JP6483448B2 - 固体酸化物形燃料電池の空気極材料の製造方法、空気極材料、これを用いた空気極及び燃料電池。 - Google Patents
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Description
特に、空気極における電極反応は、空気極から電解質への酸素イオンの伝達によって行われ、電極反応は電解質との界面近傍で最も生じやすい。
したがって、電池性能の向上のためには、電解質の近傍部における空気極の反応ガス(空気に代表される酸化性ガス)との反応面積の拡大、すなわち空気極の比表面積を大きくすることが重要となる。
また、特許文献2に記載の方法にあっては、噴霧した直後は液状であるため、微小液滴が合一し粗大粒子が生じて比表面積の低下を招くことがある。
したがって、本発明は、高出力高密度化が可能な、比表面積が大きい空気極材料を作製できる製造方法、比表面積が大きい空気極材料、これを用いた空気極及び燃料電池の提供を目的とする。
そして、上記原料液は、空気極材料の構成元素、キレート剤及びアニオン性界面活性剤を含むものであり、上記構成元素の難溶性粒子が生成しかつ該粒子表面の負電荷が0を超えるpHを有し、
上記空気極材料の原料液を用いる工程は、空気極材料の構成元素及びキレート剤を含む溶液にアニオン性界面活性剤を添加する工程、該アニオン性界面活性剤を含む液のpHを調整する工程を有することを特徴とする。
即ち、空気極材料構成元素の錯体をアニオン性界面活性剤で分散させて、穏やかに共沈させ、かつ凝集を防止したことにより、均一かつ微細な粒径の空気極前駆体粉末が得られるものである。さらに、該空気極前駆体粉末は組成の偏りが少なく、2種以上の組成物が混合した混相となり難いものであり、さらなる高出力高密度化が可能な比表面積が大きな空気極材料、これを用いた空気極及び燃料電池を得ることができる。
なお、上記の原料液を用いる工程については、通常は該原料液を作製して用いる工程となる。
本発明における空気極材料の原料液は、空気極材料の構成元素、キレート剤及びアニオン性界面活性剤を含む。
本発明の空気極材料の製造方法は、上記いずれにも適用可能であるが、特に、LSCF、即ち、次式の組成を有する空気極材料に好適に用いられる。
(式中xは0≦x≦1,yは0≦y≦1を満足する)
構成元素源としては、例えば、硝酸ランタン、水酸化ランタン、炭酸ランタン、ランタンアルコキシド等、各構成元素の化合物を挙げることができる。
上記有機キレート剤としては、例えば、クエン酸、グリシン、マレイン酸、リンゴ酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、乳酸等の有機酸やエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を挙げることができ、これらは、1種又は2種以上を混合して使用してもよい。
加えて、乾燥工程及び焼成工程においては、難溶性粒子同士間又は空気極前駆体粒子同士間のスペーサ乃至は障壁膜となって、これらの合一を防止する。
例えば、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸等とその塩を挙げることができ、特にオレイン酸又はオレイン酸塩であることが好ましい。
空気極材料の構成元素源を含む原料粉末を所望の組成比となるように秤量・混合し、蒸留水に溶解・混合させた後、上記水溶液中にキレート剤に加え溶解・混合させる。
上記キレート剤の使用量は、空気極材料の構成元素とキレート錯体を形成するよう上記原料液中の構成元素を空気極材料へ換算した量に対して等モル以上であることが好ましい。
このとき、本発明においては、生成した難溶性粒子表面の負電荷が0を超えるpHに調整する。難溶性粒子表面の負電荷が大きくなることで、静電的反発によって難溶性粒子が溶液中で高分散し凝集が抑制されるため、より均一な混合が可能となり、難溶性粒子の組成が均一化すると共に微粒子化される。
しかし、本発明においては、アニオン性界面活性剤によって高度に分散され、穏やかに共沈するため、上記共沈する条件及び速度の差による影響が小さくなり、均一な組成の難溶性粒子が得られ、さらにアニオン性界面活性剤によって表面電荷の反発が大きくなり、難溶性粒子同士の凝集が防止されて微粒子化される。
pHの調整は、酸性又は塩基性のpH調整剤を添加することにより行うことができ、上記pH調整剤としては、例えば、HNO3、NH3を用いることができる。
なお、ゼータ電位の測定は、従来公知の方法で測定することが可能であり、例えば、電場中の粒子の泳動速度を動的光散乱法等により測定することができる。
図1の(I)に示す表面電荷が0となるpHの領域であると、静電的反発力が弱く低分散状態となるため、速やかに共沈し、組成偏りが起き易く、さらに難溶性粒子が凝集して粗大粒子となり易い。
図1の(II)に示す領域では、難溶性粒子を被覆したアニオン性界面活性剤の側鎖の電離が進行し難溶性粒子の表面電荷が0を超えて、静電的反発による分散が高まり、共沈が穏やかになって組成偏りが防止され、また難溶性粒子の凝集が防止される。
さらに、界面活性の電離が促進される図1の(III)に示すpHの領域では、さらにアニオン性界面活性剤の側鎖の電離の進行とともに急激に静電的反発力が増大して、さらに共沈が穏やかになり、難溶性粒子の均一性が向上すると共に、微粒子化が促進される。
さらに、pH7以上であると、アニオン性界面活性剤による電離が促進され、組成及び粒径が均一でかつ小粒径の難溶性粒子が得られる。
本発明においては、上記空気極材料の原料液を乾燥することで空気極材料の前駆体粉末が得られる。本発明においては、難溶性粒子がアニオン性界面活性剤で被覆されているため、該界面活性剤がスペーサ乃至障壁膜となって乾燥による難溶性粒子同士の合一がなく、前駆体粒子の粗大粒子化が防止される。上記乾燥は、60℃以上200℃以下で好ましくは1時間以上かけて、撹拌しながらゆっくり穏やかに乾燥することが好ましい。上記温度で1時間以上かけてゆっくり乾燥することで、分散状態が急変せず、難溶性粒子の組成の偏りや凝集が防止される。
上記前駆体粉末を焼成することで空気極材料が得られる。前駆体粉末の焼成温度としては、500℃以上であることが好ましい。500℃以上であれば、原料の前駆体が反応し空気極の組成となる。有機残さを除去する必要がある際には、より高温で焼成をおこなってもよい。しかし焼成温度が高すぎると空気極材料の結晶子径(結晶とみなせる最少の大きさの1粒子径)が大きくなることがあるため、好ましくは800℃程度で焼成することが好ましい。
本発明においては、組成偏りのない前駆体が得られ、焼成時に混相を形成し難いため、高温で焼成し、分解・化学変化させて、単一の組成物からなる単相の空気極材料にする必要がない。したがって、空気極材料とする焼成を例えば500℃以上650℃以下の低温でも行うことが可能であり、例えば、結晶子径が10nmから20nm程度の微細かつ単相の空気極材料を得ることが可能である。
このような微細な空気極材料によれば、空気極とする際の焼結性が向上し、比表面積が大きく、かつ導電性に優れる空気極を得ることができる。
前駆体粉末を焼成する焼成炉としては、特に限定されず、熱源として、電気式を挙げることができる。
(原料液の作製)
La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3を形成するように、和光純薬工業株式会社製のLa源(硝酸ランタン(III)六水和物(La(NO3)3・6H2O)、 126―03112)、Sr源(硝酸ストロンチウム(Sr(NO3)2)、37348―00)、Co源(硝酸コバルト(II)六水和物(Co(NO3)2・6H2O)、034―12831)、Fe源(硝酸鉄(III)九水和物(Fe(NO3)3・9H2O)、097―02812)をモル比でLa:Sr:Co:Fe=3:2:1:4の量でそれぞれ秤量し、ホットプレート上60℃に加熱した純水に添加、マグネチックスターラーで混合し溶解させて水溶液を作製した。
測定結果を図2に示す。
図2の結果から、pHが3以上であれば、表面電荷が0を超え、pH7以上で界面活性剤の電離が促進され、高分散状態となっていること、及び、界面活性剤の添加による静電的反発が大きくなり凝集が防止されることがわかる。
界面活性剤を加えた[実施原料液]は、粒子径が小さくかつシャープな粒度分布を示しているのに対し、[比較原料液]では粒子径が大きくかつ粒子径のピークが複数あることから凝集が生じており、原料液に界面活性剤を加えた効果が確認された。
<空気極前駆体1>
pH3に調整した空気極材料の[実施原料液]をホットプレート上、マグネチックスターラーで撹拌しながら、60℃から80℃に徐々に加熱し2時間程度乾燥することで、[空気極前駆体1]を得た。
pH9に調整する以外は、[空気極前駆体1]と同様にして[空気極前駆体2]を得た。
空気極材料の[実施原料液]を[比較原料液]に変える他は[空気極前駆体2]と同様にして[空気極前駆体3]を得た。
[空気極前駆体1]を大気中において、乳鉢、乳棒を用いて粉砕した後に、アルミナ製のるつぼに移し、電気炉で大気中において、130℃で1時間、200℃で1時間、900℃で2時間(昇温レート2℃/分)の条件で焼成することで、[空気極材料1]を得た。
[空気極前駆体1]を[空気極前駆体2]に変える他は実施例1と同様にして[空気極材料2]を得た。
測定結果を図4に示す。
図4より、pHが3で、表面電荷が0付近の分散性が低いものは混相が生じているのに対し、pHが7で静電的反発が十分得られるものは単一の組成物からなる単相となっていることがわかる。
焼成温度を800℃に変える他は、実施例2と同様にして[空気極材料3]を得た。
焼成温度を700℃に変える他は、実施例2と同様にして[空気極材料4]を得た。
焼成温度を600℃に変える他は、実施例2と同様にして[空気極材料5]を得た。
焼成温度を500℃に変える他は、実施例2と同様にして[空気極材料6]を得た。
空気極前駆体1を空気極前駆体3に変える他は、実施例6と同様にして、[空気極材料7]を得た。
焼成温度を800℃に変える他は、比較例1と同様にして[空気極材料8]を得た。
焼成温度を900℃に変える他は、比較例1と同様にして[空気極材料9]を得た。
[空気極材料2〜6]の測定結果を図5に、[空気極材料7、9]の測定結果を図6に示す。
図5より、本発明の製造方法によれば、500℃の低温で焼成しても不純物相がなく、単相の空気極材料が得られているのに対し、比較例では混相となっていることがわかる。
さらに、[空気極材料3〜6(実施例3〜6)]のTEM写真を図7に示す。
β:積分幅、K:1.33
試料重量:0.2g、(脱気処理300℃6h)
吸着質N2
吸着温度77K
平衡時間300h
[空気極材料3]を以下の条件でペレット状に成型・焼結して[空気極3]を作製した。
[ペレット作製条件]
粉末量:0.22g
成型圧:200MPa
ペレット寸法:直径10mm 厚さ1mm
上記の条件で成型したペレット900℃で4時間焼結させた。
[空気極材料3]を[空気極材料6]に替える他は実施例7と同様にして[空気極6]を作製した。
[空気極材料3]を[空気極材料8]に替える他は実施例7と同様にして[空気極8]を作製した。
上記空気極3、6,8それぞれの焼結性及び導電率を評価した。
空気極のペレットの重量を電子天秤で測定し、ノギスで寸法を測定して、空気極ペレットの密度を測定した。
測定密度と理論密度との比(測定密度/理論密度)から焼結性(相対密度)を評価した。
なお、理論密度は、XRDの結果からリートベルト解析することで求めた。評価結果を表2に示す。また、[空気極3、6、8]のSEM写真を図8に示す。
これに対し、本発明の[空気極3]は[空気極材料8]と同じ温度で焼成した[空気極材料3]を用いたものであるが、粒成長・粒間焼結が進んでいる。また、構造も全体的に均一である。
このように、本発明の微粒子化された空気極材料によれば、構造が均一かつ焼結性が優れる空気極が得られることがわかる。
さらに、[空気極材料3]よりも低温で焼成された[空気極材料6]を用いた[空気極6]は、[空気極3]よりもさらに粒成長・粒間焼結が進行していることがわかる。
空気極ペレットの両面に白金金網(100メッシュ、線径0.08mm)を配置し、白金導線を片面に二本ずつ両面に設置し直流四端子法で導電率を測定した。
評価は電気炉を用いて試料温度500℃〜800℃(熱電対にて試料上部約2cmで計測)、±200、300、400mAの一定電流を印加の下、電圧を計測。
導電率は、オームの法則により計測電圧―印加電流曲線の傾き(抵抗値)を算出し、抵抗値と試料寸法とから、次式により算出した。
各空気極ペレットの導電率―温度依存性(アレニウスプロット)を図9に示す。
図9より本発明の空気極は導電性が優れるものであり、低温で焼成した空気極材料を用いることでさらに空気極の導電性が向上することがわかる。
Claims (7)
- 固体酸化物形燃料電池の空気極材料の製造方法であって、
空気極材料の原料液を用いる工程、上記原料液を乾燥し空気極材料の前駆体粉末を得る乾燥工程、及び、該前駆体粉末を焼成する焼成工程を有するものであり、
上記原料液は、空気極材料の構成元素、キレート剤及びアニオン性界面活性剤を含むものであり、上記構成元素の難溶性粒子が生成しかつ該粒子表面の負電荷が0を超えるpHを有し、
上記空気極材料の原料液を用いる工程は、空気極材料の構成元素及びキレート剤を含む溶液にアニオン性界面活性剤を添加する工程、該アニオン性界面活性剤を含む液のpHを調整する工程を有することを特徴とする空気極材料の製造方法。 - 上記pHは3以上であることを特徴とする請求項1に記載の空気極材料の製造方法。
- 上記乾燥工程は、60℃以上200℃以下で乾燥するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気極材料の製造方法。
- 上記焼成工程は、500℃以上で焼成するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の空気極材料の製造方法。
- 上記アニオン性界面活性剤は、オレイン酸またはオレイン酸塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の空気極材料の製造方法。
- 上記構成元素は、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩又はアルコキシドから選択される1種又は2種以上の水に可溶な構成元素源から得ることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の空気極材料の製造方法。
- 上記キレート剤は、クエン酸、グリシン又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)から選択される1種又は2種以上の有機キレートであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の空気極材料の製造方法。
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