JP2004344123A - 外来遺伝子発現を促進するポリヌクレオチド - Google Patents

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Abstract

【課題】外来遺伝子の発現に対して高い転写活性を有し、かつ実効性に優れたサイズのポリヌクレオチドを提供する。
【解決手段】カイコ絹糸腺における外来タンパク質の発現を促進するために外来タンパク質構造遺伝子に連結されるポリヌクレオチドであって、絹タンパク質遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域を構成するポリヌクレオチド(A)と、特定配列の一定部位を含む塩基配列からなるポリヌクレオチド(B)が連結されているポリヌクレオチド。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、外来遺伝子の発現(転写活性)を促進するポリヌクレオチドに関するものである。さらに詳しくは、この発明は、例えばカイコによる有用組換えタンパク質の大量生産のために有用なポリヌクレオチドに関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
カイコは蛹になる直前に繭を作る。この繭の主成分はフィブロインやセリシンなどの絹タンパク質であり、カイコの絹糸腺と呼ばれる器官で合成される。絹糸腺は後部絹糸腺、中部絹糸腺および前部絹糸腺より構成され、後部絹糸腺ではフィブロインが、中部絹糸腺ではセリシンがそれぞれ特異的に合成・分泌される。フィブロインは、重鎖および軽鎖から構成される複合体であり、全絹タンパク質の約70%を占める。後部絹糸腺から分泌されたフィブロインは、絹糸腺の蠕動運動によって徐々に中部絹糸腺へと送られ、そこで分泌されたセリシンによって周りを被覆され、さらに前部絹糸腺へと送られ絹糸として吐糸される。
【0003】
合成される絹糸は、1頭のカイコあたり平均で約0.3〜0.5gにも達する。このようにカイコは高いタンパク質合成能力を有した生物であり、この能力を利用すれば優れた組換えタンパク質生産系が構築できる。
【0004】
カイコにおける一過性の外来遺伝子発現システムはカイコ核多角体ウイルス(BmNPV)をベクターとして利用する方法が確立されている(特許文献1)。また、鱗翅目昆虫Trichoplusia niに由来するDNA型トランスポゾンであるpiggyBacを組み込んだプラスミドベクターをカイコ卵に微量注射することにより、世代を通じて永続的に外来遺伝子が組み込まれた形質転換カイコも報告されている(非特許文献1)。
【0005】
さらに、この出願の発明者らは、絹タンパク質遺伝子プロモーターの下流に連結したヒト・コラーゲンcDNAをカイコに組み込み、組換えヒト・コラーゲンを繭または絹糸腺内のタンパク質の一部として産生する形質転換カイコを発明し特許出願している(特許文献1、2、特願2002−177536号)。
【0006】
ところで、カイコにおける外来タンパク質の発現においては絹タンパク質遺伝子の発現機構において外来遺伝子を発現させるため、フィブロインやセリシン等の絹タンパク質遺伝子のプロモーター制御下で外来遺伝子を発現させている。
【0007】
しかしながら、絹糸腺において遺伝子を発現させるプロモーターとして、例えばフィブロイン軽鎖遺伝子の−600〜+34までの領域を用いた場合、トランスジェニックカイコが繭中に分泌する組換えタンパク質の含有量は0.8%であり(非特許文献1)、必ずしも生産性が高いとはいえない。そこで、大量の組換えタンパク質を生産するためには、さらに高い転写活性を有したプロモーター/エンハンサーを開発し、繭中の組換えタンパク質含有量を向上させる必要がある。
【0008】
一方、フィブロイン重鎖遺伝子については、その−30〜+6(転写開始点を+1とする)が転写に不可欠であることから(非特許文献2)、この領域が「コアプロモーター」と呼ばれている。またコアプロモーターの上流−234までの領域とイントロン内にプロモーター活性を上昇させるエレメント(それぞれ上流エレメント、イントロン内エレメントとよばれる)が見出されている(非特許文献3、4)。
【0009】
ところが実際には、これらのコアプロモーターやエレメントだけでは、フィブロイン重鎖タンパク質を通常と同程度には発現させることができない。このため、遺伝子のさらに上流域に、その転写活性を促進的に調節する領域が存在するものと想定される。従って、フィブロイン重鎖遺伝子のプロモーター/エンハンサーを利用して外来タンパク質を多量に発現させるためには、フィブロイン重鎖遺伝子の前記上流エレメントからさらに上流のできるだけ長い領域を使用することが考えられる。しかしながら、長いプロモーター/エンハンサー配列を利用して外来タンパク質構造遺伝子の発現カセットを構築した場合には、その取り扱いや、トランスジェニックカイコの作出が極めて困難となるといった問題点が存在する。
【0010】
この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、高い転写活性を有し、かつ実効性に優れたサイズのポリヌクレオチドを提供することを課題としている。
【0011】
またこの出願の発明は、前記のポリヌクレオチドを用いて遺伝子の転写活性を高める組換えタンパク質の発現方法を提供することを課題としている。
【0012】
【特許文献1】
特公平7−97995号公報
【特許文献2】
特開2001−161214号公報
【特許文献3】
特開2002−315580号公報
【非特許文献1】
Tamura et al., Nat. Biotechnol. 18, 81−84, 2000
【非特許文献2】
Tsuda and Suzuki, Cell, 27, 175−182, 1981
【非特許文献3】
Suzuki et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, 9522−9526, 1986
【非特許文献4】
Takiya et al., EMBO J., 9, 489−496, 1990
【0013】
【課題を解決するための手段】
この出願は、前記の課題を解決する発明として、以下の(1)〜(11)の発明を提供する。
(1) カイコ絹糸腺における外来タンパク質の発現を促進するために外来タンパク質構造遺伝子に連結されるポリヌクレオチドであって、以下のポリヌクレオチド(A)および(B):
(A)絹タンパク質遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域を構成するポリヌクレオチド;
(B)配列番号1の第2787−4766位塩基配列中の、少なくとも第3141−3874位塩基配列を含む塩基配列からなるポリヌクレオチド、
が連結されているポリヌクレオチド。
(2) 前記ポリヌクレオチド(B)の5’側に、さらに配列番号1の第1−1153位塩基配列からなるポリヌクレオチド(C)が連結されている前記発明(1)のポリヌクレオチド。
(3) ポリヌクレオチド(A)が、配列番号1の第4767−5024位塩基配列からなる前記発明(1)および(2)のポリヌクレオチド。
(4) 前記発明(1)から(3)のポリヌクレオチドと実質的に同一の機能を有する範囲において、1または2以上の塩基の付加または欠失、もしくは他の塩基への置換を有する前記発明(1)から(3)のいずれかのポリヌクレオチド。
(5) 前記発明(1)または(2)におけるポリヌクレオチド(A)、(B)および(C)のいずれか1以上の相補配列がストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、前記発明(1)から(4)のいずれかのポリヌクレオチドと実質的に同一の機能を有するポリヌクレオチド。
(6) ポリヌクレオチド(A)、(B)および(C)が連結されているポリヌクレオチドが、3500塩基以下の長さであるであることを特徴とする前記発明(1)から(5)のポリヌクレオチド。
(7) 前記発明(1)から(6)のいずれかのポリヌクレオチドと外来タンパク質構造遺伝子とが連結された発現カセット。
(8) 前記発明(7)の発現カセットを保有する発現ベクター。
(9) 昆虫由来DNA型トランスポゾンの一対の逆向き反復配列に挟まれた発現カセットを有する前記発明(8)の発現ベクター。
(10) 前記発明(7)の発現カセットに含まれる外来タンパク質遺伝子をカイコ絹糸腺内で発現させることを特徴とする外来タンパク質の発現方法。
(11) 前記発明(7)の発現カセットをゲノム中に保有し、外来タンパク質を絹糸腺内で発現するトランスジェニックカイコ。
【0014】
すなわち前記の各発明は、高い転写活性を有するフィブロイン重鎖遺伝子に着目し、その上流域から遺伝子の転写活性を促進する最小領域としてのポリヌクレオチドを特定することによって完成されたものである。
【0015】
なお、この発明のポリヌクレオチドの基礎なるフィブロイン重鎖遺伝子の配列は公知であり(GenBank/AF2266688)、その全長(80009bp:以下「公知配列という」のうち、第57414−63450位配列を配列表の配列番号1に示した。さらに、公知配列の第62414位が転写開始点(+1)であり、配列番号1の第5001位塩基に相当する。また公知配列の第57414位は−5000であり、配列番号1の第1位塩基に相当する。以下の説明においては、前記の転写開始点(+1)から5’側を(−)番号で、3’側を(+)番号として記載することがある。例えば、配列番号1の第2787−4766位塩基配列は、「−2214〜−235領域」と記載する。
【0016】
また、この発明において、「ポリヌクレオチド」とはプリンまたはピリミジンが糖にβ−N−グリコシド結合したヌクレオシドのリン酸エステル(ATP、GTP、CTP、UTP;またはdATP、dGTP、dCTP、dTTP)が2個以上結合した分子を意味する。ポリヌクレオチドと他のポリヌクレオチドが「連結されている」とは、一方のポリヌクレオチドの3’端ヌクレオチドと他方のポリヌクレオチドの5’端ヌクレオチドが直接、または他のリンカー配列を介して結合している状態をいう。
【0017】
さらにこの発明において「タンパク質」とは、アミド結合(ペプチド結合)によって互いに結合した複数個のアミノ酸残基から構成された分子を意味し、「外来タンパク質」とは、カイコが産生するタンパク質以外の動物性タンパク質、特に組換えタンパク質として遺伝子工学的に製造することが好ましいタンパク質を意味する。
【0018】
またさらに、この発明における「外来タンパク質構造遺伝子」とは、外来タンパク質をコードする領域(open reading flame: ORF)を含むポリヌクレオチドであり、例えば外来タンパク質遺伝子のcDNAである。
【0019】
この発明におけるその他の用語や概念は、発明の実施形態の説明や実施例において詳しく規定する。またこの発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。例えば、遺伝子工学および分子生物学的技術はSambrook and Maniatis, in Molecular Cloning−A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989; Ausubel, F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y, 1995等に記載されている。
【0020】
以下、各発明について、実施形態を詳しく説明する。
【0021】
【発明の実施の形態】
この出願の発明者らは、上記の既知の転写調節領域に加え絹糸腺細胞において高い転写活性を有する配列を検索するために、先ずin vivoにおけるプロモーターの転写活性を測定する実験系を確立した。プロモーターを挿入したホタルルシフェラーゼレポータープラスミドを遺伝子銃により絹糸腺に導入し、遺伝子導入した絹糸腺を他の個体に移植し、3日後にルシフェラーゼ活性を測定した。in vitro転写系で同定されたコアプロモーター、上流エレメントやイントロン内エレメントは遺伝子銃を用いたin vivoの系でもin vitroの系と同様の活性を示した。この結果から、前記のin vivo実験系がプロモーター活性の測定に有効であることを確認した。
【0022】
次に、重鎖遺伝子の上流を遡って、遺伝子の転写活性を促進する領域を探索した。フィブロイン重鎖遺伝子の−5000〜−235の領域を−234〜+24の領域に連結し、その転写活性を測定したところ、−5000〜−235の領域は−234〜+24の領域がもつ転写活性を強力に促進する作用があることを見出した。さらに、−5000〜−235の領域から−3847〜−2215の領域を除き、同様に−234〜+24の領域に連結して転写活性を測定したところ、−5000〜−235から−3847〜−2215を取り除いた領域、即ち−5000〜−3848と−2214〜−235の領域だけでも、−5000〜−235と変わらない転写促進活性をもつことが明らかになった。また、様々な欠失部位を有する領域の転写促進効果を測定する実験を行うことにより、−2214〜−235の領域の中でも−1860〜−1127の領域が転写促進に特に重要であり、さらにこの領域に−5000〜−3848の領域と連結させることにより高い転写促進効果を発揮することを確認した。この出願の各発明は、以上のとおりの新規な知見に基づいて完成されたものである。
【0023】
この出願の発明(1)は、以下のポリヌクレオチド(A)および(B)が連結したポリヌクレオチドである。
(A)絹タンパク質遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域を構成するポリヌクレオチド。
(B)フィブロイン重鎖遺伝子の−2214〜−235の領域中(配列番号1の第2787−4766位塩基配列中)の、少なくとも−1860〜−1127領域(配列番号1の第3141−3874位塩基配列)を含むポリヌクレオチド。
【0024】
ポリヌクレオチド(A)は、例えばフィブロイン重鎖、フィブロイン軽鎖、P25、セリシン1およびセリシン2遺伝子などを含む絹タンパク質遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域を構成するポリヌクレオチドを採用することができる。例えば、フィブロイン重鎖遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域としては、−234〜+6の領域を用いることができる。またフィブロイン軽鎖のプロモーター/エンハンサー領域としては、その公知配列GenBank/AF541967)の−600〜+34の領域を用いることができる。フィブロイン重鎖、軽鎖、またはP25遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域を使用すれば、外来タンパク質を後部絹糸腺で発現させることができ、またセリシン1またはセリシン2遺伝子のプロモーター/エンハンサーを使用すれば、中部絹糸腺で目的とする外来タンパク質の発現を高めることができる。この発明においては、特に、フィブロイン重鎖遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域としては、−234〜+6の領域を採用することが好ましい(発明(3))。
【0025】
ポリヌクレオチド(B)は、前記のとおり、フィブロイン重鎖遺伝子の−2214〜−235領域中の、少なくとも−1860〜−1127領域を含むことを特徴としている。さらにこのポリヌクレオチド(B)は、フィブロイン重鎖遺伝子の−5000〜−3848領域(配列番号1の第1−1153位塩基配列)からなるポリヌクレオチド(C)を連結していることが好ましい(発明(2))。この場合の連結は、「5’−ポリヌクレオチド(C)−ポリヌクレオチド(B)−3’」であり、両者の間には1〜30塩基配列からなるリンカー配列を介在させてもよいが、好ましくはポリヌクレオチド(C)の5’端ヌクレオチドと、ポリヌクレオチド(B)の3’端ヌクレオチドを直接にホスホジエステル結合する。
【0026】
一方、前記のプロモーター/エンハンサー領域を構成するポリヌクレオチド(A)は、ポリヌクレオチド(C)/(B)の3’側に連結してもよく、あるいは5’側に連結してもよいが、前者が好ましい。従って、この発明のポリヌクレオチドの好ましい構成は、「5’−ポリヌクレオチド(C)−ポリヌクレオチド(B)−ポリヌクレオチド(A)−3’」である。
【0027】
以上のとおりのポリヌクレオチド(A)、(B)および(C)は、それぞれ公知の塩基配列に基づいて合成したプローブDNAを用いてゲノムライブラリーをスクリーニングし、対象となるゲノム遺伝子断片を得た後、これを鋳型として所定の領域をPCR(Polymerase Chain Reaction)法により増幅することにより取得することができる。また、短鎖のポリヌクレオチドであれば、公知の合成法により取得することもできる。
【0028】
さらにこの発明のポリヌクレオチドには、前記発明(1)から(3)のポリヌクレオチドと実質的に同一の機能を有する範囲において、1または2以上の塩基の付加または欠失、もしくは他の塩基への置換を有するものも含まれる(発明(4))。すなわち、遺伝子の転写活性を促進するポリヌクレオチド(プロモーター/エンハンサー領域)は、種々の方法により改変されても、その基本的な活性を保持することが十分に認識されている。「1または2以上の塩基の付加または欠失、もしくは他の塩基への置換」とは、基本となるヌクレオチド配列に比較して1または2以上の塩基が付加または欠失、もしくは1また2以上の塩基が他の塩基への置換といった変位が存在するが、基本となる無変位配列と同等の機能を保持していることを意味する。
【0029】
またこの発明(5)のポリヌクレオチドは、前記発明(1)または(2)におけるポリヌクレオチド(A)、(B)および(C)のいずれか1以上の相補配列がストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、前記発明(1)から(4)のいずれかのポリヌクレオチドと実質的に同一の機能を有するポリヌクレオチドである。すなわち、1本鎖ポリヌクレオチド配列は、相同性の程度によって相手鎖とハイブリダイズする。このとき、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシー(stringency)をより厳密に設定することによって、より相同性の高い配列を特定することができる。ストリンジェント条件は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄工程における塩濃度、有機溶媒(ホルムアミド等)の濃度、温度条件によって規定される。詳しくは、米国特許No. 6,100,037等に詳しく記述されている。このようなストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションスクリーニングによって特定される発明(5)のポリヌクレオチドは、相同性のレベルにおいて70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0030】
また、この発明(6)のポリヌクレオチドは、前記発明(1)から(5)におけるポリヌクレオチドの長さが3500塩基以下の長さを有するポリヌクレオチドである。5000塩基の30%以上を取り除くことで、その取り扱いやトランスジェニックカイコの作出は容易となる。
【0031】
この出願の発明(7)は、前記いずれかのポリヌクレオチドと外来タンパク質構造遺伝子とが連結された発現カセットである。外来タンパク質構造遺伝子は、任意のタンパク質をコードする遺伝子cDNA等を用いることができる。cDNAは、公知の方法(Mol. Cell Biol. 2, 161−170, 1982; J. Gene 25, 263−269, 1983; Gene, 150, 243−250, 1994)を用いてcDNAライブラリーを作成し、そいれぞれ公知の塩基塩基配列に基づいて作製したプローブDNAを用いて、それぞれのcDNAを単離する方法によって取得することができる。得られたcDNAは、例えば、PCR法、NASBA(Nucleic acid sequence based amplification)法、TMA(Transcription−mediated amplification)法およびSDA(Strand Displacement Amplification)法などの通常行われる遺伝子増幅法により増幅することができる。また、細胞から単離したmRNAを鋳型とするRT−PCR法によっても必要量の各cDNAを得ることができる。ポリヌクレオチドと外来タンパク質cDNAとは、DNAリガーゼを用いる公知のライゲーション法によって連結さえることができる。
【0032】
発明(8)は、前記の発現カセットを保有する発現ベクターである。ベクターは、カイコの形質転換のために使用することのできる昆虫用のベクターであれば特段の制限なく使用することができる。例えば、カイコ核多角体ウイルス(BmNPV)ベクターや、昆虫由来DNA型トランスポゾンを組み込んだプラスミドベクター等であるが、特に後者が好ましい(発明(9))。昆虫由来DNA型トランスポゾンとしては、piggyBac、mariner(Insect Mol. Biol. 9, 145−155, 2000)、およびMinos(Insect Mol. Biol. 9, 277−281, 2000)等が知られている。これらのトランスポゾンは、カイコ細胞内で転移活性を示すことから、これらのDNA型トランスポゾンをもとに作製したベクターによりカイコを形質転換させることが可能である。特にpiggyBacをもとに作製したプラスミドベクターは、カイコ卵に微量注入することにより、実際にカイコを形質転換させることに成功している(Nat. Biotechnol. 18, 81−84 , 2000)。
【0033】
以上の発現ベクターを使用することによって、前記発明(7)の発現カセットをゲノム中に保有するトランスジェニックカイコ(発明(11))を作出することができ、このトランスジェニックカイコの絹糸腺内で発現カセットを発現させることによって、目的とする外来タンパク質を効率よく作成することが可能となる(発明(10))。
【0034】
例えば、piggyBacの性質を利用してカイコ・ゲノム配列内に外来タンパク質発現カセットを挿入するには、例えば田村らの方法(Nat. Biotechnol. 18, 81−84, 2000)と同様な方法によって行うことができる。即ち、piggyBacの一対の逆向き反復配列を適当なプラスミドベクターに組み込み、外来タンパク質発現カセットを一対の逆向き反復配列で夾むように挿入する。そしてこのプラスミドベクターを、piggyBacのトランスポゼース発現ベクター(ヘルパープラスミド)と共にカイコ卵へ微量注入する。このヘルパープラスミドは、piggyBacの逆向き反復配列の片方または両方を欠いた、実質的にはpiggyBacのトランスポゼース遺伝子領域のみが組み込まれている組換えプラスミドベクターである。このヘルパープラスミドにおいて、トランスポゼースを発現させるためのプロモーターは、内在性のトランスポゼースプロモーターをそのまま利用しても良いし、あるいは、カイコ・アクチンプロモーターやショウジョウバエHSP70プロモーター等を利用してもよい。次世代カイコのスクリーニングを容易にするために、外来タンパク質発現カセットを組み込んだベクター内に同時にマーカー遺伝子を組み込んでおくこともできる。この場合、マーカー遺伝子の上流に例えばカイコ・アクチンプロモーターやショウジョウバエHSP70プロモーター等のプロモーター配列を組み込み、その作用によりマーカー遺伝子を発現させるようにする。
【0035】
ベクターを微量注入したカイコ卵から孵化した幼虫(F0世代)を飼育する。このF0世代のカイコのうち一部カイコには、外来タンパク質発現カセットが組み込まれている。しかし、この世代のカイコでは、カイコ体内の全細胞のうちの一部分の細胞にのみに外来タンパク質発現カセットが組み込まれており、全細胞に発現カセットが組み込まれたカイコを得るためには、F0カイコを交配し、生殖細胞を通じて発現カセットが伝達された形質転換カイコを得なければならない。即ち、得られた全F0世代のカイコを野生型カイコと、あるいはF0カイコ同士で交配し、次世代(F1世代)のカイコから外来タンパク質発現カセットを有した形質転換カイコを選抜する必要がある。F1世代のカイコからの形質転換カイコの選抜は、例えばPCR法やサザンブロット法を用いて行う。また、マーカー遺伝子を組み込んだ場合には、その表現形質を利用して選抜することも可能である。例えばマーカー遺伝子としてGFP等の蛍光タンパク質遺伝子を利用した場合には、F1世代のカイコ卵や幼虫に励起光を照射し、蛍光タンパク質の発する蛍光を検出することにより行うことができる。このようにして選抜されたカイコは、その染色体内に外来タンパク質発現カセットが組み込まれている形質転換カイコである。従って、これらのカイコを野生型カイコと、あるいは形質転換カイコどうしで交配させた子孫においても外来タンパク質発現カセットは消失することなく伝達され、世代を通じて外来タンパク質または外来タンパク質と絹タンパク質との融合タンパク質を産生させることができる。
【0036】
【実施例】
以下、実施例によりこの発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、この発明は以下の例によって限定されるものではない。
【0037】
フィブロイン重鎖遺伝子の一部をルシフェラーゼ遺伝子上流に接続したレポーターベクターをカイコ幼虫絹糸腺に導入し、後部絹糸腺におけるルシフェラーゼ活性を測定して転写活性を調べた。レポーターベクターとしてホタルルシフェラーゼレポーターベクターpGL3−basicおよびウミシイタケルシフェラーゼレポーターベクターpRL−null(Promega, Madison, WI)を使用した。pRL−nullについてはPst IとNhe Iで切断し、平滑末端化した後、セルフライゲーションすることによってヒトβグロビンイントロン配列を取り除いて用いた(pRLΔint)。
【0038】
フィブロイン重鎖遺伝子の構造と転写調節領域について図1に示す。転写調節領域の機能は既に報告されている(Suzuki et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, 9522−9526, 1986, Takiya et al., EMBO J., 9, 489−496, 1990)。アッセイ系の検定に使用するために、図1で示すフィブロイン重鎖遺伝子転写調節領域の配列を有するレポーターベクターを以下の方法で作製した。
コアプロモーター( −37 +6 )を有する pGL3−basic:
合成オリゴDNA 5’−GATCTTATAAAAAGGTTCAACTTTTTCAAATCAGCATCAGTA−3’(配列番号2)および5’−AGCTTACTGATGCTGATTTGAAAAAGTTGAACCTTTTTATAA−3’(配列番号3)をハイブリダイズした後に、Bgl II/Hind III消化pGL3−basicに挿入して得た。
上流エレメントを含むプロモーター(コアプロモーター+上流エレメント、 −234 +24 )を有する pGL3−basic:
フィブロイン重鎖遺伝子−234〜+24の領域に対応するDNA断片はカイコ成体腹部より抽出したゲノムDNAをテンプレートとしてPCR法によって得られた。用いたプライマーは、5’−GCTAGCCTTTAAAATATTAAAAGTAAG−3’(配列番号4)と5’−TGACTTCGCGACTTGAGAGTTGGAACCG−3’(配列番号5)である。PCR産物をpUC118のマルチクローニング部位にある制限酵素Sma Iサイトに挿入した。さらに、フィブロイン重鎖遺伝子−234〜+24をNru I/Nhe I消化により切り出し、Sma I/Nhe I消化pGL3−basicにサブクローン化して得た。
イントロン全体 (+68 +1037) を含むプロモーター(コアプロモーター+上流エレメント+イントロン)を有する pGL3−basic:
フィブロイン重鎖遺伝子+68〜+1037の領域に対応するDNA断片はカイコ成体腹部より抽出したゲノムDNAをテンプレートとしてPCR法によって得られた。用いたプライマーは、5’−GCTAGCAAGCGACATACTGAAACAAAATG−3’(配列番号6)と5’−TCAAGTCGCGAAGTCAAAACCTTTGTGATC−3’(配列番号7)である。PCR産物をpUC118のマルチクローニング部位にある制限酵素Sma Iサイトに挿入した。さらに、フィブロイン重鎖遺伝子+66〜+1037をSac I/Nhe I消化により切り出し、Sac I/Nhe I消化した上流エレメントを含むプロモーターを有するpGL3−basicにサブクローン化して得た。
イントロン前半( +68 +509 )を含むプロモーター(コアプロモーター+上流エレメント+イントロン前半)を有する pGL3−basic:
フィブロイン重鎖遺伝子+68〜+509の領域に対応するDNA断片はカイコ成体腹部より抽出したゲノムDNAをテンプレートとしてPCR法によって得られた。用いたプライマーは、5’−GCTAGCATCATAATAAATTAATAATGCGG−3’(配列番号8)と5’−TCAAGTCGCGAAGTCAAAACCTTTGTGATC−3’(配列番号9)である。PCR産物をpUC118のマルチクローニング部位にある制限酵素Sma Iサイトに挿入した。さらに、フィブロイン重鎖遺伝子+68〜+509をSac I/Nhe I消化により切り出し、Sac I/Nhe I消化した上流エレメントを含むプロモーターを有するpGL3−basicにサブクローン化して得た。
イントロン内エレメント( +156 +454 )を含むプロモーター(コアプロモーター+上流エレメント+イントロンエレメント)を有する pGL3−basic:
イントロン前半を含むプロモーターを有するpGL3−basicをEcoR V消化により得たフィブロイン重鎖遺伝子+156〜+454の領域に対応するDNA断片をNhe I消化後平滑末端化した上流エレメントを含むプロモーターを有するpGL3−basicにサブクローン化して得た。
【0039】
転写促進領域探索実験に使用するためにフィブロイン軽鎖および重鎖遺伝子の配列を有するレポーターベクターを以下の方法で作製した。作製した各ベクターには便宜のため[1]〜[14]の番号を付記した。
[1] フィブロイン軽鎖遺伝子 −600 +34 を有する pGL3−basic:
フィブロイン軽鎖遺伝子プロモーター−600〜+34の領域に対応するDNA断片は既報の通りPCR法により得られpCR2.1(Invitrogen, Carlsbad, CA)へクローニングされている(pCR−PfL(−600/+34)、Tomita et al., Nature Biotech., 21, 52−56, 2003)。フィブロイン軽鎖遺伝子−600〜+34をpCR−PfL(−600/+34)からXho I/Hind III消化により切り出し、Xho I/Hind III消化pGL3−basicにサブクローン化して得た。
【0040】
遺伝子導入効率を調べるためにフィブロイン軽鎖遺伝子−600〜+34をpCR− PfL(−600/+34)からXho I/Hind III消化により切り出し、Xho I/Hind III消化pRLΔintにサブクローン化してフィブロイン軽鎖遺伝子−600〜+34を有するpRLΔintを得た。
[2] フィブロイン重鎖遺伝子 −234 +24 を有する pGL3−basic:
上流エレメントを含むプロモーターを有するpGL3−basicと同一である。
[3] フィブロイン重鎖遺伝子 −5000 +24 を有する pGL3−basic:
フィブロイン重鎖遺伝子5’上流域−5000〜+24の領域に対応するDNA断片はカイコ成体腹部より抽出したゲノムDNAをテンプレートとしてPCR法によって得られた。用いたプライマーは、5’−GCTAGCGCTCAAAGCCTCATCCCAATTTG−3’(配列番号10)と5’−TGACTTCGCGACTTGAGAGTTGGAACCG−3’(配列番号11)である。PCR産物をpUC118のマルチクローニング部位にある制限酵素Sma Iサイトに挿入した。このプラスミドからフィブロイン重鎖遺伝子−5000〜+24をNru I/Nhe I消化により切り出し、Sma I/Nhe I消化pGL3−basicにサブクローン化して得た。
【0041】
フィブロイン重鎖遺伝子−5000〜−235の間でいろいろな長さの領域を有するpGL3−basicを以下の通り作製した。
[4] フィブロイン重鎖遺伝子 −870 +24 を有する pGL3−basic:
Hind III消化によりフィブロイン重鎖遺伝子−5000〜+24を有するpGL3−basicからフィブロイン重鎖遺伝子−870〜+24を切り出し、Hind III消化pGL3−basicにサブクローン化して得た。
[5] フィブロイン重鎖遺伝子 −2077 +24 を有する pGL3−basic:
Kpn I消化フィブロイン重鎖遺伝子−5000〜+24を有するpGL3−basicをセルフライゲーションにより得た。
[6] フィブロイン重鎖遺伝子 −2885 +24 を有する pGL3−basic:
Sac I消化フィブロイン重鎖遺伝子−5000〜+24を有するpGL3−basicをセルフライゲーションにより得た。
[7] フィブロイン重鎖遺伝子 −3947 +24 を有する pGL3−basic:
Nhe I/Spe I消化フィブロイン重鎖遺伝子−5000〜+24を有するpGL3−basicをセルフライゲーションによりを得た。
【0042】
さらに、フィブロイン重鎖遺伝子−5000〜−235の間で配列の一部を欠損させていろいろな組み合わせのコンストラクトを有するpGL3−basicを以下の通り作製した。
[8] フィブロイン重鎖遺伝子 −5000 −1127 および −234 +24 を有する pGL3−basic:
Nhe I/Xba I消化によりフィブロイン重鎖遺伝子−234〜+24を有するpGL3−basicからフィブロイン重鎖遺伝子−234〜+24およびホタルルシフェラーゼ遺伝子を切り出し、Xba I消化フィブロイン重鎖遺伝子−5000〜+24を有するpGL3−basicにサブクローン化して得た。
[9] フィブロイン重鎖遺伝子 −5000 −1861 および −870 +24 を有する pGL3−basic:
Nde I/Nhe I消化によりフィブロイン重鎖遺伝子−5000〜+24を有するpGL3−basicからフィブロイン重鎖遺伝子−5000〜−1861を切り出し、平滑末端化した後、Sma I消化フィブロイン重鎖遺伝子−870〜+24を有するpGL3−basicにサブクローン化して得た。
[10] フィブロイン重鎖遺伝子 −5000 −2799 および −2077 +24 を有する pGL3−basic:
Dra I/Nhe I消化によりフィブロイン重鎖遺伝子−5000〜+24を有するpGL3−basicから重鎖遺伝子−5000〜+2799を切り出し、平滑末端化した後、Kpn I消化後平滑末端化したフィブロイン重鎖遺伝子−2077〜+24を有するpGL3−basicにサブクローン化して得た。
[11] フィブロイン重鎖遺伝子 −5000 −3718 および −2573 +24 を有する pGL3−basic:
Bgl II消化によりフィブロイン重鎖遺伝子−5000〜+24を有するpGL3−basicからフィブロイン重鎖遺伝子−2573〜+24を切り出し、Bgl II消化フィブロイン重鎖遺伝子−5000〜+24を有するpGL3−basicにサブクローン化して得た。
[12] フィブロイン重鎖遺伝子 −5000 −3848 および −545 +24 を有する pGL3−basic:
Pst I消化フィブロイン重鎖遺伝子−5000〜+24を有するpGL3−basicをセルフライゲーションして得た。
[13] フィブロイン重鎖遺伝子 −5000 −2215 および −545 +24 を有する pGL3−basic:
Pst I消化によりフィブロイン重鎖遺伝子−5000〜+24を有するpGL3−basicからフィブロイン重鎖遺伝子−3847〜−2215を切り出し、Pst I消化フィブロイン重鎖遺伝子−5000〜−3848および−545〜+24を有するpGL3−basicにサブクローン化して得た。
[14] フィブロイン重鎖遺伝子 −5000 −3848 および −2214 +24 を有する pGL3−basic:
Pst I消化によりフィブロイン重鎖遺伝子−5000〜+24を有するpGL3−basicからフィブロイン重鎖遺伝子−2214〜−546を切り出し、Pst I消化フィブロイン重鎖遺伝子−5000〜−3848および−545〜+24を有するpGL3−basicにサブクローン化して得た。
【0043】
活性測定法を図2に示し、以下に解説する。
1) 金粒子の調製:二つのベクターを1:1に混合し、金粒子1 mgあたり188 ngのDNAを付着させた。
2) 絹糸腺採取:5令1日または2日目の幼虫から絹糸腺を取出し、Grace培地で洗浄した。
3) 遺伝子銃によるDNAの絹糸腺への導入:遺伝子銃(Helios Gene Gun、BioRad, Hercules, CA)を用いて絹糸腺にDNAの付着した金粒子を打ち込んだ。絹糸腺あたり0.02 mgの金粒子(3.8 ng DNA)を打ち込んでいる。
4) 絹糸腺の移植:絹糸腺をGrace培地で洗浄後、絹糸腺を取出した個体と同じ日令の幼虫の背側後方体腔内に移植した。絹糸腺を移植した幼虫を3日間飼育した。
5) 絹糸腺の採取:移植した絹糸腺を宿主から取出し、Grace培地で洗浄後、後部絹糸腺のみを切り出して回収した。
6) ルシフェラーゼ活性の測定:デュアルルシフェラーゼアッセイキット(Promega, Madison, WI)を使用して上清中のホタルおよびウミシイタケルシフェラーゼ活性を測定した。後部絹糸腺をpassive lysis buffer中でホモジナイズし、遠心した。ホタルルシフェラーゼ測定値をウミシイタケルシフェラーゼ測定値で割り、ベクターの長さをかけ、転写活性を算出した。さらにフィブロイン軽鎖遺伝子−600〜+34の活性を1とした相対活性で表した。
【0044】
in vitro転写系を利用してフィブロイン重鎖遺伝子コアプロモーターとその周辺領域の転写活性が詳しく調べられている。これら領域のプロモーター活性をin vivo活性測定系を用いて測定し、in vivo活性測定系の有効性を判定した。図3にin vivo測定系における転写制御領域の転写活性を示す。フィブロイン重鎖遺伝子コアプロモーターの活性を1とした相対活性で表した。以下に結果を記述する。
【0045】
フィブロイン重鎖遺伝子コアプロモーターの活性を1とするとコアプロモーター+上流エレメント、コアプロモーター+上流エレメント+イントロン、コアプロモーター+上流エレメント+イントロン前半、コアプロモーター+上流エレメント+イントロン内エレメントの活性はそれぞれ15.9, 20.9, 9.8, 58.9となった。
【0046】
in vitro転写系では上流エレメントとイントロン内エレメントはコアプロモーターの活性をそれぞれ45倍、5倍上昇させると報告されている。今回、in vivo活性測定系では上流エレメントとイントロン内エレメントの活性上昇効果は15.9および3.7倍であった。従って、in vivo測定活性系は、in vitro転写系に比べて感度は劣るものの、十分使用可能である。この実験系ではin vitro転写系では扱えない長い配列も測定可能であるので、5’上流の未知の領域の解析に有効である。
【0047】
後部絹糸腺におけるフィブロイン重鎖遺伝子5’上流領域の転写促進活性を図4に示す。以下に結果を記述する。
【0048】
既に報告されているフィブロイン重鎖遺伝子−234〜+24(コアプロモーター+上流エレメント、[2])はフィブロイン軽鎖遺伝子−600〜+34([1])の1/2の活性しか示さなかった。フィブロイン重鎖遺伝子5’上流領域−870〜−235の領域をフィブロイン重鎖遺伝子−234〜+24に連結した配列([4])はフィブロイン軽鎖遺伝子−600〜+34に相当する活性が見られた。さらにフィブロイン重鎖遺伝子−2077〜−235および−2885〜−235を−234〜+24に連結した配列([5]、[6])の活性はそれぞれフィブロイン軽鎖遺伝子−600〜+34のそれぞれ3、4倍となった。フィブロイン重鎖遺伝子−3947〜−235の領域を連結した配列([7])の活性は大きく上昇し、フィブロイン軽鎖遺伝子−600〜+34の15倍に達した。フィブロイン重鎖遺伝子−5000〜−235の領域を連結した場合([3])では平均でフィブロイン軽鎖遺伝子−600〜+34の25倍の活性が見られた。40倍をこえる例も見られた。
【0049】
以上の結果はフィブロイン重鎖遺伝子−5000〜−235の領域は−234〜+24の領域が持つ転写活性を強力に促進する作用があることを示している。特にフィブロイン重鎖遺伝子−5000〜−2886の領域が重要であることが示唆された。
【0050】
フィブロイン重鎖遺伝子−5000〜−235の領域の転写促進活性の性質を明らかにするために−5000〜−235の領域の間で種々の部分欠損コンストラクトを作製して(図5)その転写活性を測定した。結果を図6に示す。以下に結果を記述する。
【0051】
フィブロイン重鎖遺伝子−5000〜−235の領域で、約1kb欠損させたコンストラクトの内、−1860〜−871を欠損させたもの([9])には転写促進効果が見られなくなった。−1126〜−235([8])、−2798〜−2078([10])、−3717〜−2574([11])を欠損させた配列では高い転写活性が保たれていたことから、−1860〜−1127の領域が転写促進に重要であることが分かる。しかしながら−2077までを含む領域(図4、[5])ではフィブロイン軽鎖遺伝子−600〜+34の3倍程度の活性だったことから、−1860〜−1127の領域単独での効果は十分でないと考えられる。
【0052】
欠損したコンストラクトのうち、−3847〜−2215を欠損させたもの([14])が最も高い活性を示した。この配列はフィブロイン重鎖遺伝子−5000〜−3848と−1860〜−1128の領域を含んでいる。同等の長さを有するコンストラクトでも−2214〜−546を欠損させたもの([13])は−1860〜−1127を含んでおらず、活性が低い。
【0053】
以上の結果はフィブロイン重鎖遺伝子−5000〜−3848と−1860〜−1127が高い転写促進活性の発現に特に好ましいことを示している。フィブロイン重鎖遺伝子−5000〜−3848と−2214〜−235の領域を−234〜+24の領域に連結した配列[14]はこの要件を満たし、かつ適当な長さにまで短縮されているため、トランスジェニックカイコを作るなどの目的に有用である。
【0054】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、高い転写活性を有したプロモーター/エンハンサー配列と、その配列を用いて遺伝子の転写活性を高める組換えタンパク質の発現方法が提供される。この発明を利用すれば、様々な組換え有用タンパク質を、繭中に大量に生産するトランスジェニックカイコを作出することが可能となり、生産した組換えタンパク質を医療、食品、化粧品、繊維などの様々な産業分野で利用することができる。
【0055】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】フィブロイン重鎖遺伝子の構造と転写制御領域。フィブロイン重鎖遺伝子は2つのエクソン(太線で示した)が存在する。数字はフィブロイン重鎖遺伝子のヌクレオチド番号を示す(転写開始点を+1とする)。矢印で示した部分を転写活性測定に用いた。()はin vitro転写系で測定された転写活性(コアプロモーターの活性を1とした場合)(Suzuki et al., 1986, Takiya et al., 1997)である。
【図2】活性測定法の概略である。
【図3】in vivo測定系における転写制御領域の転写活性。図1で示したフィブロイン重鎖遺伝子領域を用いて転写活性を測定した。フィブロイン重鎖遺伝子コアプロモーターの活性を1とした。白丸は個々の活性値、黒丸はその平均値をあらわす。
【図4】フィブロイン重鎖遺伝子5’ 上流領域の転写促進活性。フィブロイン重鎖遺伝子−235から5’上流を遡ってコンストラクトを作製してその転写活性を測定した。フィブロイン軽鎖遺伝子−600〜+34の活性を1とした。白丸は個々の活性値、黒丸はその平均値をあらわす。
【図5】フィブロイン重鎖遺伝子5’ 上流領域部分欠損コンストラクトの構造。フィブロイン重鎖遺伝子−5000〜−235までの転写促進活性の性質を明らかにするために−5000〜−235の間で様々な部分を欠損させたコンストラクトを作製した。
【図6】フィブロイン重鎖遺伝子5’上流領域部分欠損が転写活性に及ぼす影響。図5で示したコンストラクトの転写活性を測定した。フィブロイン軽鎖遺伝子−600〜+34の活性を1とした。白丸は個々の活性値、黒丸はその平均値をあらわす。

Claims (11)

  1. カイコ絹糸腺における外来タンパク質の発現を促進するために外来タンパク質構造遺伝子に連結されるポリヌクレオチドであって、以下のポリヌクレオチド(A)および(B):
    (A) 絹タンパク質遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域を構成するポリヌクレオチド;
    (B) 配列番号1の第2787−4766位塩基配列中の、少なくとも第3141−3874位塩基配列を含む塩基配列からなるポリヌクレオチド、
    が連結されているポリヌクレオチド。
  2. 前記ポリヌクレオチド(B)に、さらに配列番号1の第1−1153位塩基配列からなるポリヌクレオチド(C)が連結されている請求項1のポリヌクレオチド。
  3. ポリヌクレオチド(A)が、配列番号1の第4767−5024位塩基配列からなる請求項1および2のポリヌクレオチド。
  4. 前記発明(1)から(3)のポリヌクレオチドと実質的に同一の機能を有する範囲において、1または2以上の塩基の付加または欠失、もしくは他の塩基への置換を有する請求項1から3のいずれかのポリヌクレオチド。
  5. 請求項1または2におけるポリヌクレオチド(A)、(B)および(C)のいずれか1以上の相補配列がストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、請求項1から4のいずれかのポリヌクレオチドと実質的に同一の機能を有するポリヌクレオチド。
  6. ポリヌクレオチド(A)、(B)および(C)が連結されているポリヌクレオチドが、3500塩基以下の長さであるであることを特徴とする請求項1から5のいずれかのポリヌクレオチド。
  7. 請求項1から6のいずれかのポリヌクレオチドと外来タンパク質構造遺伝子とが連結された発現カセット。
  8. 請求項7の発現カセットを保有する発現ベクター。
  9. 昆虫由来DNA型トランスポゾンの一対の逆向き反復配列に挟まれた発現カセットを有する請求項8の発現ベクター。
  10. 請求項7の発現カセットに含まれる外来タンパク質遺伝子をカイコ絹糸腺内で発現させることを特徴とする外来タンパク質の発現方法。
  11. 請求項7の発現カセットをゲノム中に保有し、外来タンパク質を絹糸腺内で発現するトランスジェニックカイコ。
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