JP5759325B2 - 導電性ローラ用ゴム組成物およびその製造方法ならびに導電性ローラ - Google Patents

導電性ローラ用ゴム組成物およびその製造方法ならびに導電性ローラ Download PDF

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Description

本発明は、導電性ローラ用ゴム組成物およびその製造方法に関し、また導電性ローラ用ゴム組成物からなる弾性層を備えた導電性ローラに関する。
一般に、複写機、プリンタ、またはファクシミリなどの電子写真方式を用いた画像形成装置においては、画像形成の各工程で、転写ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ、帯電ローラ、クリーニングローラ、中間転写ローラ、またはベルト駆動ローラなどの導電性が付与されたローラ(導電性ローラ)が用いられている。
導電性ローラは、シャフトの外周面に弾性層が被覆されてなる構造を基本構造としている。導電性ローラを構成する弾性層は、ポリウレタンまたはエピクロルヒドリンゴムなどのゴム基材に、導電剤を添加して所定の電気抵抗を持たせたものである。この弾性層には、カーボンブラックなどの導電剤を添加した電子導電性タイプと、過塩素酸リチウムなどのアルカリ金属塩を添加したイオン導電性タイプと、これらを併せたハイブリッドタイプとが知られている。
このうち、電子導電性タイプのものは、カーボンブラックをポリマー中に均一に分散させることが非常に困難である点、およびカーボンブラックの配合量の僅かなずれによって導電性ローラの電気抵抗値が大きく変わってしまう点等から、製造安定性に欠けるという問題がある。
イオン導電性タイプのものとしては、エピクロルヒドリンゴムとNBRとのブレンドゴムに、リチウム塩とアジピン酸との混合物を添加したもの(特許文献1)、およびゴムに、カチオンを含むイオン性液体を添加したもの(特許文献2)などが知られている。しかし、イオン導電性タイプのものは、環境依存性を有し、環境の変動によりローラの抵抗値が変動するという問題がある。ここでの環境依存性とは、低温低湿下におけるローラの抵抗値と、高温高湿下におけるローラの抵抗値との間に、所定値以上の差があることを意味する。
さらに、イオン導電性タイプのものでは、アルカリ金属塩などのイオン導電剤を添加する部数に限りがあり、イオン導電剤を多量に添加すると当該イオン導電剤がローラから染み出してブリードし、感光体等を汚染するという問題がある。
また、導電剤として、導電処理が施されたシリカ(導電性シリカ)が、従来、知られている(特許文献3)。
特開2008−197267号公報 特開2003−192845号公報 国際公開第2011/007731号
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、使用環境の変動による導電性ローラの環境依存性を低く抑えることが可能で、画像形成装置内の接触部品である感光体等を汚染し難い導電性ローラ用ゴム組成物および導電性ローラを提供することである。
本発明に係る導電性ローラ用ゴム組成物は、シャフトの外周面上に設けられる弾性層を構成し、ポリマー成分と、ポリマー成分100質量部に対して1質量部以上20質量部以下の導電性シリカとを有する。
ポリマー成分は、当該ポリマー成分100質量部中にニトリルゴムおよびエチレンプロピレンゴムのうちの少なくとも一方を50質量部以上含むことが好ましく、ニトリルゴムの含有量とエチレンプロピレンゴムの含有量との合計が100質量部となるように調製されていることがより好ましい。
導電性シリカは、シリカが導電処理されたものであれば良く、150m2/g以下のBET比表面積を有することが好ましい。シリカは、疎水処理されたものであることがさらに好ましい。
ポリマー成分100質量部に対して1質量部以上6質量部以下の発泡剤をさらに含むことが好ましい。
本発明に係る導電性ローラは、本発明に係る導電性ローラ用ゴム組成物からなる弾性層を備えている。
本発明に係る導電性ローラ用ゴム組成物の製造方法は、導電性シリカを準備する工程と、導電性シリカとポリマー成分とを混合する工程とを含む。導電性シリカを準備する工程は、シリカに対して導電処理を行なう工程を含むことが好ましい。
本発明に係る導電性ローラ用ゴム組成物によれば、使用環境の変動による導電性ローラの環境依存性を低く抑えることができ、画像形成装置内の接触部品である感光体等を汚染し難い。
本発明の一実施形態に係る導電性ローラの横断面図である。 実施例および比較例におけるローラ抵抗値の測定方法について説明する模式図である。
以下、本発明の導電性ローラ用ゴム組成物(以下では「ゴム組成物」と記すことがある)およびその製造方法ならびに導電性ローラを説明する。なお、本発明は、以下に示す事項に限定されない。
<ゴム組成物の組成>
本発明に係るゴム組成物は、導電性ローラを構成するシャフトの外周面上に設けられる弾性層を構成するものであり、ポリマー成分と、ポリマー成分100質量部に対して1質量部以上20質量部以下の導電性シリカとを含む。
<ポリマー成分>
ゴム成分としてのポリマー成分は、その材料に特に限定されず、ジエン系ゴム、または非ジエン系ゴムなどであれば良い。ジエン系ゴムは、たとえば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム(NBR(nitrile butadiene rubber))、またはスチレン−ブタジエンゴムなどであれば良い。非ジエン系ゴムは、たとえば、エチレンプロピレンゴム(EPM(ethylene propylene rubber))、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、またはアクリルゴムなどであれば良い。これらのゴムを2種以上混合して本発明におけるポリマー成分としても良い。
本発明におけるポリマー成分は、当該ポリマー成分100質量部に対して、NBRおよびEPMの少なくとも一方を50質量部以上含むことが好ましく、NBRおよびEPMの少なくとも一方を80質量部以上含むことがより好ましい。さらに好ましくは、本発明におけるポリマー成分は、NBRの含有量とEPMの含有量との合計が100質量部となるように調製されていることである。ここで、「本発明におけるポリマー成分は、NBRの含有量とEPMの含有量との合計が100質量部となるように調製されている」は、ポリマー成分がNBRとEPMとからなることを意味し、ポリマー成分がNBRおよびEPM以外のゴム成分を含まないことを意味する。
本発明におけるポリマー成分がNBRとEPMとの両方を含む場合には、NBR:EPM=90:10〜10:90(質量比)であることが好ましく、より好ましくはNBR:EPM=80:20〜60:40(質量比)である。NBRとEPMとの質量比が上記範囲内であれば、NBR自体がイオン導電性を示すため、初期抵抗値が低くなる。よって、少量の導電剤の添加で十分に低抵抗化が図れる。また、ポリマー成分がEPMを含むことにより、オゾンに因る劣化を低減できる。
NBRは、アクリロニトリルと1,3−ブタジエンとの共重合体である。結合アクリロニトリル量(アクリロニトリル含有量)は特に限定されないが、たとえば10〜55%であれば良く、15〜43%であることが好ましい。
また、NBRとして、メタクリル酸を共重合したカルボキシル変性ニトリルゴム、ブタジエンの一部をイソプレンに置き換えたNBIR、またはブタジエン部分の二重結合に水素を付加させた水素添加ニトリルゴムなどを用いても良い。
EPMは、エチレンとプロピレンとの共重合体であり、EPMとして、EPMに少量のジエンモノマーを導入して主鎖中に二重結合をもたせたもの(EPDM(ethylene propylene diene terpolymer))を用いても良い。ここで、ジエンモノマーは、特に限定されないが、たとえばエチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどであれば良く、エチリデンノルボルネンであることが好ましい。ジエンモノマーの導入量は、特に限定されないが、EPMに対して3質量%以上15質量%以下であれば良く、EPMに対して5質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
<導電性シリカ>
導電性シリカは、導電処理が施されたシリカであり、105Ωcm以上1012Ωcm以下の体積抵抗値を有している。ここで、導電処理の具体的な方法は、特に限定されず、たとえばイオン性液体をシリカの表面に噴射するという方法がある。また、導電性シリカの体積抵抗値の測定方法は、たとえば導電性シリカをプレスして9.8×106Paの圧力をかけたときの抵抗値を測定するという方法であれば良い。
ここで、イオン性液体は、室温でも液体で存在する塩を意味し、特に限定されないが、たとえば4級塩であれば良い。4級塩を構成するカチオンは、たとえば第4級アンモニウムカチオンまたは第4級ホスホニウムカチオンであれば良い。第4級アンモニウムカチオンは、特に限定されず、テトラペンチルアンモニウムカチオンなどの脂肪族アンモニウムカチオンであっても良いし、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオンなどの脂環式アンモニウムカチオンであっても良いし、1−メチルピリジニウムカチオンなどの窒素を含む芳香族アンモニウムカチオンであっても良い。また、第4級ホスホニウムカチオンは、特に限定されず、テトラメチルホスホニウムなどであっても良い。なお、第4級アンモニウムカチオンおよび第4級ホスホニウムカチオンのそれぞれにおいて、窒素またはリンに結合される置換基は互いに異なっていても良いし、窒素またはリンに結合される置換基の少なくとも2つが互いに同一であっても良い。
4級塩を構成するアニオンは、たとえばフッ化アルキルスルホニル基を含有するアニオン、テトラフルオロボレートイオン、またはヘキサフルオロフォスフェートイオンなどであれば良い。
従来のゴム組成物は、導電剤としてイオン導電剤を含む。しかし、イオン導電剤は、通常、極性基を有しているため、吸湿性に優れる。そのため、イオン導電剤を含むゴム組成物を用いて導電性ローラを作製すると、得られた導電性ローラでは使用環境(湿度など)の変動による環境依存性を低く抑えることが難しい。一方、本発明における導電性シリカでは、表面の少なくとも一部分がイオン性液体に由来する膜で被覆されている。よって、本発明における導電性シリカは、イオン導電剤よりも吸湿性に劣ると考えられ、使用環境の影響を受け難いゴム組成物を提供できる。したがって、本発明に係るゴム組成物を用いて導電性ローラの弾性層を構成すれば、使用環境の変動による環境依存性が低く抑えられた導電性ローラを提供することができる。
また、従来のイオン導電剤を使用した場合、高温高湿下において導電剤がローラ表面に染み出てくることがあり感光体汚染を起こし易い。一方、本発明における導電剤は、導電性シリカであって、イオン性液体とシリカとが結合状態にある。よって、導電剤がローラから染み出ることを防止できるので、感光体汚染が起こりにくくなる。
本発明における導電性シリカは、150m2/g以下のBETの比表面積を有していることが好ましく、100m2/g以下のBETの比表面積を有していることがより好ましく、50m2/g以下のBETの比表面積を有していることがさらに好ましい。導電性シリカのBETの比表面積が150m2/g以下であれば、導電性シリカの吸湿性を低く抑えることができる。このような導電性シリカは、BETの比表面積が150m2/g以下であるシリカに対して上記導電処理を施すことにより得られ、BETの比表面積が100m2/g以下であるシリカに対して上記導電処理を施すことにより得られることが好ましく、BETの比表面積が50m2/g以下であるシリカに対して上記導電処理を施すことにより得られることがさらに好ましい。
本発明における導電性シリカは、シリカに対して導電処理だけでなく疎水処理も施すことにより作製されることが好ましい。これにより、導電性シリカの吸湿性の更なる低下を図ることができるため、使用環境の変動による導電性ローラの環境依存性をさらに低く抑えることができる。疎水処理の方法は、特に限定されないが、たとえば表面改質剤を併用してイオン性液体による表面処理を行なうという方法がある。ここで、表面改質剤は、特に限定されないが、ヘキサメチルジシラザンなどのアルキルシラザン系化合物、ジメチルジメトキシシランなどのアルキルアルコキシシラン系化合物、ジメチルジクロロシランなどのクロロシラン系化合物、またはシリコーンオイル系化合物であれば良く、これらを2種以上混合したものであっても良い。
本発明では、導電性シリカの配合量は、ポリマー成分100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であり、好ましくは5質量部以上15質量部以下であり、より好ましくは10質量部以上15質量部以下である。導電性シリカの配合量が1質量部未満であれば、導電性シリカを添加したことにより得られる効果を十分に得ることができない。よって、導電性がほとんど発現せずローラの抵抗値が高くなる。一方、導電性シリカの配合量が20質量部を超えると、コスト面において不利になる可能性がある。
<発泡剤>
本発明に係るゴム組成物は、ポリマー成分および導電性シリカ以外に発泡剤を含んでいることが好ましい。これにより、スポンジ系の導電性ローラを提供することができる。
発泡剤は、材料に限定されないが、化学発泡剤であることが好ましい。化学発泡剤は有機系と無機系とに分類される。有機系の発泡剤は、たとえば、アゾジカルボンアミドなどのアゾ化合物、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラアミンなどのニトロソ化合物、またはベンゼンスルホニルヒドラジドなどのヒドラジン誘導体であれば良い。無機系の発泡剤は、たとえば、重炭酸ナトリウム(重曹)、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、または炭酸水素ナトリウムなどであれば良い。これらの発泡剤を2種以上混合して本発明の発泡剤として用いても良い。
発泡剤の配合量は、特に限定されないが、ゴム組成物100質量部に対して1質量部以上であれば良く、好ましくは1質量部以上6質量部以下であることである。ゴム組成物100質量部に対して1質量部未満の発泡剤を含むゴム組成物では、十分に発泡した弾性層を提供できない場合がある。また、ゴム組成物100質量部に対して6質量部よりも多くの発泡剤を含むゴム組成物では、加硫阻害によって加硫が不十分になり、そのために加工性の悪化またはローラの抵抗値の環境依存性の増大という問題が起こりやすい。
<そのほかの材料>
本発明に係るゴム組成物は、以下に示す材料の少なくとも1つの材料を含んでいても良い。
<発泡助剤>
本発明に係るゴム組成物が発泡剤を含む場合には、本発明に係るゴム組成物は発泡助剤も含むことが好ましい。発泡助剤は、たとえば、サリチル酸などの有機酸系助剤または尿素系助剤などである。発泡助剤の配合量は、特に限定されず、適宜設定されれば良い。
<加硫剤>
加硫剤は、材料に限定されないが、硫黄、テトラアルキルチラウム−ジサルファイドなどの硫黄系有機化合物、酸化マグネシウムなどの金属化合物、またはパーオキシエステル類などの有機過酸化物であれば良い。これらの材料を単独で用いても良いし、これらの材料の2種以上を組み合わせて用いても良い。この中でも、安価且つ容易に入手可能であり、加硫作用に優れ、さらに耐摩耗性に優れるという点において、硫黄または硫黄系有機化合物を用いることが好ましい。加硫剤の配合量は、特に限定されず、適宜設定されれば良い。
<加硫促進剤>
本発明に係るゴム組成物が加硫剤を含む場合、本発明に係るゴム組成物は加硫促進剤を含むことが好ましい。加硫促進剤は、材料に特に限定されず、ジベンゾチアゾイルジサルファイドなどのチアゾール類、シクロヘキシルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド類、テトラメチルチラウムジサルファイドなどのチラウム類、またはジメチルジチオカーバメート亜鉛塩などのジチオ酸塩などであれば良い。これらの材料を単独で用いても良いし、これらの材料の2種以上を組み合わせて用いても良い。加硫促進剤の配合量は、特に限定されず、適宜設定されれば良い。
<加硫促進助剤>
本発明に係るゴム組成物が加硫促進剤を含む場合、本発明に係るゴム組成物は加硫促進助剤を含むことが好ましい。加硫促進助剤は、材料に特に限定されず、亜鉛華などの金属酸化物、ステアリン酸亜鉛またはオレイン酸などの脂肪酸であれば良い。加硫促進助剤の配合量は、特に限定されず、適宜設定されれば良い。
<充填剤>
充填剤は、材料に限定されないが、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、コルク、タルク、ゼオライト、アルミナ、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、二塩基亜リン酸塩、木片、ガラス粉、またはセラミックス粉などであれば良い。これらの材料を単独で用いても良いし、これらの材料を2種以上組み合わせて用いても良い。充填剤の配合量は、特に限定されず、適宜設定されれば良い。
本発明に係るゴム組成物は、さらに、加工助剤、老化防止剤、補強剤、または軟化剤などを含んでいても良い。加工助剤は、たとえばオレイン酸などの脂肪酸、または亜鉛華などの金属酸化物であれば良い。老化防止剤は、アミン類、フェノール類、またはイミダゾール類などであれば良い。軟化剤は、鉱物油、植物油、または合成軟化剤であれば良い。
<ゴム組成物の製造方法>
本発明に係るゴム組成物は、導電性シリカを準備する工程と、導電性シリカとポリマー成分とを混合する工程とを備えている。
導電性シリカを準備する工程では、所定のBET比表面積を有するシリカに対して導電処理を行なうことが好ましい。ここで、所定のBET比表面積を有するシリカとは、上記<導電性シリカ>で記したように、150m2/g以下のBET比表面積を有するシリカであることが好ましく、100m2/g以下のBET比表面積を有するシリカであることがより好ましく、50m2/g以下のBET比表面積を有するシリカであることがさらに好ましい。また、導電処理の方法は、上記<導電性シリカ>で記した方法であれば良い。
導電性シリカを準備する工程では、所定のBET比表面積を有するシリカに対して導電処理だけでなく疎水処理も行なうことがより好ましい。疎水処理の方法は、上記<導電性シリカ>で記した方法であれば良い。
導電性シリカとポリマー成分とを混合する工程では、ポリマー成分100質量部に対して、上記<導電性シリカ>で記した添加量の導電性シリカ、上記充填剤、および上記加硫剤を混合すれば良い。このとき、ポリマー成分100質量部に対して上記<発泡剤>で記した添加量の発泡剤をさらに混合しても良いし、上記発泡助剤、上記加硫促進剤、または上記加硫促進助剤なども混合しても良い。
<導電性ローラの構成>
図1は、本発明に係る導電性ローラの横断面図である。導電性ローラ1は、シャフト11と、シャフト11の外周面上に設けられた弾性層12とを備えている。弾性層12は、本発明に係るゴム組成物からなる。よって、本発明に係る導電性ローラ1では、使用環境の変動による環境依存性を低く抑えることができ、また感光体が導電剤(導電性シリカ)に汚染されることを防止できる。
発泡剤を含むゴム組成物を用いて弾性層12を構成すれば、スポンジ系の導電性ローラを提供できる。一方、発泡剤を含まないゴム組成物を用いて弾性層12を構成すれば、ソリッド系の導電性ローラを提供できる。
本発明に係る導電性ローラは、2層構造に限定されない。たとえば、本発明に係る導電性ローラは、弾性層12の外側に、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、またはアクリル樹脂などからなる樹脂層を形成しても良い。これにより、導電性ローラの表面の摩擦抵抗または粘着力が低減され、トナー離型性またはクリーニング性がより良好となる。また、弾性層12と樹脂層との電気抵抗値が近接していれば、樹脂層の厚みを変えた場合における電気抵抗値の変動を小さく抑えることができるので、製造工程管理の上で好都合である。
本発明では、導電性ローラの表面を紫外線照射などによって炭化させ、摩擦抵抗または粘着力を低減する表面処理も有用である。このような表面処理を行なう場合、感光体、転写ベルト、トナー、またはクリーニングプレートなどに対する摩擦抵抗または粘着力が低減されるため、紙汚れ、または導電性ローラからの汚染を防止できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1〜19,比較例1〜6>
<導電性シリカIの製造>
脂肪族アミン系のイオン性液体(広栄化学工業株式会社製、品番IL−A2)5gに、有機溶媒としてエタノール15gを添加して希釈させたイオン性液体を用意した。次に、比表面積が50m2/gの気相法で得られたシリカ粉(日本アエロジル株式会社製、商品名アエロジル50)100gを反応容器に入れた。窒素雰囲気下で、シリカ粉を回転羽根で攪拌させながら上記イオン性液体を上記反応容器に添加した。その後、これらを窒素雰囲気下で、200℃の温度で60分間攪拌させながら混合してから、冷却水で冷却した。これにより、導電性シリカIを得た。このように疎水処理を行なうことなく導電性シリカIを得たので、導電性シリカIのシラノール基の数は「少ない」であった。
<導電性シリカIIの製造>
イオン性液体を広栄化学工業株式会社製の品番IL−A3に変更したことを除いては上記<導電性シリカIの製造>にしたがって、導電性シリカIIを得た。このように疎水処理を行なうことなく導電性シリカIIを得たので、導電性シリカIIのシラノール基の数は「少ない」であった。
<導電性シリカIIIの製造>
脂肪族アミン系のイオン性液体(広栄化学工業株式会社製、品番IL−A3)5gにエタノール15gだけでなく表面改質剤としてヘキサメチルジシラザン20gも添加して希釈させたイオン性液体を用いたことを除いては上記<導電性シリカIIの製造>にしたがって、導電性シリカIIIを得た。このように導電性シリカIIIは導電性シリカIIに対して疎水処理が施されたものであるので、導電性シリカIIIのシラノール基の数は「非常に少ない」であった。
<導電性シリカIVの製造>
脂肪族アミン系のイオン性液体(広栄化学工業株式会社製、品番IL−A3)5gにエタノール15gだけでなく表面改質剤としてジメチルシリコーンオイル20gも添加して希釈させたイオン性液体を用いたことを除いては上記<導電性シリカIIの製造>にしたがって、導電性シリカIVを得た。このように導電性シリカIVは導電性シリカIIに対して疎水処理が施されたものであるので、導電性シリカIVのシラノール基の数は「非常に少ない」であった。
<導電性シリカVの製造>
比表面積が150m2/gの気相法で得られたシリカ粉(日本アエロジル株式会社製、商品名アエロジル150)を用いたことを除いては上記<導電性シリカIの製造>にしたがって、導電性シリカVを得た。導電性シリカVの比表面積は導電性シリカIなどに比べて大きいため、導電性シリカVのシラノール基の数は「やや多い」であった。
<導電性シリカI〜Vの比表面積の測定>
BET法にしたがって導電性シリカI〜Vの比表面積を測定した。
<ゴム組成物の製造>
表1〜表5のそれぞれに示すポリマー成分をニーダー機で素練りしてから、表1〜表5のそれぞれに示す材料のうちポリマー成分以外の材料を順にニーダー機に投入して混練した。これにより、実施例1〜19および比較例1〜6に係るゴム組成物を得た。
<導電性ローラの製造>
得られたゴム組成物を円筒形に押出し成形した。150℃で50分間の蒸気加硫を行ない、ステンレス製のシャフトに挿入した。研磨機によりゴム表面を研削加工して、ゴム組成物からなる弾性層を形成した。これにより、実施例1〜19および比較例1〜6に係る導電性ローラを得た。得られた導電性ローラに対して下記の性能評価を行なった。
<性能評価>
<ローラ抵抗値の測定>
図2は、実施例および比較例におけるローラ抵抗値の測定方法について説明する模式図である。図2に示すように、直径30mmの金属ロール31に、導電性ローラ32を両端0.5kg、合計1kgで当接し、抵抗計33(商品名:R8340A、アドバンテスト社製)を用いて、1000Vの電圧を印加した。10秒間の測定における体積抵抗値の最大値と最小値との平均値をローラ抵抗値とした。
<環境変動量の算出>
LL環境(温度10℃、湿度15%)、NN環境(温度22℃、湿度55%)、およびHH環境(温度28℃、湿度85%)の各環境下に導電性ローラを24時間以上放置した。それから、上記<ローラ抵抗値の測定>に記載の方法にしたがって、当該導電性ローラのローラ抵抗値をそれぞれ測定した。そして、(環境変動量)=(LL環境下でのローラ抵抗値(logΩ))−(HH環境下でのローラ抵抗値(logΩ))にしたがって、環境変動量を算出した。
<環境依存性の評価>
上記<環境変動量の算出>で得られた環境変動量の大きさにしたがって、導電性ローラの環境依存性を調べた。表1〜表4では、環境変動量が1.1以下である場合には「A1」と記し、環境変動量が1.1よりも大きく1.3以下である場合には「B1」と記し、環境変動量が1.3よりも大きい場合には「C1」と記している。また、表5では、環境変動量が1.3以下である場合には「A1」と記し、環境変動量が1.3よりも大きく1.5以下である場合には「B1」と記し、環境変動量が1.5よりも大きい場合には「C1」と記している。なお、表5では、「B1」に該当するものはなかった。
<感光体汚染性>
得られた導電性ローラを、感光体に当接して荷重をかけた状態で温度が40℃であり湿度が90%である環境下に一週間放置した。その後、その感光体を用いて画像評価を行った。表1〜表5では、感光体のうち導電性ローラが当接されていた部分に色抜けなどの異常画像が認められなかった場合には「A2」と記し、感光体のうち導電性ローラが当接されていた部分に色抜けなどの異常画像が認められた場合には「C2」と記している。
結果を表1〜表5に示す。
Figure 0005759325
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Figure 0005759325
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表1〜表5の注釈は以下の通りである
(注1) ECO−Xは、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとの三元共重合体であり、(エピクロルヒドリン):(エチレンオキサイド):(アリルグリシジルエーテル)=40:56:4(モル比)である
(注2) ECO−Yは、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとの三元共重合体であり、(エピクロルヒドリン):(エチレンオキサイド):(アリルグリシジルエーテル)=63:31:6(モル比)である
(注3) NBRは、日本ゼオン株式会社製の「DN401」である
(注4) EPDMは、三井化学株式会社製の「EPT4021」である
(注5) CB(carbon black)は、旭カーボン株式会社製の「旭サーマル」である
(注6) シリカは、日本アエロジル株式会社製の「AEROSIL50」である
(注7) イオン導電剤は、広栄化学工業株式会社製の「IL−A2」である
(注8) 酸化亜鉛は、正同化学工業株式会社製の「亜鉛華特号」である
(注9) ステアリン酸は、旭電化製の「脂肪酸SA−200」である
(注10) 硫黄は、鶴見化学工業株式会社製の「サルファックスA」である
(注11) 加硫促進剤Aは、川口化学工業株式会社製の「アクセルDM」である
(注12) 加硫促進剤Bは、川口化学工業株式会社製の「アクセルTT」である
(注13) 加硫促進剤Cは、川口化学工業株式会社製の「アクセルDZ」である
(注14) 発泡剤は、永和化成工業株式会社製の「ネオセルボン♯1000M」(OBSH系発泡剤)である。
実施例1〜14では、使用環境の変動による導電性ローラの環境依存性が低く抑えられており、また、感光体汚染性も低く抑えられていた。この理由としては、実施例1〜14に係る導電性ローラが所定量の導電性シリカを含んでいることが考えられる。
一方、比較例1〜2では、使用環境の変動による導電性ローラの環境依存性を低く抑えることができなかった。この理由としては、比較例1〜2における導電性ローラに導電剤が含まれておらず、イオン導電性ポリマーのみによって導電性を発現させていることが挙げられる。
また、比較例3〜4における導電性ローラは、使用環境の変動による導電性ローラの環境依存性は低く抑えられていたが、感光体汚染性を低く抑えることはできなかった。この理由としては、比較例3〜4における導電性ローラにはイオン導電剤が含まれているため、イオン導電剤が導電性ローラから染み出すということが挙げられる。
特に実施例5と比較例2とを比較すると、両者ではNN環境下でのローラ抵抗値には大差ないが、環境変動量は大きく異なった。このことから、環境変動量を低下させるためには所定量の導電性シリカをゴム組成物に含ませることが有用であることが分かる。
実施例1〜3の結果と実施例4〜7の結果とから、および実施例8〜10の結果と実施例11〜14の結果とから、イオン性液体の種類に依らず、ゴム組成物が所定量の導電性シリカを含んでいれば環境変動量が低下することが分かる。
表4に示す結果から、ポリマー成分におけるNBRとEPDMとの混合比率に依らず、ゴム組成物が所定量の導電性シリカを含んでいれば環境変動量が低下することが分かる。
表5に示す結果から、スポンジ系ローラにおいても、ゴム組成物が所定量の導電性シリカを含んでいれば環境変動量が低下することが分かる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 導電性ローラ、11 シャフト、12 弾性層、31 金属ロール、32 導電性ローラ、33 抵抗計。

Claims (9)

  1. シャフトの外周面上に設けられる弾性層を構成する導電性ローラ用ゴム組成物であって、
    ポリマー成分と、
    前記ポリマー成分100質量部に対して1質量部以上20質量部以下の導電性シリカとを有し、
    前記ポリマー成分は、少なくともニトリルゴムを含む導電性ローラ用ゴム組成物。
  2. 前記ポリマー成分は、当該ポリマー成分100質量部中に、ニトリルゴムを50質量部以上含む請求項1に記載の導電性ローラ用ゴム組成物。
  3. 前記ポリマー成分は、ニトリルゴムの含有量とエチレンプロピレンゴムの含有量との合計が100質量部となるように調製されている請求項2に記載の導電性ローラ用ゴム組成物。
  4. 前記導電性シリカは、シリカが導電処理されたものであり、150m2/g以下のBET比表面積を有する請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ローラ用ゴム組成物。
  5. 前記シリカは、疎水処理されたものである請求項4に記載の導電性ローラ用ゴム組成物。
  6. 前記ポリマー成分100質量部に対して1質量部以上6質量部以下の発泡剤をさらに含む請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ローラ用ゴム組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の導電性ローラ用ゴム組成物からなる弾性層を備えた導電性ローラ。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の導電性ローラ用ゴム組成物の製造方法であって、
    前記導電性シリカを準備する工程と、
    前記導電性シリカと前記ポリマー成分とを混合する工程とを含む導電性ローラ用ゴム組成物の製造方法。
  9. 前記導電性シリカを準備する工程は、前記シリカに対して導電処理を行なう工程を含む請求項8に記載の導電性ローラ用ゴム組成物の製造方法。
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