JP2004290102A - 食品組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】プロアントシアニジンによる生体への効果が損なわれず、さらにプロアントシアニジンが有するタンパク質の収斂性に関する問題を解決した食品組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の食品組成物は、プロアントシアニジンおよび平均分子量7,000以下のタンパク質分解ペプチドを含有する。このプロアントシアニジンは、5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合で含有することが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明の食品組成物は、プロアントシアニジンおよび平均分子量7,000以下のタンパク質分解ペプチドを含有する。このプロアントシアニジンは、5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合で含有することが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロアントシアニジンを含有する食品組成物に関し、さらに詳細には、優れた肌質の改善効果を有する食品組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロアントシアニジンは、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる縮合型タンニンであり、古くから肌の収斂性を高め、整肌効果を目的として使用されていた。近年、プロアントシアニジンは、抗酸化作用や美白効果などの種々の活性を有することから、食品や化粧品への応用が図られている(特許文献1および2)。例えば、タンパク質を配合した化粧料にも応用されている(特許文献3〜6)。また、特に溶液中におけるタンニンとタンパク質の安定性を高める種々の改良もなされている(特許文献7)。
【0003】
一方、プロアントシアニジンは、タンパク質との結合能力が高い性質を持つため、ゼラチン高融点ゲルの製造やコラーゲンの架橋剤としても用いられてきている(特許文献8および9)。
【0004】
しかし、プロアントシアニジンはタンパク質との結合能力が極めて高いため、プロアントシアニジンの抽出方法や植物種などによっては、タンパク質と結合して凝集沈殿や懸濁を生じる。そのため、製剤化が困難なだけでなく、コラーゲンやプロアントシアニジンが沈殿し、飲食物の製造工程における損失などが起こり、それぞれの有する生体への効果が非常に低下するという問題から、食品への応用範囲が限られていた。
【0005】
【特許文献1】
特開昭61−16982号公報
【特許文献2】
特開平2−134309号公報
【特許文献3】
特開平11−75708号公報
【特許文献4】
特開2000−60482号公報
【特許文献5】
特開平6−336423号公報
【特許文献6】
特開2002−238497号公報
【特許文献7】
特開2002−51734号公報
【特許文献8】
特開平2−163046号公報
【特許文献9】
特開2001−8634号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プロアントシアニジンによる生体への効果が損なわれず、さらにプロアントシアニジンが有するタンパク質の収斂性に関する問題を解決した食品組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、驚くべきことに、2〜4量体のプロアントシアニジンと一定の分子量のペプチドとを組み合わせることによって、タンパク質の凝集沈殿が起こらず、その結果、それぞれの効果が相殺されずに得られることを見出して、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、プロアントシアニジンおよび平均分子量7,000以下のタンパク質分解ペプチドを含有する、食品組成物を提供し、該プロアントシアニジンは、2〜4量体のプロアントシアニジンを含有する。
【0009】
好ましい実施態様において、上記プロアントシアニジンは、5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合で含有する。
【0010】
さらに好ましい実施態様では、上記ペプチドは、コラーゲン由来のペプチドである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の食品組成物について説明する。なお、以下に説明する構成は、本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができることは当業者に明らかである。
【0012】
本発明の食品組成物に用いられるプロアントシアニジンとは、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる化合物群をいう。
【0013】
このプロアントシアニジンとしては、重合度の低い縮重合体が多く含まれるものが好ましく用いられる。重合度の低い縮重合体としては、重合度が2〜30の縮重合体(2〜30量体)が好ましく、重合度が2〜10の縮重合体(2〜10量体)がより好ましく、重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体)が特に好ましい。この重合度が2〜4の縮重合体を、本明細書ではOPC(オリゴメリック・プロアントシアニジン;oligomeric proanthocyanidin)という。プロアントシアニジンは、ポリフェノール類の一種で、植物が作り出す強力な抗酸化物質であり、植物の葉、樹皮、果物の皮もしくは種の部分に集中的に含まれている。プロアントシアニジン、特にOPCは、具体的には、松、樫、山桃などの樹皮、ブドウ、ブルーベリー、イチゴ、アボガド、ニセアカシア、コケモモの果実もしくは種子、大麦、小麦、大豆、黒大豆、カカオ、小豆、トチの実の殻、ピーナッツの薄皮、イチョウ葉などに含まれている。また、西アフリカのコーラナッツ、ペルーのラタニアの根、日本の緑茶にも、OPCが含まれることが知られている。OPCは、ヒトの体内では、生成することのできない物質である。
【0014】
本発明の食品組成物に含有されるプロアントシアニジンとしては、上記の樹皮、果実もしくは種子の抽出物のような食品原料を使用することができる。特に、松樹皮の抽出物を用いることが好ましい。松樹皮は、プロアントシアニジンの中でもOPCに富むため、プロアントシアニジンの原料として好ましく用いられる。
【0015】
以下、OPCを豊富に含む松樹皮の抽出物を例に挙げて、プロアントシアニジンの調製方法を説明する。
【0016】
松樹皮抽出物としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダなどのマツ目に属する植物の樹皮抽出物が好ましく用いられる。中でも、フランス海岸松(Pinus Martima)の樹皮抽出物が好ましい。
【0017】
フランス海岸松は、南仏の大西洋沿岸の一部に生育している海洋性松をいう。このフランス海岸松の樹皮は、プロアントシアニジン、有機酸、ならびにその他の生理活性成分などを含有し、その主要成分であるプロアントシアニジンに、活性酸素を除去する強い抗酸化作用があることが知られている。
【0018】
松樹皮抽出物は、上記の松樹皮を水または有機溶媒で抽出して得られる。水を用いる場合には、温水または熱水が用いられる。抽出に用いる有機溶媒としては、食品あるいは薬剤の製造に許容される有機溶媒が用いられ、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、および1,1,2−トリクロロエテンが挙げられる。これらの水および有機溶媒は単独で用いてもよいし、組合わせて用いてもよい。特に、熱水、含水エタノール、および含水プロピレングリコールが好ましく用いられる。
【0019】
松樹皮からプロアントシアニジンを抽出する方法は、特に限定されないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法などが用いられる。
【0020】
超臨界流体抽出法は、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)などが用いられ、二酸化炭素が好ましく用いられる。
【0021】
超臨界流体抽出法では、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程と、目的成分と超臨界流体とを分離する分離工程からなる。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、または吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
【0022】
また、エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、超臨界流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、またはケトン類を2〜20W/V%程度添加し、得られた抽出流体で超臨界流体抽出を行うことによって、OPC、カテキン類(後述)などの目的とする被抽出物の抽出溶媒に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、あるいは分離の選択性を増強させる方法であり、効率的に松樹皮抽出物を得る方法である。
【0023】
超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点;抽出流体が残留しないという利点;および溶媒の循環利用が可能であり、脱溶媒工程などが省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。
【0024】
また、松樹皮からの抽出は、上記の方法以外に、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法などにより行ってもよい。
【0025】
松樹皮からの抽出は、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0026】
本発明の食品組成物に用いられる松樹皮抽出物は、具体的には、以下のような方法により調製されるが、これは例示であり、この方法に限定されない。
【0027】
フランス海岸松の樹皮1kgを、塩化ナトリウムの飽和水溶液3Lに入れ、100℃にて30分間抽出し、抽出液を得る(抽出工程)。その後、抽出液を濾過し、得られる不溶物を塩化ナトリウムの飽和溶液500mlで洗浄し、洗浄液を得る(洗浄工程)。この抽出液と洗浄液を合わせて、松樹皮の粗抽出液を得る。
【0028】
次いで、この粗抽出液に酢酸エチル250mlを添加して分液し、酢酸エチル層を回収する工程を5回行う。回収した酢酸エチル溶液を合わせて、無水硫酸ナトリウム200gに直接添加して脱水する。その後、この酢酸エチル溶液を濾過し、濾液を元の5分の1量になるまで減圧濃縮する。濃縮された酢酸エチル溶液を2Lのクロロホルムに注ぎ、攪拌して得られる沈殿物を濾過により回収する。その後、この沈殿物を酢酸エチル100mlに溶解した後、再度1Lのクロロホルムに添加して沈殿させる操作を2回繰り返す洗浄工程を行う。この方法により、例えば、2〜4量体のOPCを20重量%以上含み、かつカテキン類を5重量%以上含有する、約5gの松樹皮抽出物が得られる。
【0029】
上記松樹皮のような原料植物に由来する抽出物は、OPCを乾燥重量換算で好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上含有する。このようにOPCを高い割合で含有する原料として、松樹皮抽出物が好ましく用いられる。
【0030】
なお、上記のように水やエタノールを用いて植物体から抽出した抽出物中には、5量体以上のプロアントシアニジンも含有するが、プロアントシアニジンの極性溶媒への溶解度から、そのほとんどは10〜20量体以下である。
【0031】
上記松樹皮抽出物のようにOPCを含有するプロアントシアニジンは、コラーゲンペプチドと凝集沈殿や懸濁を生じにくい。OPCを多く含有するほど沈殿は生じにくく、通常は20重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上含有するプロアントシアニジンが用いられる。特に、5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、OPCを1重量部以上の割合で含有するプロアントシアニジンが好ましい。5量体以上のプロアントシアニジンが含有されているにもかかわらず、凝集沈殿が起こらない理由は明らかではないが、上記所定の比率以上でOPCを含有する場合は、プロアントシアニジンとタンパク質との凝集沈殿や懸濁を防止することができる。
【0032】
上記植物抽出物には、プロアントシアニジン、特にOPCとともにカテキン(catechin)類が上記原料植物抽出物中に5重量%以上含まれていることが好ましい。カテキン類とは、ポリヒドロキシフラバン−3−オールの総称である。カテキン類としては、(+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレートなどが知られている。上記松樹皮のような原料植物由来の抽出物からは、狭義のカテキンといわれている(+)−カテキンの他、ガロカテキン、アフゼレキン、ならびに(+)−カテキンまたはガロカテキンの3−ガロイル誘導体が単離されている。カテキン類には、発癌抑制作用、動脈硬化予防作用、脂肪代謝異常の抑制作用、血圧上昇抑制作用、血小板凝集抑制作用、抗アレルギー作用、抗ウイルス作用、抗菌作用、虫歯予防作用、口臭防止作用、腸内細菌叢正常化作用、活性酸素やフリーラジカルの消去作用、抗酸化作用などがあることが知られている。カテキン類には、血糖の上昇を抑制する抗糖尿病効果があることが知られている。カテキン類は、OPCの存在下で水溶性が増すと同時に、OPCを活性化する性質があり、OPCとともに摂取することによって、OPCの作用を増強する。
【0033】
カテキン類は、上記原料植物抽出物に含まれていても、タンパク質と反応せず、そしてOPCの溶解性や機能を向上させるため、プロアントシアニジン1重量部に対し、0.1重量部以上含有されていることが好ましい。より好ましくは、OPCを20重量%以上含有する原料植物抽出物に、カテキン類が5重量%以上含有されるように調製される。例えば、松樹皮抽出物のカテキン類含量が5重量%未満の場合、5重量%以上となるようにカテキン類を添加してもよい。カテキン類を5重量%以上含有し、かつOPCを20重量%以上含有する松樹皮抽出物を用いることが最も好ましい。
【0034】
プロアントシアニジン、特にOPCは、上述のように抗酸化物質であるため、ガン・心臓病・脳血栓などの成人病の危険率を低下する効果、関節炎・アトピー性皮膚炎・花粉症などのアレルギー体質の改善効果などを有することが知られている。
【0035】
さらにOPCは、抗酸化作用のほか、口腔内のバクテリア増殖を抑制してプラーク(歯こう)を減少させる効果、血管の弾力性を回復させる効果、肌質を改善させる効果、コラーゲンの増強効果、高脂血症改善効果、血液中でのリポたんぱくが活性酸素によりダメージを受けるのを防止して、損傷した脂肪が血管の内壁に凝集し、コレステロールが付着することを防止する効果、活性酸素によって分解されたビタミンEを再生させる効果、ビタミンEの増強剤としての効果などを有することが知られている。この中でも、血管の弾力性を回復させる効果により血流が改善され得る。さらにコラーゲンの増強効果との相乗作用によって、肌質も改善され得る。
【0036】
本発明の食品組成物は、プロアントシアニジンを、好ましくは組成物中に乾燥重量換算で0.00001重量%〜50重量%、より好ましくは0.001重量%〜40重量%、さらに好ましくは0.01重量%〜20重量%含有する。
【0037】
本発明の食品組成物のもう一つの必須成分は、タンパク質を分解して得られる平均分子量が7,000以下のペプチド(本明細書において、タンパク質分解ペプチドという)である。タンパク質分解ペプチドは、有機合成によって得られたペプチドであってもよい。タンパク質分解ペプチドとしては、各種の動植物性タンパク質を酸、アルカリ、または酵素を用いて分解したものであれば特に限定されるものではない。原料となるタンパク質としては、例えば、牛、豚、鶏などの畜肉類、魚類、獣乳、卵などに由来する動物性タンパク質;例えば、大豆、小麦、トウモロコシ、えんどう豆などに由来する植物性タンパク質が挙げられる。特に、原料タンパク質としてはコラーゲンが好ましく、そしてタンパク質分解ペプチドとしては、その分解物であるコラーゲンペプチドが最も好ましい。
【0038】
コラーゲンは、動物の結合組織を構成する主要タンパク質であり、骨、腱、皮膚、血管壁などに多く含まれる。分子内に1または複数の3重らせん構造を有し、構成するポリペプチド鎖のアミノ酸配列が異なる種々のタイプが存在する。コラーゲンの変性物であるゼラチンは、コラーゲンを含む原料を温(熱)水抽出することにより得られる分子量30万から数万程度の水溶性タンパク質であり、アルカリ処理ゼラチン(等電点4.8〜5.3)と酸処理ゼラチン(等電点7〜9)とがある。
【0039】
コラーゲンまたはゼラチンからのコラーゲンペプチドの具体的な調製方法を、以下に説明する。まず、牛、豚などの皮または骨を、アルカリ溶液に2〜3ヶ月浸漬するアルカリ処理または希塩酸などに短期間浸漬する酸処理を施して、原料に含まれる不純物を除去し、かつ抽出を容易にするための前処理を行う。例えば、原料が牛骨である場合は、骨の中にリン酸カルシウムなどの無機質が含まれているため、予め希塩酸に漬けて無機質を除去し、これを温(熱)水抽出することによりゼラチンを得る。温(熱)水抽出は、一般には、最初の抽出温度は50〜60℃で、2回目以降は抽出温度を徐々に上げ、最終的には煮沸させる。次いで、得られたゼラチンを、通常用いられる酸あるいは酵素で加水分解することにより、コラーゲンペプチドを得ることができる。
【0040】
こうして得られたコラーゲンペプチドは、平均分子量が約7,000以下、好ましくは約6,000以下である。このような分子量を有するコラーゲンペプチドのうち、OPCとともに溶液中で安定に溶解し、そしてタンパク質の沈殿を防止するという効果を得るためには、分子量が約200以上、好ましくは約3,000以上、より好ましくは約5,000以上のペプチドを用いる。平均分子量が7,000より大きくなると、高分子のプロアントシアニジン(10〜30量体)が結合し、沈殿や懸濁を生じやすくなる。
【0041】
このような分子量のコラーゲンペプチドは、市販のものを容易に入手することができる。例えば、動物性コラーゲン由来のコラーゲンペプチドとしては、ニッピペプタイドPBF、ニッピペプタイドPRA(いずれも(株)ニッピ製)、SCP−5000、SCP−3100(いずれも新田ゼラチン(株)製)、コラーゲンペプチドDS(協和ハイフーズ株式会社製)、ファルコニックスCTP(一丸ファルコス株式会社製)などが挙げられる。このような動物由来のコラーゲンペプチド以外では、動物性コラーゲンとアミノ酸組成が類似しているものが好ましく、例えば、コラーゲン類似ペプチドとして、ニンジン(Daucus carota L.)由来ペプチドが挙げられる。
【0042】
本発明の食品組成物は、タンパク質分解ペプチド、好ましくはコラーゲンペプチドを、組成物中に乾燥重量換算で好ましくは0.00001重量%〜90重量%、より好ましくは0.0001重量%〜50重量%含有する。
【0043】
本発明の食品組成物には、上記プロアントシアニジンおよびタンパク質分解ペプチド以外に、医薬部外品、化粧料などに通常使用される他の成分を、該組成物の効果を損なわない範囲で含有してもよい。このような成分としては、例えば、水、他の薬効成分、他の油剤、保湿剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、吸収促進剤、香料、色素、保存剤、増粘剤、キレート剤、防腐防黴剤などを挙げることができる。ここで、他の薬効成分としては、活性酸素除去剤、抗酸化剤、消炎鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、止痒剤、殺菌剤、ビタミン剤、ホルモン剤などが挙げられる。
【0044】
また、プロアントシアニジンの安定性を高める目的で、酸化防止剤を添加しても良い。これにより、体内のタンパク質や脂質の酸化を防止し、肌質を改善および保護する効果を得ることができる。
【0045】
酸化防止剤としては、ビタミンAなどのカロテノイド類、ビタミンB類、アスコルビン酸、ビタミンE、これらの誘導体またはこれらの塩、L−システインおよびこれらの誘導体やその塩、リボフラビン、SOD、マンニトール、トリプトファン、ヒスチジン、ケルセチン、没食子酸およびその誘導体、茶抽出物、およびグルタチオン酵母抽出物などの抽出物が挙げられる。
【0046】
この中でも、アスコルビン酸は、プロアントシアニジンの安定性を高めるだけでなく、肌へ相乗的に効果を発揮し、肌質の改善効果(例えば、ハリやツヤが良くなる効果)および血管保護効果も高める。アスコルビン酸を添加する場合は、プロアントシアニジンに対して、重量比で、好ましくは1:0.1〜50、より好ましくは1:0.2〜20となるように、本発明の食品組成物に含有され得る。なお、アスコルビン酸の量は、上記比より多くてもかまわない。
【0047】
本発明の食品組成物は、通常用いられる方法により、プロアントシアニジンおよびタンパク質分解ペプチドと他の成分とを混合して調製することができ、錠剤、粉末、液体の形態で、飲料などの食品として使用できる。
【0048】
例えば、本発明の食品組成物は、、必要に応じて、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などの添加剤と混合され得る。例えば、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、卵殻カルシウムなどのカルシウム、キトサン、レシチン、クロレラ末、アシタバ末、モロヘイヤ末などの栄養成分としての食品添加物;ステビア末、抹茶パウダー、レモンパウダー、はちみつ、還元麦芽糖、乳糖、糖液などの調味料が混合され得る。そしてこれらは、ハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤、錠剤、もしくは丸剤などに、あるいは粉末状、顆粒状、茶状、ティーバッグ状、飴状、液体、ペースト状などの形態に成形され得る。これらは、形状または好みに応じて、そのまま飲食してもよく、あるいは水、湯、牛乳などに溶いて飲んでも良い。
【0049】
本発明の食品組成物の一日の摂取量は、特に限定されず、好ましくは、プロアントシアニジンとして0.02g〜1gの範囲内である。この範囲内のプロアントシアニジンに対して適切なタンパク質分解ペプチドの量は、好ましくは0.04g〜0.5gである。
【0050】
本発明の食品組成物は、適切な量を摂取した場合、肌質の改善効果および血流改善効果を有する。特に、OPCが乾燥重量換算で20重量%以上含有される抽出物をプロアントシアニジンとして用いた場合、特に優れた効果が得られる。このように、本発明の食品組成物は、健康食品として利用され得る。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明がこの実施例により制限されないことはいうまでもない。
【0052】
(プロアントシアニジンの調製)
松樹皮抽出物(2〜4量体:40重量%、5量体以上:8.7重量%、カテキン:5.1重量%、商標名:フラバンジェノール、株式会社東洋新薬)20gを、Sephadex LH−20(ファルマシアバイオテク株式会社製)に供して分離し、乾燥粉末重量で7.6gの2〜4量体および1.6gの5量体以上のプロアントシアニジンを回収した。得られた5量体以上のプロアントシアニジン1gを、上記の松樹皮抽出物の粉末2gと混合し、5量体以上のプロアントシアニジンを多く含む松樹皮抽出物(2〜4量体:27重量%、5量体以上:39重量%、カテキン1.7重量%)を調製した。これらの松樹皮抽出物を、最終濃度が0.2重量%となるように水溶液へ溶解した。
【0053】
なお、Sephadex LH−20による分離は、以下の条件で2回行った。まず、水で膨潤させたSephadex LH−20をカラム体積で500mLとなるように50×500mmのカラムに充填し、500mLのエタノールで洗浄した。上記松樹皮抽出物10gを200mLのエタノールに溶解し、これをカラムに通液して吸着させた後、100〜80%(v/v)エタノール−水混合溶媒でグラジエント溶出し、100mLずつ分取した。各画分について、シリカゲルクロマトグラフィー(TLC)により、2〜4量体のOPCの各標品(2量体:プロアントシアニジンB−2(Rf値:0.6)、3量体:プロアントシアニジンC−1(Rf値:0.4)、4量体:シンナムタンニンA2(Rf値:0.2))を指標として、OPCの溶出を検出した。TLCの条件は、以下のとおりである:
TLC:シリカゲルプレート(Merck & Co., Inc.製)
展開溶媒:ベンゼン/ギ酸エチル/ギ酸(2/7/1)
検出試薬:硫酸およびアニスアルデヒド硫酸
サンプル量:各10μL
【0054】
OPCが検出された画分を集め、凍結乾燥して粉末を得た。次いで、OPCが検出されなくなったカラムに、50%(v/v)水−アセトン混合溶媒1000mLを通液し、5量体以上のプロアントシアニジンを溶出させ、回収した画分を凍結乾燥させて粉末を得た。
【0055】
(コラーゲンおよびコラーゲンペプチドの調製)
コラーゲン(平均分子量30万:株式会社高研製)、ニッピペプタイドPA−100(平均分子量10,000:株式会社ニッピ製)、コラーゲンペプチドDS(平均分子量7,000:協和ハイフーズ社製)、SCP−5000(平均分子量5,000:新田ゼラチン株式会社製)、ファルコニックスCTP(平均分子量3,000:一丸ファルコス株式会社製)、ニッピペプタイドPA−10(平均分子量1,000:株式会社ニッピ製)、およびグリシン(分子量75:和光純薬工業株式会社製)を用いて、これらのコラーゲン、コラーゲンペプチド、またはアミノ酸が10.0重量%となるように水溶液を各10mLずつ調製した。
【0056】
(実施例1:凝集沈殿評価)
上記のように調製したコラーゲン、コラーゲンペプチド、またはアミノ酸溶液各1mLに、上記プロアントシアニジン溶液1mLを混合し、1週間室温で放置し、1週間後に沈殿および懸濁の有無を目視により観察した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1からわかるように、5量体以上のプロアントシアニジンと分子量のコラーゲンペプチドまたはコラーゲンとの混合液では、いずれも懸濁または沈殿が観察された。これに対して、2〜4量体のプロアントシアニジンと分子量7,000以下のコラーゲンペプチドまたはアミノ酸との混合液では、ほとんど懸濁が見られなかった。2〜4量体の割合が多いプロアントシアニジンを含む松樹皮抽出物では沈殿が見られなかった。また、平均分子量300,000のコラーゲンを用いた場合は、ゲル化した固形分が析出した。このように、2〜4量体のプロアントシアニジン(OPC)またはプロアントシアニジンとしてOPCを多く含む松樹脂抽出物は、分子量7,000以下のコラーゲンペプチドと懸濁または沈殿を生じず、混合物溶液として安定であることがわかった。
【0059】
(実施例2:皮膚改善効果)
上記松樹皮抽出物の最終濃度が0.2重量%およびコラーゲンペプチドの最終濃度が5重量%となるように、表2に記載の組み合わせで水溶液を調製し、滅菌のために0.45μmフィルターで濾過して、飲料1〜3を得た。なお、濾過前の飲料3は、やや懸濁が見られた。
【0060】
【表2】
【0061】
3週齢のモルモット(日本エスエルシー株式会社)に、一般の固形飼料(RC4;オリエンタル酵母株式会社)を与えて1週間馴化させた後、総無作為化法により1群5匹ずつ4群に割り振った。各群のモルモットに、上記のように調製した飲料1〜3を、1日当たり1mL、ゾンデを用いて28日間強制経口投与した。対照として、精製水を投与した群を設けた。試験期間中、飼料および水は自由摂取させた。最終投与終了後に、被験動物の背部皮膚中央部を剥離摘出し(3cm×3cm)、60℃にて一晩乾燥させた。乾燥させた皮膚を破砕し、その50mgを5mLの6M塩酸に添加し、ヒーティングブロックを用いて110℃にて24時間加熱して加水分解した。次いで、この加水分解物について、クロラミンT法により、ヒドロキシプロリン(Hyp)含量を測定した。Hypは、コラーゲンに多く含まれており、Hyp含量が高ければ、コラーゲンが生成されていることを示す指標となる。結果を図1に示す。
【0062】
図1からわかるように、飲料1〜3を投与した群の方が、わずかではあるがHyp量が多かった。このことは、投与群の方が、皮膚中のコラーゲン量が多く、皮膚に新陳代謝が促進されたと思われる。
【0063】
(実施例3:血流改善効果)
20〜50歳の健常人を1群20人の4群にランダムに割り振った。まず、摂取前に血流量を測定し、次いで、被験者に上記飲料1〜3または水を200mL摂取させ、摂取後1時間後に再度血流量を測定した。血流量は、血流計(レーザー血流画像化装置PIM II;Sweden Permied社)を用いて右前腕部の皮下の血流量を測定した。結果を表3に示す。表の値は、平均値±標準誤差であり、数値が大きいほど、血流量が多いことを示す。
【0064】
【表3】
【0065】
表3に示すように、飲料1〜3はいずれも、血流量が増加しており、血流改善効果が見られた。また、飲料1および2の方が、飲料3よりも血流量が多くなっていることから、凝集沈殿や懸濁によってプロアントシアニジンの効果が相殺されることなく十分に発揮されていることがわかる。
【0066】
【発明の効果】
本発明の食品組成物は、プロアントシアニジンとタンパク質分解ペプチドとの凝集沈殿が生じにくいため、それぞれの有する作用・効果が損なわれることなく発揮され得る。そのため、例えば、プロアントシアニジンおよびコラーゲンに由来する肌質の改善効果や血流改善効果が、従来のものよりも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】各飲料を投与した群のモルモットにおける、皮膚のHyp量を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロアントシアニジンを含有する食品組成物に関し、さらに詳細には、優れた肌質の改善効果を有する食品組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
プロアントシアニジンは、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる縮合型タンニンであり、古くから肌の収斂性を高め、整肌効果を目的として使用されていた。近年、プロアントシアニジンは、抗酸化作用や美白効果などの種々の活性を有することから、食品や化粧品への応用が図られている(特許文献1および2)。例えば、タンパク質を配合した化粧料にも応用されている(特許文献3〜6)。また、特に溶液中におけるタンニンとタンパク質の安定性を高める種々の改良もなされている(特許文献7)。
【0003】
一方、プロアントシアニジンは、タンパク質との結合能力が高い性質を持つため、ゼラチン高融点ゲルの製造やコラーゲンの架橋剤としても用いられてきている(特許文献8および9)。
【0004】
しかし、プロアントシアニジンはタンパク質との結合能力が極めて高いため、プロアントシアニジンの抽出方法や植物種などによっては、タンパク質と結合して凝集沈殿や懸濁を生じる。そのため、製剤化が困難なだけでなく、コラーゲンやプロアントシアニジンが沈殿し、飲食物の製造工程における損失などが起こり、それぞれの有する生体への効果が非常に低下するという問題から、食品への応用範囲が限られていた。
【0005】
【特許文献1】
特開昭61−16982号公報
【特許文献2】
特開平2−134309号公報
【特許文献3】
特開平11−75708号公報
【特許文献4】
特開2000−60482号公報
【特許文献5】
特開平6−336423号公報
【特許文献6】
特開2002−238497号公報
【特許文献7】
特開2002−51734号公報
【特許文献8】
特開平2−163046号公報
【特許文献9】
特開2001−8634号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プロアントシアニジンによる生体への効果が損なわれず、さらにプロアントシアニジンが有するタンパク質の収斂性に関する問題を解決した食品組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、驚くべきことに、2〜4量体のプロアントシアニジンと一定の分子量のペプチドとを組み合わせることによって、タンパク質の凝集沈殿が起こらず、その結果、それぞれの効果が相殺されずに得られることを見出して、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、プロアントシアニジンおよび平均分子量7,000以下のタンパク質分解ペプチドを含有する、食品組成物を提供し、該プロアントシアニジンは、2〜4量体のプロアントシアニジンを含有する。
【0009】
好ましい実施態様において、上記プロアントシアニジンは、5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合で含有する。
【0010】
さらに好ましい実施態様では、上記ペプチドは、コラーゲン由来のペプチドである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の食品組成物について説明する。なお、以下に説明する構成は、本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができることは当業者に明らかである。
【0012】
本発明の食品組成物に用いられるプロアントシアニジンとは、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる化合物群をいう。
【0013】
このプロアントシアニジンとしては、重合度の低い縮重合体が多く含まれるものが好ましく用いられる。重合度の低い縮重合体としては、重合度が2〜30の縮重合体(2〜30量体)が好ましく、重合度が2〜10の縮重合体(2〜10量体)がより好ましく、重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体)が特に好ましい。この重合度が2〜4の縮重合体を、本明細書ではOPC(オリゴメリック・プロアントシアニジン;oligomeric proanthocyanidin)という。プロアントシアニジンは、ポリフェノール類の一種で、植物が作り出す強力な抗酸化物質であり、植物の葉、樹皮、果物の皮もしくは種の部分に集中的に含まれている。プロアントシアニジン、特にOPCは、具体的には、松、樫、山桃などの樹皮、ブドウ、ブルーベリー、イチゴ、アボガド、ニセアカシア、コケモモの果実もしくは種子、大麦、小麦、大豆、黒大豆、カカオ、小豆、トチの実の殻、ピーナッツの薄皮、イチョウ葉などに含まれている。また、西アフリカのコーラナッツ、ペルーのラタニアの根、日本の緑茶にも、OPCが含まれることが知られている。OPCは、ヒトの体内では、生成することのできない物質である。
【0014】
本発明の食品組成物に含有されるプロアントシアニジンとしては、上記の樹皮、果実もしくは種子の抽出物のような食品原料を使用することができる。特に、松樹皮の抽出物を用いることが好ましい。松樹皮は、プロアントシアニジンの中でもOPCに富むため、プロアントシアニジンの原料として好ましく用いられる。
【0015】
以下、OPCを豊富に含む松樹皮の抽出物を例に挙げて、プロアントシアニジンの調製方法を説明する。
【0016】
松樹皮抽出物としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダなどのマツ目に属する植物の樹皮抽出物が好ましく用いられる。中でも、フランス海岸松(Pinus Martima)の樹皮抽出物が好ましい。
【0017】
フランス海岸松は、南仏の大西洋沿岸の一部に生育している海洋性松をいう。このフランス海岸松の樹皮は、プロアントシアニジン、有機酸、ならびにその他の生理活性成分などを含有し、その主要成分であるプロアントシアニジンに、活性酸素を除去する強い抗酸化作用があることが知られている。
【0018】
松樹皮抽出物は、上記の松樹皮を水または有機溶媒で抽出して得られる。水を用いる場合には、温水または熱水が用いられる。抽出に用いる有機溶媒としては、食品あるいは薬剤の製造に許容される有機溶媒が用いられ、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、および1,1,2−トリクロロエテンが挙げられる。これらの水および有機溶媒は単独で用いてもよいし、組合わせて用いてもよい。特に、熱水、含水エタノール、および含水プロピレングリコールが好ましく用いられる。
【0019】
松樹皮からプロアントシアニジンを抽出する方法は、特に限定されないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法などが用いられる。
【0020】
超臨界流体抽出法は、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)などが用いられ、二酸化炭素が好ましく用いられる。
【0021】
超臨界流体抽出法では、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程と、目的成分と超臨界流体とを分離する分離工程からなる。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、または吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
【0022】
また、エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、超臨界流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、またはケトン類を2〜20W/V%程度添加し、得られた抽出流体で超臨界流体抽出を行うことによって、OPC、カテキン類(後述)などの目的とする被抽出物の抽出溶媒に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、あるいは分離の選択性を増強させる方法であり、効率的に松樹皮抽出物を得る方法である。
【0023】
超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点;抽出流体が残留しないという利点;および溶媒の循環利用が可能であり、脱溶媒工程などが省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。
【0024】
また、松樹皮からの抽出は、上記の方法以外に、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法などにより行ってもよい。
【0025】
松樹皮からの抽出は、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0026】
本発明の食品組成物に用いられる松樹皮抽出物は、具体的には、以下のような方法により調製されるが、これは例示であり、この方法に限定されない。
【0027】
フランス海岸松の樹皮1kgを、塩化ナトリウムの飽和水溶液3Lに入れ、100℃にて30分間抽出し、抽出液を得る(抽出工程)。その後、抽出液を濾過し、得られる不溶物を塩化ナトリウムの飽和溶液500mlで洗浄し、洗浄液を得る(洗浄工程)。この抽出液と洗浄液を合わせて、松樹皮の粗抽出液を得る。
【0028】
次いで、この粗抽出液に酢酸エチル250mlを添加して分液し、酢酸エチル層を回収する工程を5回行う。回収した酢酸エチル溶液を合わせて、無水硫酸ナトリウム200gに直接添加して脱水する。その後、この酢酸エチル溶液を濾過し、濾液を元の5分の1量になるまで減圧濃縮する。濃縮された酢酸エチル溶液を2Lのクロロホルムに注ぎ、攪拌して得られる沈殿物を濾過により回収する。その後、この沈殿物を酢酸エチル100mlに溶解した後、再度1Lのクロロホルムに添加して沈殿させる操作を2回繰り返す洗浄工程を行う。この方法により、例えば、2〜4量体のOPCを20重量%以上含み、かつカテキン類を5重量%以上含有する、約5gの松樹皮抽出物が得られる。
【0029】
上記松樹皮のような原料植物に由来する抽出物は、OPCを乾燥重量換算で好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上含有する。このようにOPCを高い割合で含有する原料として、松樹皮抽出物が好ましく用いられる。
【0030】
なお、上記のように水やエタノールを用いて植物体から抽出した抽出物中には、5量体以上のプロアントシアニジンも含有するが、プロアントシアニジンの極性溶媒への溶解度から、そのほとんどは10〜20量体以下である。
【0031】
上記松樹皮抽出物のようにOPCを含有するプロアントシアニジンは、コラーゲンペプチドと凝集沈殿や懸濁を生じにくい。OPCを多く含有するほど沈殿は生じにくく、通常は20重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上含有するプロアントシアニジンが用いられる。特に、5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、OPCを1重量部以上の割合で含有するプロアントシアニジンが好ましい。5量体以上のプロアントシアニジンが含有されているにもかかわらず、凝集沈殿が起こらない理由は明らかではないが、上記所定の比率以上でOPCを含有する場合は、プロアントシアニジンとタンパク質との凝集沈殿や懸濁を防止することができる。
【0032】
上記植物抽出物には、プロアントシアニジン、特にOPCとともにカテキン(catechin)類が上記原料植物抽出物中に5重量%以上含まれていることが好ましい。カテキン類とは、ポリヒドロキシフラバン−3−オールの総称である。カテキン類としては、(+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレートなどが知られている。上記松樹皮のような原料植物由来の抽出物からは、狭義のカテキンといわれている(+)−カテキンの他、ガロカテキン、アフゼレキン、ならびに(+)−カテキンまたはガロカテキンの3−ガロイル誘導体が単離されている。カテキン類には、発癌抑制作用、動脈硬化予防作用、脂肪代謝異常の抑制作用、血圧上昇抑制作用、血小板凝集抑制作用、抗アレルギー作用、抗ウイルス作用、抗菌作用、虫歯予防作用、口臭防止作用、腸内細菌叢正常化作用、活性酸素やフリーラジカルの消去作用、抗酸化作用などがあることが知られている。カテキン類には、血糖の上昇を抑制する抗糖尿病効果があることが知られている。カテキン類は、OPCの存在下で水溶性が増すと同時に、OPCを活性化する性質があり、OPCとともに摂取することによって、OPCの作用を増強する。
【0033】
カテキン類は、上記原料植物抽出物に含まれていても、タンパク質と反応せず、そしてOPCの溶解性や機能を向上させるため、プロアントシアニジン1重量部に対し、0.1重量部以上含有されていることが好ましい。より好ましくは、OPCを20重量%以上含有する原料植物抽出物に、カテキン類が5重量%以上含有されるように調製される。例えば、松樹皮抽出物のカテキン類含量が5重量%未満の場合、5重量%以上となるようにカテキン類を添加してもよい。カテキン類を5重量%以上含有し、かつOPCを20重量%以上含有する松樹皮抽出物を用いることが最も好ましい。
【0034】
プロアントシアニジン、特にOPCは、上述のように抗酸化物質であるため、ガン・心臓病・脳血栓などの成人病の危険率を低下する効果、関節炎・アトピー性皮膚炎・花粉症などのアレルギー体質の改善効果などを有することが知られている。
【0035】
さらにOPCは、抗酸化作用のほか、口腔内のバクテリア増殖を抑制してプラーク(歯こう)を減少させる効果、血管の弾力性を回復させる効果、肌質を改善させる効果、コラーゲンの増強効果、高脂血症改善効果、血液中でのリポたんぱくが活性酸素によりダメージを受けるのを防止して、損傷した脂肪が血管の内壁に凝集し、コレステロールが付着することを防止する効果、活性酸素によって分解されたビタミンEを再生させる効果、ビタミンEの増強剤としての効果などを有することが知られている。この中でも、血管の弾力性を回復させる効果により血流が改善され得る。さらにコラーゲンの増強効果との相乗作用によって、肌質も改善され得る。
【0036】
本発明の食品組成物は、プロアントシアニジンを、好ましくは組成物中に乾燥重量換算で0.00001重量%〜50重量%、より好ましくは0.001重量%〜40重量%、さらに好ましくは0.01重量%〜20重量%含有する。
【0037】
本発明の食品組成物のもう一つの必須成分は、タンパク質を分解して得られる平均分子量が7,000以下のペプチド(本明細書において、タンパク質分解ペプチドという)である。タンパク質分解ペプチドは、有機合成によって得られたペプチドであってもよい。タンパク質分解ペプチドとしては、各種の動植物性タンパク質を酸、アルカリ、または酵素を用いて分解したものであれば特に限定されるものではない。原料となるタンパク質としては、例えば、牛、豚、鶏などの畜肉類、魚類、獣乳、卵などに由来する動物性タンパク質;例えば、大豆、小麦、トウモロコシ、えんどう豆などに由来する植物性タンパク質が挙げられる。特に、原料タンパク質としてはコラーゲンが好ましく、そしてタンパク質分解ペプチドとしては、その分解物であるコラーゲンペプチドが最も好ましい。
【0038】
コラーゲンは、動物の結合組織を構成する主要タンパク質であり、骨、腱、皮膚、血管壁などに多く含まれる。分子内に1または複数の3重らせん構造を有し、構成するポリペプチド鎖のアミノ酸配列が異なる種々のタイプが存在する。コラーゲンの変性物であるゼラチンは、コラーゲンを含む原料を温(熱)水抽出することにより得られる分子量30万から数万程度の水溶性タンパク質であり、アルカリ処理ゼラチン(等電点4.8〜5.3)と酸処理ゼラチン(等電点7〜9)とがある。
【0039】
コラーゲンまたはゼラチンからのコラーゲンペプチドの具体的な調製方法を、以下に説明する。まず、牛、豚などの皮または骨を、アルカリ溶液に2〜3ヶ月浸漬するアルカリ処理または希塩酸などに短期間浸漬する酸処理を施して、原料に含まれる不純物を除去し、かつ抽出を容易にするための前処理を行う。例えば、原料が牛骨である場合は、骨の中にリン酸カルシウムなどの無機質が含まれているため、予め希塩酸に漬けて無機質を除去し、これを温(熱)水抽出することによりゼラチンを得る。温(熱)水抽出は、一般には、最初の抽出温度は50〜60℃で、2回目以降は抽出温度を徐々に上げ、最終的には煮沸させる。次いで、得られたゼラチンを、通常用いられる酸あるいは酵素で加水分解することにより、コラーゲンペプチドを得ることができる。
【0040】
こうして得られたコラーゲンペプチドは、平均分子量が約7,000以下、好ましくは約6,000以下である。このような分子量を有するコラーゲンペプチドのうち、OPCとともに溶液中で安定に溶解し、そしてタンパク質の沈殿を防止するという効果を得るためには、分子量が約200以上、好ましくは約3,000以上、より好ましくは約5,000以上のペプチドを用いる。平均分子量が7,000より大きくなると、高分子のプロアントシアニジン(10〜30量体)が結合し、沈殿や懸濁を生じやすくなる。
【0041】
このような分子量のコラーゲンペプチドは、市販のものを容易に入手することができる。例えば、動物性コラーゲン由来のコラーゲンペプチドとしては、ニッピペプタイドPBF、ニッピペプタイドPRA(いずれも(株)ニッピ製)、SCP−5000、SCP−3100(いずれも新田ゼラチン(株)製)、コラーゲンペプチドDS(協和ハイフーズ株式会社製)、ファルコニックスCTP(一丸ファルコス株式会社製)などが挙げられる。このような動物由来のコラーゲンペプチド以外では、動物性コラーゲンとアミノ酸組成が類似しているものが好ましく、例えば、コラーゲン類似ペプチドとして、ニンジン(Daucus carota L.)由来ペプチドが挙げられる。
【0042】
本発明の食品組成物は、タンパク質分解ペプチド、好ましくはコラーゲンペプチドを、組成物中に乾燥重量換算で好ましくは0.00001重量%〜90重量%、より好ましくは0.0001重量%〜50重量%含有する。
【0043】
本発明の食品組成物には、上記プロアントシアニジンおよびタンパク質分解ペプチド以外に、医薬部外品、化粧料などに通常使用される他の成分を、該組成物の効果を損なわない範囲で含有してもよい。このような成分としては、例えば、水、他の薬効成分、他の油剤、保湿剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、吸収促進剤、香料、色素、保存剤、増粘剤、キレート剤、防腐防黴剤などを挙げることができる。ここで、他の薬効成分としては、活性酸素除去剤、抗酸化剤、消炎鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、止痒剤、殺菌剤、ビタミン剤、ホルモン剤などが挙げられる。
【0044】
また、プロアントシアニジンの安定性を高める目的で、酸化防止剤を添加しても良い。これにより、体内のタンパク質や脂質の酸化を防止し、肌質を改善および保護する効果を得ることができる。
【0045】
酸化防止剤としては、ビタミンAなどのカロテノイド類、ビタミンB類、アスコルビン酸、ビタミンE、これらの誘導体またはこれらの塩、L−システインおよびこれらの誘導体やその塩、リボフラビン、SOD、マンニトール、トリプトファン、ヒスチジン、ケルセチン、没食子酸およびその誘導体、茶抽出物、およびグルタチオン酵母抽出物などの抽出物が挙げられる。
【0046】
この中でも、アスコルビン酸は、プロアントシアニジンの安定性を高めるだけでなく、肌へ相乗的に効果を発揮し、肌質の改善効果(例えば、ハリやツヤが良くなる効果)および血管保護効果も高める。アスコルビン酸を添加する場合は、プロアントシアニジンに対して、重量比で、好ましくは1:0.1〜50、より好ましくは1:0.2〜20となるように、本発明の食品組成物に含有され得る。なお、アスコルビン酸の量は、上記比より多くてもかまわない。
【0047】
本発明の食品組成物は、通常用いられる方法により、プロアントシアニジンおよびタンパク質分解ペプチドと他の成分とを混合して調製することができ、錠剤、粉末、液体の形態で、飲料などの食品として使用できる。
【0048】
例えば、本発明の食品組成物は、、必要に応じて、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などの添加剤と混合され得る。例えば、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、卵殻カルシウムなどのカルシウム、キトサン、レシチン、クロレラ末、アシタバ末、モロヘイヤ末などの栄養成分としての食品添加物;ステビア末、抹茶パウダー、レモンパウダー、はちみつ、還元麦芽糖、乳糖、糖液などの調味料が混合され得る。そしてこれらは、ハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤、錠剤、もしくは丸剤などに、あるいは粉末状、顆粒状、茶状、ティーバッグ状、飴状、液体、ペースト状などの形態に成形され得る。これらは、形状または好みに応じて、そのまま飲食してもよく、あるいは水、湯、牛乳などに溶いて飲んでも良い。
【0049】
本発明の食品組成物の一日の摂取量は、特に限定されず、好ましくは、プロアントシアニジンとして0.02g〜1gの範囲内である。この範囲内のプロアントシアニジンに対して適切なタンパク質分解ペプチドの量は、好ましくは0.04g〜0.5gである。
【0050】
本発明の食品組成物は、適切な量を摂取した場合、肌質の改善効果および血流改善効果を有する。特に、OPCが乾燥重量換算で20重量%以上含有される抽出物をプロアントシアニジンとして用いた場合、特に優れた効果が得られる。このように、本発明の食品組成物は、健康食品として利用され得る。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明がこの実施例により制限されないことはいうまでもない。
【0052】
(プロアントシアニジンの調製)
松樹皮抽出物(2〜4量体:40重量%、5量体以上:8.7重量%、カテキン:5.1重量%、商標名:フラバンジェノール、株式会社東洋新薬)20gを、Sephadex LH−20(ファルマシアバイオテク株式会社製)に供して分離し、乾燥粉末重量で7.6gの2〜4量体および1.6gの5量体以上のプロアントシアニジンを回収した。得られた5量体以上のプロアントシアニジン1gを、上記の松樹皮抽出物の粉末2gと混合し、5量体以上のプロアントシアニジンを多く含む松樹皮抽出物(2〜4量体:27重量%、5量体以上:39重量%、カテキン1.7重量%)を調製した。これらの松樹皮抽出物を、最終濃度が0.2重量%となるように水溶液へ溶解した。
【0053】
なお、Sephadex LH−20による分離は、以下の条件で2回行った。まず、水で膨潤させたSephadex LH−20をカラム体積で500mLとなるように50×500mmのカラムに充填し、500mLのエタノールで洗浄した。上記松樹皮抽出物10gを200mLのエタノールに溶解し、これをカラムに通液して吸着させた後、100〜80%(v/v)エタノール−水混合溶媒でグラジエント溶出し、100mLずつ分取した。各画分について、シリカゲルクロマトグラフィー(TLC)により、2〜4量体のOPCの各標品(2量体:プロアントシアニジンB−2(Rf値:0.6)、3量体:プロアントシアニジンC−1(Rf値:0.4)、4量体:シンナムタンニンA2(Rf値:0.2))を指標として、OPCの溶出を検出した。TLCの条件は、以下のとおりである:
TLC:シリカゲルプレート(Merck & Co., Inc.製)
展開溶媒:ベンゼン/ギ酸エチル/ギ酸(2/7/1)
検出試薬:硫酸およびアニスアルデヒド硫酸
サンプル量:各10μL
【0054】
OPCが検出された画分を集め、凍結乾燥して粉末を得た。次いで、OPCが検出されなくなったカラムに、50%(v/v)水−アセトン混合溶媒1000mLを通液し、5量体以上のプロアントシアニジンを溶出させ、回収した画分を凍結乾燥させて粉末を得た。
【0055】
(コラーゲンおよびコラーゲンペプチドの調製)
コラーゲン(平均分子量30万:株式会社高研製)、ニッピペプタイドPA−100(平均分子量10,000:株式会社ニッピ製)、コラーゲンペプチドDS(平均分子量7,000:協和ハイフーズ社製)、SCP−5000(平均分子量5,000:新田ゼラチン株式会社製)、ファルコニックスCTP(平均分子量3,000:一丸ファルコス株式会社製)、ニッピペプタイドPA−10(平均分子量1,000:株式会社ニッピ製)、およびグリシン(分子量75:和光純薬工業株式会社製)を用いて、これらのコラーゲン、コラーゲンペプチド、またはアミノ酸が10.0重量%となるように水溶液を各10mLずつ調製した。
【0056】
(実施例1:凝集沈殿評価)
上記のように調製したコラーゲン、コラーゲンペプチド、またはアミノ酸溶液各1mLに、上記プロアントシアニジン溶液1mLを混合し、1週間室温で放置し、1週間後に沈殿および懸濁の有無を目視により観察した。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1からわかるように、5量体以上のプロアントシアニジンと分子量のコラーゲンペプチドまたはコラーゲンとの混合液では、いずれも懸濁または沈殿が観察された。これに対して、2〜4量体のプロアントシアニジンと分子量7,000以下のコラーゲンペプチドまたはアミノ酸との混合液では、ほとんど懸濁が見られなかった。2〜4量体の割合が多いプロアントシアニジンを含む松樹皮抽出物では沈殿が見られなかった。また、平均分子量300,000のコラーゲンを用いた場合は、ゲル化した固形分が析出した。このように、2〜4量体のプロアントシアニジン(OPC)またはプロアントシアニジンとしてOPCを多く含む松樹脂抽出物は、分子量7,000以下のコラーゲンペプチドと懸濁または沈殿を生じず、混合物溶液として安定であることがわかった。
【0059】
(実施例2:皮膚改善効果)
上記松樹皮抽出物の最終濃度が0.2重量%およびコラーゲンペプチドの最終濃度が5重量%となるように、表2に記載の組み合わせで水溶液を調製し、滅菌のために0.45μmフィルターで濾過して、飲料1〜3を得た。なお、濾過前の飲料3は、やや懸濁が見られた。
【0060】
【表2】
【0061】
3週齢のモルモット(日本エスエルシー株式会社)に、一般の固形飼料(RC4;オリエンタル酵母株式会社)を与えて1週間馴化させた後、総無作為化法により1群5匹ずつ4群に割り振った。各群のモルモットに、上記のように調製した飲料1〜3を、1日当たり1mL、ゾンデを用いて28日間強制経口投与した。対照として、精製水を投与した群を設けた。試験期間中、飼料および水は自由摂取させた。最終投与終了後に、被験動物の背部皮膚中央部を剥離摘出し(3cm×3cm)、60℃にて一晩乾燥させた。乾燥させた皮膚を破砕し、その50mgを5mLの6M塩酸に添加し、ヒーティングブロックを用いて110℃にて24時間加熱して加水分解した。次いで、この加水分解物について、クロラミンT法により、ヒドロキシプロリン(Hyp)含量を測定した。Hypは、コラーゲンに多く含まれており、Hyp含量が高ければ、コラーゲンが生成されていることを示す指標となる。結果を図1に示す。
【0062】
図1からわかるように、飲料1〜3を投与した群の方が、わずかではあるがHyp量が多かった。このことは、投与群の方が、皮膚中のコラーゲン量が多く、皮膚に新陳代謝が促進されたと思われる。
【0063】
(実施例3:血流改善効果)
20〜50歳の健常人を1群20人の4群にランダムに割り振った。まず、摂取前に血流量を測定し、次いで、被験者に上記飲料1〜3または水を200mL摂取させ、摂取後1時間後に再度血流量を測定した。血流量は、血流計(レーザー血流画像化装置PIM II;Sweden Permied社)を用いて右前腕部の皮下の血流量を測定した。結果を表3に示す。表の値は、平均値±標準誤差であり、数値が大きいほど、血流量が多いことを示す。
【0064】
【表3】
【0065】
表3に示すように、飲料1〜3はいずれも、血流量が増加しており、血流改善効果が見られた。また、飲料1および2の方が、飲料3よりも血流量が多くなっていることから、凝集沈殿や懸濁によってプロアントシアニジンの効果が相殺されることなく十分に発揮されていることがわかる。
【0066】
【発明の効果】
本発明の食品組成物は、プロアントシアニジンとタンパク質分解ペプチドとの凝集沈殿が生じにくいため、それぞれの有する作用・効果が損なわれることなく発揮され得る。そのため、例えば、プロアントシアニジンおよびコラーゲンに由来する肌質の改善効果や血流改善効果が、従来のものよりも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】各飲料を投与した群のモルモットにおける、皮膚のHyp量を示すグラフである。
Claims (3)
- プロアントシアニジンおよび平均分子量7,000以下のタンパク質分解ペプチドを含有する、食品組成物であって、該プロアントシアニジンが2〜4量体のプロアントシアニジンを含有する、食品組成物。
- 前記プロアントシアニジンが、5量体以上のプロアントシアニジン1重量部に対し、2〜4量体のプロアントシアニジンを1重量部以上の割合で含有する、請求項1に記載の食品組成物。
- 前記ペプチドがコラーゲン由来のペプチドである、請求項1または2に記載の食品組成物。
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