JP7344503B2 - ペロブスカイト型酸化物粒子生成用の未焼成酸化物粒子、未焼成酸化物粒子及びペロブスカイト型酸化物粒子の製造方法 - Google Patents
ペロブスカイト型酸化物粒子生成用の未焼成酸化物粒子、未焼成酸化物粒子及びペロブスカイト型酸化物粒子の製造方法 Download PDFInfo
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Description
また、特許文献2には、出発原料である各金属を含む硝酸塩を水に溶解させた溶液に、炭酸アンモニウム溶液を加えて中和させ、ペロブスカイト型酸化物の非晶質の前駆体を析出させて、ウェットケーキを得る。さらにこれをペレット状に成形し乾燥させた後、焼成して、ペロブスカイト型複合酸化物を得る手法が開示されている。
また、反応混合液に溶解された、ランタン源、ストロンチウム源、コバルト源、及び、鉄源は、未焼成酸化物粒子におけるA群元素及びB群元素の出発原料である。ランタン源、ストロンチウム源、コバルト源、及び、鉄源としては、例えば、酢酸ランタン、酢酸コバルトなどの酢酸塩や、硝酸ランタン、硝酸鉄などの硝酸塩を用いると良い。酢酸イオンや硝酸イオンは、水やポリオールに溶解しやすく、洗浄後に残留したとしても、加熱して分解させることで気体になるので、ペロブスカイト型酸化物粒子生成用の未焼成酸化物粒子内に残留した場合でも、その後の加熱により、分解除去できるからである。そのほか、各金属の塩化物塩、水酸化物をも用い得るが、水やポリオールへの溶解度が低い場合には、必要量を溶解できず、金属元素の組成比にずれを生じるおそれがあるので、使用量等を考慮して選択するとよい。
なお、ポリビニルピロリドン(PVP)は、加熱冷却工程で析出する結晶粒子が、球状化するのに寄与する。
また、反応混合液を加熱するに当たっては、溶媒の蒸発等によって反応混合液の濃度が変化するのを抑制し、かつ加熱温度を所定の温度に保つため、加熱還流を行うのが好ましい。
実施形態(実施例1~8)に掛かるペロブスカイト型酸化物粒子生成用の未焼成酸化物粒子Pm、ペロブスカイト型酸化物粒子Pp、及びこれらの製造について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る未焼成酸化物粒子Pm、及び、ペロブスカイト型酸化物粒子Ppの製造の流れを示すフローチャートである。
反応混合液調製工程S1において、反応混合液を調製する。具体的には、まず、ジエチレングリコール(DEG)70mLと、水酸化カリウム(KOH)水溶液10mLを併せた合計80mLの混合溶媒を用意した。なお、KOHの濃度は、混合溶媒(80mL)において、0.50M(=0.50mol/L)となる濃度に調製してある。この混合溶媒に、La源である酢酸ランタン1.5水和物を3.43g(0.01mol)と、酢酸コバルト4水和物を2.49g(0.01mol)を秤量し溶解させた。また、水溶性の高分子であるポリビニルピロリドン(PVP、分子量10000g/mol)を8g(=100g/Lの割合で)溶解して、pH9.4のアルカリ性の反応混合液を調製した。
実施例2では、反応混合液調製工程S1において、実施例1で用いた酢酸ランタンの代わりに、硝酸ランタン6水和物を4.33g(0.01mol)を用い、他は実施例1と同様にして、未焼成酸化物粒子Pm及びペロブスカイト型酸化物粒子Ppを得た。
実施例3では、反応混合液調製工程S1において、La源として硝酸ランタン6水和物3.90g(0.009mol)を用いたのに加えて、A群元素のSr源として酢酸ストロンチウム0.5水和物0.21g(0.001mol)を用い、他は実施例1と同様にして、未焼成酸化物粒子Pm及びペロブスカイト型酸化物粒子Ppを得た。
また、実施例4では、La源として硝酸ランタン6水和物2.60g(0.006mol)とSr源として酢酸ストロンチウム0.5水和物0.86g(0.004mol)を用い、他は実施例1と同様にして、未焼成酸化物粒子Pm及びペロブスカイト型酸化物粒子Ppを得た。
これにより、それぞれペロブスカイト構造のLaCoO3,La0.9Sr0.1CoO3、La0.6Sr0.4CoO3を主成分(メインピークの成分)とする球状の粒子が得られた。
なお、これら実施例2,3,4の未焼成酸化物粒子Pm及びペロブスカイト型酸化物粒子Ppの平均粒径、平均アスペクト比、及びCV値は、表1に示すとおりである。
実施例5では、反応混合液調製工程S1において、実施例1で用いた酢酸コバルトの代わりに、硝酸鉄(III)9水和物4.04g(0.01mol)を用い、他は実施例1と同様にして、ペロブスカイト型酸化物粒子Ppを得た。これにより、ペロブスカイト構造のLaFeO3を主成分(メインピークの成分)とする球状の粒子が得られた。
この実施例5の未焼成酸化物粒子Pm及びペロブスカイト型酸化物粒子Ppの平均粒径、平均アスペクト比、及びCV値も、表1に示すとおりである。
実施例6では、反応混合液調製工程S1において、La源とSr源として、硝酸ランタン6水和物2.60g(0.006mol)と酢酸ストロンチウム0.5水和物0.86g(0.004mol)を用い、Co源及びFe源として、酢酸コバルト0.50g(0.002mol)、硝酸鉄(III)9水和物3.23g(0.008mol)を用い、他は実施例1と同様にして、ペロブスカイト型酸化物粒子Ppを得た。これにより、ペロブスカイト構造のLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3を主成分(メインピークの成分)とする球状の粒子が得られた。
この実施例6の未焼成酸化物粒子Pm及びペロブスカイト型酸化物粒子Ppの平均粒径、平均アスペクト比、及びCV値も、表1に示すとおりである。
実施例7,8,及び比較例1では、実施例1に比して、使用するアルカリ水溶液(KOH)の濃度を低くし(0.50Mから0.25Mとし)た。併せて、反応混合液(DEGとアルカリ水溶液の混合溶媒)におけるジエチレングリコール(DEG)と水の比率を異ならせた。即ち、DEGと水の比率を、実施例7では実施例1と同じ70mL対10mLとする一方、実施例8では50mL対30mL、比較例1では30mL対50mLとした。そして、他は実施例1と同様にして、未焼成酸化物粒子Pm及びペロブスカイト型酸化物粒子Ppを得た。これにより、ペロブスカイト構造のLaCoO3を主成分(メインピークの成分)とする粒子を得た。
但し、実施例7,8では、球状の粒子Pm,Ppが得られたが、比較例1では、球状と板状の粒子が混在していた。また、実施例7,8及び比較例1を比較すると、水の割合が多くなるほど、未焼成酸化物粒子Pm及びペロブスカイト型酸化物粒子Ppの平均粒径が大きくなる傾向(例えば粒子Ppについて、実施例7では92nm、実施例8では149nm、比較例1では173nm)が見られ、平均アスペクト比も、水が多くなるほど大きく(粒子がいびつに)なる傾向(粒子Pm,Ppについて、実施例7では1.2、実施例8では1.5、比較例1では1.7)が見られた。したがって、平均アスペクト比が1.6以下になるようにするのが好ましいことがわかる。
比較例2では、反応混合液調製工程S1において、実施例1で用いたKOHに代えて、水を用い、他は実施例1と同様にして、加熱冷却工程S2を行った。しかし、比較例2においては、生成物はほとんど得られなかった。わずかに回収された沈殿物は、XRDにおいて、結晶を示すピークが観察されず、非晶質の物質であった。また、これを焼成した粒子はLaCoO3であったが、粒子の形状は不定形であった。このことから、加熱冷却工程S2で未焼成酸化物粒子のスラリーを得るのには、反応混合液を中性あるいはアルカリ性にすることが必要であることが判る。
比較例3では、反応混合液調製工程S1において、実施例5と同じく、La源とSr源として、硝酸ランタン6水和物2.60g(0.006mol)と酢酸ストロンチウム0.5水和物0.86g(0.004mol)を用い、Co源及びFe源として、酢酸コバルト0.50g(0.002mol)、硝酸鉄(III)9水和物3.23g(0.008mol)を用いたが、アルカリ水溶液として、KOH水溶液の代わりに、炭酸アンモニウム水溶液(DEGとの混合後に0.50Mとなる濃度)を使用し、他は実施例1及び実施例5と同様にして、加熱冷却工程S2を行った。
比較例4では、実施例1と異なり、反応混合液調製工程S1において、PVPを用いないで、他は実施例1と同様にして、加熱冷却工程S2を行った。
回収された沈殿物は、XRDにおいて、CoO結晶を示すピークが観察された。また、これを焼成した粒子はLaCoO3であったが、粒子の形状は不定形であった。このことから、球状の未焼成酸化物粒子Pm及びペロブスカイト型酸化物粒子Ppを得るにあたり、反応混合液に添加したPVPが寄与していることが判る。
実施例1~8あるいは比較例1~4のいずれかで得られたペロブスカイト型酸化物粒子Ppと、ビヒクル(溶媒のターピネオール溶媒と、バインダのエチルセルロースとの、9:1の混合物)とを重量比で7:3(粒子:溶媒:エチルセルロース=7:2.7:0.3)の割合として混合してペーストを製造した。このペーストを、ジルコニア基板の上に、直径10mm厚み10μmの円形に印刷した。さらに、80℃で1時間乾燥させ、溶媒を揮発させて酸化物粒子の試供塗膜を形成した。そして、試供塗膜の重量を7/7.3倍して、この試供塗膜に含まれる粒子の重量を算出した。
さらに、それぞれの試供塗膜に含まれる粒子Ppの重量を、試供塗膜の体積で除して、試供塗膜における粒子Pp分の密度を算出する。さらにこれを、予め得ておいた、各例のペロブスカイト型酸化物粒子が集合した粉末の真密度で除して、R値を得た(R値=(塗膜の重量×7/7.3)/塗膜の体積/粒子Ppの真密度×100%)。このR値は、粒子Ppの真密度を基準(100%)として、当該ペロブスカイト型酸化物粒子Ppを塗膜にした場合の、充填割合(充填率)を示している。つまりR値が大きいほど、塗膜内に粒子Ppがより充填され、密度が高くなっていることを示している。各例について、このR値の算出結果をも表1に示す。
なお、粒子Ppの真密度は、乾式自動密度計(島津製作所製アキュピックII1340シリーズ)を用いて測定した。
特に、実施例1~8では、反応混合液に用いるポリオールが、ジエチレングリコールであるので、高沸点であり、より高い温度で加熱還流でき、さらに好ましい。
Pp ペロブスカイト型酸化物粒子
SA DEG準備工程
SB 元素源準備工程
SC PVP準備工程
SD アルカリ水溶液準備工程
S1 反応混合液調製工程
S2 加熱冷却工程
S3 洗浄乾燥工程
S4 焼成工程
Claims (5)
- 平均粒径が30~200nmで、
平均アスペクト比が1.0~1.6の球状であり、
ランタンまたはランタン及びストロンチウムからなるA群元素と、コバルトまたはコバルト及び鉄からなるB群元素とを、等モル有し、
非晶質の上記A群元素を含む上記B群元素の酸化物からなる
ペロブスカイト型酸化物粒子生成用の未焼成酸化物粒子。 - 平均粒径が30~200nmで、
平均アスペクト比が1.0~1.6の球状であり、
ランタンまたはランタン及びストロンチウムからなるA群元素と、コバルトまたはコバルト及び鉄からなるB群元素とを、等モル有し、
非晶質の上記A群元素を含む上記B群元素の酸化物からなる
ペロブスカイト型酸化物粒子生成用の未焼成酸化物粒子の製造方法であって、
ポリオール、水、ポリビニルピロリドンとを含み、ランタン源または上記ランタン源及びストロンチウム源と、コバルト源または上記コバルト源及び鉄源とが溶解された、pH7.0以上の反応混合液を得る反応混合液調製工程と、
上記反応混合液を加熱して結晶粒子を析出させ、その後、常温まで自然冷却してスラリーを得る加熱冷却工程と、
上記スラリーを水またはアルコールで洗浄し乾燥させて、上記ペロブスカイト型酸化物粒子生成用の未焼成酸化物粒子を得る洗浄乾燥工程と、を備える
ペロブスカイト型酸化物粒子生成用の未焼成酸化物粒子の製造方法。 - 請求項2に記載のペロブスカイト型酸化物粒子生成用の未焼成酸化物粒子の製造方法であって、
前記反応混合液に含まれる前記ポリオールは、ジエチレングリコールである
ペロブスカイト型酸化物粒子生成用の未焼成酸化物粒子の製造方法。 - 平均粒径が30~200nmで、
平均アスペクト比が1.0~1.6の球状であり、
ABO3で示されるペロブスカイト型結晶構造を有し、
Aサイトに、ランタンまたはランタン及びストロンチウムを有し、
Bサイトに、コバルトまたはコバルト及び鉄を有する
酸化物からなる
ペロブスカイト型酸化物粒子の製造方法であって、
請求項2または請求項3に記載のペロブスカイト型酸化物粒子生成用の未焼成酸化物粒子の製造方法で製造したペロブスカイト型酸化物粒子生成用の未焼成酸化物粒子を焼成して、
粒子相互の焼結を防止しつつ、前記A群元素と前記B群元素とを反応させて上記ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物として、上記ペロブスカイト型酸化物粒子を得る焼成工程を備える
ペロブスカイト型酸化物粒子の製造方法。 - 平均粒径が30~200nmで、
平均アスペクト比が1.0~1.6の球状であり、
ABO3で示されるペロブスカイト型結晶構造を有し、
Aサイトに、ランタンまたはランタン及びストロンチウムを有し、
Bサイトに、コバルトまたはコバルト及び鉄を有する
酸化物からなる
ペロブスカイト型酸化物粒子の製造方法であって、
平均粒径が30~200nmで、
平均アスペクト比が1.0~1.6の球状であり、
ランタンまたはランタン及びストロンチウムからなるA群元素と、コバルトまたはコバルト及び鉄からなるB群元素とを、等モル有し、
非晶質の上記A群元素を含む上記B群元素の酸化物からなる
未焼成酸化物粒子を焼成して、
粒子相互の焼結を防止しつつ、上記A群元素と上記B群元素とを反応させて上記ペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物として、上記ペロブスカイト型酸化物粒子を得る焼成工程を備える
ペロブスカイト型酸化物粒子の製造方法。
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