連結され、前記中間部と前記可動部とが前記第2の軸に平行な第2の連結部により連結され、前記支持部,前記中間部,前記可動部,前記第1及び第2の連結部とが前記他の基板に溝孔を設けて一体に形成されていることを特徴としている。
本構成によれば、例えば、単一の板材に切り込み(溝孔)を設けることにより、容易に支持部,中間部,可動部,第1及び第2の連結部を形成することができるため、製造精度を高めた製造が容易となり、かつ、センサにおける揺動部分の強度を向上させることが可能である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態に係る静電容量センサの構造を、図4から図7を参照して説明する。図4は、本発明の実施形態に係る静電容量センサの全体構成を示す概略断面図、図5は本発明の実施形態に係る静電容量センサの全体構成を示す分解斜視図、図6は基板の平面図、図7は基板に対向して設けられている金属板(可動電極)の平面図である。
【0020】
本発明の実施形態に係る静電容量式センサ100は、図4に示すように、基板10の上面11S側に、静電容量の変化量に対応して、揺動の変位量を検出するための容量素子が設けられた検出部200を備え、基板10の下面13R側に検出部200から検出された静電容量を処理する回路素子300を備えて構成されている。本実施形態では、検出部200は静電容量式の傾斜センサとして構成され、回路素子300としてはIC(集積回路)のベアチップが用いられている。
【0021】
検出部200は、静電容量式センサ100の傾斜を容量変化として検出する静電容量式の傾斜センサであり、図5に示すように、基板(固定基板)10の上面11S上に形成された四つの固定電極11aと、これらの固定電極11aに対向する金属板(可動電極)30と、この金属板30にひねり変形を加えるための錘40とを備えて構成されている。
図6に示すように、基板10の上面11Sの中央部には四つの固定電極11aが碁盤目状に形成され、すなわち、第1の固定電極(信号検出用コンデンサC2に対応)が第1象限に形成され、第2の固定電極(信号検出用コンデンサC1に対応)が第2象限に形成され、第3の固定電極(信号検出用コンデンサC3に対応)が第3象限に形成され、第4の固定電極(信号検出用コンデンサC4に対応)が第4象限に形成されている。上面11Sの外周部には上記四つの固定電極11aを囲むように四角枠状の電極11bが形成されている。この電極11bは、基板10に設けられた図示してないスルーホール電極や配線パターン等を介して基板10の裏面側に実装された回路素子300の駆動信号用の端子(図示せず)に接続されている。
【0022】
また、基板10の上面11Sに形成された四つの固定電極11aの中心部には金属板30を支持し、Z軸方向の変位を抑制する支持用突起12(支持体)が形成されている。この構成によれば、支持用突起12により、固定基板10に対して可動部30dのZ軸方向への変位を抑制することで、平衡状態において固定基板10と可動部30dとのギャップを一定にすることができ、かつ、センサが傾斜、またはセンサに外力が加わることにより可動部30dが揺動する際、可動部30dがX軸方向及びY軸方向のみに変位するように制御することができ、X軸及びY軸方向の変位に対するZ軸方向の変位の影響を防止し、演算によるZ軸方向の変位の補正を行う必要が無くなることにより、X軸及びY軸方向における変位量の検出感度及び検出精度を向上させることができる。
【0023】
そして、電極11b上には矩形枠状をなした金属製の導電性スペーサ20が配され、このスペーサ20上に可動電極を構成する薄い金属板30が積重されている。この金属板30と固定電極11aとの間隔は支持用突起12及びスペーサ20の厚みによって一定に保持され、金属板30と四つの固定電極11aとにより四つの容量可変式の信号検出用コンデンサが形成されている。したがって、金属板(可動電極)30は、センサの外周に沿った枠状の導電性のスペーサ20、電極11b、基板10のスルーホール電極、配線パターン等を介して回路素子300の駆動信号用の端子に導通接続されている。
【0024】
金属板30は、図7に示すように、この金属板30の外周部として構成される枠状の支持部30aと、この支持部30aにより第1の連結部30c回りに揺動可能に支持された中間部30bと、この中間部30bにより上記の第1の連結部30cと直交する第2の連結部30e回りに揺動可能に支持された導電性の可動部30dとからなり、可動部30dは連結部30c,30eのひねり変形により二軸回りに揺動可能に構成されている。
【0025】
具体的には、支持部30aは、固定基板及び金属板の間隔(キャップ)を保持するスペーサ20と重なるように配置され、その対向する一対の辺の内周中央に、内側に向かう第1の軸線(X軸)に平行な一対の第1の連結部30cが設けられている。この一対の第1の連結部30cの他端は、支持部30aの内周に沿うように設けられた枠状の中間部30bにつながっており、中間部30bは傾斜により一対の第1の連結部30cがひねり変形することにより、第1の軸線回りに揺動できるように形成されている。
【0026】
また、中間部30bの内周には、第1の軸線に直交する第2の軸線に平行に、互いに対向する一対の第2の連結部30eが設けられている。この一対の第2の連結部30eの他端は、その外周が中間部30bの内周に沿うように設けられた矩形の可動部30dにつながっており、この可動部30dは第2の連結部30eがひねり変形することにより、第2の軸線回りに揺動できるように形成されている。なお、連結部30c,30eの軸方向はそれぞれ碁盤目状に配置された固定電極11aの行方向又は列方向に一致するように構成されており、可動部30dの揺動を感度良く検出できるようになっている。
【0027】
ここで、他の基板としての金属板30は、支持部30a,中間部30b,第1の連結部30c,可動部30d,第2の連結部30eは全て一枚の金属板に溝孔(スリット)を設ける事で形成している。そのため、加工も容易で、又精度も出しやすい。すなわち、支持部30aと中間部30bとは第1の連結部30cを除く位置に設けられた平面視「コ」字形の第1のスリット31により分離され、中間部30bと可動部30dとは第2の連結部30eを除く位置に設けられた平面視「コ」字形の第2のスリット32により分離されている。また、可動部30dは金属の板材として(すなわち金属板30を加工して)構成されるため、揺動可能な可動部30dは本発明の可動電極としても機能する。
【0028】
また、金属板30では、ひねりによって第1の連結部30c,第2の連結部30eが塑性変形しないように、第1のスリット31の両端部及び第2のスリット32の両端部に、それぞれ支持部30a側及び可動部30d側に突出するような食込み部31a,32aを形成し、第1の連結部30c,第2の連結部30eが塑性変形防止に必要な一定以上の長さとなるようにしている。このような食込み部31a,32aは中間部3b側には形成されておらず、第1の連結部30c,第2の連結部30eがそれぞれ支持部30a側,可動部30d側にのみ食い込むように構成されている。
【0029】
これは、例えば食込み部31a,32aを中間部30b側に形成した場合、中間部30bがこのような食込み部によって一部細くなり、この細くなった部分にひねりによる応力が集中して中間部30bが塑性変形する虞があるためである。このような応力集中は、中間部30bの枠の太さが局所的に細くなる部位に生じ易い。そのため、ひねり力が中間部30b全体に分散されるように、中間部30b側に食込み部を設けずに中間部30bの枠の太さを略一定とした。
【0030】
可動部30dの基板10と反対側の面の中央部には、接着,電気溶接,レーザースポット溶接,カシメ等の方法によって取り付けられた錘40が搭載されている。錘40の重心は前記第1の連結部30c、第2の連結部30eの軸線のいずれからも鉛直方向に偏心している(即ち、錘40の重心位置は金属板30の重心位置より高い部分に調整されている)。そのため、センサを傾けると、錘40は傾斜センサ100の傾斜に応じて金属板30と支持用突起12との当接位置を中心として揺動し、その揺動方向によって第1の連結部30c(X軸),第2の連結部30e(Y軸)のどちらか又は両方の軸回りに所定の大きさのモーメントを発生させるようになっている。それにより、第1の連結部30c、第2の連結部30eがひねり変形され、可動電極である可動部30dと、4つの電極11a各々との間隔が変化するようになっている。
【0031】
このようなモーメントは第1の連結部30c,第2の連結部30eのどちらか一方又は両方の軸をひねり変形し、可動部30dはこのモーメントと第1の連結部30c,第2の連結部30eのひねりに対する弾性力とが釣り合う角度で停止する。なお、この錘40はその底部(下部)40aが本体部である頭部(上部)40bよりも細く形成され、錘40の重心位置が高くなるように構成されている。このため、錘40の大きさが同じ場合に、錘40の質量と重心位置との積で表されるモーメントが大きくなり、センサ100の僅かな傾斜に対しても上記軸線方向に大きなモーメントを作用させることができ、センサ100を軽量化しながら傾斜感度を高めることができるようになっている。
また、支持用突起12により可動部30dを固定基板10とは反対側へ付勢して、固定基板10と可動部30dとの間隔を一定に制御しているため、センサ間におけるギャップのばらつきがなく、間隔の経時変化もないことから、センサ間および時間経過による検出のばらつきを防止し、演算によるZ軸方向の変位の補正を行う必要が無くなることにより、検出精度を低下させることなく、X軸及びY軸方向における変位量の検出感度を、上記ギャップ(付勢量)を調整することにより容易に向上させることができる。
【0032】
ここで、図7に示すように、可動電極、すなわち金属板30に対して、第1の連結部30c、30cをX軸とし、第2の連結部30e,30eをY軸とするように、X−Y直交座標系をとるものとする。ここで、金属板30(可動部30d)と四つの固定電極11aとにより形成される四つの容量可変式の容量素子(信号検出用コンデンサC1〜C4)は、上記X−Y直交座標系における第1象限〜第4象限の各象限に1つずつ形成され、これらのうち、第2、第1象限に形成される信号検出用コンデンサ(容量素子)の静電容量に対応して検出される電圧(以下、単に検出電圧という)を、それぞれ、検出電圧A,Bとし、第3、第4象限に形成される信号検出用コンデンサの検出電圧を、それぞれ、検出電圧C,Dとする。
【0033】
金属板30がX軸回りに揺動する際に、金属板30と四つの固定電極11aにより形成される四つの信号検出用コンデンサにおいて、第1、第2象限に形成される信号検出用コンデンサと、第3、第4象限に形成される信号検出用コンデンサとは、互いに静電容量が反対方向に増減するように変化する。すなわち、金属板30がX軸回りに揺動する際に固定電極11aと金属板30との間隔が、第1、第2象限に形成される信号検出用コンデンサC2,C1と第3、第4象限に形成される信号検出用コンデンサC3,C4とで反対方向に増減するように変化するので、静電容量が反対方向に増減するように(相反的に)変化する。
【0034】
このとき、第1、第2象限に形成される信号検出用コンデンサにおける金属板30と固定電極11aとの間隔は、同方向に増加、または減少するように変化するので、第1、第2象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量はそれぞれ、同方向に減少又は増加する。同時に、第3、第4象限に形成される信号検出用コンデンサにおける金属板30と固定電極11aとの間隔は、同方向に減少、または増加するように変化するので、第3、第4象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量はそれぞれ、同方向に増加、又は減少する。
ここで、Y軸方向の変位を検出するための信号検出用コンデンサ対として、第1及び第4象限に形成される信号検出用コンデンサの組と、第2及び第3象限に形成される信号検出用コンデンサの組とを、計算上において、相反的に変化する信号検出用コンデンサの対として形成する。
【0035】
したがって、金属板30がX軸回りに揺動した際の四つの信号検出用コンデンサの静電容量に対応した電圧の変化量Yは、第1及び第4象限に形成される信号検出用コンデンサC2,C4の静電容量の電圧換算値の差(C2,4の静電容量の差、すなわち静電容量の変化量)と、第2及び第3象限に形成される信号検出用コンデンサC1,C3の静電容量の電圧換算値の差(C1,3の静電容量の差、すなわち静電容量の変化量)との和で求められるから、
Y=(D−B)+(C−A) …(1)
となる。
なお、金属板30がX軸回りに揺動するということは、X軸は変位せず、Y軸がX軸回りに揺動する(換言すれば、錘40がY軸方向に揺動する)ということであるので、X軸回りの揺動をY軸方向の変化(変位)と捉えることができる。
そして、(1)式により、静電容量が相反的に変化する信号検出用コンデンサの対において、初期オフセット値をキャンセルすることができ、純粋に、第1及び第4象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量、及び第2及び第3象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量の変化量を測定することができ、変位量の検出のダイナミックレンジを広げることができ、X軸回りのY軸方向の変位の検出において、測定感度及び測定精度を向上させることとなる。
【0036】
また、金属板30がY軸回りに揺動する際に、金属板30と四つの固定電極11aにより形成される四つの信号検出用コンデンサにおいて、第2、第3象限に形成される信号検出用コンデンサと、第4、第1象限に形成される信号検出用コンデンサとは、互いに静電容量が反対方向に増減するように変化する。すなわち、金属板30がY軸回りに揺動する際に固定電極11aと金属板30との間隔が、第2、第3象限に形成される信号検出用コンデンサと第4、第1象限に形成される信号検出用コンデンサとで反対方向に増減するように変化するので、静電容量が反対方向に増減するように変化する。
【0037】
このとき、第2、第3象限に形成される信号検出用コンデンサにおける金属板30と固定電極11aとの間隔は、同方向に増加、または減少するように変化するので、第2、第3象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量はそれぞれ、同方向に減少又は増加する。同時に、第4、第1象限に形成される信号検出用コンデンサにおける金属板30と固定電極11aとの間隔は、同方向に減少、または増加するように変化するので、第4、第1象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量はそれぞれ、同方向に増加、又は減少する。
ここで、X軸方向の変位を検出するための信号検出用コンデンサ対として、第1及び第2象限に形成される信号検出用コンデンサの組と、第4及び第3象限に形成される信号検出用コンデンサの組とを、計算上において、相反的に変化する信号検出用コンデンサの対として形成する。
【0038】
したがって、金属板30がY軸回りに揺動した際の四つの信号検出用コンデンサの静電容量に対応した電圧の変化量Xは、第1及び第2象限に形成される信号検出用コンデンサC2,C1の静電容量の電圧換算値の差(C2,1の静電容量の差、すなわち静電容量の変化量)と、第4及び第3象限に形成される信号検出用コンデンサC4,C3の静電容量の電圧換算値の差(C4,C3の静電容量の差、すなわち静電容量の変化量)との和で求められるから、
X=(A−B)+(C−D) …(2)
となる。
なお、金属板30がY軸回りに揺動するということは、X軸がY軸回りに揺動する(換言すれば、錘40がX軸方向に揺動する)ということであり、Y軸回りの揺動をX軸方向の変化と捉えることができる。
そして、(2)式により、静電容量が相反的に変化する信号検出用コンデンサの対において、初期オフセット値をキャンセルすることができ、純粋に、第1及び第2象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量、及び第4及び第3象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量の変化量を測定することができ、変位量の検出のダイナミックレンジを広げることができ、Y軸回りのX軸方向の変位の検出において、測定感度及び測定精度を向上させることとなる。
上述したように、静電容量式センサ100を傾斜センサとして使用する際に上式(1)、(2)の演算を行なうことによりセンサ100の傾斜に応じた静電容量に対応した電圧の変化量Y,Xを求め、この変化量Y,Xの値からセンサ100の傾斜(変位)を求めることができる。
【0039】
また、上述した信号検出用コンデンサ対を用いるのではなく、Y軸方向の変位を検出するための信号検出用コンデンサ対として、第1及び第3象限に形成される信号検出用コンデンサの組と、第2及び第4象限に形成される信号検出用コンデンサの組とを、計算上において、相反的に変化する信号検出用コンデンサの対として形成しても良い。同様に、X軸方向の変位を検出するための信号検出用コンデンサ対として、第1及び第3象限に形成される信号検出用コンデンサの組と、第4及び第2象限に形成される信号検出用コンデンサの組とを、計算上において、相反的に変化する信号検出用コンデンサの対として形成する。
この場合、上記(1)及び(2)式に対応する式は、各々、以下に示す(3)式,(4)式である。
Y=(C−B)+(D−A) …(3)
X=(A−D)+(C−B) …(4)
となり、上述した(1),(2)式により変位量を求める場合と同様の効果を有し、静電容量式センサ100を傾斜センサとして使用する際に上式(3)、(4)の演算を行なうことによりセンサ100の傾斜に応じた静電容量に対応した電圧の変化量Y,Xを求め、これらの値からセンサ100の傾斜(変位)を求めることができる。
なお、信号検出用コンデンサ対の組合せは、上述したものに限られず、例えば、Y軸方向の変位を検出する際に、上記(3)式を用い、X軸方向の変位の検出では、上記(2)式を用いるようにしてもよく、(1)式と(4)式により変位を検出することもできる。
【0040】
又、可動部30dの下面には、可動部30dを上方へ付勢するように前記支持用突起12が突き当てられており、電極11aと可動部30dとの間隔(ギャップ)gを一定に保持するとともに、下向きの並進加速度(重力など)の影響をキャンセルできるようになっている。つまり、支持用突起12を設けない場合、可動部30dは錘40の重さによって基板10側に若干撓み、可動電極としての可動部30dと電極11aとの間の静電容量にはこの撓み(変位)による静電容量の増分がオフセットとして含まれてしまう。このオフセットはセンサの傾きが小さい場合には大きく、逆にセンサが垂直に近い場合には、このような撓みが少なくなるため小さくなる。
【0041】
その結果、静電容量は錘40のモーメントに対して極大値を持って変化してしまい、このような静電容量からセンサの傾斜角を求める場合には撓みによる可動部30dの鉛直方向の変位を補正する演算が必要となる。このため、可動部30dを支持用突起12によって下面側から支持してこのような撓みを防止することで、静電容量をモーメントに対して広範囲(可動部30dを支持用突起12で付勢している場合には最大±90°)に亘って1対1の関係で直線的に変化させ、Z軸方向の変位の影響を考慮する必要を無くし、傾斜を求めるための演算を単純化している。
【0042】
さらに、センサを極端に傾ける事が無い限り、錘40の重さが第1の連結部30c、第2の連結部30eに直接掛からない。よって、錘40の重さの割に第1の連結部30c、第2の連結部30eを細くしても永久変形しにくいため、耐衝撃性を維持したまま、第1の連結部30c、第2の連結部30eを細くできる。当然、2つの軸部は細い程、剛性が低いため、傾斜によるモーメントに対して敏感に変形し、高精度な検出が出来る様になる。
【0043】
また、支持用突起12の高さは支持部30aを載置するスペーサ20及び電極11dの厚みよりも若干高く(或いは、スペーサ20及び電極11dの厚みが支持用突起12の高さよりも若干薄く)なっており、可動部30dは支持部30aよりも基板10から離され、センサがひっくり返され錘40が下側になった状態においても可動部30dは支持用突起12により基板10と反対側に付勢されるようになっている。この付勢力の大きさは、支持用突起12の高さとスペーサ20の厚みの差で決まるため、例えば、支持用突起12によってギャップgが定められた場合には、スペーサ20の厚みを調節することで付勢力が最適に設定される。
【0044】
また、図4、図5に示すように、金属板30の支持部30a上には、矩形枠状の導電性スペーサ42、可動部30dの必要以上の動きを規制する金属製のストッパ44及び絶縁性のスペーサ52が積層されており、スペーサ52の複数の突起52aが、各部材の位置決め孔45、43、31、21、13に挿通されている。
さらに、基板10の上面11S上には、スペーサ20ないしストッパ44の各部材の周囲に位置し、上面11Sの外周部に沿うように配された矩形枠状の絶縁性のパッキン50を介して金属製のカバー60が設けられている。このカバー60は円筒型の頭部60bとその周辺部に広がるフランジ部60aとフランジ部60aの側面に形成された平板状の複数の突部60cとからなり、そのフランジ部60aでスペーサ52、ストッパ44、スペーサ42を介して支持部30aを電極11b側へ押し付けて固定するとともに、突部60cを基板10の下面13Rに形成されたグランドパターン70上にかしめ付けることにより、カバー60は接地されており、防塵,防滴,センサ100周辺の帯電物による容量ドリフト,ノイズ及び取り扱い上の不注意等からセンサ100を保護するようになっている。なお、絶縁性のスペーサ52とパッキン50を設けることにより金属製のカバー60と金属板30とが導通しないようになっている。
【0045】
ところで、基板10はセラミックス又はエポキシ樹脂等からなる絶縁性の板材の積層体として構成された多層配線基板であり、その中間層として金属面からなるグランド層12Sが形成されている。
基板10の上面としての固定電極層11Sには、図4に示すように、その中央部に四つの固定電極11aが例えば、Ag(銀)のパターン印刷により碁盤目状に形成されている。また、固定電極層11Sの外周部には、金属板30と導通される電極11bが矩形枠状に形成されている。
【0046】
グランド層12Sは、金属板30からの駆動信号が固定電極11aを介さずに、回路素子300へ入力することを防止するとともに、基板10の外部(検出部200においては基板10の下面側、回路素子300においては基板10の上面側)から入るノイズをカットするノイズシールドとして機能し、電極11bと接続された図示しないスルーホール電極や固定電極11aと導通するスルーホール電極H1,H2等のスルーホール電極部分と外周縁部とを除く略全面がAg等の金属面(導電面)として構成されている。
【0047】
また、この金属面、すなわちグランド層12Sは、基板10の下面としてのチップ実装面13Rまで貫通する図示してない複数のスルーホール電極(スルーホール電極H1,H2と異なる)によってチップ実装面13R上の金属面(導電面)からなるグランドパターン70と導通して、接地用端子(図示せず)と接続されるとともに、基板10の側面に形成された取り出し電極(図示せず)を介して接地されるようになっている。
【0048】
回路素子300は、基板10裏面側のチップ実装面13Rに搭載されており、チップ実装面13R内の図示しない駆動信号用の端子、信号検出用の端子、電源用の端子、グランド用の端子及び信号出力用の端子と回路素子300の複数のアルミニウム製の端子とがそれぞれ金バンプ310で接続されている。そして、駆動信号用の端子、配線パターン、スルーホール電極(いずれも図示なし)、電極11b、スペーサ20等を介して可動電極を構成する金属板30に回路素子300から駆動信号(矩形波状の電圧)が加えられ、この金属板30と対向配置された固定電極11aに誘導された電流等の電気信号がスルーホール電極H1,H2や信号検出用の端子等を介して回路素子300に入力され、該電気信号により信号検出用コンデンサの各容量変化を求めている。
【0049】
この金属板30と固定電極11aとで構成される信号検出用コンデンサは既に述べたように、C1,C2,C3,C4の4つあり、これら4つの信号検出用コンデンサC1〜C4各々の容量変化に基づいて、回路素子300において、傾斜センサ100の傾斜方向及び傾斜量を、上記で説明した(1)〜(4)式の演算により算出されるようになっている。また、この算出結果はチップ実装面13R上に形成された信号出力用の端子及び外部接続電極(図示せず)を介して外部装置に出力されるようになっている。
【0050】
半導体からなるベアチップのサブストレート300bは金バンプ、スルーホール電極(スルーホール電極H1,H2と異なる)等を介して基板10のグランド層12Sと導通状態となっている。したがって、ベアチップの回路部300cは、下面と周囲が接地されるサブストレート300bによって囲まれ、上面側にはグランド層12Sが存在するため、ほぼ完全にシールドされた構造をとることとなり、外部からのノイズの影響をほとんど受けることはない。
【0051】
また、固定電極11aは、グランド電位と電源電圧とが交互に印加される可動電極である、固定電極11aより大きい金属板30と、基板10内に形成されたグランド層12Sとで挟まれた構造、すなわち、金属板30とグランド層12Sとの中間に位置するように構成されているので、固定電極11aはシールドされた状態となり、外来ノイズの影響を受けにくく、信号検出用コンデンサの静電容量が小さくても、精度良く検出することが可能である。
【0052】
また、補強のために、回路素子(ベアチップ)300とチップ実装面13Rとをエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂320により接着し一体化させている。
上記構成において、センサ100を傾けると、錘40が支持用突起12と搭載部30dとの当接位置を中心として揺動し、その傾斜方向及び傾斜量に応じて、可動部30dに対し第1の連結部30c又は第2の連結部30e回りのモーメントを作用させる。そして、第1の連結部30c,第2の連結部30eのひねり変形に対する弾性力とこのモーメントとが釣り合う角度で可動部30dが停止する。
【0053】
これにより、可動電極としての可動部30dと各固定電極11aとにより構成される信号検出用コンデンサの静電容量が変化し、その容量変化が、スルーホール電極H1,H2や信号検出用端子等を介して固定電極11aの略真下に実装された回路素子300に電気信号として入力される。そして、回路素子300による処理結果は、基板10の底面たる接続電極面14Rの外部接続電極等を介して外部装置へ出力される。
【0054】
次に、本発明の実施形態に係る静電容量式センサの電気的構成(回路素子300の構成)を図1及び図2に示す。これらの図において、本発明の実施形態に係る静電容量式センサ100は、パルス発生回路500と、分周器として機能するD(遅延)フリップフロップ502、504と、Dフリップフロップ502、504のQ出力を入力とするANDゲート506と、固定電極11aと可動電極30とで形成される4つの信号検出用コンデンサC1(第2象限)、C2(第1象限)、C3(第3象限)、C4(第4象限)とを有している(図6参照)。
【0055】
パルス発生回路500は、所定周波数(本実施形態では、例えば、400KHz)のパルス信号を生成し、出力する。
Dフリップフロップ502は、パルス発生回路500の出力するパルス信号の周波数を1/2分周し、Dフリップフロップ504は、Dフリップフロップ502のQBAR出力から出力されるパルス信号を1/2分周するようになっている。Dフリップフロップ504のQ出力は4つの信号検出用コンデンサC1、C2、C3、C4に、保護抵抗R10を介して供給する駆動信号VDRIVEとなる。この駆動信号VDRIVEはロウレベルとハイレベルとに交互に変化するパルス信号であるが、本実施形態においては、ロウレベルの電位はグランド電位であり、ハイレベルは電源電圧Vccである。
【0056】
4つの信号検出用コンデンサC1、C2、C3、C4における可動電極30側の端子は共通接続され、保護抵抗R10を介してDフリップフロップ504のQ端子に接続されている。パルス発生回路500及びDフリップフロップ502、504は、駆動信号供給手段に相当する。
また、信号検出用コンデンサC1、C2、C3、C4における固定電極11a側の端子は、それぞれ保護抵抗R11を介して、それぞれ、オペアンプ900、901、902、903の反転入力端子(入力端)に接続されている。オペアンプ900、901、902、903の非反転入力端子は、それぞれ、固定電位(Vcc/2、このVccは電源電圧)に設定されている。
【0057】
また、オペアンプ900、901、902、903の反転入力端子と出力端子との間には、積分コンデンサC11が、それぞれ接続されている。そして、オペアンプ900、901、902、903の反転入力端子と出力端子との間には、各上記積分コンデンサC11に蓄積された電荷を放電させ、充電前の初期状態にリセットするためのアナログスイッチ910、911、912、913が、これらの各積分コンデンサC11と並列に各々接続されている。
【0058】
本実施形態では、アナログスイッチ910〜913は、Dフリップフロップ504のQBAR出力からの出力信号により、その動作タイミングが制御され、該QBAR出力がハイレベルの時にオン状態となり、積分コンデンサC11の電荷を放電し、ロウレベルの時にオフ状態となり、この積分コンデンサC11が充電状態とされる。オペアンプ900、積分コンデンサC11、及びアナログスイッチ910は、積分回路920を構成している。
オペアンプ901、902、903についても同様に、積分コンデンサC11、アナログスイッチ911、912、913とで積分回路921、922、923を構成している。
【0059】
アナログスイッチ910〜913は、本実施形態では、駆動信号VDRIVEが一方のレベルであるロウレベル時に、すなわちDフリップフロップ504のQBAR出力がハイレベルのとき、積分コンデンサC11の両端を短絡し、リセットするように動作して、駆動信号VDRIVEがハイレベル時の積分回路出力を容量素子の検出信号として取り出しているが、駆動信号VDRIVEがハイレベル時に、すなわちDフリップフロップ504のQBAR出力がロウレベルのとき、積分コンデンサC11をリセットするようにしてもよい。このときには、信号検出用コンデンサC1、C2、C3、C4に印加される駆動信号VDRIVEがロウレベル時の積分回路出力を容量素子の検出信号として取り出す必要がある。
なお、アナログスイッチ910〜913は、スイッチ手段に相当する。
【0060】
また、オペアンプ900、901、902、903の出力端子は、それぞれ、アナログスイッチ530、531、532、533を介して各々オペアンプ540、541、542、543の非反転入力端子に接続されている。
アナログスイッチ530、531、532、533は、ANDゲート506の出力する出力信号VSAMPLEにより、その動作タイミングが制御されるようになっており、積分回路920,921,922,923の出力電圧である積分電圧をサンプリングし、このサンプリングされた積分電圧を、サンプルホールド用コンデンサC12に保持させる機能を有している。なお、本実施形態では、アナログスイッチ530〜533は、ANDゲート506の出力がハイレベルの信号でオン状態となり、ロウレベルの信号でオフ状態になるように制御される。
【0061】
また、オペアンプ540、541、542、543の非反転入力端子は、上述したように、アナログスイッチ530、531、532、533と接続されるとともに、それぞれサンプルホールド用コンデンサC12を介して接地されている。オペアンプ540、541、542、543は、それぞれ反転入力端子が出力端子と短絡され、バッファを構成している。
さらに、抵抗R12〜R15とオペアンプ550により減算器600が、抵抗R12〜R15とオペアンプ551により減算器601が、抵抗R12〜R15とオペアンプ552により減算器602が、抵抗R12〜R15とオペアンプ553により減算器603が、それぞれ構成されている。
【0062】
ここで、抵抗R12〜R15の抵抗値は、例えば、R12=R13、R14=R15になるように選択されている。また、抵抗R13の一端は、Vcc/2(Vccは電源電圧)の電圧が印加されている。
また、オペアンプ550、551の出力端子間に直列接続される抵抗R16、R17、及びオペアンプ560、このオペアンプ560の反転入力端子と出力端子との間に並列接続される抵抗R18、フィルタとしてのコンデンサC13により加算器700が、オペアンプ552、553の出力端間に直列接続される抵抗R16、R17、及びオペアンプ561、このオペアンプ561の反転入力端子と出力端子との間に並列接続される抵抗R18、コンデンサC13により加算器701が、それぞれ構成されている。オペアンプ560、561の非反転入力端子の電位は、Vcc/2に設定されている。
【0063】
減算器600は、入力されるオペアンプ540の出力と、オペアンプ541の出力との差分の演算、すなわち、検出電圧Aと検出電圧Bとの差分値「A−B」を演算して出力する。また、減算器601は、入力されるオペアンプ542の出力と、オペアンプ543の出力との差分を演算、すなわち、検出電圧Cと検出電圧Dとの差分値「C−D」を演算して出力する。さらに、減算器602は、入力されるオペアンプ542の出力とオペアンプ540の出力との差分、すなわち、検出電圧Cと検出電圧Aとの差分値「C−A」を演算して出力する。加えて、減算器603は、入力されるオペアンプ543の出力と、オペアンプ541の出力との差分を演算、すなわち、検出電圧Dと検出電圧Bとの差分値「D−B」を演算して出力する。また、加算器700は、入力される減算器600の出力と、減算器601の出力とを加算、すなわち差分値「A−B」と「C−D」との加算値「(A−B)+(C−D)」を演算して出力する。さらに、加算器701は、入力される減算器602の出力と、減算器603の出力とを加算、すなわち、ち差分値「C−A」と「D−B」との加算値「(C−A)+(D−B)」を演算して出力する。
【0064】
加算器700、701の出力はそれぞれ端子710、711を介してA/D変換器800、801によりディジタル値に変換されるようになっている。A/D変換器800、801においてA/D変換に使用する基準電圧は、それぞれ電源電圧Vccを分圧した電圧、または電源電圧Vccに比例した電圧に設定される。また、減算器600〜603、加算器700、701における設定電圧(基準電圧)も既述したように、電源電圧Vccを分圧した電圧、または電源電圧Vccに比例した電圧に設定される(本実施形態ではVcc/2に設定される)。減算器600〜603、加算器700,701及びA/D変換器800、801は本発明の演算手段に相当する。
【0065】
次に、上記構成からなる、本発明の実施形態に係る静電容量式センサ100の動作例を図3のタイミングチャートを参照して説明する。パルス発生回路500は400KHzのパルス信号を出力する。そして、分周器であるDフリップフロップ502は、このパルス信号を1/2分周し、分周された200KHzのパルス信号をQ端子からANDゲート506の一方の入力端子に出力する。また、Dフリップフロップ504は、入力される上記分周された200KHzのパルス信号の周波数を、さらに1/2分周し、分周された100KHzの周波数のパルス信号を、QBAR出力から出力する。
【0066】
そして、Dフリップフロップ504は、100KHzのパルス信号を、信号検出用コンデンサC1〜C4の駆動信号VDRIVE(図3(B))としてQ出力から、保護抵抗R10を介して信号検出用コンデンサC1〜C4の可動電極30側の端子に対して出力するとともに、上記駆動信号VDRIVEをANDゲート506の他方の入力端子に入力される。
他方、Dフリップフロップ504は、QBAR出力から、駆動信号VDRIVEと逆相の電圧レベルの信号を、アナログスイッチ910〜913のオン/オフの制御端子に出力する。すなわち、Dフリップフロップ504は、アナログスイッチ910〜913の上記制御端子に対して、信号検出用コンデンサC1〜C4に印加される駆動信号VDRIVEを位相反転したパルス信号、すなわち、駆動信号VDRIVEと電圧レベルが相反するパルス信号を印加することとなる。
【0067】
これにより、アナログスイッチ910〜913は、Dフリップフロップ504のQBAR出力がハイレベルになるタイミングにおいて、オン状態となり、各積分回路を構成するオペアンプ900〜903の反転入力端子と出力端子との間に接続されている積分コンデンサC11の両端間が短絡し、各積分コンデンサC11の充電電荷を零に、すなわち積分コンデンサC11に蓄積された電荷をリセットする。
さらに、ANDゲート506は、入力されるDフリップフロップ502のQ出力(200KHzのパルス信号)と、Dフリップフロップ504のQ出力、すなわち駆動信号VDRIVEとの論理積の演算を行い、演算結果の出力信号VSAMPL(図3(C))を、アナログスイッチ530〜533に対して、積分回路920〜923の積分出力のサンプリング信号として出力する。
【0068】
一方、オペアンプ900〜903では、非反転入力端子と反転入力端子とがイマジナリショートにより同電位となり、Vcc/2となっているので、積分コンデンサC11がリセットされた時点では、オペアンプ900〜903の出力端子の電位は、Vcc/2となる。
その後、時刻t0において、Dフリップフロップ504は、D端子にハイレベルのQBAR出力らハイレベルの信号が入力され、CLK端子に入力されるパルス信号の立ち上がりエッジにより、QBAR出力の信号をロウレベルに遷移させ、アナログスイッチ910〜913をオフ状態とする。この時点において、Dフリップフロップ504は、信号検出用コンデンサC1〜C4の各々に対して、Q出力から保護抵抗R10を介してハイレベル(Vcc)の駆動信号VDRIVEを供給している。
【0069】
一方、信号検出用コンデンサC1〜C4の各々は、静電容量式センサ100の傾斜状態に応じて、固定電極11aと可動電極30との間隔が変化し、それぞれ、静電容量が変化している。
ここで、時刻t0から時刻t1までの期間において、信号検出用コンデンサC1についての動作を考えると、前述したように、信号検出用コンデンサC1には保護抵抗R10を介して駆動信号VDRIVE(ハイレベル)が印加されることにより、積分コンデンサC11に充電電流が流れ、この電流が積分回路920によって積分される。すなわち、信号検出用コンデンサC1と積分回路920の積分コンデンサC11との容量比に応じた電荷が積分コンデンサC11に、オペアンプ900により充電される。これにより、信号検出用コンデンサC1の静電容量の変化量が、電圧換算値の出力電圧Aとして積分回路920から出力されることとなる。
【0070】
具体的には、積分回路920の出力であるオペアンプ900の出力Vout1は、駆動信号VDRIVEが立ち上がり、ハイレベル(Vcc)となる時刻t0で、電位Vcc/2を基準にして保護抵抗R10及びR11の大きさに応じた傾斜で立下り、上記容量比に応じた充電電荷により時刻t1以降の時点で所定の電位に遷移する。
以上の動作は、他の信号検出用コンデンサC2〜C4及び積分回路921〜923についても同様に出力電圧B,C,Dとして出力され、説明が重複するために省略する。
【0071】
このようにして、信号検出用コンデンサC1〜C4の固定電極11aから入力される、信号検出用コンデンサC1〜C4の検出信号は、それぞれ、積分回路920、921、922、923により積分され、オペアンプ900、901、902、903の出力端子よりそれぞれ、積分出力(出力電圧)A,B,C,Dとして出力される(図3(A))。
次いで、時刻t2において、フリップフロップ502がCLK端子に入力されるパルス信号の立ち上がりエッジにより、Q出力をハイレベルに遷移させることにより、ANDゲート506は2入力共にハイレベルとなるため、出力VSAMPLが立ち上がり、アナログスイッチ530、531、532、533を各々オン状態とする。
ここで、時刻t2は、時刻t0から積分出力である出力電圧A,B,C,Dが十分に安定領域に達する時間間隔となるように、予め設定されている。
【0072】
この結果、各積分回路(920,921,922,923)から、アナログスイッチ(530、531、532、533)を介して、対応するサンプルホールド用コンデンサC12にそれぞれ、オペアンプ900、901、902、903の出力電圧A,B,C,D、すなわち対応する信号検出用コンデンサC1〜C4より検出されたこれらの静電容量に応じた信号電荷が蓄積される。すなわち、駆動信号VDRIVEがロウレベルからハイレベルに切り替わった直後の過渡期間(t0≦t≦t1)経過後(積分コンデンサC11への充電が完了するまでの時間経過後)における積分回路920〜923の出力電圧A,B,C,Dが、時刻t2〜t3各のサンプリング時間(サンプリングパルスである出力VSAMPLがハイレベル時)において、サンプルホールド用コンデンサC12に保持される。
【0073】
なお、積分回路920〜923の各積分コンデンサC11の電荷を放電させるタイミング、換言すれば充電を開始するタイミングは駆動信号VDRIVEと同期しているので、積分コンデンサC11の電荷放電用の抵抗を積分コンデンサC11と並列に設ける必要は無く、代わりにアナログスイッチ910〜913を設けるようにしている。このため、積分回路920〜923の出力電圧A,B,C,Dが、該電荷放電用の抵抗により変化することはないので、時刻t1以降(積分コンデンサC11への充電完了後)で、次にアナログスイッチ910〜913がオンする前であれば、常に安定した出力電圧A,B,C,Dを検出することができる。
【0074】
次いで、時刻t3において、ANDゲート506の出力VSAMPLが立ち下がり、アナログスイッチ530、531、532、533がオフ状態となり、各サンプルホールド用コンデンサC12に、蓄積された電荷に応じた出力電圧A,B,C,Dが保持される。各サンプルホールド用コンデンサC12に保持された信号電圧A,B,C,Dは、バッファとして機能するオペアンプ540、541、542、543よりそれぞれ、出力される。また、このとき、Dフリップフロップ504のQBAR出力がハイレベルとなり、積分コンデンサC11の電荷が放電される。
以上の動作が100KHzの周期で繰り返し、行なわれることとなる。また、出力電圧を検出するタイミング(時刻t2)、積分コンデンサC11の電荷を放電するタイミング(時刻t3)も駆動信号VDRIVEに同期していることから、駆動信号の周波数に精度は要求されず、その周波数は温度によって幾分変動するものであってもよい。
【0075】
上述した100KHzの周期毎に、減算器600にはオペアンプ540及び541の出力(A,B)が、減算器601にはオペアンプ542及び543の出力(C,D)が、減算器602にはオペアンプ542及び540の出力(C,A)が、減算器603にはオペアンプ543及び541の出力(D,B)が、それぞれ入力される。この結果、減算器600より演算出力(A−B)が、減算器601より演算出力(C−D)が、減算器602より演算出力(C−A)が、さらに、減算器603より演算出力(D−B)が、それぞれ、出力される。
【0076】
次に、減算された周期と同様の周期において、加算器700では、減算器600の演算出力と、減算器601の演算出力とが加算され、出力端子710より図7に示したY軸回りの揺動に伴うX軸方向の容量変化を示す演算出力{(A−B)+(C−D)}が出力される。また、加算器701では、減算器602の演算出力と、減算器603の演算出力とが加算され、出力端子711より図7に示したX軸回りの揺動に伴うY軸方向の揺動に基づく変位、すなわち容量変化を示す演算出力{(C−A)+(D−B)}が出力される。
【0077】
A/D変換器800、801では、電源電圧Vccを分圧した電圧、または電源電圧Vccに比例した電圧を基準電圧として出力端子710、711を介して入力される演算出力をディジタル値に変換して出力する。
【0078】
以上に説明したように、本実施形態に係る静電容量式センサによれば、相反的に静電容量が変化する信号検出用コンデンサC1〜C4の所定の対において、この対を構成する信号検出用コンデンサ間の静電容量の容量差を、積分回路(920〜923)により、対応する電圧換算値(検出電圧A,B,C,D)を求め、減算器(600〜603)による減算で、上記対ごとの差分を求め、同一軸方向の変位毎に加算することで、容量の変化量を実質的に増加させ、可動部30dにおける変位の検出感度を向上させるとともに、減算を行うことで、平衡状態における初期オフセット及びZ軸方向の変位の影響による静電容量の変化分をキャンセルすることにより、X軸及びY軸方向各々の変位に基づく変化量のみを抽出することができ、変化量に対する演算のみを行えばよく、演算のダイナミックレンジを広くとることが可能となり、演算による検出感度及び検出精度を向上させることができる。
また、本実施形態に係る静電容量式センサによれば、固定電極11aと可動電極30との間隔を縮めて、変位による単位当たりの静電容量の変化を大きくすることで検出感度を向上させる場合、初期オフセットとしての静電容量が増加したとしても、演算の始めに、相反的に静電容量が変化する容量素子の対において、対を構成する容量素子間の容量差を減算して求めるため、初期オフセットの静電容量が減算によりキャンセルされるため、ダイナミックレンジを狭めることなく、変位量のみでダイナミックレンジを使用することができるため、検出精度を低下させることなく、容易に検出感度を向上させることができる。
【0079】
また、本実施形態に係る静電容量式センサによれば、相反的に静電容量が変化する容量素子対における容量差、すなわち、第1,第2象限に形成された信号検出用コンデンサC2,C1各々の静電容量の電圧換算値B及びAの差分値(差分電圧)と、第4,第3象限に形成された信号検出コンデンサC4,C3各々の静電容量の電圧換算値D及びCの差分値とを、それぞれ減算器600,601により減算して求め、これらの差分値を加算器700で加算することにより、静電容量の変化量を実質的に増加させることができ、可動部30dにおける変位の検出感度を実質的に向上させるとともに、減算を行うことで、平衡状態における初期オフセット及びZ軸方向の変位の影響による静電容量の変化分をキャンセルすることにより、X軸方向の変位に基づく変化量のみを抽出することができ、変化量に対する演算のみを行えばよく、演算のダイナミックレンジを広くとることが可能となり、X軸方向の変位量の検出感度及び検出精度を向上させることができる。
また、相反的に静電容量が変化する容量素子対における容量差、すなわち、第2,第3象限に形成された信号検出用コンデンサC1,C3各々の静電容量の電圧換算値A及びCの差分値と、第1,第4の象限に形成された信号検出用コンデンサC2,C4各々の静電容量の電圧換算値B及びDの差分値とを減算器602,603により減算して求め、これらの差分値を加算器701で加算することにより、上述したX軸方向の変位の検出と同様に、Y軸方向の変位量の検出感度及び検出精度も向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態に係る静電容量式センサによれば、前記演算手段は、さらに前記加算器の出力をA/D変換するA/D変換器を有するとともに、前記駆動信号供給手段は、電源電圧に比例する前記ハイレベルの信号を出力し、前記演算手段は、基準電圧として前記電源電圧を分圧した電圧、または該電圧に比例した電圧を使用するようにしたので、電源電圧が変動しても、正確に傾斜状態や加速度等を検出することができる。
なお、上述した本実施形態においては、可動電極30が支持用突起12を揺動支点として2軸回りに揺動するもので説明したが、本発明はこれに限られず、揺動支点を有さずに、可動電極と固定電極との距離が変化するようなものであってもよい。
また、検出対象が傾斜や加速度に限られないことは言うまでもない。
また、本実施形態においては、可動電極として、駆動信号を配線を用いることなく容易に供給できる金属板で構成したもので説明したが、可動電極はこれに限られず、例えば、絶縁性のポリイミド樹脂からなる薄い板材(フィルム)に銅箔をエッチングにて形成し、この銅箔を可動電極としてもよい。
【0081】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
積分回路,減算器及び加算器を各々1つずつ用い、演算回路列を一系統作成して、制御回路により、これら回路の演算順序及び演算処理の制御を制御回路により行い、パルスが入力される毎に、信号検出用コンデンサC1,C2、C3,C4と積分回路との接続を順次切換、各信号検出用コンデンサの静電容量を積分回路により順次電圧値換算し、換算により得られた出力電圧を用いて、減算器及び加算器を時分割に使用して(1)式及び(2)式の演算を行い、変位の検出を行う構成としても良い。ここで、検出のパルスである駆動信号VDRIVEを、一定周期毎に信号検出用コンデンサC1〜C4に一括して与えても良いし、積分回路により電圧換算(静電容量値を電圧値へ変換する)し、検出電圧を測定する信号検出用コンデンサ毎に、順次与える構成としてもよい。
【0082】
Y軸方向の変位を検出する場合を例に取り、演算列を一系統とし、静電容量を時分割で演算する構成の動作例を説明する。
a.信号検出用コンデンサC3と積分回路とを接続し、この信号検出用コンデンサC3の静電容量に対応した出力電圧を積分回路により求め、求めた結果をサンプリングし、出力電圧Cとして一旦保持し、信号検出用コンデンサC3と積分回路とを切り離す。
b.信号検出用コンデンサC1と積分回路とを接続し、この信号検出用コンデンサC1の静電容量に対応した出力電圧を積分回路により求め、求めた結果をサンプリングし、出力電圧Aとして一旦保持し、信号検出用コンデンサC1と積分回路とを切り離す。次に、減算器により上記出力電圧Cと出力電圧Aとの第1の差分値「C−A」を演算して求め、この求めた結果をサンプリングして一旦保持する。
【0083】
c.信号検出用コンデンサC4と積分回路とを接続し、この信号検出用コンデンサC4の静電容量に対応した出力電圧を積分回路により求め、求めた結果をサンプリングし、出力電圧Dとして一旦保持し、信号検出用コンデンサC4と積分回路とを切り離す。
d.信号検出用コンデンサC2と積分回路とを接続し、この信号検出用コンデンサC2の静電容量に対応した出力電圧を積分回路により求め、求めた結果をサンプリングし、出力電圧Bとして一旦保持し、信号検出用コンデンサC2と積分回路とを切り離す。次に、減算器により上記出力電圧Dと該出力電圧Bとの第2の差分値「D−B」を演算して求め、この求めた結果をサンプリングして一旦保持する。
e.加算回路により、上記第1及び第2の差分値を加算し、Y軸方向の揺動に基づく変位の検出値として、演算出力{(C−A)+(D−B)}を出力する。
【0084】
X軸方向の変位の検出においても、上述したY軸方向の変位の検出と同様に、計算に用いる順に信号検出用コンデンサの静電容量の測定を行い、測定された静電容量に基づいて得られる出力電圧により、(2)式の演算を、減算を行った結果に対して加算を行うという順に行い、演算出力{(A−B)+(C−D)}を出力する。この構成を用いることにより、積分回路,減算回路及び加算回路を1つずつ接続して、1系統の演算回路を構成すれば良く、全体の回路規模を小さくすることができ、製造コストを減少させることができる。
また、上記一系統の演算回路における積分回路,減算回路及び加算回路の詳細な構成は限定しないが、各回路をオペアンプ,コンデンサ及びスイッチによるスイッチトキャパシタ(SC)回路を用いて構成することにより、演算回路全体の構成を簡略化し、かつ演算結果の信頼性を向上させることもできる。
【0085】
すなわち、SC回路を用いることにより、所定の制御に従い、SC回路を構成する各スイッチの切換動作をさせることで、上記一系統の演算回路における積分,減算,加算の演算を、時系列に容易に行うことができる。また、集積回路により上記演算回路を実現しようとする場合、オペアンプにより積分,減算及び加算回路を構成する目的であれば、コンデンサの方が抵抗に比較してより小さな面積で、抵抗による抵抗比に対応した、各演算に対応するコンデンサの容量比を得ることができ、かつ、温度特性についても、コンデンサの方が抵抗に比較して安定しており、さらに、回路規模を小さく構成できるとともに、演算結果がばらつく等の温度に電気特性の変動を低下させることができる。
【0086】
【発明の効果】
以上述べたように、本願発明の静電容量式センサによれば、固定基板に形成された固定電極と、該固定基板に所定の間隔にて対向配置され、揺動動作可能に支持された可動部に設けられた可動電極とを有し、該可動電極と前記固定電極とより構成される容量素子における前記可動部の変位に基づく静電容量の変化により、前記可動部の揺動動作を検出する静電容量式センサであり、前記固定電極の電極面に平行なX−Y座標面の第1から第4象限に各々対応して、前記容量素子が1つずつ設けられており、所定の象限を対応させて相反的に静電容量が変化する前記容量素子の対を形成し、一対毎に容量素子間の静電容量の容量差を減算により求め、求められた各対の容量差を加算して、該加算結果に基づき揺動動作の変位を検出しているため、相反的に静電容量が変化する容量素子の対において、対を構成する容量素子間の容量差を減算して求め、この容量差を加算することにより、容量の変化量を実質的に増加させ、可動部における変位の検出感度を向上させるとともに、減算を行うことで、平衡状態における初期オフセット及びZ軸方向の変位の影響による静電容量の変化分をキャンセルすることにより、X軸及びY軸方向各々の変位に基づく変化量のみを抽出することができ、変化量に対する演算のみを行えばよく、演算のダイナミックレンジを広くとることが可能となり、演算による検出感度及び検出精度を向上させることができる。
【0087】
また、固定電極と可動電極との間隔を縮めて、変位による単位当たりの静電容量の変化を大きくすることで検出感度を向上させる場合、初期オフセットとしての静電容量が増加したとしても、演算の始めに、相反的に静電容量が変化する容量素子の対において、対を構成する容量素子間の容量差を減算して求めるため、初期オフセットの静電容量が減算によりキャンセルされるため、ダイナミックレンジを狭めることなく、変位量のみでダイナミックレンジを使用することができるため、検出精度を低下させることなく、容易に検出感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による静電容量式センサの電気的構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態による静電容量式センサの電気的構成例を示すブロック図である。
【図3】図1及び2に示した静電容量式センサの動作例を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の実施形態による静電容量式センサの全体構成例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の実施形態による静電容量式センサの全体構成例を示す分解斜視図である。
【図6】図4に示した本発明の実施形態による静電容量式センサにおける基板10の構造例を示す平面図である。
【図7】図4に示した本発明の実施形態による静電容量式センサにおける基板10に対向して設けられている金属板(可動電極)30の構造例を示す平面図である。
【図8】従来例による静電容量式センサの全体構成を示す概略断面図である。
【図9】図8における固定電極の構造を示す平面図である。
【図10】従来の静電容量式センサの処理回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
10…基板(固定基板) 11a…固定電極
12…支持用突起(支持体) 12S…グランド層
20…スペーサ 30…可動電極(他の基板)
30a…支持部 30b…中間部
30c…第1の連結部 30d…可動部
30e…第2の連結カバー 31…第1のスリット(溝孔)
32…第2のスリット(溝孔)
40…錘 50…パッキン
60…カバー 100…静電容量式センサ
200…検出部 300…回路素子
300C…回路部(拡散部) 500…パルス発生回路
502、504…Dフリップフロップ
C1〜C4…信号検出用コンデンサ(容量素子)
C11…積分コンデンサ C12…サンプルホールド用コンデンサ
530〜533、910〜913…アナログスイッチ
540〜543、550〜553…オペアンプ
560、561、900〜903…オペアンプ
600〜603…減算器 700、701…加算器
800、801…A/D変換器 920〜923…積分回路
Claims (7)
- 固定基板に形成された固定電極と、該固定基板に所定の間隔にて対向配置され、揺動動作可能に支持された可動部に設けられた可動電極とを有し、前記可動部の変位による、前記可動電極と前記固定電極とにて構成される容量素子の静電容量の変化に基づき、前記可動部の揺動動作を検出する静電容量式センサであり、
前記固定電極の電極面におけるX−Y座標面の第1から第4象限に各々対応して、前記容量素子が1つずつ設けられており、
相反的に容量が変化する前記容量素子の対を構成し、一対毎に容量素子間の静電容量の容量差を減算により求め、求められた各対の容量差を加算して、該加算結果に基づき、X軸方向及びY軸方向における揺動動作の変位を検出することを特徴とする静電容量式センサ。 - 前記第1及び第2象限に各々対応する第1,第2の容量素子の静電容量の第1の容量差を求める第1の減算手段と、前記第4及び第3象限に各々対応する第4,第3の容量素子の静電容量の第2の容量差を求める第2の減算手段と、前記第1及び第2の容量差を加算する第1の加算手段と、前記第2及び第3象限に各々対応する第2,第3の容量素子の静電容量の第3の容量差を求める第3の減算手段と、前記第1及び第4象限に各々対応する第1,第4の容量素子の静電容量の第4の容量差を求める第4の減算手段と、前記第3及び第4の容量差を加算する第2の加算手段とを有し、第1の加算手段の加算結果によりX軸方向の変位、また第2の加算手段の加算結果によりY軸方向の変位を検出することを特徴とする請求項1記載の静電容量式センサ。
- 前記第1及び第3象限に各々対応する第1,第3の容量素子の静電容量の第1の容量差を求める第1の減算手段と、前記第4及び第2象限に各々対応する第4,第2の容量素子の静電容量の第2の容量差を求める第2の減算手段と、前記第1及び第2の容量差を加算する第1の加算手段と、前記第1及び第3象限に各々対応する第1,第3の容量素子の静電容量の第3の容量差を求める第3の減算手段と、前記第2及び第4象限に各々対応する第2,第4の容量素子の静電容量の第4の容量差を求める第4の減算手段と、前記第3及び第4の容量差を加算する第2の加算手段とを有し、第1の加算手段の加算結果によりX軸方向の変位、また第2の加算手段の加算結果によりY軸方向の変位を検出することを特徴とする請求項1記載の静電容量式センサ。
- 前記固定基板と前記可動部に設けられた錘との間に配置され、前記可動部を揺動自在に支持する支持体を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の静電容量式センサ。
- 前記支持体の高さにより、前記固定基板と可動部との間隔を制御し、該可動部の変位の検出感度を調整することを特徴とする請求項4に記載の静電容量式センサ。
- 前記可動部が前記固定基板に対向して配設された他の基板に中間部とともに形成されており、該中間部が該他の基板を固定する支持部に第1の軸回りに揺動可能に支持され、前記可動部が前記第1の軸と直交する第2の軸回りに揺動可能に、前記中間部に支持されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の静電容量式センサ。
- 前記支持部と前記中間部とが前記第1の軸に平行な第1の連結部により連結され、前記中間部と前記可動部とが前記第2の軸に平行な第2の連結部により連結され、前記支持部,前記中間部,前記可動部,前記第1及び第2の連結部とが前記他の基板に溝孔を設けて一体に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の静電容量式センサ。
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