JP2004338985A - 熱線遮蔽膜付き基体とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】導電性酸化物を含む熱線遮蔽膜を形成した基体を厳しい酸化雰囲気に曝したときの熱線遮蔽膜の劣化を抑制する。
【解決手段】基体であるガラス板1と、このガラス板上に形成された導電性酸化物を含む熱線遮蔽膜2と、この熱線遮蔽膜2上に形成された保護膜3とを形成し、この保護膜3に珪素酸化物およびアルカリ金属酸化物を含有させ、この膜3により導電性酸化物の酸素欠陥の減少を防止する。アルカリ金属酸化物は、少なくとも2種のアルカリ金属を含むことが好ましい。導電性酸化物は、導電性酸化物微粒子として含まれていてもよい。
【選択図】 図1
【解決手段】基体であるガラス板1と、このガラス板上に形成された導電性酸化物を含む熱線遮蔽膜2と、この熱線遮蔽膜2上に形成された保護膜3とを形成し、この保護膜3に珪素酸化物およびアルカリ金属酸化物を含有させ、この膜3により導電性酸化物の酸素欠陥の減少を防止する。アルカリ金属酸化物は、少なくとも2種のアルカリ金属を含むことが好ましい。導電性酸化物は、導電性酸化物微粒子として含まれていてもよい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱線遮蔽膜付き基体、例えば車両や建築物の窓に適した特性を有する熱線遮蔽膜付きガラス板、とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
錫含有酸化インジウム(ITO)、アンチモン含有酸化錫(ATO)などの導電性酸化物を含む被膜は、導電膜として、さらには赤外線を選択的に遮蔽する熱線遮蔽膜として用いられている。これら酸化物には、ITOのようにその導電性に酸化物中の酸素欠陥が寄与しているものがある。これを考慮し、ITO粉末の製造工程において、ITO粉末の原料を加圧不活性ガス中で熱処理することにより、得られるITO粉末を低抵抗化することが提案されている(特許文献1)。
【0003】
ITO粉末を含む熱線遮蔽膜の上に、シリカゾルから形成したシリカ保護膜を形成することも提案されている(特許文献2)。特許文献2には、バインダーフリーのITO微粒子分散液から熱線遮蔽膜(赤外線遮蔽層)を形成し、この層の上に、加水分解性有機シラン化合物から得られるシリカゾル液を塗布し、乾燥させて保護膜(シリカ保護層)を形成すること、が開示されている。このシリカ保護層は、傷つき防止、耐候性の向上、熱線遮蔽膜による干渉色防止のために形成される。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−21831号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平9−176527号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
熱線遮蔽膜は厳しい酸化雰囲気に曝されることがある。例えば、熱線遮蔽膜を形成したガラス板は、曲げおよび/または強化(風冷強化)のため、大気中、550〜700℃程度の高温に加熱されることがある。厳しい酸化雰囲気に曝されると、不活性ガス中での熱処理により低抵抗化したITO粉末を用いたとしても、熱線遮蔽膜の熱線遮蔽能は大きく劣化する。窓ガラスのように大きな基体の熱処理を不活性ガス中で行うには、大がかりな装置が必要となるため、製造コストなどを考慮すると現実的ではない。特許文献2に記載されたようなシリカ保護層により被覆しても、高温での熱処理に伴う熱線遮蔽膜の劣化を防ぐことはできない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱線遮蔽膜付き基体は、基体と、この基体上に形成された導電性酸化物を含む熱線遮蔽膜と、この熱線遮蔽膜上に形成された保護膜とを含み、この保護膜が珪素酸化物およびアルカリ金属酸化物を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明は、その別の側面から、基体上に導電性酸化物を含む熱線遮蔽膜を形成し、この熱線遮蔽膜上に珪素酸化物およびアルカリ金属酸化物を含む保護膜を形成する熱線遮蔽膜付き基体の製造方法を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明では、珪素酸化物およびアルカリ金属酸化物を含む保護膜により、酸素含有雰囲気下で高温に加熱しても、ITOなどの導電性酸化物の劣化、即ち導電性酸化物における酸素欠陥の減少、を抑制できる。このように、本発明による保護膜は酸化防止膜としても機能しうる。酸素欠陥の減少は、具体的には、熱線遮蔽膜付き基体における日射透過率の上昇、長波長域における光線透過率の上昇などにより確認できる。上記保護膜による優れた劣化抑制には、少なくとも、膜構造の緻密さに由来する高い酸素遮蔽能が寄与していると考えられる。
【0010】
保護膜は、珪素酸化物がいわゆるガラス骨格(ガラス網目構造)を形成するガラス質膜であってもよい。この保護膜では、アルカリ金属酸化物がガラス骨格を修飾している。特許文献2に記載されたようなシリカ保護層は、厚膜化することが困難であり、機械的、化学的な耐久性が十分でない場合があるが、上記保護膜を用いれば、このような問題も解決が可能となる。
【0011】
本発明によれば、保護膜を形成した後、この保護膜により導電性酸化物(例えばITO)の酸素欠陥の減少を抑制しながら熱線遮蔽膜付き基体を加熱することができる。基体の加熱温度は、特に制限されないが、400℃以上が好適であり、保護膜が膜としての形態を保ちうる温度以下、例えば700℃以下、が好ましい。
【0012】
図1は、本発明の熱線遮蔽膜付き基体の一例を示す断面図である。基体であるガラス板1の一主面上に、熱線遮蔽膜2、保護膜3をこの順に含む2層膜が形成されている。図2に示したように、本発明の熱線遮蔽膜付き基体は曲げガラスであってもよく、同時に強化されていてもよい。曲げ加工され、強化されたガラス板は、車両用の窓ガラスとして適している。図3に示したように、本発明の熱線遮蔽膜付き基体は、合わせガラスであってもよい。この合わせガラスは、ガラス板11,21が中間膜20により一体化され、中間膜20とガラス板11との間には、ガラス板11側から熱線遮蔽膜12、保護膜13がこの順に配置されている。膜12,13を形成する面は、図示したように、ガラス板11,21の間に配置される面が好ましいが、これに限らず、例えば、通常は最も室内側に配置されるガラス板21の凹面としてもよい。
【0013】
基体としては、透明性を有する基板、特にガラス板、例えばソーダライムガラス板(色などに限定はない)、が適しているが、これに限らず、例えば金属板などを用いてもよい。
【0014】
熱線遮蔽膜は、ITO、ATOなどの導電性酸化物が含まれている限り、その成分、形態などに制限はない。導電性酸化物としてはITOが好適である。熱線遮蔽膜の形成方法としては、導電性酸化物微粒子の分散液を塗布し、乾燥させる方法(微粒子法)、スパッタリング法に代表される物理的成膜法、有機酸塩または無機酸塩である金属化合物を原料とするゾル−ゲル法、を例示できる。微粒子分散液のように、導電性酸化物微粒子を含む熱線遮蔽膜形成用液組成物から形成した熱線遮蔽膜には、導電性酸化物として導電性酸化物微粒子が含まれる。
【0015】
導電性酸化物微粒子の分散液、例えばITO微粒子分散液、を用いて熱線遮蔽膜を形成する場合、バインダー成分を含まない分散液を用いれば、導電性酸化物微粒子が密に充填される。導電性酸化物を互いに接触させると導電性が発現し、建築物の開口部などで求められることがある電磁波シールド特性が発揮される。導電性を高めるべき用途では、実質的にバインダーを含まない熱線遮蔽膜を用いるとよい。
【0016】
用途によっては、熱線遮蔽膜の導電性が高すぎると支障を来す場合もある。例えば車両の窓ガラスには、電波透過性が要求されることがある。このような用途では、微粒子分散液にバインダー成分を添加し、導電性酸化物微粒子に加え、バインダーをさらに含む熱線遮蔽膜を用いればよい。バインダーにより導電性酸化物微粒子の接触が制限されるため、膜の導電性は低下する。
【0017】
バインダーは珪素酸化物を含むことが好ましい。珪素酸化物をバインダーとすると、ITOのように屈折率が高い導電性酸化物からなる微粒子を用いても、熱線遮蔽膜の屈折率が適度に下がり、反射色調、反射率など光学特性の調整が容易となる。特許文献2が提案するように、高屈折率層上に低屈折率層を配置することによっても反射率などは制御できるが、この場合は、各層の膜厚を厳密に制御することが求められる。
【0018】
導電性酸化物微粒子の分散液に添加するバインダー成分としてはコロイダルシリカが適している。特に基体がガラスである場合、コロイダルシリカの添加は、導電性酸化物微粒子と基体との結合力の向上に効果がある。保護膜と基体との結合を強くすることもできる。コロイダルシリカにより供給された珪素酸化物微粒子を含む熱線遮蔽膜では、耐摩耗性が向上する。
【0019】
熱線遮蔽膜における導電性酸化物微粒子と珪素酸化物(バインダー)との好ましい含有率は、質量%で表して、それぞれ30〜90%、10〜60%である。
【0020】
導電性酸化物微粒子の分散液には、分散剤を配合することが好ましい。微粒子の凝集によるヘイズムラを抑制するためである。分散剤としては、無機材料、沸点が200℃以下の有機材料、および界面活性剤から選ばれる少なくとも1種が好ましい。無機材料としては、水ガラス、各種アルカリ珪酸塩、これらの混合物を用いればよい。沸点が200℃以下の有機材料としては、例えば、酢酸、メタクリル酸などの脂肪酸、トリエチルアミンなどのアミン、アセチルアセトンなどのケトン、多価アルコールが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム塩などを用いればよいが、導電性酸化物微粒子の表面電荷と相互作用しうる官能基、例えばカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、を有するものが好ましい。
【0021】
界面活性剤を多く添加しすぎると、酸素遮蔽状態で高温に加熱した後に、その残渣により膜が茶褐色に着色する場合がある。このため、界面活性剤を分散剤とする場合には、導電性酸化物微粒子の10質量%以下、特に5質量%以下、の範囲で添加することが好ましい。沸点が200℃以下の有機材料は、膜の加熱により除去できる。無機材料からなる分散剤も着色源となることはない。水ガラス、各種アルカリ珪酸塩、これらの混合物は、結合力が強く、分散剤として用いると、導電性酸化物微粒子を含む膜の耐摩耗性、耐擦傷性が向上する。
【0022】
保護膜に含まれるアルカリ金属酸化物は、少なくとも2種のアルカリ金属を含むことが好ましい。2以上のアルカリ金属の酸化物を含ませると、単一のアルカリ金属(例えばNa)の酸化物のみを含む場合と比較して、膜の耐湿性、耐薬品性などの耐久性が向上し、膜形成時の均一性、焼成時の膜安定性などにおいても改善が見られるため、膜として形成しやすくなる。アルカリ金属は、例えば、ナトリウムと、カリウムおよびリチウムから選ばれる少なくとも1種とを含むとよい。
【0023】
保護膜は、質量%で表して、珪素酸化物30〜85%、アルカリ金属酸化物5〜30%、を含有することが好ましい。珪素酸化物の含有率が低すぎると膜強度が低下し、逆に高すぎると成膜性が低下する。珪素酸化物の含有率が高すぎてアルカリ金属酸化物が十分に含まれていないと、保護膜の熱膨張係数が小さくなり、基体として一般的なソーダライムガラスの熱膨張係数との差が大きくなる。アルカリ金属酸化物の含有率が30%を超えると、保護膜の熱膨張係数が高くなりすぎる。熱膨張係数の相違が大きすぎると、加熱に伴い、膜にクラックなどが発生しやすくなる。
【0024】
保護膜は、その形成方法が特に制限されるわけではないが、水ガラスを含む液組成物(保護膜形成用液組成物)から形成することが好ましい。水ガラスとは、アルカリ珪酸塩の濃厚水溶液をいい、アルカリ金属としては通常ナトリウムが含まれている。代表的な水ガラスは、Na2O・nSiO2(n:正の任意の数、例えば2〜4)により示すことができる。水ガラスは、アルカリ金属酸化物および珪素酸化物の双方を供給する原料であるが、液組成物には、必要に応じ、さらにアルカリ珪酸塩、珪素酸化物を適量加えるとよい。
【0025】
保護膜においても、珪素酸化物が、珪素酸化物微粒子として含まれていてもよい。珪素酸化物微粒子を含ませると膜強度が向上する。ここでも、珪素酸化物は、コロイダルシリカから供給することが好ましい。
【0026】
本発明は、また別の側面から、保護膜形成用液組成物を提供する。この液組成物は、珪素酸化物と、少なくとも2種のアルカリ金属を含む珪素化合物、例えばアルカリ珪酸塩を含む。この液組成物は、好ましくは水ガラスを含み、より好ましくはコロイダルシリカをさらに含む。この液組成物は、固形分および溶解成分のすべてを酸化物換算したときに、質量%で表して、珪素酸化物30〜85%、アルカリ金属酸化物5〜30%、を含有するように調製するとよい。
【0027】
液組成物は、バーコート法、スピンコート法、グラビアコート法、フローコート法、ロールコート法その他公知の手段により塗布し、その後、例えば室温〜300℃で乾燥させるとよい。乾燥に適用される温度域では、導電性酸化物の劣化が問題となることはない。
【0028】
特に限定されないが、熱線遮蔽膜の膜厚は0.01μm〜3μmが好ましく、保護膜の膜厚は0.03μm〜3μmが好ましい。
【0029】
以上のように熱線遮蔽膜および保護膜を形成した熱線遮蔽膜付き基体は、可視光透過率(Ya)が70%以上、日射透過率(Tg)60%以下、好ましくは50%以下、波長1500nmにおける光線透過率が25%以下、好ましくは20%以下、ヘイズ率が1%以下、とすることもできる。この場合、基体は、透明基体、特にガラス板、が好適である。
【0030】
波長850nmの近赤外線は、自動車の自動課金システムに用いられている。このため、特に自動車用ウインドシールドガラスに用いる場合には、波長1500nm近傍の赤外線を遮蔽しつつ、例えば光ビーコンによる通信を行うために、波長850nmにおける光電透過率を30%以上とすることが好ましい。
【0031】
基体がガラス板である場合には、ガラス板の加工処理、具体的には曲げ加工処理および強化処理から選ばれる少なくとも一方の処理、のために、基体を例えば550〜700℃にまで加熱する必要が生じる場合がある。ガラス板は、この温度域において曲げ加工および/または強化処理(風冷強化)される。
【0032】
【実施例】
本実施例では、以下に従い、熱線遮蔽膜付きガラス板の特性を評価した。なお、本実施例において、乾燥、焼成のための加熱はすべて大気中で行った。
【0033】
透明性は、ヘイズメーター(濁度計、スガ試験機製、HGM−2DP)を用いたヘイズ率の測定により評価した。光学特性は、分光光度計(島津製作所製、UV−3000PC)を用いて測定し、波長1500nmにおける透過率(T1500nm)、波長850nmにおける透過率(T850nm)、ならびにJISR3106に従って算出した可視光透過率(Ya)および日射透過率(Tg)により評価した。熱線遮蔽膜の膜厚は、表面形状測定装置(TENCOR INSTRUMENTS製、ALPHA−STEP 200)を用いて測定した。
【0034】
(実施例1)
珪酸ナトリウム水溶液(水ガラス3号、キシダ化学製)、珪酸カリウム水溶液(スノーテックスK、日産化学工業製)、水分散コロイダルシリカ溶液(KE−W10、粒径110nm、日本触媒製)、水を秤量し撹拌することで、保護膜形成用液組成物(A)、(B)(液(A)、液(B))を得た。この液組成物(A)、(B)における各成分の添加量と各成分から生成する酸化物の割合(質量%)とを(表1)に示す。なお、コロイダルシリカは、シリカを15質量%含むものを用いた。液組成物とともに、ITO微粒子分散液(粒径50nm、三菱マテリアル製市販品)を準備した。この分散液はITO微粒子を20質量%含んでいる。
【0035】
まず、洗浄したフロートガラス板(グリーンガラス板、100×100mm;厚み3.4mm)上に、ITO微粒子分散液をスピンコーターにより塗布した。スピンコートの条件は、16.6回転毎秒(=1000rpm)で10秒間とした。このガラス板を室温で乾燥させ、さらに250℃の乾燥炉内で10分間加熱した。こうしてガラス板の一主面上にITO微粒子が分散した熱線遮蔽膜を形成した。
【0036】
この熱線遮蔽膜上に、スピンコーターにより液組成物(A)を塗布した。スピンコートの条件は16.6回転毎秒で10秒間とした。このガラス基板を室温で乾燥させ、さらに250℃の乾燥炉内で10分間加熱した。こうして熱線遮蔽膜上に保護膜が形成された熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。
【0037】
この熱線遮蔽膜付きガラス板を、焼成炉内でガラス表面の温度が650℃に到達するまで加熱した。こうして焼成した熱線遮蔽膜付きガラス板の特性を(表2)に示す。
【0038】
なお、用いたガラス板の光学特性は、Yaが83%、Tgが63%、T1500nmが59%、T850nmが47%、ヘイズ率が0%である。
【0039】
(実施例2)
焼成炉内での焼成を省略した以外は、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表2)に示す。
【0040】
(比較例1)
保護膜を形成しない以外は、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表2)に示す。
【0041】
(比較例2)
液組成物(A)に代えてテトラエトキシシランの加水分解によって得られたゾルをスピンコートした以外は、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付き基体を得た。この熱線遮蔽膜付き基体について測定した特性を(表2)に示す。
【0042】
【0043】
【0044】
実施例1、実施例2、比較例1を対比すると、保護膜を形成することにより、ITOの酸素欠陥の減少が防止されて赤外線遮蔽能が維持されたこと、それどころか、保護膜を形成すると焼成により赤外線遮蔽能が向上したこと、が確認できる。さらに比較例2を含めて対比すると、珪素酸化物(シリカ)のみを含む膜では、緻密さに欠けるため高温域におけるITOに対する酸化防止能が得られないことが確認できる。実施例1では、400℃以上の熱処理を経ているにもかかわらず、Ya≧70%、Tg≦60%、T1500≦25%、T850≧30%の特性が得られている。
【0045】
(実施例3)
ITO微粒子分散液の塗布を33.3回転毎秒(2000rpm)で行った以外は(塗布時間は同じ)、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表3)に示す。
【0046】
(実施例4)
液組成物(A)に代えて液組成物(B)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表3)に示す。
【0047】
(実施例5)
液組成物(A)に代えて液組成物(C)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。液組成物(C)には珪酸リチウムを添加した(表1)。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表3)に示す。
【0048】
【0049】
(実施例6)
ガラス板の大きさを変更し、スパッタリング法により熱線遮蔽膜を成膜した以外は、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。用いたガラス板は、フロートガラス板(50×50mm;厚み0.7mm)である。なお、このガラス板の光学特性は、Yaが85%、Tgが72%、T1550nmが80%、T850nmが78%、ヘイズ率は0.1%であった。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表4)に示す。
【0050】
(実施例7)
焼成炉内での焼成を省略した以外は、実施例6と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表4)に示す。
【0051】
【0052】
実施例6と実施例7とを対比すると、スパッタリング法により形成した熱線遮蔽膜についても、保護膜を形成することにより、焼成に伴う赤外線遮蔽機能の劣化がほぼ解消されていること、即ちITOの酸素欠陥の減少が十分に抑制されたこと、が確認できる。
【0053】
(実施例8)
実施例8,9では、コロイダルシリカを添加したITO微粒子分散液を用いて熱線遮蔽膜を成膜した。このITO微粒子分散液は、ITO微粒子(シーアイ化成製)20質量%を含む分散液に、分散剤として、珪酸ナトリウム水溶液(上記水ガラス3号)、珪酸カリウム水溶液(上記スノーテックスK)、水分散コロイダルシリカ(上記KE−W10)の混合物(固形分濃度27質量%)1質量%を添加して調製した。このITO微粒子分散液に、所定量のコロイダルシリカ(スノーテックスO40、粒径20〜30nm、日産化学工業製)を添加し、攪拌することで熱線遮蔽膜形成用液組成物(D)、(E)を得た。この液組成物(D)、(E)における各成分の添加量および各成分から生成する酸化物の割合(質量%)を(表5)に示す。
【0054】
この液組成物(D)を用い、この塗布を33.3回転毎秒(2000rpm)で行った以外は実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。
【0055】
この基体については、上記特性に加え、導電性を評価するために波長1500nmにおける光線反射率を測定し、さらに反射色調も測定した。反射色調はLab色度により評価した。さらに、耐摩耗性も測定した。耐摩耗性試験は、デーバー摩耗試験機(TABER INDUSTRIES 5150 ABRASER)により基体の膜表面に対し、500gの荷重で1000回転摩耗輪を回転させて行った。試験後、膜が剥離しなかった場合には、試験前後のヘイズ率差も測定した。比較のため、実施例1で得た熱線遮蔽膜付きガラス板についても、反射色調、耐摩耗性などを測定した。結果を(表6)に示す。
【0056】
(実施例9)
液組成物(D)に代えて液組成物(E)を用いた以外は実施例8と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表6)に示す。
【0057】
【0058】
【0059】
実施例1と実施例8,9とを対比すると、コロイダルシリカを添加すると熱線遮蔽膜の耐摩耗性が向上することが確認できる。コロイダルシリカからのバインダー(珪素酸化物)により、熱線遮蔽膜の屈折率も低下し、その結果、反射色調が基体の色調に近づいている。バインダーを含む熱線遮蔽膜では、R1500が小さくなっているが、これは熱線遮蔽膜の導電性の低下を反映している。
【0060】
(実施例10)
分散剤として、珪酸ナトリウム水溶液、珪酸カリウム水溶液、水分散コロイダルシリカの混合物に代えて、界面活性剤(ポリアクリル酸)1.5質量%を添加したものを用いた以外は実施例8と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表7)に示す。
【0061】
(実施例11)
分散剤の添加量を0.8質量%とした以外は実施例10と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表7)に示す。
【0062】
(実施例12)
分散剤の添加量を0.5質量%とした以外は実施例10と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表7)に示す。
【0063】
(実施例13)
分散剤として、珪酸ナトリウム水溶液、珪酸カリウム水溶液、水分散コロイダルシリカの混合物に代えて、トリエチルアミン0.2質量%を添加したものを用いた以外は実施例8と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表7)に示す。
【0064】
(実施例14)
分散剤として、珪酸ナトリウム水溶液、珪酸カリウム水溶液、水分散コロイダルシリカの混合物に代えて、酢酸0.25質量%を添加したものを用いた以外は実施例8と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表7)に示す。
【0065】
【0066】
実施例10〜12より、分散剤としての界面活性剤の添加量が多すぎると、可視光線透過率(Ya)が70%未満となることが確認できる。
【0067】
(実施例15)
実施例15では、熱線遮蔽膜付き強化ガラスを作製した。まず、フロートガラス板をUVカットグリーンガラス板(100×100mm;厚み4.0mm)に変更した以外は、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。用いたガラス板の光学特性は、Yaが71%、Tgが43%、T1500nmが36%、T850nmが23%、ヘイズ率が0%である。次いで、このガラス板を、650℃に加熱した状態から急冷して強化ガラスとした。
【0068】
この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表8)に示す。
【0069】
(実施例16)
実施例16,17では、熱線遮蔽膜付き合わせガラスを作製した。まず、フロートガラス板の厚みを2.1mmとした以外は、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。用いたガラス板の光学特性は、Yaが78.5%、Tgが51%、T1500nmが46%、T850nmが37%、ヘイズ率が0%である。次いで、このガラス板と、膜を形成してない上記ガラス板(厚み2.1mm)とを、これらガラス板の間に配置した熱可塑性樹脂膜(ポリビニルブチラール(PVB)膜)により接合した。具体的には、減圧状態で70℃に加熱して仮接着した後、140℃、14kg/cm2のオートクレーブ内で本接着を行った。
【0070】
この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表8)に示す。
【0071】
(実施例17)
フロートガラス板をUVカットグリーンガラス板(100×100mm;厚み2.1mm)に変更した以外は、実施例16と同様にして熱線遮蔽膜付き合わせガラスを得た。用いたガラス板の光学特性は、Yaが76%、Tgが47%、T1500nmが41%、T850nmが31%、ヘイズ率が0%である。
【0072】
この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表8)に示す。
【0073】
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、熱線遮蔽膜付き基体を厳しい酸化雰囲気に曝しても、熱線遮蔽膜の劣化を抑制できる。本発明は、特に、基体であるガラス板を加熱して加工する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱線遮蔽膜付き基体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の熱線遮蔽膜付き基体の別の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の熱線遮蔽膜付き基体のまた別の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1,11,21 基体
2,12 熱線遮蔽膜
3,13 保護膜
20 中間膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱線遮蔽膜付き基体、例えば車両や建築物の窓に適した特性を有する熱線遮蔽膜付きガラス板、とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
錫含有酸化インジウム(ITO)、アンチモン含有酸化錫(ATO)などの導電性酸化物を含む被膜は、導電膜として、さらには赤外線を選択的に遮蔽する熱線遮蔽膜として用いられている。これら酸化物には、ITOのようにその導電性に酸化物中の酸素欠陥が寄与しているものがある。これを考慮し、ITO粉末の製造工程において、ITO粉末の原料を加圧不活性ガス中で熱処理することにより、得られるITO粉末を低抵抗化することが提案されている(特許文献1)。
【0003】
ITO粉末を含む熱線遮蔽膜の上に、シリカゾルから形成したシリカ保護膜を形成することも提案されている(特許文献2)。特許文献2には、バインダーフリーのITO微粒子分散液から熱線遮蔽膜(赤外線遮蔽層)を形成し、この層の上に、加水分解性有機シラン化合物から得られるシリカゾル液を塗布し、乾燥させて保護膜(シリカ保護層)を形成すること、が開示されている。このシリカ保護層は、傷つき防止、耐候性の向上、熱線遮蔽膜による干渉色防止のために形成される。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−21831号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平9−176527号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
熱線遮蔽膜は厳しい酸化雰囲気に曝されることがある。例えば、熱線遮蔽膜を形成したガラス板は、曲げおよび/または強化(風冷強化)のため、大気中、550〜700℃程度の高温に加熱されることがある。厳しい酸化雰囲気に曝されると、不活性ガス中での熱処理により低抵抗化したITO粉末を用いたとしても、熱線遮蔽膜の熱線遮蔽能は大きく劣化する。窓ガラスのように大きな基体の熱処理を不活性ガス中で行うには、大がかりな装置が必要となるため、製造コストなどを考慮すると現実的ではない。特許文献2に記載されたようなシリカ保護層により被覆しても、高温での熱処理に伴う熱線遮蔽膜の劣化を防ぐことはできない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱線遮蔽膜付き基体は、基体と、この基体上に形成された導電性酸化物を含む熱線遮蔽膜と、この熱線遮蔽膜上に形成された保護膜とを含み、この保護膜が珪素酸化物およびアルカリ金属酸化物を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明は、その別の側面から、基体上に導電性酸化物を含む熱線遮蔽膜を形成し、この熱線遮蔽膜上に珪素酸化物およびアルカリ金属酸化物を含む保護膜を形成する熱線遮蔽膜付き基体の製造方法を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明では、珪素酸化物およびアルカリ金属酸化物を含む保護膜により、酸素含有雰囲気下で高温に加熱しても、ITOなどの導電性酸化物の劣化、即ち導電性酸化物における酸素欠陥の減少、を抑制できる。このように、本発明による保護膜は酸化防止膜としても機能しうる。酸素欠陥の減少は、具体的には、熱線遮蔽膜付き基体における日射透過率の上昇、長波長域における光線透過率の上昇などにより確認できる。上記保護膜による優れた劣化抑制には、少なくとも、膜構造の緻密さに由来する高い酸素遮蔽能が寄与していると考えられる。
【0010】
保護膜は、珪素酸化物がいわゆるガラス骨格(ガラス網目構造)を形成するガラス質膜であってもよい。この保護膜では、アルカリ金属酸化物がガラス骨格を修飾している。特許文献2に記載されたようなシリカ保護層は、厚膜化することが困難であり、機械的、化学的な耐久性が十分でない場合があるが、上記保護膜を用いれば、このような問題も解決が可能となる。
【0011】
本発明によれば、保護膜を形成した後、この保護膜により導電性酸化物(例えばITO)の酸素欠陥の減少を抑制しながら熱線遮蔽膜付き基体を加熱することができる。基体の加熱温度は、特に制限されないが、400℃以上が好適であり、保護膜が膜としての形態を保ちうる温度以下、例えば700℃以下、が好ましい。
【0012】
図1は、本発明の熱線遮蔽膜付き基体の一例を示す断面図である。基体であるガラス板1の一主面上に、熱線遮蔽膜2、保護膜3をこの順に含む2層膜が形成されている。図2に示したように、本発明の熱線遮蔽膜付き基体は曲げガラスであってもよく、同時に強化されていてもよい。曲げ加工され、強化されたガラス板は、車両用の窓ガラスとして適している。図3に示したように、本発明の熱線遮蔽膜付き基体は、合わせガラスであってもよい。この合わせガラスは、ガラス板11,21が中間膜20により一体化され、中間膜20とガラス板11との間には、ガラス板11側から熱線遮蔽膜12、保護膜13がこの順に配置されている。膜12,13を形成する面は、図示したように、ガラス板11,21の間に配置される面が好ましいが、これに限らず、例えば、通常は最も室内側に配置されるガラス板21の凹面としてもよい。
【0013】
基体としては、透明性を有する基板、特にガラス板、例えばソーダライムガラス板(色などに限定はない)、が適しているが、これに限らず、例えば金属板などを用いてもよい。
【0014】
熱線遮蔽膜は、ITO、ATOなどの導電性酸化物が含まれている限り、その成分、形態などに制限はない。導電性酸化物としてはITOが好適である。熱線遮蔽膜の形成方法としては、導電性酸化物微粒子の分散液を塗布し、乾燥させる方法(微粒子法)、スパッタリング法に代表される物理的成膜法、有機酸塩または無機酸塩である金属化合物を原料とするゾル−ゲル法、を例示できる。微粒子分散液のように、導電性酸化物微粒子を含む熱線遮蔽膜形成用液組成物から形成した熱線遮蔽膜には、導電性酸化物として導電性酸化物微粒子が含まれる。
【0015】
導電性酸化物微粒子の分散液、例えばITO微粒子分散液、を用いて熱線遮蔽膜を形成する場合、バインダー成分を含まない分散液を用いれば、導電性酸化物微粒子が密に充填される。導電性酸化物を互いに接触させると導電性が発現し、建築物の開口部などで求められることがある電磁波シールド特性が発揮される。導電性を高めるべき用途では、実質的にバインダーを含まない熱線遮蔽膜を用いるとよい。
【0016】
用途によっては、熱線遮蔽膜の導電性が高すぎると支障を来す場合もある。例えば車両の窓ガラスには、電波透過性が要求されることがある。このような用途では、微粒子分散液にバインダー成分を添加し、導電性酸化物微粒子に加え、バインダーをさらに含む熱線遮蔽膜を用いればよい。バインダーにより導電性酸化物微粒子の接触が制限されるため、膜の導電性は低下する。
【0017】
バインダーは珪素酸化物を含むことが好ましい。珪素酸化物をバインダーとすると、ITOのように屈折率が高い導電性酸化物からなる微粒子を用いても、熱線遮蔽膜の屈折率が適度に下がり、反射色調、反射率など光学特性の調整が容易となる。特許文献2が提案するように、高屈折率層上に低屈折率層を配置することによっても反射率などは制御できるが、この場合は、各層の膜厚を厳密に制御することが求められる。
【0018】
導電性酸化物微粒子の分散液に添加するバインダー成分としてはコロイダルシリカが適している。特に基体がガラスである場合、コロイダルシリカの添加は、導電性酸化物微粒子と基体との結合力の向上に効果がある。保護膜と基体との結合を強くすることもできる。コロイダルシリカにより供給された珪素酸化物微粒子を含む熱線遮蔽膜では、耐摩耗性が向上する。
【0019】
熱線遮蔽膜における導電性酸化物微粒子と珪素酸化物(バインダー)との好ましい含有率は、質量%で表して、それぞれ30〜90%、10〜60%である。
【0020】
導電性酸化物微粒子の分散液には、分散剤を配合することが好ましい。微粒子の凝集によるヘイズムラを抑制するためである。分散剤としては、無機材料、沸点が200℃以下の有機材料、および界面活性剤から選ばれる少なくとも1種が好ましい。無機材料としては、水ガラス、各種アルカリ珪酸塩、これらの混合物を用いればよい。沸点が200℃以下の有機材料としては、例えば、酢酸、メタクリル酸などの脂肪酸、トリエチルアミンなどのアミン、アセチルアセトンなどのケトン、多価アルコールが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム塩などを用いればよいが、導電性酸化物微粒子の表面電荷と相互作用しうる官能基、例えばカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、を有するものが好ましい。
【0021】
界面活性剤を多く添加しすぎると、酸素遮蔽状態で高温に加熱した後に、その残渣により膜が茶褐色に着色する場合がある。このため、界面活性剤を分散剤とする場合には、導電性酸化物微粒子の10質量%以下、特に5質量%以下、の範囲で添加することが好ましい。沸点が200℃以下の有機材料は、膜の加熱により除去できる。無機材料からなる分散剤も着色源となることはない。水ガラス、各種アルカリ珪酸塩、これらの混合物は、結合力が強く、分散剤として用いると、導電性酸化物微粒子を含む膜の耐摩耗性、耐擦傷性が向上する。
【0022】
保護膜に含まれるアルカリ金属酸化物は、少なくとも2種のアルカリ金属を含むことが好ましい。2以上のアルカリ金属の酸化物を含ませると、単一のアルカリ金属(例えばNa)の酸化物のみを含む場合と比較して、膜の耐湿性、耐薬品性などの耐久性が向上し、膜形成時の均一性、焼成時の膜安定性などにおいても改善が見られるため、膜として形成しやすくなる。アルカリ金属は、例えば、ナトリウムと、カリウムおよびリチウムから選ばれる少なくとも1種とを含むとよい。
【0023】
保護膜は、質量%で表して、珪素酸化物30〜85%、アルカリ金属酸化物5〜30%、を含有することが好ましい。珪素酸化物の含有率が低すぎると膜強度が低下し、逆に高すぎると成膜性が低下する。珪素酸化物の含有率が高すぎてアルカリ金属酸化物が十分に含まれていないと、保護膜の熱膨張係数が小さくなり、基体として一般的なソーダライムガラスの熱膨張係数との差が大きくなる。アルカリ金属酸化物の含有率が30%を超えると、保護膜の熱膨張係数が高くなりすぎる。熱膨張係数の相違が大きすぎると、加熱に伴い、膜にクラックなどが発生しやすくなる。
【0024】
保護膜は、その形成方法が特に制限されるわけではないが、水ガラスを含む液組成物(保護膜形成用液組成物)から形成することが好ましい。水ガラスとは、アルカリ珪酸塩の濃厚水溶液をいい、アルカリ金属としては通常ナトリウムが含まれている。代表的な水ガラスは、Na2O・nSiO2(n:正の任意の数、例えば2〜4)により示すことができる。水ガラスは、アルカリ金属酸化物および珪素酸化物の双方を供給する原料であるが、液組成物には、必要に応じ、さらにアルカリ珪酸塩、珪素酸化物を適量加えるとよい。
【0025】
保護膜においても、珪素酸化物が、珪素酸化物微粒子として含まれていてもよい。珪素酸化物微粒子を含ませると膜強度が向上する。ここでも、珪素酸化物は、コロイダルシリカから供給することが好ましい。
【0026】
本発明は、また別の側面から、保護膜形成用液組成物を提供する。この液組成物は、珪素酸化物と、少なくとも2種のアルカリ金属を含む珪素化合物、例えばアルカリ珪酸塩を含む。この液組成物は、好ましくは水ガラスを含み、より好ましくはコロイダルシリカをさらに含む。この液組成物は、固形分および溶解成分のすべてを酸化物換算したときに、質量%で表して、珪素酸化物30〜85%、アルカリ金属酸化物5〜30%、を含有するように調製するとよい。
【0027】
液組成物は、バーコート法、スピンコート法、グラビアコート法、フローコート法、ロールコート法その他公知の手段により塗布し、その後、例えば室温〜300℃で乾燥させるとよい。乾燥に適用される温度域では、導電性酸化物の劣化が問題となることはない。
【0028】
特に限定されないが、熱線遮蔽膜の膜厚は0.01μm〜3μmが好ましく、保護膜の膜厚は0.03μm〜3μmが好ましい。
【0029】
以上のように熱線遮蔽膜および保護膜を形成した熱線遮蔽膜付き基体は、可視光透過率(Ya)が70%以上、日射透過率(Tg)60%以下、好ましくは50%以下、波長1500nmにおける光線透過率が25%以下、好ましくは20%以下、ヘイズ率が1%以下、とすることもできる。この場合、基体は、透明基体、特にガラス板、が好適である。
【0030】
波長850nmの近赤外線は、自動車の自動課金システムに用いられている。このため、特に自動車用ウインドシールドガラスに用いる場合には、波長1500nm近傍の赤外線を遮蔽しつつ、例えば光ビーコンによる通信を行うために、波長850nmにおける光電透過率を30%以上とすることが好ましい。
【0031】
基体がガラス板である場合には、ガラス板の加工処理、具体的には曲げ加工処理および強化処理から選ばれる少なくとも一方の処理、のために、基体を例えば550〜700℃にまで加熱する必要が生じる場合がある。ガラス板は、この温度域において曲げ加工および/または強化処理(風冷強化)される。
【0032】
【実施例】
本実施例では、以下に従い、熱線遮蔽膜付きガラス板の特性を評価した。なお、本実施例において、乾燥、焼成のための加熱はすべて大気中で行った。
【0033】
透明性は、ヘイズメーター(濁度計、スガ試験機製、HGM−2DP)を用いたヘイズ率の測定により評価した。光学特性は、分光光度計(島津製作所製、UV−3000PC)を用いて測定し、波長1500nmにおける透過率(T1500nm)、波長850nmにおける透過率(T850nm)、ならびにJISR3106に従って算出した可視光透過率(Ya)および日射透過率(Tg)により評価した。熱線遮蔽膜の膜厚は、表面形状測定装置(TENCOR INSTRUMENTS製、ALPHA−STEP 200)を用いて測定した。
【0034】
(実施例1)
珪酸ナトリウム水溶液(水ガラス3号、キシダ化学製)、珪酸カリウム水溶液(スノーテックスK、日産化学工業製)、水分散コロイダルシリカ溶液(KE−W10、粒径110nm、日本触媒製)、水を秤量し撹拌することで、保護膜形成用液組成物(A)、(B)(液(A)、液(B))を得た。この液組成物(A)、(B)における各成分の添加量と各成分から生成する酸化物の割合(質量%)とを(表1)に示す。なお、コロイダルシリカは、シリカを15質量%含むものを用いた。液組成物とともに、ITO微粒子分散液(粒径50nm、三菱マテリアル製市販品)を準備した。この分散液はITO微粒子を20質量%含んでいる。
【0035】
まず、洗浄したフロートガラス板(グリーンガラス板、100×100mm;厚み3.4mm)上に、ITO微粒子分散液をスピンコーターにより塗布した。スピンコートの条件は、16.6回転毎秒(=1000rpm)で10秒間とした。このガラス板を室温で乾燥させ、さらに250℃の乾燥炉内で10分間加熱した。こうしてガラス板の一主面上にITO微粒子が分散した熱線遮蔽膜を形成した。
【0036】
この熱線遮蔽膜上に、スピンコーターにより液組成物(A)を塗布した。スピンコートの条件は16.6回転毎秒で10秒間とした。このガラス基板を室温で乾燥させ、さらに250℃の乾燥炉内で10分間加熱した。こうして熱線遮蔽膜上に保護膜が形成された熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。
【0037】
この熱線遮蔽膜付きガラス板を、焼成炉内でガラス表面の温度が650℃に到達するまで加熱した。こうして焼成した熱線遮蔽膜付きガラス板の特性を(表2)に示す。
【0038】
なお、用いたガラス板の光学特性は、Yaが83%、Tgが63%、T1500nmが59%、T850nmが47%、ヘイズ率が0%である。
【0039】
(実施例2)
焼成炉内での焼成を省略した以外は、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表2)に示す。
【0040】
(比較例1)
保護膜を形成しない以外は、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表2)に示す。
【0041】
(比較例2)
液組成物(A)に代えてテトラエトキシシランの加水分解によって得られたゾルをスピンコートした以外は、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付き基体を得た。この熱線遮蔽膜付き基体について測定した特性を(表2)に示す。
【0042】
【0043】
【0044】
実施例1、実施例2、比較例1を対比すると、保護膜を形成することにより、ITOの酸素欠陥の減少が防止されて赤外線遮蔽能が維持されたこと、それどころか、保護膜を形成すると焼成により赤外線遮蔽能が向上したこと、が確認できる。さらに比較例2を含めて対比すると、珪素酸化物(シリカ)のみを含む膜では、緻密さに欠けるため高温域におけるITOに対する酸化防止能が得られないことが確認できる。実施例1では、400℃以上の熱処理を経ているにもかかわらず、Ya≧70%、Tg≦60%、T1500≦25%、T850≧30%の特性が得られている。
【0045】
(実施例3)
ITO微粒子分散液の塗布を33.3回転毎秒(2000rpm)で行った以外は(塗布時間は同じ)、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表3)に示す。
【0046】
(実施例4)
液組成物(A)に代えて液組成物(B)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表3)に示す。
【0047】
(実施例5)
液組成物(A)に代えて液組成物(C)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。液組成物(C)には珪酸リチウムを添加した(表1)。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表3)に示す。
【0048】
【0049】
(実施例6)
ガラス板の大きさを変更し、スパッタリング法により熱線遮蔽膜を成膜した以外は、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。用いたガラス板は、フロートガラス板(50×50mm;厚み0.7mm)である。なお、このガラス板の光学特性は、Yaが85%、Tgが72%、T1550nmが80%、T850nmが78%、ヘイズ率は0.1%であった。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表4)に示す。
【0050】
(実施例7)
焼成炉内での焼成を省略した以外は、実施例6と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表4)に示す。
【0051】
【0052】
実施例6と実施例7とを対比すると、スパッタリング法により形成した熱線遮蔽膜についても、保護膜を形成することにより、焼成に伴う赤外線遮蔽機能の劣化がほぼ解消されていること、即ちITOの酸素欠陥の減少が十分に抑制されたこと、が確認できる。
【0053】
(実施例8)
実施例8,9では、コロイダルシリカを添加したITO微粒子分散液を用いて熱線遮蔽膜を成膜した。このITO微粒子分散液は、ITO微粒子(シーアイ化成製)20質量%を含む分散液に、分散剤として、珪酸ナトリウム水溶液(上記水ガラス3号)、珪酸カリウム水溶液(上記スノーテックスK)、水分散コロイダルシリカ(上記KE−W10)の混合物(固形分濃度27質量%)1質量%を添加して調製した。このITO微粒子分散液に、所定量のコロイダルシリカ(スノーテックスO40、粒径20〜30nm、日産化学工業製)を添加し、攪拌することで熱線遮蔽膜形成用液組成物(D)、(E)を得た。この液組成物(D)、(E)における各成分の添加量および各成分から生成する酸化物の割合(質量%)を(表5)に示す。
【0054】
この液組成物(D)を用い、この塗布を33.3回転毎秒(2000rpm)で行った以外は実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。
【0055】
この基体については、上記特性に加え、導電性を評価するために波長1500nmにおける光線反射率を測定し、さらに反射色調も測定した。反射色調はLab色度により評価した。さらに、耐摩耗性も測定した。耐摩耗性試験は、デーバー摩耗試験機(TABER INDUSTRIES 5150 ABRASER)により基体の膜表面に対し、500gの荷重で1000回転摩耗輪を回転させて行った。試験後、膜が剥離しなかった場合には、試験前後のヘイズ率差も測定した。比較のため、実施例1で得た熱線遮蔽膜付きガラス板についても、反射色調、耐摩耗性などを測定した。結果を(表6)に示す。
【0056】
(実施例9)
液組成物(D)に代えて液組成物(E)を用いた以外は実施例8と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表6)に示す。
【0057】
【0058】
【0059】
実施例1と実施例8,9とを対比すると、コロイダルシリカを添加すると熱線遮蔽膜の耐摩耗性が向上することが確認できる。コロイダルシリカからのバインダー(珪素酸化物)により、熱線遮蔽膜の屈折率も低下し、その結果、反射色調が基体の色調に近づいている。バインダーを含む熱線遮蔽膜では、R1500が小さくなっているが、これは熱線遮蔽膜の導電性の低下を反映している。
【0060】
(実施例10)
分散剤として、珪酸ナトリウム水溶液、珪酸カリウム水溶液、水分散コロイダルシリカの混合物に代えて、界面活性剤(ポリアクリル酸)1.5質量%を添加したものを用いた以外は実施例8と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表7)に示す。
【0061】
(実施例11)
分散剤の添加量を0.8質量%とした以外は実施例10と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表7)に示す。
【0062】
(実施例12)
分散剤の添加量を0.5質量%とした以外は実施例10と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表7)に示す。
【0063】
(実施例13)
分散剤として、珪酸ナトリウム水溶液、珪酸カリウム水溶液、水分散コロイダルシリカの混合物に代えて、トリエチルアミン0.2質量%を添加したものを用いた以外は実施例8と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表7)に示す。
【0064】
(実施例14)
分散剤として、珪酸ナトリウム水溶液、珪酸カリウム水溶液、水分散コロイダルシリカの混合物に代えて、酢酸0.25質量%を添加したものを用いた以外は実施例8と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表7)に示す。
【0065】
【0066】
実施例10〜12より、分散剤としての界面活性剤の添加量が多すぎると、可視光線透過率(Ya)が70%未満となることが確認できる。
【0067】
(実施例15)
実施例15では、熱線遮蔽膜付き強化ガラスを作製した。まず、フロートガラス板をUVカットグリーンガラス板(100×100mm;厚み4.0mm)に変更した以外は、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。用いたガラス板の光学特性は、Yaが71%、Tgが43%、T1500nmが36%、T850nmが23%、ヘイズ率が0%である。次いで、このガラス板を、650℃に加熱した状態から急冷して強化ガラスとした。
【0068】
この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表8)に示す。
【0069】
(実施例16)
実施例16,17では、熱線遮蔽膜付き合わせガラスを作製した。まず、フロートガラス板の厚みを2.1mmとした以外は、実施例1と同様にして熱線遮蔽膜付きガラス板を得た。用いたガラス板の光学特性は、Yaが78.5%、Tgが51%、T1500nmが46%、T850nmが37%、ヘイズ率が0%である。次いで、このガラス板と、膜を形成してない上記ガラス板(厚み2.1mm)とを、これらガラス板の間に配置した熱可塑性樹脂膜(ポリビニルブチラール(PVB)膜)により接合した。具体的には、減圧状態で70℃に加熱して仮接着した後、140℃、14kg/cm2のオートクレーブ内で本接着を行った。
【0070】
この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表8)に示す。
【0071】
(実施例17)
フロートガラス板をUVカットグリーンガラス板(100×100mm;厚み2.1mm)に変更した以外は、実施例16と同様にして熱線遮蔽膜付き合わせガラスを得た。用いたガラス板の光学特性は、Yaが76%、Tgが47%、T1500nmが41%、T850nmが31%、ヘイズ率が0%である。
【0072】
この熱線遮蔽膜付きガラス板について測定した特性を(表8)に示す。
【0073】
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、熱線遮蔽膜付き基体を厳しい酸化雰囲気に曝しても、熱線遮蔽膜の劣化を抑制できる。本発明は、特に、基体であるガラス板を加熱して加工する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱線遮蔽膜付き基体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の熱線遮蔽膜付き基体の別の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の熱線遮蔽膜付き基体のまた別の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1,11,21 基体
2,12 熱線遮蔽膜
3,13 保護膜
20 中間膜
Claims (19)
- 基体と、前記基体上に形成された導電性酸化物を含む熱線遮蔽膜と、前記熱線遮蔽膜上に形成された保護膜とを含み、前記保護膜が珪素酸化物およびアルカリ金属酸化物を含む熱線遮蔽膜付き基体。
- 前記アルカリ金属酸化物が少なくとも2種のアルカリ金属を含む請求項1に記載の熱線遮蔽膜付き基体。
- 前記保護膜が、質量%で表して、
珪素酸化物 30〜85%、
アルカリ金属酸化物 5〜30%、
を含有する請求項1または2に記載の熱線遮蔽膜付き基体。 - 可視光透過率(Ya)が70%以上、日射透過率(Tg)が60%以下、波長1500nmにおける光線透過率が25%以下、ヘイズ率が1%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の熱線遮蔽膜付き基体。
- 前記導電性酸化物が導電性酸化物微粒子として含まれる請求項1〜4のいずれかに記載の熱線遮蔽膜付き基体。
- 前記熱線遮蔽膜がバインダーをさらに含む請求項5に記載の熱線遮蔽膜付き基体。
- 前記バインダーが珪素酸化物を含む請求項6に記載の熱線遮蔽膜付き基体。
- 前記導電性酸化物が錫含有酸化インジウムである請求項1〜7のいずれかに記載の熱線遮蔽膜付き基体。
- 前記熱線遮蔽膜がスパッタリング法により形成された請求項1〜4のいずれかに記載の熱線遮蔽膜付き基体。
- 前記基体が曲げ加工処理および強化処理から選ばれる少なくとも一方の処理が施されたガラス板である請求項1〜9のいずれかに記載の熱線遮蔽膜付き基体。
- 基体上に導電性酸化物を含む熱線遮蔽膜を形成し、前記熱線遮蔽膜上に珪素酸化物およびアルカリ金属酸化物を含む保護膜を形成する熱線遮蔽膜付き基体の製造方法。
- 前記導電性酸化物が錫含有酸化インジウムであり、前記保護膜を形成した後、前記保護膜により前記導電性酸化物の酸素欠陥の減少を抑制しながら前記基体を加熱する請求項11に記載の熱線遮蔽膜付き基体の製造方法。
- 前記保護膜を、水ガラスを含む保護膜形成用液組成物から形成する請求項11または12に記載の熱線遮蔽膜付き基体の製造方法。
- 前記保護膜形成用液組成物がコロイダルシリカをさらに含む請求項13に記載の熱線遮蔽膜付き基体の製造方法。
- 前記熱線遮蔽膜を、導電性酸化物微粒子を含む熱線遮蔽膜形成用液組成物から形成する請求項11〜14のいずれかに記載の熱線遮蔽膜付き基体の製造方法。
- 前記熱線遮蔽膜形成用液組成物がコロイダルシリカをさらに含む請求項15に記載の熱線遮蔽膜付き基体の製造方法。
- 前記熱線遮蔽膜形成用液組成物が、無機材料、沸点が200℃以下の有機材料、および界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を分散剤として含み、前記界面活性剤を含む場合には、前記界面活性剤を前記導電性酸化物微粒子に対して15質量%以下の割合で含む請求項15または16に記載の熱線遮蔽膜付き基体の製造方法。
- 前記保護膜を形成した後、前記基体を400℃以上に加熱する請求項11〜17のいずれかに記載の熱線遮蔽膜付き基体の製造方法。
- 前記基体がガラス板であり、前記ガラス板を加熱するとともに、前記ガラス板に曲げ加工処理および強化処理から選ばれる少なくとも一方の処理を施す請求項18に記載の熱線遮蔽膜付き基体の製造方法。
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