JP2004346132A - フラバン化合物含有組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プロアントシアニジンおよびカテキン類の少なくとも一方であるフラバン化合物、平均分子量が7,000未満のタンパク質分解ペプチド、および平均分子量が7,000以上のペプチドまたはタンパク質を含有する組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロアントシアニジンおよびカテキン類の少なくとも一方であるフラバン化合物を含有する組成物および液状の該組成物、ならびに該液状の組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロアントシアニジン、カテキン類などのフラバン化合物は、フラバン骨格を有するポリオキシ誘導体(フラバノノール)またはその重合体であり、縮合タンニン類に分類される。このフラバン化合物は、古くから工業的には皮のなめしなどに使われたり、化粧品として、肌の収斂性を高め、整肌効果を目的として使用されていた。近年、このようなフラバン化合物は、抗酸化作用や美白効果などの種々の活性を有することから、食品、化粧品などへの利用が試みられている(特許文献1および2)。例えば、プロアントシアニジンのようなフラバン化合物にコラーゲンのようなタンパク質(例えば、コラーゲン)を配合した化粧料が知られている(特許文献3〜6)。
【0003】
しかし、このようなフラバン化合物は、タンパク質との結合能力が極めて高い性質を有することから、例えば、該フラバン化合物を植物から抽出する際に、該植物の種類、あるいは抽出方法などによっては、混在するタンパク質と結合して凝集沈殿、懸濁、ゲル化などが生じる。
【0004】
近年では、フラバン化合物、例えば、プロアントシアニジンがタンパク質と高い結合能力を有することを利用して、ゼラチン高融点ゲルの製造やコラーゲンの架橋剤としても用いられている(特許文献7および8)。しかし、一般的に、フラバン化合物を食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などに用いるときは、この性質は問題となる。
【0005】
フラバン化合物とタンパク質とが、例えば、製造工程中に溶液中で一旦凝集沈殿、あるいはゲル化すると、酸処理またはアルカリ処理などによって、プロアントシアニジンまたはタンパク質を分解しなければ、再溶解することができず、これらを含有する食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などの製造は困難となる。さらに、これらが製造できたしても、例えば、飲料、化粧水などの液剤として使用する場合、保存期間中に凝集沈殿が発生するという問題がある。
【0006】
このような問題を解決するために、特許文献9では、溶液中において、フラバン化合物であるタンニンとタンパク質であるコラーゲンとの安定性を高める改良法が開示されている。しかし、使用されるコラーゲンは、低分子のコラーゲンペプチドに限られるという欠点がある。
【0007】
【特許文献1】
特開昭61−16982号公報
【特許文献2】
特開平2−134309号公報
【特許文献3】
特開平11−75708号公報
【特許文献4】
特開2000−60482号公報
【特許文献5】
特開平6−336423号公報
【特許文献6】
特開2002−238497号公報
【特許文献7】
特開平2−163046号公報
【特許文献8】
特開2001−8634号公報
【特許文献9】
特開2002−51734号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、フラバン化合物がタンパク質を収斂させるという性質に起因する問題、すなわちフラバン化合物が比較的高分子量のペプチドまたはタンパク質との凝集沈殿あるいはゲル化を引き起こすという問題を解決するフラバン化合物含有組成物および液状の該組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、驚くべきことに、プロアントシアニジンおよびカテキン類の少なくとも一方であるフラバン化合物、所定の低分子量のタンパク質分解ペプチド、および比較的高分子量のペプチドまたはタンパク質を含む組成物が、水などの溶媒に溶解させたときに、凝集沈殿が起こらず、その結果、長期安定性を有する液剤を容易に製造できることを見出して本発明を完成させた。
【0010】
本発明のフラバン化合物含有組成物は、プロアントシアニジンおよびカテキン類の少なくとも一方であるフラバン化合物、平均分子量が7,000未満のタンパク質分解ペプチド、および平均分子量が7,000以上のペプチドまたはタンパク質を含有する。
【0011】
好ましい実施態様においては、上記プロアントシアニジンは、5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対して、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合で含有する。
【0012】
本発明のフラバン化合物を含有する液状の組成物は、プロアントシアニジンおよびカテキン類の少なくとも一方であるフラバン化合物、平均分子量が7,000未満のタンパク質分解ペプチド、平均分子量が7,000以上のペプチドまたはタンパク質、および溶媒を含有する。
【0013】
好ましい実施態様においては、上記プロアントシアニジンは、5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対して、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合で含有する。
【0014】
本発明は、上記液状の組成物の製造方法であって、該方法は、プロアントシアニジンおよびカテキン類の少なくとも一方であるフラバン化合物と平均分子量が7,000未満のタンパク質分解ペプチドとを溶媒中で混合する工程、および得られた混合物に、平均分子量が7,000以上のペプチドまたはタンパク質を加えて混合する工程、を包含する。
【0015】
本発明は、また上記液状の組成物の他の製造方法であって、該方法は、プロアントシアニジンおよびカテキン類の少なくとも一方であるフラバン化合物、ならびに平均分子量が7,000以上のペプチドまたはタンパク質を含み、凝集沈殿物が生じた溶液に、平均分子量が7,000未満のタンパク質分解ペプチドを加えて混合し、該凝集沈殿物を溶解する工程を包含する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の組成物および液状の該組成物の製造方法について説明する。なお、以下に説明する構成は、本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができることは当業者に明らかである。
【0017】
本発明のフラバン化合物含有組成物は、フラバン化合物、平均分子量が7,000未満のタンパク質分解ペプチド、平均分子量が7,000以上のペプチドを含有する。組成物が液状の場合には溶媒を含有する。上記以外に必要に応じて、その他の成分を含有する。これらについて以下に説明する。
【0018】
(1)フラバン化合物
本発明に用いられるフラバン化合物は、プロアントシアニジンおよびカテキン類の少なくとも一方である。
【0019】
上記プロアントシアニジンとは、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる化合物群をいう。プロアントシアニジンは、ポリフェノール類の一種で、植物が作り出す強力な抗酸化物質であり、植物の葉、樹皮、果物の皮もしくは種の部分に集中的に含まれている。プロアントシアニジンは、ヒトの体内では、生成することのできない物質である。
【0020】
このプロアントシアニジンとしては、重合度の低い縮重合体が多く含まれるものが好ましく用いられる。重合度の低い縮重合体としては、重合度が2〜30の縮重合体(2〜30量体)が好ましく、重合度が2〜10の縮重合体(2〜10量体)がより好ましく、重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体)がさらに好ましい。この重合度が2〜4の縮重合体を、本明細書ではOPC(オリゴメリック・プロアントシアニジン;oligomeric proanthocyanidin)という。このプロアントシアニジンは、5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対して、OPCを1重量部以上の割合で含有することが好ましい。5量体以上のプロアントシアニジンは、高分子量のペプチドまたはタンパク質と混合したときに凝集沈殿を引き起こし易いが、上記所定の比率以上でOPCを含有する場合は、そのような凝集沈殿や懸濁が生じにくい。
【0021】
上記プロアントシアニジン、特にOPCは、具体的には、松、樫、山桃などの樹皮、ブドウ、ブルーベリー、ラズベリー、クランベリー、イチゴ、アボガド、ニセアカシア、コケモモの果実もしくは種子、大麦、小麦、大豆、黒大豆、カカオ、小豆、トチの実の殻、ピーナッツの薄皮、イチョウ葉などに含まれている。また、西アフリカのコーラナッツ、ペルーのラタニアの根、日本の緑茶にも、OPCが含まれることが知られている。したがって、プロアントシアニジンとしては、上記の樹皮、果実もしくは種子の抽出物のような食品原料として用いられているプロアントシアニジン含有材料を使用することができる。特に、松樹皮の抽出物を用いることが好ましい。松樹皮は、プロアントシアニジンの中でもOPCに富むため、プロアントシアニジンの原料として好ましく用いられる。
【0022】
プロアントシアニジンとして、上記のようなプロアントシアニジンを含む植物の抽出物を用いる場合、OPC含有量が高い植物の抽出物を用いることが好ましい。OPCは、プロアントシアニジンを含む抽出物中に、乾燥重量換算で20重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上含有され得る。このような抽出物は、上記と同様、凝集沈殿や懸濁が生じにくい。
【0023】
プロアントシアニジン、特にOPCは、上述のように抗酸化物質であるため、ガン・心臓病・脳血栓などの成人病にかかる危険率を低下する効果、関節炎・アトピー性皮膚炎・花粉症などのアレルギー体質の改善効果などを有することが知られている。さらにOPCは、抗酸化作用のほか、口腔内のバクテリア増殖を抑制してプラーク(歯こう)を減少させる効果、血管の弾力性を回復させる効果、肌質を改善させる効果、コラーゲンの増強効果、高脂血症改善効果、血液中でのリポたんぱくが活性酸素によりダメージを受けるのを防止して、損傷した脂肪が血管の内壁に凝集し、コレステロールが付着することを防止する効果、活性酸素によって分解されたビタミンEを再生させる効果、ビタミンEの増強剤としての効果などを有することが知られている。したがって、本発明の組成物は、これらの効果を目的とした医薬品、食品などとして利用され得る。
【0024】
カテキン類とは、ポリヒドロキシフラバン−3−オールの総称である。カテキン類としては、(+)−カテキン(狭義のカテキンといわれる)、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、アフゼレキンなどが挙げられる。さらに、上記カテキン類を含有する植物抽出物を用いてもよい。カテキン類は、上記プロアントシアニジンとともに上記植物に含有される場合が多いため、カテキン類を含有する材料として、上記のプロアントシアニジンを含有する植物抽出物を用いることが可能である。例えば、松樹皮のような原料植物由来の抽出物からは、上記の(+)−カテキンの他、ガロカテキン、アフゼレキン、ならびに(+)−カテキンの3−ガロイル誘導体およびガロカテキンの3−ガロイル誘導体が単離されている。
【0025】
カテキン類には、発癌抑制作用、動脈硬化予防作用、脂肪代謝異常の抑制作用、血圧上昇抑制作用、血小板凝集抑制作用、抗アレルギー作用、抗ウイルス作用、抗菌作用、虫歯予防作用、口臭防止作用、腸内細菌叢正常化作用、活性酸素やフリーラジカルの消去作用、抗酸化作用などがあることが知られており、血糖の上昇を抑制することによる抗糖尿病効果があることも知られている。カテキン類は、OPCの存在下で水溶性が増すと同時に、OPCを活性化する性質があり、OPCとともに摂取することによって、OPCの作用を増強する。
【0026】
本発明に用いられるフラバン化合物は、プロアントシアニジンおよびカテキン類のいずれか一方であり得るが、上記のOPCの溶解性および生理活性を向上させる観点から、プロアントシアニジン(OPC)およびカテキン類の両者を用いることが好ましい。より好ましくはプロアントシアニジン1重量部に対してカテキン類が0.1重量部以上の割合で組成物中に含有される。例えば、OPCおよびカテキン類を含有する上記植物抽出物が好適である。プロアントシアニジンおよびカテキンの含有量は、植物の種によって異なるが、一般的に、松樹皮抽出物、ブドウ抽出物などにはプロアントシアニジンが多く、茶葉の抽出物(緑茶、紅茶など)にはカテキン類が多く含まれる。好ましくは、松樹皮抽出物が用いられる。これらの植物抽出物は、乾燥重量換算でOPCを20重量%以上含有し、カテキン類を5重量%以上含有することが好ましい。
【0027】
以下、OPCを豊富に含み、かつカテキン類を含有する松樹皮の抽出物を例に挙げて、フラバン化合物の調製方法を説明する。
【0028】
松樹皮抽出物としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダなどのマツ目に属する植物の樹皮抽出物が好ましく用いられる。中でも、フランス海岸松(Pinus Martima)の樹皮抽出物が好ましい。フランス海岸松は、南仏の大西洋沿岸の一部に生育している海洋性松をいう。このフランス海岸松の樹皮は、上記プロアントシアニジンに加えて、有機酸、ならびにその他の生理活性成分などを含有する。
【0029】
松樹皮抽出物は、上記の松樹皮を水または有機溶媒で抽出して得られる。水を用いる場合には、温水または熱水が用いられる。抽出に用いる有機溶媒としては、食品あるいは薬剤の製造に許容される有機溶媒が用いられ、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、および1,1,2−トリクロロエテンが挙げられる。これらの水および有機溶媒は単独で用いてもよいし、組合わせて用いてもよい。特に、熱水、含水エタノール、および含水プロピレングリコールが好ましく用いられる。
【0030】
抽出方法は、特に限定されないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法などが用いられる。
【0031】
超臨界流体抽出法は、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)などが用いられ、二酸化炭素が好ましく用いられる。
【0032】
超臨界流体抽出法では、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程と、目的成分と超臨界流体とを分離する分離工程からなる。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、または吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
【0033】
また、エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、超臨界流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、またはケトン類を2〜20W/V%程度添加し、この流体で超臨界流体抽出を行うことによって、プロアントシアニジン(OPC)、カテキン類などの目的とする抽出物の抽出溶媒に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、あるいは分離の選択性を増強させる方法であり、効率的に松樹皮抽出物を得る方法である。
【0034】
超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点;抽出流体が残留しないという利点;および溶媒の循環利用が可能であり、脱溶媒工程などが省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。
【0035】
また、松樹皮からの抽出は、上記の方法以外に、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法などにより行ってもよい。
【0036】
松樹皮の抽出は、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0037】
本発明の組成物に用いられる松樹皮抽出物は、具体的には、以下のような方法により調製されるが、これは例示であり、この方法に限定されない。
【0038】
フランス海岸松の樹皮1kgを、塩化ナトリウムの飽和水溶液3Lに入れ、100℃にて30分間抽出し、抽出液を得る(抽出工程)。その後、抽出液を濾過し、得られる不溶物を塩化ナトリウムの飽和溶液500mLで洗浄し、洗浄液を得る(洗浄工程)。この抽出液と洗浄液を合わせて、松樹皮の粗抽出液を得る。
【0039】
次いで、この粗抽出液に酢酸エチル250mLを添加して分液し、酢酸エチル層を回収する工程を5回行う。回収した酢酸エチル溶液を合わせて、無水硫酸ナトリウム200gに直接添加して脱水する。その後、この酢酸エチル溶液を濾過し、濾液を元の5分の1量になるまで減圧濃縮する。濃縮された酢酸エチル溶液を2Lのクロロホルムに注ぎ、攪拌して得られる沈殿物を濾過により回収する。その後、この沈殿物を酢酸エチル100mLに溶解した後、再度1Lのクロロホルムに添加して沈殿させる操作を2回繰り返す洗浄工程を行う。この方法により、例えば、2〜4量体のOPCを20重量%以上含み、かつカテキン類を5重量%以上含有する、約5gの松樹皮抽出物が得られる。
【0040】
上記松樹皮のような原料植物に由来する抽出物は、OPCを乾燥重量換算で好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上含有する。カテキン類の含有量は、上述のように、通常、乾燥重量換算で5重量%以上であるが、例えば、カテキン類の含有量が5重量%未満の場合、5重量%以上となるようにカテキン類を添加してもよい。カテキン類を5重量%以上含有し、かつOPCを20重量%以上含有する松樹皮抽出物を用いることが最も好ましい。
【0041】
なお、上記のように水やエタノールのような極性溶媒を用いて植物体から抽出した場合には、該極性溶媒は、比較的低分子量のプロアントシアニジンを好適に溶解させ得るため、得られるプロアントシアニジンには、20量体以下、通常、10量体以下のプロアントシアニジンが主として含有される。
【0042】
上記フラバン化合物は、組成物中に乾燥重量換算で、好ましくは0.00001重量%〜50重量%、より好ましくは0.001重量%〜40重量%、さらに好ましくは0.01重量%〜20重量%の割合で含有される。
【0043】
(2)平均分子量7000未満のタンパク質分解ペプチド
本発明の組成物に含有される平均分子量が7,000未満のタンパク質分解ペプチドとは、タンパク質を分解して得られる平均分子量が7,000未満のペプチド(本明細書において、タンパク質分解ペプチドという場合がある)である。本明細書中で「平均分子量」とは重量平均分子量を指していう。上記タンパク質分解ペプチドとしては、各種の動植物性タンパク質を酸、アルカリ、または酵素を用いて分解したものをいうが、有機合成によって得られたペプチドであってもよい。該動植物タンパク質を分解して得られるペプチドの場合、原料となるタンパク質としては、例えば、牛、豚、鶏などの畜肉類、魚類、獣乳、卵などに由来するコラーゲン(ゼラチン)などの動物性タンパク質および大豆、小麦、トウモロコシ、えんどう豆などに由来する植物性タンパク質が挙げられる。特に、原料タンパク質としては、コラーゲンが好ましく、そしてタンパク質分解ペプチドとしては、その分解物であるコラーゲンペプチドが最も好ましい。
【0044】
コラーゲンは、動物の結合組織を構成する主要タンパク質であり、骨、腱、皮膚、血管壁などに多く含まれる。コラーゲンは、1または2以上の3重らせん構造を有するポリペプチド鎖により構成され、該ポリペプチド鎖のアミノ酸配列により種々のタイプのコラーゲンが存在する。コラーゲンの変性物であるゼラチンは、コラーゲンを含む原料を温(熱)水抽出することにより得られる分子量30万から数万程度の水溶性タンパク質であり、アルカリ処理ゼラチン(等電点4.8〜5.3)と酸処理ゼラチン(等電点7〜9)とがある。
【0045】
コラーゲンまたはゼラチンからのコラーゲンペプチドの具体的な調製方法を、以下に説明する。まず、牛、豚などの皮または骨を、アルカリ溶液に2〜3ヶ月浸漬するアルカリ処理または希塩酸などに短期間浸漬する酸処理を施して、原料に含まれる不純物を除去し、かつ抽出を容易にするための前処理を行う。例えば、原料が牛骨である場合は、骨の中にリン酸カルシウムなどの無機質が含まれているため、予め希塩酸に漬けて無機質を除去し、これを温(熱)水抽出することによりゼラチンを得る。温(熱)水抽出は、一般には、最初の抽出温度は50〜60℃で、2回目以降は抽出温度を徐々に上げ、最終的には煮沸させる。次いで、得られたゼラチンを、通常用いられる酸あるいは酵素で加水分解することにより、コラーゲンペプチドを得ることができる。
【0046】
こうして得られたコラーゲンペプチドは、平均分子量が約7,000未満、好ましくは約6,000以下である。このような分子量を有するコラーゲンペプチドのうち、フラバン化合物とともに溶液中で安定に溶解し、そしてタンパク質の沈殿を防止するという効果を得るためには、分子量が約200以上、好ましくは約1,000以上、より好ましくは3,000以上、さらに好ましくは約5,000以上のペプチドを用いる。平均分子量が7,000以上になると、高分子のプロアントシアニジン(10〜30量体)が結合し、沈殿や懸濁を生じやすくなる。
【0047】
このような分子量のコラーゲンペプチドは、市販の製品を容易に入手することができる。例えば、動物性コラーゲン由来のコラーゲンペプチドとしては、ニッピペプタイドPBF、ニッピペプタイドPRA(いずれも(株)ニッピ製)、SCP−5000、SCP−3100(いずれも新田ゼラチン(株)製)、コラーゲンペプチドDS(協和ハイフーズ株式会社製)、ファルコニックスCTP(一丸ファルコス株式会社製)などが挙げられる。このような動物由来のコラーゲンペプチド以外では、動物性コラーゲンとアミノ酸組成が類似しているものが好ましく、例えば、コラーゲン類似ペプチドとして、ニンジン(Daucus carota L.)由来ペプチドが挙げられる。
【0048】
上記タンパク質分解ペプチド(好ましくはコラーゲンペプチド)は、組成物中に乾燥重量換算で、好ましくは0.00001重量%〜90重量%、より好ましくは0.0001重量%〜50重量%の割合で含有される。
【0049】
(3)平均分子量が7000以上のペプチドまたはタンパク質
本発明の組成物に含有される平均分子量が7000以上のペプチドまたはタンパク質(以下、高分子量のペプチドまたはタンパク質という場合がある)は、平均分子量が7000以上であれば、その由来は特に制限されない。例えば、上記のタンパク質分解ペプチドの原料である各種の動物性タンパク質(例えば、コラーゲン)および植物性タンパク質、その変性物(例えば、コラーゲンの変性物であるゼラチン)、ならびにこれらの分解ペプチドが挙げられる。
【0050】
(4)溶媒
溶媒は、本発明のフラバン化合物を含有する液状の組成物(後述)を調製する場合に用いられる。溶媒は、通常、水であり、必要に応じて、アルコール(例えば、エタノールおよびイソプロパノール)などの水と混合し得る溶媒を含有させることが可能である。
【0051】
(5)その他の成分
本発明の組成物には、上記フラバン化合物、所定の分子量のタンパク質分解ペプチド、および高分子量のペプチドまたはタンパク質以外に、必要に応じて、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などに通常使用される他の成分を、該組成物の効果を損なわない範囲で含有し得る。このような成分としては、例えば、酸化防止剤、薬効成分、油剤、保湿剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、吸収促進剤、香料、色素、保存剤、増粘剤、キレート剤、防腐防黴剤などを挙げることができる。
【0052】
上記成分のうち、酸化防止剤は、フラバン化合物の安定性を高める目的で用いられる。これにより、体内のタンパク質や脂質の酸化を防止し、肌質を改善および保護する効果を得ることができる。
【0053】
酸化防止剤としては、ビタミンAなどのカロテノイド類、ビタミンB類、アスコルビン酸、ビタミンE、これらの誘導体またはこれらの塩、L−システインおよびこれらの誘導体やその塩、リボフラビン、SOD、マンニトール、トリプトファン、ヒスチジン、ケルセチン、没食子酸およびその誘導体、抽出物(茶抽出物、グルタチオン酵母抽出物など)が挙げられる。
【0054】
この中でも、アスコルビン酸は、フラバン化合物の安定性を高めるだけでなく、肌へ相乗的に効果を発揮し、肌質の改善効果(例えば、ハリやツヤが良くなる効果)および血管保護効果も高める。アスコルビン酸の含有量に特に制限はないが、フラバン化合物とアスコルビン酸との重量比が、好ましくは1:0.1〜1:50、より好ましくは1:0.2〜1:20となるように、本発明の組成物に含有され得る。
【0055】
上記薬効成分としては、活性酸素除去剤、消炎鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、止痒剤、殺菌剤、ビタミン剤、ホルモン剤、保湿剤などが挙げられる。
【0056】
(6)フラバン化合物含有組成物
本発明のフラバン化合物含有組成物は、上記のように(1)プロアントシアニジンおよびカテキン類の少なくとも一方であるフラバン化合物、(2)平均分子量が7,000未満のタンパク質分解ペプチド、および(3)平均分子量が7,000以上のペプチドまたはタンパク質を含有する。組成物が液状の組成物(液剤)である場合には、(4)溶媒をさらに含有する。上記以外に、必要に応じて、(5)その他の成分を含有し得る。
【0057】
本発明の組成物は、(1)のフラバン化合物の乾燥重量が1重量部に対して、(2)のタンパク質分解ペプチドの乾燥重量が好ましくは3重量部以上、より好ましくは5重量部以上、さらに好ましくは8重量部以上となるように含有される。そして、(2)のタンパク質分解ペプチドの乾燥重量が1重量部に対して、(3)の高分子量のペプチドまたはタンパク質の乾燥重量が好ましくは3重量部以下、より好ましくは2重量部以下、さらに好ましくは1重量部以下となるように含有される。タンパク質分解ペプチドの含有量が多いほど、該組成物が液剤である場合に、フラバン化合物と高分子量のペプチドまたはタンパク質との結合による凝集が阻害され、あるいは一度生じた結合を切断する効果を有する。その結果、溶媒中における凝集沈殿(ゲル化も含む)が防止される。さらに、液状の組成物(後述)を製品とする場合、凝集沈殿が発生しないため、製品の保存安定性も良好となる。また、高分子量のペプチドまたはタンパク質の含有量が少ないほど、凝集沈殿が起こりにくくなる。
【0058】
このようにして得られた組成物においては、該組成物中に含有されるタンパク質分解ペプチドおよび高分子量のペプチドまたはタンパク質を全タンパク質(ペプチド)とした場合に、その全タンパク質の平均分子量が、4,000以上、6000以上、あるいは7,000以上という高い値であっても、溶液中において凝集沈殿、懸濁、ゲル化が生じないあるいは生じても再溶解するため、均一な溶液として保存可能である。
【0059】
本発明の組成物は、液剤の他、錠剤、粉末剤などの形態であり得る。
【0060】
上記液剤は、上記(1)〜(4)の各成分、および必要に応じて(5)の成分を任意の順序で混合することにより得られる。基本的には、フラバン化合物とタンパク質分解ペプチドとを溶媒中で混合し、次いで得られた混合物に、平均分子量が7,000以上のペプチドまたはタンパク質を加えて混合することが好ましい。これによって、混合工程において、凝集沈殿が発生せず、短時間で均一な溶液が得られるため、製造上の効率化を図ることができる。
【0061】
最初に、フラバン化合物と平均分子量が7,000以上のペプチドまたはタンパク質とを溶媒中で混合した場合には、得られる溶液中に凝集沈殿物が生じ易い。このような場合にも、凝集沈殿を生じた溶液に、タンパク質分解ペプチドを加えて混合することによって、凝集沈殿物が溶解し、各成分を均一に含有する澄明な液剤を得ることができる。製造工程において、フラバン化合物と高分子量のペプチドまたはタンパク質とが溶媒中で凝集沈殿、懸濁、またはゲル化した場合に、沈殿物やゲルを再溶解させる方法として有用である。
【0062】
もう1つの態様として、最初に、タンパク質分解ペプチドと平均分子量が7,000以上のペプチドまたはタンパク質とを溶媒中で混合し、次いで、フラバン化合物を加えて混合する場合がある。このようにして得られた溶液中には、凝集沈殿、あるいは局所的にゲルが生じ、各成分が均一に混合されない。このような場合にも、混合物を少なくとも10分以上、好ましくは30分以上攪拌する、あるいは1日以上静置することによって、凝集沈殿あるいはゲル化を解消し、凝集沈殿のない均一な液剤を得ることができる。
【0063】
上記錠剤、粉末剤などの形態は、当業者が通常用いる方法で製造され得る。これらの各形態の組成物は、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などへ利用し得る。
【0064】
(作用)
本発明の組成物は、上述のようにフラバン化合物、平均分子量が7000未満のタンパク質分解ペプチド、平均分子量が7000以上の(高分子量の)ペプチドまたはタンパク質を含有する。このようにタンパク質分解ペプチドを含有させることによって、溶媒中におけるフラバン化合物および高分子量のペプチドまたはタンパク質による凝集沈殿を防止し得る。これは、フラバン化合物と高分子量のペプチドまたはタンパク質との凝集を上記タンパク質分解ペプチドが切断または阻害するためと考えられる。本発明の組成物は、このようにフラバン化合物および高分子量のペプチドまたはタンパク質による溶媒中での凝集沈殿が発生しない、あるいは発生しても再溶解するため、従来における再溶解化のための酸分解、アルカリ分解などの処理を必要としない。さらに製造時における各成分の損失がなく、均一化な溶液が得られるため、効率的な液剤などの製造が可能である。本発明の組成物は、凝集沈殿が生じないため、例えば、フラバン化合物とコラーゲンとを含有させることにより、該コラーゲンの増強効果、フラバン化合物の凝集による生理活性阻害を防止する効果などが有効に発揮され得る。この液剤は、凝集沈殿が発生しないため、製品としたときの保存安定性も良好である。本発明の組成物は、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品など幅広く利用し得る。
【0065】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明がこの実施例により制限されないことはいうまでもない。なお、実施例中、平均分子量とは、重量平均分子量のことを示す。
【0066】
(参考例:フラバン化合物およびタンパク質(ペプチド)の凝集沈殿評価)
種々のフラバン化合物とタンパク質とを混合して凝集沈殿を評価した。まず、水で膨潤させたSephadex LH−20をカラム体積で500mLとなるように50×500mmのカラムに充填し、500mLのエタノールで洗浄した。松樹皮抽出物(2〜4量体のプロアントシアニジン(OPC):40重量%、5量体以上のプロアントシアニジン:8.7重量%、カテキン:5.1重量%、商標名:フラバンジェノール、株式会社東洋新薬)10gを200mLのエタノールに溶解し、この溶液を上記カラムに通液し、プロアントシアニジンを吸着させた後、100〜80%(v/v)エタノール−水混合溶媒でグラジエント溶出し、100mLずつ分取した。各画分について、シリカゲルクロマトグラフィー(TLC)により、カテキンの標品(Rf値:0.8)および2〜4量体のOPCの各標品(2量体:プロアントシアニジンB−2(Rf値:0.6)、3量体:プロアントシアニジンC−1(Rf値:0.4)、4量体:シンナムタンニンA2(Rf値:0.2))を指標として、カテキンおよびOPCを検出した。TLCの条件は、以下のとおりである:
TLC:シリカゲルプレート(Merck & Co., Inc.製)
展開溶媒:ベンゼン/蟻酸エチル/蟻酸(2/7/1)
検出試薬:硫酸およびアニスアルデヒド硫酸
サンプル量:各10μL
【0067】
いずれの画分においても、カテキンは検出されず、各画分中にはカテキンが含有されていないことを確認した。得られた画分のうち、OPCが検出された画分をOPC含有画分とし、OPCが検出されなかった画分を5量体以上のプロアントシアニジン含有画分とし、これらの画分をそれぞれ凍結乾燥した。この操作を2回繰り返して7.6gのOPCの乾燥粉末および1.6gの5量体以上のプロアントシアニジンの乾燥粉末を得た。これらの乾燥粉末を混合して、カテキンを含まないプロアントシアニジン乾燥粉末を得た。
【0068】
次いで、上記松樹皮抽出物、プロアントシアニジン乾燥粉末、およびエピガロカテキン(ロシュ・ビタミン・ジャパン株式会社)を用いて、最終濃度が0.2重量%となるようにそれぞれ水溶液を調整した。これを第1液とした。
【0069】
これとは別に、コラーゲン(平均分子量30万:株式会社高研製)、ニッピペプタイドPA−100(平均分子量10,000:株式会社ニッピ製)、コラーゲンペプチドDS(平均分子量7,000:協和ハイフーズ社製)、SCP−5000(平均分子量5,000:新田ゼラチン株式会社製)、ファルコニックスCTP(平均分子量3,000:一丸ファルコス株式会社製)、ニッピペプタイドPA−10(平均分子量1,000:株式会社ニッピ製)、およびグリシン(分子量75:和光純薬工業株式会社製)を各々水に溶解させて、これらのコラーゲン、コラーゲンペプチド、またはアミノ酸が各々10.0重量%となるように水溶液を調製した。これらを第2液とした。
【0070】
第1液各1mLと第2液各1mLとをそれぞれ室温で混合した。この混合液を1週間室温で放置して、混合液中の沈殿および懸濁の有無を目視により観察した。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1からわかるように、いずれのフラバン化合物の場合も、平均分子量が10,000のコラーゲンペプチドまたは平均分子量300,000のコラーゲンを含む水溶液と混合すると懸濁および沈殿が生じた。特に、平均分子量300,000のコラーゲン水溶液との混合物では、ゲル化した固形物が析出した。平均分子量が7,000のコラーゲンペプチド水溶液を用いた場合には、わずかに懸濁が見られた。
【0073】
(実施例1)
参考例で用いたのと同様の松樹皮抽出物を5重量%の割合で含有する水溶液およびエピカテキンガレートを5重量%の割合で含有する水溶液をそれぞれ調製した。これらの水溶液を第1液とした。これとは別に、平均分子量が1,000のコラーゲンペプチドを1重量%含有する水溶液を調製した。この溶液を第2液とした。第1液および第2液を以下の表2に記載の割合で混合した。
【0074】
次に、平均分子量が7,000のコラーゲンペプチド、平均分子量が10,000のコラーゲンペプチド、および平均分子量が300,000のコラーゲンを各々1重量%の割合で含有する3種類の水溶液をそれぞれ調製した。これらを第3液とした。上記第1液と第2液との混合液に第3液を表3に記載の割合でそれぞれ添加して混合した。得られた混合液を1週間室温で放置して該混合液中の凝集沈殿の有無を目視により観察した。結果を表3に示す。
【0075】
(実施例2〜4)
平均分子量が1,000のコラーゲンペプチドの代わりに平均分子量が3,000および5,000のコラーゲンペプチドをそれぞれ用いて第2液を調製した。これを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表2に記載の割合で第1液と第2液とを含む混合液を調製した。この混合液を用い、実施例1と同様に操作して、最終的に得られた混合液中の凝集沈殿の有無を目視により観察した。結果を表3に示す。
【0076】
(比較例1〜4)
平均分子量が1,000のコラーゲンペプチドの代わりに平均分子量が7,000のコラーゲンペプチド、グリシン、または水をそれぞれ用いて第2液を調製した。これを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表2に記載の割合で第1液と第2液とを含む混合液を調製した。この混合液を用い、実施例1と同様に操作して、最終的に得られた混合液中の凝集沈殿の有無を目視により観察した。結果を表3に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
表3の結果から、実施例1〜4のフラバン化合物および平均分子量が7,000未満のコラーゲンペプチドを含む混合液に、平均分子量が7,000以上のコラーゲンペプチドまたはコラーゲンを含む水溶液を混合しても、凝集沈殿が生じないことがわかる。これに対して、フラバン化合物のみを含む溶液(比較例3および4)、ならびに該フラバン化合物、および平均分子量が7,000以上のコラーゲンペプチドまたはアミノ酸であるグリシンを含有する混合液に、平均分子量が7,000以上のコラーゲンペプチドまたはコラーゲンを含む水溶液を混合すると、凝集沈殿が生じることが明らかである。
【0080】
(実施例5)
松樹皮抽出物を5重量%の割合で含有する水溶液を調製し、これを第1液とした。これとは別に、平均分子量が1,000のコラーゲンペプチドを1重量%の割合で含有する水溶液を調製し、これを第2液とした。さらに、平均分子量が10,000のコラーゲンペプチドを1重量%の割合で含有する水溶液を調製し、これを第3液とした。これらの第1液、第2液、および第3液を表4に記載の割合で、以下の方法で混合した(方法1〜3)。混合直後および混合後1日間静置後における混合液の凝集沈殿またはゲル化の有無を調べた。結果を表4に示す。
【0081】
(方法1)第1液と第2液とを混合した後に、第3液を混合する、
(方法2)第2液と第3液とを混合した後に、第1液を混合する、
(方法3)第1液と第3液とを混合した後に、第2液を混合する。
【0082】
(実施例6〜16)
第1液、第2液、および第3液として、表4に記載の材料を含む水溶液を実施例5に準じて調製した。これらの第1液、第2液、および第3液を、表4に記載の割合で、実施例5と同様の3種類の方法で混合した(方法1〜3)。混合直後および混合後1日間静置後における混合液の凝集沈殿またはゲル化の有無を調べた。結果を表4に示す。
【0083】
(比較例5〜12)
第1液、第2液、および第3液として、表4に記載の材料を含む水溶液を実施例5に準じて調製した。これらの第1液、第2液、および第3液を、表4に記載の割合で、実施例5と同様の3種類の方法で混合した(方法1〜3)。混合直後および混合後1日間静置後における混合液の凝集沈殿またはゲル化の有無を調べた。結果を表4に示す。
【0084】
【表4】
【0085】
表4の結果から、実施例5〜16の松樹皮抽出物およびエピカテキンガレートのいずれか一方を含む第1液、平均分子量が平均分子量が7,000未満のコラーゲンペプチドを含む第2液、ならびに平均分子量が7,000以上のコラーゲンペプチドまたはコラーゲンのいずれかを含む第3液をどのような順序で混合しても、混合後、10分間攪拌すれば、凝集沈殿のない溶液が得られることがわかる。特に、これらの中でも、方法1の場合は、混合直後においても凝集沈殿が発生せず、その後も安定であった。方法2および3の場合も、最終的に沈殿物を含有しない清澄な水溶液が得られた。これに対して、平均分子量が7,000未満のコラーゲンペプチドを含まない各比較例の場合は、いずれの方法で混合しても、凝集沈殿が発生し、10分間攪拌しても凝集沈殿はなくならなかった。
【0086】
(実施例17)
松樹皮抽出物、平均分子量が5,000のコラーゲンペプチド、および平均分子量が10,000のコラーゲンペプチドを、表5に記載の割合で混合して混合粉末を調製した。この混合粉末10gを水100mLに溶解させ、凝集沈殿および懸濁の有無を目視にて調べた。結果を表5に示す。
【0087】
(比較例13および14)
松樹皮抽出物、平均分子量が5,000のコラーゲンペプチド、および平均分子量が10,000のコラーゲンペプチドを、表5に記載の割合で混合して混合粉末を調製した。この混合粉末10gを水100mLに溶解させ、凝集沈殿および懸濁の有無を目視にて調べた。結果を表5に示す。
【0088】
【表5】
【0089】
表5の結果から、実施例17のフラバン化合物、平均分子量が7,000未満のコラーゲンペプチド、および平均分子量が7,000以上のコラーゲンペプチドを含む混合粉末を水に溶解しても、凝集沈殿および懸濁が生じないことがわかる。このような混合粉末は、水、エタノールなどの液体を用いて湿式造粒を行う場合にも、凝集沈殿が生じないため、各成分を均一に含む造粒物を得ることができる。
【0090】
(実施例18)
平均分子量が5,000のコラーゲンペプチド(ニッピコラーゲン株式会社)5重量部および松樹皮抽出物0.1重量部を水40重量部に溶解させ、溶液Aを調製した。この溶液Aに以下に記載の原料を以下の割合で含有する溶液Bを混合して、コラーゲンペプチド含有飲料を得た。この飲料は、フラバン化合物またはフラバン化合物およびコラーゲンペプチドに起因する凝集沈殿がないため、各成分の損失がなく、優れた血流改善効果などが期待できる:
溶液B:
コンドロイチン複合タンパク質(マルハ株式会社) 0.1重量部
コラーゲンペプチド(ニッピコラーゲン株式会社) 4重量部
(平均分子量:10,000)
茶葉抽出物(三井農林株式会社) 0.1重量部
ブドウ糖 7重量部、
オレンジピール(長谷川香料株式会社) 0.1重量部、
アスコルビン酸 0.1重量部、
水 43.5重量部。
【0091】
(実施例19)
平均分子量が4,000のシルクペプチド(一丸ファルコス社)0.6重量部および松樹皮抽出物0.01重量部を水30重量部に溶解させ、溶液Aを調製した。この溶液Aに以下に記載の原料を以下の割合で含有する溶液Bを混合して化粧水を得た。このようなタンパク質(ペプチド)を含有しても、凝集沈殿が発生せず、保湿性、血流改善効果、整肌効果に優れていた。このように、コラーゲン以外のペプチドを用いてもフラバン化合物に起因する凝集沈殿またはフラバン化合物および高分子量のペプチドまたはタンパク質に起因する凝集沈殿を抑制できることがわかった:
溶液B:
コラーゲンペプチド 0.5重量部
(平均分子量:300,000)
エラスチンタンパク質 0.1重量部
0.05Mクエン酸ナトリウム 20重量部
0.05Mクエン酸 24.5重量部
ブチレングリコール 1.0重量部
グリセリン 1.1重量部
ベタイン 0.1重量部
水 22.09重量部
【0092】
【発明の効果】
本発明によれば、このように、フラバン化合物、平均分子量が7000未満のタンパク質分解ペプチド、および平均分子量が7000以上のペプチドまたはタンパク質を含有する組成物が得られる。この組成物が液剤である場合に、該液剤は長時間安定に保持され、凝集沈殿が発生しない。フラバン化合物、もしくはフラバン化合物と高分子量のペプチドまたはタンパク質とにより沈殿が生じた場合にも、平均分子量が7,000未満のタンパク質分解ペプチドを加えることにより該沈殿が再溶解し、澄明で安定な溶液が得られる。このことにより、製造時における沈殿の発生による各成分の損失が回避される。本発明の組成物は、種々の形態で食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などに幅広く利用され得る。
Claims (6)
- プロアントシアニジンおよびカテキン類の少なくとも一方であるフラバン化合物、平均分子量が7,000未満のタンパク質分解ペプチド、および平均分子量が7,000以上のペプチドまたはタンパク質を含有する、フラバン化合物含有組成物。
- 前記プロアントシアニジンが、5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対して、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合で含有する、請求項1に記載の組成物。
- プロアントシアニジンおよびカテキン類の少なくとも一方であるフラバン化合物、平均分子量が7,000未満のタンパク質分解ペプチド、平均分子量が7,000以上のペプチドまたはタンパク質、および溶媒を含有する、フラバン化合物を含有する液状の組成物。
- 前記プロアントシアニジンが、5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対して、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合で含有する、請求項3に記載の液状の組成物。
- 請求項3または4に記載の液状の組成物の製造方法であって、
プロアントシアニジンおよびカテキン類の少なくとも一方であるフラバン化合物と平均分子量が7,000未満のタンパク質分解ペプチドとを溶媒中で混合する工程、および
得られた混合物に、平均分子量が7,000以上のペプチドまたはタンパク質を加えて混合する工程、
を包含する、方法。 - 請求項3または4に記載の液状の組成物の製造方法であって、
プロアントシアニジンおよびカテキン類の少なくとも一方であるフラバン化合物、ならびに平均分子量が7,000以上のペプチドまたはタンパク質を含み、凝集沈殿物が生じた溶液に、平均分子量が7,000未満のタンパク質分解ペプチドを加えて混合し、該凝集沈殿物を溶解する工程を包含する、方法。
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