JP2004331885A - 中抵抗ゴム組成物及びそれを用いたゴム部材 - Google Patents

中抵抗ゴム組成物及びそれを用いたゴム部材 Download PDF

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Abstract

【課題】導電剤としてイオン性液体を用い、比較的容易に所定の抵抗値に設定することができ、種々の用途に使用することができる中抵抗ゴム組成物及びそれを用いたゴム部材を提供する。
【解決手段】導電剤として少なくとも一種のイオン性液体を含有する未加硫ゴムからなり、前記少なくとも一種のイオン性液体の複合体は、融点が80℃以下及びガラス転移点が−50℃以下の少なくとも一方の条件を満足し、粘度が1000cP(80℃)以下であり、且つイオン電導度が1.0×−10−6Scm(80℃)以上である中抵抗ゴム組成物及びそれを用いたゴム部材。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中抵抗ゴム組成物及びそれを用いたゴム部材に関し、特に、電子写真感光体、転写プロセスに用いる転写ドラム及び転写ベルト、又は中間搬送ベルト、並びに現像プロセスに用いられる現像ブレード、現像ロール、帯電ロール等の電荷平坦化、除電及び帯電をするために用いて好適な中抵抗ゴム組成物及びそれを用いたゴム部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機、レーザプリンタなどの電子写真装置や静電記録装置には、電荷平坦化、除電及び帯電をするために種々の中抵抗ゴム部材が用いられている。
【0003】
これらの中抵抗ゴム部材は、ポリウレタンやエピクロルヒドリンゴムなどのゴム基材に、導電剤を添加して所定の電気抵抗を有するものであり、導電性カーボンブラックなどの導電剤を添加した電子導電タイプと、過塩素酸リチウムなどのアルカリ金属塩を添加したイオン導電タイプと(例えば、特許文献1〜4等参照)、これらを併せたハイブリッドタイプとが知られている(例えば、特許文献5〜7等参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平05−173409号公報 (段落「0014」、「0025」等)
【特許文献2】
特開平05−281831号公報 (段落「0018」、「0028」等)
【特許文献3】
特開平10−045953号公報 (特許請求の範囲等)
【特許文献4】
特開平10−039582号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開平06−035298号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献6】
特開平08−179592号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献7】
特開2000−214659号公報 (段落「0032」〜「0035」等)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このうち、電子導電タイプのものは所望の中抵抗程度の導電性が安定して得られがたく、また、イオン導電タイプのものは温度や湿度、印加電圧の変化により抵抗値が変化したり、多湿環境下では導電剤のブリードアウト又はブルームアウトしたりしてしまうなどの問題があった。さらに、過塩素酸リチウムなどのイオン導電剤は取扱いに危険が伴うという問題もある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、安定して所望の抵抗値を得ることができる中抵抗ゴム組成物及びそれを用いたゴム部材を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、導電剤として少なくとも一種のイオン性液体を含有する未加硫ゴムからなり、前記少なくとも一種のイオン性液体の複合体は、融点が80℃以下及びガラス転移点が−50℃以下の少なくとも一方の条件を満足し、粘度が1000cP(80℃)以下であり、且つイオン電導度が1.0×−10−6Scm(80℃)以上であることを特徴とする中抵抗ゴム組成物にある。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記イオン性液体は、1種類以上のアニオンと1種類以上のカチオンからなる有機塩であることを特徴とする中抵抗ゴム組成物にある。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記イオン性液体は、カチオン及びアニオンの結合様式が、共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス力の何れかであることを特徴とする中抵抗ゴム組成物にある。
【0010】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様の中抵抗ゴム組成物を加硫したゴム状弾性体からなることを特徴とする中抵抗ゴム部材にある。
【0011】
かかる本発明では、導電剤として、所定の物性を満足するイオン性液体を未加硫ゴムに添加したので、所望の抵抗値を極めて安定して得ることができ、種々の用途に使用することができる中抵抗ゴム組成物及びそれを用いたゴム部材を提供できる。
【0012】
ここで、イオン性液体とは、室温で液体である溶融塩であり、常温溶融塩とも呼ばれるものであり、蒸気圧がない(不揮発性)、高耐熱性、不燃性、化学的安定である等の特性を有する。従って、イオン導電剤のような取扱い上の危険が少なく、溶剤を使用しなくてすむので、ゴムへの添加が容易であり、所望の中抵抗を容易に得ることができる。
【0013】
そして、本発明では、特に、イオン性液体又は2種以上混合したイオン性液体の複合体として、融点が80℃以下及びガラス転移点が50℃以下の少なくとも一方の条件を満足し、粘度が1000cP(80℃)以下であり、且つイオン電導度が1.0×−10−6Scm(80℃)以上であるイオン性液体を使用する。このようなイオン性液体を用いると、未加硫ゴムに添加した際に有効に機能し、種々の用途に用いて有効なイオン導電性を得ることができる。すなわち、イオン性液体又は2種以上のイオン性液体の複合体は、融点が80℃以下及びガラス転移点が−50℃以下の少なくとも一方の条件を満足すると、添加したゴム組成物中で有効にイオン化して所望のイオン導電性を付与することができ、また、粘度が1000cP(80℃)以下であると、通常のゴム練り工程で未加硫ゴムに均一に添加することができる。
【0014】
また、このようなイオン性液体は、揮発性がないことから、ゴムと相溶すればブリードの心配もない。また、特に、水に溶けないイオン性液体(疎水性イオン性液体)を用いると、湿度依存性が小さく、導電性が安定すると考えられる。さらに、カーボンブラックのようにゴムを黒色にしてしまうこともないので、白色系又は着色した中抵抗ゴム部材を提供することもできる。
【0015】
なお、2種以上混合したイオン性液体の複合体としてこのような条件を満足できる場合も同様に用いることができる。すなわち、2種類のイオン性液体を混合して複合体とした場合には、融点が単独の場合より降下したり、存在しなくなったりする場合があり、又はガラス転移点が単独の場合より降下する場合があるので、このような場合には、単独では融点が80℃以下又はガラス転移点が−50℃以下という条件を満足しないイオン性液体も用いることができる。
【0016】
本発明に用いることができるイオン性液体は、上述した条件を満足すれば、その化学構造は特に限定されるものではなく、1種類以上のアニオンと1種類以上のカチオンからなる有機塩であればよい。また、かかるイオン性液体において、カチオンとアニオンの結合様式も特に限定されず、カチオン及びアニオンの結合様式が、共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス力の何れかであればよい。
【0017】
また、本発明で用いることができるイオン性液体の具体的な化学構造としては、下記一般式(1)〜(4)で示されるカチオン(陽イオン)を有するものであり、例えば、イミダゾリウムイオンなどの環状アミジンイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機カチオンを陽イオンとするものである。
【0018】
【化1】
Figure 2004331885
【0019】
(式中、Rは、炭素数4〜10の炭化水素基を表わし、R、Rは、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を表わし、ヘテロ原子を含んでいても良い。但し、窒素原子が二重結合を含む場合、Rは、ない。)
【0020】
【化2】
Figure 2004331885
【0021】
(式中、Rは、炭素数2〜10の炭化水素基を表わし、R、R、Rは、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を表わし、ヘテロ原子を含んでいても良い。)
【0022】
【化3】
Figure 2004331885
【0023】
(式中、Rは、炭素数2〜10の炭化水素基を表わし、R、R10は、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を表わし、ヘテロ原子を含んでいても良い。)
【0024】
【化4】
Figure 2004331885
【0025】
(式中、Qは、窒素、リン、硫黄原子を表わし、R11、R12、R13、R14は、水素又は炭素数1〜8のアルキル基を表わし、ヘテロ原子を含んでいても良い。但し、Qが硫黄原子の場合、R11は、ない。)
【図1】
また、これらの有機カチオンとともに、H、Li、K、Naなどのアルカリ金属カチオンを組み合わせたカチオンを有するものを陽イオンとして用いることもできる。
【0026】
一方、陰イオンとしては、AlCl 、AlCl 、NO 、BF 、PF 、CHCOO、CFCOO、CFSO 、(CFSO、(CFSO、AsF 、SbF 、F(HF) 、CFCFCFCFSO 、(CFCFSO、CFCFCFCOO、Cl、Br、SO 2−などを挙げることができる。
【0027】
なお、上述したように2種以上のカチオンを組み合わせて有する場合には、それの価数に対応するアニオンを有する。
【0028】
また、1種のカチオンに対してアニオンを2種以上有するものであってもよい。
【0029】
下記式に有機カチオン及び対アニオンの具体例を例示して示すが、勿論これに限定されるものではなく、この類似物、誘導体は勿論、他のものを用いてもよいことはいうまでもない。
【0030】
【化5】
Figure 2004331885
【0031】
物質の略語
EMI:1−ethyl−3−methylimidazole
BP: 1−butylpiperidine
P12:N−ethyl−N−methylpyrrolidine
TMPA:Trimethylpropylamine
【0032】
【化6】
Figure 2004331885
【0033】
物質の略語
TFSI: bis{(trifluoromethyl)sulfonyl}imide
【0034】
本発明では、ベースとなる未加硫ゴム(生ゴム)と相溶性を有するイオン性液体を用いればよく、特に限定されない。
【0035】
また、イオン性液体の中には水に対して不溶性のものがあり、湿度に対する安定性、芯がね等の金属への腐食問題等を考慮すると、水に対して不溶性のもの(疎水性イオン性液体)を用いるのが好ましい。
【0036】
未加硫ゴム及びこれを架橋したゴム状弾性体の材質は、特に限定されず、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、クロルプレンゴム(CR)等を挙げることができる。特に、相溶性の観点から、ゴムの溶解度指数(SP値)が9.0以上であることが好ましい。また感光体に直接接触する部材については汚染性の問題から、ポリウレタン、エピクロルヒドリン系ゴムを用いるのが好ましい。
【0037】
本発明の中抵抗ゴム組成物及びゴム部材は、用途によっても異なるが、例えば、体積抵抗率が1×10〜1×10Ω・cm程度であり、このような所望の抵抗値が得られるようにイオン性液体の種類及び添加量を設定すればよい。
【0038】
本発明の中抵抗ゴム組成物は、未加硫状態でも安定した体積抵抗値を示し、経時変化も少ないという特徴を有する。したがって、イオン性液体を含有する未加硫ゴムの状態で流通させることも可能である。
【0039】
また、本発明の中抵抗ゴム組成物は、適宜、所定の手法で加硫成形し、中抵抗ゴム部材とすることができる。加硫は、一般的な硫黄加硫、過酸化物加硫などゴム素材に応じて適宜選択すればよい。
【0040】
このような中抵抗ゴム部材の形状は、ブロック状、ローラ状、ブレード状の何れでもよい。また、ブレード状のものは、トレール当接又はアゲンスト当接の何れで用いてもよい。
【0041】
なお、本発明の中抵抗ゴム部材は、本発明の目的に反しない範囲で、カーボンブラック、金属粉など電子導電剤や過塩素酸リチウムなどのイオン導電剤を併用してもよい。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
(実施例1〜7)
イオン性液体として、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド(EMITFSI)を用い、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)ベース100重量部に対してEMITFSIを、0.01重量部、0.1重量部、0.5重量部、1重量部、5重量部、10重量部、20重量部それぞれ添加して練りこみ、160℃、20分の加硫条件でプレスし、120mm×120mmで、厚さ1.0mmの平板を作製した。
【0044】
(実施例8〜13)
NBRベースの代わりにエピクロルヒドリン−エチレンオキシドゴム(ECO)ベースを用い、ベースゴム100重量部に対して、0.01重量部、0.1重量部、1重量部、5重量部、10重量部、20重量部それぞれ添加して練りこんだ以外は実施例1〜7と同様にして平板を作製した。
【0045】
(実施例14〜17)
EMITFSIの代わりに、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルフォネート(HMITFS)を用い、0.01重量部、0.1重量部、0.5重量部、1重量部をNBRベース100重量部に対して添加した以外は実施例1と同様にして平板を作製した。
【0046】
(実施例18〜21)
EMITFSIの代わりに、1−ブチルピリジニウムトリフルオロメタンスルフォネート(BPTFS)を用い、0.01重量部、0.1重量部、0.5重量部、1重量部をNBRベース100重量部に対して添加した以外は実施例1と同様にして平板を作製した。
【0047】
(実施例22〜25)
EMITFSIの代わりに、1−ヘキシルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート(HPPF6)を用い、0.01重量部、0.1重量部、0.5重量部、1重量部をNBRベース100重量部に対して添加した以外は実施例1と同様にして平板を作製した。
【0048】
(実施例26〜29)
EMITFSIの代わりに、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート(BMIPF6)を用い、0.01重量部、0.1重量部、0.5重量部、1重量部をNBRベース100重量部に対して添加した以外は実施例1と同様にして平板を作製した。
【0049】
(実施例30〜33)
EMITFSIの代わりに、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルフォネート(HDMITFS)を用い、0.01重量部、0.1重量部、0.5重量部、1重量部をNBRベース100重量部に対して添加した以外は実施例1と同様にして平板を作成した。
【0050】
(実施例34〜36)
EMITFSIの代わりに、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルフォネート(HMITFS)を用い、0.01重量部、0.1重量部、1重量部をECOベース100重量部に対して添加した以外は実施例8と同様にして平板を作製した。
【0051】
(実施例37〜39)
EMITFSIの代わりに、1−ブチルピリジニウムトリフルオロメタンスルフォネート(BPTFS)を用い、0.01重量部、0.1重量部、1重量部をECOベース100重量部に対して添加した以外は実施例8と同様にして平板を作製した。
【0052】
(実施例40〜42)
EMITFSIの代わりに、1−ヘキシルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート(HPPF6)を用い、0.01重量部、0.1重量部、1重量部をECOベース100重量部に対して添加した以外は実施例8と同様にして平板を作製した。
【0053】
(実施例43〜45)
EMITFSIの代わりに、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート(BMIPF6)を用い、0.01重量部、0.1重量部、1重量部をECOベース100重量部に対して添加した以外は実施例8と同様にして平板を作製した。
【0054】
(実施例46〜48)
EMITFSIの代わりに、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルフォネート(HDMITFS)を用い、0.01重量部、0.1重量部、1重量部をECOベース100重量部に対して添加した以外は実施例8と同様にして平板を作成した。
【0055】
(比較例1)
比較のため、EMITFSIを添加しない以外は実施例1(NBRベース)と同様にして平板を作製した。
【0056】
(比較例2)
EMITFSIを添加しない以外は実施例8(ECOベース)と同様にして平板を作製した。
【0057】
(比較例3〜8)
EMITFSIの代わりにカーボンブラックを用い、0.1重量部、1重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部それぞれをNBRベース100重量部に対して添加した以外は、実施例1と同様にして平板を作成した。
【0058】
(比較例9〜13)
EMITFSIの代わりに3フッ化酢酸ナトリウムを用い、0.1重量部、1重量部、5重量部、10重量部、20重量部それぞれをNBRベース100重量部に対して添加した以外は、実施例1と同様にして平板を作成した。
【0059】
(比較例14〜19)
EMITFSIの代わりにカーボンブラックを用い、0.1重量部、1重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部それぞれをECOベース100重量部に対して添加した以外は、実施例8と同様にして平板を作成した。
【0060】
(比較例20〜24)
EMITFSIの代わりに3フッ化酢酸ナトリウムを用い、0.1重量部、1重量部、5重量部、10重量部、20重量部それぞれをECOベース100重量部に対して添加した以外は、実施例8と同様にして平板を作成した。
【0061】
(比較例25〜28)
EMITFSIの代わりに1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド(EDMICL)を用い、0.01重量部、0.1重量部、0.5重量部、1重量部それぞれをNBRベース100重量部に対して添加した以外は、実施例1と同様にして平板を作成した。
【0062】
(比較例29〜32)
EMITFSIの代わりに1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイド(EDMIBR)を用い、0.01重量部、0.1重量部、0.5重量部、1重量部それぞれをNBRベース100重量部に対して添加した以外は、実施例1と同様にして平板を作成した。
【0063】
(比較例33〜35)
EMITFSIの代わりに1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド(EDMICL)を用い、0.01重量部、0.1重量部、1重量部それぞれをECOベース100重量部に対して添加した以外は、実施例8と同様にして平板を作成した。
【0064】
(比較例36〜38)
EMITFSIの代わりに1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイド(EDMIBR)を、0.01重量部、0.1重量部、1重量部それぞれをECOベース100重量部に対して添加した以外は、実施例8と同様にして平板を作成した。
【0065】
(試験例1)
実施例及び比較例のそれぞれで用いたイオン性液体について、融点(℃)、ガラス転移点(℃)、80℃における粘度(cP)、80℃におけるイオン電導度(Scm)を求めた。
【0066】
融点及びガラス転移点測定は、セイコーインスツルメンツ社製DSC6200を用い、昇温速度10℃/minにより測定した。
【0067】
粘度は山一電機社製DIGITAL VISCOMATE VM−100を用い測定した。
【0068】
イオン電導度はBAS社製IM6インピーダンスアナライザーにより測定した。この結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
Figure 2004331885
【0070】
(試験例2)
実施例1,2,4〜7、及び比較例3〜13(以上、NBRベース)、並びに実施例8〜13、及び比較例14〜24(以上、ECOベース)の平板について、温度23℃、相対湿度50%の常温常湿環境において、体積抵抗率を測定した。体積抵抗率の測定には、その環境下のチャンバー内に各サンプルを所定時間放置した後、真鍮製の電極、電流測定器を用い、JIS K6723に準じて、直流100Vの電圧を印加し、1分間充電後の電流値の測定を行った。そして、下記式より、体積抵抗率を算出した。なお、主電極は直径50mm、高さ35mm、ガード電極は外径80mm、内径70mm、高さ10mm、対電極は300×150×2mmのものを用いた。
【0071】
【数1】
ρ=(πd/4t)Rv
ρ :体積抵抗率(Ωcm)
d :主電極の直径(cm)
t :試験片の厚さ(cm)
Rv:体積抵抗(Ω)
【0072】
この結果を図1(NBRベース)及び図2(ECOベース)に示す。この結果、カーボンブラックを用いた比較例では、添加部数に対しある部数まで抵抗の低下は無く、それ以降添加すると、急激に抵抗が低下するといった傾向があり、イオン性液体を用いた実施例では、添加部数に対し体積抵抗率(対数値)は緩やかに低下するため、目的の抵抗値を得られやすいことがわかった。一方、アルカリ金属イオンを用いた比較例では、添加部数に対しイオン性液体を用いた実施例と同様に体積抵抗率は緩やかに低下するが、抵抗低下度合いは悪く、また、1重量部以上添加したゴムでは数日放置しておくとブルームするといった問題があった。
【0073】
従って、イオン性液体を用いた実施例は、カーボンブラックを用いた比較例、アルカリ金属イオンを用いた比較例と比較して、抵抗低下が少部数で可能であり、また、目的の抵抗値を得られやすく、ゴムとの相溶性が良いことから、ブリードの問題も無いことがわかった。
【0074】
さらに、実用的なイオン導電性を得るためには、イオン性液体は、最大でも1重量部程度添加すれば十分であることがわかった。
【0075】
(試験例3)
イオン性液体を0.01重量部〜1重量部添加した実施例1〜4(EMITFSI:NBRベース)、実施例8〜10(EMITFSI:ECOベース)、実施例14〜17(HMITFS:NBRベース)、実施例18〜21(BPTFS:NBRベース)、実施例22〜25(HPPF6:NBRベース)、実施例26〜29(BMIPF6:NBRベース)、実施例30〜33(HDMITFS:NBRベース)、実施例34〜36(HMITFS:ECOベース)、実施例37〜39(BPTFS:ECOベース)、実施例40〜42(HPPF6:ECOベース)、実施例43〜45(BMIPF6:ECOベース)、実施例46〜48(HDMITFS:ECOベース)、及びイオン性液体を添加しない比較例1(NBRベース)、比較例2(ECOベース)、融点が本発明の範囲より高いイオン性液体EDMICLを用いた比較例25〜28(NBRベース)及び比較例33〜35(ECOベース)、融点が本発明の範囲より高いイオン性液体EDMIBRを用いた比較例29〜32(NBRベース)及び比較例36〜38(ECOベース)の平板について、温度25℃、相対湿度50%の常温常湿環境において、体積抵抗率を測定した。体積抵抗率測定は試験例1と同様にして行った。
【0076】
この結果を図3(NBRベース)及び図4(ECOベース)に示す。なお、イオン性液体の略号の後の括弧内は融点を表す。
【0077】
この結果、融点が80℃以下のイオン性液体を用いた実施例では、添加量を増加するに従って緩やかな抵抗低下が見られ、また、融点が低いイオン性液体を用いた方が更に抵抗を低下させることが可能であることがわかった。
【0078】
これに対し、融点が80℃より高い又はガラス転移温度が−50℃より高いイオン性液体を用いた比較例では、ベースゴムがNBRの場合には、緩やかな抵抗低下が見られるが、1重量部添加しても、体積抵抗率は1.0×10−9(Ω・cm)以下にならなかった。また、ベースゴムがECOの場合には、融点が80℃より高い又はガラス転移温度が−50℃より高いイオン性液体を用いると、ベースゴムより抵抗が上昇してしまう結果となった。
【0079】
(試験例4)
各種イオン性液体をベースゴム100重量部に対して1重量部添加した実施例及び比較例の平板について、温度を−20℃〜50℃まで変化させた時の、各環境下における体積抵抗率を同様に測定した。
【0080】
この結果を図5(NBRベース)及び図6(ECOベース)に示す。なお、イオン性液体の略号の後の括弧内は融点を表す。
【0081】
この結果から、融点80℃以下又はガラス転移点−50℃以下のイオン性液体を用いた実施例では、融点以下の環境下でもベースゴムより抵抗が低下することがわかり、融点が80℃以下であれば、−20℃環境下でも有用なイオン導電性が得られることがわかった。また、融点が低くてもガラス転移点が高いイオン性液体を用いると抵抗の低下度合いが小さいことがわかった。更に、融点が低いイオン性液体を用いるほど大きく抵抗低下を示すこともわかった。
【0082】
一方、本発明の範囲を超える融点が80℃より高いイオン性液体を用いた比較例では、ベースゴムがNBRでもガラス転移点以上ではベースゴムより抵抗が高くなる傾向を示し、実質的に使用できないことがわかった。
【0083】
(試験例5)
各種イオン性液体をベースゴム100重量部に対して1重量部添加した実施例及び比較例並びに3フッ化酢酸ナトリウム及びカーボンブラックを1重量部添加した比較例の平板について、温度45℃、相対湿度85%の高温高湿環境に4日間放置した後、平板の表面観察を行い、この結果を表2に示した。なお、イオン性液体の略号の後の括弧内は融点を表す。
【0084】
この結果より、融点が80℃以下のイオン性液体及びカーボンブラックを用いたゴム組成物は高温高湿環境下に放置しても導電剤がブリードアウト又はブルームアウトしないことがわかった。アルカリ金属イオンを用いたゴム組成物は高温高湿環境下に放置しておくと、導電剤がブルームアウトしてしまうことがわかった。
【0085】
【表2】
Figure 2004331885
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、導電剤としてイオン性液体を用いるので、比較的容易に所定の抵抗値に設定することができ、種々の用途に使用することができる中抵抗ゴム組成物及びそれを用いたゴム部材を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例2の結果を示すグラフである。
【図2】試験例2の結果を示すグラフである。
【図3】試験例3の結果を示すグラフである。
【図4】試験例3の結果を示すグラフである。
【図5】試験例4の結果を示すグラフである。
【図6】試験例4の結果を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 導電剤として少なくとも一種のイオン性液体を含有する未加硫ゴムからなり、前記少なくとも一種のイオン性液体の複合体は、融点が80℃以下及びガラス転移点が−50℃以下の少なくとも一方の条件を満足し、粘度が1000cP(80℃)以下であり、且つイオン電導度が1.0×−10−6Scm(80℃)以上であることを特徴とする中抵抗ゴム組成物。
  2. 請求項1において、前記イオン性液体は、1種類以上のアニオンと1種類以上のカチオンからなる有機塩であることを特徴とする中抵抗ゴム組成物。
  3. 請求項1又は2において、前記イオン性液体は、カチオン及びアニオンの結合様式が、共有結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス力の何れかであることを特徴とする中抵抗ゴム組成物。
  4. 請求項1〜3の何れかの中抵抗ゴム組成物を加硫したゴム状弾性体からなることを特徴とする中抵抗ゴム部材。
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