JP2004339028A - 焼成体粒子の製造方法、および焼成体粒子の製造装置 - Google Patents

焼成体粒子の製造方法、および焼成体粒子の製造装置 Download PDF

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Rikogaku Shinkokai
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Abstract

【課題】本発明は、焼成体粒子の新規な製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の焼成体粒子の製造装置は、媒体粒子の流動層を有し、この流動層に焼成前粒子が供給される。ここで、焼成前粒子を流動層の下に供給することが好ましい。また、媒体粒子はアルミナからなることが好ましい。また、焼成前粒子は酸化物からなることが好ましい。また、酸化物はLiMnであることが好ましい。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼成体粒子の製造方法、および焼成体粒子の製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子技術の発達に伴い、携帯電話、ノートパソコンなどに代表されるように携帯用ポータブル電子機器の小型化、軽量化が要求されるようになった。これら電子機器の小型化に伴い、半導体、電源といった構成要素にまでそれらが要求されている。半導体、電源といった電子機器の構成要素は、様々な機能を有した無機化合物材料が用いられている。これらは主に粉体を成形加工した形で用いられることが多い。従って、さらなる高機能化、高精度化が進むにつれて粉体を構成する焼成体粒子一つ一つに均質性や粒径の均一性などの要請も高度化してきている。
【0003】
従来の焼成体粒子の合成方法としては、固相反応法、共沈法、ゾルゲル法、および噴霧熱分解法などがあげられる。
【0004】
固相反応法は、原料の炭酸塩や酸化物を出発原料とし、これらを高温の電気炉内で焼成し目的物質を得る方法である。しかし、固相反応法は、出発原料として、炭酸塩や酸化物などの粉末を用いるため個々の粉末を分子レベルで均一に混合することが不可能である。このため、合成された粉末に組成むらができる。さらに、合成に非常に時間がかかり連続製造が困難である。
【0005】
共沈法は、原料の硝酸塩、塩化物あるいは硫酸塩を水に溶解させ、pHを調節して原料の沈殿物を生成させ、これを焼成して焼成体粒子を得る方法である。しかし、共沈法は、合成を液相で行うため組成制御は容易であるが粒子の結晶性が低いため、得られた粒子を長時間焼成しなければならない。さらに、合成プロセスが多段操作であるため、連続合成が不可能である。
【0006】
ゾルゲル法は、金属アルコキシドの加水分解重合反応を利用して合成を行う方法である。しかし、ゾルゲル法は、共沈法の場合と同様に、合成操作が多段であるため連続合成が不可能であること、原料の金属アルコキシドが高価であること、液相での微粒子合成のため結晶性が低く、それを向上させるために粒子を長時間焼成しなければならない。
【0007】
噴霧熱分解法には、超音波噴霧熱分解法、および二流体ノズルを用いる噴霧熱分解法などがある。
超音波噴霧熱分解法は、超音波噴霧器を用いて原料溶液を高温反応器内に噴霧し、熱分解させて微粒子を合成する方法である。しかし、超音波噴霧熱分解法は、原料溶液を超音波噴霧器によりミスト化しているためミストの発生量が少なく、最終的に粒子の製造速度が小さいという問題がある。
【0008】
二流体ノズルを用いる噴霧熱分解法は、二流体ノズルを用いて原料溶液を高温反応器内に噴霧し、熱分解させて微粒子を合成する方法である(例えば、特許文献1参照。)。この噴霧熱分解法は、分子レベルで十分に混合された原料溶液を高温の電気炉内に導入し気相で微粒子を合成するので、微粒子を比較的短時間で連続的に製造させることができる。この噴霧熱分解法は、原料濃度を変えることにより容易に粒径の制御が可能でかつ、組成が均一な形態を得られる利点を有している。また、粒子の製造速度が大きい。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−218622号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、原料溶液が二流体ノズルを用いて霧化されるため、反応器内での噴霧液滴の滞留時間が非常に短く、このため合成した粉体の結晶性が低く、比表面積も大きい。これにより、場合によっては合成した微粒子の二次焼成が必要になるという問題がある。このような問題点を解決する焼成体粒子の製造方法、および焼成体粒子の製造装置の開発が望まれている。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、焼成体粒子の新規な製造方法、および焼成体粒子の新規な製造装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の焼成体粒子の製造方法は、媒体粒子の流動層に焼成前粒子を供給する工程を有する方法である。
【0013】
ここで、焼成前粒子を流動層の下に供給することが好ましい。また、媒体粒子はアルミナからなることが好ましい。また、焼成前粒子は酸化物からなることが好ましい。また、酸化物はLiMnであることが好ましい。
【0014】
本発明の焼成体粒子の製造装置は、媒体粒子の流動層を有し、この流動層に焼成前粒子が供給されるものである。
【0015】
ここで、焼成前粒子を流動層の下に供給することが好ましい。また、媒体粒子はアルミナからなることが好ましい。また、焼成前粒子は酸化物からなることが好ましい。また、酸化物はLiMnであることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、焼成体粒子の製造方法、および焼成体粒子の製造装置にかかる発明の実施の形態について説明する。
【0017】
焼成体粒子の製造方法は、媒体粒子の流動層に焼成前粒子を供給する工程を有する方法である。また、焼成体粒子の製造装置は、媒体粒子の流動層を有し、この流動層に焼成前粒子が供給されるものである。
【0018】
流動層について説明する。
流動層を構成する媒体粒子は、アルミナからなることが好ましい。その理由は、他のセラミックス材料に比べ耐熱衝撃および耐磨耗性にすぐれているからである。
【0019】
媒体粒子の材質はアルミナに限定されない。このほか、シリカ、ジルコニア、窒化珪素などを使用することができる。
【0020】
媒体粒子の平均径は、100μm〜1000μmの範囲内にあることが好ましい。
【0021】
媒体粒子の幾何標準偏差は、1.00〜3.00の範囲内にあることが好ましい。
【0022】
流動層の静止層高は、50〜500mmの範囲内にあることが好ましい。
【0023】
流動層の全ガス速度(25℃基準)は、0.01〜0.90m/sの範囲内にあることが好ましい。
【0024】
流動層を通過させるキャリアガスとしては、空気を用いることができる。キャリアガスは空気に限定されない。このほか、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素、水素およびこれらの混合ガスなどを使用することができる。
【0025】
流動層において、焼成前粒子を供給する位置は、流動層の下であることが好ましい。その理由は、 焼成前粒子を流動層の下部に供給することで、それが反応器を出るまでに、媒体粒子と衝突、付着および剥離を幾度となく繰り返し、流動層内部に長く滞留することができるからである。
【0026】
焼成前粒子の状態は次のいずれであっても良い。ミストの溶媒が蒸発した後の乾燥粒子、乾燥粒子が熱分解した熱分解粒子、または、熱分解粒子が焼成された粒子である。いずれの粒子においても、流動層から出るときは焼成体粒子になっている。
【0027】
焼成前粒子は酸化物からなることが好ましい。酸化物としては、LiMn、LiCoO,LiMCo1−x(M=Ni,Mn), LiFePO,LiNiVO,LiCoNi1−yVO,LiMMn2−x(M=Co,Cr,Al,Mg,Zn,Ni,Fe),LiNiMn1−x, LiNi1−x−yCo(M=Al,Ga),Li[NiCo1−2xMn]O,MnV, LiTi12,CuO, Gd,Al,ZnO,ZrO,TiO,SnO,CeO,SiO,MgO,Fe,NiO,Y,PdO,PbO,Co,Mn,BaO,PuO,V,MoO,WO,Eu,YBaCu7−x,YBaCu,La−Sr−Cu−O,Tl−Ca−BaCu−O,(Bi,Pb)−Sr−Ca−Cu−O,MRuO(M=Sr,La),MRu7−x(M=Bi,Pb,Y,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm),BiCaSrCu,BiCaSrCu,ZnO−TiO, ZrO−SiO, MgAl,CoMo,CoMoO,CoAl,CuCr,PbCr,Pb(Zr,Ti)O,LaSr1−xMnO,LnSr1−xCoO(Ln=La,Nd,Gd),LnSr1−xCoFe1−y3−δ(La,Sm,Nd.Gd), LaSr1−xGaMg1−y3−δ, Mullite(3Al−2SiO),Mn−Zn ferrite, BaFe1219,Ba0.86Ca0.14TiO,BaTiO,BaZn1/3Nb2/3,PbMg1/3Nb2/3,SrTiO,PbTiO,ZnSiO,ZrSn1−xTiO,NiO−SDC(samaria−doped ceria),NiO−CGO(gadorinia−doped ceria),GdFe12,BaFe1219 ,NiFe,SrTiO,LaAlO Eu−doped Y, Eu−doped(YGd), CdWO,ZnWO,CaWO,SrWO,LaPO,Ce−doped LaPO, Eu−doped LaPO,Ce−Tb−doped LaPO,Eu−doped(Gd1−x,YAl12,YAlO,YAl,YSiO,Ce1−xTbMgAl1119などがある。焼成前粒子は酸化物に限定されない。このほか、硫化物としてはZnS,CdS,CuS,CuInS,CaLa 窒化物としてはSi,BN,AlN その他にSiCなどを使用することができる。
【0028】
焼成前粒子の平均径は、0.5μm〜40μmの範囲内にあることが好ましい。
【0029】
焼成前粒子の幾何標準偏差は、1.00〜3.00の範囲内にあることが好ましい。
【0030】
噴霧熱分解・流動層による微粒子合成の原理を説明する。
二流体ノズルで層上部から微小液滴を導入する。噴霧された微小液滴は熱分解反応器の内塔部分を層底部に達するまでの間に、溶媒の蒸発、溶質の析出、乾燥、熱分解のプロセスを経て固体粒子を形成する(液滴の熱分解過程)。層底部では流動化に必要な空気が供給され、そこで媒体粒子が流動化している。層底部に達した微粒子はその付着性が強いという性質から流動化している媒体粒子に静電気力や分子間力といった力で付着し、共に流動化する(付着・流動化過程)。その結果、微粒子の反応炉内の滞留時間が増加する。反応炉内部で一定時間滞留する間、微粒子内部での焼成プロセスを経る。そして流動化している媒体粒子間の摩擦や衝突により微粒子が剥離し、剥離した微粒子がキャリアガスに同伴され反応器より捕集系へと導かれる(剥離過程)。
以上は、本実験から推測された機構であり、本発明がこの機構に限定されるわけではないことはもちろんである。
【0031】
噴霧熱分解・流動層による微粒子合成装置には以下のような特長が挙げられる。
液相で充分混合された出発物質を用いるため、焼成体粒子の組成制御が容易である。原料溶液の濃度を変化させることにより合成される焼成体粒子の粒子径を制御できる。ミストから焼成体粒子を一段の操作で連続合成することができる。
流動層内に微粒子を均一に流動化し、かつ、一様に分散させることで微粒子同士の凝集を抑えて、粒子の焼成を行うことができる。
操作ガス速度は媒体粒子の粒径により決定できるので比較的大きな空塔基準ガス速度で微粒子を扱うことができる。
【0032】
以上のことから、本実施の形態によれば、焼成体粒子の製造方法が、媒体粒子の流動層に焼成前粒子を供給する工程を有するので、焼成体粒子の新規な製造方法を提供することができる。焼成体粒子の製造装置が、媒体粒子の流動層を有し、この流動層に焼成前粒子が供給されるので、焼成体粒子の新規な製造装置を提供することができる。この結果、焼成体粒子の結晶サイズの増加が確認され、比表面積の減少が確認された。
【0033】
また、これまでに噴霧熱分解法で合成された材料、例えば、電池材料、蛍光体、構造材料、顔料、触媒における酸化物微粒子であれば、本発明の製造方法および製造装置を用いることで、より結晶性の高い微粒子が合成できる。
【0034】
なお、本発明は上述の実施の形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0035】
【実施例】
つぎに、本発明にかかる実施例について具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではないことはもちろんである。
【0036】
実験装置および方法について説明する。
図1は実験装置の概略を示したものである。本実験装置は、主に、媒体粒子の流動化および生成された微小液滴を層内に安定に供給するための空気流通系、二流体ノズルを用いた微小液滴発生装置、内塔が媒体粒子中に挿入されている石英製熱分解反応器、微粒子回収部からなっている。
【0037】
空気流通系
本実験装置において反応器内へのガスの供給は二基のコンプレッサを用いている。一つは、二流体ノズルへ空気を供給するエアコンプレッサ(東芝社製、TOSCOM SLP5D−2S3)でもう一方は、二流体ノズルから発生する微小液滴を搬送し、かつ媒体粒子の流動化に必要な空気(流動化側ガス)を供給するエアコンプレッサ(JUN−AIR社製、オイルレスコンプレッサ・モデル1000)である。
【0038】
微小液滴発生装置
二流体ノズルに供給されたプリカーサー溶液は溶液と空気との間に働くシェアストレスにより微小液滴となり、これはチャンバー内で滞留し、同伴ガス(噴霧側ガス)により流動層反応器に供給される。
【0039】
流動層反応器
流動層反応器の詳細を説明する。層本体は、内径61.5mm、分散板から出口までの高さ950mmの石英製円筒型流動層である。反応器は、媒体粒子を支持するため、正三角形配列で穴径0.5mm、開孔比0.02の多孔板(分散板)で仕切られている。分散板の下には、整流層がある。整流層は、ラシヒリングなどを充填した層であり、空気の流れを整流するためのものである。また、層内の温度を測定するために分散板の30mm上部までPt熱電対を挿入できるようになっている。また、反応器は、その上部より微小液滴を層底部まで導入するために、分散板からの高さ30mmに達するように内径14.5mm、長さ1120mmの石英管が層の中心に挿入されている。
【0040】
電気炉
電気炉(1000℃縦型管状炉、アルファ技研株式会社製)を説明する。電気炉は全長900mm、3段の加熱ゾーンからなり、PIDコントロールにより温度制御されている。
【0041】
微粒子回収部
生成微粒子の回収にはサイクロン12を用いた。排ガスは空冷されたあと、ドラフト内に排気されるシステムになっている。
【0042】
実験方法
原料溶液の調製は次のように行う。原料塩として、硝酸リチウム(和光純薬、LiNO、特級)および硝酸マンガン六水和物(和光純薬、Mn(NO・6HO、特級)を用いた。これらを、金属成分モル比がLi:Mn=1:2になるように秤量し、蒸留水に溶解させ、金属成分の総モル濃度 3mol/dmのプリカーサー溶液を調製した。プリカーサー溶液はマイクロチューブポンプ(EYELA社製、MP−3N型)により定量的に二流体ノズルへ供給される。
【0043】
媒体粒子
媒体粒子は、高温で流動化することから耐熱衝撃および耐磨耗性に優れ、また、生成される微粒子(リチウムマンガン複合酸化物粉末)との反応性がないセラミックスの粉砕用焼結アルミナ粒子(HC アルミナボールφ0.5mm、東京ガラス器械株式会社製)を用いた。なお、媒体粒子は実験に使用する前に、300μmから600μmの範囲でふるいわけを行い、最終的には、平均径 480μm、幾何標準偏差1.40の極めて単分散性の高い粒子を用いた。
【0044】
微粒子の評価方法について説明する。
【0045】
微粒子の表面形態、粒子径
微粒子の表面形態はFE型走査電子顕微鏡(SEM、日立製作所、S−800)を用いて、5000倍から30000倍で観察した。粒子径および粒径分布はSEM写真から約500個の粒子を無作為に抽出してノギスを用いて計測した。
【0046】
比表面積
粒子の比表面積の測定は、BET法 ( 島津製作所 , フローソーブII2300 ) を用いて行った。測定には、100〜150mgの試料を真空乾燥器 ( Yamato製 , ADP−21 ) で24時間110℃で真空乾燥したものを用いた。測定は二回以上行い脱着時の値の平均値を用いた。
【0047】
結晶相の同定
微粒子の結晶相の同定はX線回折(Philips社製、PW1700システム)を用いて行った。測定はCuKα1およびCuKα2線を用い、約50〜80mgの試料について以下の条件で行った。
電圧 :40kV
電流 :30mA
時定数 :0.5s
走査速度 :0.04゜/s
測定範囲 :4゜≦2θ≦70゜
なお、測定したX線回折ピークに媒体粒子のピークが含まれていないのを確認するため、媒体粒子のX線回折測定も行った。
【0048】
結晶サイズの測定
X線回折パターンからScherrer式:R=0.9λ/[(H−h)cosθ]を用いて結晶サイズの計算を行った。ここで、Rは結晶サイズ [Å]、λはX線回折に用いられたビームの波長 [Å]、θは回折角度、Hは半値幅、hは補正定数である。結晶サイズの計算は結晶構造が立方晶であることから回折角度θが40°以上の(400)、(331)、(511)、(440)、(531)の5つの結晶面について行いその平均の値を取った。ビームの波長の値としてはCuKα1及びCuKα2線の平均値、1.541863Åを用いた。
【0049】
LiMn微粒子合成について説明する。
【0050】
図1に示されている装置を用い、流動層反応器11に媒体粒子としてアルミナ粒子を充填し、アルミナ粒子を雰囲気温度800℃の条件で流動化させる。流動層反応器に供給するミストは、二流体ノズルに濃度 3mol/dm(LiNO:1mol/l、Mn(NO・6HO:2mol/l)の原料溶液を1000ml/hの速度で供給すると伴に、空気を10l/min(室温基準)で供給することにより、生成させる。これを流動層反応器の内径1.45cmの内筒に84cm/s(室温基準)の速度で供給する。全ガス速度UTG=0.20m/s(QTG=35l/min)(噴霧側ガスと流動化側ガスの流量の合計から流動層本体の内径基準で求めた
空塔ガス速度)は一定とした。これにより合成された粉体はサイクロン12で捕集する。
【0051】
微粒子の表面形態
静止層高を0〜150mmに変化させたときの生成微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。どの条件で合成された微粒子も表面は多孔質で、液滴の形状が反映され、比較的球形が保たれていた。
【0052】
静止層高を0〜150mmに変化させたときの条件で合成された微粒子の粒径分布を測定した。どの条件で合成された微粒子も平均径が1.1〜1.3μm、幾何標準偏差が1.80〜1.95であった。これより、粒子形態に対する静止層高の影響は小さいことがわかる。また、反応炉内に流入した液滴は少なくても流動層底部に到達するまでに乾燥粒子となって媒体粒子に接触していることが予想される。
【0053】
微粒子の結晶性
図2は、静止層高を変化させたときの生成微粒子のX線回折ピークを示している。どの条件で合成された微粒子においてもその回折ピークから単相のスピネル型LiMn微粒子が合成されたことがわかる。なお、媒体粒子のコンタミネーションの影響もないと考えられる。
【0054】
図3は、静止層高を変化させた図2の回折ピークからScherrer式を用いて結晶サイズを計算し、その結果をプロットしたものである。図から明らかなように、静止層高の増加に伴い結晶サイズが増加している。これは、静止層高が増加するに伴ない生成微粒子の媒体粒子への接触頻度が増加し、その結果として微粒子が反応器の中に滞留する時間が長くなり、結晶サイズが増加したものと考えられる。
【0055】
図4は、静止層高を変化させたときの生成微粒子の比表面積をプロットしたものである。静止層高の増加に伴い、比表面積が減少しているのが確認できる。
【0056】
媒体粒子が存在していない状態と存在している状態を比べると静止層高150mmの条件で合成した粒子は結晶サイズが1.5倍まで増加し、比表面積が1/2倍まで減少しており、その差は顕著である。
【0057】
以上より、静止層高を変化させたとき、静止層高の増加に伴い、微粒子の結晶サイズの増加が確認された。また、比表面積においては静止層高の増加に伴ない、比表面積の減少が確認された。特に比表面積においては媒体粒子が存在しないときと存在するときとの差は顕著であった。
【0058】
LiMn微粒子のリチウム二次電池正極特性について説明する。
実験装置及び方法について説明する。
【0059】
実験セル
LiMn微粒子のリチウム二次電池正極の評価はセルの組み立てが簡単な二極式セルを用いて行った。図5は、セルの模式図を示したものである。このセルは正極、負極ともステンレス棒を旋盤によって加工したもので直径8mm、長さ30mmである。なお、セルを組んだ後密閉できるように両極にはOリングを取り付けてある。実験セルは、対極(負極)に金属リチウムを、作用極(正極)には活物質としてLiMn粉体、導電剤としてアセチレンブラック(電気化学工業製、DENKA BLACK)、結着剤としてPTFE(三井・デュポンフロロケミカル製、フッ素樹脂 PTFE)をそれぞれの重量分率で75:20:5の割合で混合し、フィルム状に成形したものを用いた。
【0060】
グローブボックス
実験には、グローブボックス(美和製作所、1ADB−3KP)を使用した。グローブボックスは、本体サイズ650mm×500mm×500mm、容量 120dmであり、φ216.3mm×350mm、容量 11dmのサイドボックスを備えている。このサイドボックスを使用することで、グローブボックス内部の雰囲気を汚染することなく、迅速に物の出し入れを行うことができる。また、このグローブボックス内部は自動的にアルゴンガスの循環・精製が行われており、内部雰囲気は常に清浄なものに保たれている。
【0061】
充放電試験
本実施例ではガルバノスタッドを用いた定電流法によって正極特性の評価を行った。充放電サイクル試験はこのガルバノスタッドを内蔵した充放電特性測定装置(北斗電工、HJR−110mSM6)を用いて行った。この装置は充電電流、放電電流、カットオフ電位、充電と放電の間のレスト時間を任意に設定できる。
【0062】
充放電試験は以下のように行う。放電時にはリチウムイオンが正極活物質にインターカレートしていくとともに電池電圧が減少する。電池電圧が放電カットオフ電圧に達すると開回路になり、レスト状態に入る。所定のレスト時間が経過した後両極間に電位がかけられ、充電に入る。充電時には正極活物質からリチウムイオンが脱インターカレートしていくとともに電池電圧が上昇する。電池電圧が充電カットオフ電圧に達すると再び開回路になり、レスト状態となる。このような充放電を一定の電流密度で繰り返した時の放電容量、充電容量、電位の変化、およびサイクル特性を調べた。本実施例では電流密度0.2mA/cm、カットオフ電圧3.5から4.4V、レスト時間10minで行った。
【0063】
正極活物質の単位重量あたりの充放電容量密度は次式:
容量密度[Ah/kg]=i×t/m
を用いて求めた。ここでiは定電流値[A]、tは充電・放電時間[h]、mは正極活物質の質量[kg]である。
【0064】
充放電サイクル特性について説明する。
図6は、合成した粒子の充放電サイクル特性を示したものである。使用したLiMn微粒子は、どちらも今回発明した合成装置を用いて静止層高150mmおよび媒体粒子無しの条件で合成された粒子である。(媒体粒子なし:結晶サイズ13.11nm 比表面積36.93m/g、静止層高150mm:結晶サイズ17.90nm 比表面積18.10m/g)媒体粒子無しの条件で合成した粒子は初期のサイクル数で放電容量の著しい劣化が観察される。
【0065】
以上より、従来の噴霧熱分解法に流動層を組み合わせることで、従来法と比較してサイクル特性に優れたLiMn微粒子を合成することができた。
【0066】
【発明の効果】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
焼成体粒子の製造方法が、媒体粒子の流動層に焼成前粒子を供給する工程を有するので、焼成体粒子の新規な製造方法を提供することができる。
焼成体粒子の製造装置が、媒体粒子の流動層を有し、この流動層に焼成前粒子が供給されるので、焼成体粒子の新規な製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例で用いた実験装置概念図である。
【図2】静止層高を変化させたときの生成微粒子のX線回折パターンを示す図である。
【図3】静止層高を変化させたときの生成微粒子の結晶サイズを示す図である。
【図4】静止層高を変化させたときの生成微粒子の比表面積を示す図である。
【図5】本実施例で用いた電池セルの詳細図である。
【図6】静止層高(結晶性)が充放電サイクル特性に及ぼす影響を示す図である。
【符号の説明】
1‥‥エアコンプレッサ、2‥‥充填塔、3‥‥フィルタ、4‥‥エアコンプレッサ、5‥‥調圧弁、6‥‥流量計、7‥‥二流体ノズル、8‥‥チューブポンプ、9‥‥原料溶液、10‥‥電気炉、11‥‥流動層反応器、12‥‥サイクロン、13‥‥分散板、14‥‥媒体粒子、15‥‥内塔、16‥‥整流層、17‥‥作用極、18‥‥対極、19‥‥セパレータ、20‥‥スプリング、21‥‥パイレックスチューブ、22‥‥Oリング、23‥‥電解液、24‥‥ステンレスセル、TI1〜3‥‥熱電対、TC1〜5‥‥温度コントローラ、FI1,2‥‥オリフィス流量計、PI1‥‥圧力計

Claims (10)

  1. 媒体粒子の流動層に焼成前粒子を供給する工程を有する、焼成体粒子の製造方法。
  2. 焼成前粒子を流動層の下に供給する、請求項1記載の焼成体粒子の製造方法。
  3. 媒体粒子はアルミナからなる、請求項1記載の焼成体粒子の製造方法。
  4. 焼成前粒子は酸化物からなる、請求項1記載の焼成体粒子の製造方法。
  5. 酸化物はLiMnである、請求項4記載の焼成体粒子の製造装置。
  6. 媒体粒子の流動層を有し、この流動層に焼成前粒子が供給される、焼成体粒子の製造装置。
  7. 焼成前粒子を流動層の下に供給する、請求項6記載の焼成体粒子の製造装置。
  8. 媒体粒子はアルミナからなる、請求項6記載の焼成体粒子の製造装置。
  9. 焼成前粒子は酸化物からなる、請求項6記載の焼成体粒子の製造装置。
  10. 酸化物はLiMnである、請求項9記載の焼成体粒子の製造装置。
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