JP2019012124A - 電子写真用部材、及び電子写真画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電子写真用部材における、電気抵抗の環境依存性の低減と、電気抵抗の低減とを、より高いレベルで両立させ得る電子写真用部材、及びそれを具備した電子写真画像形成装置の提供。【解決手段】導電性樹脂層を有する電子写真用部材であって、該導電性樹脂層は、カチオンと、下記構造式(1)で示されるアニオンを有するイオン液体、非晶部を有するマトリックス樹脂、およびHLB値が13未満の界面活性剤を含む電子写真用部材。並びに、それを具備する電子写真画像形成装置。【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真用部材、及び該電子写真用部材を具備した電子写真画像形成装置に関する。
電子写真画像形成装置(電子写真装置)において中間転写ベルトの如き導電性の電子写真用部材は、その電気抵抗が、例えば、温度や湿度の如き使用環境によっても変動し難いことが求められる。以下、使用環境による電気抵抗の変動を「電気抵抗の環境依存性」と称することがある。
特許文献1の段落番号[0005]には、以下のことが記載されている。即ち、エステル結合、カーボネート結合またはアミド結合を含む熱可塑性樹脂に、疎水性の陰イオンを有するイオン液体を配合してなる導電性の樹脂層を備えた導電性ベルトが、電気抵抗の環境依存性を小さくできることが記載されている。
特開2015−230456号公報
近年、電子写真画像形成装置の高速化に伴い、導電性の電子写真用部材には、より高い電流を流すことが求められてきており、そのためには、電子写真用部材の電気抵抗を、より一層低減させることが必要になってきている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、単に、特許文献1に係る疎水性の陰イオンを有するイオン液体の樹脂層中における含有量を増加させても、それによる樹脂層の電気抵抗の低減効果は限定的であった。
本発明の一態様は、電子写真用部材における、電気抵抗の環境依存性の低減と、電気抵抗の低減とを、より高いレベルで両立させ得る電子写真用部材の提供に向けたものである。また、本発明の一態様は、高品位な電子写真画像を安定して形成することができる電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。
本発明の一態様によれば、
導電性樹脂層を有する電子写真用部材であって、
該導電性樹脂層は、
カチオンと、下記構造式(1)で示されるアニオンとを有するイオン液体、
非晶部を有するマトリックス樹脂、および
HLB値が13未満の界面活性剤、
を含む、ことを特徴とする電子写真用部材が提供される。
Figure 2019012124
(構造式(1)中、mおよびnは、各々独立して、1以上4以下の整数を表す。)。
また、本発明の他の態様によれば、前記電子写真用部材を具備する電子写真画像形成装置が提供される。
本発明によれば、電子写真用部材における、電気抵抗の環境依存性の低減と、電気抵抗の低減とを、より高いレベルで両立させ得る電子写真用部材を提供することができる。また、本発明によれば、高品位な電子写真画像を安定して形成することができる電子写真画像形成装置を提供することができる。
本発明の一態様に係る電子写真画像形成装置の断面概略図である。
本発明者らは、非晶部を有するマトリックス樹脂中に、疎水性のアニオン(陰イオン)を有するイオン液体(以下、単に疎水性のイオン液体とも言う)を含む電子写真用部材(電子写真用導電性部材)について検討を重ねた。通常、樹脂にイオン液体を加えた際の導電性は、導電性の担い手であるイオン数とイオン移動度の積に比例することが知られている。なお、電気抵抗は、イオン数とイオン移動度の積に反比例することが知られている。
特許文献1に記載の電子写真用部材に関して、イオン液体の含有量を増加しても低抵抗化に対する向上効果が限定的である理由について、本発明者らは、以下のように推測した。即ち、電子写真用部材に含有するイオン数が過度に増えた場合、イオンが移動する際にイオン同士が互いの移動を阻害し、移動度を落とす。電子写真用部材に含有するイオンを単に増量してもイオン数とイオン移動度の積は、増量前とほぼ同等のままとなり、これにより低抵抗化に対する効果が限定的となる。
そこで、本発明者らは、イオン移動度の低下を抑制するため、イオンを分散させるような機能を持つ物質を電子写真用部材中に存在させることによって、イオン同士の互いに対する移動阻害を軽減できるものと考えた。具体的には、電子写真用部材中に存在させる疎水性のイオン液体と、当該イオン液体と親和性の高い疎水性の界面活性剤とを電子写真用部材中に共存させることで、イオンを分散させて移動度の低下を防ぐことで、低抵抗化できるものと考えた。
一方、界面活性剤は分子内に親水基を持つため、通常は樹脂に添加すると、電気抵抗の環境依存性(以下、環境変動と称することがある)を大きくさせてしまう場合がある。しかし、疎水性イオン液体と一緒に疎水性の界面活性剤を添加した場合は、イオン液体は分子間にクーロン力が働くため、分子間が弱い分子間力でつながっている界面活性剤よりも高粘度となる。このため、イオン液体が界面活性剤を取り込むような形態を取ると推測される。従って、上述した環境変動において、イオン液体による影響が支配的になり、界面活性剤による影響は軽微になると考えられる。本発明は、このような技術的推測に基づきなされたものである。
以下に、本発明にかかる電子写真用部材の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<電子写真用部材>
本発明の一態様に係る電子写真用部材は、非晶部を有するマトリックス樹脂と、特定の疎水性のアニオンを有するイオン液体と、HLB値が13未満の疎水性の界面活性剤とを含む導電性樹脂層を有する。導電性樹脂層は、これら以外に、添加剤などを含んでいても良い。
該電子写真用部材は、導電性樹脂層のみから構成されても良いし、この導電性樹脂層の他に、他の部材(例えば、基体)を有していても良い。
該電子写真用部材の形状は特に限定されず、ベルト形状(例えばシームレスベルト形状)、ローラ形状等、様々な形状とすることができる。例えば、ベルト形状の電子写真用部材としては、導電性樹脂層自体が、ベルト形状に成形されてなる電子写真用ベルト、ベルト形状の基体の外周面上に、この導電性樹脂層が配された電子写真用ベルト等が挙げられる。
なお、以下では、エンドレスベルト形状の電子写真用部材に着目した説明を行う。本発明の電子写真用部材は特に制限はないが、例えば、中間転写ベルト、転写搬送ベルトなどに好適に用いられる。特に、中間転写ベルトとして好適に使用することができる。
また、該電子写真用部材を中間転写ベルトとして用いる場合には、表面固有抵抗率が、1×106Ω/□以上1×1014Ω/□以下であることが好ましい。前記表面固有抵抗率が1×106Ω/□以上であれば、抵抗が著しく低くなることがなく、転写電界を容易に得ることができ、画像の抜けやガサツキが生じることを容易に防ぐことができる。前記表面固有抵抗率が1×1014Ω/□以下であれば、転写電圧を過度に高くする必要がなく、電源の大型化やコストが増大することを容易に防ぐことができる。ただし転写プロセスによっては、上記表面固有抵抗率の範囲外であっても転写可能となる場合もあるため、表面固有抵抗率は必ずしも上記範囲に限定されない。
上記導電性樹脂層の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、10μm以上700μm以下とすることができ、特には、50μm以上120μm以下である。また、上記導電性樹脂層は、該電子写真用部材の表面を構成する層であっても良いし、この導電性樹脂層の表面に処理剤の塗布や、研磨処理等の表面処理を施しても良いし、導電性樹脂層の表面に最外層を設けても良い。
以下、導電性樹脂層に用いる各材料について詳しく説明する。
(非晶部を有するマトリックス樹脂)
上記マトリックス樹脂としては、非晶部を有するものであれば、結晶性樹脂及び非晶性樹脂を問わず、どのような樹脂(例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂)でも使用することが出来る。マトリックス樹脂が、非晶部を有することにより、電子写真用部材において、イオンが運動性を有する非晶部内を移動することで、樹脂層内に電気伝導を起こすことができる。
このマトリックス樹脂としては、具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリフッ化ビニル、アクリル重合体、ポリエーテルエステル共重合体、ポリエーテルアミド共重合体及びポリウレタン共重合体等が挙げられる。
上記マトリックス樹脂は、1種類を単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。なお、マトリックス樹脂としては、その他、公知の非晶部を有する樹脂も同様に使用することができ、上述した樹脂に限定されるものではない。
マトリックス樹脂中の非晶部の含有割合は、使用する樹脂の種類や電子写真用部材の用途等により、適宜設定することができる。例えば、マトリックス樹脂としてポリエチレンナフタレートを、中間転写ベルト等の電子写真用部材に用いる際は、マトリックス樹脂における非晶部の含有割合は、50%以上90%以下であることが好ましい。
導電性樹脂層中の上記マトリックス樹脂の含有割合は、電子写真用部材の強度の観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。
(イオン液体)
イオン液体とは、イオンのみからなる液体であって、幅広い温度範囲で液体として存在する塩であり、特に、かかる塩を構成するイオン種に比較的大きな有機イオンを用いることにより、100℃以下の融点を有する塩を指す。
本発明におけるイオン液体は、電子写真用部材に用いた際に、使用環境の温度や湿度の影響を受けにくい観点から、疎水性の高い特定のアニオンを有するイオン液体を用いることが重要である。
・アニオン(陰イオン)
上記イオン液体を構成するアニオン種としては、下記構造式(1)で示されるスルホニルイミドイオンを用いる。
Figure 2019012124
構造式(1)中、mおよびnは、各々独立して、1以上4以下の整数を表す。
構造式(1)を満たすアニオンの具体例としては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロプロパンスルホニル)イミドイオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドイオン(ビス(パーフルオロブタンスルホニル)イミドイオン)、トリフルオロメタンスルホニルパーフルオロプロパンスルホニルイミドイオン、トリフルオロメタンスルホニルパーフルオロブタンスルホニルイミドイオン等が挙げられる。
・カチオン(陽イオン)
上記イオン液体を構成するカチオン種としては、イオン液体における疎水性を損なうものでなければ特に限定されず、上記構造式(1)で示されるスルホニルイミドイオンと対になり疎水性のイオン液体を構成する陽イオンを用いることができる。
このカチオンの好ましい具体例としては、アンモニウム系イオン(下記構造式(2)参照)、イミダゾリウム系イオン(下記構造式(3)参照)、ピリジニウム系イオン(下記構造式(4)参照)、ピペリジニウム系イオン(下記構造式(5)参照)、ピロリジニウム系イオン(下記構造式(6)参照)、ホスホニウム系イオン(下記構造式(7)参照)等が挙げられる。即ち、上記カチオンは、下記構造式(2)〜(7)で示される構造群から選ばれるカチオンであることが好ましい。なお、これらの構造式中、R〜R15は、各々独立して、炭素数1〜15の炭化水素基を表す。以下に、各構造式を詳しく説明する。
a)アンモニウム系イオン
Figure 2019012124
構造式(2)中、R〜Rは、各々独立して、炭素数1〜15の炭化水素基を表す。該炭化水素基の例としては、例えば、炭素数1〜15の直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素基、炭素数2〜15の直鎖状または分岐鎖状の不飽和炭化水素基、置換もしくは未置換の、炭素数3〜10の飽和脂環式炭化水素基、置換もしくは未置換の、炭素数4〜10の不飽和脂環式炭化水素基、置換もしくは未置換の、炭素数6の芳香族炭化水素基が挙げられる。ここで、前記飽和脂環式炭化水素基、前記不飽和脂環式炭化水素基および前記芳香族炭化水素基の置換基としては、例えば、炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。上記飽和脂環式炭化水素基、不飽和脂環式炭化水素基および芳香族炭化水素基の炭素数は、置換基の炭素数を含まない炭素の数である。一方、R〜Rに係る「炭素数1〜15の炭化水素基」の炭素数は、置換基の炭素数をも含めた炭素の数である。
〜Rとしては、各々独立に、メチル基、エチル基、プロピル基の如き、炭素数1〜8の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
上記構造式(2)に示すアンモニウム系イオンの具体例としては、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムイオン(TMPA)、N,N,N−トリブチル−N−メチルアンモニウムイオン、N,N,N−トリオクチル−N−メチルアンモニウムイオン、N−ブチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムイオン、N−(tert−ブチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムイオン、N−フェニル−N,N,N−トリメチルアンモニウムイオン、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムイオン、等が挙げられる。
b)イミダゾリウム系イオン
Figure 2019012124
構造式(3)中、RおよびRは、前記R〜Rと同義である。
上記構造式(3)に示すイミダゾリウム系イオンの具体例としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムイオン、1−(tert−ブチル)−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−フェニル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−(2,4,6−トリメチルフェニル)−3−メチルイミダゾリウムイオン等が挙げられる。
c)ピリジニウム系イオン
Figure 2019012124
構造式(4)中、Rは、前記R〜Rと同義である。
上記構造式(4)に示すピリジニウム系イオンの具体例としては、1−エチルピリジニウムイオン、1−ブチルピリジニウムイオン、1−ヘキシルピリジニウムイオン、1−(tert−ブチル)ピリジニウムイオン、1−フェニルピリジニウムイオン、1−(2,4,6−トリメチルフェニル)ピリジニウムイオン等が挙げられる。
d)ピペリジニウム系イオン
Figure 2019012124
構造式(5)中、RおよびRは、前記R〜Rと同義である。
上記構造式(5)に示すピペリジニウム系イオンの具体例としては、N−メチル−N−エチルピペリジニウムイオン、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムイオン、N−(tert−ブチル)−N−メチルピペリジニウムイオン、N−フェニル−N−メチルピペリジニウムイオン、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)−N−メチルピペリジニウムイオン等が挙げられる。
e)ピロリジニウム系イオン
Figure 2019012124
構造式(6)中、R10およびR11は、前記R〜Rと同義である。
上記構造式(6)に示すピロリジニウム系イオンの具体例としては、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムイオン、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムイオン、N−(tert−ブチル)−N−メチルピロリジニウムイオン、N−フェニル−N−メチルピロリジニウムイオン、N−(2,4,6−トリメチルフェニル)−N−メチルピロリジニウムイオン等が挙げられる。
f)ホスホニウム系イオン
Figure 2019012124
構造式(7)中、R12〜R15は、前記R〜Rと同義である。
上記構造式(7)に示すホスホニウム系イオンの具体例としては、トリメチルプロピルホスホニウムイオン、トリブチルメチルホスホニウムイオン、トリエチルペンチルホスホニウムイオン、(tert−ブチル)−トリメチルホスホニウムイオン、フェニル−トリメチルホスホニウムイオン、(2,4,6−トリメチルフェニル)−トリメチルホスホニウムイオン等が挙げられる。
上記アニオン及びカチオンは、それぞれ1種類を単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。イオン液体は、これらの1種類以上のアニオン及びカチオンを組み合わせて構成することが出来る。
また、導電性樹脂層中の上記イオン液体の含有量(含有割合)は、非晶部を有するマトリックス樹脂の含有量(100質量%)に対して、抵抗均一性の観点から、0.1質量%以上とすることが好ましい。また、マトリックス樹脂の含有量に対して、15質量%を超えて、イオン液体を加えたとしても、配合量増加による抵抗低下効果が得られないため、イオン液体の含有量は、15質量%以下とすることが好ましい。
なお、このイオン液体の含有割合は、イオン液体を導電性樹脂層から抽出して定量することで判断できる。抽出に用いる溶媒としては、前記イオン液体を溶解し得る溶媒を選択する。具体例としては、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。そして、抽出後の抽出液中の溶媒を、ロータリーエバポレーターを用いて除去し、各種クロマトグラフィーによりイオン液体を単離することで、導電性樹脂層中のイオン液体の含有割合を定量できる。
(界面活性剤)
界面活性剤とは、疎水基と親水基とを有する化合物である。界面活性剤には、イオン性(アニオン性、カチオン性、両性)およびノニオン性があるが、湿度による影響を受けにくいため、ノニオン性の界面活性剤を用いることが好ましい。
なお、本発明においては、疎水性のイオン液体との親和性の観点から、疎水性の界面活性剤を用いることが重要である。
本発明における疎水性の界面活性剤とは、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)値が13未満の界面活性剤である。HLB値が13未満の界面活性剤であれば、直鎖状構造、分岐状構造及び環状構造のうちのいずれの構造を有していても良い。HLB値の測定方法については、後述する。
好ましい構造を有する界面活性剤の具体例としては、疎水性のイオン液体における炭化水素基を有するカチオンとの親和性の高さの観点から、アルコールアルコキシレート構造を含む界面活性剤が挙げられる。アルコールアルコキシレート構造を含む界面活性剤の具体例として、ポリプロピレングリコール(直鎖状構造)、ポリオキシエチレン―テトラオレイン酸(分岐状構造)、及び、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド(環状構造)等が挙げられる。
界面活性剤は、1種類を単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
また、導電性樹脂層中の界面活性剤の含有量は、イオン液体との作用の観点から、イオン液体100質量部に対して、10質量部以上、1000質量部以下とすることが好ましい。
なお、この界面活性剤の含有量は、界面活性剤を導電性樹脂層から抽出して定量することで判断できる。抽出に用いる溶媒としては、前記界面活性剤を溶解し得る溶媒を選択する。具体例としては、メタノール等が挙げられる。そして、抽出後の抽出液中の溶媒を、ロータリーエバポレーターを用いて除去し、各種クロマトグラフィーにより界面活性剤を単離することで、導電性樹脂層中の界面活性剤の含有量を定量できる。
(添加剤)
該電子写真用部材は、導電性樹脂層中に、上述した本態様に係る効果を阻害しない範囲で、その他の成分(添加剤)を含有することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系、リン、硫黄系など)、紫外線吸収剤、有機顔料、無機顔料、pH調整剤、架橋剤、相溶化剤、離型剤、カップリング剤、滑剤、導電性フィラー(例えば、カーボンブラック、カーボンファイバー、導電性酸化チタン、導電性酸化錫、導電性マイカ)、無機または低分子量有機塩などを挙げることができる。これらの添加剤は、1種類を単独で用いても良いし、2種類以上を組合せて用いても良い。添加剤の使用量は適宜設定することができ、特に限定されない。
<電子写真用部材の製造方法>
該電子写真用部材における導電性樹脂層は、上述したマトリックス樹脂、イオン液体及び界面活性剤、並びに必要に応じて添加剤を含む樹脂組成物(例えば、各種成分を溶融混練することによって得られる樹脂組成物)を用いて形成することができる。例えば、この導電性樹脂層を有する電子写真用部材を形成する場合は、例えば、以下の方法により、該電子写真用部材を形成することができる。即ち、上記樹脂組成物をペレット化し、連続溶融押出成形法、射出成形法、ストレッチブロー成形法、あるいはインフレーション成形法など公知の成形方法を用いて、例えばシームレスベルトを成形することで電子写真用部材を得ることができる。また、上述したように、該電子写真用部材は、処理剤の塗布、研磨処理等の表面処理を施しても良い。
<電子写真画像形成装置>
図1を用いて、該電子写真用部材として、導電性ベルト(以下、中間転写ベルトと称することがある)を具備する本発明の一態様に係る電子写真画像形成装置(電子写真装置)について、以下に詳しく説明する。なお、図1は、電子写真プロセスを利用したフルカラー電子写真装置の一例を示す断面概略図である。
この電子写真装置は、複数色の電子写真ステーションを該電子写真用部材(中間転写ベルト)の回転方向に並べて配置した、所謂タンデム型の構成を有する。なお、以下の説明では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に関する構成の符号に、それぞれ、Y、M、C、kの添え字を付しているが、同様の構成については添え字を省略する場合もある。
図1において、感光ドラム(感光体、像担持体)1Y、1M、1C、1kの周囲には、帯電装置2Y、2M、2C、2k、露光装置3Y、3M、3C、3k、現像装置4Y、4M、4C、4k、中間転写ベルト(中間転写体)6が配置される。感光ドラム1は、矢印Fの方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。帯電装置2は、感光ドラム1の周面を所定の極性、電位に帯電する(1次帯電)。露光装置3としてのレーザビームスキャナーは、不図示のイメージスキャナー、コンピュータ等の外部機器から入力される画像情報に対応してオン/オフ変調したレーザ光を出力して、感光ドラム1上の帯電処理面を走査露光する。この走査露光により感光ドラム1面上に目的の画像情報に応じた静電潜像が形成される。
現像装置4Y、4M、4C、4kは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(k)の各色成分のトナーを内包する。そして、画像情報に基づいて使用する現像装置4を選択し感光ドラム1面上に現像剤(トナー)が現像され、静電潜像がトナー像として可視化される。本実施形態では、このように静電潜像の露光部にトナーを付着させて現像する反転現像方式が用いられる。また、このような帯電装置、露光装置、現像装置により電子写真手段を構成している。
また、中間転写ベルト6は、無端状のベルトで、感光ドラム1の表面に当接されるよう配設され、複数の張架ローラ20、21、22に張架されている。そして、矢印Gの方向へ回動するようになっている。本実施形態では、張架ローラ20は中間転写ベルト6の張力を一定に制御するようにしたテンションローラ、張架ローラ22は中間転写ベルト6の駆動ローラ、張架ローラ21は2次転写用の対向ローラである。また、中間転写ベルト6を挟んで感光ドラム1と対向する1次転写位置には、それぞれ、1次転写ローラ5Y、5M、5C、5kが配置されている。
感光ドラム1にそれぞれ形成された各色未定着トナー像は、1次転写ローラ5に定電圧源または定電流源によりトナーの帯電極性と逆極性の正極性の1次転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト6上に順次静電的に1次転写される。そして、中間転写ベルト6上に4色の未定着トナー像が重ね合わされたフルカラー画像を得る。中間転写ベルト6は、このように感光ドラム1から転写されたトナー像を担持しつつ回転する。1次転写後の感光ドラム1の1回転毎に感光ドラム1表面は、クリーニング装置11(11Y、11M、11C、11k)で転写残トナーをクリーニングし繰り返し作像工程に入る。
また、記録材7の搬送経路に面した中間転写ベルト6の2次転写位置には、中間転写ベルト6のトナー像担持面側に2次転写ローラ(転写部)9を圧接配置している。また、2次転写位置の中間転写ベルト6の裏面側には、2次転写ローラ9の対向電極をなし、バイアスが印加される対向ローラ21が配設されている。中間転写ベルト6上のトナー像を記録材7に転写する際、対向ローラ21にはトナーと同極性のバイアスが2次転写バイアス印加手段28により印加され、例えば−1000〜−3000Vが印加され−10〜−50μAの電流が流れる。このときの転写電圧は転写高圧検知手段29により検知される。更に、2次転写位置の下流側には、2次転写後の中間転写ベルト6上に残留したトナーを除去するクリーニング装置(ベルトクリーナ)12が設けられている。
レジストローラ対8から2次転写位置に導入された記録材7は、2次転写位置で挾持搬送され、その時に、2次転写ローラ9の対向ローラ21に2次転写バイアス印加手段28から所定に制御された定電圧バイアス(転写バイアス)が印加される。対向ローラ21にはトナーと同極性の転写バイアスが印加されることで転写部位にて中間転写ベルト6上に重ね合わされた4色のフルカラー画像(トナー像)を記録材7へ一括転写し、記録材上にフルカラーの未定着トナー像が形成される。トナー画像の転写を受けた記録材7は2次転写位置から矢印Hの方向に搬送され、不図示の定着器へ導入され加熱定着される。
以下に、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各例では、該電子写真用部材として、電子写真用シームレスベルトを作製した。
以下に、各例において用いた測定方法及び評価方法について説明する。
(HLB値の算出)
界面活性剤におけるHLB値は、W.C.Griffinが提唱した下記式A(J.Soc.Cosmetic Chemists.1巻、311ページ、1949年)より算出した。
式A
HLB値=20×(親水部の式量の総和)/(分子量)。
(表面固有抵抗率の測定)
電子写真用シームレスベルトにおける表面固有抵抗率の測定は、JIS−K6911に準拠する方法で測定した。
測定装置としては、高抵抗計(商品名:ハイレスタUP MCP−HT450型、三菱化学アナリティック(株)製)の主電極の内径が50mm、ガード・リング電極の内径が53.2mm、外径が57.2mmのプローブ(商品名:UR−100、三菱化学アナリティック(株)製)を用いた。電圧250Vを10秒間、測定する電子写真用シームレスベルトに印加し、この電子写真用シームレスベルトの周方向の4箇所の表面固有抵抗率を測定した。
(logρs)
電子写真用シームレスベルトを、温度23℃、相対湿度50%に制御された環境試験室内に12時間放置した。その後、温度23℃、相対湿度50%環境下にて、上述した測定方法により、電子写真用シームレスベルトの4箇所の表面固有抵抗率を測定し、その表面固有抵抗率の平均値(ρs)の10を底とした対数をlogρsとし、電気抵抗の指標とした。
実施例及び比較例の結果を評価するため、以下の例を参考例として、電子写真用シームレスベルトを作製し、その測定及び評価を行った。具体的には、界面活性剤を添加せず、実施例で用いた「イオン液体の質量部+界面活性剤の質量部(イオン液体及び界面活性剤の合計質量部)」と等しい質量部のイオン液体を樹脂組成物中に添加した例を参考例とした。実施例及び比較例の測定結果と、参考例の測定結果とを比較して、以下の基準に基づき、評価を行った。
・電気抵抗の低下の程度の評価基準
ランクA:参考例と比較して、抵抗低下の効果が見られる(logρsで、0.5桁以上)。
ランクB:参考例と比較して、抵抗低下の効果が見られる(logρsで、0.1桁以上0.5桁未満)。
ランクC:参考例と比較して、抵抗低下の効果が見られない(logρsで、0.1桁未満)。
(環境変動)
電子写真用シームレスベルトを、温度15℃、相対湿度10%に制御された環境試験室内に12時間放置した。その後、温度15℃、相対湿度10%環境下にて、上述した測定方法により、電子写真用シームレスベルトの4箇所の表面固有抵抗率を測定し、その表面固有抵抗率の平均値(ρs)の10を底とした対数をlogρs(15℃/10%)とした。
次いで、上記測定に供した電子写真用シームレスベルトを、更に、温度30℃、相対湿度80%に制御された環境試験室内に12時間放置した。その後、温度30℃、相対湿度80%環境下にて、上述した測定方法により、電子写真用シームレスベルトの4箇所の表面固有抵抗率を測定し、その表面固有抵抗率の平均値(ρs)の10を底とした対数をlogρs(30℃/80%)とした。
そして、logρs(15℃/10%)とlogρs(30℃/80%)の差(logρs(30℃/80%)−logρs(15℃/10%))を「環境変動の値」として定義し、電気抵抗の環境変動(環境依存性)の指標とした。
上述した参考例の電子写真用シームレスベルトに対しても環境変動の評価を行い、実施例及び比較例の測定結果と、参考例の測定結果とを比較して、以下の基準に基づき、評価を行った。
・電気抵抗の環境変動の評価基準
ランクA:参考例と比較して、環境変動の値(桁)が大きくならない(同等又は小さくなる)。
ランクB:参考例と比較して、環境変動の値が大きくなる。
(各例に用いたベルト用樹脂組成物の材料)
各例に用いた樹脂組成物の材料を以下の表1〜表3に示す。また、界面活性剤については、算出したHLB値も併せて示した。また、各例の具体的な材料の配合については、後述の表4−1〜表4−6および表6に示す。
Figure 2019012124
Figure 2019012124
Figure 2019012124
Figure 2019012124
(マトリックス樹脂の非晶部存在の確認)
使用した各々のマトリックス樹脂の非晶部の含有割合は、各々のペレット300mgを下記のX線回折測定により特定した。
装置:X線回折装置(リガク(株)製、商品名:RINT−2200)
出力:30kV−50mA
ターゲット:Cu(CuKα)
光学系:第1ピンホールコリメータ 1.0mmφ(直径)
レシービングスリット(縦幅スリット1゜ 横幅スリット1゜)
測定条件:平行ビーム法
測定速度:10°/min
測角範囲:2θ=5〜40゜
なお、マトリックス樹脂中の非晶部と結晶部の両方の回折ピークが現れる、2θ=5〜40°の回折角度におけるピークの積分強度から、下記式(1)にて非晶部の含有割合を算出した。
非晶部の含有割合[%]=100−(結晶部の積分強度)/(非晶部と結晶部を含む部分[2θ=5〜40°]の積分強度)×100・・・式(1)
測定の結果、各々のマトリックス樹脂の含有割合は、
・(マトリックス樹脂1の非晶部の含有割合)=65%
・(マトリックス樹脂2の非晶部の含有割合)=68%
・(マトリックス樹脂3の非晶部の含有割合)=100%
であった。(非晶部の含有割合)>0であることから、マトリックス樹脂1〜3が、非晶部を有することを確認した。
〔実施例1〕
二軸押出し機(商品名:TEX30α、日本製鋼所(株)製)を用いて、下記表4−1に記載の配合にて、各材料を熱溶融混練して樹脂組成物を調製した。熱溶融混練温度は260℃以上、280℃以下の範囲内となるように調整し、熱溶融混練時間はおよそ3〜5分とした。得られた樹脂組成物をペレット化し、温度140℃で6時間乾燥させた。
次いで、このペレットに対して、シリンダ設定温度を300℃にした射出成形装置(商品名:SE180D、住友重機械工業(株)製)を用いてプリフォームを作製した。このときの射出成形金型温度は30℃とした。温度500℃の加熱装置にプリフォームを入れて軟化させたのち、プリフォームを500℃で加熱した。その後、1次ブロー成形機にプリフォームを投入した。そして、ブロー金型内で延伸棒とエアーの力(ブローエアー注入部分)でプリフォーム温度70℃、エアー圧力0.3MPa、延伸棒速度1000mm/sでブロー成形してブローボトルを得た。
次に、2次ブロー成形装置に得られたブローボトルをセットし、ニッケル製円筒金型を装着した。そして、エアー圧力0.1MPaをブローボトル内に印加し、外部にエアーが漏出しないよう調整してブローボトルを金型内面に転写させ、円筒金型を回転させながら、加熱ヒータにて円筒金型を200℃で計60秒間均一に加熱した。その後、この円筒金型をエアーで常温23℃まで冷却し、ボトル内に印加された圧力を解除し、ブローボトルを得た。このブローボトルの両端をカットすることにより電子写真用シームレスベルトを得た。得られた電子写真用シームレスベルトの厚みは70μmであり、周長は792.0mmであった。この電子写真用シームレスベルトの評価結果を下記表5に示す。なお、電気抵抗の低下及び環境変動の評価については、後述する参考例1との比較により評価を行った。
〔実施例2〜18、参考例1〜14〕
樹脂組成物の配合を下記表4−1〜表4−6に記載した通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜18及び参考例1〜14に示す電子写真用シームレスベルトを得た。これらの評価結果を、下記表5に示す。なお、電気抵抗の低下及び環境変動の評価については、実施例2〜5については、参考例1との比較により、実施例6〜18についてはそれぞれ参考例2〜14との比較により評価を行った。
〔実施例19、参考例15〕
樹脂組成物の配合を下記表4−6に記載した通りに変更し、ブロー成形時にプリフォーム温度を130℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例19及び参考例15に示す電子写真用シームレスベルトを得た。これらの評価結果も下記表5に示す。なお、電気抵抗の低下及び環境変動の評価については、実施例19は、参考例15との比較により評価を行った。
〔実施例20、参考例16〕
樹脂組成物の配合を下記表4−6に記載した通りに変更して、実施例1と同様の方法でペレットを作製した。このペレットを押出機に投入し、環状ダイスに導き、チューブ状に溶融押出し、切断することで、実施例20及び参考例16に示す電子写真用シームレスベルトを得た。これらの評価結果を下記表5に示す。なお、電気抵抗の低下及び環境変動の評価については、実施例20は、参考例16との比較により評価を行った。
Figure 2019012124
Figure 2019012124
Figure 2019012124
Figure 2019012124
Figure 2019012124
Figure 2019012124
Figure 2019012124
〔比較例1〜5、参考例17〕
樹脂組成物の配合を下記表6に記載した通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜5及び参考例17の電子写真用シームレスベルトを得た。これらの評価結果を表7に示す。なお、電気抵抗の低下及び環境変動の評価について、比較例1及び2は、参考例3との比較により評価を行い、比較例3及び4は、参考例1との比較により評価を行い、比較例5は参考例17との比較により評価を行った。
Figure 2019012124
Figure 2019012124
6:中間転写ベルト(中間転写体)

Claims (4)

  1. 導電性樹脂層を有する電子写真用部材であって、
    該導電性樹脂層は、
    カチオンと、下記構造式(1)で示されるアニオンとを有するイオン液体、
    非晶部を有するマトリックス樹脂、および
    HLB値が13未満の界面活性剤、
    を含む、ことを特徴とする電子写真用部材:
    Figure 2019012124
    (構造式(1)中、mおよびnは、各々独立して、1以上4以下の整数を表す。)。
  2. 前記カチオンが、下記構造式(2)〜(7)で示される構造群から選ばれるカチオン
    である、請求項1に記載の電子写真用部材:
    Figure 2019012124
    (構造式(2)〜(7)中、R〜R15は、各々独立して、炭素数1〜15の炭化水素基を表す。)。
  3. 前記界面活性剤が、アルコールアルコキシレート構造を含む界面活性剤である、請求項1または2に記載の電子写真用部材。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真用部材を具備する電子写真画像形成装置。
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