JP2004345166A - インクジェットプリンタのヘッド回復装置および方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】小型のインク吸引ポンプを用いて、インクジェットヘッド内の気泡を確実に排出できるヘッド回復動作を行い得るようにすること。
【解決手段】インクジェットプリンタ1のヘッド回復装置20は、ノズルキャップ7とインク吸引ポンプ8を繋ぐインク通路11に負圧室12が接続されている。切り替え弁13により負圧室12とインク吸引ポンプ8のみを連通してインク吸引ポンプ8により負圧室12に負圧を蓄積する。次に、ノズルキャップ7を介して、インク吸引ポンプ8のインク吸引力と負圧室12の負圧力によってインクノズル45からインクを吸引することで、気泡を確実の排出させる。負圧室12に回収されたインクは、負圧室12を大気開放状態にしてインク吸引ポンプ8により吸引することで、廃インク回収部9に回収する。
【選択図】 図5
【解決手段】インクジェットプリンタ1のヘッド回復装置20は、ノズルキャップ7とインク吸引ポンプ8を繋ぐインク通路11に負圧室12が接続されている。切り替え弁13により負圧室12とインク吸引ポンプ8のみを連通してインク吸引ポンプ8により負圧室12に負圧を蓄積する。次に、ノズルキャップ7を介して、インク吸引ポンプ8のインク吸引力と負圧室12の負圧力によってインクノズル45からインクを吸引することで、気泡を確実の排出させる。負圧室12に回収されたインクは、負圧室12を大気開放状態にしてインク吸引ポンプ8により吸引することで、廃インク回収部9に回収する。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットヘッドにおける各インクノズルからインクを吸引することにより、粘度の増加したインクに起因するインクノズルの目詰まりや、インクノズル内に侵入した気泡によるインク液滴の吐出不良などを防止するインクジェットプリンタのヘッド回復装置および回復方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタのヘッド回復装置としては、インクジェットヘッドのインクノズルが配列されているノズル面をノズルキャップで覆い、この状態で、チューブポンプなどのインク吸引ポンプによって各インクノズルからインクを強制的に吸引する構成のものが広く用いられている。例えば、カラー印字用の各インクジェットヘッドからインクを吸引するパージ機構が下記の特許文献に開示されている。このパージ機構は、各インクジェットヘッドから吸い出した各色のインクが混色した状態で逆戻りしないように、インク吸引源と各インクジェットヘッドの間にチャンバを介在させ、各インクジェットヘッドから吸い出した各色のインクを上側からチャンバに流下させるようにしている。
【0003】
インクノズルからインクを吸引するヘッド回復動作においては、粘度の増加したインクと共にインクジェットヘッド内のインク通路に侵入している気泡も外部に排出する必要がある。インクジェットヘッド内のインク通路に滞留している気泡を排出するためには、インクノズルから所定以上の流速でインクを吸い出す必要がある。このためには、インクジェットヘッドに被せたノズルキャップ内の圧力が真空状態において、単位時間当たりにインクノズルから流出するインク体積に対して、インク吸引ポンプによるインク吸引量を大きくしなければならない。このように設定すると、ノズルキャップ内圧が真空状態に保持され、インクジェットヘッド内のインク通路に滞留している気泡を確実に排出できる。
【0004】
【特許文献】
特開平1−198356号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、インクジェットヘッドのノズル数が多い場合には、ヘッド回復動作時にインクノズルから流出するインク体積の総量も増加する。このため、多ノズルのインクジェットヘッドの回復動作を行うためには、インク吸引力の大きな大型のインク吸引ポンプをインクジェットプリンタに搭載する必要がある。しかしながら、これでは、インクジェットプリンタの大型化を招いてしまうので好ましくない。また、ヘッド回復動作においては、インクを真空引きした後は徐々に吸引力を弱めて、インクノズルのインクメニスカスを整える必要がある。従って、ヘッド回復動作に用いるインク吸引機構としては、小型で吸引力が充分に大きく、しかも、インク吸引圧力の微調整が可能なものが望ましい。
【0006】
本発明の課題は、寸法の増加を招くことなく大きなインク吸引力を発生可能なインクジェットプリンタのヘッド回復装置およびヘッド回復方法を提案することにある。
【0007】
また、本発明の課題は、ヘッド回復動作においてインクノルズのインクメニスカスを整えるためにインク吸引力を漸減させるのに適したインクジェットプリンタのヘッド回復装置およびヘッド回復方法を提案することにある。
【0008】
さらに、本発明の課題は、多ノズル型のインクジェットヘッドのようにヘッド回復時におけるインク流出量の多いインクジェットヘッドに適したインクジェットプリンタのヘッド回復装置およびヘッド回復方法を提案することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明のインクジェットプリンタのヘッド回復装置は、インク吸引ポンプと、負圧室と、インクジェットヘッドのインクノズル、前記インク吸引ポンプの吸引口、および前記負圧室の入口の間の連通関係を切り替える切り替え手段とを有し、前記切り替え手段は、前記の連通関係を、前記インク吸引ポンプの吸引口を前記負圧室の入口にのみ連通させた第1の連通状態と、前記インク吸引ポンプの吸引口と前記負圧室の入口を前記インクノズルに連通させた第2の連通状態とに切り替え可能であることを特徴としている。
【0010】
本発明のヘッド回復装置では、第1の連通状態でインク吸引ポンプを吸引することにより、負圧室内に負圧を蓄積することができる。負圧が蓄積された後に、第2の連通状態に切り替えると、インク吸引ポンプの吸引力と負圧室の負圧力とによってインクノズルからインクが吸引される。よって、インク吸引ポンプのインク吸引力を高めることなく、インク吸引ポンプの能力よりも大きなインク吸引力でインクを吸引できる。したがって、小型のインク吸引ポンプを用いることができる。また、インクの吸引に伴って負圧室の負圧力が低下するので、インク吸引力が全体として漸減して、インクノズルのインクメニスカスが整えられる。
【0011】
ここで、負圧室内に吸引されたインクを廃インクタンクなどに回収するためには、前記負圧室に大気開放弁を配置し、前記切り替え手段により、前記の連通関係を、前記インク吸引ポンプの吸引口を、前記大気開放弁によって大気開放された状態の前記負圧室にのみ連通させた第3の連通状態に切り替え可能にすればよい。この連通状態では、大気開放された負圧室がインク吸引ポンプによって吸引されるので、負圧室内に吸引されていたインクがインク吸引ポンプによって吸い出されて、廃インクタンクなどに回収される。
【0012】
また、前記切り替え手段により、前記の連通関係を、前記インクノズルを前記インク吸引ポンプの吸引口にのみ連通させた第4の連通状態に切り替え可能とすることが望ましい。
【0013】
上記にようにインク吸引ポンプと負圧室の負圧力を併用した場合には大きな吸引力によりインクノズルが吸引されるので、かかるヘッド回復動作は、インクジェットヘッド内に新たにインクを充填する場合や、気泡がインクジェットヘッド内に侵入し易いインクカートリッジ交換時や、長期間不使用状態のインクジェットヘッドの回復時に適している。しかるに、インクノズルに滞留している粘度の増加したインクのみを排出することなどを目的とするヘッド回復動作時には、インク吸引ポンプのインク吸引力のみによりインクノズルを吸引すれば、不必要に多量のインクが無駄になってしまうことを回避できるので望ましい。
【0014】
ここで、前記切り替え手段として、前記インクジェットヘッドにおける前記インクノズルが形成されているノズル面をキャッピング可能なノズルキャップと、一端が前記ノズルキャップに連通し、他端側が前記インク吸引ポンプの吸引口および前記負圧室の入口に連通している連通路と、この連通路に介挿されている切り替え弁とを備えたものを採用できる。この場合、前記切り替え弁を切り替えることにより、前記第1ないし第4の連通状態が選択的に形成される。
【0015】
また、前記インク吸引ポンプとしてチューブポンプを採用することができる。
【0016】
次に、本発明のインクジェットプリンタのヘッド回復方法は、インク吸引ポンプを用いて負圧室を所定の負圧状態にする負圧蓄積工程と、前記インク吸引ポンプによる吸引力と、前記負圧室に蓄積した負圧を併用して、インクジェットヘッドのインクノズルからインクを吸引するインク吸引工程とを含むことを特徴としている。
【0017】
ここで、前記インク吸引工程の後に、前記負圧室を大気開放して、前記インク吸引ポンプにより当該負圧室に吸引されたインクを排出するインク排出工程を含んでいることが望ましい。
【0018】
また、前記インクノズルから前記インク吸引ポンプによる吸引力のみを用いてインクを吸引する第2のヘッド回復を含み、前記負圧蓄積工程、前記インク吸引工程および前記インク排出工程を含む第1のヘッド回復工程と、前記第2のインク吸引工程とを選択的に行うことが望ましい。
【0019】
一方、本発明のインクジェットプリンタは上記のヘッド回復装置を備えたことを特徴としている。また、本発明のインクジェットプリンタは上記のヘッド回復方法によりインクジェットヘッドの回復動作を行うことを特徴としている。
【0020】
本発明のインクジェットプリンタにおいては、小型のインク吸引ポンプを用いてヘッド回復動作を行うことができる。よって、特に、多ノズル型のインクジェットヘッドが搭載されている場合においても、装置の大型化を招くことなく、インクジェットヘッドの回復動作を適切に行うことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した静電式インクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタの実施の形態を説明する。
【0022】
(インクジェットプリンタの全体構成)
図1は本実施の形態に係る静電式インクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタを示す概略構成図である。
【0023】
本実施の形態に係るインクジェットプリンタ1は、記録紙2を主走査方向Yに向けて搬送するプラテン3と、このプラテン3にインクノズル面が対峙しているインクジェットヘッド4と、このインクジェットヘッド4を副走査方向Xに向けて往復移動させるためのキャリッジ5と、インクジェットヘッド4の各インクノズルにインクを供給するインクタンク6とを有している。プラテン3から副走査方向Xに外れた位置には、ノズルキャップ7が配置されており、このノズルキャップ7はインク吸引ポンプ8を介して廃インク回収部9に連通している。
【0024】
ノズルキャップ7とインク吸引ポンプ8を連通しているインク通路11には負圧室12が連通している。また、インク通路11には切り替え弁13が介挿されており、この切り替え弁13を切り替えることにより、ノズルキャップ7と、負圧室12と、インク吸引ポンプ8との間の連通関係が後述のように選択的に切り替わるようになっている。これら、ノズルキャップ7、インク吸引ポンプ8、インク通路11、負圧室12、切り替え弁13および廃インク回収部9はヘッド回復装置20の構成要素である。
【0025】
ここで、図2はインク吸引ポンプ8を示す概略構成図であり、図2(a)はその駆動状態を示し、図2(b)はその休止状態を示すものである。これらの図に示すように、本例のインク吸引ポンプ8はチューブポンプであり、上記のインク通路11の一部を形成しているインクチューブ81と、ローラ82と、レバー83と、回転板84と、ばね85とを備えている。インクチューブ81は少なくともローラ82によって押し潰される被押圧部分において可撓性を有しており、この被押圧部分がポンプケース86に形成した円弧ガイド面86aに沿って配置されている。
【0026】
レバー83には、ローラ支軸82aを回転および移動自在に支持するカム溝83aが形成されている。カム溝83aは、回転板84の円周方向に対して半径方向の内方に向けて傾斜しており、この傾斜に沿ってローラ支軸82aをガイドすると、ローラ82が半径方向に移動する。回転板84は、ポンプケース86に回転自在に取り付けられており、レバー支軸83bを介してレバー83を回動自在に支持している。レバー83は、ばね85によって外方に付勢されていると共に、その回動範囲がストッパ83cによって制限されている。また、回転板84の中心には、上方に突出するポンプ駆動軸84aが一体的に形成されている。
【0027】
この構成のインク吸引ポンプ8を駆動させる場合には、図2(a)に示すように、回転板84を正転方向(a方向)に回転させる。回転板84が正転方向に回転すると、カム溝83aの傾斜に沿ってローラ82が半径方向の外方に移動し、インクチューブ81が押圧される。この状態で回転板84が正転を続けると、ローラ82がインクチューブ81を押し潰しながら円弧ガイド面86aに沿って異動し、インクチューブ81内のインクが廃インク回収部9に向けて圧送される。
【0028】
インク吸引ポンプ8を休止させる場合には、図2(b)に示すように、回転板84を、一旦逆転方向(b方向)に回転させた後に、停止させる。回転板84が逆転方向に回転すると、カム溝83aの傾斜に沿ってローラ82が半径方向の内方に移動し、インクチューブ81の押圧が解除される。
【0029】
ここで、チューブポンプにおけるインク吸引能力は、インクチューブ81の内径と、インクチューブ81が円弧状に引き回されている円弧状ガイド面86aの内径と、ローラ82の移動速度によって規定される。ローラ82の移動速度には上限があるので、インク吸引能力を上げるためには、太いインクチューブ81を用いると共に、それが引き回される円弧状ガイド面86aを大きくする必要がある。よって、インク吸引能力を上げるには、大きなサイズのチューブポンプを用いる必要がある。
【0030】
なお、本例ではインク吸引ポンプ8としてチューブポンプを用いているが、これ以外のインク吸引ポンプ、例えばピストンポンプなどを用いることも可能である。
【0031】
次に、図3は、本例の静電式インクジェットヘッド4を示す概略構成図である。静電式インクジェットヘッド4は、半導体からなるキャビティ基板42、同じく半導体からなるノズル基板43、およびガラス製の電極基板44を積層することにより構成されている。ノズル基板43には複数のインクノズル45が形成されている。ノズル基板43とキャビティ基板42の間には、各インクノズル45に連通する独立したインク圧力室46が区画形成されており、各インク圧力室46は細いインクオリフィス47を介して単一の共通インク室48に連通している。共通インク室48には外部のインクタンク6(図1参照)から不図示のインク供給経路を介してインクが供給される。
【0032】
各インク圧力室46の底壁部分には面外方向に振動可能な振動板電極49が形成されており、各振動板電極49が共通電極として機能する。各振動板電極49に対峙している電極基板44の表面部分には凹部50がそれぞれ形成され、各凹部50の底面には、振動板電極49に所定の間隔で対峙している個別電極51が形成されている。各振動板電極49と、それぞれに対峙している個別電極51とにより静電アクチュエータが構成されている。
【0033】
この静電アクチュエータに駆動電圧パルスを印加することによって発生する静電気力を利用して、振動板電極49を振動させるようになっている。振動板電極49の振動によって、インク圧力室46の容積が増減し、これによってインク圧力室46内に発生するインク圧力の変動に基づき、インク圧力室46に連通しているインクノズル45からインク液滴52が吐出する。
【0034】
本例の静電式インクジェットヘッド4は、例えば、ノズル基板43に一列に形成された64個のインクノズル45を備えており、これら64個のインクノズル45から選択的にインク液滴を吐出させることにより、所望の文字や画像を印刷することが可能となっている。
【0035】
なお、図示の静電式インクジェットヘッド4は、ノズル基板43の上面に設けたインクノズルからインク液滴を吐出させるフェイスエジェクトタイプであるが、本発明の制御対象となる静電式インクジェットヘッドは、インク液滴を基板の端部に設けたインクノズルから吐出させるエッジエジェクトタイプでもよい。
【0036】
(ヘッド回復装置)
図4はインクジェットプリンタ1に搭載されているヘッド回復装置20の主要部分を取り出して示す概略構成図であり、図5はその動作状態を示すための説明図である。ヘッド回復装置20は、前述のように、ノズルキャップ7、インク吸引ポンプ8、インク通路11、負圧室12および切り替え弁13を備えている。また、インクジェットプリンタ1の駆動制御装置の一部として構成される制御装置21を備えており、この制御装置21は、ドライバ22を介してインク吸引ポンプ8の駆動モータ23を駆動制御し、ドライバ24を介して切り替え弁13を切り替え制御する。さらに、負圧室12に取り付けられている大気開放弁25の開閉をドライバ26を介して制御する。
【0037】
ここで、ノズルキャップ7の内部7aと、インク吸引ポンプ8の吸引口8aを連通しているインク通路11には負圧室12の入口12aが連通している。切り替え弁13の弁体13aの位置を切り替えることにより、次の第1〜第4の連通状態を選択的に形成可能となっている。
第1の連通状態:インク吸引ポンプ8の吸引口8aが密閉状態にある負圧室12の入口12aにのみ連通した連通状態(図5(a)の状態)
第2の連通状態:ノズルキャップ7の内部7aがインク吸引ポンプ8の吸引口8aおよび負圧室12の入口12aに連通した連通状態(図5(b)の状態)
第3の連通状態:インク吸引ポンプ8のインク吸引口8aが大気開放状態にある負圧室12の入口12aに連通した第3の連通状態(図5(c)の状態)
第4の連通状態:ノズルキャップ7の内部7aがインク吸引ポンプ8の吸引口8aにのみ連通した連通状態(図4の状態)
【0038】
(ヘッド回復動作)
次に、この構成のヘッド回復装置20によるヘッド回復動作を説明する。まず、インクタンク6からインクジェットヘッド4にインクを充填する場合や、インクジェットヘッド4の内部、例えばインク圧力室46に滞留している気泡などを確実に排出する場合には、図5(a)〜(c)に示す第1のヘッド回復工程による強力なヘッド回復動作を行う。
【0039】
このヘッド回復動作においては、図5(a)に示すように、ノズルキャップ7に対峙する位置までインクジェットヘッド4を移動し、そのノズル面4aにノズルキャップ7を被せて、ノズル面4aを覆う密閉空間(7a)を形成する。次に、切り替え弁13を第1の連通状態に切り替える。この状態ではインク吸引ポンプ8の吸引口8aが、大気開放弁25が封鎖されて密閉状態にある負圧室12の入口12aにのみ連通する。この状態で、インク吸引ポンプ8を一定時間駆動すると、負圧室12に負圧が蓄積された状態が形成される(負圧蓄積工程)。
【0040】
図6はインクポンプ8の駆動時間tに対するインク通路の圧力変化を示すグラフである。このグラフの実線Aで示すように、負圧室12が減圧されてノズルキャップ7の内部7aが真空状態になる。
【0041】
ノズルキャップの内部7aが真空状態になった後の時点t1で、図5(b)に示すように、負圧室12の大気開放弁25を閉じ状態のままで、切り替え弁13を第2の連通状態に切り替えて、ノズルキャップ7の内部7aを、インク吸引ポンプ8の吸引口8aおよび負圧室12の入口12aに連通させる。この結果、インクノズルからインクの吸引が行われる(インク吸引工程)。
【0042】
この場合、インク吸引ポンプ8によるインク吸引力と共に、負圧室12に蓄積された負圧によってインクが吸引される。各インクノズル45から吸い出されたインクは、インク通路11を介してインク吸引ポンプ8および負圧室12に吸引される。インク吸引ポンプ8に吸引されたインクは廃インク回収部9に回収される。
【0043】
ここで、図6のグラフでは、インクジェットヘッド4内から気泡を排出するために必要なインク流出速度が得られる真空度を一点鎖線Lで示し、インク吸引ポンプ8のみにより形成される真空度を破線Bで示してある。本例のインク吸引ポンプ8のインク吸引能力では、気泡を排出するのに充分な真空度が得られない。しかしながら、負圧室12の負圧力が加算されるので、気泡を排出可能な充分に高い真空度を形成でき、したがって、インクノズル45からインクジェットヘッド4内の気泡を確実に排出できる。
【0044】
この後(図6の時点t2以後)は、切り替え弁13を切り替えて図5(c)に示す第3の連通状態を形成すると共に、大気開放弁25を開き、負圧室12を大気開放する。この状態でインク供給ポンプ8が駆動すると、負圧室12に回収されているインクがインク吸引ポンプ8によって吸引されて廃インク回収部9に回収される(インク回収工程)。
【0045】
次に、インクノズル45に滞留している粘度の増加したインクのみを吸引する場合などにおいては、図4に示す第4の連通状態が形成され、第2のヘッド回復工程による弱いヘッド回復動作が行われる。この場合には、切り替え弁13を切り替えることにより、ノズルキャップ7の内部がインク吸引ポンプ8の吸引口8aにのみ連通した状態になる。この状態でインク吸引ポンプ8を所定期間だけ駆動する。図6において破線Bで示すように、ノズルキャップ7の内部は気泡を排出するのに充分な真空状態にはならない。しかし、インクジェットヘッド4へのインク充填時や、インクタンク6としてインクカートリッジを用いている場合におけるその交換時などのように、気泡がインクジェットヘッド4の内部に侵入する可能性のある場合以外においては、無駄に消費されるインク量を抑制するために、弱いヘッド回復動作を行うことが適している。
【0046】
このように、本例のインクジェットプリンタ1においては、負圧室12を配置し、インクジェットヘッド4の内部から気泡を確実に排出する場合には、負圧室12に負圧を蓄積し、しかる後に、インク吸引ポンプ8によるインク吸引力と負圧室12に蓄積された負圧力とによってインクノズル45からインクを吸引するようになっている。したがって、インク吸引ポンプ8が、気泡を排出させるには不十分なインク吸引能力の小型のものであっても、インクジェットヘッド内部から確実に気泡を排出できる。
【0047】
特に、本例の場合には、インク吸引ポンプ8としてチューブポンプを用いており、高いインク吸引能力を備えたチューブポンプは一般にサイズが大きく、その設置スペースを確保するために、インクジェットプリンタの大型化を招くことになる。しかるに、本例によれば、チューブポンプをサイズアップすることなく、インクジェットヘッド内から気泡を排出できる。よって、多ノズル型のインクジェットヘッドのように、インクノズルからのインク流出量の多い場合などにおいて、小型のチューブポンプを用いてインクジェットヘッド内部から気泡を排出可能な流速でインクを吸引することができる。したがって、ヘッド回復装置の小型化、ひいてはインクジェットプリンタの小型化に極めて有利である。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のインクジェットプリンタのヘッド回復装置およびヘッド回復方法では、負圧室に負圧を蓄積し、負圧室の負圧力とインク吸引ポンプのインク吸引力とによってインクノズルからインクを吸引するようにしている。したがって、インク吸引能力の低い小型のインク吸引ポンプを用いて、インクジェットヘッド内部から気泡を確実に排出可能なヘッド回復動作を実現できる。よって、ヘッド回復装置の小型化、インクジェットプリンタの小型化に極めて有効である。
【0049】
また、負圧室に蓄積された負圧はインク吸引に伴って漸減していくので、インクノズルのインクメニスカスが整えられた状態でインク吸引動作を終了できる。よって、インク吸引ポンプのインク吸引力を微妙に調整してインクメニスカスを静定させる必要がない。したがって、ヘッド回復動作におけるインク吸引ポンプの制御が簡単になるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】図1のインクジェットプリンタにおけるインク吸引ポンプを示す概略構成図である。
【図3】図1のインクジェットプリンタにおけるインクジェットヘッドを示す断面図である。
【図4】図1のインクジェットプリンタにおけるヘッド回復装置を示す概略構成図である。
【図5】図1のインクジェットプリンタにおけるヘッド回復装置による第1のヘッド回復動作を示す説明図である。
【図6】図1のインクジェットプリンタにおけるヘッド回復装置によるノズルキャップ内の圧力変動を示すグラフである。
【符号の説明】
1 インクジェットプリンタ、4 インクジェットヘッド、6 インクタンク、7 ノズルキャップ、8 インク吸引ポンプ、8a 吸引口、9 インク回収部、11 インク通路、12 負圧室、12a 入口、13 切り替え弁、21 制御装置、25 大気開放弁
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットヘッドにおける各インクノズルからインクを吸引することにより、粘度の増加したインクに起因するインクノズルの目詰まりや、インクノズル内に侵入した気泡によるインク液滴の吐出不良などを防止するインクジェットプリンタのヘッド回復装置および回復方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタのヘッド回復装置としては、インクジェットヘッドのインクノズルが配列されているノズル面をノズルキャップで覆い、この状態で、チューブポンプなどのインク吸引ポンプによって各インクノズルからインクを強制的に吸引する構成のものが広く用いられている。例えば、カラー印字用の各インクジェットヘッドからインクを吸引するパージ機構が下記の特許文献に開示されている。このパージ機構は、各インクジェットヘッドから吸い出した各色のインクが混色した状態で逆戻りしないように、インク吸引源と各インクジェットヘッドの間にチャンバを介在させ、各インクジェットヘッドから吸い出した各色のインクを上側からチャンバに流下させるようにしている。
【0003】
インクノズルからインクを吸引するヘッド回復動作においては、粘度の増加したインクと共にインクジェットヘッド内のインク通路に侵入している気泡も外部に排出する必要がある。インクジェットヘッド内のインク通路に滞留している気泡を排出するためには、インクノズルから所定以上の流速でインクを吸い出す必要がある。このためには、インクジェットヘッドに被せたノズルキャップ内の圧力が真空状態において、単位時間当たりにインクノズルから流出するインク体積に対して、インク吸引ポンプによるインク吸引量を大きくしなければならない。このように設定すると、ノズルキャップ内圧が真空状態に保持され、インクジェットヘッド内のインク通路に滞留している気泡を確実に排出できる。
【0004】
【特許文献】
特開平1−198356号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、インクジェットヘッドのノズル数が多い場合には、ヘッド回復動作時にインクノズルから流出するインク体積の総量も増加する。このため、多ノズルのインクジェットヘッドの回復動作を行うためには、インク吸引力の大きな大型のインク吸引ポンプをインクジェットプリンタに搭載する必要がある。しかしながら、これでは、インクジェットプリンタの大型化を招いてしまうので好ましくない。また、ヘッド回復動作においては、インクを真空引きした後は徐々に吸引力を弱めて、インクノズルのインクメニスカスを整える必要がある。従って、ヘッド回復動作に用いるインク吸引機構としては、小型で吸引力が充分に大きく、しかも、インク吸引圧力の微調整が可能なものが望ましい。
【0006】
本発明の課題は、寸法の増加を招くことなく大きなインク吸引力を発生可能なインクジェットプリンタのヘッド回復装置およびヘッド回復方法を提案することにある。
【0007】
また、本発明の課題は、ヘッド回復動作においてインクノルズのインクメニスカスを整えるためにインク吸引力を漸減させるのに適したインクジェットプリンタのヘッド回復装置およびヘッド回復方法を提案することにある。
【0008】
さらに、本発明の課題は、多ノズル型のインクジェットヘッドのようにヘッド回復時におけるインク流出量の多いインクジェットヘッドに適したインクジェットプリンタのヘッド回復装置およびヘッド回復方法を提案することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明のインクジェットプリンタのヘッド回復装置は、インク吸引ポンプと、負圧室と、インクジェットヘッドのインクノズル、前記インク吸引ポンプの吸引口、および前記負圧室の入口の間の連通関係を切り替える切り替え手段とを有し、前記切り替え手段は、前記の連通関係を、前記インク吸引ポンプの吸引口を前記負圧室の入口にのみ連通させた第1の連通状態と、前記インク吸引ポンプの吸引口と前記負圧室の入口を前記インクノズルに連通させた第2の連通状態とに切り替え可能であることを特徴としている。
【0010】
本発明のヘッド回復装置では、第1の連通状態でインク吸引ポンプを吸引することにより、負圧室内に負圧を蓄積することができる。負圧が蓄積された後に、第2の連通状態に切り替えると、インク吸引ポンプの吸引力と負圧室の負圧力とによってインクノズルからインクが吸引される。よって、インク吸引ポンプのインク吸引力を高めることなく、インク吸引ポンプの能力よりも大きなインク吸引力でインクを吸引できる。したがって、小型のインク吸引ポンプを用いることができる。また、インクの吸引に伴って負圧室の負圧力が低下するので、インク吸引力が全体として漸減して、インクノズルのインクメニスカスが整えられる。
【0011】
ここで、負圧室内に吸引されたインクを廃インクタンクなどに回収するためには、前記負圧室に大気開放弁を配置し、前記切り替え手段により、前記の連通関係を、前記インク吸引ポンプの吸引口を、前記大気開放弁によって大気開放された状態の前記負圧室にのみ連通させた第3の連通状態に切り替え可能にすればよい。この連通状態では、大気開放された負圧室がインク吸引ポンプによって吸引されるので、負圧室内に吸引されていたインクがインク吸引ポンプによって吸い出されて、廃インクタンクなどに回収される。
【0012】
また、前記切り替え手段により、前記の連通関係を、前記インクノズルを前記インク吸引ポンプの吸引口にのみ連通させた第4の連通状態に切り替え可能とすることが望ましい。
【0013】
上記にようにインク吸引ポンプと負圧室の負圧力を併用した場合には大きな吸引力によりインクノズルが吸引されるので、かかるヘッド回復動作は、インクジェットヘッド内に新たにインクを充填する場合や、気泡がインクジェットヘッド内に侵入し易いインクカートリッジ交換時や、長期間不使用状態のインクジェットヘッドの回復時に適している。しかるに、インクノズルに滞留している粘度の増加したインクのみを排出することなどを目的とするヘッド回復動作時には、インク吸引ポンプのインク吸引力のみによりインクノズルを吸引すれば、不必要に多量のインクが無駄になってしまうことを回避できるので望ましい。
【0014】
ここで、前記切り替え手段として、前記インクジェットヘッドにおける前記インクノズルが形成されているノズル面をキャッピング可能なノズルキャップと、一端が前記ノズルキャップに連通し、他端側が前記インク吸引ポンプの吸引口および前記負圧室の入口に連通している連通路と、この連通路に介挿されている切り替え弁とを備えたものを採用できる。この場合、前記切り替え弁を切り替えることにより、前記第1ないし第4の連通状態が選択的に形成される。
【0015】
また、前記インク吸引ポンプとしてチューブポンプを採用することができる。
【0016】
次に、本発明のインクジェットプリンタのヘッド回復方法は、インク吸引ポンプを用いて負圧室を所定の負圧状態にする負圧蓄積工程と、前記インク吸引ポンプによる吸引力と、前記負圧室に蓄積した負圧を併用して、インクジェットヘッドのインクノズルからインクを吸引するインク吸引工程とを含むことを特徴としている。
【0017】
ここで、前記インク吸引工程の後に、前記負圧室を大気開放して、前記インク吸引ポンプにより当該負圧室に吸引されたインクを排出するインク排出工程を含んでいることが望ましい。
【0018】
また、前記インクノズルから前記インク吸引ポンプによる吸引力のみを用いてインクを吸引する第2のヘッド回復を含み、前記負圧蓄積工程、前記インク吸引工程および前記インク排出工程を含む第1のヘッド回復工程と、前記第2のインク吸引工程とを選択的に行うことが望ましい。
【0019】
一方、本発明のインクジェットプリンタは上記のヘッド回復装置を備えたことを特徴としている。また、本発明のインクジェットプリンタは上記のヘッド回復方法によりインクジェットヘッドの回復動作を行うことを特徴としている。
【0020】
本発明のインクジェットプリンタにおいては、小型のインク吸引ポンプを用いてヘッド回復動作を行うことができる。よって、特に、多ノズル型のインクジェットヘッドが搭載されている場合においても、装置の大型化を招くことなく、インクジェットヘッドの回復動作を適切に行うことができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した静電式インクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタの実施の形態を説明する。
【0022】
(インクジェットプリンタの全体構成)
図1は本実施の形態に係る静電式インクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタを示す概略構成図である。
【0023】
本実施の形態に係るインクジェットプリンタ1は、記録紙2を主走査方向Yに向けて搬送するプラテン3と、このプラテン3にインクノズル面が対峙しているインクジェットヘッド4と、このインクジェットヘッド4を副走査方向Xに向けて往復移動させるためのキャリッジ5と、インクジェットヘッド4の各インクノズルにインクを供給するインクタンク6とを有している。プラテン3から副走査方向Xに外れた位置には、ノズルキャップ7が配置されており、このノズルキャップ7はインク吸引ポンプ8を介して廃インク回収部9に連通している。
【0024】
ノズルキャップ7とインク吸引ポンプ8を連通しているインク通路11には負圧室12が連通している。また、インク通路11には切り替え弁13が介挿されており、この切り替え弁13を切り替えることにより、ノズルキャップ7と、負圧室12と、インク吸引ポンプ8との間の連通関係が後述のように選択的に切り替わるようになっている。これら、ノズルキャップ7、インク吸引ポンプ8、インク通路11、負圧室12、切り替え弁13および廃インク回収部9はヘッド回復装置20の構成要素である。
【0025】
ここで、図2はインク吸引ポンプ8を示す概略構成図であり、図2(a)はその駆動状態を示し、図2(b)はその休止状態を示すものである。これらの図に示すように、本例のインク吸引ポンプ8はチューブポンプであり、上記のインク通路11の一部を形成しているインクチューブ81と、ローラ82と、レバー83と、回転板84と、ばね85とを備えている。インクチューブ81は少なくともローラ82によって押し潰される被押圧部分において可撓性を有しており、この被押圧部分がポンプケース86に形成した円弧ガイド面86aに沿って配置されている。
【0026】
レバー83には、ローラ支軸82aを回転および移動自在に支持するカム溝83aが形成されている。カム溝83aは、回転板84の円周方向に対して半径方向の内方に向けて傾斜しており、この傾斜に沿ってローラ支軸82aをガイドすると、ローラ82が半径方向に移動する。回転板84は、ポンプケース86に回転自在に取り付けられており、レバー支軸83bを介してレバー83を回動自在に支持している。レバー83は、ばね85によって外方に付勢されていると共に、その回動範囲がストッパ83cによって制限されている。また、回転板84の中心には、上方に突出するポンプ駆動軸84aが一体的に形成されている。
【0027】
この構成のインク吸引ポンプ8を駆動させる場合には、図2(a)に示すように、回転板84を正転方向(a方向)に回転させる。回転板84が正転方向に回転すると、カム溝83aの傾斜に沿ってローラ82が半径方向の外方に移動し、インクチューブ81が押圧される。この状態で回転板84が正転を続けると、ローラ82がインクチューブ81を押し潰しながら円弧ガイド面86aに沿って異動し、インクチューブ81内のインクが廃インク回収部9に向けて圧送される。
【0028】
インク吸引ポンプ8を休止させる場合には、図2(b)に示すように、回転板84を、一旦逆転方向(b方向)に回転させた後に、停止させる。回転板84が逆転方向に回転すると、カム溝83aの傾斜に沿ってローラ82が半径方向の内方に移動し、インクチューブ81の押圧が解除される。
【0029】
ここで、チューブポンプにおけるインク吸引能力は、インクチューブ81の内径と、インクチューブ81が円弧状に引き回されている円弧状ガイド面86aの内径と、ローラ82の移動速度によって規定される。ローラ82の移動速度には上限があるので、インク吸引能力を上げるためには、太いインクチューブ81を用いると共に、それが引き回される円弧状ガイド面86aを大きくする必要がある。よって、インク吸引能力を上げるには、大きなサイズのチューブポンプを用いる必要がある。
【0030】
なお、本例ではインク吸引ポンプ8としてチューブポンプを用いているが、これ以外のインク吸引ポンプ、例えばピストンポンプなどを用いることも可能である。
【0031】
次に、図3は、本例の静電式インクジェットヘッド4を示す概略構成図である。静電式インクジェットヘッド4は、半導体からなるキャビティ基板42、同じく半導体からなるノズル基板43、およびガラス製の電極基板44を積層することにより構成されている。ノズル基板43には複数のインクノズル45が形成されている。ノズル基板43とキャビティ基板42の間には、各インクノズル45に連通する独立したインク圧力室46が区画形成されており、各インク圧力室46は細いインクオリフィス47を介して単一の共通インク室48に連通している。共通インク室48には外部のインクタンク6(図1参照)から不図示のインク供給経路を介してインクが供給される。
【0032】
各インク圧力室46の底壁部分には面外方向に振動可能な振動板電極49が形成されており、各振動板電極49が共通電極として機能する。各振動板電極49に対峙している電極基板44の表面部分には凹部50がそれぞれ形成され、各凹部50の底面には、振動板電極49に所定の間隔で対峙している個別電極51が形成されている。各振動板電極49と、それぞれに対峙している個別電極51とにより静電アクチュエータが構成されている。
【0033】
この静電アクチュエータに駆動電圧パルスを印加することによって発生する静電気力を利用して、振動板電極49を振動させるようになっている。振動板電極49の振動によって、インク圧力室46の容積が増減し、これによってインク圧力室46内に発生するインク圧力の変動に基づき、インク圧力室46に連通しているインクノズル45からインク液滴52が吐出する。
【0034】
本例の静電式インクジェットヘッド4は、例えば、ノズル基板43に一列に形成された64個のインクノズル45を備えており、これら64個のインクノズル45から選択的にインク液滴を吐出させることにより、所望の文字や画像を印刷することが可能となっている。
【0035】
なお、図示の静電式インクジェットヘッド4は、ノズル基板43の上面に設けたインクノズルからインク液滴を吐出させるフェイスエジェクトタイプであるが、本発明の制御対象となる静電式インクジェットヘッドは、インク液滴を基板の端部に設けたインクノズルから吐出させるエッジエジェクトタイプでもよい。
【0036】
(ヘッド回復装置)
図4はインクジェットプリンタ1に搭載されているヘッド回復装置20の主要部分を取り出して示す概略構成図であり、図5はその動作状態を示すための説明図である。ヘッド回復装置20は、前述のように、ノズルキャップ7、インク吸引ポンプ8、インク通路11、負圧室12および切り替え弁13を備えている。また、インクジェットプリンタ1の駆動制御装置の一部として構成される制御装置21を備えており、この制御装置21は、ドライバ22を介してインク吸引ポンプ8の駆動モータ23を駆動制御し、ドライバ24を介して切り替え弁13を切り替え制御する。さらに、負圧室12に取り付けられている大気開放弁25の開閉をドライバ26を介して制御する。
【0037】
ここで、ノズルキャップ7の内部7aと、インク吸引ポンプ8の吸引口8aを連通しているインク通路11には負圧室12の入口12aが連通している。切り替え弁13の弁体13aの位置を切り替えることにより、次の第1〜第4の連通状態を選択的に形成可能となっている。
第1の連通状態:インク吸引ポンプ8の吸引口8aが密閉状態にある負圧室12の入口12aにのみ連通した連通状態(図5(a)の状態)
第2の連通状態:ノズルキャップ7の内部7aがインク吸引ポンプ8の吸引口8aおよび負圧室12の入口12aに連通した連通状態(図5(b)の状態)
第3の連通状態:インク吸引ポンプ8のインク吸引口8aが大気開放状態にある負圧室12の入口12aに連通した第3の連通状態(図5(c)の状態)
第4の連通状態:ノズルキャップ7の内部7aがインク吸引ポンプ8の吸引口8aにのみ連通した連通状態(図4の状態)
【0038】
(ヘッド回復動作)
次に、この構成のヘッド回復装置20によるヘッド回復動作を説明する。まず、インクタンク6からインクジェットヘッド4にインクを充填する場合や、インクジェットヘッド4の内部、例えばインク圧力室46に滞留している気泡などを確実に排出する場合には、図5(a)〜(c)に示す第1のヘッド回復工程による強力なヘッド回復動作を行う。
【0039】
このヘッド回復動作においては、図5(a)に示すように、ノズルキャップ7に対峙する位置までインクジェットヘッド4を移動し、そのノズル面4aにノズルキャップ7を被せて、ノズル面4aを覆う密閉空間(7a)を形成する。次に、切り替え弁13を第1の連通状態に切り替える。この状態ではインク吸引ポンプ8の吸引口8aが、大気開放弁25が封鎖されて密閉状態にある負圧室12の入口12aにのみ連通する。この状態で、インク吸引ポンプ8を一定時間駆動すると、負圧室12に負圧が蓄積された状態が形成される(負圧蓄積工程)。
【0040】
図6はインクポンプ8の駆動時間tに対するインク通路の圧力変化を示すグラフである。このグラフの実線Aで示すように、負圧室12が減圧されてノズルキャップ7の内部7aが真空状態になる。
【0041】
ノズルキャップの内部7aが真空状態になった後の時点t1で、図5(b)に示すように、負圧室12の大気開放弁25を閉じ状態のままで、切り替え弁13を第2の連通状態に切り替えて、ノズルキャップ7の内部7aを、インク吸引ポンプ8の吸引口8aおよび負圧室12の入口12aに連通させる。この結果、インクノズルからインクの吸引が行われる(インク吸引工程)。
【0042】
この場合、インク吸引ポンプ8によるインク吸引力と共に、負圧室12に蓄積された負圧によってインクが吸引される。各インクノズル45から吸い出されたインクは、インク通路11を介してインク吸引ポンプ8および負圧室12に吸引される。インク吸引ポンプ8に吸引されたインクは廃インク回収部9に回収される。
【0043】
ここで、図6のグラフでは、インクジェットヘッド4内から気泡を排出するために必要なインク流出速度が得られる真空度を一点鎖線Lで示し、インク吸引ポンプ8のみにより形成される真空度を破線Bで示してある。本例のインク吸引ポンプ8のインク吸引能力では、気泡を排出するのに充分な真空度が得られない。しかしながら、負圧室12の負圧力が加算されるので、気泡を排出可能な充分に高い真空度を形成でき、したがって、インクノズル45からインクジェットヘッド4内の気泡を確実に排出できる。
【0044】
この後(図6の時点t2以後)は、切り替え弁13を切り替えて図5(c)に示す第3の連通状態を形成すると共に、大気開放弁25を開き、負圧室12を大気開放する。この状態でインク供給ポンプ8が駆動すると、負圧室12に回収されているインクがインク吸引ポンプ8によって吸引されて廃インク回収部9に回収される(インク回収工程)。
【0045】
次に、インクノズル45に滞留している粘度の増加したインクのみを吸引する場合などにおいては、図4に示す第4の連通状態が形成され、第2のヘッド回復工程による弱いヘッド回復動作が行われる。この場合には、切り替え弁13を切り替えることにより、ノズルキャップ7の内部がインク吸引ポンプ8の吸引口8aにのみ連通した状態になる。この状態でインク吸引ポンプ8を所定期間だけ駆動する。図6において破線Bで示すように、ノズルキャップ7の内部は気泡を排出するのに充分な真空状態にはならない。しかし、インクジェットヘッド4へのインク充填時や、インクタンク6としてインクカートリッジを用いている場合におけるその交換時などのように、気泡がインクジェットヘッド4の内部に侵入する可能性のある場合以外においては、無駄に消費されるインク量を抑制するために、弱いヘッド回復動作を行うことが適している。
【0046】
このように、本例のインクジェットプリンタ1においては、負圧室12を配置し、インクジェットヘッド4の内部から気泡を確実に排出する場合には、負圧室12に負圧を蓄積し、しかる後に、インク吸引ポンプ8によるインク吸引力と負圧室12に蓄積された負圧力とによってインクノズル45からインクを吸引するようになっている。したがって、インク吸引ポンプ8が、気泡を排出させるには不十分なインク吸引能力の小型のものであっても、インクジェットヘッド内部から確実に気泡を排出できる。
【0047】
特に、本例の場合には、インク吸引ポンプ8としてチューブポンプを用いており、高いインク吸引能力を備えたチューブポンプは一般にサイズが大きく、その設置スペースを確保するために、インクジェットプリンタの大型化を招くことになる。しかるに、本例によれば、チューブポンプをサイズアップすることなく、インクジェットヘッド内から気泡を排出できる。よって、多ノズル型のインクジェットヘッドのように、インクノズルからのインク流出量の多い場合などにおいて、小型のチューブポンプを用いてインクジェットヘッド内部から気泡を排出可能な流速でインクを吸引することができる。したがって、ヘッド回復装置の小型化、ひいてはインクジェットプリンタの小型化に極めて有利である。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のインクジェットプリンタのヘッド回復装置およびヘッド回復方法では、負圧室に負圧を蓄積し、負圧室の負圧力とインク吸引ポンプのインク吸引力とによってインクノズルからインクを吸引するようにしている。したがって、インク吸引能力の低い小型のインク吸引ポンプを用いて、インクジェットヘッド内部から気泡を確実に排出可能なヘッド回復動作を実現できる。よって、ヘッド回復装置の小型化、インクジェットプリンタの小型化に極めて有効である。
【0049】
また、負圧室に蓄積された負圧はインク吸引に伴って漸減していくので、インクノズルのインクメニスカスが整えられた状態でインク吸引動作を終了できる。よって、インク吸引ポンプのインク吸引力を微妙に調整してインクメニスカスを静定させる必要がない。したがって、ヘッド回復動作におけるインク吸引ポンプの制御が簡単になるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】図1のインクジェットプリンタにおけるインク吸引ポンプを示す概略構成図である。
【図3】図1のインクジェットプリンタにおけるインクジェットヘッドを示す断面図である。
【図4】図1のインクジェットプリンタにおけるヘッド回復装置を示す概略構成図である。
【図5】図1のインクジェットプリンタにおけるヘッド回復装置による第1のヘッド回復動作を示す説明図である。
【図6】図1のインクジェットプリンタにおけるヘッド回復装置によるノズルキャップ内の圧力変動を示すグラフである。
【符号の説明】
1 インクジェットプリンタ、4 インクジェットヘッド、6 インクタンク、7 ノズルキャップ、8 インク吸引ポンプ、8a 吸引口、9 インク回収部、11 インク通路、12 負圧室、12a 入口、13 切り替え弁、21 制御装置、25 大気開放弁
Claims (10)
- インク吸引ポンプと、
負圧室と、
インクジェットヘッドのインクノズル、前記インク吸引ポンプの吸引口、および前記負圧室の入口の間の連通関係を切り替える切り替え手段とを有し、
前記切り替え手段は、前記の連通関係を、前記インク吸引ポンプの吸引口を前記負圧室の入口にのみ連通させた第1の連通状態と、前記インク吸引ポンプの吸引口と前記負圧室の入口を前記インクノズルに連通させた第2の連通状態とに切り替え可能であるインクジェットプリンタのヘッド回復装置。 - 請求項1において、
前記負圧室は大気開放弁を備えており、
前記切り替え手段は、前記の連通関係を、前記インク吸引ポンプの吸引口を、前記大気開放弁によって大気開放された状態の前記負圧室にのみ連通させた第3の連通状態に切り替え可能であるインクジェットプリンタのヘッド回復装置。 - 請求項2において、
前記切り替え手段は、前記の連通関係を、前記インクノズルを前記インク吸引ポンプの吸引口にのみ連通させた第4の連通状態に切り替え可能であるインクジェットプリンタのヘッド回復装置。 - 請求項3において、
前記切り替え手段は、前記インクジェットヘッドにおける前記インクノズルが形成されているノズル面をキャッピング可能なノズルキャップと、一端が前記ノズルキャップに連通し、他端側が前記インク吸引ポンプの吸引口および前記負圧室の入口に連通している連通路と、この連通路に介挿されている切り替え弁とを備えており、
前記切り替え弁を切り替えることにより、前記第1ないし第4の連通状態が選択的に形成されるインクジェットプリンタのヘッド回復装置。 - 請求項4において、
前記インク吸引ポンプはチューブポンプであるインクジェットプリンタのヘッド回復装置。 - インク吸引ポンプを用いて負圧室を所定の負圧状態にする負圧蓄積工程と、
前記インク吸引ポンプによる吸引力と、前記負圧室に蓄積した負圧を併用して、インクジェットヘッドのインクノズルからインクを吸引するインク吸引工程と、
を含むインクジェットプリンタのヘッド回復方法。 - 請求項6において、
前記インク吸引工程の後に、前記負圧室を大気開放して、前記インク吸引ポンプにより当該負圧室に吸引されたインクを回収するインク回収工程を含むインクジェットプリンタのヘッド回復方法。 - 請求項7において、
前記インクノズルから前記インク吸引ポンプによる吸引力のみを用いてインクを吸引する第2のヘッド回復工程を含み、
前記負圧蓄積工程、前記インク吸引工程および前記インク排出工程を含む第1のヘッド回復工程と、前記第2のヘッド回復工程とを選択的に行うインクジェットプリンタのヘッド回復方法。 - 請求項1ないし5のうちのいずれかの項に記載のヘッド回復装置を備えたインクジェトプリンタ。
- 請求項6ないし8のうちのいずれかの項に記載のヘッド回復方法により前記インクジェットヘッドの回復動作を行うインクジェットプリンタ。
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