JP2004332189A - 温水洗浄装置、及びこれを用いた炭素繊維束の処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明は、高いマトリックス樹脂との接着性、特に高温吸湿条件下での90°曲げ強度特性に優れる炭素繊維束ならびにそれからなる繊維強化プラスチックを提供することができる温水洗浄装置およびそれを用いた炭素繊維束の処理方法を提供せんとするものである。
【解決手段】
本発明の温水洗浄装置は、炭素繊維束をアルカリ電解処理後に温水洗浄をおこなう温水洗浄装置であって、該装置が導入ローラーと浴中ローラーと温水浴とを備えてなり、該導入ローラーが該温水浴液面より上の位置に配置されいることを特徴とするものである。
また、本発明の炭素繊維束の処理方法は、かかる温水洗浄装置を用いて、アルカリ電解酸化処理後の炭素繊維束を温水洗浄をおこなうに際して、温水浸漬時間が3〜10秒となる条件で該炭素繊維束を温水洗浄することを特徴とするものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、マトリックス樹脂との接着性に優れ、特に高温吸湿下での高いコンポジット90°曲げ強度特性を発揮する炭素繊維束および炭素繊維強化複合材料を提供することができる温水洗浄装置およびそれを用いた炭素繊維束の処理方法に関するものである。
炭素繊維は、その優れた比強度、比弾性率を利用して、ゴルフシャフト、釣り竿などのスポーツ用途、プロペラシャフトやエンジンフード、スポイラーなど自動車部材、天然ガス、燃料電池用水素貯蔵用などの圧力容器、航空機用構造材などの用途として幅広く使用されている。
炭素繊維を用いた複合材料の物性をより発現させる上で炭素繊維とマトリックス樹脂との接着を向上させることが重要であり、そのため、炭素繊維表面に官能基が付与される。官能基を付与する工業的な方法としては、酸やアルカリの電解質水溶液で炭素繊維を陽極とした電解酸化処理が採用されている。しかしながら、電解酸化処理によって炭素繊維表面には酸化脆弱層が生成し、それが残存するとマトリックス樹脂との接着力が十分に発揮されないという問題があった。この問題は、アルカリ電解酸化処理では、生成した酸化脆弱層が電解酸化中に一部アルカリ電解液中に溶解し除去されるので軽減されるがまだ十分ではなかった。
さらに近年、航空機の一次構造材料や宇宙構造材用途などで、よりいっそうの軽量化を図るために従来の複合材料よりも遙かに優れた特性、特に過酷な自然環境においても優れた強度特性を有する複合材料の出現が要望されている。特に、航空宇宙用途では高温多湿下や低温下などの過酷な条件下での強度保持率の高い材料に対する要望が強い。そのために過酷な条件下で使用した際、繊維強化複合材料の強度低下を最大限抑制することが必要である。
引張強度、曲げ強度等の優れた特性を有する炭素繊維を得るためには単糸間接着に起因する表面欠陥を減少させる必要がある。そのために前駆体繊維紡糸時に油剤を付与する。油剤の中でもシリコーン系油剤は単繊維間接着防止効果が高く、好んで用いられる。ところがシリコーン系油剤は空気中200〜300℃の耐炎化処理、引き続いて行われる不活性処理最高温度1000〜2000℃での炭素化処理において、大部分は分解飛散するが、一部は二酸化珪素などの物質に変化し、糸に付着したままとなる。これら、炭素繊維に残存する珪素化合物は繊維強化複合材料を作製する場合、マトリックス樹脂との接着に悪影響を及ぼす。特に高温吸湿下における接着特性、即ち90°曲げ強度が大きく低下する問題がある。
このような問題を解決する手段として、これまでに下記のような手段が用いられてきた。例えば炭素繊維に付着している珪素化合物が少ない炭素繊維として、X線光電子分光法により測定される表面比珪素濃度がSi/Cが0.001〜0.03であることを特徴とする炭素繊維(特許文献1参照)、フッ化水素と硝酸を用いSiOx(0.5≦x≦2.5)を抽出後灰化、アルカリ溶融し、脱イオン水で溶解した水溶液を後ICP発光分析により測定した珪素分量が0.001〜0.5%である炭素繊維が提案されている(特許文献2参照)。
ところが、これらの方法は、表面のみの珪素量の分析であったり(特許文献1参照)、脱二酸化珪素処理時のSiOxの脱落により微量珪素定量化が難しいことや炭素繊維表面の珪素除去方法がフッ化水素を用いるため工業的に実施する場合、作業者への暴露など作業安全性に問題があった(特許文献2参照)。
また、アルカリ電解処理後の炭素繊維束を水洗(40℃以上)あるいはアルカリ性水溶液中で洗浄処理をおこなう方法が提案されている(特許文献3参照)。しかし、この方法において、アルカリ性水溶液で洗浄する場合、炭酸アンモニウムや炭酸水素アンモニウムのような化合物は加熱により容易に分解するので、処理後のアルカリ除去が容易で好適であるが、洗浄効率を上げるため処理液の温度を上げると処理液のpHを一定に保つために多量のアルカリ補正が必要となるためコスト的に困難であり、実質的には室温程度の処理になるため洗浄効率が不十分であった。また、40℃以上の温水で洗浄する場合も、単純に温水温度を上げただけでは洗浄が不十分であり、コンポジットの吸湿熱下における接着特性、すすなわち90°曲げ強度を向上させることは困難であった。
特開2002−327374号公報 特開2002−317335号公報 特開昭62−268873号公報
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、高いマトリックス樹脂との接着性、特に高温吸湿条件下での90°曲げ強度特性に優れる炭素繊維束ならびにそれからなる繊維強化複合材料を提供することができる温水洗浄装置およびそれを用いた炭素繊維束の処理方法を提供せんとするものである。
本発明は、かかる課題を解決するために次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の温水洗浄装置は、炭素繊維束をアルカリ電解処理後に温水洗浄をおこなう温水洗浄装置であって、該装置が導入ローラーと浴中ローラーと温水洗浄浴槽とを備えてなり、該導入ローラーが該温水浴液面より上の位置に配置されているものである。
また、本発明の炭素繊維束の処理方法は、かかる温水洗浄装置を用いて、アルカリ電解酸化処理後の炭素繊維束を温水洗浄をおこなうに際して、該浴中ローラーの配置位置を調整して、温水浸漬時間が3〜10秒となる条件で該炭素繊維束を温水洗浄するものである。
本発明によれば、炭素繊維表面に残存する珪素化合物や酸化脆弱層をほぼ完全に除去することが可能となり、樹脂との接着性に優れ、高温吸湿下であっても高い曲げ強度特性を発揮する繊維強化複合材料を得ることができ、かかる複合材料は、主翼等の航空機一次構造材・内装材などの二次構造材、人工衛星構造材など、更にスポーツ用途ではゴルフシャフト、釣り竿など、圧力容器、自動車用構造材などに好ましく用いられる。
本発明は、前記課題、つまり高いマトリックス樹脂との接着性、特に高温吸湿条件下での90°曲げ強度特性に優れる炭素繊維束、ならびにそれからなる炭素繊維強化複合材料を提供することができる温水洗浄装置について鋭意検討し、従来の2個以上の浴中ローラーと温水浴とを備えてなる温水洗浄装置の一方のローラーと他方の浴中ローラーの配置位置を特定な条件を満たすようにしてみたところ、また、炭素繊維束の温水浸漬時間を3〜10秒となる条件に、該浴中ローラーの位置を調整して配置して処理してみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
従来、温水〜熱水による繊維束の連続洗浄法としては、繊維束のローラーへの巻き付きが発生した時に比較的安全に処置し易いように浅い浴として、また、繊維束中の被除去物を早い段階に絞りだし、きれいな新鮮液と置換して効率良く洗浄できる洗浄装置が一般的であった。しかしながら、このような目的で使用される従来の2個以上の浴中ローラーを設けた温水洗浄装置と、本発明の導入ローラーを液面上に設置して、アルカリ液を含んだ炭素繊維束を直接温水浴へ導入する方法とでは、炭素繊維束に残存する珪素化合物の量が大きく異なることを究明したものである。
つまり、従来方法では、導入ローラーが浴中にあるため、炭素繊維束が温水浴に導入されるとほぼ同時に導入ローラーにより炭素繊維束内からアルカリ電解液が絞り出されるため、電解酸化処理によって炭素繊維表層に生成した珪素化合物を含んだ酸化脆弱層の溶解が不十分のままアルカリが除去されるため珪素化合物の除去が不十分になると推察している。しかも、絞り出されたアルカリ電解液は、直ぐに浴外へとオーバーフローされるため、温水浴液全体のpHも低い値で安定してしまい、珪素化合物の除去効果が低いものとなっていた。
これに対し、本発明の装置や方法によれば、炭素繊維束がアルカリ電解液を保持したまま直接温水浴へと導入される上に、炭素繊維束中のアルカリ電解液が緩やかに温水浴液と混ざり合い、温水浴液全体のpHを維持させる上に、炭素繊維束周辺のpH変動をも制御する働きがある。すなわち、炭素繊維束がアルカリ電解液を保持した状態で温水加熱される状態を維持する方向に、本発明の装置や方法を操作することによって、珪素化合物の除去効果をより一層高くすることができたものである。この理由は、珪素化合物や酸化脆弱層がアルカリ加熱により、分解が促進されて分子が小さくなり溶解し、その後の浴中ローラーに接触した時、繊維束の拡幅により、珪素化合物や酸化脆弱層の除去が容易となるためと考えられる。
すなわち、本発明の温水洗浄装置を用いることにより、炭素繊維束に残存する珪素化合物や酸化脆弱層の除去がより一層向上し、これまで問題視されてきた樹脂との接着性、特に高温吸湿下での90°曲げ強度を飛躍的に向上することが可能となったものと推測している。
また、本発明の温水洗浄装置の導入ローラーと浴中ローラーの配置は、導入ローラーと浴中ローラーの接線角度θが3〜45°となるように設置することが好ましい。これは、すなわち、導入される繊維束が該温水浴液面へ侵入するときの入射角度を示すものである。該θが3°未満では炭素繊維束の昇温が不均一になり洗浄効果が不十分となり、45°を超えると、浸漬時間を保持するために処理浴が深くなり安全の面で問題になることが多い。より好ましくは5〜30°、さらに好ましくは5〜15°である。
さらに、本発明の温水洗浄装置は、処理液の排出堰の高さを変更可能とし、浴液面の高さを調節することによって、炭素繊維束の浸漬時間をさらに容易に微調整できるので好ましい。
ここで、従来の温水洗浄装置と本発明の温水洗浄装置について、図により説明する。図1は、本発明の温水洗浄装置の一例を示す横断面概略図で、図2は従来の温水洗浄装置の一例を示す横断面図である。
図2に示す従来の温水洗浄装置は、浴中ローラー3、3´により構成されるような装置であり、アルカリ電解液を含んだ炭素繊維束は、浴中導入ローラー3´により拡幅されてアルカリ電解液が絞り出されて温水洗浄液と置換され、絞り出されたアルカリ電解液はすぐに温水排出堰5を超えて排出されるため、アルカリ電解液の洗浄除去としては優れた方法であったが、アルカリ電解酸化処理によって生成・残存した炭素繊維表面や表層の酸化脆弱層の除去にはほとんど効果がなかった。一方、図1に示す本発明の温水洗浄装置は、アルカリ電解酸化処理後の炭素繊維束が、温水浴液面上好ましくは0.5〜10cm程度の位置に配置されてなる導入ローラー2と浴中ローラー3との接線角度θが3〜45°になる位置に設置された導入ローラーを介して温水浴中に導入されて、該温水浴の温水によって炭素繊維束内のアルカリ液を加熱して、アルカリ電解酸化処理によって、該炭素繊維表面・表層に生成し残存している珪素化合物を含有した酸化脆弱槽を溶解し、ついで浴中ローラー3に接触させることによって、アルカリ液と共に溶解物を炭素繊維束内から絞り出すことができる構成としたものである。温水浴中の浸漬時間の調節は、処理糸速度に応じて導入ローラー2と浴中ローラー3の設置位置及び洗浄液排出堰5による液面の高さを変更することによって可能である。
さらに本発明の目的を効率的に達成するために、導入ローラー2はローラー面に繊維束の糸道を規制する溝を有するのが好ましい。かかる溝形状は特に限定されないが、U形の溝を有していることがより好ましい。なぜなら、炭素繊維束はU形の溝で集束されることによって、温水洗浄浴中に導入された時、炭素繊維束内のアルカリ液と温水洗浄液の置換が遅れ、前述の酸化脆弱層の溶解がより進行するためである。
さらに、多糸条を温水洗浄する場合は、隣り同士の炭素繊維束の混繊によるトラブルを防止することができるという点でも溝付きローラーが好ましく使用される。一方、浴中ローラー3は平ローラーが好ましい。すなわち、平ローラー面に炭素繊維束が接触することによって炭素繊維束が拡幅され、炭素繊維束内の酸化脆弱物が溶解されたアルカリ液と温水洗浄液の置換が積極的に進行して除去効率が高まるのである。
本発明の炭素繊維束の処理方法は、前述の本発明の温水洗浄装置を用いて、アルカリ電解酸化処理後の炭素繊維束を温水洗浄をおこなうに際して、温水浸漬時間が3〜10秒となる条件で該炭素繊維束を温水洗浄するものである。
この処理方法によれば、樹脂との接着性、特に高温吸湿下での90°曲げ強度を低下させる主要因である炭素繊維束に残存する珪素化合物量を、蛍光X線測定で検出される珪素由来の強度が100cps以下になるように減少させることができるものである。しかし、前記した従来方法では、これを100cps以下に減少することは不可能であった。
ここで珪素由来のX線強度というのは、一次X線を照射した際に発生する珪素由来の蛍光X線の強度を単位時間あたりの光子数(counts per second)で表したものであり、例えば下記条件で測定することができる。
X線管ターゲット:Sc(200W)
電圧:50KV
電流:4mA
測定時間:25sec
かかる蛍光X線測定装置としては、例えば日本フィリップス社製VENUS200を用いることができる。
なお、測定に供する炭素繊維は、測定前に、サイジング剤などの付着物を取り除くために、炭素繊維1重量部に対して100重量部の洗浄液(イオン交換水、50℃)中で5分間超音波洗浄し、更にイオン交換水を30Lの水槽に6L/分給水しながら約1分間洗い流す。その後、熱風オーブン中で120℃、2時間乾燥させたものを測定用試料として用いる。かかる超音波洗浄するときに使用する超音波洗浄装置としては、例えばエスエヌディ(株)社製USK−4などを使用することができ、また、熱風オーブンとしては、例えばADVANTEC(株)社製FS−32Dなどを使用することができる。
本発明の前記目的を達成するためには、電解酸化処理するときの電解液としては、アルカリ電解液が電解酸化中に酸化脆弱層と共に珪素化合物の一部も除去することができるので好ましく使用される。このアルカリ電解酸化処理後の炭素繊維束は、アルカリ電解液を含んだ状態で直接温水浴へ導入されて加熱される。このとき、炭素繊維束内のアルカリ電解液で炭素繊維表面・表層の珪素化合物を含んだ酸化脆弱層が溶解される。かかる珪素化合物の溶解に必要な温水浸漬時間が3〜10秒である。
また、導入された該炭素繊維束は、浴中ローラーと接触した際に、該炭素繊維束に含まれたアルカリ電解液が絞り出され、該温水浴の浴液pHをアルカリ電解液に近いpHに維持されることとなり、これによって、前述珪素化合物の溶解がさらに促進されるという効果を奏するものである。ここでいう浸漬時間とは、該炭素繊維束が、浴入り〜浴中ローラーを介して浴出までの、実質的に温水浴に浸漬している時間を意味するものであり、かかる浸漬時間は、走行する炭素繊維束の糸速度に応じて、導入ローラーと浴中ローラーの設置位置による接線角度や温水浴液面の高さなどを調整して調節することができる。
かかる該炭素繊維束を温水洗浄装置で洗浄する際の浸漬時間が3秒未満であると、炭素繊維束の温度が十分に上がらず、珪素化合物の除去効果も低く、樹脂との接着性が悪化する。また、10秒を超えて処理しても、炭素繊維束内のpHが浸漬時間と共に低下していくため、炭素繊維束からの珪素化合物の除去はそれ程望めない。かかる浸漬時間としては、好ましくは3〜7秒、さらに好ましくは3〜5秒であるのが、前記効果の上からよい。
以上のように本発明によれば、あえて温水浴液のpHをアルカリ補正する必要がないことからコスト的にも有利であるとともに、炭素繊維束の珪素化合物の除去効果を最大限に発揮する温水洗浄装置及び炭素繊維束の処理方法を提供することができるのである。
また、本発明の温水洗浄装置で洗浄される炭素繊維束は、アルカリ電解処理されたものを使用するが、かかる電解処理において通電する電気量としては、好ましくは20〜200c/g、より好ましくは30〜160c/g、特に好ましくは50〜120c/g与えるのがよい。すなわち、電気量が20c/g未満であると、炭素繊維表面に生成される表面官能基量が少なく、樹脂との接着性が低く、また、珪素化合物の除去効果も低い。逆に電気量が200c/gを越えると、炭素繊維の表層構造が破壊され、結果として複合材料の引張特性等が低下する。
また、かかるアルカリ電解処理に用いる電解質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などの水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の無機塩類、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどの有機塩類、さらにこれらのカリウム塩、バリウム塩、または他の金属塩、およびアンモニウム塩、水素化テトラアルキルアンモニウムまたはヒドラジンなどの有機化合物が好ましく使用されるが、複合材料にしたときの欠陥となる障害、即ちアルカリ金属を含有しないもので炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウムがより好ましい。これらのアルカリ電解液のpHは8〜12が好ましく、pHが高いほど珪素化合物の除去効果は高くなるが、水洗効率を考慮するとpH8〜10がより好ましい。
次いで、本発明の温水洗浄装置で炭素繊維束を処理する際における、該温水洗浄装置の温水浴の温度は60〜100℃が好ましい。60℃未満になると、炭素繊維束から珪素化合物を除去する能力が著しく低下する。温水浴の上限は100℃であるが、沸騰した温水浴は作業に伴う安全性が低下するため、好ましくは95℃以下、より好ましくは80〜95℃であるのがよい。
さらに、下記式から求められる温水浴比が1〜60倍であることが、温水浴全体のpHをよりアルカリ側に制御する上から好ましい。60倍を超えると、温水浴のpHが中性に近づき、珪素化合物の除去効果が低くなる傾向があり、また1倍未満では、温水浴の水蒸気中アルカリ濃度が高くなり、作業環境整備にコストがかかる場合がある。よって、より好ましくは5〜50倍、特に好ましくは5〜25倍であるのがよい。ここでいう温水浴比とは下記式で求められる。すなわち、温水浴に供給される1分間当たりの水量(温水浴供給水量)を、温水洗浄装置を用いて1分間に処理される炭素繊維束の量(処理糸量)で割った値である。
温水浴比=温水浴供給水量(g/分)/処理糸量(g/分)
さらに、本発明の温水洗浄処理方法は、炭素繊維束の処理張力を20〜100MPaとして処理するのが好ましい。処理張力が20MPa以下では、温水浴に導入された炭素繊維束からアルカリ電解液が直ぐに温水と置換されて珪素化合物の除去効果が低下する。また、隣り同士の炭素繊維束が混繊するなどして好ましくない。一方、処理張力が100MPaを超えると毛羽の発生が多くなり品位が悪くなることがある。
さらに温水洗浄装置から浴出後の炭素繊維束は、そのまま、あるいは好ましくは水洗しアルカリを除去した後に乾燥するのがよい。かかる乾燥温度としては、空気雰囲気中250〜350℃が好ましい。乾燥温度が250℃未満であると、炭素繊維表面に存在する珪素化合物がまだ残存していることがあり、樹脂との接着性の向上効果が低くなる傾向があり、逆に350℃より高くなると、官能基が熱分解により消失し、樹脂との接着性が低下する傾向がでてくる。より好ましくは250〜340℃、特に好ましくは300〜340℃であるのがよい。
また、本発明の炭素繊維束は、光電子分光法における酸素濃度がO/Cが0.1〜0.3の範囲にあるのが好ましい。0.1より低い場合は、炭素繊維に存在する官能基が少なすぎるため樹脂との接着性が低下し、複合材料の層間剪断強度(以下ILSSと表記)などの特性が低下する。0.3を越えると、炭素繊維に存在する官能基量が多すぎ、かえって引張り強度が低下する。より好ましくは0.15〜0.30であるのがよい。
本発明の炭素繊維束の処理方法において、前記乾燥された炭素繊維束は、さらにサイジング処理することが好ましい。かかるサイジング剤の組成としては特に限定されないが、多官能の脂肪族エポキシ樹脂を主剤とするサイジング剤が好ましい。そのメカニズムは明確でないが、脂肪族エポキシ樹脂のように柔軟な主鎖を持つサイジング剤がより樹脂との接着を向上する効果が大きいので好ましい。また、1分子中に存在するエポキシ環は多い方が官能基密度が高くなり、接着性がより向上するので好ましい。3官能が好ましく、より好ましくは3官能以上のエポキシ樹脂である。3官能の該エポキシ樹脂の例としては、例えばポリグリセリンポリグリシジルエーテル、4官能の該エポキシ樹脂の例としては、例えばソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。また、かかるサイジング剤には、必要により水溶性ポリウレタン、不飽和ポリエステル、またはポリエチレングリコール等を含ませることもできる。かかるサイジング剤の炭素繊維束への付着量としては、ハンドリング性や耐擦過性の点から0.5〜1.5重量%が好ましい。
また、本発明の繊維強化複合材料は、かかる炭素繊維束とマトリックス樹脂から構成されるものである。マトリックス樹脂の種類は問わないが、航空宇宙用途、一般産業用途において十分な機械的特質を得るためにはエポキシ樹脂組成物が好ましく使用される。ここで言うエポキシ樹脂組成物とは、エポキシ樹脂と硬化剤を含むものを指す。かかるエポキシ樹脂は分子内に複数のエポキシ基を有する化合物が用いられる。特にアミン類、フェノール類、炭素−炭素二重結合を有する化合物が用いられる。かかるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA形エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールエポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレンジアミンなどのグリシジルアミン型のエポキシなどあるいはこれらの組み合わせが好ましく使用される。
かかるエポキシ樹脂組成物に使用される硬化剤としてはエポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物であればいずれを問わないが、アミノ基、酸無水物基、アジド基を有する化合物が好ましく使用される。具体的にはジシンジアミド、ジアミノジフェニルスルフォンの各種異性体、アミノ安息香酸エステル類が好ましく使用される。かかるエポキシ樹脂組成物に、上記のエポキシ樹脂、硬化剤の他、高分子化合物、無機または有機粒子など他の成分を適宜その目的に応じて配合することができる。
本発明の繊維強化複合材料においては、かかる炭素繊維の含有率が40〜90重量%であることが好ましい。炭素繊維含有率が40重量%未満であると必要な機械特性を得るための効果が低いため強度特性が低下する。炭素繊維含有率が90重量%を超えると炭素繊維に対するマトリックス樹脂組成物の量が少なくなるために繊維強化複合材料中にボイド(空隙)が生じやすく、その結果、繊維強化複合材料の機械特性が低下することがある。
なお、かかる繊維強化複合材料の炭素繊維含有率(重量%)は例えば還元炎により樹脂硬化物を焼き飛ばし炭素繊維束の重量を求める燃焼法などが用いられる。 本発明の繊維強化複合材料を得る方法としては、炭素繊維束にエポキシ樹脂組成物を含浸させてプリプレグを作製し、これを積層して、積層物に圧力を付与しながら樹脂を加熱し硬化させて繊維強化複合材料を製造する方法が好ましく採用される。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。尚、実施例中の測定方法は以下の通り実施した。
(1)ストランド強度、弾性率測定
炭素繊維束に下記組成の樹脂を含浸させて130℃に温調したオーブン中で35分間硬化させて得られるストランドをJISR−7601の方法に従い、n数6で引張試験することにより求めた。
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−シクロヘキ シル−カルボキシレート 100部
(ERL−4221(R);ユニオンカーバイド社製エポキシ樹脂)
・3フッ化ホウ素モノエチルアミン(BF3/MEA) 3部
・アセトン 4部
(2)炭素繊維束の珪素由来強度測定
X線を照射した際に珪素に由来して発せられる蛍光X線の単位時間当たりの光子数を珪素由来のX線強度として測定した。尚、本実施例では日本フィリップス社製蛍光X線装置VENUS200を用いた。一次X線源はScを用い、測定時の条件としては減圧気圧4〜8Paの条件で、温度37℃、25秒間の測定時間とした。測定試料である炭素繊維束は1mサンプリングし、次に述べる洗浄をした後に、長さ50mm、幅50mm、厚さ2mmの板(実施例ではテフロン(登録商標)製の板)に板表面が見えないように隙間無く繊維束を巻き付け、測定に供した。
<炭素繊維束の洗浄>
測定前にサイジング剤等の付着物を取り除くために炭素繊維束1重量部に対し100重量部のイオン交換水中で5分間超音波洗浄し、更にイオン交換水を30lの水槽に6l/分給水しながら1分間洗い流した。その後熱風オーブン中で120℃、2時間乾燥させた。本実施例では超音波洗浄機としてエスエヌディ(株)社製USK−4を用い、熱風オーブンとしてはADVANTEC(株)社製FS−32Dを用いた。
(3)光電子分光法による表面酸素濃度
サイジング剤などを溶媒で除去した炭素繊維束を銅製の試料支持台に広げて並べた後、光電子脱出角度を90°とし、X線源としてMgKα1、2を用い、試料チャンバー中を1.3×10-6Pa(1×10-8Torr)に保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正として、C1sの主ピークの結合エネルギー値B.E.を284.6eVにあわせる。C1sピーク面積は282〜296eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1sピーク面積は528〜540eVの範囲で直線のベースラインを引くことによりもとめる。ここで表面酸素濃度(O/C)とは、前期O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から、装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出する。なお本実施例では島津製作所のESCA−750を用い、上記装置固有の感度補正値は2.85であった。サイジング剤が付着した炭素繊維束はアセトンなどの有機溶媒で除去したのち測定する。
(4)繊維強化強化複合材料の試験片作製
A.次に示す原料樹脂を混合し、30分攪拌して樹脂組成物を得た。
・ビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂 30重量%
(エピコート1001(R)、ジャパン エポキシ レジン(株)製)
・ビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂 30重量%
(エピコ−ト828(R)、ジャパンエポキシ レジン(株)製)
・フェノールノボラックポリグリシジルエーテル樹脂 27重量%
(エピクロン−N740(R)、大日本インキ化学工業(株)製)
・ポリビニルホルマール樹脂 5重量%
(ビニレックK(R)、チッソ(株)製)、
・ジシアンジアミド 4重量%
(DICY7、ジャパンエポキシ レジン(株)製)
・3,4ジクロロフェノール−1ジメチルウレア 4重量%
(DCMU−99、保土ヶ谷化学(株)製、硬化剤)
次に、前記樹脂組成物を塗布した離型紙にコーティングして得られた樹脂フィルムを円周約2.7mの80℃に温調した鋼製ドラムに巻き付けた。
この上に炭素繊維束をクリールから巻きだしトラバースを介して配列する。更にその上から、前期樹脂フィルムで再度覆い、ロールで回転しながら、加圧し樹脂を束内に含浸せしめ、幅300mm、長さ2.7mの一方向プリプレグを作製した。ここで、プリプレグの繊維目付はドラムの回転数とトラバースの送り速度を変化させ、190g/m2 とした。またプリプレグの樹脂含有率は約43重量%とした。
(高温吸湿下の90°曲げ強度の測定)
前記プリプレグの繊維方向を一方向に揃えて積層し、温度130℃、圧力0.3MPaで2時間硬化させ、厚さが2mmの積層板を成形した。前記積層板から厚さ2mm±0.2mm、幅15mm±0.28mm×長さ65mm±0.01mmの試験片を切り出した。
曲げ試験の測定に先立ち、上記試験片を98℃の温水に4日間浸漬し、試験片の水分率を0.9〜1.2%とした。このようにして高温吸湿処理を行った試験片を83℃に温調された恒温室内で3点曲げ治具(上部圧子10mmφ、下部支点4mmφ)を用いて支持スパンを40mmに設定し、歪み速度1.0mm/分として、n数6で試験をおこない下記式により曲げ強度を求めた。
90°曲げ強度(MPa)=(3×荷重(N)×40)/(2×厚み(mm) ×厚み(mm)×幅(mm))
(実施例1)
アクリロニトリル97重量%、アクリル酸メチル2重量%、イタコン酸0.6重量%からなり極限粘度1.5であるアクリル系重合体を、DMSO中で溶液重合した後、pHが8〜8.5になるまで攪拌しながらアンモニアガスを吹き込み、共重合体濃度が20.0%である紡糸原液を得た。
この紡糸原液を、孔直径0.1mmで6000ホールを有する口金から一旦空気中に吐出して、約4mmのエアーギャップを経て凝固浴中に導く乾湿式紡糸法で繊維を形成した。凝固浴はDMSO40重量%で温度は5℃とした。
凝固浴から引き出した繊維束を緊張保持しながら30〜65℃に順次温度を上げながら多段の水洗槽によりDMSOを洗浄除去した。ついで90℃の熱水浴中で3倍に延伸して膨潤比0.8の水膨潤繊維束を得た。この水膨潤繊維束を、アミノ変性シリコーンオイル70重量部と乳化剤としてポリエチレングリコールアルキルエーテルを30重量部からなる水分散液に浸漬した。この油剤の分散液の油剤濃度を、繊維束に対する油剤付着量が1.0重量%になるように調整した。
ついで、油剤が付与された繊維束を、表面温度が160℃のホットロールに接触させながら乾燥緻密化後、圧力0.44MPaの加圧水蒸気中で4倍に延伸して、単繊維の繊度が1.11dtexで、6000フィラメントの前駆体繊維束を得た。
このように得られた前駆体繊維束を255℃、次いで265℃の加熱空気中で延伸比が0.9の緊張下で耐炎化処理を行い、比重1.35の耐炎化繊維束を得た。
ついで窒素雰囲気中で最高温度800℃の前炭素化炉で延伸比が0.96で処理したのち、窒素雰囲気中で1250℃の炭素化炉で張力を0.1Nとして炭素化して炭素繊維束を得た。
この炭素繊維束を電導度20msの重炭酸アンモニウム水溶液中で100c/gの電解処理を行った後、温水浴供給水量140g/分、処理糸量2.8g/分の温水浴比50倍で80℃に温調した図1、容量150lの温水洗浄装置へ糸速3.5m/分で直接導入し、浴入り〜浴中ローラーを介し浴出までの温水浸漬時間として3秒間浸積させた後、水洗工程へ導入した。次いで250℃に温調した乾燥機内に導入し15秒間乾燥後、多官能エポキシ樹脂からなるサイジング剤を付与し炭素繊維束を得た。
その結果、炭素繊維束に残存する珪素化合物量が少なく高温吸湿下での90°曲げ強度に優れた炭素繊維束を得ることが可能となった。詳しくは表1に炭素繊維束の蛍光X線による珪素由来のX線強度、X線光電子分光法による表面酸素濃度、ストランド繊維引張強度、引張弾性率及びそれを用いた繊維強化複合材料の高温吸湿下の90°曲げ強度を示す。なお、表中の温水工程の温度、pHは温水洗浄浴槽の中央部を測定した値である。
(実施例2)
実施例1と同様の方法で得られた炭素繊維束を電導度20msの重炭酸アンモニウム水溶液中で100c/gの電解処理を行った後、温水浴供給水量70g/分、処理糸量2.8g/分の温水浴比25倍で90℃に温調した図1、容量150lの温水洗浄装置へ糸速3.5m/分で直接導入し、浴入り〜浴中ローラーを介し浴出までの温水浸漬時間として5秒間浸積させた後、水洗工程へ導入した。次いで300℃に温調した乾燥機内に導入し15秒間乾燥後、多官能エポキシ樹脂からなるサイジング剤を付与し炭素繊維束を得た。
その結果、実施例1よりも残存する珪素化合物量が少なく高温吸湿下での90°曲げ強度に優れた炭素繊維束を得ることが可能となった。詳しくは表1に炭素繊維束の蛍光X線による珪素由来のX線強度、X線光電子分光法による表面酸素濃度、ストランド繊維引張強度、引張弾性率及びそれを用いた繊維強化複合材料の高温吸湿下の90°曲げ強度を示す。
(実施例3)
実施例1と同様の方法で得られた炭素繊維束を電導度20msの重炭酸アンモニウム水溶液中で100c/gの電解処理を行った後、温水浴供給水量14g/分、処理糸量2.8g/分の温水浴比5倍で95℃に温調した図1、容量150lの温水洗浄装置へ糸速3.5m/分で直接導入し、浴入り〜浴中ローラーを介し浴出までの温水浸漬時間として7秒間浸積させた後、水洗工程へ導入した。次いで320℃に温調した乾燥機内に導入し15秒間乾燥後、多官能エポキシ樹脂からなるサイジング剤を付与し炭素繊維束を得た。
その結果、残存する珪素化合物量が少なく高温吸湿下での90°曲げ強度に優れた炭素繊維束を得ることが可能となった。詳しくは表1に炭素繊維束の蛍光X線による珪素由来のX線強度、X線光電子分光法による表面酸素濃度、ストランド繊維引張強度、引張弾性率及びそれを用いた繊維強化複合材料の高温吸湿下の90°曲げ強度を示す。
(実施例4)
温水浸漬時間を3秒とした以外は、実施例3と同様にして炭素繊維束を得た。
その結果、残存する珪素化合物量が少なく高温吸湿下での90°曲げ強度に優れた炭素繊維束を得ることが可能となった。詳しくは表1に炭素繊維束の蛍光X線による珪素由来のX線強度、X線光電子分光法による表面酸素濃度、ストランド繊維引張強度、引張弾性率及びそれを用いた繊維強化複合材料の高温吸湿下の90°曲げ強度を示す。
(実施例5)
温水洗浄時間を10秒とした以外は、実施例3と同様にして炭素繊維束を得た。
その結果、残存する珪素化合物量が少なく高温吸湿下での90°曲げ強度に優れた炭素繊維束を得ることが可能となった。詳しくは表1に炭素繊維束の蛍光X線による珪素由来のX線強度、X線光電子分光法による表面酸素濃度、ストランド繊維引張強度、引張弾性率及びそれを用いた繊維強化複合材料の高温吸湿下の90°曲げ強度を示す。
(比較例1)
実施例1と同様の方法で得られた炭素繊維束を電導度20msの重炭酸アンモニウム水溶液中で100c/gの電解処理を行った後、温水浴供給水量14g/分、処理糸量2.8g/分の温水浴比5倍で55℃に温調した図2、容量150lの温水洗浄装置へ糸速3.5m/分で直接導入し、浴入り〜浴中ローラーを介し浴出までの温水浸漬時間として7秒間浸積させた後、水洗工程へ導入した。次いで320℃に温調した乾燥機内に導入し15秒間乾燥後、多官能エポキシ樹脂からなるサイジング剤を付与し炭素繊維束を得た。
その結果、温水浴での珪素化合物の除去効果が低く炭素繊維束に多く残存し、高温吸湿下での90°曲げ強度が大きく低下した。詳しくは表1に炭素繊維の蛍光X線による珪素由来のX線強度、X線光電子分光法による表面酸素濃度、ストランド繊維引張強度、引張弾性率及びそれを用いた繊維強化複合材料の高温吸湿下の90°曲げ強度を示す。
(比較例2)
実施例1と同様の方法で得られた炭素繊維束を電導度20msの重炭酸アンモニウム水溶液中で100c/gの電解処理を行った後、温水浴供給水量14g/分、処理糸量2.8g/分の温水浴比5倍で90℃に温調した図2、容量150lの温水洗浄装置へ糸速3.5m/分で直接導入し、浴入り〜浴中ローラーを介し浴出までの温水浸漬時間として2秒間浸積させた後、水洗工程へ導入した。次いで320℃に温調した乾燥機内に導入し15秒間乾燥後、多官能エポキシ樹脂からなるサイジング剤を付与し炭素繊維束を得た。
その結果、温水浴での珪素化合物の除去効果が低く炭素繊維束に多く残存し、高温吸湿下での90°曲げ強度が大きく低下した。詳しくは表1に炭素繊維の蛍光X線による珪素由来のX線強度、X線光電子分光法による表面酸素濃度、ストランド繊維引張強度、引張弾性率及びそれを用いた繊維強化複合材料の高温吸湿下の90°曲げ強度を示す。
(比較例3)
実施例1と同様の方法で得られた炭素繊維束を電導度20msの重炭酸アンモニウム水溶液中で100c/gの電解処理を行った後、温水浴供給水量14g/分、処理糸量2.8g/分の温水浴比5倍で95℃に温調した図2の従来型、容量150lの温水洗浄装置を用いて、糸速3.5m/分で該装置へ導入し該繊維束を7秒間処理後、水洗工程を経て320℃に温調した乾燥機内に導入し15秒間乾燥後、多官能エポキシ樹脂からなるサイジング剤を付与し炭素繊維を得た。
その結果、炭素繊維束に残存する珪素化合物量が多く高温吸湿下での90°曲げ強度が大きく低下した。詳しくは表1に炭素繊維の蛍光X線による珪素由来の強度、X線光電子分光法による表面酸素濃度、ストランド繊維引張強度、引張弾性率及びそれを用いた繊維強化複合材料の高温吸湿下の90°曲げ強度を示す。
(比較例4)
温水浸漬時間を2秒とした以外は、実施例3と同様にして炭素繊維束を得た。
その結果、炭素繊維束に残存する珪素化合物量が比較的多く高温吸湿下での90°曲げ強度の発現が不十分であった。詳しくは表1に炭素繊維の蛍光X線による珪素由来の強度、X線光電子分光法による表面酸素濃度、ストランド繊維引張強度、引張弾性率及びそれを用いた繊維強化複合材料の高温吸湿下の90°曲げ強度を示す。
Figure 2004332189
表1から明らかなように実施例1〜5のものは比較例1〜4に比べ、炭素繊維束に残存する珪素化合物量が少なく、高温吸湿下での90°曲げ強度の特性に優れていることがわかる。
この図は、本発明の温水洗浄装置の一例を示す横断面概略図である。 この図は、従来の温水洗浄装置の一例を示す横断面概略図である。
符号の説明
1 :炭素繊維束
2 :浴外導入ローラー
3´:浴中導入ローラー
3 :浴中ローラー
4 :温水洗浄浴槽
5 :洗浄液排出堰
6 :洗浄液供給口
7 :洗浄液排出口
θ :接線角度(°)

Claims (10)

  1. 炭素繊維束をアルカリ電解処理後に温水洗浄をおこなう温水洗浄装置であって、該装置が導入ローラーと浴中ローラーと温水浴とを備えてなり、該導入ローラーが該温水浴液面より上の位置に配置されてなる温水洗浄装置。
  2. 炭素繊維束をアルカリ電解処理後に温水洗浄をおこなう温水洗浄装置であって、該装置が導入ローラーと浴中ローラーと温水浴とを備えてなり、該導入ローラーが該温水浴液面より上の位置に配置されており、かつ、該浴中ローラーは、被処理炭素繊維束の温水浸漬時間に合わせて、その位置を調節可能に配置されている請求項1記載の温水洗浄装置。
  3. 該導入ローラーと該浴中ローラーの接線角度θが3〜45°である請求項1または2に記載の温水洗浄装置。
  4. 該温水浴液の排出堰の高さを変更して、該温水浴液面の高さを調節可能とした請求項1〜3のいずれかに記載の温水洗浄装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の温水洗浄装置を用いて、アルカリ電解酸化処理後の炭素繊維束を温水洗浄をおこなうに際して、該浴中ローラーの配置位置を調整して、温水浸漬時間が3〜10秒となる条件で該炭素繊維束を温水洗浄する炭素繊維束の処理方法。
  6. 該炭素繊維束が、アルカリ性水溶液中で炭素繊維束を陽極とし、20〜200c/gの電気量で電解酸化処理されたものである請求項5に記載の炭素繊維束の処理方法。
  7. 該温水浴の浴温度が60〜100℃で、下記式から求められる温水浴比が1〜60倍である請求項5または6に記載の炭素繊維束の処理方法。
    温水浴比=温水浴供給水量(g/分)/処理糸量(g/分)
  8. 該温水洗浄処理された炭素繊維束を、さらに250〜350℃の温度で乾燥する請求項5〜7のいずれかに記載の炭素繊維束の処理方法。
  9. 該乾燥された炭素繊維束を、さらにサイジング処理する請求項8に記載の炭素繊維束の処理方法。
  10. 請求項5〜9のいずれかに記載の炭素繊維束の処理方法で得られる炭素繊維束を含む炭素繊維強化複合材料。
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