JP2004342555A - 固体電解質型燃料電池用電極材料およびその製造方法、ならびにそれを用いた固体電解質型燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】反応ガス透過性及び機械的強度に優れる固体電解質型燃料電池用電極材料を提供する。
【解決手段】本発明の固体電解質型燃料電池用電極材料は、気孔中の開気孔率が75%以上であり、連続した空孔粒子群を有することを特徴とする。
【効果】これにより電極材料の電気伝導度、酸素イオン伝導度、反応ガス透過性を向上した上で、高い機械的強度を有する固体電解質型燃料電池用電極材料が得られる。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明の固体電解質型燃料電池用電極材料は、気孔中の開気孔率が75%以上であり、連続した空孔粒子群を有することを特徴とする。
【効果】これにより電極材料の電気伝導度、酸素イオン伝導度、反応ガス透過性を向上した上で、高い機械的強度を有する固体電解質型燃料電池用電極材料が得られる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解質型燃料電池用電極材料およびその製造方法、ならびにそれを用いた固体電解質型燃料電池に関する。さらに詳しくは、反応ガス透過性、電気伝導度、および機械的強度を有する固体電解質型燃料電池用電極材料およびその製造方法、ならびにそれを用いた固体電解質型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
1899年にNernstが酸化物から成る固体電解質を発見した後、1937年にBaurとPreisが、電解質としてこのような固体酸化物を利用した固体酸化物型燃料電池を1000℃で運転した。これ以来、固体酸化物型燃料電池は進歩を続けており、出力が数kWのジルコニア質セラミックス燃料電池が数万時間の運転実績を積んでいる。
【0003】
このような固体酸化物型燃料電池は、1000℃以上の高温で運転するために、炭化水素系燃料を電池内で改質(internal reforming)することができる。このため、固体酸化物型燃料電池では、60%を超える高い燃焼効率を得ることが可能であると考えられている。
【0004】
通常、固体酸化物型燃料電池は、固体電解質、燃料極、空気極および中間層とからなる。これら全ての構成材料は酸化還元雰囲気に対して化学的に安定であり、且つ適度な電気伝導度を有することが要求される。さらに、構成材料間の熱膨張係数が近似していることが要求される。また、燃料極及び空気極は、ガスと電子を電解質まで供給し、電解質との界面において電気化学反応を起こす反応場を提供している。前記反応場は、ガスと電子そして酸素イオンが接するため三相界面と呼ばれている。電極特性の向上には、電子と酸素イオンに対して共に伝導体である混合伝導性酸化物を用い、電極材料中に電子と酸素イオンとを拡散させて電極表面でも燃料電池反応を進行させることや、電極材料組織を多孔化してガスの接触面積を増大させることが有効であるとされている。さらに、当然のことであるが固体電解質型燃料電池は、安価であることが望まれる。
【0005】
そのため、セラミックス固体電解質を用いたセラミックス電池では、セラミックス材料の選択が非常に難しくなっているうえ、燃焼器本体などの容器にはフェライト系ステンレスなどの金属部品の有効な利用方法が必要とされている。金属部品を燃料電池構成材料として使用するため、600℃以下の低温で活性な固体電解質や電極材料の選定が要求されている。今後はセラミックス固体電解質および電極材料の選択、ならびに新規材料の開発、さらには電極材料の積層構造の製造技術が重要な課題となっている。
【0006】
動作温度を低減するための方法としては、固体電解質膜の厚みを薄くすることにより、酸化物イオンの移動抵抗を下げる、または、より酸素イオン伝導度の高い電解質材料を用いること等が挙げられる。前者の場合は固体電解質膜を自立させることが不可能であるため、多孔体とした電極上に電解質膜を形成する方法が用いられている。この多孔性電極膜を通って反応ガスが気体流路と電解質膜表面などの反応場へ拡散し、また反応により生成した水などの生成ガスが外部に拡散することになる。
【0007】
さらに空気極においては、電子−イオン混合導電体電極を用いると電極と電解質とが接する二相界面でも酸素イオンが侵入することができる。ペロブスカイトを電極材料とすることにより、固体電解質/ペロブスカイト界面の電極反応抵抗を減少させることができ、低温で作動可能な高性能電極が可能となることが明らかとなった(非特許文献1)。そのため、電極の微細構造を制御して電極−ガスの二相界面を大きくすることが特性の向上に非常に大きな効果をもたらす。
【0008】
通常、燃料電池は1W/cm2が実用化の目安とされるが、この運転条件では3.5ml/cm2・minもの大量の酸素ガスが消費されることとなる。よって、これらの反応ガス、生成ガスを透過させることができる十分に大きな気体透過性が必要となる。一方で発電ロスを抑えるために導電率を大きく、且つセル構造を支えるための十分な強度が、特に自動車のような振動のある状況下での使用においては、重要となる。これら相反した性能を実現するためには、多孔体の微構造を設計する必要がある。このような多孔体電極を製造する方法としては、電極の固体電解質との界面側から電極の表面側へ向かって気孔径が順次大きくなる微細構造等が開示されている(特許文献1)。
【0009】
さらに、電極から外部回路への電気の取り出しには通常電極表面に金属網等を設置して集電を行なうが、電極気孔率が高いと電極面内の抵抗が著しく増大してしまうため、集電抵抗が増加してしまうといった問題点が残されている。
【0010】
【非特許文献1】
H. Arai, K. Eguchi, T. Inoue, 「Proc.of the Symposiu on Chemical Sensors」, (Hawaii), 87−9, (1987), p.2247.
【特許文献1】
特開2002−175814号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記事実に鑑み、本発明は、反応ガス透過性、電気伝導性、酸素イオン伝導性及び機械的強度に優れる固体電解質型燃料電池用電極材料およびその製造方法、ならびにそれを用いた固体電解質型燃料電池を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
電極材料の気孔中の開気孔率が75%以上であり、連続した空孔粒子群を有することを特徴とする固体酸化物燃料電池用電極材料である。
【0013】
【発明の効果】
本発明の電極材料は、気孔中の開気孔率が75%以上であるため、電極の反応ガス透過性に優れる。さらに連続した空孔粒子群を有するので、高い電気伝導性、酸素イオン伝導性、機械的強度、反応ガス透過性に優れる。また、気孔形成材の添加量を最小とすることができるので、従来の方法と比べ、製造コストを低減することが可能となり得る。かような特性を有する本発明の電極材料を用いることにより、固体電解質型燃料電池の性能を向上させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、固体電解質型燃料電池における電気伝導性、反応ガス透過性、酸素イオン伝導性、および機械的強度に優れる電極材料に関するものである。
【0015】
図1に、本発明の固体電解質型燃料電池用電極材料を用いた固体電解質型燃料電池の模式図を示す。なお、本発明の実施形態がこれに限定されるものではない。図1における固体電解質型燃料電池は、固体電解質1と、前記固体電解質1を挟持する一対の空気極2と、燃料極3と、から構成されている。かような構成の固体電解質型燃料電池(単電池)を組み合わせることにより、高出力の燃料電池を実現することができる。なお、前記固体電解質型燃料電池(単電池)は、500〜800℃に加熱した状態で空気と燃料を供給するようになっている。ここで、固体電解質1は、一方の電極である空気極2より酸素イオンを他方の電極である燃料極3に運ぶ働きをすることにより起電力が生じる。
【0016】
本発明の固体電解質型燃料電池用電極材料は、開気孔率が75%以上であり、連続した空孔粒子群を有するものである。これにより、十分な反応ガス透過性が得られる。なお、前記開気孔率は、後述の実施例に記載した方法により求められるものである。
【0017】
連続した空孔粒子群とは、電極材料において網目状につながる構造を形成していると考えられる。かような構造を形成し得ることは、後述の図2に示すように、粒子群造粒体23が局在化することにより粒子のつながりを制御することが可能となることからも推察される。
【0018】
本発明の電極材料は相対密度が、70〜95%、特に75〜95%であることが好ましい。相対密度が95%より高いと、反応ガス透過性が低下し、反応場が制限され、燃料電池反応が阻害されることにより、電極材料反応抵抗が増加する恐れがあるため望ましくない。また相対密度が70%より低いと、十分な機械的強度が得られず電極中が破壊され、ひびが入るため望ましくない。また、電極材料(焼結体)の切断面を観察した場合に、相対密度が70〜95%、特に75〜95%であることが好ましい。
【0019】
本発明の電極材料は母材として、平均粒径0.1〜5μmの(A1−xBx)CoO3− δ(ただし、AはLa、Y、Sm、Gd、Pr、Caのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせであり、BはSr、Ba、Caのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせであり、0≦x≦0.5であり、δは酸素欠損量を表わす)の組成を有する酸化物材と、空気などの反応ガス経路としての空孔粒子群とからなる。
【0020】
xを上記範囲にするのは、他の電極材料との熱膨張係数差を小さくするためである。xが0.5を超えると反りなどの変形を起こす恐れがある。前記酸化物材は、電気伝導性に優れる。したがって、本発明の電極材料は空気極を構成する成分として用いることにより、電気伝導性に優れる電極材料を得ることができる。
【0021】
また、電極材料の切断面に対して、空孔粒子群径が4〜50μmである前記空孔粒子群の面積の合計が、線インターセプト法で測定される面積分率で、5〜20面積%であることがさらに好ましい。前記空孔粒子群とは、焼結により、気孔形成材が消失して、形成された空孔(気孔ともいう。同義であるため明細書中、特に区別せずに用いている。)のことである。前記気孔形成材は、いわば空孔生成場所のテンプレート材料としての機能を有する。前記空孔粒子群径、および面積分率の測定方法は、後述の実施例に記載した方法により求められるものである。
【0022】
空孔粒子群径を4〜50μmとすることにより、燃料電池反応の向上と、反応ガス透過性に対する強度の低下を抑える効果とを両立することが可能となり得る。空孔粒子群径が4μmより短いと気孔内をガスが流れにくくなる傾向になるため反応場が狭まり、反応抵抗の増加が生じる。一方、空孔粒子群径が50μmを超えると、粒子群が局在化しすぎるため、機械的強度の低下を招くとともに電気伝導および酸素イオン伝導を阻害してしまい、反応抵抗の増加を招く。
【0023】
また、前記空孔粒子群の面積の合計が大きいと十分な機械的強度が得られず、電極中が破壊されてひびが入る傾向があるため、20面積%以下とすることが望ましい。また、空孔粒子群径の面積が小さいと電気伝導性および酸素イオン伝導性が低下して、燃料電池反応が阻害され、電極材料反応抵抗が低下するという傾向があるため、5面積%以上とすることがより望ましい。なお、本発明における前記空孔粒子群の面積の合計は、線インターセプト法で測定される面積分率であり、後述の実施例に記載した方法により求められるものである。
【0024】
上述の通り、本発明の電極材料は、反応ガス透過性、電気伝導性、酸素イオン伝導性、および機械的強度に優れるものである。よって、本発明の電極材料を用いた固体電解質型燃料電池は、優れた特性を得ることができる。
【0025】
なお、本発明の電極材料を用いた固体電解質型燃料電池の製造方法は、特に限定されるものではなく、電極材料を焼結する前に固体電解質上に塗布してもよく、または、本発明の電極材料を焼結した後に固体電解質のスラリーを塗布してもよい。本発明の電極材料は、特に空気極として用いることが好ましく、この時、燃料極および固体電解質としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。さらに、固体電解質と、空気極および燃料極との間に中間層を有していてもよい。
【0026】
本発明の電極材料の第1の製造方法は、予め気孔形成材を酸化物材に60〜90質量%の割合で混合・調製してなる粒子群造粒体を、さらに酸化物材に混合した後、焼結することを特徴とする方法である。
【0027】
気孔形成材としては、セルロース、低密度ポリエチレン、グラファイト粉末、および/またはカーボンブラック等の有機物粉末を用いることが好ましい。前記気孔形成材として特に好ましくは、グラファイト粉末および/またはカーボンブラックを用いる。前記気孔形成材の平均粒径は、好ましくは2〜10μmのものを用いる。前記気孔形成材の平均粒径が2μm未満だと効果的に気孔が形成できないという傾向があり、10μmを超えると電極反応抵抗が高くなってしまうため望ましくない。
【0028】
酸化物材としては前述した通りであり、ここでは記載を省略する。前記酸化物材は、公知の特開平02−74505号公報に記載された方法などにより製造することができる。
【0029】
前記気孔形成材と前記酸化物材との混合・調製において、前記気孔形成材を前記酸化物材に60〜90質量%で混合する。前記気孔形成剤の添加量が60質量%より低いと開気孔率が低下し十分な反応ガス透過性がえられない恐れがあり、90質量%を超えると機械的強度が低下するため、上記範囲が好ましい。
【0030】
混合はアルコール中でボールミルを用いて混合し、その後、スプレードライヤー等の公知の方法により、平均粒径が好ましくは10〜80μmに調製して粒子群造粒体を得る。平均粒径が10μmより小さいと、粒子群組織の効果があらわれない傾向にあり、80μmを超えると組織全体が均質化してしまい、粒子群組織を得るのが困難なため望ましくない。前記粒子群造粒体は篩い分けをし、V型ブレンダー等の各種混合器を用いて混合するとよい。
【0031】
前記粒子群造粒体を、さらに酸化物材に混合する際は、前記酸化物材の平均粒径は好ましくは0.2〜1.5μmに調製したものを用いて、アルコール中でボールミルにより混合粉砕する。また、前記酸化物材に、前記気孔形成材を好ましくは15〜30質量%となるように混合する。前記気孔形成材が15質量%未満だと気孔形成の効果が足りず、30質量%を超えると機械的強度が低下するため望ましくない。
【0032】
上述のように、焼結処理により消滅する気孔形成材と酸化物材とを混合・調整することにより粒子群造粒体とし、所定の割合で母材の酸化物材に添加し、アルコール中でボールミル等で混合することで、図2に示すように、母材である酸化物材21中に、粒子群造粒体23が局在化した粒子群分散微構造とすることができる。前記粒子群分散微構造は、従来の均一分散手法とは異なり、粒子のつながりを制御することが可能となり得る。これにより、反応ガス透過性、機械的強度、酸素イオン伝導性、および電気伝導性を有する機能を十分に発現させることが可能となる。
【0033】
焼結は、特に限定されないが、1000〜1300℃で行われることが好ましい。1000℃未満であると、焼結が不十分であるため気孔形成材が残留する恐れがある。また1300℃を超えると、焼結が進行しすぎて粒界割れを引き起こす可能性がある。さらに、焼結時には、共生関係のあるトチとアルミナ製のサヤとを用いることが好ましい。トチとは焼結する際に焼結物の上に載せる板であり、焼結物と熱膨張率とが近似し、反応性が少ないものが好ましい。サヤは焼結時に温度条件を保持し、ほこりなどから焼結物を守るためのセラミックス製の箱状の囲いである。焼結物をサヤに入れ、トチ・サヤ・トチ・サヤのように多数重ねることで、窯内の空間を有効に利用することができる。
【0034】
さらに本発明の電極材料の第2の製造方法としては、予め気孔形成材を酸化物材に60〜90質量%の割合で混合・調製してなる粒子群造粒体と、酸化物材とを混合した後、スラリー化して固体電解質基板に塗布し、焼結して電極材料(焼結体)を製造する方法である。
【0035】
前記気孔形成材と酸化物材との混合までは、上述の第1の製造方法と同様の方法を用いて行う。
【0036】
前記スラリーは、前記粒子群造粒体および前記酸化物材の他に、溶媒、バインダー、可塑剤などを配合し、適度な粘度に調製する。例えば、前記バインダーとしては、ポリビニルエーテル、エチルセルロース、アセチルセルロース等が挙げられ、これらを単独もしくは二種以上を混合して用いることができる。また、前記溶媒としては、エタノール、アセトン、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
【0037】
前記スラリーをドクターブレード法、印刷法、圧縮形成法、スラリーディッピング法等の公知の方法を用いて成形し空気極上に塗布した後、焼結する。固体電解質基板としては、特に限定されず、従来公知のものを用いればよい。前記焼結は、特に限定されないが、1000〜1300℃で行われることが好ましい。
【0038】
本発明の電極材料は、図3に示すような自動車酸素センサ30に適用することもできる。この自動車酸素センサ30は、複数の通気孔31Aが形成された容器状のケース31内に、導電性気密シール32を介して、標準電極(Pt)33と検出電極(Pt)34で挟持されて本発明の電極材料層35が収納されている。なお、検出電極34の外側面は、保護膜36で覆われている。また、ケース31の上部には、排ガスダクト壁37が周回して設けられ、ケース31の外部からの排ガスを通気孔31Aに導くようになっている。また、標準電極33の内側空間には、標準ガスSGを導入するようになっている。
【0039】
このような、自動車酸素センサ30に本発明の電極材料を適用することにより、耐久性および安定性に優れた自動車酸素センサを実現することができる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳述するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
(1)ペロブスカイト複合酸化物粉末の合成:
La0.8Sr0.2CoO3− δで示されるペロブスカイト粉末を、以下に示す方法(特開平02−74505号公報に記載された方法と同様である)により製造した。ランタン、ストロンチウム、コバルトの炭酸塩(平均粒径約2〜3μmの粉末を使用)を出発原料として、それぞれモル比でLa:Sr:Co=8:2:10となるように加え、ボールミルで粉砕混合した(粉砕後、混合粉の平均粒径約1μm)。得られた混合物100質量部に対して、クエン酸約64質量部及び純水400質量部を加え、60±5℃で反応させた。反応が終了した後、得られたスラリーを120℃で脱水し、複合クエン酸塩を得た。得られた複合クエン酸塩を、1000℃で10時間、大気中で仮焼した後、1300℃で6時間本焼を行い、La0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末(平均粒径1.0μm)を製造した。尚、以下の実施例、比較例、及び参考例においても、別途記載のない限り、出発原料である炭酸塩の種類や混合比を変更した他は、実施例1と全く同様な方法によりペロブスカイト粉末を製造した。
【0042】
(2)粒子群造粒体の作製:
上述のように合成したLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材として粒径5μmのグラファイト粉末と、を2:8(質量比)でエタノール中で、ボールミルにて48時間混合した。その後、スプレードライヤーにて造粒し、La0.8Sr0.2CoO3− δ−グラファイト粒子群造粒体(平均粒径50μm)とした。
【0043】
(3)原料粉末の作製:
前記La0.8Sr0.2CoO3− δ−グラファイト粒子群造粒体をグラファイトの添加量が20質量%となるように、前記La0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末に添加した。次いで、エタノール中でボールミルにて2分混合した後、乾燥して原料粉末とした。
【0044】
(4)電極材料(焼結体)の作製:
前記原料粉末を金型で圧縮し、静水圧プレスで2ton/cm2の圧力で成形し、1200℃で6時間焼結して、電極材料(焼結体)を得た。
【0045】
(5)固体酸化物燃料電池セルの作製:
次に前記電極材料複合酸化物粉末と同様に、固体電解質材料であるLa0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2O3− δ粉末(平均粒径1.0μm)をクエン酸塩法により作成した。前記La0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2O3− δ粉末100gに対して、テレピン油およびバインダー(エチルセルロース)を適度な粘度となるように調整した。次に、攪拌脱泡機を用いてスラリー化し、ドクターブレード法によって前記電極材料(焼結体)上に、厚み100μmのランタンガレート膜を作製し、1200℃で2時間焼結した。得られた、電極材料−固体電解質複合体基板の上に燃料電極として市販の白金ペーストを印刷法により作製し、800℃で1時間、焼結することにより、燃料電池セルを作製した。
【0046】
(実施例2)
気孔形成材として粒径10μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量15質量%の割合で用いた以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0047】
(実施例3)
気孔形成材として粒径5μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量25質量%の割合で用いた以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0048】
(実施例4)
気孔形成材として粒径10μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量20質量%の割合で用い、実施例1の(2)においてLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材とを1:9にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0049】
(実施例5)
気孔形成材として粒径10μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量35質量%の割合で用い、実施例1の(2)においてLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材とを1:9にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0050】
(実施例6)
電極材料の母材にLa0.7Sr0.3CoO3− δ、および気孔形成材として粒径5μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量20質量%の割合で用いた以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0051】
(実施例7)
電極材料の母材にSm0.8Sr0.2CoO3− δ、および気孔形成材として粒径5μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量20質量%の割合で用いた以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0052】
(実施例8)
気孔形成材として粒径5μmの低密度ポリエチレン粉末を用いた以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0053】
(実施例9)
気孔形成材として粒径5μmのカーボンブラック粉末を用いた以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0054】
(実施例10)
実施例1と全く同様に(3)の原料粉末まで作製した後、この原料粉末10gをテレピン油およびバインダー(エチルセルロース)を加え、適度な粘度に調節した。これを攪拌脱泡器にて混合、脱泡を行い、スラリー化した。前記スラリーをφ14mm×1mmのランタンガレート基板に印刷法により塗布し、1200℃で2時間焼結した。次に他方の面に白金ペーストを同様に印刷法により塗布し、1100℃で2時間焼結することにより、燃料電池セルを作製した。
【0055】
(比較例1)
気孔形成材として粒径10μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量5質量%の割合で用いた。さらに、実施例1の工程において「(2)粒子群粉末の造粒」を実施せずに、直接「(3)原料粉末の作製」を行い、エタノール中、ボールミルで60分混合した以外は、実施例1と同様に燃料電池セルを作製した。
【0056】
(比較例2)
気孔形成材として粒径10μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量20質量%の割合で用いた。さらに、実施例1の工程において「(2)粒子群粉末の造粒」を実施せずに、直接「(3)原料粉末の作製」を行い、エタノール中でボールミルで20分混合した以外は、実施例1と同様に燃料電池セルを作製した。
【0057】
(参考例1)
気孔形成材として粒径5μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量20質量%の割合で用いた。さらに、実施例1の(2)においてLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材とを5:5にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0058】
(参考例2)
気孔形成材として粒径5μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量10質量%の割合で用いた。さらに、実施例1の(2)においてLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材とを5:5にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0059】
(実施例11)
気孔形成材として粒径50μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量10質量%の割合で用いた。さらに、実施例1の工程(2)においてLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材とを1:9にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0060】
(参考例3)
気孔形成材として粒径5μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量40質量%の割合で用いた。さらに、実施例1の工程(2)においてLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材とを2:8にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0061】
(実施例12)
気孔形成材として粒径1μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量10質量%の割合で用いた。さらに、工程(2)における粒子群粉末の割合を2:8にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0062】
(参考例4)
気孔形成材として粒径50μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量20質量%の割合で用いた。さらに、実施例1の工程(2)においてLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材とを2:8にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0063】
(参考例5)
気孔形成材として粒径100μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量20質量%の割合で用いた。さらに、実施例1の工程(2)においてLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材とを2:8にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0064】
(電極特性評価)
図4に示すように、上述のように作製した燃料電池セル44の外周にφ0.2mmの白金線を巻きつけ、白金ペーストを塗布して800℃×1時間で焼付け、参照電極45とした。また、空気極2および燃料極3から外部回路への電気の取り出し用に、それぞれの電極表面に集電用白金メッシュ46を設置した。空気極2および燃料極3のそれぞれに空気供給管47、燃料ガス供給管48を取り付けて燃料電池49を試作した。前記燃料電池49を測定回路(インピーダンス評価装置)50に接続し、発電能力を測定した。測定温度を650℃として、空気供給管7、燃料ガス供給管48から空気および水素ガスをそれぞれ空気極2および燃料極3に供給し、外部回路を接続することにより燃料電池反応を開始した。ソーラートロン社のインピーダンスアナライザー1287+1255Bにより、単位電極面積あたり300mA/cm2のときの空気極側反応抵抗を測定した。
【0065】
(密度および気孔率測定)
電極材料(焼結体)の寸法と質量から見かけの密度を算出し、また理論密度をXRD測定から求めた格子長より算出し、相対密度を下記式から導出した。
【0066】
【数1】
【0067】
また、全気孔率は下記式により算出した。
【0068】
【数2】
【0069】
開気孔率は水銀ポロシメータにより開気孔容積を測定し、次の式により算出した。
【0070】
【数3】
【0071】
(粒子群微構造評価)
電極材料(焼結体)をダイヤモンド粒子(0.26μm)で研磨した後、研磨面を光学顕微鏡にて観察した。評価は、顕微鏡写真の4×4mmの面積に関して行った。画像解析装置を用いて、母相の平均粒径を求めた。線インターセプト法により、すなわち、研磨面上の空孔粒子群を写真にとり、写真上でランダムに直線を引くことにより、この直線が横切る全ての空孔粒子群の直径を求めた。この平均を空孔粒子群の平均直径とし、画像解析装置により空孔粒子群の面積の合計を求めた。最後に、線インターセプト法により求めた空孔粒子群径が4〜50μmである空孔粒子群の面積分率を求める。
【0072】
また、電極組織中亀裂の有無の評価、上記試料を光学顕微鏡により100倍にて観察し、ひび割れの有無により評価した。
【0073】
以上の実施例(1〜12)、比較例(1〜2)、参考例(1〜5)について、上記評価法に基づいて得られた酸化物材料に基づく固体酸化物燃料電池セルの評価結果をまとめたものを表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
同じ気孔形成材添加量でも、粒子群造粒体として添加していない系(比較例1)に比べて、粒子群造粒体として添加した系(実施例1)は、電極の破壊を生じずに反応抵抗の低減ができている。また、ほぼ同じ反応抵抗が得られた実施例1と比較例2において、粒子群造粒体を添加した実施例1の相対密度は、86.2%であり、一方、従来型の気孔が均質分散した比較例2では相対密度が58.3%と、粒子群分散構造としたことで少ない気孔量で有効に反応ガス拡散経路を形成できている。したがって、相対密度向上の効果で機械的強度および電気伝導性の向上ももたらされており、粒子群分散構造からなる電極材料が固体電解質型酸化物の特性向上および信頼性の向上に有効であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体電解質型燃料電池の模式図を示す。
【図2】粒子群造粒体が局在化した粒子群分散微構造の模式図を示す。
【図3】自動車酸素センサの模式図を示す。
【図4】電極特性評価に用いた燃料電池を示す。
【符号の説明】
1…固体電解質、2…空気極、3…燃料極、21…酸化物材、23…粒子群造留体、30…自動車センサ、31A…通気孔、31…ケース、32…導電性気密シール、33…標準電極(Pt)、34…検出電極(Pt)、35…電極材料層、36…保護膜、37…排ガスダクト壁、44…燃料電池セル、45…参照電極、46…集電用白金メッシュ、47…空気供給管、48…燃料ガス供給管、49…燃料電池、50…測定回路(インピーダンス評価装置)、SG…標準ガス。
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解質型燃料電池用電極材料およびその製造方法、ならびにそれを用いた固体電解質型燃料電池に関する。さらに詳しくは、反応ガス透過性、電気伝導度、および機械的強度を有する固体電解質型燃料電池用電極材料およびその製造方法、ならびにそれを用いた固体電解質型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
1899年にNernstが酸化物から成る固体電解質を発見した後、1937年にBaurとPreisが、電解質としてこのような固体酸化物を利用した固体酸化物型燃料電池を1000℃で運転した。これ以来、固体酸化物型燃料電池は進歩を続けており、出力が数kWのジルコニア質セラミックス燃料電池が数万時間の運転実績を積んでいる。
【0003】
このような固体酸化物型燃料電池は、1000℃以上の高温で運転するために、炭化水素系燃料を電池内で改質(internal reforming)することができる。このため、固体酸化物型燃料電池では、60%を超える高い燃焼効率を得ることが可能であると考えられている。
【0004】
通常、固体酸化物型燃料電池は、固体電解質、燃料極、空気極および中間層とからなる。これら全ての構成材料は酸化還元雰囲気に対して化学的に安定であり、且つ適度な電気伝導度を有することが要求される。さらに、構成材料間の熱膨張係数が近似していることが要求される。また、燃料極及び空気極は、ガスと電子を電解質まで供給し、電解質との界面において電気化学反応を起こす反応場を提供している。前記反応場は、ガスと電子そして酸素イオンが接するため三相界面と呼ばれている。電極特性の向上には、電子と酸素イオンに対して共に伝導体である混合伝導性酸化物を用い、電極材料中に電子と酸素イオンとを拡散させて電極表面でも燃料電池反応を進行させることや、電極材料組織を多孔化してガスの接触面積を増大させることが有効であるとされている。さらに、当然のことであるが固体電解質型燃料電池は、安価であることが望まれる。
【0005】
そのため、セラミックス固体電解質を用いたセラミックス電池では、セラミックス材料の選択が非常に難しくなっているうえ、燃焼器本体などの容器にはフェライト系ステンレスなどの金属部品の有効な利用方法が必要とされている。金属部品を燃料電池構成材料として使用するため、600℃以下の低温で活性な固体電解質や電極材料の選定が要求されている。今後はセラミックス固体電解質および電極材料の選択、ならびに新規材料の開発、さらには電極材料の積層構造の製造技術が重要な課題となっている。
【0006】
動作温度を低減するための方法としては、固体電解質膜の厚みを薄くすることにより、酸化物イオンの移動抵抗を下げる、または、より酸素イオン伝導度の高い電解質材料を用いること等が挙げられる。前者の場合は固体電解質膜を自立させることが不可能であるため、多孔体とした電極上に電解質膜を形成する方法が用いられている。この多孔性電極膜を通って反応ガスが気体流路と電解質膜表面などの反応場へ拡散し、また反応により生成した水などの生成ガスが外部に拡散することになる。
【0007】
さらに空気極においては、電子−イオン混合導電体電極を用いると電極と電解質とが接する二相界面でも酸素イオンが侵入することができる。ペロブスカイトを電極材料とすることにより、固体電解質/ペロブスカイト界面の電極反応抵抗を減少させることができ、低温で作動可能な高性能電極が可能となることが明らかとなった(非特許文献1)。そのため、電極の微細構造を制御して電極−ガスの二相界面を大きくすることが特性の向上に非常に大きな効果をもたらす。
【0008】
通常、燃料電池は1W/cm2が実用化の目安とされるが、この運転条件では3.5ml/cm2・minもの大量の酸素ガスが消費されることとなる。よって、これらの反応ガス、生成ガスを透過させることができる十分に大きな気体透過性が必要となる。一方で発電ロスを抑えるために導電率を大きく、且つセル構造を支えるための十分な強度が、特に自動車のような振動のある状況下での使用においては、重要となる。これら相反した性能を実現するためには、多孔体の微構造を設計する必要がある。このような多孔体電極を製造する方法としては、電極の固体電解質との界面側から電極の表面側へ向かって気孔径が順次大きくなる微細構造等が開示されている(特許文献1)。
【0009】
さらに、電極から外部回路への電気の取り出しには通常電極表面に金属網等を設置して集電を行なうが、電極気孔率が高いと電極面内の抵抗が著しく増大してしまうため、集電抵抗が増加してしまうといった問題点が残されている。
【0010】
【非特許文献1】
H. Arai, K. Eguchi, T. Inoue, 「Proc.of the Symposiu on Chemical Sensors」, (Hawaii), 87−9, (1987), p.2247.
【特許文献1】
特開2002−175814号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記事実に鑑み、本発明は、反応ガス透過性、電気伝導性、酸素イオン伝導性及び機械的強度に優れる固体電解質型燃料電池用電極材料およびその製造方法、ならびにそれを用いた固体電解質型燃料電池を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
電極材料の気孔中の開気孔率が75%以上であり、連続した空孔粒子群を有することを特徴とする固体酸化物燃料電池用電極材料である。
【0013】
【発明の効果】
本発明の電極材料は、気孔中の開気孔率が75%以上であるため、電極の反応ガス透過性に優れる。さらに連続した空孔粒子群を有するので、高い電気伝導性、酸素イオン伝導性、機械的強度、反応ガス透過性に優れる。また、気孔形成材の添加量を最小とすることができるので、従来の方法と比べ、製造コストを低減することが可能となり得る。かような特性を有する本発明の電極材料を用いることにより、固体電解質型燃料電池の性能を向上させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明は、固体電解質型燃料電池における電気伝導性、反応ガス透過性、酸素イオン伝導性、および機械的強度に優れる電極材料に関するものである。
【0015】
図1に、本発明の固体電解質型燃料電池用電極材料を用いた固体電解質型燃料電池の模式図を示す。なお、本発明の実施形態がこれに限定されるものではない。図1における固体電解質型燃料電池は、固体電解質1と、前記固体電解質1を挟持する一対の空気極2と、燃料極3と、から構成されている。かような構成の固体電解質型燃料電池(単電池)を組み合わせることにより、高出力の燃料電池を実現することができる。なお、前記固体電解質型燃料電池(単電池)は、500〜800℃に加熱した状態で空気と燃料を供給するようになっている。ここで、固体電解質1は、一方の電極である空気極2より酸素イオンを他方の電極である燃料極3に運ぶ働きをすることにより起電力が生じる。
【0016】
本発明の固体電解質型燃料電池用電極材料は、開気孔率が75%以上であり、連続した空孔粒子群を有するものである。これにより、十分な反応ガス透過性が得られる。なお、前記開気孔率は、後述の実施例に記載した方法により求められるものである。
【0017】
連続した空孔粒子群とは、電極材料において網目状につながる構造を形成していると考えられる。かような構造を形成し得ることは、後述の図2に示すように、粒子群造粒体23が局在化することにより粒子のつながりを制御することが可能となることからも推察される。
【0018】
本発明の電極材料は相対密度が、70〜95%、特に75〜95%であることが好ましい。相対密度が95%より高いと、反応ガス透過性が低下し、反応場が制限され、燃料電池反応が阻害されることにより、電極材料反応抵抗が増加する恐れがあるため望ましくない。また相対密度が70%より低いと、十分な機械的強度が得られず電極中が破壊され、ひびが入るため望ましくない。また、電極材料(焼結体)の切断面を観察した場合に、相対密度が70〜95%、特に75〜95%であることが好ましい。
【0019】
本発明の電極材料は母材として、平均粒径0.1〜5μmの(A1−xBx)CoO3− δ(ただし、AはLa、Y、Sm、Gd、Pr、Caのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせであり、BはSr、Ba、Caのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせであり、0≦x≦0.5であり、δは酸素欠損量を表わす)の組成を有する酸化物材と、空気などの反応ガス経路としての空孔粒子群とからなる。
【0020】
xを上記範囲にするのは、他の電極材料との熱膨張係数差を小さくするためである。xが0.5を超えると反りなどの変形を起こす恐れがある。前記酸化物材は、電気伝導性に優れる。したがって、本発明の電極材料は空気極を構成する成分として用いることにより、電気伝導性に優れる電極材料を得ることができる。
【0021】
また、電極材料の切断面に対して、空孔粒子群径が4〜50μmである前記空孔粒子群の面積の合計が、線インターセプト法で測定される面積分率で、5〜20面積%であることがさらに好ましい。前記空孔粒子群とは、焼結により、気孔形成材が消失して、形成された空孔(気孔ともいう。同義であるため明細書中、特に区別せずに用いている。)のことである。前記気孔形成材は、いわば空孔生成場所のテンプレート材料としての機能を有する。前記空孔粒子群径、および面積分率の測定方法は、後述の実施例に記載した方法により求められるものである。
【0022】
空孔粒子群径を4〜50μmとすることにより、燃料電池反応の向上と、反応ガス透過性に対する強度の低下を抑える効果とを両立することが可能となり得る。空孔粒子群径が4μmより短いと気孔内をガスが流れにくくなる傾向になるため反応場が狭まり、反応抵抗の増加が生じる。一方、空孔粒子群径が50μmを超えると、粒子群が局在化しすぎるため、機械的強度の低下を招くとともに電気伝導および酸素イオン伝導を阻害してしまい、反応抵抗の増加を招く。
【0023】
また、前記空孔粒子群の面積の合計が大きいと十分な機械的強度が得られず、電極中が破壊されてひびが入る傾向があるため、20面積%以下とすることが望ましい。また、空孔粒子群径の面積が小さいと電気伝導性および酸素イオン伝導性が低下して、燃料電池反応が阻害され、電極材料反応抵抗が低下するという傾向があるため、5面積%以上とすることがより望ましい。なお、本発明における前記空孔粒子群の面積の合計は、線インターセプト法で測定される面積分率であり、後述の実施例に記載した方法により求められるものである。
【0024】
上述の通り、本発明の電極材料は、反応ガス透過性、電気伝導性、酸素イオン伝導性、および機械的強度に優れるものである。よって、本発明の電極材料を用いた固体電解質型燃料電池は、優れた特性を得ることができる。
【0025】
なお、本発明の電極材料を用いた固体電解質型燃料電池の製造方法は、特に限定されるものではなく、電極材料を焼結する前に固体電解質上に塗布してもよく、または、本発明の電極材料を焼結した後に固体電解質のスラリーを塗布してもよい。本発明の電極材料は、特に空気極として用いることが好ましく、この時、燃料極および固体電解質としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。さらに、固体電解質と、空気極および燃料極との間に中間層を有していてもよい。
【0026】
本発明の電極材料の第1の製造方法は、予め気孔形成材を酸化物材に60〜90質量%の割合で混合・調製してなる粒子群造粒体を、さらに酸化物材に混合した後、焼結することを特徴とする方法である。
【0027】
気孔形成材としては、セルロース、低密度ポリエチレン、グラファイト粉末、および/またはカーボンブラック等の有機物粉末を用いることが好ましい。前記気孔形成材として特に好ましくは、グラファイト粉末および/またはカーボンブラックを用いる。前記気孔形成材の平均粒径は、好ましくは2〜10μmのものを用いる。前記気孔形成材の平均粒径が2μm未満だと効果的に気孔が形成できないという傾向があり、10μmを超えると電極反応抵抗が高くなってしまうため望ましくない。
【0028】
酸化物材としては前述した通りであり、ここでは記載を省略する。前記酸化物材は、公知の特開平02−74505号公報に記載された方法などにより製造することができる。
【0029】
前記気孔形成材と前記酸化物材との混合・調製において、前記気孔形成材を前記酸化物材に60〜90質量%で混合する。前記気孔形成剤の添加量が60質量%より低いと開気孔率が低下し十分な反応ガス透過性がえられない恐れがあり、90質量%を超えると機械的強度が低下するため、上記範囲が好ましい。
【0030】
混合はアルコール中でボールミルを用いて混合し、その後、スプレードライヤー等の公知の方法により、平均粒径が好ましくは10〜80μmに調製して粒子群造粒体を得る。平均粒径が10μmより小さいと、粒子群組織の効果があらわれない傾向にあり、80μmを超えると組織全体が均質化してしまい、粒子群組織を得るのが困難なため望ましくない。前記粒子群造粒体は篩い分けをし、V型ブレンダー等の各種混合器を用いて混合するとよい。
【0031】
前記粒子群造粒体を、さらに酸化物材に混合する際は、前記酸化物材の平均粒径は好ましくは0.2〜1.5μmに調製したものを用いて、アルコール中でボールミルにより混合粉砕する。また、前記酸化物材に、前記気孔形成材を好ましくは15〜30質量%となるように混合する。前記気孔形成材が15質量%未満だと気孔形成の効果が足りず、30質量%を超えると機械的強度が低下するため望ましくない。
【0032】
上述のように、焼結処理により消滅する気孔形成材と酸化物材とを混合・調整することにより粒子群造粒体とし、所定の割合で母材の酸化物材に添加し、アルコール中でボールミル等で混合することで、図2に示すように、母材である酸化物材21中に、粒子群造粒体23が局在化した粒子群分散微構造とすることができる。前記粒子群分散微構造は、従来の均一分散手法とは異なり、粒子のつながりを制御することが可能となり得る。これにより、反応ガス透過性、機械的強度、酸素イオン伝導性、および電気伝導性を有する機能を十分に発現させることが可能となる。
【0033】
焼結は、特に限定されないが、1000〜1300℃で行われることが好ましい。1000℃未満であると、焼結が不十分であるため気孔形成材が残留する恐れがある。また1300℃を超えると、焼結が進行しすぎて粒界割れを引き起こす可能性がある。さらに、焼結時には、共生関係のあるトチとアルミナ製のサヤとを用いることが好ましい。トチとは焼結する際に焼結物の上に載せる板であり、焼結物と熱膨張率とが近似し、反応性が少ないものが好ましい。サヤは焼結時に温度条件を保持し、ほこりなどから焼結物を守るためのセラミックス製の箱状の囲いである。焼結物をサヤに入れ、トチ・サヤ・トチ・サヤのように多数重ねることで、窯内の空間を有効に利用することができる。
【0034】
さらに本発明の電極材料の第2の製造方法としては、予め気孔形成材を酸化物材に60〜90質量%の割合で混合・調製してなる粒子群造粒体と、酸化物材とを混合した後、スラリー化して固体電解質基板に塗布し、焼結して電極材料(焼結体)を製造する方法である。
【0035】
前記気孔形成材と酸化物材との混合までは、上述の第1の製造方法と同様の方法を用いて行う。
【0036】
前記スラリーは、前記粒子群造粒体および前記酸化物材の他に、溶媒、バインダー、可塑剤などを配合し、適度な粘度に調製する。例えば、前記バインダーとしては、ポリビニルエーテル、エチルセルロース、アセチルセルロース等が挙げられ、これらを単独もしくは二種以上を混合して用いることができる。また、前記溶媒としては、エタノール、アセトン、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
【0037】
前記スラリーをドクターブレード法、印刷法、圧縮形成法、スラリーディッピング法等の公知の方法を用いて成形し空気極上に塗布した後、焼結する。固体電解質基板としては、特に限定されず、従来公知のものを用いればよい。前記焼結は、特に限定されないが、1000〜1300℃で行われることが好ましい。
【0038】
本発明の電極材料は、図3に示すような自動車酸素センサ30に適用することもできる。この自動車酸素センサ30は、複数の通気孔31Aが形成された容器状のケース31内に、導電性気密シール32を介して、標準電極(Pt)33と検出電極(Pt)34で挟持されて本発明の電極材料層35が収納されている。なお、検出電極34の外側面は、保護膜36で覆われている。また、ケース31の上部には、排ガスダクト壁37が周回して設けられ、ケース31の外部からの排ガスを通気孔31Aに導くようになっている。また、標準電極33の内側空間には、標準ガスSGを導入するようになっている。
【0039】
このような、自動車酸素センサ30に本発明の電極材料を適用することにより、耐久性および安定性に優れた自動車酸素センサを実現することができる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳述するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
(1)ペロブスカイト複合酸化物粉末の合成:
La0.8Sr0.2CoO3− δで示されるペロブスカイト粉末を、以下に示す方法(特開平02−74505号公報に記載された方法と同様である)により製造した。ランタン、ストロンチウム、コバルトの炭酸塩(平均粒径約2〜3μmの粉末を使用)を出発原料として、それぞれモル比でLa:Sr:Co=8:2:10となるように加え、ボールミルで粉砕混合した(粉砕後、混合粉の平均粒径約1μm)。得られた混合物100質量部に対して、クエン酸約64質量部及び純水400質量部を加え、60±5℃で反応させた。反応が終了した後、得られたスラリーを120℃で脱水し、複合クエン酸塩を得た。得られた複合クエン酸塩を、1000℃で10時間、大気中で仮焼した後、1300℃で6時間本焼を行い、La0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末(平均粒径1.0μm)を製造した。尚、以下の実施例、比較例、及び参考例においても、別途記載のない限り、出発原料である炭酸塩の種類や混合比を変更した他は、実施例1と全く同様な方法によりペロブスカイト粉末を製造した。
【0042】
(2)粒子群造粒体の作製:
上述のように合成したLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材として粒径5μmのグラファイト粉末と、を2:8(質量比)でエタノール中で、ボールミルにて48時間混合した。その後、スプレードライヤーにて造粒し、La0.8Sr0.2CoO3− δ−グラファイト粒子群造粒体(平均粒径50μm)とした。
【0043】
(3)原料粉末の作製:
前記La0.8Sr0.2CoO3− δ−グラファイト粒子群造粒体をグラファイトの添加量が20質量%となるように、前記La0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末に添加した。次いで、エタノール中でボールミルにて2分混合した後、乾燥して原料粉末とした。
【0044】
(4)電極材料(焼結体)の作製:
前記原料粉末を金型で圧縮し、静水圧プレスで2ton/cm2の圧力で成形し、1200℃で6時間焼結して、電極材料(焼結体)を得た。
【0045】
(5)固体酸化物燃料電池セルの作製:
次に前記電極材料複合酸化物粉末と同様に、固体電解質材料であるLa0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2O3− δ粉末(平均粒径1.0μm)をクエン酸塩法により作成した。前記La0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2O3− δ粉末100gに対して、テレピン油およびバインダー(エチルセルロース)を適度な粘度となるように調整した。次に、攪拌脱泡機を用いてスラリー化し、ドクターブレード法によって前記電極材料(焼結体)上に、厚み100μmのランタンガレート膜を作製し、1200℃で2時間焼結した。得られた、電極材料−固体電解質複合体基板の上に燃料電極として市販の白金ペーストを印刷法により作製し、800℃で1時間、焼結することにより、燃料電池セルを作製した。
【0046】
(実施例2)
気孔形成材として粒径10μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量15質量%の割合で用いた以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0047】
(実施例3)
気孔形成材として粒径5μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量25質量%の割合で用いた以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0048】
(実施例4)
気孔形成材として粒径10μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量20質量%の割合で用い、実施例1の(2)においてLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材とを1:9にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0049】
(実施例5)
気孔形成材として粒径10μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量35質量%の割合で用い、実施例1の(2)においてLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材とを1:9にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0050】
(実施例6)
電極材料の母材にLa0.7Sr0.3CoO3− δ、および気孔形成材として粒径5μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量20質量%の割合で用いた以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0051】
(実施例7)
電極材料の母材にSm0.8Sr0.2CoO3− δ、および気孔形成材として粒径5μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量20質量%の割合で用いた以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0052】
(実施例8)
気孔形成材として粒径5μmの低密度ポリエチレン粉末を用いた以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0053】
(実施例9)
気孔形成材として粒径5μmのカーボンブラック粉末を用いた以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0054】
(実施例10)
実施例1と全く同様に(3)の原料粉末まで作製した後、この原料粉末10gをテレピン油およびバインダー(エチルセルロース)を加え、適度な粘度に調節した。これを攪拌脱泡器にて混合、脱泡を行い、スラリー化した。前記スラリーをφ14mm×1mmのランタンガレート基板に印刷法により塗布し、1200℃で2時間焼結した。次に他方の面に白金ペーストを同様に印刷法により塗布し、1100℃で2時間焼結することにより、燃料電池セルを作製した。
【0055】
(比較例1)
気孔形成材として粒径10μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量5質量%の割合で用いた。さらに、実施例1の工程において「(2)粒子群粉末の造粒」を実施せずに、直接「(3)原料粉末の作製」を行い、エタノール中、ボールミルで60分混合した以外は、実施例1と同様に燃料電池セルを作製した。
【0056】
(比較例2)
気孔形成材として粒径10μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量20質量%の割合で用いた。さらに、実施例1の工程において「(2)粒子群粉末の造粒」を実施せずに、直接「(3)原料粉末の作製」を行い、エタノール中でボールミルで20分混合した以外は、実施例1と同様に燃料電池セルを作製した。
【0057】
(参考例1)
気孔形成材として粒径5μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量20質量%の割合で用いた。さらに、実施例1の(2)においてLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材とを5:5にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0058】
(参考例2)
気孔形成材として粒径5μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量10質量%の割合で用いた。さらに、実施例1の(2)においてLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材とを5:5にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0059】
(実施例11)
気孔形成材として粒径50μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量10質量%の割合で用いた。さらに、実施例1の工程(2)においてLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材とを1:9にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0060】
(参考例3)
気孔形成材として粒径5μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量40質量%の割合で用いた。さらに、実施例1の工程(2)においてLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材とを2:8にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0061】
(実施例12)
気孔形成材として粒径1μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量10質量%の割合で用いた。さらに、工程(2)における粒子群粉末の割合を2:8にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0062】
(参考例4)
気孔形成材として粒径50μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量20質量%の割合で用いた。さらに、実施例1の工程(2)においてLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材とを2:8にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0063】
(参考例5)
気孔形成材として粒径100μmのグラファイト粉末を用い、上記(3)において添加量20質量%の割合で用いた。さらに、実施例1の工程(2)においてLa0.8Sr0.2CoO3− δ複合酸化物粉末と、気孔形成材とを2:8にした以外は、実施例1と全く同様に燃料電池セルを作製した。
【0064】
(電極特性評価)
図4に示すように、上述のように作製した燃料電池セル44の外周にφ0.2mmの白金線を巻きつけ、白金ペーストを塗布して800℃×1時間で焼付け、参照電極45とした。また、空気極2および燃料極3から外部回路への電気の取り出し用に、それぞれの電極表面に集電用白金メッシュ46を設置した。空気極2および燃料極3のそれぞれに空気供給管47、燃料ガス供給管48を取り付けて燃料電池49を試作した。前記燃料電池49を測定回路(インピーダンス評価装置)50に接続し、発電能力を測定した。測定温度を650℃として、空気供給管7、燃料ガス供給管48から空気および水素ガスをそれぞれ空気極2および燃料極3に供給し、外部回路を接続することにより燃料電池反応を開始した。ソーラートロン社のインピーダンスアナライザー1287+1255Bにより、単位電極面積あたり300mA/cm2のときの空気極側反応抵抗を測定した。
【0065】
(密度および気孔率測定)
電極材料(焼結体)の寸法と質量から見かけの密度を算出し、また理論密度をXRD測定から求めた格子長より算出し、相対密度を下記式から導出した。
【0066】
【数1】
【0067】
また、全気孔率は下記式により算出した。
【0068】
【数2】
【0069】
開気孔率は水銀ポロシメータにより開気孔容積を測定し、次の式により算出した。
【0070】
【数3】
【0071】
(粒子群微構造評価)
電極材料(焼結体)をダイヤモンド粒子(0.26μm)で研磨した後、研磨面を光学顕微鏡にて観察した。評価は、顕微鏡写真の4×4mmの面積に関して行った。画像解析装置を用いて、母相の平均粒径を求めた。線インターセプト法により、すなわち、研磨面上の空孔粒子群を写真にとり、写真上でランダムに直線を引くことにより、この直線が横切る全ての空孔粒子群の直径を求めた。この平均を空孔粒子群の平均直径とし、画像解析装置により空孔粒子群の面積の合計を求めた。最後に、線インターセプト法により求めた空孔粒子群径が4〜50μmである空孔粒子群の面積分率を求める。
【0072】
また、電極組織中亀裂の有無の評価、上記試料を光学顕微鏡により100倍にて観察し、ひび割れの有無により評価した。
【0073】
以上の実施例(1〜12)、比較例(1〜2)、参考例(1〜5)について、上記評価法に基づいて得られた酸化物材料に基づく固体酸化物燃料電池セルの評価結果をまとめたものを表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
同じ気孔形成材添加量でも、粒子群造粒体として添加していない系(比較例1)に比べて、粒子群造粒体として添加した系(実施例1)は、電極の破壊を生じずに反応抵抗の低減ができている。また、ほぼ同じ反応抵抗が得られた実施例1と比較例2において、粒子群造粒体を添加した実施例1の相対密度は、86.2%であり、一方、従来型の気孔が均質分散した比較例2では相対密度が58.3%と、粒子群分散構造としたことで少ない気孔量で有効に反応ガス拡散経路を形成できている。したがって、相対密度向上の効果で機械的強度および電気伝導性の向上ももたらされており、粒子群分散構造からなる電極材料が固体電解質型酸化物の特性向上および信頼性の向上に有効であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体電解質型燃料電池の模式図を示す。
【図2】粒子群造粒体が局在化した粒子群分散微構造の模式図を示す。
【図3】自動車酸素センサの模式図を示す。
【図4】電極特性評価に用いた燃料電池を示す。
【符号の説明】
1…固体電解質、2…空気極、3…燃料極、21…酸化物材、23…粒子群造留体、30…自動車センサ、31A…通気孔、31…ケース、32…導電性気密シール、33…標準電極(Pt)、34…検出電極(Pt)、35…電極材料層、36…保護膜、37…排ガスダクト壁、44…燃料電池セル、45…参照電極、46…集電用白金メッシュ、47…空気供給管、48…燃料ガス供給管、49…燃料電池、50…測定回路(インピーダンス評価装置)、SG…標準ガス。
Claims (9)
- 気孔中の開気孔率が75%以上であり、連続した空孔粒子群を有することを特徴とする電極材料。
- 相対密度が70〜95%であることを特徴とする請求項1記載の電極材料。
- 母材として平均粒径0.1〜5μmの(A1−xBx)CoO3− δ(AはLa、Y、Sm、Gd、Pr、Caのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせであり、BはSr、Ba、Caのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせであり、0≦x≦0.5である)の組成を有する酸化物材と、反応ガス経路としての空孔粒子群と、からなることを特徴とする請求項1または2記載の電極材料。
- 切断面において、空孔粒子群径が4〜50μmである前記空孔粒子群の面積の合計が、線インターセプト法で測定される面積分率で、5〜20面積%であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電極材料。
- 予め気孔形成材を、酸化物材に60〜90質量%の割合で混合・調製した粒子群造粒体と、酸化物材と、を混合した後、焼結することを特徴とする電極材料の製造方法。
- 平均粒径2〜10μmに調製してなる気孔形成材を、酸化物材に60〜90質量%の割合で添加して平均粒径10〜80μmに調製してなる粒子群造粒体と、平均粒径0.2〜1.5μmに調製してなる酸化物材とを、前記気孔形成材が15〜30質量%となるように混合した後、1000℃〜1300℃の温度範囲で焼結することを特徴とする電極材料の製造方法。
- 予め気孔形成材を、酸化物材に60〜90質量%の割合で混合・調製してなる粒子群造粒体と、酸化物材とを混合した後、スラリー化して固体電解質基板に塗布し、焼結することを特徴とする電極材料の製造方法。
- 前記気孔形成材が、グラファイト粉末、セルロース、低密度ポリエチレン、および/またはカーボンブラックであることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の電極材料の製造方法。
- 請求項1から4に記載の電極材料、および請求項5〜8に記載の方法により得られた電極材料を空気極として有することを特徴とする固体電解質型燃料電池。
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