JP4212865B2 - 静電容量式センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電容量の変化により傾斜状態、加速度、衝撃等を検知する静電容量式センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
特許文献1には、従来の静電容量式センサの処理回路の構成が記載されている。この従来の静電容量式センサの処理回路の構成を図9に示す。
同図において、入力端子T1には、図示されていない交流信号発生源から、所定周波数の矩形波信号が与えられる。71、72はインバータ素子であり、インバータ素子72の後段には抵抗素子73が接続されている。
【0003】
インバータ素子71の出力端と抵抗素子73の出力端はそれぞれバッファ素子75、76を介してEX−OR素子74に接続されており、このEX−OR素子74の出力端はそのまま出力端子T2に接続されている。
また、抵抗素子73の出力端には、容量素子Cの一方の電極が接続され、この容量素子Cの他方の電極は接地されている。この容量素子Cが、測定対象となる容量素子、すなわちセンサに形成されている容量素子である。
図10は、図9に示す処理回路の各点における信号波形を示す図である。
【0004】
【特許文献1】
特許第3020736号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した静電容量式センサの処理回路では、抵抗素子73と容量素子CからなるCR遅延回路を用いているので、抵抗73の温度ドリフトや配線抵抗の影響を受けやすい。すなわち、CR遅延回路の時定数が変化し、容量素子Cの静電容量を精度良く検出することができないという問題が有った。
【0006】
さらに、容量素子における静電容量Cが小さい場合には、容量素子の静電容量を検出するのに抵抗素子73の抵抗値を大きくする必要があるが、そうすると、X3点におけるインピーダンスが大きくなり、外部の誘導を受けやすいという問題が有る。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、静電容量に基づいた電気信号(電圧等)により傾斜状態や加速度等を精度良く検出することができる静電容量式センサを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、固定基板に形成された固定電極と、揺動動作可能に支持されるとともに前記固定電極に対向配置され、該固定電極との距離が前記揺動動作により変位する可動電極とを有し、前記固定電極と可動電極とで構成される容量素子の静電容量に基づいて前記揺動動作を検出する静電容量式センサにおいて、前記固定電極と可動電極のうちいずれか一方の電極に接続され、該電極にロウレベルとハイレベルとに交互に変化する駆動信号を印加する駆動信号供給手段と、前記固定電極と可動電極のうちいずれか他方の電極に入力端が接続され、前記容量素子に印加される前記駆動信号の電圧に基づく電流を積分する積分回路とを有し、前記駆動信号がロウレベル時とハイレベル時における前記積分回路の出力に基づいて前記揺動動作を求める演算手段とを有することを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、従来の静電容量式センサのように、CR遅延回路を使用して静電容量を検出していないので、抵抗素子の温度変化や配線抵抗の影響を受けず、精度良く静電容量に基づいて可動電極の揺動動作を検出することができる。よって、傾斜状態や加速度等を精度よく検知することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の静電容量式センサにおいて、前記積分回路は、前記容量素子からの電荷を蓄積する積分コンデンサと、前記駆動信号が、ロウレベル時またはハイレベル時に前記積分コンデンサに蓄積された電荷を放電させるスイッチ手段とを有することを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、積分動作時における積分回路の出力電圧が定まるので、スイッチ手段を有さない積分回路に比して容量素子の検出容量が小さくても正確に検出することができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の静電容量式センサにおいて、前記積分回路は、非反転入力端子が固定電位に設定されるオペアンプを用いたチャージアンプで構成され、前記入力端が前記オペアンプの反転入力端子からなるとともに、前記積分コンデンサは、前記オペアンプの前記反転入力端子と出力端子との間に接続された帰還容量であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、オペアンプの反転入力端子と非反転入力端子とがイマジナリショートにより一定電位に固定されるので、オペアンプの反転入力端子に接続される信号ラインと、電源ラインまたはグランドラインとの間に形成される浮遊容量間で充放電が発生せず、それ故信号ラインは、これらの浮遊容量の影響を受けることはない。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の静電容量式センサにおいて、さらに、前記駆動信号がロウレベルとハイレベルのうちいずれか一方のレベルから他方のレベルに切り替わった直後の過渡期間経過後における前記積分回路の出力電圧をサンプルホールドする電圧保持手段を有することを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、前記積分回路出力における安定領域の電圧を検出することができるので、精度良く検出することができる。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の静電容量式センサにおいて、前記固定電極が複数に分割されており、該分割された複数の電極と前記可動電極とで複数の容量素子が形成されるとともに、前記可動電極は、前記駆動信号供給手段の出力端に接続されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、可動電極の電位がロウレベルまたはハイレベルに固定されているため、可動電極側から外部に輻射ノイズが出にくくなるという効果が得られる。
また、複数の容量素子が形成されている場合においても、固定電極側が複数に分割され、可動電極は共通電極とされるので、複数の容量素子の容量変化に基づく電気信号を、変位しない固定電極側から取り出すことができ、複雑な引き回し配線等を必要としない。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の静電容量式センサにおいて、前記駆動信号供給手段より出力される駆動信号のうちロウレベルはグランド電位で、かつハイレベルは電源電圧であり、前記固定基板にはグランド電位となるグランド層が形成されており、前記固定電極は、グランド電位または電源電圧が印加される前記可動電極と前記固定基板のグランド層とで挟まれるように形成されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、固定電極は、グランド電位または電源電圧に固定される可動電極と前記固定基板のグランド層とで挟まれるように形成されているので、外来ノイズの影響を受けにくく、センサを構成する容量素子の静電容量が小さくとも、精度良く検出することができる。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、請求項5または6のいずれかに記載の静電容量式センサにおいて、前記複数の容量素子は、前記揺動動作に伴って、容量が増加する第1の容量素子と、容量が減少する第2の容量素子の少なくとも一対の容量素子からなり、前記演算手段は、前記一対の容量素子の静電容量に対応した電圧の差を求める減算器を有することを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、揺動動作に伴って、容量が増加する第1の容量素子と、容量が減少する第2の容量素子の少なくとも一対の容量素子の静電容量に対応した電圧の差をとって揺動動作を演算するようにしているので、センサが傾斜し、あるいはセンサに外力が加わることにより可動電極が揺動した際における容量素子における静電容量に対応した電圧の変化量を精度良く求めることができる。すなわち、温度ドリフトや、初期オフセットの影響をキャンセルすることができる。
【0014】
また、請求項8に記載の発明は、請求項5乃至7のいずれかに記載の静電容量式センサにおいて、前記可動電極は、直交するX−Y座標面に対して2軸に揺動可能であり、かつ前記複数の容量素子は、前記X−Y座標面の第1〜第4象限に対応して4つ有り、前記演算手段は、前記4つの容量素子のうち対をなす2つの容量素子における静電容量に対応した電圧の差をそれぞれ、算出する減算器と、前記減算器により算出された2組の減算結果を加算する加算器とを有することを特徴とする。
請求項8に記載の発明によれば、加算演算の前に減算、すなわち差動をとっているので、演算のダイナミックレンジを大きくとることができ、検出精度を高めることができる。
【0015】
また、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の静電容量式センサにおいて、前記演算手段は、さらに前記加算器の出力をA/D変換するA/D変換器を有するとともに、前記駆動信号供給手段は、電源電圧に比例する前記ハイレベルの信号を出力し、前記演算手段は、基準電圧として前記電源電圧を分圧した電圧、または該電圧に比例した電圧を使用することを特徴とする。
請求項9に記載の発明によれば、前記駆動信号供給手段は、電源電圧に比例する前記ハイレベルの信号を出力し、前記演算手段は、基準電圧として前記電源電圧を分圧した電圧、または該電圧に比例した電圧を使用するようにしたので、電源電圧が変動しても、正確に傾斜状態や加速度等を検出することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態に係る静電容量センサの構造を、図4乃至図7を参照して説明する。図4は、本発明の実施形態に係る静電容量センサの全体構成を示す概略断面図、図5は本発明の実施形態に係る静電容量センサの全体構成を示す分解斜視図、図6は基板の平面図、図7は基板に対向して設けられている金属板(可動電極)の平面図である。
【0017】
本発明の実施形態に係る静電容量式センサ100は、図4に示すように、基板10の上面11S側に電気信号を検出するための検出部200を備え、基板10の下面13R側に検出部200から検出された電気信号を処理する回路素子300を備えて構成されている。本実施形態では、検出部200は静電容量式の傾斜センサとして構成され、回路素子300としてはIC(集積回路)のベアチップが用いられている。
【0018】
検出部200は、静電容量式センサ100の傾斜を容量変化として検出する静電容量式の傾斜センサであり、図5に示すように、基板(固定基板)10の上面11S上に形成された四つの固定電極11aと、これらの固定電極11aに対向する金属板(可動電極)30と、この金属板30にひねり変形を加えるための錘40とを備えて構成されている。
図6に示すように、基板10の上面11Sの中央部には四つの固定電極11aが碁盤目状に形成され、上面11Sの外周部には四つの固定電極11aを囲むように四角枠状の電極11bが形成されている。この電極11bは、基板10に設けられた図示してないスルーホール電極や配線パターン等を介して基板10の裏面側に実装された回路素子300の駆動信号用の端子(図示せず)に接続されている。
【0019】
また、基板10の上面11Sに形成された四つの固定電極11aの中心部には金属板30を支持する支持用突起12が形成されている。
そして、電極11b上には矩形枠状をなした金属製の導電性スペーサ20が配され、このスペーサ20上に可動電極を構成する薄い金属板30が積重されている。この金属板30と固定電極11aとの間隔は支持用突起12及びスペーサ20の厚みによって一定に保持され、金属板30と四つの固定電極11aとにより四つの容量可変式の信号検出用コンデンサが形成されている。したがって、金属板(可動電極)30は、スペーサ20、電極11b、基板10のスルーホール電極、配線パターン等を介して回路素子300の駆動信号用の端子に導通接続されている。
【0020】
金属板30は、図7に示すように、この金属板30の外周部として構成される枠状の支持部30aと、この支持部30aにより第1の軸部30c回りに揺動可能に支持された中間部30bと、この中間部30bにより上記の第1の軸部30cと直交する第2の軸部30e回りに揺動可能に支持された導電性の搭載部30dとからなり、搭載部30dは軸部30c,30eのひねり変形により二軸回りに揺動可能に構成されている。
【0021】
具体的には、支持部30aはスペーサ20と重なるように配置され、その対向する一対の辺の内周中央に、内側に向かう一対の第1の軸部30c(X軸)が設けられている。この一対の第1の軸部30cの他端は、支持部30aの内周に沿うように設けられた枠状の中間部30bにつながっており、中間部30bは傾斜により一対の第1の軸部30cがひねり変形することによりその軸線回りに揺動できるようになっている。
【0022】
また、中間部30bの内周には一対の第1の軸部30cに直交する位置に互いに対向する一対の第2の軸部30eが設けられている。この一対の第2の軸部30eの他端は、その外周が中間部30bの内周に沿うように設けられた矩形の搭載部30dにつながっており、この搭載部30dは第2の軸部30eがひねり変形することによりその軸線回りに揺動できるようになっている。なお、軸部30c,30eの軸方向はそれぞれ碁盤目状に配置された固定電極11aの行方向又は列方向に一致するように構成されており、搭載部30dの揺動を感度良く検出できるようになっている。
【0023】
錘40は搭載部30d上に接着されて搭載されている。これにより、錘40は傾斜センサ100の傾斜に応じて金属板30(搭載部30d)と支持用突起12との当接位置を中心として揺動し、軸部30c(X軸),軸部30e(Y軸)のどちらか又は両方の軸回りに所定の大きさのモーメントを発生させるようになっている。
【0024】
このようなモーメントは軸部30e,軸部30cのどちらか一方又は両方の軸をひねり変形し、搭載部30dはこのモーメントと軸部30c,30eのひねりに対する弾性力とが釣り合う角度で停止する。
なお、この錘40はその底部(下部)40aが本体部である頭部(上部)40bよりも細く形成され、錘40の重心位置が高くなるように構成されている。このため、センサ100の僅かな傾斜に対しても上記軸線方向に大きなモーメントを作用させることができ、センサ100を軽量化しながら傾斜感度を高めることができるようになっている。
【0025】
ここで、図7に示すように、可動電極、すなわち金属板30に対して、第1の軸部30c、30cをX軸とし、第2の軸部30e,30eをY軸とするように、X−Y直交座標系をとるものとする。ここで、金属板30(搭載部30d)と四つの固定電極11aとにより形成される四つの容量可変式の信号検出用コンデンサ(容量素子)は、上記X−Y直交座標系における第1象限〜第4象限の各象限に1つずつ形成され、これらのうち、第2、第1象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量に対応して検出される電圧(以下、単に検出電圧という)を、それぞれ、A,Bとし、第3、第4象限に形成される信号検出用コンデンサの検出電圧を、それぞれ、C,Dとする。
【0026】
金属板30がX軸回りに揺動する際に、金属板30と四つの固定電極11aにより形成される四つの信号検出用コンデンサのうち第1、第2象限に形成される信号検出用コンデンサは、第3、第4象限に形成される信号検出用コンデンサとは、互いに静電容量が反対方向に増減するように変化する。すなわち、金属板30がX軸回りに揺動する際に固定電極11aと金属板30との間隔が、第1、第2象限に形成される信号検出用コンデンサと第3、第4象限に形成される信号検出用コンデンサとで反対方向に増減するように変化するので、静電容量が反対方向に増減するように変化する。
【0027】
このとき、第1、第2象限に形成される信号検出用コンデンサにおける金属板30と固定電極11aとの間隔は、同方向に増加、または減少するように変化するので、第1、第2象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量はそれぞれ、同方向に減少又は増加する。同時に、第3、第4象限に形成される信号検出用コンデンサにおける金属板30と固定電極11aとの間隔は、同方向に減少、または増加するように変化するので、第3、第4象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量はそれぞれ、同方向に増加、又は減少する。
【0028】
したがって、金属板30がX軸回りに揺動した際の四つの信号検出用コンデンサの静電容量に対応した電圧の変化量Yは、第1、第2象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量の変化量(電圧換算値)と、第3、第4象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量の変化量(電圧換算値)との差となるから、
Y=(C+D)−(A+B)=(C−A)+(D−B) …(1)
となる。
なお、金属板30がX軸回りに揺動するということは、X軸は変位せず、Y軸がX軸回りに揺動する(換言すれば、錘40がY軸方向に揺動する)ということであるので、X軸回りの揺動をY軸方向の変化と捉えることができる。
【0029】
また、金属板30がY軸回りに揺動する際に、金属板30と四つの固定電極11aにより形成される四つの信号検出用コンデンサのうち第2、第3象限に形成される信号検出用コンデンサは、第4、第1象限に形成される信号検出用コンデンサとは、互いに静電容量が反対方向に増減するように変化する。すなわち、金属板30がY軸回りに揺動する際に固定電極11aと金属板30との間隔が、第2、第3象限に形成される信号検出用コンデンサと第4、第1象限に形成される信号検出用コンデンサとで反対方向に増減するように変化するので、静電容量が反対方向に増減するように変化する。
【0030】
このとき、第2、第3象限に形成される信号検出用コンデンサにおける金属板30と固定電極11aとの間隔は、同方向に増加、または減少するように変化するので、第2、第3象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量はそれぞれ、同方向に減少又は増加する。同時に、第4、第1象限に形成される信号検出用コンデンサにおける金属板30と固定電極11aとの間隔は、同方向に減少、または増加するように変化するので、第4、第1象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量はそれぞれ、同方向に増加、又は減少する。
【0031】
したがって、金属板30がY軸回りに揺動した際の四つの信号検出用コンデンサの静電容量に対応した電圧の変化量Xは、第2、第3象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量の変化量(電圧換算値)と、第4、第1象限に形成される信号検出用コンデンサの静電容量の変化量(電圧換算値)との差となるから、
X=(A+C)−(B+D)=(A−B)+(C−D) …(2)
となる。
なお、金属板30がY軸回りに揺動するということは、X軸がY軸回りに揺動する(換言すれば、錘40がX軸方向に揺動する)ということであり、Y軸回りの揺動をX軸方向の変化と捉えることができる。
【0032】
静電容量式センサ100を傾斜センサとして使用する際に上式(1)、(2)の演算を行なうことによりセンサ100の傾斜に応じた静電容量に対応した電圧の変化量Y,Xを求め、これらの値からセンサ100の傾斜を求めることができる。なお、図8に示すように、一対の第1の軸部30c(X軸)、これに直交する位置に互い対向する一対の第2の軸部30e(Y軸)を可動電極、すなわち金属板30の隅部に設けることにより、図7に示したものと同様に、可動電極の回転軸(揺動軸)と検出系の座標軸とを一致させることができる。
【0033】
この場合には、X軸回り(Y軸方向)に金属板30を揺動した際の静電容量に対応する電圧の変化量Yは、
Y=A−D (3)
となり、
また、Y軸回り(X軸方向)に金属板30を揺動した際の静電容量に対応した電圧の変化量Xは、
X=B−C (4)
となる。
【0034】
また、図4、図5に示すように、金属板30の支持部30a上には、矩形枠状の導電性スペーサ42、搭載部30dの必要以上の動きを規制する金属製のストッパ44及び絶縁性のスペーサ52が積層されており、スペーサ52の複数の突起52aが、各部材の位置決め孔45、43、31、21、13に挿通されている。
さらに、基板10の上面11S上には、スペーサ20ないしストッパ44の各部材の周囲に位置し、上面11Sの外周部に沿うように配された矩形枠状の絶縁性のパッキン50を介して金属製のカバー60が設けられている。このカバー60は円筒型の頭部60bとその周辺部に広がるフランジ部60aとフランジ部60aの側面に形成された平板状の複数の突部60cとからなり、そのフランジ部60aでスペーサ52、ストッパ44、スペーサ42を介して支持部30aを電極11b側へ押し付けて固定するとともに、突部60cを基板10の下面13Rに形成されたグランドパターン70上にかしめ付けることにより、カバー60は接地されており、防塵,防滴,センサ100周辺の帯電物による容量ドリフト,ノイズ及び取り扱い上の不注意等からセンサ100を保護するようになっている。なお、絶縁性のスペーサ52とパッキン50を設けることにより金属製のカバー60と金属板30とが導通しないようになっている。
【0035】
ところで、基板10はセラミックス又はエポキシ樹脂等からなる絶縁性の板材の積層体として構成された多層配線基板であり、その中間層として金属面からなるグランド層12Sが形成されている。
基板10の上面としての固定電極層11Sには、図4に示すように、その中央部に四つの固定電極11aが例えば、Ag(銀)のパターン印刷により碁盤目状に形成されている。また、固定電極層11Sの外周部には、金属板30と導通される電極11bが矩形枠状に形成されている。
【0036】
グランド層12Sは、金属板30からの駆動信号が固定電極11aを介さずに回路素子300に侵入するのを防ぐとともに、基板10の外部(検出部200においては基板10の下面側、回路素子300においては基板10の上面側)から入るノイズをカットするノイズシールドとして機能し、電極11bと接続された図示しないスルーホール電極や固定電極11aと導通するスルーホール電極H1,H2等のスルーホール電極部分と外周縁部とを除く略全面がAg等の金属面(導電面)として構成されている。
【0037】
また、この金属面、すなわちグランド層12Sは、基板10の下面としてのチップ実装面13Rまで貫通する図示してない複数のスルーホール電極(スルーホール電極H1,H2と異なる)によってチップ実装面13R上の金属面(導電面)からなるグランドパターン70と導通して、接地用端子(図示せず)と接続されるとともに、基板10の側面に形成された取り出し電極(図示せず)を介して接地されるようになっている。
【0038】
回路素子300は、基板10裏面側のチップ実装面13Rに搭載されており、チップ実装面13R内の図示しない駆動信号用の端子、信号検出用の端子、電源用の端子、グランド用の端子及び信号出力用の端子と回路素子300の複数のアルミニウム製の端子とがそれぞれ金バンプ310で接続されている。そして、駆動信号用の端子、配線パターン、スルーホール電極(いずれも図示なし)、電極11b、スペーサ20等を介して可動電極を構成する金属板30に回路素子300から駆動信号(矩形波状の電圧)が加えられ、この金属板30と対向配置された固定電極11aに誘導された電流等の電気信号がスルーホール電極H1,H2や信号検出用の端子等を介して回路素子300に入力され、該電気信号により信号検出用コンデンサの容量変化を求めている。
【0039】
この金属板30と固定電極11aとで構成される信号検出用コンデンサは4つあり、これら4つのコンデンサの容量変化に基づいて傾斜センサ100の傾斜方向及び傾斜量を算出するようになっている。また、この算出結果はチップ実装面13R上に形成された信号出力用の端子及び外部接続電極(図示せず)を介して外部装置に出力されるようになっている。
【0040】
半導体からなるベアチップのサブストレート300bは金バンプ、スルーホール電極(スルーホール電極H1,H2と異なる)等を介して基板10のグランド層12Sと導通状態となっている。したがって、ベアチップの回路部300cは、下面と周囲が接地されるサブストレート300bによって囲まれ、上面側にはグランド層12Sが存在するため、ほぼ完全にシールドされた構造をとることとなり、外部からのノイズの影響をほとんど受けることはない。
【0041】
また、固定電極11aは、グランド電位と電源電圧とが交互に印加される可動電極である、固定電極11aより大きい金属板30と、基板10内に形成されたグランド層12Sとで挟まれた構造、すなわち、金属板30とグランド層12Sとの中間に位置するように構成されているので、固定電極11aはシールドされた状態となり、外来ノイズの影響を受けにくく、信号検出用コンデンサの静電容量が小さくても、精度良く検出することが可能である。
【0042】
また、補強のために、回路素子(ベアチップ)300とチップ実装面13Rとをエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂320により接着し一体化させている。
上記構成において、センサ100を傾けると、錘40が支持用突起12と搭載部30dとの当接位置を中心として揺動し、その傾斜方向及び傾斜量に応じて、搭載部30dに対し軸部30c又は軸部30e回りのモーメントを作用させる。そして、軸部30c,30eのひねり変形に対する弾性力とこのモーメントとが釣り合う角度で搭載部30dが停止する。
【0043】
これにより、可動電極としての搭載部30dと各固定電極11aとにより構成される信号検出用コンデンサの静電容量が変化し、その容量変化が、スルーホール電極H1,H2や信号検出用端子等を介して固定電極11aの略真下に実装された回路素子300に電気信号として入力される。そして、回路素子300による処理結果は、基板10の底面たる接続電極面14Rの外部接続電極等を介して外部装置へ出力される。
【0044】
次に、本発明の実施形態に係る静電容量式センサの電気的構成(回路素子300の構成)を図1及び図2に示す。これらの図において、本発明の実施形態に係る静電容量式センサ100は、パルス発生回路500と、分周器として機能するD(遅延)フリップフロップ502、504と、Dフリップフロップ502、504のQ出力を入力とするANDゲート506と、固定電極11aと可動電極30とで形成される4つの信号検出用コンデンサC1、C2、C3、C4とを有している。
【0045】
パルス発生回路500は、所定周波数(本実施形態では、例えば、400KHz)のパルス信号を生成し、出力する。
Dフリップフロップ502は、パルス発生回路500の出力信号を1/2分周し、Dフリップフロップ504は、Dフリップフロップ502のQBAR出力を1/2分周するようになっている。Dフリップフロップ504のQ出力は4つの信号検出用コンデンサC1、C2、C3、C4に供給する駆動信号VDRIVEとなる。この駆動信号VDRIVEはロウレベルとハイレベルとに交互に変化するが、本実施形態では、ロウレベルの電位はグランド電位であり、ハイレベルは電源電圧Vccである。
【0046】
4つの信号検出用コンデンサC1、C2、C3、C4における可動電極30側は共通接続され、保護抵抗R10を介してDフリップフロップ504のQ端子に接続されている。パルス発生回路500及びDフリップフロップ502、504は、本発明の駆動信号供給手段に相当する。
また、信号検出用コンデンサC1、C2、C3、C4における固定電極11a側は、それぞれ保護抵抗R11を介して、それぞれ、オペアンプ900、901、902、903の反転入力端子(本発明の入力端)に接続されている。オペアンプ900、901、902、903の非反転入力端子は、それぞれ、固定電位(Vcc/2、Vccは電源電圧)に設定されている。
【0047】
また、オペアンプ900、901、902、903の反転入力端子と出力端子との間には、積分コンデンサC11が、それぞれ接続されている。そして、この積分コンデンサC11の両端間には、積分コンデンサに蓄積された電荷を放電させ、充電前の初期状態にリセットするためのアナログスイッチ910、911、912、913が接続されている。
【0048】
本実施形態では、アナログスイッチ910〜913は、Dフリップフロップ504のQBAR出力によりその動作タイミングが制御され、該QBAR出力がハイレベルの時にオン状態となり、ロウレベルの時にオフ状態となる。オペアンプ900、積分コンデンサC11、及びアナログスイッチ910は、積分回路920を構成している。
オペアンプ901、902、903についても同様に、積分コンデンサC11、アナログスイッチ911、912、913とで積分回路921、922、923を構成している。
【0049】
アナログスイッチ910〜913は、本実施形態では、駆動信号VDRIVEが一方のレベルであるロウレベル時に積分コンデンサC11の両端を短絡し、リセットするように動作して、駆動信号VDRIVEがハイレベル(他方のレベル)時の積分回路出力を容量素子の検出信号として取り出しているが、駆動信号VDRIVEがハイレベル時に積分コンデンサC11をリセットするようにしてもよい。このときには、信号検出用コンデンサC1、C2、C3、C4に印加される駆動信号VDRIVEがロウレベル時の積分回路出力を容量素子の検出信号として取り出す必要がある。
なお、アナログスイッチ910〜913は、本発明のスイッチ手段に相当する。
【0050】
また、オペアンプ900、901、902、903の出力端子は、それぞれ、アナログスイッチ530、531、532、533を介してオペアンプ540、541、542、543の非反転入力端子に接続されている。
アナログスイッチ530、531、532、533は、ANDゲート506の出力信号により、その動作タイミングが制御されるようになっており、サンプルホールド用コンデンサC12にサンプリングされた信号電圧を保持させる機能を有している。なお、本実施形態では、アナログスイッチ530〜533は、ANDゲート506の出力がハイレベルの信号でオン状態となり、ロウレベルの信号でオフ状態になるように制御される。
【0051】
また、オペアンプ540、541、542、543の非反転入力端子は、それぞれサンプルホールド用コンデンサC12を介して接地されている。オペアンプ540、541、542、543は、それぞれ反転入力端子が出力端子と短絡され、バッファを構成している。
さらに、抵抗R12〜R15とオペアンプ550により減算器600が、抵抗R12〜R15とオペアンプ551により減算器601が、抵抗R12〜R15とオペアンプ552により減算器602が、抵抗R12〜R15とオペアンプ553により減算器603が、それぞれ構成されている。
【0052】
ここで、抵抗R12〜R15の抵抗値は、例えば、R12=R13、R14=R15になるように選択されている。また、抵抗R13の一端は、Vcc/2(Vccは電源電圧)の電圧が印加されている。
また、オペアンプ550、551の出力端子間に直列接続される抵抗R16、R17、及びオペアンプ560、オペアンプ560の反転入力端子と出力端子との間に並列接続される抵抗R18、コンデンサC13により加算器700が、オペアンプ552、553の出力端間に直列接続される抵抗R16、R17、及びオペアンプ561、オペアンプ561の反転入力端子と出力端子との間に並列接続される抵抗R18、コンデンサC13により加算器701が、それぞれ構成されている。オペアンプ560、561の非反転入力端子の電位は、Vcc/2に設定されている。
【0053】
減算器600には、オペアンプ540の出力とオペアンプ541の出力とが入力され、減算器601には、オペアンプ542の出力とオペアンプ543の出力とが入力され、減算器602には、オペアンプ542の出力とオペアンプ540の出力とが入力され、減算器603には、オペアンプ543の出力とオペアンプ541の出力とが入力されるようになっている。
また、加算器700には、減算器600の出力と減算器601の出力とが入力され、加算器701には、減算器602の出力と減算器603の出力とが入力されるようになっている。
【0054】
加算器700、701の出力はそれぞれ端子710、711を介してA/D変換器800、801によりディジタル値に変換されるようになっている。A/D変換器800、801においてA/D変換に使用する基準電圧は、それぞれ電源電圧Vccを分圧した電圧、または電源電圧Vccに比例した電圧に設定される。また、減算器600〜603、加算器700、701における設定電圧(基準電圧)も既述したように、電源電圧Vccを分圧した電圧、または電源電圧Vccに比例した電圧に設定される(本実施形態ではVcc/2に設定される)。減算器600〜603、加算器700,701及びA/D変換器800、801は本発明の演算手段に相当する。
【0055】
次に、上記構成からなる、本発明の実施形態に係る静電容量式センサ100の動作を図3のタイミングチャートを参照して説明する。パルス発生回路500の出力信号はDフリップフロップ502により1/2分周され、200KHzのパルス信号がDフリップフロップ502のQ端子よりANDゲート506の一方の入力端子に入力される。
また、Dフリップフロップ502のQBAR出力はDフリップフロップ504によりさらに、1/2分周され、100KHzのパルス信号が生成される。
【0056】
Dフリップフロップ504のQ出力は、信号検出用コンデンサC1〜C4の駆動信号VDRIVE(図3(B))として使用され、保護抵抗R10を介して信号検出用コンデンサC1〜C4の可動電極30側に入力されると共に、ANDゲート506の他方の入力端子に入力される。
他方、Dフリップフロップ504のQBAR出力は、アナログスイッチ910〜913に入力される。すなわち、アナログスイッチ910〜913には、信号検出用コンデンサC1〜C4に印加される駆動信号VDRIVEを反転した信号が印加される。
【0057】
さらに、Dフリップフロップ502のQ出力(200KHzのパルス信号)とDフリップフロップ504のQ出力、すなわち駆動信号VDRIVEとの論理積がANDゲート506によりとられ、ANDゲート506の出力信号VSAMPL(図3(C))がアナログスイッチ530〜533に出力される。
したがって、Dフリップフロップ504のQBAR出力がハイレベルになるタイミングでアナログスイッチ910〜913がオン状態となり、各積分回路を構成するオペアンプ900〜903の反転入力端子と出力端子との間に接続されている積分コンデンサC11の両端間が短絡され、各積分コンデンサC11の充電電荷が零に、すなわち積分コンデンサC11がリセット状態となる。
【0058】
一方、オペアンプ900〜903では、非反転入力端子と反転入力端子とがイマジナリショートにより同電位となり、Vcc/2となっているので、積分コンデンサC11がリセットされた時点では、オペアンプ900〜903の出力端子の電位は、Vcc/2となる。
その後、時刻t0でアナログスイッチ910〜913がオフ状態となると同時に、この時点で信号検出用コンデンサC1〜C4の各々に保護抵抗R10を介してハイレベル(Vcc)の駆動信号VDRIVEが供給される。
【0059】
一方、信号検出用コンデンサC1〜C4の各々は、静電容量式センサ100の傾斜状態に応じて、固定電極11aと可動電極30との間隔が変化し、それぞれ、静電容量が変化している。
ここで、信号検出用コンデンサC1についての動作を考えると、前述したように、信号検出用コンデンサC1には保護抵抗R10を介して駆動信号VDRIVE(ハイレベル)が印加されることにより、積分コンデンサC11に充電電流が流れ、この電流が積分回路920によって積分される。すなわち、信号検出用コンデンサC1と積分回路920の積分コンデンサC11との容量比に応じた電荷が積分コンデンサC11に充電される。これにより、信号検出用コンデンサC1の静電容量の変化量を担った電圧が積分回路920から出力されることとなる。
【0060】
具体的には、積分回路920の出力であるオペアンプ900の出力Vout1は、駆動信号VDRIVEが立ち上がり、ハイレベル(Vcc)となる時刻t0で、電位Vcc/2を基準にして保護抵抗R10及びR11の大きさに応じた傾斜で立下り、上記容量比に応じた充電電荷により時刻t1以降の時点で所定の電位に整定する。
以上の動作は、他の信号検出用コンデンサC2〜C4及び積分回路921〜923についても同様であるので、重複する説明は省略する。
【0061】
このようにして、信号検出用コンデンサC1〜C4の固定電極11aから取り出された信号は、それぞれ、積分回路920、921、922、923により積分され、オペアンプ900、901、902、903の出力端子よりそれぞれ、積分出力(出力電圧)Vout1〜Vout4として出力される(図3(A))。
次いで、積分出力Vout1〜Vout4が安定領域に達する時刻t2(時刻t0と時刻t3の中間の時刻)でANDゲート506の出力VSAMPLが立ち上がり、アナログスイッチ530、531、532、533がオン状態となる。
【0062】
この結果、各サンプルホールド用コンデンサC12にそれぞれ、オペアンプ900、901、902、903の出力電圧Vout1〜Vout4、すなわち対応する信号検出用コンデンサC1〜C4より検出されたこれらの静電容量に応じた信号電荷が蓄積される。すなわち、駆動信号VDRIVEがロウレベルからハイレベルに切り替わった直後の過渡期間(t0≦t≦t1)経過後(積分コンデンサC11への充電が完了するまでの時間経過後)における積分回路920〜923の出力電圧Vout1〜Vout4が各サンプルホールド用コンデンサC12に保持される。
なお、積分回路920〜923の各積分コンデンサC11の電荷を放電させるタイミング、換言すれば充電を開始するタイミングは駆動信号VDRIVEと同期しているので、積分コンデンサC11の電荷放電用の抵抗を積分コンデンサC11と並列に設ける必要は無く、代わりにアナログスイッチ910〜913を設けるようにしている。このため、積分回路920〜923の出力電圧Vout1〜Vout4が、該電荷放電用の抵抗により変化することはないので、時刻t1以降(積分コンデンサC11への充電完了後)で、次にアナログスイッチ910〜913がオンする前であれば、常に安定した出力電圧Vout1〜Vout4を検出することができる。また、積分コンデンサC11の電荷を放電するタイミング(時刻t3)、出力電圧を検出するタイミング(時刻t2)も駆動信号VDRIVEに同期していることから、駆動信号の周波数に精度は要求されず、その周波数は温度によって幾分変動するものであってもよい。
【0063】
次いで、ANDゲート506の出力VSAMPLが立ち下がる時刻t3でアナログスイッチ530、531、532、533がオフ状態となり、各サンプルホールド用コンデンサC12に、蓄積された電荷に応じた信号電圧A,B,C,Dが保持される。各サンプルホールド用コンデンサC12に保持された信号電圧A,B,C,Dは、バッファとして機能するオペアンプ540、541、542、543よりそれぞれ、出力される。
以上の動作が100KHzの周期で繰り返し、行なわれることとなる。
【0064】
ここで、減算器600にはオペアンプ540及び541の出力(A,B)が、減算器601にはオペアンプ542及び543の出力(C,D)が、減算器602にはオペアンプ542及び540の出力(C,A)が、減算器603にはオペアンプ543及び541の出力(D,B)が、それぞれ入力される。この結果、減算器600より演算出力(A−B)が、減算器601より演算出力(C−D)が、減算器602より演算出力(C−A)が、さらに、減算器603より演算出力(D−B)が、それぞれ、出力される。
【0065】
次いで、加算器700では、減算器600の演算出力と、減算器601の演算出力とが加算され、出力端子710より図7に示したY軸回りの揺動に伴うX軸方向の容量変化を示す演算出力{(A−B)+(C−D)}が出力される。
また、加算器701では、減算器602の演算出力と、減算器603の演算出力とが加算され、出力端子711より図7に示したX軸回りの揺動に伴うY軸方向の容量変化を示す演算出力{(C−A)+(D−B)}が出力される。
【0066】
A/D変換器800、801では、電源電圧Vccを分圧した電圧、または電源電圧Vccに比例した電圧を基準電圧として出力端子710、711を介して入力される演算出力をディジタル値に変換して出力する。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態に係る静電容量式センサによれば、固定基板に形成された固定電極と、揺動動作可能に支持されるとともに前記固定電極に対向配置され、該固定電極との距離が前記揺動動作により変位する可動電極とを有し、前記固定電極と可動電極とで構成される容量素子の静電容量に基づいて前記揺動動作を検出する静電容量式センサにおいて、前記固定電極と可動電極のうちいずれか一方の電極に接続され、該電極にロウレベルとハイレベルとに交互に変化する駆動信号を印加する駆動信号供給手段と、前記固定電極と可動電極のうちいずれか他方の電極に入力端が接続され、前記容量素子に印加される前記駆動信号の電圧に基づく電流を積分する積分回路とを有し、前記駆動信号がロウレベル時とハイレベル時における前記積分回路の出力に基づいて前記揺動動作を求める演算手段とを有するので、従来の静電容量式センサのように、CR遅延回路を使用して静電容量を検出していないので、抵抗素子の温度変化や配線抵抗の影響を受けず、精度良く静電容量に基づいて可動電極の揺動動作(揺動量)を検出することができる。よって、傾斜状態や加速度等を精度よく検知することができる。
【0068】
また、本実施形態に係る静電容量式センサによれば、前記積分回路は、前記容量素子からの電荷を蓄積する積分コンデンサと、前記駆動信号が、ロウレベル時またはハイレベル時に前記積分コンデンサに蓄積された電荷を放電させるスイッチ手段とを有するので、積分動作時における積分回路の出力電圧が定まるので、スイッチ手段を有さない積分回路に比して容量素子の検出容量が小さくても正確に検出することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る静電容量式センサによれば、前記積分回路は、非反転入力端子が固定電位に設定されるオペアンプを用いたチャージアンプで構成され、前記入力端が前記オペアンプの反転入力端子からなるとともに、前記積分コンデンサは、前記オペアンプの反転入力端子と出力端子との間に接続された帰還容量としたので、オペアンプの反転入力端子と非反転入力端子とがイマジナリショートにより一定電位に固定され、オペアンプの反転入力端子に接続される信号ラインと、電源ラインまたはグランドラインとの間に形成される浮遊容量間で充放電が発生せず、それ故信号ラインは、これらの浮遊容量の影響を受けることはない。
【0070】
また、本実施形態に係る静電容量式センサによれば、さらに、前記駆動信号がロウレベルとハイレベルのうちいずれか一方のレベルから他方のレベルに切り替わった直後の過渡期間経過後における前記積分回路の出力電圧をサンプルホールドする電圧保持手段を有するので、前記積分回路出力における安定領域の電圧を検出することができるので、精度良く検出することができる。
【0071】
また、本実施形態に係る静電容量式センサによれば、前記固定電極が複数に分割されており、該分割された複数の電極と前記可動電極とで複数の容量素子が形成されるとともに、前記可動電極は、前記駆動信号供給手段の出力端に接続されているので、可動電極の電位がロウレベルまたはハイレベルに固定されているため、可動電極側から外部に輻射ノイズが出にくくなるという効果が得られる。
また、複数の容量素子が形成されている場合においても、固定電極側が複数に分割され、可動電極は共通電極とされるので、複数の容量素子の容量変化に基づく電気信号を、変位しない固定電極側から取り出すことができ、複雑な引き回し配線等を必要としない。
【0072】
また、本実施形態に係る静電容量式センサによれば、前記駆動信号供給手段より出力される駆動信号のうちロウレベルはグランド電位で、かつハイレベルは電源電圧であり、前記固定基板にはグランド電位となるグランド層が形成されており、前記固定電極は、グランド電位または電源電圧が印加される前記可動電極と前記固定基板のグランド層とで挟まれるように形成されているので、外来ノイズの影響を受けにくく、センサを構成する容量素子の静電容量が小さくとも、精度良く検出することができる。
【0073】
また、本実施形態に係る静電容量式センサによれば、可動電極の揺動動作に伴って、容量が増加する第1の容量素子と、容量が減少する第2の容量素子の少なくとも一対の容量素子の静電容量に対応した電圧の差をとって静電容量を演算するようにしているので、センサが傾斜し、あるいはセンサに外力が加わることにより可動電極が揺動した際における容量素子における静電容量に対応した電圧の変化量を精度良く求めることができる。すなわち、温度ドリフトや、初期オフセットの影響をキャンセルすることができる。
【0074】
また、本実施形態に係る静電容量式センサによれば、前記可動電極は、直交するX−Y座標面に対して2軸に揺動可能であり、かつ前記複数の容量素子は、前記X−Y座標面の第1〜第4象限に対応して4つ有り、前記演算手段は、前記4つの容量素子のうち対をなす2つの容量素子における静電容量に対応した電圧の差をそれぞれ、算出する減算器と、前記減算器により算出された2組の減算結果を加算する加算器とを有するので、演算のダイナミックレンジを大きくとることができ、検出精度を高めることができる。
【0075】
また、本実施形態に係る静電容量式センサによれば、前記演算手段は、さらに前記加算器の出力をA/D変換するA/D変換器を有するとともに、前記駆動信号供給手段は、電源電圧に比例する前記ハイレベルの信号を出力し、前記演算手段は、基準電圧として前記電源電圧を分圧した電圧、または該電圧に比例した電圧を使用するようにしたので、電源電圧が変動しても、正確に傾斜状態や加速度等を検出することができる。
なお、上述した本実施形態においては、可動電極30が支持用突起12を揺動支点として2軸回りに揺動するもので説明したが、本発明はこれに限られず、揺動支点を有さずに、可動電極と固定電極との距離が変化するようなものであってもよい。
また、1軸回りにのみ、可動電極が揺動するものでもよい。さらに、検出対象が傾斜や加速度に限られないことは言うまでもない。
また、本実施形態においては、可動電極として、駆動信号を配線を用いることなく容易に供給できる金属板で構成したもので説明したが、可動電極はこれに限られず、例えば、絶縁性のポリイミド樹脂からなる薄い板材(フィルム)に銅箔をエッチングにて形成し、この銅箔を可動電極としてもよい。
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、固定基板に形成された固定電極と、揺動動作可能に支持されるとともに前記固定電極に対向配置され、該固定電極との距離が前記揺動動作により変位する可動電極とを有し、前記固定電極と可動電極とで構成される容量素子の静電容量に基づいて前記揺動動作を検出する静電容量式センサにおいて、前記固定電極と可動電極のうちいずれか一方の電極に接続され、該電極にロウレベルとハイレベルとに交互に変化する駆動信号を印加する駆動信号供給手段と、前記固定電極と可動電極のうちいずれか他方の電極に入力端が接続され、前記容量素子に印加される前記駆動信号の電圧に基づく電流を積分する積分回路とを有し、前記駆動信号がロウレベル時とハイレベル時における前記積分回路の出力に基づいて前記揺動動作を求める演算手段とを有するので、従来の静電容量式センサのように、CR遅延回路を使用して静電容量を検出していないので、抵抗素子の温度変化や配線抵抗の影響を受けず、精度良く静電容量に基づいて可動電極の揺動動作を検出することができる。よって、傾斜状態や加速度等を精度よく検出可能な静電容量式センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る静電容量式センサの電気的構成を示すブロック図。
【図2】 本発明の実施形態に係る静電容量式センサの電気的構成を示すブロック図。
【図3】 図1及び図2に示した本発明の実施形態に係る静電容量式センサの動作を説明するためのタイミングチャート。
【図4】 本発明の実施形態に係る静電容量式センサの全体構成を示す概略断面図。
【図5】 本発明の実施形態に係る静電容量センサの全体構成を示す分解斜視図。
【図6】 図4に示した本発明の実施形態に係る静電容量式センサにおける基板の平面図。
【図7】 図4に示した本発明の実施形態に係る静電容量式センサにおける基板に対向して設けられている金属板(可動電極)の一例を示す平面図。
【図8】 図4に示した本発明の実施形態に係る静電容量式センサにおける基板に対向して設けられている金属板(可動電極)の他の例を示す平面図。
【図9】 従来の静電容量式センサの処理回路の構成を示す回路図。
【図10】 図9に示す処理回路の各点における信号波形を示す図。
【符号の説明】
10…基板(固定基板)、11a…固定電極、12…支持用突起、12S…グランド層、20…スペーサ、30…可動電極、40…錘、50…パッキン、60…カバー、100…静電容量式センサ、200…検出部、300…回路素子、300C…回路部(拡散部)、500…パルス発生回路、502、504…Dフリップフロップ、C1〜C4…信号検出用コンデンサ(容量素子)、C11…積分コンデンサ、C12…サンプルホールド用コンデンサ、530〜533、910〜913…アナログスイッチ、540〜543、550〜553、560、561、900〜903…オペアンプ、600〜603…減算器、700、701…加算器、800、801…A/D変換器、920〜923…積分回路

Claims (7)

  1. 固定基板に形成された固定電極と、揺動動作可能に支持されるとともに前記固定電極に対向配置され、該固定電極との距離が前記揺動動作により変位する可動電極とを有し、前記固定電極と可動電極とで構成される容量素子の静電容量に基づいて前記揺動動作を検出する静電容量式センサにおいて、
    前記固定電極は、複数に分割され、該分割された複数の電極と前記可動電極とで複数の容量素子が形成され、
    前記複数の容量素子は、前記揺動動作に伴って、容量が増加する第1の容量素子と、容量が減少する第2の容量素子の少なくとも一対の容量素子からなり、
    前記可動電極に出力端が接続され、該可動電極にロウレベルとハイレベルとに交互に変化する駆動信号を前記分割された複数の電極への共通の信号として印加する駆動信号供給手段と、
    前記固定電極に対応して設けられ、入力端が該固定電極にそれぞれ接続され、前記少なくとも一対の容量素子に印加される前記駆動信号の電圧に基づく電流を積分する対となる積分回路と、前記対となる積分回路が出力する前記一対の容量素子の静電容量に対応した電圧の差を算出する減算器を有し、前記駆動信号がロウレベル時とハイレベル時における前記積分回路の出力に基づいて前記揺動動作を求める演算手段と、
    を有することを特徴とする静電容量式センサ。
  2. 前記積分回路は、
    前記容量素子からの電荷を蓄積する積分コンデンサと、
    前記駆動信号が、ロウレベル時またはハイレベル時に前記積分コンデンサに蓄積された電荷を放電させるスイッチ手段と、
    を有することを特徴とする請求項1に記載の静電容量式センサ。
  3. 前記積分回路は、
    非反転入力端子が固定電位に設定されるオペアンプを用いたチャージアンプで構成され、前記入力端が前記オペアンプの反転入力端子からなるとともに、
    前記積分コンデンサは、
    前記オペアンプの前記反転入力端子と出力端子との間に接続された帰還容量であること
    を特徴とする請求項2に記載の静電容量式センサ。
  4. さらに、前記駆動信号がロウレベルとハイレベルのうちいずれか一方のレベルから他方のレベルに切り替わった直後の過渡期間経過後における前記積分回路の出力電圧をサンプルホールドする電圧保持手段を有すること
    を特徴とする請求項3に記載の静電容量式センサ。
  5. 前記駆動信号供給手段より出力される駆動信号のうちロウレベルはグランド電位で、かつハイレベルは電源電圧であり、前記固定基板にはグランド電位となるグランド層が形成されており、
    前記固定電極は、グランド電位または電源電圧が印加される前記可動電極と前記固定基板のグランド層とで挟まれるように形成されていること
    を特徴とする請求項4に記載の静電容量式センサ。
  6. 前記可動電極は、直交するX−Y座標面に対して2軸に揺動可能であり、かつ前記複数の容量素子は、前記X−Y座標面の第1〜第4象限に対応して4つ有り、
    前記演算手段は、前記4つの容量素子のうち対をなす2つの容量素子における静電容量に対応した電圧の差をそれぞれ、算出する減算器と、前記減算器により算出された2組の減算結果を加算する加算器と、
    を有することを特徴とする請求項5に記載の静電容量式センサ。
  7. 前記演算手段は、さらに前記加算器の出力をA/D変換するA/D変換器を有するとともに、
    前記駆動信号供給手段は、電源電圧に比例する前記ハイレベルの信号を出力し、
    前記演算手段は、基準電圧として前記電源電圧を分圧した電圧、または該電圧に比例した電圧を使用する
    ことを特徴とする請求項6に記載の静電容量式センサ。
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